説明

汚染土壌に含まれるダイオキシン類を無害化する方法、装置、及びシステム

【課題】汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化することができる新たな技術を提供すること。
【解決手段】ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、あらかじめ汚染土壌を粉砕・微粉化することにより、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化することができる。従って、汚染土壌を粉砕する処理と、粉砕した汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱する処理とを組み合わせた方法、装置、システムは、汚染土壌に含まれるダイオキシン類の無害化に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を無害化する方法、装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ダイオキシン類による環境汚染が問題となっており、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を無害化するため、溶融法、高温(800〜1000℃の温度範囲)焼却法、低温還元熱分解法等の物理的分解法、アルカリ触媒分解法、金属ナトリウム脱塩素法等の化学的分解法、細菌(例えば、白色腐朽菌など)や堆肥等を用いた生物分解法などの技術が開発されている(例えば、特許文献1〜4などを参照)。
【特許文献1】特開2003−220375号公報
【特許文献2】特開2001−353231号公報
【特許文献3】特公平6−61373号公報
【特許文献4】特開2002−143806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化することができる新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、あらかじめ汚染土壌を粉砕・微粉化することにより、汚染土壌におけるダイオキシン類を効率よく無害化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明に係る方法は、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理することにより前記汚染土壌における前記ダイオキシン類を無害化する方法において、前記汚染土壌を加熱処理する前に、あらかじめ前記汚染土壌を粉砕することを特徴とする。なお、本発明においては、前記汚染土壌を粉砕する前に、前記汚染土壌に滑剤を添加することとしてもよい。また、本発明においては、前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、前記加熱処理の加熱温度で燃焼する燃焼物、ダイオキシン類の再合成を抑制する物質などを添加することとしてもよいし、前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理した後に、加熱処理した前記汚染土壌を急冷することとしてもよい。
【0006】
本発明に係る装置は、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する加熱処理装置において、前記汚染土壌を粉砕する粉砕手段を備えることを特徴とする。なお、本発明に係る装置は、加熱処理した前記汚染土壌を急冷する急冷手段をさらに備えることとしてもよい。
【0007】
本発明に係るシステムは、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を無害化するシステムであって、前記汚染土壌を粉砕する粉砕装置と、前記粉砕装置により粉砕した前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する加熱処理装置と、を備えることを特徴とする。なお、本発明に係るシステムは、前記粉砕装置により粉砕する前記汚染土壌を乾燥する乾燥装置をさらに備えることとしてもよいし、前記粉砕装置により粉砕する前記汚染土壌に含まれる夾雑物を除去する夾雑物除去装置をさらに備えることとしてもよいし、前記加熱処理装置により加熱処理した前記汚染土壌を急冷する急冷装置をさらに備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化することができる新たな技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記知見に基づき完成した本発明を実施するための形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。
【0010】
==本発明に係るシステム==
上述のように、ダイオキシン類(例えば、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーポリ塩化ビフェニル(co-PCB)など)で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、汚染土壌を粉砕・微粉化することにより、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化できることが明らかになった。従って、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する加熱処理装置に、加熱処理する汚染土壌を粉砕する粉砕手段を設けた装置、及び、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する加熱処理装置と、加熱処理する汚染土壌を粉砕する粉砕装置とを組み合わせたシステムは、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化するのに有用である。前記粉砕手段や粉砕装置は、汚染土壌を粉砕・微粉化する粉砕機(例えば、ボールミル、タワーミル等のミル機、ミキサー機など)である。
【0011】
以下、本実施の一形態として、粉砕装置と加熱処理装置とを備えるシステムについて説明する。図1は、汚染土壌に含まれるダイオキシン類を無害化するシステムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本発明に係るシステム100は、夾雑物の除去装置10、乾燥装置20、粉砕装置30、加熱処理装置40などを備える。
【0012】
夾雑物の除去装置10は、現場から採取したダイオキシン類汚染土壌における夾雑物(例えば、プラスチックゴミなど)を除去する装置である。夾雑物の除去装置10としては、例えば、スケルトンバケット、振動スクリーン等の篩機、磁選機などの既存の装置を用いることができる。
【0013】
乾燥装置20は、夾雑物の除去装置10により夾雑物が除去された汚染土壌を乾燥することにより、汚染土壌に含まれる水分を除去する装置である。乾燥装置20は、例えば、自然乾燥により汚染土壌を乾燥する装置であってもよいし、熱により汚染土壌を乾燥する装置であってもよいし、生石灰などの脱水剤により汚染土壌の水分を除去して乾燥する装置であってもよい。
【0014】
粉砕装置30は、乾燥装置20により乾燥した汚染土壌を粉砕・微粉化するものであれば特に制限されるものではないが、汚染土壌を数μm〜数十μmの平均粒径以下に粉砕・微粉化することができる装置を用いることが好ましい。このように汚染土壌を粉砕してより微粉化することにより、加熱処理装置40で汚染土壌におけるダイオキシン類をより効率よく無害化することができるようになる。
【0015】
加熱処理装置40は、粉砕装置30により粉砕・微粉化した汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する装置である。加熱処理装置40は、例えば、燃焼炉、焼却炉、加熱炉、電気炉、加熱攪拌機(例えば、加熱ミキサー等)などの公知の加熱装置を用いることができる。
【0016】
以上のように、粉砕装置30と加熱処理装置40とを備えるシステム100に夾雑物の除去装置10をさらに備えることにより、燃焼によってダイオキシン類を生成させる、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビリデン(PVDC)等の塩素を含むプラスチックなどのゴミを汚染土壌から除去することができるようになる。
【0017】
また、粉砕装置30と加熱処理装置40とを備えるシステム100に乾燥装置20をさらに備えることにより、汚染土壌に含まれる水分を除去することができるので、粉砕装置30及び加熱処理装置40による各処理を効率よく行うことができるようになる。
【0018】
なお、本実施の形態において、上述の加熱処理装置40は、加熱処理した汚染土壌を冷却する機能を備える装置であってもよい。このように冷却する機能を備える加熱処理装置40を用いることにより、汚染土壌を加熱処理した後に急冷することができるので、ダイオキシン類の再合成を抑制することができるようになる。なお、上述の冷却する機能を備えた加熱処理装置の代わりに冷却する機能を備えていない加熱処理装置を用いる場合には、システム100に加熱処理した汚染土壌を冷却する冷却装置をさらに設けることとしてもよい。冷却装置としては、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、水冷式冷却装置などの既存の装置を用いることができる。
【0019】
==本発明に係る方法==
次に、本実施の一形態として、汚染土壌に含まれるダイオキシン類の無害化方法について説明する。
【0020】
まず、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を現場から採取し、汚染土壌中の夾雑物(例えば、プラスチックゴミなど)を除去する。次に、夾雑物を除去した汚染土壌を加熱乾燥又は自然乾燥により乾燥する。その後、乾燥した汚染土壌を上述の粉砕装置30により粉砕・微粉化し、加熱処理装置40により酸素を含むガス(例えば、100%の酸素ガス、空気など)中で加熱処理する。
【0021】
以上のように、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、あらかじめ汚染土壌を粉砕・微粉化することにより、汚染土壌におけるダイオキシン類を効率よく無害化することが可能となる。さらに、汚染土壌から夾雑物を除去することにより、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビリデン(PVDC)等の塩素を含むプラスチックなどのゴミを除去できるので、これらのゴミの燃焼によるダイオキシン類の生成を防止することが可能となる。また、石や鉄屑なども除去できるので、これらの夾雑物による機器の損傷を未然に防止することができるようになる。
【0022】
また、汚染土壌を乾燥させることにより、汚染土壌に含まれる水分をほとんど除去することができるので、粉砕処理や加熱処理を粉砕装置30や加熱処理装置40によって効率的に行うことができるようになる。
【0023】
なお、上述の粉砕装置30を用いて汚染土壌を粉砕・微粉化する場合には、汚染土壌にあらかじめ滑剤を添加しておくことが好ましい。これにより、タワーミル、ボールミルなどの粉砕装置30による粉砕・微粉化を効率よく行うことができるからである。
【0024】
ここで、前記滑剤としては、例えば、金属石けん系滑剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等のC10以上のステアリン酸金属塩など)、脂肪族炭化水素系滑剤(例えば、C16以上の流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックスなど)、高級脂肪族系アルコール・高級脂肪酸系滑剤(例えば、牛脂、魚油等の動物油、あるいは、ヤシ油、大豆油、ナタネ油、米ぬかワックス等の植物油から分離精製したC16以上の高級脂肪族アルコールや高級脂肪酸など)、脂肪酸アマイド系滑剤(例えば、C16以上の高級脂肪酸のアマイド及びビスアマイドなど)、脂肪酸エステル系滑剤(例えば、一価アルコールの高級脂肪酸エステル、多価アルコールの高級脂肪酸(部分)エステルなど)、脂肪アミン(例えば、脂肪酸の1級アミンなど)等の既存の滑剤を、あるいは2以上組み合わせたものを用いることができるが、酸素を含むガス中において汚染土壌を低温(400℃以下)で加熱処理した際に燃焼することができる滑剤、例えば、ステアリン酸カルシウム、第1級アミンなどを用いることが好ましい。このように、低温(400℃以下)で燃焼することができる滑剤を用いることにより、低温で加熱処理した際に燃焼して除去できるばかりではなく、滑剤の燃焼により加熱処理温度を高めることができ、低エネルギーで汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化することができるようになる。
【0025】
また、本実施の形態においては、汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、前記加熱処理の加熱温度で燃焼する燃焼物を汚染土壌にあらかじめ添加することが好ましい。このように汚染土壌に燃焼物を添加することにより、燃焼物の燃焼によって加熱処理温度を高めることができ、低エネルギーで汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化することが可能となる。
【0026】
前記燃焼物としては、酸素を含むガス中で加熱処理することにより燃焼するものであれば特に制限されるものではないが、木炭(発火点:320〜400℃)、泥炭(発火点:225〜280℃)、木材・オガクズ(発火点:400〜470℃)、無煙炭(440〜500℃)、コークス(440〜600℃)、デンプン(380℃)、ゴム(発火点:350℃)、砂糖(発火点:350℃)などの低温で燃焼することができる燃焼物を用いることが好ましい。このように、低温で燃焼することができる燃焼物を用いることにより、より低エネルギーで汚染土壌に含まれるダイオキシン類を効率よく無害化することができるようになる。また、ダイオキシン類を吸着できると考えられる木炭や泥炭などを用いることにより、汚染土壌に含まれるダイオキシン類をより効率よく無害化できると考えられる。なお、燃焼物の添加タイミングとしては、汚染土壌を加熱処理する前であれば特に制限されない。
【0027】
さらに、本実施の形態においては、汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、ダイオキシン類の再合成を抑制する物質を添加することとしてもよいし、汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理した後に、加熱処理した汚染土壌を急冷することとしてもよい。これらの対応により、汚染土壌の加熱処理によるダイオキシン類の再合成を抑制することが可能となり、汚染土壌に含まれるダイオキシン類の無害化を効率よく行うことができるようになる。前記ダイオキシン類の再合成を抑制する物質としては、例えば、生石灰、消石灰、炭酸カルシウムなどの公知の物質を用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
[実施例1]
網目4.75 mmの篩を用いて、表1に示すような、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌(工場跡地の汚染土壌)に含まれる夾雑物を取り除いた後、汚染土壌の含水率が数%以下になるように70〜80℃の温度範囲で17時間乾燥した。それから、乾燥土20 kgをタワーミル(KM−5型:株式会社クボタ製)で30分間粉砕処理した(乾燥土を平均粒径数μm〜数十μmに粉砕)後、空気を吹付けながら400℃で60分間加熱処理し(表2中の処理例3〜5)、処理後の土壌に含まれるダイオキシン類の濃度(DXN濃度)を、ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル(環境庁水質保全局土壌農薬課,平成12年1月)に記載の方法に準じて測定した。なお、粉砕処理は、滑剤としてステアリン酸カルシウムを1重量%添加して行った。また、比較実験として、粉砕処理を行っていない乾燥土20 kgに空気を吹付けながら400℃で60分間加熱処理し(表2中の処理例1及び2)、処理後の土壌に含まれるダイオキシン類の濃度を測定した。
【0030】
[表1]

[表2]

【0031】
表2に示すように、400℃という低温で汚染土壌を空気中で加熱処理するより(表2中の処理例1及び2)、汚染土壌を粉砕した後、400℃という低温で汚染土壌を空気中で加熱処理する方(表2中の処理例3〜5)が、汚染土壌中のダイオキシン類を効率よく無害化できることが明らかになった。このことから、汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に汚染土壌をあらかじめ粉砕することにより、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を効率よく無害化できることが明らかになった。
【0032】
次に、ダイオキシン類の再合成反応を抑制することができる生石灰を用いることにより、処理後の土壌に含まれるダイオキシン類の濃度をさらに減少できるのではないかと考え、生石灰の添加によるダイオキシン類の濃度の変化を調べた。
【0033】
上述の乾燥土に2.5重量%の生石灰を混合し、この混合土20 kgを、上述と同様に、タワーミルで粉砕処理した後、空気中において400℃で60分間加熱処理し(表2中の処理例6〜10)、処理後土壌に含まれるダイオキシン類の濃度を測定した。また、粉砕処理を行っていない混合土20 kgを空気中において400℃で60分間加熱処理し(表2中の処理例11及び12)、処理後の土壌に含まれるダイオキシン類の濃度を測定した。
【0034】
その結果、表2に示すように、生石灰を汚染土壌に添加してもダイオキシン類の濃度がほとんど変化しないことが明らかになった。このことから、本実施例で用いた汚染土壌では再合成反応が生じないため、生石灰による効果が顕著に現れなかったのではないかと考えた。
【0035】
[実施例2]
本実施例では、表3に示すような、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌(河川底質の汚染土壌)を用いて実施例1と同様に乾燥させた乾燥土20 kg、又は、前記乾燥土に2.5若しくは5重量%の生石灰を混合することにより調製した混合土20kgを、タワーミルで45分間粉砕処理した後、空気を吹付けながら400℃で60分間加熱処理し、各処理を施した土壌に含まれるダイオキシン類の濃度(DXN濃度)を測定した。また、上記乾燥土に2.5重量%の生石灰を混合することにより調製した混合土20kgを粉砕することなく、空気を吹付けながら400℃で60分間加熱処理し、処理後の土壌に含まれるダイオキシン類の濃度を測定した。これらの結果を表4に示す。
【0036】
[表3]

[表4]

【0037】
表4に示すように、汚染土壌を粉砕した後、空気中において低温(400℃)で加熱処理するより(表4中の処理例1〜3)、生石灰を添加した汚染土壌を粉砕した後、空気中において低温で加熱処理する方(表4中の処理例4〜9)が、汚染土壌中のダイオキシン類をより効率よく無害化できることが明らかになった。また、生石灰を添加した汚染土壌を粉砕することなく、空気中において低温で加熱処理するより(表4中の処理例10〜12)、生石灰を添加した汚染土壌を粉砕した後、空気中において低温で加熱処理する方(表4中の処理例4〜6)が、汚染土壌中のダイオキシン類をより効率よく無害化できることが明らかになった。
【0038】
以上のことから、汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に汚染土壌をあらかじめ粉砕することにより、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を効率よく無害化することはできるが、本実施例で用いた汚染土壌のようにダイオキシン類の再合成反応が生じる場合には、生石灰などのダイオキシン類の再合成抑制剤を用いることがより効果的であることがわかった。
【0039】
[実施例3]
次に、汚染土壌の加熱処理時間によるダイオキシン類の濃度変化を調べるため、ダイオキシン類の濃度(DXN濃度)が1700 pg-TEQ/gである汚染土壌(焼却物、焼却灰などが混入された汚染土壌)を実施例1と同様に乾燥させ、乾燥土700 gを小型タワーミル(容量1L;NE−008T型:日本アイリッヒ製)で30分間粉砕処理した後、空気を吹付けながら400℃で30、60、又は120分間加熱処理し、各処理を施した土壌に含まれるダイオキシン類の濃度(DXN濃度)を測定した。なお、粉砕処理は、滑剤として脂肪アミン(ステアリルアミン;商品名ファーミン86T,花王株式会社製)を1重量%添加して行った。その結果を表5に示す。
【0040】
[表5]

【0041】
表5に示すように、加熱処理を120分間行ってもダイオキシン類の濃度は、加熱処理を60分間行ったものとほとんど変わらないことから、加熱処理時間を長くしてもダイオキシン類を効率的に無害化できるわけではないことが明らかになった。
【0042】
[実施例4]
上述の実施例において、タワーミル、ボールミル等の粉砕装置を用いて窒素ガス中で粉砕した汚染土壌を空気中に曝すことにより、摩擦熱によって150〜200℃ぐらいに上昇していた汚染土壌の温度が400℃以上にさらに上昇するという現象がみられた。そこで、本発明者らは、この現象が汚染土壌に含まれる燃焼物(特に低温で燃焼する燃焼物、例えば、炭素を含む有機物、泥炭など)の燃焼によるものではないかと考え、燃焼物の少ない砂に対して、オガクズ、微粉炭などの低温で燃焼する燃焼物を添加して粉砕処理を行い、これらの添加が処理後の砂の昇温に与える効果を調べた。
【0043】
表6に示すように、燃焼物の少ない目土砂のみ(サンプル1)、及び、前記目土砂に、粉砕した木炭(微粉炭)、広葉樹由来のオガクズなどの低温で燃焼する燃焼物を添加したもの(サンプル2〜5)をそれぞれ準備し、ボールミルS−100(レッチェ社製;粉砕容器500 ml,φ40 mmのボール×4個)を用いて、窒素ガス中で各サンプル200 gを350 rpm×1時間で粉砕した。粉砕後、粉砕容器ごと、150〜200℃に設定した保温容器(マントルヒーター GBR-20:大耕電器社製)に入れて粉砕容器内のボールを取り出し、スパテルで30秒間攪拌してサンプルを空気に曝した。その後、温度センサーをサンプルの表層から5 mmまで挿入し、3分間隔でサンプルの温度変化を測定した。なお、上述の微粉炭及びオガクズは80℃で、目土砂は90℃で、あらかじめ一晩乾燥したものをそれぞれ用いた。その結果を図2に示す。
【0044】
[表6]

【0045】
図2に示すように、目土砂のみ(サンプル1)では温度上昇がみられなかったが、目土砂に燃焼物を添加したもの(サンプル2〜5)においては温度上昇がみられ、5%の微粉炭や10%のオガクズを添加したものは15分後にそれぞれ300℃、400℃まで上昇し、10%の微粉炭や20%の微粉炭を添加したものは30分後にそれぞれ350℃、400℃まで上昇することが明らかになった。また、微粉炭の添加量に依存して、最高温度が高くなり、高温状態の持続時間が長くなることが明らかになった。
【0046】
以上のことから、土中に燃える物が存在することにより、上述の現象が生じるのではないかと考えられた。このことから、低温で燃える物を汚染土壌に添加することにより、低エネルギーで汚染土壌の温度を高めてダイオキシン類を無害化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態として説明する、汚染土壌に含まれるダイオキシン類の無害化システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例において、オガクズ、微粉炭などの低温で燃焼する燃焼物を砂に添加して粉砕した場合に、砂に与える影響を調べた結果を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 夾雑物の除去装置
20 乾燥装置
30 粉砕装置
40 加熱処理装置
100 システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理することにより前記汚染土壌における前記ダイオキシン類を無害化する方法において、
前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、あらかじめ前記汚染土壌を粉砕することを特徴とする汚染土壌におけるダイオキシン類の無害化方法。
【請求項2】
前記汚染土壌を粉砕する前に、前記汚染土壌に滑剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌におけるダイオキシン類の無害化方法。
【請求項3】
前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、前記汚染土壌に前記加熱処理の加熱温度で燃焼する燃焼物を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染土壌におけるダイオキシン類の無害化方法。
【請求項4】
前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する前に、ダイオキシン類の再合成を抑制する物質を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汚染土壌におけるダイオキシン類の無害化方法。
【請求項5】
前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理した後、急冷することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汚染土壌におけるダイオキシン類の無害化方法。
【請求項6】
ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する加熱処理装置において、
前記汚染土壌を粉砕する粉砕手段を備えることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項7】
加熱処理した前記汚染土壌を急冷する急冷手段をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の加熱処理装置。
【請求項8】
汚染土壌に含まれるダイオキシン類を無害化するシステムであって、
前記汚染土壌を粉砕する粉砕装置と、
前記粉砕装置により粉砕した前記汚染土壌を酸素を含むガス中で加熱処理する加熱処理装置と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
前記粉砕装置により粉砕する前記汚染土壌を乾燥する乾燥装置をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記粉砕装置により粉砕する前記汚染土壌に含まれる夾雑物を除去する夾雑物除去装置をさらに備えることを特徴とする請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記加熱処理装置により加熱処理した前記汚染土壌を急冷する急冷装置をさらに備えることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−301417(P2007−301417A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12743(P2006−12743)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000160784)株式会社クボタ建設 (8)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】