説明

汚染土壌の浄化方法

【課題】簡単かつ効率的な構成によって汚染土壌の浄化処理全体に掛かる時間、手間およびコストを低減することができる汚染土壌の浄化方法を提供する。
【解決手段】汚染土壌の浄化方法は、第1工程から第5工程で構成されている。第1工程は、汚染土壌PSを含む浄化対象領域CEを特定する。第2工程は、浄化対象領域CEの周囲に複数の揚水井戸101を造設する。第3工程は、汚染土壌PSに好気性微生物を加えながら撹拌する。第4工程は、散水管117と給水井戸118からなる給水設備を浄化対象領域CE内に造設する。第5工程は、汚染土壌PSを浄化する。この場合、揚水井戸101は、汚染地下水PWを汲み上げて地下水処理装置110に導入する。地下水処理装置110は、オゾンを用いて汚染地下水PWを化学分解処理するとともに溶存酸素量を増加させた高濃度酸素水DOWを生成する。給水ポンプ118は、高濃度酸素水DOWを浄化対象領域CEに給水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物で汚染された汚染土壌を好気性微生物の代謝によって浄化する汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トリクロロエチレン(TCE)、テトラクロエチレン(PCE)などの揮発性有機塩素化合物(VOC)やガソリンなどの石油系炭化水素によって汚染された地下土壌や地下水を浄化する方法の一つに生物分解処理(バイオレメディエーション)が知られている。生物分解処理は、有機物を酸素に基づく代謝によって分解する所謂好気性微生物(菌類や植物)を用いて汚染された地下土壌および地下水を浄化する浄化方法の一つである。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、汚染土壌の下層から汲み上げた地下水を用いて高濃度酸素水を生成するとともに、生成した高濃度酸素水を再び汚染土壌の下層に供給して同汚染土壌の下層から酸素を発生させることにより、汚染土壌中に存在する好気性微生物の代謝を活発化させて汚染土壌を浄化する汚染土壌の浄化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−216696号公報
【0005】
しかしながら、このような汚染土壌の浄化方法においては、汚染土壌よりも下層で地下水の層を探さなければならないとともに、この地下水の層に達する深さの揚水用の井戸(揚水井戸)および給水用の井戸(給水井戸)をそれぞれ施設しなければならず、汚染土壌の浄化のための準備、延いては汚染土壌の浄化処理全体に掛かる時間、手間およびコストが増大するという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、簡単かつ効率的な構成によって汚染土壌の浄化処理全体に掛かる時間、手間およびコストを低減することができる汚染土壌の浄化方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、有機物で汚染された汚染土壌を好気性微生物の代謝によって浄化する汚染土壌の浄化方法であって、汚染土壌を含む浄化対象領域から有機物で汚染された汚染地下水を汲み上げるために浄化対象領域の周囲に複数の揚水井戸を造設する揚水井戸造設工程と、揚水井戸から汚染地下水を汲み上げる揚水工程と、揚水工程で汲み上げた汚染地下水に含まれる有機物をオゾンで分解処理するとともに同分解処理によって生じた酸素により汚染地下水に含まれる酸素量を増加させて高濃度酸素水を生成する浄化工程と、浄化工程にて生成した高濃度酸素水を浄化対象領域に供給する給水工程とを含むことにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌を含む浄化対象領域の周囲に造設した揚水井戸から汚染地下水を汲み上げてオゾンで化学分解処理することにより汚染地下水を浄化するとともに溶存酸素量を増加させた高濃度酸素水を浄化対象領域に戻している。これにより、浄化対象領域内における汚染土壌中の好気性微生物の代謝を活発化することができ、生物分解処理を促進させることができる。すなわち、本発明に係る汚染土壌の浄化方法は、浄化対象領域における汚染土壌を生物分解処理する過程において汚染土壌中に地下水を循環させることにより、汚染物質を含む汚染地下水を化学分解処理で浄化しながら生物分解処理を促進させることができる高濃度酸素水を生成している。この結果、簡単かつ効率的な構成によって汚染土壌を浄化することができ、汚染土壌の浄化処理全体に掛かる時間、手間およびコストを低減することができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記染土壌の浄化方法において、さらに、揚水工程の前に、浄化対象領域に好気性微生物を加えて同浄化対象領域内における土壌を撹拌する土壌撹拌工程を含むことにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、汚染土壌の浄化方法は、浄化対象領域に好気性微生物を加えて同浄化対象領域内における土壌を撹拌する土壌撹拌工程を含んでいる。これによれば、浄化対象領域における汚染土壌中の好気性微生物が少ない場合や密度に偏りがある場合において汚染土壌中に十分な量の好気性微生物を均一に存在させることができ、汚染土壌に含まれる有機物を効率的かつ効果的に分解して汚染土壌を浄化することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記汚染土壌の浄化方法において、給水工程は、浄化対象領域における土壌上および同土壌内に高濃度酸素水を供給することにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、汚染土壌の浄化方法は、給水工程において浄化対象領域における土壌上および同土壌内に高濃度酸素水を供給している。これにより、浄化対象領域における土壌上または土壌中に高濃度酸素水を供給する場合に比べて汚染土壌を効率的かつ効果的に浄化することができる。なお、浄化対象領域に高濃度酸素水を供給する場合、好気性微生物は土壌中に生息しているため土壌上に供給するよりも直接土壌中に供給する方が汚染土壌を効率的かつ効果的に浄化することができる。この場合、土壌中に給水用の井戸(給水井戸)を設けることによって高濃度酸素水を効果的に土壌中に給水することができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記汚染土壌の浄化方法において、揚水工程は、浄化対象領域の周囲に造設した全ての揚水井戸の数より少ない数を単位として各単位ごとの揚水井戸から順番に汚染地下水を汲み上げることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、汚染土壌の浄化方法は、揚水工程において浄化対象領域の周囲に造設した全ての揚水井戸の数より少ない数を単位として各単位ごとの揚水井戸から順番に汚染地下水を汲み上げている。すなわち、浄化対象領域の周囲に造設した全ての揚水井戸から同時に汲み上げるのではなく、汚染地下水を汲み上げる揚水井戸をいくつかに分けて順番に汲み上げるようにしている。これにより、浄化対象領域内において地下水の水道(みずみち)が形成されることを防止することができ、汚染地下水が汲み上げられる場所の偏りをなくして浄化対象領域内から満遍なく汚染地下水を汲み上げることができる。なお、この場合、各揚水井戸から汲み上げられる汚染地下水の量や汲み上げ時間は、浄化対象領域内に地下水の水道(みずみち)が形成されない程度の量および時間であることは当然である。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記汚染土壌の浄化方法において、浄化工程は、オゾンの気泡直径が50μm以下のマイクロバブルであることにある。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、汚染土壌の浄化方法は、浄化工程においてオゾンの気泡直径が50μm以下のマイクロバブルを用いている。これにより、揚水井戸によって汲み上げた汚染地下水を効率的に浄化することができるとともに浄化した地下水における酸素濃度を効率的に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る汚染土壌の浄化方法の実施に用いる汚染土壌の浄化システムのシステム構成の概略を模式的に示した平面図である。
【図2】図1に示すA−A線から見た汚染土壌の浄化システムのシステム構成の概略を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明に係る汚染土壌の浄化方法の作業工程の流れを示した工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る汚染土壌の浄化方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る汚染土壌の浄化方法の実施に用いる汚染土壌の浄化システム100のシステム構成の概略を模式的に示した平面図である。また、図2は、図1に示すA−A線から見た汚染土壌の浄化システム100のシステム構成の概略を模式的に示した断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0019】
この汚染土壌の浄化システム100は、トリクロロエチレン(TCE)、テトラクロエチレン(PCE)、ジクロロエチレン(DCE)などの揮発性有機塩素化合物(VOC)やガソリンなどの石油系炭化水素によって汚染された地下土壌や地下水を生物分解処理(バイオレメディエーション)と化学分解処理とを用いて浄化するものである。ここで、生物分解処理とは、有機物を酸素に基づく代謝によって分解する所謂好気性微生物(菌類や植物)を用いて汚染された地下土壌および地下水を浄化するものである。また、化学分解処理とは、汚染された地下土壌および地下水に金属や各種薬品を添加することにより汚染物質を酸化・還元または触媒反応などの化学的な反応によって分解して浄化するものである。
【0020】
(汚染土壌の浄化システム100の構成)
汚染土壌の浄化システム100は、揚水井戸101を備えている。揚水井戸101は、揮発性有機塩素化合物や石油系炭化水素などの汚染物質によって汚染された汚染土壌PS内に含まれる汚染地下水PWを汲み上げるための井戸である。この揚水井戸101は、図1に示すように、汚染土壌PS内に含まれる汚染地下水PWを汚染土壌PSを含む浄化対象領域CEの外に漏らさない汲み上げ量、深さ、配置および数によって造設される。具体的には、揚水井戸101は、塩化ビニル製の揚水管102を浄化対象領域CEの周囲に埋設することにより構成されている。
【0021】
揚水管102は、主として、塩化ビニル製のパイプ体102aとステンレス製の網体102bとで構成されている。パイプ体102aは、汚染地下水PWを導入して地上に送るための筒状の部分であり、外周面に多数の図示しない貫通孔が形成されている。網体102bは、胴部102a内に土砂が侵入することを防止するためのフィルタであり、パイプ体102aの外周面における地中に埋設される部分に巻き付けられている。
【0022】
なお、本実施形態においては、浄化対象領域CEは縦の長さが約13m、横の長さ約5m×深さが約3mの範囲であり、この浄化対象領域CEに対して揚水管102は内径が約100mm、地中に埋設される長さが約5mに形成されている。そして、揚水管102は、平面視で長方形状の浄化対象領域CEにおける2つの長辺に沿って同各長辺の外側にそれぞれ3つずつ並んで埋設される。これにより、揚水井戸101は、本実施形態においては、長方形状の浄化対象領域CEにおける2つの長辺の各外側にそれぞれ3つずつ配置されるとともに浄化対象領域CEの深さより若干深い深さで造設される。
【0023】
これらの各揚水井戸101(揚水管102)は、それぞれ揚水配管103を介して井戸切替装置104に接続されている。井戸切替装置104は、ポンプ配管105を介して接続される1つの揚水ポンプ106に接続されており、この揚水ポンプ106に対して前記6つの揚水井戸101を選択的に順次切り替えて接続するための電磁弁からなる機械装置である。この井戸切替装置104は、予め設定された時間間隔ごとに6つの揚水井戸101を順次切り替えて揚水ポンプ106に接続する。この場合、予め設定された時間間隔とは、浄化対象領域CE内から汚染地下水PWを汲み上げる際に、浄化対象領域CE内に地下水の水道(みずみち)が形成されることを防止することができる時間間隔であり、浄化対象領域CE内外の地層(土壌)の状態および揚水井戸101からの単位時間当たりの汲み上げ量などに基づいて適宜設定される。
【0024】
揚水ポンプ106は、井戸切替装置104によって選択的に接続される1つの揚水井戸101を介して浄化対象領域CEの周囲の地層から汚染地下水PWを汲み上げるための機械装置である。この揚水ポンプ106の吐出口は、浄化槽配管107を介して地下水処理装置110に接続されている。
【0025】
地下水処理装置110は、浄化対象領域CEの周囲の地層から汲み上げた汚染地下水PWを浄化するとともに溶存酸素量を増加させた高酸素濃度水を生成するための処理槽であり、主として、浄化槽111と清水槽114とで構成されている。浄化槽111は、揚水ポンプ106によって汲み上げられた汚染地下水PWを最初に受け入れて浄化するための貯留部であり、図示左右方向中央部が仕切板111aによって仕切られたプール状に形成されている。
【0026】
仕切板111aは、浄化槽111内に導入される汚染地下水PWに含まれる油分が浄化槽111に隣接する清水槽114に流れることを防止するために浄化槽111の上部のみを仕切る板部材である。また、浄化槽111内における浄化槽配管107の吐出口側である上流側には、オゾン供給装置112が設けられている。オゾン供給装置112は、主としてオゾン発生器112a、マイクロバブル生成装置112bおよび水中ポンプ112cによって構成されている。オゾン発生器112aは、オゾンガスを連続的に生成する機械装置であり、浄化槽111の外側に隣接して設けられている。
【0027】
マイクロバブル生成装置112bは、オゾン発生装置112aで生成されたオゾンガスを取り込んで気泡直径が50μm以下の所謂マイクロバブル状のオゾンを噴射する機械装置であり、浄化槽111の底部近傍に設けられている。また、水中ポンプ112cは、マイクロバブル生成装置112bから噴射されたマイクロバブル状のオゾンを浄化槽111a内に拡散させるための水流を発生させる機械装置であり、浄化槽111内におけるマイクロバブル生成装置112bの近傍に設けられている。なお、図2においては、マイクロバブル生成装置112bから発生させたオゾンを点群で示している。
【0028】
一方、地下水処理装置110内の天井部分には、オゾン処理触媒113が設けられている。オゾン処理触媒113は、浄化槽111内から気中に放出されるオゾンガスを接触分解法により除去するためのものであり、シリカやアルミナなどの金属材料および金属酸化物によって構成されている。
【0029】
清水槽114は、浄化槽111内でオゾンにより化学分解処理されて汚染物質が除去された処理水の貯留部であり、浄化槽111と同様にプール状に形成されている。この清水槽114は、浄化槽111に対して図示右側に隣接配置されており、浄化槽111からオーバーフローした処理水が直接導かれるようになっている。この場合、浄化槽111からオーバーフローして清水槽114に導かれる処理水は、浄化槽111内におけるオゾンによる化学分解処理によって発生した酸素により溶存酸素量が増加した高濃度酸素水DOWとなっている。なお、図2においては、地下水処理装置110内における汚染地下水の浄化の程度をハッチングの濃さによって表している。
【0030】
また、清水槽114内には、給水ポンプ115が接続されている。給水ポンプ115は、清水槽114内に貯留された高濃度酸素水DOWを吸引して浄化対象領域CEに供給するための機械装置である。この給水ポンプ115は、地下水処理装置110の清水槽114に設置したフロータスイッチ115aを介して電源に接続される。これにより、給水ポンプ115は、清水槽114内に貯留される高濃度酸素水DOWの量に応じて作動が開始および停止する。
【0031】
また、この給水ポンプ115には、給水配管116を介して散水管117および給水井戸118がそれぞれ接続されている。散水管117は、浄化対象領域CE内の地表面に高濃度酸素水DOWを散水するための可撓性を有するゴム製のホースであり、外周面に高濃度酸素水DOWを散水するための散水孔が長手方向に沿って複数設けられている。この散水管117は、浄化対象領域CE内に満遍なく高濃度酸素水DOWを散水することができるように配置される。本実施形態においては、散水管117は、互いに平行に延びる2つの散水管117が浄化対象領域CEの長手方向に沿ってそれぞれ設けられている。
【0032】
給水井戸118は、給水ポンプ115によって送られる高濃度酸素水DOWを浄化対象領域CEの土壌中に注水供給するための井戸である。この給水井戸118は、図1に示すように、浄化対象領域CEの土壌中に満遍なく高濃度酸素水DOWを注水することができる給水量、深さ、配置および数によって造設される。具体的には、給水井戸118は、樹脂製の給水管120を浄化対象領域CE内に埋設することにより構成されている。
【0033】
給水管120は、樹脂製の胴部120aの両端部に筒状のジョイント部120bおよび挿込部120cがそれぞれ取り付けられて構成されている。胴部120aは、土壌中に高濃度酸素水DOWを注水するための筒状の部分であり、その外周面に多数の貫通孔が形成されて構成されている。また、ジョイント部120bは、給水ポンプ115から延びる給水配管116を接続するための樹脂製の接続部材である。また、挿込部120cは、胴部120aを地中に挿し込んでいくための樹脂製の部分であり、円錐状に尖って形成されている。
【0034】
なお、本実施形態おいては、前記浄化対象領域CEに対して給水管120は外径が約30mm、地中に埋設される長さが約2mに形成されている。そして、この給水管120は、浄化対象領域CEの幅方向に2列、浄化対象領域CEの長手方向に4列の合計8つ埋設される。この場合、各給水管120は、給水ポンプ115から延びて枝分かれた給水配管116にそれぞれ接続される。これにより、給水井戸118は、浄化対象領域CEの幅方向に2列、浄化対象領域CEの長手方向に4列の合計8つ配置されるとともに浄化対象領域CEの深さより若干浅い深さで造設される。
【0035】
なお、本実施形態においては、浄化対象領域CEの長手方向に沿って2列で配置される給水井戸118上にそれぞれ散水管117が配置されている。しかし、散水管117および給水井戸118は、それぞれ浄化対象領域CE上および浄化対象領域CEの土壌中に満遍なく高濃度酸素水DOWを供給することができる配置であればよく、必ずしも本実施形態で示した配置および位置関係である必要はない。
【0036】
(汚染土壌の浄化システム100の作動)
次に、上記のように構成した汚染土壌の浄化システム100の作動、すなわち、汚染土壌PSの浄化処理作業について説明する。まず、作業者は、第1工程にて、揮発性有機塩素化合物(VOC)や石油系炭化水素によって汚染された汚染土壌PSや汚染地下水を含む浄化対象領域CEを特定する。この場合、浄化対象領域CEとしては、工場跡地、廃棄物の処分地、給油所跡地および廃棄物の不法投棄地などがある。したがって、作業者は、これらの浄化対象となる土地から土壌サンプルを採取して汚染範囲を特定することにより浄化が必要な面積および深さからなる浄化対象領域CEを特定する。本実施形態においては、浄化対象領域CEは縦×横×深さが約13m×約5m×約3mの範囲に設定される。
【0037】
次に、作業者は、第2工程において、揚水井戸の造設工程を行う。この揚水井戸の造設工程は、前記特定した浄化対象領域CEの周囲に揚水井戸101を造設する作業である。したがって、作業者は、揚水井戸101を構成する揚水管102を用意した後、打込機を用いて浄化対象領域CEの周囲に揚水管102を打ち込むことにより揚水井戸101を造設する。この場合、揚水井戸101は、前記したように、浄化対象領域CEから汚染地下水が漏えいしない汲み上げ量、深さ、配置および数で造設される。本実施形態においては、揚水井戸101は、内径が約100mm、地中に埋設される長さが約5mの揚水管102が浄化対象領域CEにおける2つの長辺に沿って同各長辺の外側にそれぞれ3つずつ並んで打ち込まれて造設される。
【0038】
次いで、作業者は、揚水配管103、井戸切替装置104、ポンプ配管105、揚水ポンプ106、浄化槽配管107、地下水処理装置110および給水ポンプ115をそれぞれ用意する。そして、作業者は、揚水配管103を用いて揚水井戸101(揚水管102)と井戸切替装置104とを接続し、ポンプ配管105を用いて井戸切替装置104と揚水ポンプ106とを接続し、浄化槽配管107の一端を揚水ポンプ106に接続するとともに、地下水処理装置110の清水槽114に給水ポンプ115を接続する。この場合、揚水井戸101を構成する揚水管102と揚水配管103との接続においては、揚水配管103における揚水管102内に挿入される部分が可撓性のホースで構成されることにより、揚水管102内における揚水位置(吸込口の位置)を自由に変更できるように接続される。また、給水ポンプ115は、地下水処理装置110の清水槽114に設けられたフロートスイッチ115aを介して電源に接続される。これらにより、浄化対象領域CEの周囲から汚染地下水PWを汲み上げて地下水処理装置110に導入することが可能となる。
【0039】
次に、作業者は、第3工程において、浄化対象領域CE内の汚染土壌PSの撹拌工程を行なう。この汚染土壌PSの撹拌工程は、浄化対象領域CE内の汚染土壌PSに好気性微生物(有機物を酸素に基づく代謝によって分解する菌類や植物)を加えて撹拌することにより好気性微生物を汚染土壌PS中に略均一に分散させる作業である。具体的には、作業者は、液体を送るための図示しない送液ポンプ、貯水タンクおよび可撓性ホースをそれぞれ用意する。そして、作業者は、送液ポンプの吸水口を貯水タンクに接続するとともに送液ポンプの吐水口に可撓性ホースを接続する。また、作業者は、貯水タンクに浄化槽配管107の他端を接続する。
【0040】
次いで、作業者は、好気性微生物(図示せず)を用意した後、井戸切替装置104および揚水ポンプ106の作動をそれぞれ開始させることにより、浄化対象領域CEの周囲から汚染地下水PWを汲み上げて貯水タンク内に導入する。この場合、井戸切替装置104は、予め設定された時間間隔ごとに6つの揚水井戸101を順次切り替えて揚水ポンプ106に接続する。これにより、浄化対象領域CE内に地下水の水道(みずみち)が形成されることが防止される。
【0041】
次いで、作業者は、前記用意した好気性微生物を貯水タンク内に投入するとともに送液ポンプの作動を開始させる。これにより、送液ポンプに接続された可撓性ホースにおける他方の端部から好気性微生物が含まれた汚染地下水が吐出される。すなわち、送液ポンプに接続された可撓性ホースからは、好気性微生物とこの好気性微生物の栄養源となる有機物(汚染物質)を含むスラリー状の水が吐出される。
【0042】
したがって、作業者は、送液ポンプに接続された可撓性ホースにおける他方の端部から吐出される好気性微生物が含まれた汚染地下水を浄化対象領域CE上に給水しながらバックホーなどの掘削土木機を用いて浄化対象領域CE内の汚染土壌PSを撹拌する。これにより、作業者は、好気性微生物を汚染土壌PS中に均一に存在させることができる。なお、この場合、好気性微生物の栄養源となる有機物を好気性微生物とともに貯水タンク内に投入することにより、汚染土壌PSに加えた好気性微生物をより活性化することができる。
【0043】
そして、作業者は、この汚染土壌PSの撹拌作業が終了した場合には、井戸切替装置104、揚水ポンプ106および送液ポンプ115の各作動を停止させた後、浄化槽配管107の他端を貯水タンクから外して送液ポンプ、貯水タンクおよび可撓性ホースをそれぞれ撤去する。次いで、作業者は、浄化槽配管107の他端を地下水処理装置110の浄化槽111に接続する。これにより、揚水ポンプ106と地下水処理装置110とが浄化槽配管107を介して接続される。
【0044】
次に、作業者は、第4工程において、給水設備の造設工程を行う。この給水設備の造設工程は、浄化対象領域CE内における汚染土壌PS上および同汚染土壌PS内に高濃度酸素水DOWを供給する設備である散水管117および給水井戸118をそれぞれ造設する作業である。具体的には、作業者は、給水井戸118を構成する給水管120を用意した後、打込機を用いて浄化対象領域CE内に給水管120を打ち込むことにより給水井戸118を造設する。この場合、給水管120は、胴部120aに鋼管製のカバーが設けられて補強された状態で浄化対象領域CE内に打ち込まれた後、この鋼管製のカバーのみ地中から抜き取られる。そして、この給水井戸118は、浄化対象領域CEの土壌中に満遍なく高濃度酸素水DOWを給水することができる給水量、深さ、配置および数によって造設される。本実施形態においては、給水井戸120は、外径が約30mm、地中に埋設される長さが約2mの給水管120を浄化対象領域CEの幅方向に2列、浄化対象領域CEの長手方向に4列の合計8つ打ち込んで造設される。
【0045】
次いで、作業者は、散水管117を用意して同散水管117を浄化対象領域CE内の知表面に配置する。具体的には、作業者は、浄化対象領域CE内において長手方向に2列で造設した給水井戸120上に散水管117をそれぞれ配置する。次いで、作業者は、給水配管116を用意して給水ポンプ115に対して散水管117および給水井戸118(給水管120)をそれぞれ接続する。これにより、汚染土壌の浄化システム100の設置作業が完了する。
【0046】
次に、作業者は、第5工程において、浄化対象領域CE内における汚染土壌PSの浄化作業を行う。具体的には、作業者は、井戸切替装置104および揚水ポンプ106の作動をそれぞれ開始させる。これにより、浄化対象領域CE内における汚染土壌PS内に含まれる汚染地下水PWが揚水井戸101から汲み上げられて地下水処理装置110の浄化槽111内に導かれる。この場合、井戸切替装置104は、予め設定された時間間隔ごとに6つの揚水井戸101を順次切り替えて揚水ポンプ106に接続することにより、浄化対象領域CE内に地下水の水道(みずみち)が形成されることを防止する。この第5工程における汚染地下水PWの汲み上げ工程が、本発明に係る揚水工程に相当する。
【0047】
次に、作業者は、地下水処理装置110に付属して設けたオゾン供給装置112および給水ポンプ115の作動をそれぞれ開始させる。この場合、作業者は、浄化槽111内に設置したマイクロバブル生成装置112bおよび水中ポンプ112cが汚染地下水PWによって水没した状態においてオゾン発生器112a、マイクロバブル生成装置112bおよび水中ポンプ112cの作動をそれぞれ開始させる。これにより、地下水処理装置110の浄化槽111内においては、マイクロバブル生成装置112bからマイクロバブル状のオゾンが噴射されるとともに水中ポンプ112cによって拡散されるため、このオゾンによって汚染地下水PWに含まれる汚染物質(VOCや油分)が酸化分解される。この結果、浄化槽111内に貯留された汚染地下水PWは、汚染物質の濃度が減少するとともにオゾンの分解生成物である酸素の量が増大した高濃度酸素水DOWとなって浄化槽111内の下流側に移動する。
【0048】
そして、浄化槽111内の下流側に移動した高濃度酸素水DOWは、浄化槽111からオーバーフローして清水槽114に導かれる。また、この汚染地下水PWの処理過程においては、汚染地下水PWに溶解しきれず気中に放出されたオゾンガスが浄化槽111の天井に設けられたオゾン処理触媒113によって接触分解法により除去される。
【0049】
一方、給水ポンプ115は、清水槽114内に設けたフロートスイッチ115aがONになるまで作動を開始しない。したがって、清水槽114に導かれた高濃度酸素水DOWは、清水槽114内に設けられたフロートスイッチ115aがONになるまでの間貯留されて高濃度酸素水DOW内に含まれる残存オゾンにより引き続き汚染物質を含む有機物の酸化分解が行なわれる。すなわち、これらの浄化槽111および清水槽114内において、汚染地下水PWに含まれる汚染物質が除去されるとともに溶存酸素量が増大した高濃度酸素水DOWが生成される。この場合、本発明者の実験によれば、本実施形態においては、高濃度酸素水DOWにおける溶存酸素濃度は約20ppm(20mg/L)となる。そして、この第5工程における汚染地下水PWをオゾンで浄化(酸化分解)して高濃度酸素水DOWを生成する工程が、本発明に係る浄化工程に相当する。
【0050】
浄化槽111内の高濃度酸素水DOWが清水槽114内に導かれて所定量に達した場合には、清水槽114内のフロートスイッチ115aがONになる。これにより、給水ポンプ115が起動して作動を開始するため、清水槽114に貯留された高濃度酸素水DOWが給水配管116を介して散水管117および給水井戸118にそれぞれ導かれる。この場合、散水管117に導かれた高濃度酸素水DOWは、浄化対象領域CE内における汚染土壌PS上に散水された後、同汚染土壌PS内に浸透する(図2において破線矢印参照)。一方、給水井戸118に導かれた高濃度酸素水DOWは、給水管120を介して浄化対象領域CE内における汚染土壌PS内に直接注水される(図2において破線矢印参照)。この第5工程における高濃度酸素水DOWの汚染土壌PSへの給水工程が、本発明に係る給水工程に相当する。
【0051】
この清水槽114からの高濃度酸素水DOWの供給は、清水槽114内のフロートスイッチ115aのON・OFFによって断続的に行なわれる。すなわち、清水槽114内の高濃度酸素水DOWの量が所定の下限量に達した場合には、フロートスイッチ115aのOFFにより給水ポンプ115の作動が停止して高濃度酸素水DOWの供給が停止する。これにより、清水槽114内における高濃度酸素水DOW中の残存オゾンの酸化分解および高濃度酸素水DOWの生成と供給のバランスが調整されている。
【0052】
一方、浄化対象領域CE内の汚染土壌PSにおいては、浄化対象領域CE内への高濃度酸素水DOWの給水により高濃度酸素水DOW内に含まれる酸素によって汚染土壌PS内に存在する好気性微生物の代謝が活発化する。これにより、浄化対象領域CE内における汚染物質の酸化分解が促進されるため、汚染土壌PSが急速に浄化される。また、この場合、浄化対象領域CEの周囲に設けられた6つの揚水井戸101は、井戸切替装置104によって連続的に選択された1つの揚水井戸101が浄化対象領域CEの周囲の土中から汚染地下水PWを汲み上げる。
【0053】
このため、浄化対象領域CEに供給された高濃度酸素水DOWは、汚染土壌PS内を揚水井戸101に向って吸引されて汚染土壌PS内を移動する間に溶存酸素量が減少するとともに汚染物質の溶存量が増大する(図2において破線矢印参照)。これにより、汚染土壌PS内に含まれる汚染物質が減少するとともに同汚染物質を含む汚染地下水PWが揚水井戸101を介して地下水処理装置110に導かれる。すなわち、浄化対象領域CE内の汚染土壌PSは、同汚染土壌PS内に含まれる汚染物質が生物分解処理(バイオレメディエーション)および化学分解処理によって分解処理されて浄化される。
【0054】
このような汚染地下水PWの揚水、汚染地下水のオゾンガスによる酸化分解、高濃度酸素水DOWの生成、高濃度酸素水DOWの給水および汚染土壌PS中の好気性微生物による酸化分解の活性化のサイクル、すなわち、汚染土壌PSと地下水処理装置110と間の地下水の循環によって浄化対象領域CE内の汚染土壌PSは次第に浄化される。そして、この汚染地下水PWの揚水から好気性微生物による酸化分解の活性化までのサイクル(汚染地下水の循環)を行う時間は、浄化対象領域CEにおける汚染土壌PSの量や汚染の程度によって適宜決定される。例えば、本発明者らによる実験によれば、本実施形態においては、汚染土壌中のVOC濃度が0.08mg/Lから0.005mg/Lまでに低下させるのに約7週間の時間を要した。
【0055】
したがって、作業者は、汚染土壌PSの浄化処理作業の過程において定期的に浄化対象領域CEから土壌を採取して汚染物質の濃度および好気性微生物の量をそれぞれ測定する。そして、作業者は、採取した土壌中の汚染物質濃度が所定の基準値以下となるまでの間、前記汚染地下水PWの循環からなる浄化処理工程を続行する。この間、作業者は、汚染土壌PS中における好気性微生物の量が少なくなった場合には、地下水処理装置110の清水槽114内に好気性微生物を添加することにより、汚染土壌PS中に好気性微生物を補充する。また、汲み上げる汚染地下水PWの揚水量が変化した場合には、揚水管102内における揚水配管103の吸込口の位置、すなわち、揚水位置を最適な位置に調整する。一方、作業者は、前記採取した土壌中の汚染物質濃度が所定の基準値以下となった場合には、井戸切替装置104、揚水ポンプ106、オゾン供給装置112および給水ポンプ115の作動をそれぞれ停止させてこの浄化処理工程を停止する。そして、作業者は、浄化対象領域CEから土壌浄化システム100を撤去して汚染土壌PSの浄化処理作業を終了する。
【0056】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、汚染土壌の浄化システム100による汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌PSを含む浄化対象領域CEの周囲に施設した揚水井戸101から汚染地下水PWを汲み上げてオゾンで化学分解処理することにより汚染地下水PWを浄化するとともに溶存酸素量を増加させた高濃度酸素水DOWを浄化対象領域CEに戻している。これにより、浄化対象領域CE内における汚染土壌PS中の好気性微生物の代謝を活発化することができ、生物分解処理を促進させることができる。すなわち、本発明に係る汚染土壌の浄化方法は、浄化対象領域CEにおける汚染土壌PSを生物分解処理する過程において汚染土壌PS中に地下水を循環させることにより、汚染物質を含む汚染地下水PWを化学分解処理で浄化しながら生物分解処理を促進させることができる高濃度酸素水DOWを生成している。この結果、簡単かつ効率的な構成によって汚染土壌PSを浄化することができ、汚染土壌PSの浄化処理全体に掛かる時間、手間およびコストを低減することができる。
【0057】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態においては、汚染土壌PSの浄化処理作業における第3工程において、浄化対象領域CE内の汚染土壌PSの撹拌工程を行なった。しかし、汚染土壌PS中に汚染物質の生物分解処理が可能な十分な量の好気性微生物が既に存在している場合には、この第3工程をスキップしてもよいし、汚染土壌PSの撹拌のみを行なうようにしてもよい。
【0059】
また、この第3工程においては、浄化対象領域CEの周囲から汲み上げた汚染地下水PWに好気性微生物を添加して汚染土壌PSに戻した。しかし、好気性微生物を添加する水は必ずしも汚染地下水PWである必要はなく、浄化対象領域外の土中、河川および上水道から取得した所謂清水に好気性微生物を添加して汚染土壌PSに供給するようにしてもよい。この場合、清水中で好気性微生物が活動し易くなるように清水中に溶存している殺菌成分(例えば、カルキ)を除去するとともに好気性微生物の栄養源(有機物)を好気性微生物とともに清水に添加するとよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、揚水井戸101から汚染地下水PWを汲み上げる際、井戸切替装置104を用いて予め設定された時間間隔ごとに6つの揚水井戸101を順次切り替えて揚水ポンプ106に接続することにより、1つの揚水井戸101から汚染地下水を汲み上げるように構成した。これは、浄化対象領域CE内に地下水の水道(みずみち)が形成されることを防止することにより、浄化対象領域CE内から満遍なく汚染地下水PWを汲み上げるためである。したがって、浄化対象領域CE内から満遍なく汚染地下水PWを汲み上げることができれば、必ずしも、1つの揚水井戸101から汚染地下水PWを汲み上げある必要はなく、2本以上の揚水井戸101から汚染地下水PWを汲み上げるようにしてもよい。この場合、2本以上の揚水井戸101は、浄化対象領域CE内の汚染土壌PSの状況に応じて互いに隣接する揚水井戸101であってもよいし、互いに1つ以上の揚水井戸101を介した揚水井戸101であってもよい。すなわち、揚水井戸101による揚水工程は、浄化対象領域CEの周囲に施設した全ての揚水井戸101の数より少ない数を単位として各単位ごとの揚水井戸101から順番に汚染地下水PWを揚水するようにすればよい。また、浄化対象領域CE内に地下水の水道(みずみち)が形成される心配がない場合や、地下水の水道が形成されても良い場合(汚染土壌PSの浄化効果に影響を及ぼさない場合)には、浄化対象領域CEの周囲に造設した全ての揚水井戸101から同時に汚染地下水を汲み上げるようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、汚染土壌PSの浄化処理作業における第4工程において、散水管117および給水井戸118をそれぞれ造設した。しかし、散水管117および給水井戸118からなる給水設備は、浄化対象領域CEに高濃度酸素水DOWを満遍なく給水することができれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第4工程で造設する給水設備として、散水管117および給水井戸118のどちらか一方であってもよい。なお、この場合、好気性微生物は土壌中に生息しているため土壌上に供給するよりも直接土壌中に供給する給水井戸118の方が汚染土壌を効率的かつ効果的に浄化することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、オゾン供給装置112は、マイクロバブル生成装置112bにより気泡直径が約50μm以下の所謂マイクロバブルを噴射するように構成されている。しかし、オゾン供給装置112は、汚染地下水PW中に含まれる汚染物質を化学分解処理できるオゾンを発生させるものであれば、どのような大きさおよび形態のオゾンを発生させるものであってもよい。すなわち、オゾン供給装置112は、マイクロバブル生成装置112bを省略して直接浄化槽111内にオゾンガスを供給することもできる。また、水中ポンプ112cも浄化槽111内におけるオゾンガスを十分に拡散できるもの、例えば撹拌扇などであってもよいし、オゾンガスの噴射のみでオゾンガスを十分に拡散できる場合などには省略することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、地下水処理装置110内にオゾン処理触媒113を設置した。このオゾン処理触媒113は、汚染地下水PWから気中に放出されたオゾンガスを除去できるものであればよく、必ずしも、接触分解法によるオゾンガスの除去でなくてもよい。この場合、オゾンガスを除去する方法としては、例えば、加熱分解法や活性炭吸着分解法を利用することができる。また、浄化槽111内に供給するオゾン量を調節することにより気中に放出されるオゾンガスの量を減じて敢えて除去の必要ない場合には、オゾンガスを除去する設備は省略することができる。
【符号の説明】
【0064】
CE…浄化対象領域、PS…汚染土壌、PW…汚染地下水、DOW…高濃度酸素水、
100…汚染土壌の浄化システム、101…揚水井戸、102…揚水管、102a…胴部、102b…網体、103…揚水配管、104…井戸切替装置、105…ポンプ配管、106…揚水ポンプ、107…浄化槽配管、
110…地下水処理装置、111…浄化槽、111a…仕切板、112…オゾン供給装置、112a…オゾン発生器、112b…マイクロバブル生成装置、112c…水中ポンプ、113…オゾン処理触媒、114…清水槽、115…給水ポンプ、115a…フロートスイッチ、116…給水配管、117…散水管、118…給水井戸、
120…給水管、120a…胴部、120b…ジョイント部、120c…挿込部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物で汚染された汚染土壌を好気性微生物の代謝によって浄化する汚染土壌の浄化方法であって、
前記汚染土壌を含む浄化対象領域から前記有機物で汚染された汚染地下水を汲み上げるために前記浄化対象領域の周囲に複数の揚水井戸を造設する揚水井戸造設工程と、
前記揚水井戸から前記汚染地下水を汲み上げる揚水工程と、
前記揚水工程で汲み上げた前記汚染地下水に含まれる前記有機物をオゾンで分解処理するとともに同分解処理によって生じた酸素により前記汚染地下水に含まれる酸素量を増加させて高濃度酸素水を生成する浄化工程と、
前記浄化工程にて生成した前記高濃度酸素水を前記浄化対象領域に供給する給水工程とを含むことを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
請求項1に記載した汚染土壌の浄化方法において、さらに、
前記揚水工程の前に、
前記浄化対象領域に前記好気性微生物を加えて同浄化対象領域内における土壌を撹拌する土壌撹拌工程を含むことを特徴する汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した汚染土壌の浄化方法において、
前記給水工程は、
前記浄化対象領域における土壌上および同土壌内に前記高濃度酸素水を供給することを特徴する汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した汚染土壌の浄化方法において、
前記揚水工程は、
前記浄化対象領域の周囲に造設した全ての前記揚水井戸の数より少ない数を単位として各単位ごとの前記揚水井戸から順番に前記汚染地下水を汲み上げることを特徴する汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した汚染土壌の浄化方法において、
前記浄化工程は、前記オゾンの気泡直径が50μm以下のマイクロバブルであることを特徴する汚染土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−17937(P2013−17937A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152238(P2011−152238)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(591168312)中村建設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】