説明

汚れを防止する方法及び薬品

【構成】 填料を含有する中性紙の製造方法において、サイズ剤及び/又は紙厚向上剤と、融点が40℃以下である2−オキセタノン類とを使用することによりスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法。
【効果】 填料を含有する中性紙の製造にて、サイズ剤及び/又は紙厚向上剤と融点が40℃以下である2−オキセタノン類とを使用することによりスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止できる製造方法、及び薬品を提供することができる。また、サイズ剤及び/又は紙厚向上剤にあらかじめ融点が40℃以下である2−オキセタノン類を加えた薬品の使用によりスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止できる製造方法、及び薬品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
填料として炭酸カルシウムを含有する中性紙の製造において、融点が40℃以下であるケテンダイマー系化合物を用いることでケテンダイマー系サイズ剤に由来する抄紙系の汚れを軽減できることは公知である(例えば、特許文献1参照)。25℃で固体でない2−オキセタノン及びロジンサイズ剤の組み合わせを用いることで、いずれのサイズ剤のタイプ単独を用いて達成できない特性の紙を製造できることは公知である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許2947260号公報(特開平10−310993号公報)
【特許文献2】特表2001−518577号公報
【0003】
従来、脂肪酸アミド誘導体を使用した紙厚向上紙、及びロジンエマルションサイズ剤を使用した紙や板紙の製造において、プレス工程のスムーザーロール及び/又はドライヤーシリンダーで汚れが生じることが問題となっている。スムーザーロール及びドライヤーの汚れは操業性を低下させる。製紙メーカーではスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを低減させることを重要課題としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、填料を含有した中性紙の製造において、サイズ剤又は紙厚向上剤を使用する際のスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法、及び薬品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、填料を含有する中性紙の製造でのスムーザーロール及び/又はドライヤーに発生する汚れを防止する方法について鋭意検討を重ねた結果、紙厚向上剤又はサイズ剤と融点が40℃以下である2−オキセタノン類を使用することにより、必要とする効果に悪影響を与えることなく、スムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は
(1)填料を含有する中性紙の製造方法において、サイズ剤及び/又は紙厚向上剤と、融点が40℃以下である2−オキセタノン類とを使用することによりスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法、
(2)紙厚向上剤が脂肪酸アミド誘導体であることを特徴とする前記(1)のスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法、
(3)サイズ剤がロジンエマルションサイズ剤であることを特徴とする前記(1)のスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法、
(4)填料を含有する中性紙の製造方法において用いられる脂肪酸アミド誘導体にあらかじめ融点が40℃以下である2−オキセタノン類を加えることを特徴とするスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法、
(5)填料を含有する中性紙の製造方法において用いられるロジンエマルションサイズ剤にあらかじめ融点が40℃以下である2−オキセタノン類を加えることを特徴とするスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法、
(6)填料を含有する中性紙の製造方法において用いられる脂肪酸アミド誘導体に融点が40℃以下である2−オキセタノン類を含有するスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法に用いられる薬品、
(7)填料を含有する中性紙の製造方法において用いられるロジンエマルションサイズ剤に融点が40℃以下である2−オキセタノン類を含有するスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法に用いられる薬品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
填料を含有する中性紙の製造にて、サイズ剤及び/又は紙厚向上剤と融点が40℃以下である2−オキセタノン類とを使用することによりスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止できる製造方法、及び薬品を提供することができる。また、サイズ剤及び/又は紙厚向上剤にあらかじめ融点が40℃以下である2−オキセタノン類を加えた薬品の使用によりスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止できる製造方法、及び薬品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<2−オキセタノン類>
本発明の2−オキセタノン類は融点が40℃以下であればよく、具体的には、下記一般式(1)であらわすことができる。融点が40℃を超えた2−オキセタノン類を使用した場合、スムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止できない。
【化1】

(式中、nは、0〜20、好ましくは0〜6、より好ましくは0〜3の整数であり、最も好ましくは0であり;R及びR’’は同一でも異なってもよく、6〜24、好ましくは10〜20及びより好ましくは14〜16個の炭素原子を有する飽和又は不飽和直鎖又は分岐アルキル基であり;そしてR’は、2〜40、好ましくは4〜22個の炭素原子を有する飽和アルキル基である)の構造を有するケテンダイマー及びマルチマーである。また、式(1)に示すケテンダイマー及びマルチマーの加水分解物であるケトン化合物も含む。
【0009】
ケテンダイマー(式1中のn=0)及びマルチマー(式1中のnが1以上の整数)は、不飽和のカルボキシ脂肪酸を含む反応混合物の反応生成物であるケテンダイマー又はマルチマー化合物の混合物を含んでいてもよい。反応混合物は、さらに飽和モノカルボキシ脂肪酸及びジカルボン酸を含んでいてもよい。
【0010】
反応混合物に含まれる不飽和モノカルボキシ脂肪酸は、好ましくは10〜26個の炭素原子、より好ましくは14〜22個の炭素原子、最も好ましくは16〜18個の炭素原子を有する。これらの酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、ドデセン酸、テトラデセン(ミリストオレイン)酸、ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、オクタデカジエン(リノレライジン)酸、オクタデカトリエン(リノレン)酸、エイコセン(ガイドレイン)酸、エイコサテトラエン(アラキドン)酸、cis−13−ドコセン(エルカ)酸、trans−13−ドコセン(ブラシジン)酸、及びドコサペンタエン(イワシ)酸、及びそれらの酸ハロゲン化物、好ましくは塩化物が挙げられる。1又は2以上のモノカルボン酸を用いることができる。好ましい不飽和モノカルボキシ脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、及びパルミトレイン酸、及びそれらの酸ハロゲン化物である。最も好ましい不飽和モノカルボキシ脂肪酸はオレイン酸及びリノール酸、及びそれらの酸ハロゲン化物である。
【0011】
本発明において使用されるケテンダイマー及びマルチマー化合物を調整するために用いられる飽和モノカルボキシ脂肪酸は、好ましくは10〜26個の炭素原子、より好ましくは14〜22個の炭素原子、及び最も好ましくは16〜18の炭素原子を有する。これらの酸としては、例えば、ステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ペンタデカン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ノナデカン酸、アラキン酸及びべヘン酸、及びそれらのハロゲン化物、このましくは塩化物が挙げられる。1又は2以上の飽和モノカルボキシ脂肪酸を用いることができる。好ましい酸はパルミチン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸である。
【0012】
本発明における使用のためのケテンマルチマー化合物を調整するために用いられるアルキルジカルボン酸は、好ましくは6〜44個の炭素原子、より好ましくは9〜10、22又は36この炭素原子を有する。このようなジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、アゼライン酸、1,10−ドデカンジオール酸、スベリン酸、ブラジル酸、ドコサンジオール酸、及び炭素数36のダイマー酸、及びそれらのハロゲン化物、好ましくは塩化物が挙げられる。1又は2以上のこれらのジカルボン酸を用いることができる。9〜10個の炭素原子を有するジカルボン酸がより好ましい。最も好ましいジカルボン酸はセバシン酸及びアゼライン酸である。
【0013】
本発明におけるケテンマルチマーの原料にジカルボン酸を用いる場合、ジカルボン酸対モノカルボン酸(飽和及び不飽和の合計)の最大モル比は、好ましくは5である。より好ましくは最大4であり、最も好ましくは最大2である。ダイマー及びマルチマー化合物の混合物は、標準ケテンダイマーの調整について公知の方法を用いて調整してよい。その第一の工程において、酸ハロゲン化物(好ましくは酸塩化物)が、脂肪酸の混合物、又は脂肪酸とジカルボン酸との混合物から、三塩化リン又は別のハロゲン化(好ましくは塩化)剤を用いて形成される。次に、酸ハロゲン化物は、第三アミン(トリアルキルアミン及び環状アルキルアミンを含む)、好ましくはトリエチルアミンの存在下でケテンに転換される。このケテン部分は、次にダイマー化されて所望の化合物が形成される。
【0014】
本発明の2−オキセタノンはエマルションの形態で中性紙の製造に使用される。エマルションは従来公知の方法により製造することができる。例えば、前記一般式(1)で示される2−オキセタノン類の融点以上の温度で2−オキセタノン類と保護コロイド及び/又は分散剤とを水性溶媒中に混合し、ホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、超音波乳化機等の各種公知の乳化機で均一に分散させることにより得られる。さらに保護コロイド及び/又は分散剤は、公知のものを使用することができる。例えば、カチオン化澱粉等のカチオン性分散剤、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩等のアニオン性分散剤、ソルビタンエステル等のノニオン性分散剤、或いはカチオン性、アニオン性、両性のアクリルアミド系ポリマー等の高分子保護コロイドを挙げることができる。これらは、1種或いは2種以上併用して用いることができる。かくして得られる本発明の薬品は2−オキセタノンの濃度が10〜30重量%、分散相の粒子径が1μm以下であることが好ましい。
【0015】
<紙厚向上剤>
本発明の紙厚向上剤は、紙の嵩を高くし、白色度や不透明度を向上させる薬品であり、このような薬品であれば、本発明の紙厚向上剤といえ、本発明において使用することができる。紙厚向上効果の発現機構は定かではないが、以下のように推定できる。紙厚向上剤がパルプスラリー中に添加され、パルプ表面を疎水化し、その結果、パルプと水溶液の界面張力が増大し、パルプ間の隙間が多くなり、紙厚が向上したパルプシートが得られたり、光学的に反射率が大きくなることにより、不透明度や白色度が向上すると考えられている。紙厚向上剤として、種々のものが市販されており、例えば、EO、POのようなノニオン性基を有するいわゆるノニオン性紙厚向上剤や脂肪酸アミド誘導体とエピハロヒドリンとを反応させた化合物のようなカチオン性の紙厚向上剤があるが脂肪酸アミド誘導体とエピハロヒドリンとを反応させた化合物が好ましい。
【0016】
<脂肪酸アミド誘導体>
本発明の脂肪酸アミド誘導体は、炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物をエピハロヒドリンとを反応させて得られる。
【0017】
<アミド系化合物について>
本発明のアミド系化合物は、炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得ることができる。
【0018】
前記の炭素数6〜24のモノカルボン酸及び炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体としては炭素数6〜24の脂肪酸及び炭素数6〜24の脂肪酸のエステル等を挙げることができる。
【0019】
前記の脂肪酸としては炭素数6〜24である直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。これら各種の脂肪酸の中でも特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びオレイン酸が好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0020】
前記の脂肪酸のエステルとしては上記各脂肪酸の低級アルコールエステルなどが挙げられる。脂肪酸の低級アルコールエステルとして、脂肪酸のメチルエステル、脂肪酸のエチルエステル、及び脂肪酸のプロピルエステルなどが挙げられる。本発明における脂肪酸エステルは、従来から公知の、脂肪酸とアルコールとのエステル化反応により得ることができる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0021】
前記のポリアルキレンポリアミン類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン及びこれらのアミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられ、これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましく、さらにはテトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0022】
モノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応モル比は特に限定するものではないが、ポリアルキレンポリアミン類1モルに対してモノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体の反応量は、通常、1.5〜3モルである。
【0023】
モノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応は、100〜200℃に加熱することにより行われる。反応時間は、通常、0.5〜10時間であり、中でも2〜6時間が好ましい。反応に際してカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類とを混合する方法に制限はなく、通常はポリアルキレンポリアミン類にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を徐々に添加して反応をスムースに進行させる方法が好ましい。アミド化反応の触媒は特に用いなくても良いが、アミド化反応の触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などのスルホン酸類、あるいは、アミド化反応に通常に用いられる触媒を使用しても良い。その使用量はポリアルキレンポリアミン1モルに対し、通常の場合0.005 〜0.1モルであり、好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0024】
<アミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応>
このようにして得られたアミド系化合物とエピハロヒドリンとを反応させる。具体的には反応溶媒として水又は水と有機溶剤との混合溶媒を用い、アミド化合物と反応溶媒との混合物を40℃〜100℃に保ち、そこへエピハロヒドリンを添加して反応を進行させる。
【0025】
低分子有機ハロゲン化合物の含有量をより低くするためには、反応温度40〜55℃で5分〜1時間反応させた後、70〜100℃に昇温して1〜8時間反応させる2段階反応が好ましい。
【0026】
本発明に使用される反応溶媒としては水あるいは水および有機溶剤の混合溶媒が使用される。有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、この中でもイソプロピルアルコールが好ましい。これらは一種単独で水と混合しても良いし、二種以上を併用して水と混合しても良い。水と有機溶剤の使用量、混合比率は反応温度でアミド化合物を均一に溶解、又は分散させるのに必要な量、混合比を使用すれば良く、通常アミド化合物とエピハロヒドリンとの反応は、アミド化合物の濃度が5〜90%、水と有機溶剤の混合比は水100gに対して0〜100gで行われる。
【0027】
アミド系化合物はエピハロヒドリンとの反応において、アミド系化合物の残存アミノ基の活性水素に対するエピハロヒドリンのモル量は、0.5〜1.2当量であり、好ましくは、0.7〜1.2当量である。エピハロヒドリンのモル量が0.5当量よりも少ないと脂肪酸アミド誘導体の粘度が高くなり流動性を失い、取り扱いが困難となると言う不都合を生じることがあり、また1.2当量を超えると脂肪酸アミド誘導体中の低分子有機ハロゲン化合物の含有量が多くなると言う不都合を生じることがある。
【0028】
ここで、残存アミノ基は、アミノ系化合物のアミン価を測定して算出することができる。
残存アミノ基=アミン価=(V ×F ×0.5 ×56.1 )/S
但し、V :1/2 規定塩酸メタノール液の滴定量(cc)
F :1/2 規定塩酸メタノール液の力価
S :採取した試料の固形分量(g)
【0029】
本発明に使用されるエピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどが挙げられ、その中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
【0030】
脂肪酸アミド誘導体は必要に応じて従来公知の方法で分散させることができる。従来公知の分散方法としては、転相乳化、界面活性剤、無機塩類の添加、あるいは界面活性剤、無機塩類を添加した後の転相乳化、また機械的な方法により分散させることができる。これらは単独でも二種以上の方法を併用しても差し支えない。機械的な方法としてはホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、高剪断型回転式乳化分散機、超音波乳化機等の各種公知の乳化機により均一に分散させる方法が挙げられる。
【0031】
界面活性剤としては、従来公知の界面活性剤が使用でき、例えば、高級アルコールあるいは高級脂肪酸にオキシアルキレン基が付加した非イオン界面活性剤などが挙げられる。また、無機塩類としては、例えばナトリウムやカルシウムの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩などが挙げられる。これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0032】
<サイズ剤>
本発明のサイズ剤は、紙や板紙にサイズ性、防水性、耐水性等の機能を付与するために使用されているものであれば、本発明のサイズ剤として使用でき、ロジンエマルションサイズ剤、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテンダイマー、スチレン系化合物などを挙げることができ、この中でもアルキルケテンダイマーとロジンエマルションサイズ剤が好ましい。特にロジンエマルションサイズ剤が好ましい。
【0033】
<ロジンエマルションサイズ剤について>
本発明のロジンエマルションサイズ剤は、ロジンエステル(A)と強化ロジン(B)とを特定の割合で混合した混合樹脂(C)を有効成分とする。
【0034】
ロジンエステル(A)は、例えば、ロジンおよび多価アルコールを、200〜280℃、10〜24時間加熱するといった方法により得ることができる。ロジンエステル(A)を構成する多価アルコールは、ロジンの総カルボキシル基当量に対して、多価アルコールの水酸基当量の比率が0.2〜1.5、好ましくは0.7〜1.0となるような量を使用することができる。
【0035】
ロジンエステル(A)に使用できるロジンとしては、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、水添ロジン、重合ロジン、(アルキル)フェノール・ホルマリン樹脂変性ロジン、キシレン樹脂変性ロジン、アルデヒド変性ロジン、スチレン変性ロジンなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは二種類以上を併用して用いることができる。
【0036】
ロジンエステル(A)に使用できる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンチルグリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどを挙げることができ、これらを単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。
【0037】
強化ロジン(B)は、ロジンにα、β−不飽和カルボン酸を付加反応させて得ることができ、例えば、ロジンとα、β−不飽和カルボン酸とを180〜250℃で1〜5時間加熱付加反応して得られる。付加させるα、β−不飽和カルボン酸はロジン100重量部に対して、2〜15重量部、好ましくは4〜12重量部使用する。α、β−不飽和カルボン酸の付加量がロジン100重量部に対して2重量部に満たない場合は、混合樹脂の乳化に要する乳化剤量が多くなり、抄紙系内における発泡の原因となる。α、β−不飽和カルボン酸付加量が15重量部以上の場合は樹脂酸価が高くなるため、パルプ原料に含まれる夾雑物や、アルカリ成分、および硬度成分に対する安定性に劣る。
【0038】
強化ロジン(B)に使用できるロジンとしては、前述のロジンエステル(A)に使用できるロジンから選択できる。
【0039】
強化ロジン(B)に使用できるα、β−不飽和カルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和二塩基酸;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和一塩基酸;などを挙げることができ、これらを単独または二種以上を併用して用いることができる。
【0040】
本発明のロジンエマルションサイズ剤は、ロジンエステル(A)と強化ロジン(B)とを、重量比で(A):(B)=0:100〜60:40、好ましくは(A):(B)=20:80〜50:50の割合で混合した混合樹脂(C)を有効成分とする。
【0041】
本発明のロジンエマルションサイズ剤は、前述の混合樹脂(C)を乳化分散剤によって水中に安定して分散させて得られる。
【0042】
乳化分散剤としては、各種低分子界面活性剤、高分子系乳化分散剤やカゼイン、ポリビニルアルコール、変性澱粉などの保護コロイドを使用することができ、これらを単独で、あるいは二種以上組合せて使用することができる。
【0043】
各種低分子界面活性剤としては、例えば、強化ロジンのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、ポリオキシエチレンモノおよびジスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノおよびジスチリルフェニルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤;テトラアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルアミン、モノおよびポリオキシエチレンアルキルアミンなどのカチオン性界面活性剤;を例示することができ、これらを単独で、あるいは二種類以上を併用して用いることができる。
【0044】
高分子系乳化分散剤は、疎水基、非イオン性基、イオン性基といった官能基をもつ合成高分子や、一般の天然高分子から構成される乳化分散剤を使用することができ、例えば、アニオン性またはカチオン性のスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の部分あるいは完全中和物、アニオン性またはカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体あるいは(メタ)アクリルアミド系共重合体、カチオン性のポリアミノポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂あるいはポリ(ジアリルアミン)−エピクロルヒドリン樹脂、およびカゼイン、レシチン、ポリビニルアルコール、各種変性澱粉などを例示することができる。これらの高分子系乳化分散剤は保護コロイドとしてこれらを単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。
【0045】
本発明に係わるロジンエマルションサイズ剤は、混合樹脂(C)100重量部に対し、乳化分散剤を固形分で1〜20重量部、好ましくは5〜10重量部使用し、水中に安定に乳化分散させる。乳化分散の方法は、特に限定されるものではないが、例えば特公昭54−36242号公報に記載されている方法に準じて、混合樹脂(C)を、溶剤(例えばベンゼン、トルエン、塩化メチレンなど)で溶解し、前記の乳化分散剤を添加した後、ホモジナイザーを通して水中油型エマルジョンを製造する方法(溶剤法)、特開昭54−77209号公報に記載されている方法に準じて、混合樹脂(C)を溶融し、この溶融物に乳化分散剤を添加して油中水型エマルションを形成し、反転水を添加して水中油型エマルジョンに相転移させる方法(転相法)、特公昭53−32380号公報に記載されている方法に準じて、混合樹脂(C)を溶融し、この溶融物に乳化分散剤を添加した後、高温高圧下でホモジナイザーを通して水中油型エマルションを製造する方法(メカニカル法)が用いられる。
【0046】
脂肪酸アミド誘導体などの紙厚向上剤及び/又はロジンエマルションサイズ剤(A)などのサイズ剤と融点が40℃以下である2−オキセタノン類(B)を用いる比率は固形分重量比で、(A):(B)=98:2〜70:30、好ましくは(A):(B)=95:5〜80:15の割合である。これらは別々に用いることもでき、予め混合して用いることもできる。また、これらを予め混合したものをひとつの薬品として用いることもできる。脂肪酸アミド誘導体などの紙厚向上剤の割合が75重量%に満たない場合は紙厚向上性が低下する場合があり、ロジンエマルションサイズ剤などのサイズ剤の割合が75重量%に満たない場合はサイズ効果が低下する場合がある。2−オキセタノン類(B)の割合が2重量%に満たない場合はスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止できない場合がある。
【0047】
本発明の薬品を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。紙以外には改質木材、無機系建築材料が挙げられ、例えばパーティクルボード、ハードボード、インシュレーションボード、ロックウールボード等を挙げることができる。
【0048】
本発明のサイズ剤及び/又は紙厚向上剤をパルプ原料固形分に対し固形分で0.2〜0.6重量%を添加し、本発明の2−オキセタノン類をパルプ原料固形分に対し固形分で0.002〜0.2重量%を併用する。これらの薬品は別々に用いることもでき、予め混合して用いることもできる。また、これらを予め混合したものをひとつの薬品として用いることもできる。また本発明の薬品はサイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等で紙基体に塗布されたものであってもよい。
【0049】
本発明で得られる紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料と岩綿、あるいはポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有してもよい。
【0050】
本発明で得られる紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、及び濾水性向上剤などの添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の薬品と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。
【0051】
填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのごとき脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン、ロジンエステル系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2−オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0052】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。
【0053】
歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0054】
また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、並びに防滑剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、硫酸バン土は本発明の薬品を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下実施例、比較例において%とあるのは、特に断りのない限り固形分重量%を意味し、また、部とあるのは重量部を意味する。
紙厚向上剤として脂肪酸アミド誘導体を使用した実施例を下記に示す。また、汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果は次のように評価した。
【0056】
<スムーザーロール汚れ試験>
LBKP(CSF400)のパルプスラリー(2.4%)に、炭酸カルシウムをパルプに対し10%加えた後、硫酸バンドをパルプに対して1.0%、紙厚向上剤及び/又は2−オキセタノン類(パルプに対し0.5%)、両性澱粉(日本NSC(株)、CATO3212、パルプに対し0.5%)、歩留まり剤(ハイモ(株)製、NR12MLS、パルプに対し0.01%)の順にパルプに添加した。攪拌した後、JIS式抄紙機にて湿紙を作成した。なお前記の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
得られた湿紙をウレタンシート上に置き、ろ紙を2枚乗せ、金属ロールでプレスをした。ろ紙2枚を新しいろ紙に交換した後、38℃に調整した熱プレスで15mPa、10分間プレスした。熱プレス後、すぐに試験紙を剥がし、ウレタンシートに転写された紙粉汚れを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:ほとんど紙粉汚れがない
○:紙粉汚れが少ない
△:紙粉汚れがやや少ない
×:紙粉汚れが多い
【0057】
<ドライヤー汚れ試験>
LBKP(CSF400)のパルプスラリー(2.4%)に、炭酸カルシウムをパルプに対し10%加えた後、硫酸バンドをパルプに対して1.0%、紙厚向上剤及び/又は2−オキセタノン類(パルプに対し0.5%)、両性澱粉(日本NSC(株)、CATO3212、パルプに対し0.5%)、歩留まり剤(ハイモ(株)製、NR12MLS、パルプに対し0.01%)の順にパルプに添加した。攪拌した後、JIS式抄紙機にて湿紙を作成した。なお前記の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
得られた湿紙を金属プレート上に置き、ろ紙を2枚乗せ、金属ロールでプレスをした。ろ紙2枚を新しいろ紙に交換した後、70℃に調整した熱プレスで15mPa、10分間プレスした。熱プレス後、すぐに試験紙を剥がし、プレートに転写された紙粉汚れを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:ほとんど紙粉汚れがない
○:紙粉汚れが少ない
△:紙粉汚れがやや少ない
×:紙粉汚れが多い
【0058】
<サイズ効果試験、紙厚向上効果試験>
LBKP(CSF400)のパルプスラリー(2.4%)に、炭酸カルシウムをパルプに対し10%加えた後、硫酸バンドをパルプに対して1.0%、紙厚向上剤及び/又は2−オキセタノン類(パルプに対し0.5%)、両性澱粉(日本NSC(株)、CATO3212、パルプに対し0.5%)、歩留まり剤(ハイモ(株)製、NR12MLS、パルプに対し0.01%)の順にパルプに添加した。攪拌した後、角型シートマシンにて抄紙した。得られた手抄き紙を24℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、サイズ度、密度を下記方法により測定した。なお前記の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
サイズ度…JIS P8122 紙のステキヒトサイズ度試験
密度…JIS P8118 紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法
【0059】
製造例1<紙厚向上剤(脂肪酸アミド誘導体)の製造例>
温度計、冷却機、攪拌機、及び窒素導入管を備えた2リットル四つ口丸底フラスコにテトラエチレンペンタミン189.3g(1モル)を仕込み130℃へ昇温した後、牛脂脂肪酸{ステアリン酸/パルミチン酸混合物(混合重量比65:35)} 958.9g(3.5モル)を徐々に加えた。170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら5時間反応させ、ワックス状のアミド系化合物を得た。得られたアミド化合物のアミン価は51であった。得られたアミド系化合物50.0gとイソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する)8.1g、水206gを温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた1リットルの別の四つ口フラスコに仕込み、80℃まで昇温した後、1時間攪拌した後、50℃まで冷却し、エピクロロヒドリン4.2g(0.045モル)を加え、50℃にて30分反応させた。 その後、80℃にて3時間反応させた。室温まで冷却し、固形分濃度20%の紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aを得た。
【0060】
製造例2<2−オキセタノン類のエマルションの製造例>
水285部に過酸化水素処理コーンスターチ(水分12%含有)114部を投入し、85℃で1時間攪拌する。次に、温度を60℃以下に下げて50%水酸化ナトリウム3.4部、75%グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド18.7部を加え、4.5時間攪拌する。その後、温度を30℃以下にして、水121部、98%硫酸1.8部を加え、加工澱粉溶液を得た。得られた加工澱粉溶液は、カチオン性基の置換度が0.12、粘度(25℃)は4%水溶液で12mPa・s、固形分20%であった。得られた加工澱粉溶液300部と20%ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合水溶液10部を水390部に混合する。この混合物を90℃で1時間加熱後、70℃に冷却し、ついで15%硫酸でpH3.5に調整した。このように調整した混合物を700部にイソステアリル酸を主原料として製造した2−オキセタノン類(融点20℃)200部を70℃に加温した後加え、高圧吐出型ホモジナイザーを用いて圧力14mPaで乳化した後、希釈し、冷却することにより2−オキセタノン類15%、固形分20%の2−オキセタノン類のエマルションBを得た。
【0061】
製造例3<2−オキセタノン類のエマルションの製造例>
製造例2においてイソステアリル酸を主原料として製造した2−オキセタノン類(融点20℃)をベヘン酸を主原料として製造した2−オキセタノン類(融点64℃)に代える以外は製造例2と同様に行った。2−オキセタノン類15%、固形分20%の2−オキセタノン類のエマルションCを得た。
【0062】
実施例1
製造例1で得られた紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと製造例2で得られた2−オキセタノン類のエマルションBの固形分比率が90:10になるように混合して一液化した薬品を作成し、この薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例2
実施例1において紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノンのエマルションBの固形分比率90:10を80:20に代えた以外は実施例1と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例3
実施例1において紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノンのエマルションBの固形分比率90:10を70:30に代えた以外は実施例1と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果を行った。結果を表1に示す。
【0065】
実施例4
実施例1において紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノンのエマルションBの固形分比率90:10を99:1に代えた以外は実施例1と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
実施例5
製造例1で得られた紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと製造例2で得られた2−オキセタノン類のエマルションBの固形分比率が90:10になるように脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションBの各々を一液化することなく用いて、汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
実施例6
実施例5において紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションBの固形分比率90:10を80:20に代えた以外は実施例5と同様にして脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションBの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
実施例7
実施例5において紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションBの固形分比率90:10を70:30に代えた以外は実施例5と同様にして脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションBの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例8
実施例5において紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションBの固形分比率90:10を99:1に代えた以外は実施例5と同様にして脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションBの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
比較例1
実施例1において2−オキセタノン類のエマルションBを使用しないで紙厚向上剤である脂肪酸アミド誘導体Aのみを所定量使用する以外は実施例1と同様にして汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
比較例2
実施例1において2−オキセタノン類のエマルションBを製造例3で得られた融点が40℃を越える2−オキセタノン類のエマルションCに代える以外は実施例1と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
比較例3
比較例2において脂肪酸アミド誘導体Aと2−オキセタノン類のエマルションCの各々を一液化することなく用いて、汚れの程度及びサイズ効果、紙厚向上効果について評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
サイズ剤としてロジンエマルションサイズ剤を使用した実施例を下記に示す。また、汚れの程度及びサイズ効果は次のように評価した。
【0075】
<スムーザーロール汚れ試験>
LBKP(CSF400)のパルプスラリー(2.4%)に、炭酸カルシウムをパルプに対し10%加えた後、硫酸バンドをパルプに対して1.0%、サイズ剤及び/又は2−オキセタノン類(パルプに対し0.5%)、両性澱粉(日本NSC(株)、CATO3212、パルプに対し0.5%)、歩留まり剤(ハイモ(株)製、NR12MLS、パルプに対し0.01%)の順にパルプに添加した。攪拌した後、JIS式抄紙機にて湿紙を作成した。得られた湿紙をウレタンシート上に置き、ろ紙を2枚乗せ、金属ロールでプレスをした。ろ紙2枚を新しいろ紙に交換した後、38℃に調整した熱プレスで15mPa、10分間プレスした。熱プレス後、すぐに試験紙を剥がし、ウレタンシートに転写された紙粉汚れを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:ほとんど紙粉汚れがない
○:紙粉汚れが少ない
△:紙粉汚れがやや少ない
×:紙粉汚れが多い
【0076】
<ドライヤー汚れ試験>
LBKP(CSF400)のパルプスラリー(2.4%)に、炭酸カルシウムをパルプに対し10%加えた後、硫酸バンドをパルプに対して1.0%、サイズ剤及び/又は2−オキセタノン類(パルプに対し0.5%)、両性澱粉(日本NSC(株)、CATO3212、パルプに対し0.5%)、歩留まり剤(ハイモ(株)製、NR12MLS、パルプに対し0.01%)の順にパルプに添加した。攪拌した後、JIS式抄紙機にて湿紙を作成した。得られた湿紙を金属プレート上に置き、ろ紙を2枚乗せ、金属ロールでプレスをした。ろ紙2枚を新しいろ紙に交換した後、70℃に調整した熱プレスで15mPa、10分間プレスした。熱プレス後、すぐに試験紙を剥がし、プレートに転写された紙粉汚れを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:ほとんど紙粉汚れがない
○:紙粉汚れが少ない
△:紙粉汚れがやや少ない
×:紙粉汚れが多い
【0077】
<サイズ効果試験>
LBKP(CSF400)のパルプスラリー(2.4%)に、炭酸カルシウムをパルプに対し10%加えた後、硫酸バンドをパルプに対して1.0%、サイズ剤及び/又は2−オキセタノン類(パルプに対し0.3%)、両性澱粉(日本NSC(株)、CATO3212、パルプに対し0.5%)、歩留まり剤(ハイモ(株)製、NR12MLS、パルプに対し0.01%)の順にパルプに添加した。攪拌した後、角型シートマシンにて抄紙した。得られた手抄き紙を24℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、サイズ度、密度を下記方法により測定した。なお前記薬品の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
サイズ度…JIS P8122 紙のステキヒトサイズ度試験
【0078】
製造例4<2−オキセタノン類のエマルションの製造例>
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸31.1部、アクリルアミドの50%水溶液192.0部 、イオン交換水190.0部,イソプロピルアルコール222.4部及びノルマルドデシルメルカプタン1.52部を仕込み、20%水酸化ナトリウム水溶液にてpH4.0に調整した。この混合液を撹拌しながら窒素ガスを導入して酸素を除去し、60℃まで昇温した。60℃にて過硫酸アンモニウムの5%水溶液3.42部を加え、重合を開始した。その後78℃まで昇温し、1.5時間78℃に保持した後、過硫酸アンモニウムの5%水溶液1.05部を追加した。さらに、1時間同温度に保持した後、イオン交換水200部を加え、イソプロピルアルコールの留去を始めた。留去開始より2時間後にイソプロピルアルコールと水との混合留去物285.5部を得て、留去を終了した。得られた重合生成物にイオン交換水85.5部を加え、固形分20.3%の高分子水溶液を得た。得られた高分子水溶液300部と20%ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合水溶液10部を水390部に混合する。この混合物を90℃で1時間加熱後、70℃に冷却し、ついで15%硫酸でpH3.5に調整したこのように調整した混合物700部にイソステアリル酸を主原料として製造した2−オキセタノン類(融点20℃)200部を70℃に加温した後加え、高圧吐出型ホモジナイザーを用いて圧力14mPaで乳化した後、希釈し、冷却することにより2−オキセタノン類15%、固形分20%の2−オキセタノン類のエマルションDを得た。
【0079】
製造例5<2−オキセタノン類のエマルションの製造例>
製造例4においてイソステアリル酸を主原料として製造した2−オキセタノン類(融点20℃)をベヘン酸を主原料として製造した2−オキセタノン類(融点64℃)に代える以外は製造例4と同様に行った。2−オキセタノン類15%、固形分20%のエマルションEを得た。
【0080】
実施例9
サイズ剤としてロジンエマルションサイズ剤(星光PMC(株)製、CC1404、以下「ロジンエマルションサイズ剤」と略する場合がある)と製造例3で得られた2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率が90:10になるように混合して一液化した薬品を作製し、汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
実施例10
実施例9においてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率90:10を80:20に代えた以外は実施例5と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
実施例11
実施例9においてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率90:10を70:30に代えた以外は実施例5と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
実施例12
実施例9においてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率90:10を98:2に代えた以外は実施例5と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
実施例13
ロジンエマルションサイズ剤と製造例6で得られた2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率が90:10になるようにロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
実施例14
実施例13においてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率90:10を80:20に代えた以外は実施例13と同様にしてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
実施例15
実施例13においてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率90:10を70:30に代えた以外は実施例13と同様にしてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
実施例16
実施例13においてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションのD固形分比率90:10を99:1に代えた以外は実施例5と同様にしてロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
比較例5
実施例9においてロジンエマルションサイズ剤と製造例4で得られた2−オキセタノン類のエマルションDの固形分比率90:10を100:0に代えた以外は、つまり、ロジンエマルションサイズ剤のみを使用する以外は、実施例9と同様にして汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
比較例6
実施例9において製造例4得られた2−オキセタノン類(融点20℃)のエマルションDを製造例5で得られた2−オキセタノン類(融点64℃)のエマルションEに代える以外は実施例9と同様にして一液化した薬品を用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
比較例7
ロジンエマルションサイズ剤と製造例4で得られた2−オキセタノン類(融点20℃)のエマルションDの固形分比率が90:10になるようにロジンエマルションサイズ剤と2−オキセタノン類のエマルションDの各々を一液化することなく用いて汚れの程度及びサイズ効果について評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
填料を含有する中性紙の製造方法において、サイズ剤及び/又は紙厚向上剤と、融点が40℃以下である2−オキセタノン類とを使用することによりスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法。
【請求項2】
紙厚向上剤が脂肪酸アミド誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法。
【請求項3】
サイズ剤がロジンエマルションサイズ剤であることを特徴とする請求項1に記載のスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法。
【請求項4】
填料を含有する中性紙の製造方法において用いられる脂肪酸アミド誘導体にあらかじめ融点が40℃以下である2−オキセタノン類を加えることを特徴とするスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法。
【請求項5】
填料を含有する中性紙の製造方法において用いられるロジンエマルションサイズ剤にあらかじめ融点が40℃以下である2−オキセタノン類を加えることを特徴とするスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法。
【請求項6】
填料を含有する中性紙の製造方法において用いられる脂肪酸アミド誘導体に融点が40℃以下である2−オキセタノン類を含有するスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法に用いられる薬品。
【請求項7】
填料を含有する中性紙の製造方法において用いられるロジンエマルションサイズ剤に融点が40℃以下である2−オキセタノン類を含有するスムーザーロール及び/又はドライヤーの汚れを防止する方法に用いられる薬品。

【公開番号】特開2007−92251(P2007−92251A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285676(P2005−285676)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】