説明

汚染土壌の浄化装置

【課題】土壌の性状を変えることなく、汚染土壌に含有される揮発性汚染物質を除去することができる汚染土壌の浄化装置を提供すること。
【解決手段】コンプレッサー8によって送風したガスをヒーター5によって加熱し、この加熱したガスを第一パイプ3の第一開口部31から密閉容器2内に送風する。また、ポンプ9によって第二パイプ4の第二開口部41から密閉容器2内のガスを吸引する。そして、加熱されたガスが汚染土壌Sを通過して第二パイプ4から吸引される。加熱されたガスが汚染土壌Sを通過する際、汚染土壌Sに含有される揮発性汚染物質は揮発して加熱されたガスと共に第二パイプ4から吸引されるので、汚染土壌Sから揮発性汚染物質が除去される。そして、ガスと共に吸引した揮発性汚染物質を活性炭タンク10によって吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性汚染物質を含有する汚染土壌の浄化装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、揮発性汚染物質による土壌汚染が問題となっている。例えば、揮発性汚染物質の一つであるトリクロロエチレンは、脱脂力が大きいために半導体の洗浄などに多用されてきた。このトリクロロエチレンは人の健康へ種々の悪影響を及ぼすことが分かり、その使用は減少している。しかし、工場等で誤って排出されたもの等が未だ土壌に混入している場合がある。これをそのまま放置しておくと、揮発性汚染物質はさらに土壌に浸透して地下水を汚染すること等が懸念される。
【0003】
このような汚染土壌の浄化方法として、特許第2589002号公報に記載の揮発性塩素化炭化水素系物質の除去方法が知られている。この除去方法は、揮発性塩素化炭化水素系物質が含まれた土壌に生石灰等の無機化合物を混合し、この無機化合物を土壌中の水分と反応させることで発熱させ、この発熱により土壌に含まれた揮発性塩素化炭化水素系物質を揮発させて土壌外へ放出するいわゆるホットソイル工法と呼ばれるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2589002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ホットソイル工法は土壌のpHをアルカリ性に変化させてしまう。土壌のpHがアルカリ性になると土壌に含まれる重金属類が土壌に溶出しやすくなり、好ましくない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、土壌の性状を変えることなく、汚染土壌に含有される揮発性汚染物質を除去することができる汚染土壌の浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る汚染土壌の浄化装置は、揮発性汚染物質を含有する汚染土壌の浄化装置であって、汚染土壌を格納する密閉容器と、密閉容器の内部に連通する第一の開口部を有する第一のパイプと、密閉容器の内部に連通し第一の開口部との間に汚染土壌を介する第二の開口部を有する第二のパイプと、第一のパイプ及び第二のパイプのいずれか一方のパイプから密閉容器内にガスを送風する送風手段と、送風手段により送風するガスを加熱するガス加熱手段と、第一のパイプ及び第二のパイプのいずれか他方のパイプから密閉容器内のガスを吸引する吸引手段と、吸引手段により吸引したガスに含まれる揮発性汚染物質を吸着する吸着手段とを備える。
【0008】
本発明によれば、加熱手段によって加熱されたガスが第一のパイプ及び第二のパイプのいずれか一方のパイプの開口部から密閉容器内に送風される。また、吸引手段によって他方のパイプの開口部から密閉容器内のガスが吸引される。そして、一方のパイプの開口部と他方のパイプの開口部との間には汚染土壌が介されているため、加熱されたガスは汚染土壌を通過して他方のパイプから吸引される。加熱されたガスが汚染土壌を通過する際、汚染土壌に含有される揮発性汚染物質は揮発して加熱されたガスと共に他方のパイプから吸引されるので、汚染土壌から揮発性汚染物質が除去される。そして、ガスと共に吸引された揮発性汚染物質は吸着手段によって吸着される。従って、土壌の性状を変えることなく、汚染土壌に含有される揮発性汚染物質を除去することができる。
【0009】
本発明において、密閉容器内において結露した液体を回収する回収手段を更に備えることが好ましい。加熱されたガスのエネルギーによって昇温、揮発した揮発性汚染物質は、密閉容器内に温度が低い場所があるとそこで結露するため、この場所が加熱されなければ密閉容器外に除去されにくい。そこで、結露した液体の回収手段を講じ、揮発性汚染物質を含む液体を回収することで、揮発した揮発性汚染物質が再度土壌に戻るのを防止することができる。
【0010】
また、密閉容器の天井面は、水平面に対して傾斜する傾斜面に形成されており、回収手段は、傾斜面の最下点の下方に配置されることが好ましい。密閉容器内は送風されたガスにより暖められるため、揮発した揮発性汚染物質を含むガスは天井面に結露し液体となるが、この液体は傾斜面を下方に伝い最下点に集められ、最下点の下方に配置された回収手段によって回収される。これにより、天井面に結露した液体を確実に回収することができる。
【0011】
さらに、密閉容器内のガスを冷却して結露させる冷却手段を更に備えることが好ましい。このような構成にすると、揮発した揮発性汚染物質を強制的に結露させることができるため、結露させたい任意の位置で揮発性汚染物質を結露させることが可能となり、密閉容器内での揮発性汚染物質の回収効率が向上する。
【0012】
本発明において、密閉容器に格納された汚染土壌と接触して汚染土壌を加熱する土壌加熱手段を更に備えることが好ましい。ガス(気体)の熱容量は小さいため、ガスによる土壌の加熱効率が低い。そこで、土壌加熱手段によって伝熱効率の高い直接加熱を行うことで、汚染土壌に含有される揮発性汚染物質がより揮発しやすくなる。
【0013】
また、第一のパイプ及び第二のパイプの少なくとも一方は、密閉容器に格納された汚染土壌内に配管されており、土壌加熱手段は、汚染土壌内に配管されたパイプに取り付けられた電熱線により汚染土壌を加熱することが好ましい。このような構成にすると、電熱線は汚染土壌を直接的に加熱すると共にパイプ内を流れるガスも加熱する。従って、当該パイプからガスが送風される場合には、密閉容器内に送風されるガスの温度はより高温になり、汚染土壌に含有される揮発性汚染物質が更に揮発しやすくなる。
【0014】
本発明において、ガス加熱手段は、密閉容器に格納された汚染土壌の温度以上かつ汚染土壌から除去する揮発性汚染物質の沸点以下にガスを加熱することが好ましい。このような構成にすると、エネルギーの消費を抑えつつ、揮発性汚染物質を揮発させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、土壌の性状を変えることなく、汚染土壌に含有される揮発性汚染物質を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【図2】トリクロロエチレン汚染土からのトリクロロエチレンの気化速度を溶出量の変化として示す線図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【図4】図3に示す浄化装置の変形例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【図7】実施例の試験結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る汚染土壌の浄化装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の第一実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【0019】
浄化装置100は、揮発性汚染物質を含有する汚染土壌から揮発性汚染物質を除去するための装置である。浄化装置100は、汚染土壌Sを格納するための密閉容器2を備えている。密閉容器2は中空直方体の容器であり、底面及び側面を成す本体部20及び本体部20の上部に着脱可能に気密に取り付けられて天井面を成す蓋21により構成されている。本体部20に蓋21をはめ込むことで、密閉容器2を密閉することが可能となっており、本体部20から蓋21を取り外すことで、本体部20の上方から汚染土壌Sの格納及び取り出しが可能となっている。密閉容器2は、後述する加熱されたガスの送風及び吸引の際に変形しない程度の強度を有する材質であり、例えば鋼板で形成されていることが好ましい。密閉容器2には、第一パイプ(第一のパイプ)3及び第二パイプ(第二のパイプ)4が接続されている。
【0020】
図1(a)に示すように、第一パイプ3は継手30を介してヒーター(ガス加熱手段)5と接続されている。第一パイプ3は、継手30から密閉容器2に向けて密閉容器2の外部で二方向に分岐している。二方向に分岐したパイプのうち一方のパイプは、密閉容器2の外部で上方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは密閉容器2の底面を貫通して汚染土壌S内に配管されており、各パイプは汚染土壌S内に上方を向いた第一開口部(第一の開口部)31を有している。第一開口部31は密閉容器2の内部と連通している。この各第一開口部31は、水平方向において広範に分散されている。密閉容器2の外部で二方向に分岐したパイプのうち他方のパイプは、密閉容器2の側面下方部を貫通して汚染土壌S内で水平方向に配管されており、密閉容器2の内部でさらに下方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは汚染土壌S内に下方を向いた第一開口部31を有している。この各第一開口部31は、水平方向において広範に分散されている。なお、第一開口部31には汚染土壌Sの侵入を防止する処理が施されており、例えば金網が張られていることが好ましい。
【0021】
ヒーター5には、風量計6及びバルブ7を介してコンプレッサー(送風手段)8が接続されている。コンプレッサー8は第一パイプ3から密閉容器2内に空気等のガスを送風し、ヒーター5はコンプレッサー8により送風するガスを加熱する。ここで、コンプレッサー8によるガスの送風が強すぎると送風されたガスによって汚染土壌Sに大きな亀裂が入り、送風されたガスの大部分が亀裂を通過して亀裂付近の汚染土壌しか浄化されないおそれがある。そこで、風量計6及びバルブ7を用いて密閉容器2内のガスの速度が所定の線速度以下となるように調節することが好ましい。この所定の線速度は土壌の種類や性状によって異なるが、例えば、含水比30%程度の細砂であれば2cm/sec程度である。
【0022】
第二パイプ4は継手40を介して活性炭タンク(吸着手段)9と接続されている。第二パイプ4は、継手40から密閉容器2に向けて密閉容器2の外部で二方向に分岐している。二方向に分岐したパイプのうち一方のパイプは、密閉容器2の外部で下方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは密閉容器2の天井面を貫通して、汚染土壌Sの上方、すなわち第一開口部31との間に汚染土壌Sを介する位置に下方を向いた第二開口部(第二の開口部)41を有している。第二開口部41は密閉容器2の内部と連通している。この各第二開口部41は、水平方向において広範に分散されている。密閉容器2の外部で二方向に分岐したパイプのうち他方のパイプは、密閉容器2の側面上部を貫通して汚染土壌S内にて水平方向に配管されており、密閉容器2の内部で上方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは、汚染土壌Sから突出して汚染土壌Sの上方に上方を向いた第二開口部41を有している。
【0023】
活性炭タンク9には、ポンプ(吸引手段)10が接続されている。ポンプ10は第二パイプ4から密閉容器2内のガスを吸引し、活性炭タンク9はポンプ10により吸引したガスに含まれる揮発性汚染物質を吸着する。
【0024】
ヒーター5は、継手30において第一パイプ3と容易に切断可能となっている。また、活性炭タンク9は、継手40において第二パイプ4と容易に切断可能となっている。そして、図1(b)に示すように、継手40を介してヒーター5と第二パイプ4とを接続し、継手30を介して活性炭タンク9と第一パイプ3とを接続することが可能となっている。
【0025】
次に、本実施形態に係る浄化装置100の作用及び効果について説明する。
【0026】
本発明によれば、図1(a)において、コンプレッサー8によって送風されたガスがヒーター5によって加熱され、この加熱されたガスが第一パイプ3の第一開口部31から密閉容器2内に送風される。また、ポンプ10によって第二パイプ4の第二開口部41から密閉容器2内のガスが吸引される。そして、第一パイプ3の第一開口部31と第二パイプ4の第二開口部41との間には汚染土壌Sが介されているので、加熱されたガスは汚染土壌Sを通過して第二パイプ4から吸引される。加熱されたガスが汚染土壌Sを通過する際、汚染土壌Sに含有される揮発性汚染物質は揮発して加熱されたガスと共に第二パイプ4から吸引されるので、汚染土壌Sから揮発性汚染物質が除去される。そして、ガスと共に吸引された揮発性汚染物質は活性炭タンク9によって吸着される。従って、土壌の性状を変えることなく、汚染土壌Sに含有される揮発性汚染物質を除去することができる。
【0027】
ここで、浄化開始後、途中で図1(b)のようにヒーター5及び活性炭タンク9の接続先を変え、密閉装置2内の加熱されたガスの流れを逆方向に切替えることが好ましい。ガス内の揮発性汚染物質の濃度が高くなると土壌に含有される揮発性汚染物質は揮発しにくくなるため、加熱されたガスの流れが常に同じ方向の場合、送風口付近の汚染土壌は良く浄化されるが吸引口付近の汚染土壌は浄化されないおそれがある。これに対し、汚染土壌内の揮発性汚染物質を均一に揮発させるために汚染土壌を攪拌することが知られているが(特許文献1参照)、大掛かりな攪拌手段を設ける必要がある。本実施形態のように、密閉装置2内の加熱されたガスの流れを逆方向に切替えることができるようにすると、大掛かりな攪拌手段を設けることなく、汚染土壌内の揮発性汚染物質を均一に揮発させることができる。
【0028】
また、浄化装置100の除去対象である揮発性汚染物質は、トリクロロエチレン、シス−1、2−ジクロロエチレン及びベンゼン等の水より飽和蒸気圧が大きいもの(すなわち同一温度で水より先に気化するもの)とすることが好ましい。このような揮発性汚染物質を除去対象とすることで、ヒーター5からガスを介して汚染土壌Sに付与されるエネルギーの大部分を揮発性汚染物質の揮発に用いることができ、水の蒸発に用いられることによるエネルギーの損失を少なくすることができる。また、水より飽和蒸気圧が大きい揮発汚染物質による土壌汚染は、近時の土壌汚染事例の約8割を占めることが知られている(平成20年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果、環境省水・大気環境局、平成22年3月、図25参照)。従って、このような揮発性汚染物質を浄化装置100の除去対象とすることで、近時の汚染土壌事例の大部分を効率的に浄化することができる。
【0029】
また、図2は、トリクロロエチレン汚染土からのトリクロロエチレンの気化速度を溶出量の変化として示す線図である。実線、一点鎖線及び二点鎖線はそれぞれ20℃、40℃及び60℃の開放された恒温槽内にトリクロロエチレンを含有した汚染土を格納し、一定時間後に溶出試験を実施した場合を示す。汚染土にはいずれの場合も当初60g当たり6.5mgのトリクロロエチレンが含まれ、溶出量は全てが溶出すれば計算上は10.8mg/Lとなるが、吸着等の影響で当初の溶出量は2.9mg/Lであった。恒温槽の温度はいずれもトリクロロエチレンの沸点87℃より低いが、トリクロロエチレンの溶出量は数時間で環境基準値以下まで低下している。従って、ヒーター5によるガスの加熱は汚染土壌Sの温度以上かつ汚染土壌Sから除去する揮発性汚染物質の沸点以下とすることで、エネルギーの消費を抑えつつ揮発性汚染物質を揮発させることができる。
【0030】
図3は、本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【0031】
本実施形態に係る浄化装置200が第一実施形態に係る浄化装置100と異なる点は、密閉容器2、第一パイプ3及び第二パイプ4に代えてそれぞれ密閉容器2A、第一パイプ3A及び第二パイプ4Aが備えられている点、樋(回収手段)11及び電熱線12が備えられている点である。
【0032】
密閉容器2Aが密閉容器2と異なる点は、蓋22が鋸歯状を成しており、その天井面が水平面に対して傾斜する複数の傾斜面23に形成されている点である。各傾斜面23の最下点の下方には、樋11が設けられている。樋11は上方に向けて開口した断面コ字状を成している。樋11は、蓋22の天井面で凝縮、結露したトリクロロエチレンや水分を回収するためのもので、例えば回収した液体を密閉容器2A内の一箇所で集め配管を通して密閉容器2Aの外部に設置されたタンク(図示しない)に貯める等、回収した液体を再度汚染土壌Sに戻さないように構成されている。
【0033】
第一パイプ3Aは、継手30から密閉容器2Aの側面下方部を貫通して汚染土壌S内で水平方向に配管されており、密閉容器2Aの内部で上方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは、汚染土壌S内に上方を向いた第一開口部31を有している。この各第一開口部31は、水平方向において広範に分散されている。第一パイプ3Aには、汚染土壌S内に配管された部分に電熱線12が取り付けられている。この電熱線12は汚染土壌Sと接触しており、通電加熱されることで汚染土壌Sを直接加熱する。電熱線12としては、例えば、ニクロム線を用いることができる。
【0034】
なお、図4は図3に示す浄化装置200の変形例を示す概略構成図である。第一パイプ3A及び電熱線12は、図4に示す第一パイプ3B及び電熱線13のような構成であっても良い。すなわち、第一パイプ3Bは、継手30から密閉容器2Aに向けて密閉容器2Aの外部で上方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは密閉容器2Aの底面を貫通して汚染土壌S内に鉛直に配管されており、汚染土壌S内に上方を向いた第一開口部31を有している。そして、第一パイプ3Bには、汚染土壌S内に配管された部分に電熱線13が取り付けられている。このような浄化装置300では、汚染土壌S内に配管された第一パイプ3Bが鉛直であるため、第一パイプ3Aが汚染土壌S内に水平方向に配管されている浄化装置200に比して汚染土壌Sの格納や取り出しが容易である。
【0035】
図3に戻り、第二パイプ4Aは、継手40から密閉容器2Aの側面上方部を貫通して、汚染土壌Sの上方に第二開口部41を有している。
【0036】
このような浄化装置200において、密閉容器2A内は送風されたガスと電熱線12による汚染土壌の直接加熱により暖められるため、揮発した揮発性汚染物質を含むガスは天井面に結露し液体となるが、この液体は傾斜面23を下方に伝い最下点に集められ、最下点の下方に配置された樋11によって回収される。従って、本実施形態に係る浄化装置200は、第一実施形態に係る浄化装置100が奏する効果に加え、天井面に結露した液体を確実に回収することができるという効果を奏する。
【0037】
また、浄化装置200では、電熱線12により汚染土壌Sが直接加熱される。従って、伝熱効率の高い直接加熱が行われ、汚染土壌Sに含有される揮発性汚染物質がより揮発しやすくなるという効果を奏する。このような効果は、汚染土壌Sが厚く加熱されたガスの送風のみでは揮発性汚染物質の揮発が不十分な場合に顕著となる。
【0038】
さらに、浄化装置200では、電熱線12が第一パイプ3A内を流れるガスを加熱する。従って、第一パイプ3Aから密閉容器2A内に送風されるガスの温度は第一実施形態に係る浄化装置100の場合より高温になり、汚染土壌Sに含有される揮発性汚染物質が更に揮発しやすくなるという効果を奏する。
【0039】
図5は、本発明の第三実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【0040】
本実施形態に係る浄化装置400が第一実施形態に係る浄化装置100と異なる点は、第一パイプ3及び第二パイプ4に代えてそれぞれ第一パイプ3Cおよび第二パイプ4Cが備えられている点、回収部(回収手段)14、冷却部(冷却手段)15、土壌加熱ヒーター(土壌加熱手段)16及びヒートポンプ17が備えられている点である。
【0041】
第一パイプ3Cは、継手30から密閉容器2に向けて密閉容器2の外部で上方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは密閉容器2の底面を貫通して汚染土壌S内に配管されており、汚染土壌S内に上方を向いた第一開口部31を有している。
【0042】
第二パイプ4Cは、継手40から密閉容器2に向けて密閉容器2の外部で下方に向けて複数の位置で分岐している。この複数の位置で分岐した各パイプは密閉容器2の天井面を貫通して汚染土壌Sの上方に第二開口部41を有している。
【0043】
土壌加熱ヒーター16は、汚染土壌S内であって第一開口部31の上方に設けられている。この土壌加熱ヒーター16はパイプによって構成されており、密閉容器2の外部に設置されているヒートポンプ17と接続されている。そして、ヒートポンプ17内の圧縮機で圧縮された高温の冷媒が土壌加熱ヒーター16内を循環し、土壌加熱ヒーター16が汚染土壌Sと接触して汚染土壌Sを加熱するようになっている。土壌加熱ヒーター16は、第一開口部31から送風されるガスの通気が妨げられない程度に汚染土壌S内に広範に配管されている。
【0044】
回収部14は汚染土壌Sの上方であって第二開口部41の下方に取り付けられている。回収部14は直方体を成す容器であり、上方に向けて開口している。回収部14の内部には冷却部15が取り付けられている。冷却部15はパイプによって構成されており、ヒートポンプ17と接続されている。そして、ヒートポンプ内の膨張弁で膨張された低温の冷媒が冷却部15内を循環し、冷却部15が密閉容器2内のガスを冷却して結露させるようになっている。また、回収部14によって、冷却部15によって結露された液体を貯めることが可能となっている。なお、回収部14は、冷却部15による冷却によって回収部14の底面にガスが結露しないように断熱材によって形成されていることが好ましい。
【0045】
このような浄化装置400では、揮発した揮発性汚染物質を冷却部15によって強制的に結露させることができる。このため、結露させたい任意の位置、すなわち回収部14の内部で揮発性汚染物質を結露させることが可能となる。従って、本実施形態に係る浄化装置400は、第一実施形態に係る浄化装置100が奏する効果に加え、密閉容器2内での揮発性汚染物質の回収効率が向上するという効果を奏する。
【0046】
また、浄化装置400では、土壌加熱ヒーター16により汚染土壌Sが直接加熱される。従って、伝熱効率の高い直接加熱が行われ、汚染土壌Sに含有される揮発性汚染物質がより揮発しやすくなるという効果を奏する。このような効果は、汚染土壌Sが厚く加熱されたガスの送風のみでは揮発性汚染物質の揮発が不十分な場合に顕著となる。
【0047】
図6は、本発明の第四実施形態に係る汚染土壌の浄化装置を示す概略構成図である。
【0048】
本実施形態に係る浄化装置500が第一実施形態に係る浄化装置100と異なる点は、密閉容器2、第一パイプ3及び第二パイプ4に代えてそれぞれ密閉容器2B、第一パイプ3D及び第二パイプ4Dが備えられている点である。
【0049】
密閉容器2Bは中空直方体を成している。密閉容器2Bは蓋21、本体部24及び土台25から構成されている。底面を成す土台25の上面に側面を成す本体部24が着脱可能な状態で気密に取り付けられており、さらに本体部24の上部に天井面を成す蓋21が着脱可能な状態で気密に取り付けられている。
【0050】
第一パイプ3Dは、継手30から密閉容器2Bに向けて二方向に分岐している。この二方向に分岐したパイプはそれぞれ本体部24の側面下方部であって互いに対向する位置を貫通しており、汚染土壌S内に第一開口部31を有している。
【0051】
第二パイプ4Dは、継手40から密閉容器2Bに向けて二方向に分岐している。この二方向に分岐したパイプはそれぞれ本体部24の側面上方部であって互いに対向する位置を貫通しており、汚染土壌Sの上方に第二開口部41を有している。
【0052】
このような浄化装置500では、密閉容器2Bから浄化された土壌を取出す際、本体部24を土台25から引き抜くと、土台25の上面に土壌が積載された状態となるが、土台25に第一パイプ3D及び第二パイプ4Dが取り付けられていないので、土台25の上面から土壌を容易に取出すことができる。これに対して、第一実施形態に係る浄化装置100のように土台からパイプが突出していると、本体部24を土台25から引き抜いてもパイプが邪魔となって土台25の上面から土壌を取り出し難い。また、第一実施形態に係る浄化装置100では、蓋21を取り外した本体部20を引っくり返すことで、密閉容器2から浄化された土壌を取り出すことはできるが、土壌が格納された本体部20を引っくり返すのは容易ではない。従って、本実施形態に係る浄化装置500は、第一実施形態に係る浄化装置100が奏する効果に加え、汚染土壌Sの取り出しが容易であるという効果を奏する。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態において、密閉容器2,2A,2Bは中空直方体ないしその天井面が変形したものであるが、中空円柱状の容器等、汚染物質を格納できる他のいかなる形状であっても良い。
【0054】
また、第一パイプ3,3A,3B,3C,3D及び第二パイプ4,4A,4C,4Dは、密閉容器の外部や内部で分岐していても分岐していなくてもどちらでも良い。
【0055】
また、第一開口部31及び第二開口部41は汚染土壌Sの内部及び外部のいずれに設けられていても良く、第一開口部31と第二開口部41との間に汚染土壌Sが介されていればいかなる位置に設けられていても良い。例えば、密閉容器2,2A,2B内の第一開口部31の上方となる位置に汚染土壌が通過しない程度の孔を有するパンチグメタルを設け、汚染土壌Sをこのパンチングメタルの上方に積載することで、第一開口部31を汚染土壌Sの外部に設けても良い。これにより、第一開口部31及び第二開口部41に金網等を取り付けなくても、パイプ内に汚染土壌Sが侵入することを防止できる。
【0056】
また、図1に示す第一実施形態に係る浄化装置100において、密閉容器2内の加熱されたガスの流れの方向の切替えは継手30及び継手40を用いて行われているが、他の切替え手段を設けて行っても良い。例えば、継手30及び継手40に代えて電磁弁を設け、この電磁弁に第一パイプ3、第二パイプ4、ヒーター5及びポンプ9を接続し、この電磁弁によって接続関係を制御することで密閉容器2内の加熱されたガスの流れの方向の切替えを行っても良い。
【0057】
また、図5に示す第三実施形態に係る浄化装置400において、回収部14及び冷却部15は汚染土壌Sの上方に設けられているが、回収部14を全面閉じた容器とし、さらに汚染土壌Sが回収部14の内部に侵入しない程度の通気孔を回収部14の側面や上面に設け、回収部14及び冷却部15を汚染土壌S内に設けても良い。
【0058】
また、上記実施形態において、第一パイプ3,3C,3D及び第二パイプ4,4A,4C,4Dは密閉容器2の壁面から内部に突出して第一開口部31及び第二開口部41が密閉容器2の内部に設けられているが、第一開口部31及び第二開口部41が密閉容器2の壁面に設けられていても良い。これにより、密閉容器2から浄化された土壌を取出す際、第一パイプ3,3C,3D及び第二パイプ4,4A,4C,4Dが邪魔にならず土壌が取り出しやすくなる。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
粒径0.106〜0.25mm、含水比30%の細砂に乾土1000g当たり240mgの揮発性汚染物質(トリクロロエチレン)を混合して汚染土壌を作成した。初期段階での溶出量は、計算上は18.5mg/Lであるが、実際には11.0mg/Lであった。この汚染土壌を、内径4cm、高さ1mのカラムに格納し、密閉して50℃の恒温槽内で養生した。カラムの下方に接続されたパイプから50℃の温風を送風し、カラムの上方に接続されたパイプからカラム内のガスを吸引した。カラム内の温風の速度は線速度で1cm/secとなるように風量計及びバルブを用いて調節した。そして、吸引されたガスに含まれるトリクロロエチレンの濃度を測定した。図7(a)に結果を示す。横軸は測定開始からの経過時間を示し、縦軸はトリクロロエチレンの濃度を示している。また、黒点は測定結果を示し、実線は近時曲線を示す。測定開始直後には約8000ppmだったトリクロロエチレンの濃度が、測定開始から6時間経過後には6.7ppmまで低下した。測定後、カラムから汚染土壌を取り出しトリクロロエチレンの溶出量を測定した結果、0.018mg/Lであり環境基準値である0.03mg/L未満であった。
【0060】
(実施例2)
乾土1000g当たり225mgの揮発性汚染物質(トリクロロエチレン)を混合して汚染土壌を作成した点、養生温度を25℃とした点及びカラムの下方に接続されたパイプから25℃の温風を送風した点以外は実施例1と同様である。初期段階での実際の溶出量は、8.6mg/Lであった。図7(b)に結果を示す。測定開始直後には約2000ppmだったトリクロロエチレンの濃度が、測定開始から6時間経過後には4.4ppmまで低下した。測定後、カラムから汚染土壌を取り出し、トリクロロエチレンの溶出量を測定した結果、0.014mg/Lであり環境基準値である0.03mg/L未満であった。
【0061】
上記実施例1,2より、本発明の効果が実証された。
【符号の説明】
【0062】
2,2A,2B…密閉容器、3,3A,3B,3C,3D…第一パイプ(第一のパイプ)、4,4A,4C,4D…第二パイプ(第二のパイプ)、5…ヒーター(ガス加熱手段)、8…コンプレッサー(送風手段)、9…ポンプ(吸引手段)、10…活性炭タンク(吸着手段)、11…樋(回収手段)、12,13…電熱線、14…回収部(回収手段)、15…冷却部(冷却手段)、16…土壌加熱ヒーター(土壌加熱手段)、22…天井面、23…傾斜面、31…第一開口部(第一の開口部)、41…第二開口部(第二の開口部)、100,200,300,400,500…浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性汚染物質を含有する汚染土壌の浄化装置であって、
前記汚染土壌を格納する密閉容器と、
前記密閉容器の内部に連通する第一の開口部を有する第一のパイプと、
前記密閉容器の内部に連通し前記第一の開口部との間に前記汚染土壌を介する第二の開口部を有する第二のパイプと、
前記第一のパイプ及び前記第二のパイプのいずれか一方のパイプから前記密閉容器内にガスを送風する送風手段と、
前記送風手段により送風するガスを加熱するガス加熱手段と、
前記第一のパイプ及び前記第二のパイプのいずれか他方のパイプから前記密閉容器内のガスを吸引する吸引手段と、
前記吸引手段により吸引したガスに含まれる前記揮発性汚染物質を吸着する吸着手段と、
を備える汚染土壌の浄化装置。
【請求項2】
前記密閉容器内において結露した液体を回収する回収手段を更に備える請求項1に記載の汚染土壌の浄化装置。
【請求項3】
前記密閉容器の天井面は、水平面に対して傾斜する傾斜面に形成されており、
前記回収手段は、前記傾斜面の最下点の下方に配置される請求項2に記載の汚染土壌の浄化装置。
【請求項4】
前記密閉容器内のガスを冷却して結露させる冷却手段を更に備える請求項2又は3に記載の汚染土壌の浄化装置。
【請求項5】
前記密閉容器に格納された前記汚染土壌と接触して前記汚染土壌を加熱する土壌加熱手段を更に備える請求項1〜4の何れか一項に記載の汚染土壌の浄化装置。
【請求項6】
前記第一のパイプ及び前記第二のパイプの少なくとも一方は、前記密閉容器に格納された前記汚染土壌内に配管されており、
前記土壌加熱手段は、前記汚染土壌内に配管されたパイプに取り付けられた電熱線により前記汚染土壌を加熱する請求項5に記載の汚染土壌の浄化装置。
【請求項7】
前記ガス加熱手段は、前記密閉容器に格納された前記汚染土壌の温度以上かつ前記汚染土壌から除去する揮発性汚染物質の沸点以下にガスを加熱する請求項1〜6の何れか一項に記載の汚染土壌の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−115733(P2012−115733A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265692(P2010−265692)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】