説明

汚染土壌の浄化方法

【課題】汚染土壌を汚染現場にて浄化でき、汚染土壌の飛散、運搬コスト、処理コストの問題を解消できる汚染土壌の浄化方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る汚染土壌の浄化方法は、PCBやダイオキシン類で汚染された汚染土壌100中の浄化対象部101に圧力波発生装置1の圧力波発生部(放電電極部6)を設置して圧力波を発生させた後、浄化対象部に酸104又はアルカリ105を加えてから水106を加え、その後、浄化対象部に酵素液107を加えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCBやダイオキシン類で汚染された汚染土壌を現場にて浄化可能な汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル又はポリクロロビフェニル)やダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン及びポリ塩化ジベンゾフラン)で汚染された汚染土壌を浄化する方法として、汚染土壌を加熱して浄化する加熱浄化装置を用いる方法が知られている(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−062168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した加熱浄化装置を用いた浄化方法では、汚染土壌を加熱浄化装置の設置場所まで運搬しなければならず、運搬中に汚染土壌が飛散したり、運搬コスト、処理コストがかかるなどの問題点があった。
本発明は、汚染土壌を汚染現場にて浄化でき、汚染土壌の飛散、運搬コスト、処理コストの問題を解消できる汚染土壌の浄化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る汚染土壌の浄化方法は、PCBやダイオキシン類で汚染された汚染土壌中の浄化対象部に圧力波発生装置の圧力波発生部を設置して圧力波を発生させた後、浄化対象部に酸又はアルカリを加えてから水を加え、その後、浄化対象部に酵素液を加えた。このようにすれば、圧力波によって汚染土壌中のPCBやダイオキシン類を覆っている珪藻の殻が破壊され、酸又はアルカリによって珪藻の殻が水ガラス状態となり、さらに、浄化対象部に水を加えることで、水ガラス状態の殻と水とが反応してNaとなって地中下方に移動し、PCBやダイオキシン類が元の位置に残る。その後、PCBやダイオキシン類が残った浄化対象部に酵素液を加えることで、酵素液の酵素がPCBやダイオキシン類を分解する。従って、本発明によれば、汚染土壌を汚染現場にて浄化でき、汚染土壌の飛散、運搬コスト、処理コストの問題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】汚染土壌の浄化方法の手順を示す図。
【図2】汚染土壌の浄化方法による汚染土壌中の様子を示す図。
【図3】酵素液の取り出し方法を示す図。
【図4】放電装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1;図2に基づいて汚染土壌の浄化方法を説明する。まず、図1(a)に示すように、PCBやダイオキシン類で汚染された汚染土壌100における浄化対象部101の汚染土壌100中に後述する放電装置1(圧力波発生装置)の放電電極部6(圧力波発生部)を設置し、放電電極部6で放電させる放電処理を行う(図1(a)参照)。この場合、一般的にPCBやダイオキシン類は地表から50cm程度の地中に滞留するので、放電電極部6を浄化対象部101の地表から50cm程度下の地中に設置することが好ましい。この放電により生じた圧力波によって、汚染土壌100中においてPCB100aやダイオキシン類100bを覆っている珪藻102の殻103(二酸化珪素(S))が壊れる(図2(a)参照)。次に、放電処理後の浄化対象部101に酸104又はアルカリ105を加える(図1(b)参照)。これにより、珪藻102の殻103が水ガラス状態となる(図2(b)参照)。酸104又はアルカリ105を加えた後の浄化対象部101にさらに水106を加える(図1(c)参照)。これにより、水ガラス状態の殻103と水106とが反応してNaとなって地中下方に移動し、PCB100aやダイオキシン類100bが元の位置に残る(図2(c)参照)。つまり、PCBやダイオキシン類は、水に溶けないので、珪藻の殻が除去された後のシルト粒子である化石状態の微小藻類有機質の脂質部に溶解して元の位置に残る。その後、PCBやダイオキシン類が残った浄化対象部101に酵素液107を加える(図1(d)参照)。この酵素液107中の酵素が浄化対象部101のPCBやダイオキシン類を破壊するので、汚染土壌100が浄化される(図2(d)参照)。
【0008】
上記酵素液107は例えば以下のように作成した。培養した菌を遠心分離器で遠心分離し、沈殿した菌を集菌する。遠心分離器で遠心分離することで、濃厚な菌群を得ることができる。そして、得られた菌群中に電極装置の放電電極部を設置して放電し、放電による圧力波で菌110の細胞膜111を破壊することにより、細胞膜111で覆われていた酵素108を含む酵素液107を取り出すことができる(図3参照)。菌は、例えばコーンスティープリカー(コーンスターチの絞り糟)を水で40倍に薄めて中性にしたものに菌を接種し、70℃で8時間培養した菌を用いた。菌としては、PCBやダイオキシン類を破壊する酵素を有した菌であればよく、例えば、御堂筋菌(GeoBacillus
midousuji(アメリカンタイプカルチャーコレクション)ATCC 55926、ATCC 202050)、御堂筋菌の遺伝子を入れた遺伝子組み換え菌などを用いることができる。
【0009】
図4に示すように、放電装置1は、電極装置2と、電源装置3と、電極装置2と電源装置3とを電気的に接続するための接続体30とを備える。
【0010】
電極装置2は、間隔維持手段6Aによって間隔(放電ギャップ)gを隔てて配置された正負の電極4;5からなる放電電極部6を備える。
【0011】
電極4;5は、電極構成体4A;5Aの一端により形成される。電極構成体4A;5Aは、例えば線径2mm〜3mm程度の銅線のような導体線の周囲がビニル樹脂などの樹脂で被覆された線径4mm〜5mm程度のいわゆる被覆線により形成され、この場合、電極4;5は、被覆線の一端において露出する導体線の一端により形成されることになる。一端が正の電極4となる電極構成体4Aの他端には正極端子4aが設けられ、一端が負の電極5となる電極構成体5Aの他端には負極端子5aが設けられる。
【0012】
直線状態の電極構成体4A;5Aの一端(電極4;5)側を直線状態から直角に折り曲げることにより、互いに直角関係なL字状の一端部を形成する。折り曲げられた部分4B;5B(以下、電極部という)の一端(電極4;5)同士が間隔gを隔てて配置され、間隔維持手段6Aによって当該間隔gが保持された正負の電極4;5からなる放電電極部6が形成される。間隔維持手段6Aは絶縁体により形成され、例えば、電極部4B;5Bにそれぞれ挟み付けられて取り付けられる挟着体6d;6dを両端に備え、互いに対向するように設けられた一対の挟着体6d;6d間の間隔bが間隔維持材6eにより維持された構成である。間隔維持手段6Aは、接着剤などで電極部4B;5Bに取り付けられて電極4;5が間隔gを隔てて対向するように電極部4B;5B同士を連結する図外の棒状絶縁体により構成してもよい。
【0013】
電源装置3は、昇圧装置12、パルスパワー出力装置13を備える。
昇圧装置12は、電源電圧入力部14A、図外の変圧器を備えた昇圧回路15、出力部14を備える。
昇圧回路15は、電源電圧入力部14Aに接続された電源ケーブル14C経由で例えば三相交流200V電源電圧を入力して例えば直流20kV〜50kVの電圧を生成し、生成した直流20kV〜50kVの電圧を出力部14より出力する。出力部14は、正極端子14aと負極端子14bとを備える。
【0014】
パルスパワー出力装置13は、入力端子16、充電回路17、出力部としての電極接続部18を備える。入力端子16は、正極端子16aと負極端子16bとを備える。電極接続部18は、正極端子18aと負極端子18bとを備える。充電回路17は、正極線17a、負極線17b、コンデンサ20、スイッチ21;22を備える。正極線17aには、スイッチ21とスイッチ22とが直列に接続される。正極線17aの一端が入力端子16の正極端子16aに接続され、正極線17aの他端が電極接続部18の正極端子18aに接続される。負極線17bの一端が入力端子16の負極端子16bに接続され、負極線17bの他端が電極接続部18の負極端子18bに接続される。コンデンサ20は、正極線17aにおけるスイッチ21とスイッチ22との間の接続点と負極線17bとに接続される。即ち、コンデンサ20は、正極線17a及び負極線17bに並列接続される。スイッチ21は昇圧装置12から供給された電圧をコンデンサ20に充電させるためのスイッチ、スイッチ22はコンデンサ20に充電された電荷を放電させて電極接続部18経由で電極装置2に出力させるためのスイッチである。図示しないが、充電回路17は接地(アース)されている。
【0015】
接続体30は、接続ケーブル31と、接続ケーブル31の一端に設けられた入力側コネクタ32と、接続ケーブル31の他端に設けられた出力側コネクタ33とを備える。入力側コネクタ32は、電源装置3の電極接続部18の正極端子18a及び負極端子18bの各々に接続される正極端子32a及び負極端子32bを備える。出力側コネクタ33は、電極構成体4Aの正極端子4aに接続される正極端子33a及び電極構成体5Aの負極端子5aに接続される負極端子33bを備える。
【0016】
次に、放電装置1の使用方法について説明する。接続体30の入力側コネクタ32と電源装置3の電極接続部18とを電気的に接続するとともに、接続体30の出力側コネクタ33と電極構成体4A;5Aとを電気的に接続する。電源装置3のスイッチ21、スイッチ22をともに非導通の状態としておいて、電源ケーブル14Cを介して電源装置3を交流200V電源に電気的に接続することで、電源ケーブル14Cを経由して昇圧装置12に交流200V電源が供給され、交流200Vが昇圧回路15で例えば直流20kV〜50kVに昇圧される。そして、スイッチ21を導通すると、コンデンサ20に電荷が蓄積される。コンデンサ20に電荷が蓄積された後に、スイッチ22を導通する。これにより電極装置2の放電電極部6の電極4;5に電圧が印加されて電極4;5間で放電を生じる。
【0017】
上記電極装置2の代わりに、図4に示す電極装置2Aを用いてもよい。当該電極装置2Aは、例えば、+電極のような一方電極としての棒状の内部導体73と、内部導体73の外周囲を被覆する筒状の絶縁体74と、絶縁体74の外周囲に設けられた−電極のような他方電極としての外部導体75とにより構成される。即ち、当該電極装置2Aは、内部導体73と絶縁体74と外部導体75とが同軸状に配置された構成の同軸電極である。外部導体75は、内部導体73の中心線に沿った方向に間隔を隔てて設けられた複数の浮遊電極76;76・・・を構成する。浮遊電極とは、電源側と電気的に絶縁された電極のことである。絶縁体74の先端74tより突出して露出する内部導体73の先端部73tとこの先端部73tに最も近い浮遊電極76の先端部76tとで放電を生じさせる先端側放電ギャップ77が形成され、互いに対向する浮遊電極76同士の端部76sと端部76sとで放電を生じさせる中間側放電ギャップ78が形成される。中間側放電ギャップ78は複数形成される。先端側放電ギャップ77、中間側放電ギャップ78が維持された内部導体73と複数の浮遊電極76とにより放電電極部6が形成される。
【0018】
実施形態によれば、汚染土壌を汚染現場にて浄化でき、汚染土壌の飛散、運搬コスト、処理コストの問題を解消できる。
【0019】
尚、上記では放電装置を用いたが、圧力波を発生させる装置であれば超音波装置などの他の圧力波発生装置を用いてもかまわない。
【符号の説明】
【0020】
1 放電装置(圧力波発生装置)、6 放電電極部(圧力波発生部)、
100 汚染土壌、101 浄化対象部、104 酸、105 アルカリ、106 水、107 酵素液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCBやダイオキシン類で汚染された汚染土壌中の浄化対象部に圧力波発生装置の圧力波発生部を設置して圧力波を発生させた後、浄化対象部に酸又はアルカリを加えてから水を加え、その後、浄化対象部に酵素液を加えたことを特徴とする汚染土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−125808(P2011−125808A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287822(P2009−287822)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502210600)株式会社マリウス (7)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【Fターム(参考)】