汚染土壌の無害化処理方法および無害化処理システム
【課題】低コストで容易に、かつ環境に悪影響を及ぼすことなく、土壌中のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を無害化する方法およびそのシステムを提供する。
【解決手段】POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化する方法であって、汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、汚染土壌を混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄工程(S101)と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する第1分離工程(S102)と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する第2分離工程(S103)と、分離された有機性汚染物質を分解する無害化工程(S105)とを有する汚染土壌の無害化処理方法とする。
【解決手段】POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化する方法であって、汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、汚染土壌を混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄工程(S101)と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する第1分離工程(S102)と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する第2分離工程(S103)と、分離された有機性汚染物質を分解する無害化工程(S105)とを有する汚染土壌の無害化処理方法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌から有機性汚染物質を溶出させる汚染土壌の無害化処理方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種製造工場の敷地およびその隣接地等における土壌がPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質によって汚染されているという問題が指摘されている。POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質といった汚染物質により人体への悪影響が懸念されることから、その汚染土壌を無害化するための有効な処理方法が望まれている。
【0003】
従来より、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌の無害化処理方法として、セメント固化処理が提案されている。しかし、セメント内にPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を封じ込めているので、長時間が経過すると、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質がセメント内から溶出する危険性を有するため、安全な処理方法とは言えない。
【0004】
このような問題に鑑み、無害化処理方法として、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を焼却する処理が検討されている。具体的には、例えば、大小の石類の固形物を含むダイオキシン類等有機ハロゲン化合物で汚染された土壌類を浄化する方法において、土壌類を分離装置に導入して土壌類から大きい固形物を分離した後、有機ハロゲン化合物を含む土壌類を低酸素雰囲気中で撹拌しながら搬送し、その土壌類を外部加熱処理手段で加熱することで存在する有機ハロゲン化合物の分解を行い、分解したハロゲン物質の成分と添加した処理剤とを、接触反応させて無害な化合物を生成せしめて土壌類と排気ガスから有機ハロゲン物質の除去を行う土壌類の浄化方法が、既に開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、有機塩素系溶媒またはトルエンもしくはベンゼン等の芳香族系溶媒を用いてPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を洗浄する無害化処理方法も知られている。
【0006】
さらに、溶融固定無害化処理法を採用してPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された汚染土壌を埋設ピット内に埋め、電極を挿入し、通電することによって、汚染土壌を無害化処理する技術も知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−205049号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌の無害化処理方法には、次のような問題がある。焼却処理の場合には、焼却処理の過程で被処理物中の有機塩素化合物により発生するダイオキシンが排ガスに含まれて、それが広範囲に拡散し、焼却処理場周辺の土壌を汚染するという問題がある。また、有機性汚染物質が土壌に散在し混入しているので、大量の土壌と共に処理しなければならない。このため、多大なエネルギーを必要とし、運転コストが高くなるという問題もある。
【0009】
一方、有機塩素系溶媒または芳香族系溶媒による汚染土壌の洗浄処理方法は、洗浄性に優れているが、有機塩素系溶媒または芳香族系溶媒が人体に対する発ガン性を有するため、労働安全面の問題がある。また、有機塩素系溶媒または芳香族系溶媒は土壌に残留する可能性が高いので、新たな二次汚染を生じるという問題がある。
【0010】
また、溶融固定無害化処理法を採用する場合には、埋設ピット内の汚染処理物の中心温度が高くなるため、多量の電力が必要となり、設備導入コスト、処理コストがともに高価になるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、低コストで容易に、かつ環境に悪影響を及ぼすことなく、土壌中のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を無害化する方法およびそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化する方法であって、汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、汚染土壌を混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄工程と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する第1分離工程と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する第2分離工程と、分離された有機性汚染物質を分解する無害化工程とを有する汚染土壌の無害化処理方法としている。
【0013】
このため、低コストで容易に、かつ環境に悪影響を及ぼすことなく、土壌中のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を無害化処理できる。汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、1回または複数回洗浄することによって、上述の有機性汚染物質を土壌から効率的に溶出させることができる。また、有機性汚染物質と土壌とを分離することによって、無害化処理対象は大幅な減容化が可能となる。例えば、1tの1ppbのダイオキシン汚染土壌には1mgのダイオキシンしか含まれていない。1mgのダイオキシンを分解処理するエネルギーは、1tの汚染土壌全てを焼却する焼却法に比べて僅かである。また、ハイドロフルオロカーボンは、非常に揮発性が強いので、第2分離工程において、有機性汚染物質と効率良く分離できると共に、塩素を含まないため、オゾン破壊係数が0である。このため、消費エネルギーが少なく、環境負荷が低く、経済的で効率の良い有機性汚染物質の無害化処理が期待できる。
【0014】
また、別の本発明は、第2分離工程を行うと共に、さらに、混合溶媒を循環して使用させるように混合溶媒を再生する再生工程を含む汚染土壌の無害化処理方法としている。混合溶媒を再生することによって、溶媒の循環利用が可能となる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。
【0015】
また、別の本発明は、有機性汚染物質を分解する無害化工程が、超臨界水酸化法により行う汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、有機性汚染物質を効率的に完全に分解・無害化することができる。
【0016】
また、別の本発明は、混合溶媒がハイドロフルオロカーボン100容量に対し、5容量の有機溶媒を含む汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、混合溶媒によるPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を、土壌から、より効率的に溶出させることができる。
【0017】
また、別の本発明は、有機溶媒がアセトン、ヘキサン、メタノールまたはエタノールである汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、混合溶媒によるPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を、土壌から、より効率的に溶出させることができる。
【0018】
また、別の本発明は、有機性汚染物質がポリ塩化ビフェニール類である汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、ポリ塩化ビフェニール類である有機性汚染物質をより効果的に無害化処理できる。
【0019】
また、本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化するシステムであって、汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、汚染土壌を混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄手段と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する第1分離手段と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する第2分離手段と、分離された有機性汚染物質を分解する無害化手段とを備える汚染土壌の無害化処理システムとしている。このため、消費エネルギーが少なく、環境負荷が低く、経済的で効率の良い有機性汚染物質の無害化処理が期待できる。
【0020】
また、別の本発明は、第2分離手段を行う際に、さらに、混合溶媒を循環して使用させるように再生した混合溶媒を貯蔵する貯蔵手段を備える汚染土壌の無害化処理システムとしている。混合溶媒を再生して貯蔵する手段を有することによって、溶媒の循環利用が可能となる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。
【0021】
また、別の本発明は、溶出手段が超音波を発生させる発振手段を備える汚染土壌の無害化処理システムとしている。このため、超音波が溶液内に伝わることにより、土壌に付着或いは混合している有機性汚染物質が剥離し、混合溶媒中により効率的に溶出させることができる。
【0022】
本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法において、処理対象となる汚染土壌は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む土壌である。有機性汚染物質としては、具体的には、例えば、ポリ塩化ビフェニール(PCB)、DDT、BHC、エンドリン、スポルタック、トリフミン、ダイオキシン類等を挙げることができ、本発明は、特に、PCBを含む汚染土壌を処理するのに適している。ただし、上述の分解対象となる有機性汚染物質は一例に過ぎず、他の種類の有機性汚染物質により汚染された土壌を処理しても良い。また、本発明により無害化処理することができる汚染土壌とは、上述の有機性汚染物質を何らかの理由で、工場敷地、一般居住地または公共用地に、漏洩、散布した事により,汚染された土地、農耕地、土砂、水底土砂および汚泥類等を挙げることができる。
【0023】
本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法に選択的に用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、3−ペンタノール等のアルコール類またはアセトン、へキサン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの有機溶媒のうち、沸点が低く、容易に回収できる低分子量の親水性有機溶媒を用いるのが好ましい。特に、エタノールを用いるのがより好ましい。ただし、上述の有機溶媒は一種のみを用いあるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。有機性汚染物質の種類に応じて、有機溶媒の種類及び配合量を変えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低コストで容易に、かつ環境に悪影響を及ぼすことなく、土壌中のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を無害化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法およびそのシステムの好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理を行う処理システムの概略図である。
【0027】
この処理システム1は、洗浄としての洗浄機器手段10と、第1分離手段としての第1分離器20と、第2分離手段としての第2分離器30と、貯蔵手段としての貯蔵器40と、無害化手段としての無害化機器50とを備えている。
【0028】
洗浄機器10は、有機性汚染物質を土壌から効率的に溶出させる機器である。図1に示すように、主に汚染土壌を投入して洗浄するための洗浄タンク5を備えている。洗浄タンク5は、洗浄しようとする処理対象土壌の量によって異なる鉄またはステンレス製の丈夫な容器であり、また、適切な位置に密閉可能な蓋を有している。密閉式洗浄タンク5を用いる理由は、混合溶媒の発揮を防ぐことができるためである。また、洗浄タンク5の底部に攪拌装置6が設けられている。これは、洗浄溶媒中の汚染土壌の分散を大きくし、汚染土壌に含まれる有機性汚染物質の溶出効率を上げることができるためである。
【0029】
第1分離器20は、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離させる。図1に示すように、洗浄タンク5の下部に濾過装置7が設けられている。濾過装置7を介して、溶出手段による有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを加圧濾過、吸引濾過または遠心分離等方法を用いて分離することができる。第1分離手段器は、混合溶媒相と土壌の固形分相が懸濁したままであっても、また一定時間静置させた後に行っても良い。
【0030】
第2分離器30は、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離させる。図1に示すように、洗浄タンク5の外部に洗浄液トラップ8が配置されている。混合溶媒を蒸発させるのため、加熱装置9が設けられている。洗浄液トラップ8に貯留される第1分離器20による得られた有機性汚染物質を含有する混合溶媒は、加熱蒸発等の処理によって蒸発されるので、有機性汚染物質が分離される。このため、無害化処理対象は大幅な減容化が可能となる。
【0031】
貯蔵器40は、第2分離器における蒸発される混合溶媒を循環して使用させるように再生した混合溶媒を貯蔵する。図1に示すように、蒸発された混合溶媒を冷却するための冷却装置11が配置されていることが好ましい。冷却装置11を備えることによって、混合溶媒を再生することができ、溶媒の循環利用が可能となる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。
【0032】
無害化機器50は、分離された有機性汚染物質を分解する機器である。有機性汚染物質は、超臨界水酸化法により無害化処理することが好ましい。これによって、有機性汚染物質を効率的に完全に分解・無害化することができる。ただし、ただし、上述の超臨界水酸化法は一例に過ぎず、他の有機性汚染物質の無害化処理法、例えば、熱分解法、脱塩素化法等により有機性汚染物質を分解処理しても良い。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0034】
以下、汚染土壌の無害化処理を行う工程手順につき、図2に基づいて説明する。
【0035】
(1)有機性汚染物質の洗浄工程(ステップS101)
この工程は、有機性汚染物質をハイドロフルオロカーボン(ハイドロフルオロカーボン、以後、HFCという。)と有機溶媒からなる混合溶媒に溶出させる工程である。まず、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を洗浄タンクに投入する。続いて、HFCと有機溶媒からなる混合溶媒を添加して攪拌する。有機性汚染物質により汚染された土壌の処理にあたって、混合溶媒は、HFCの100容量に対して5容量の有機溶媒が含まれている。このように混合溶媒を調整することにより、有機性汚染物質を、土壌からより効率的に溶出させることを図ることができる。ここで、有機溶媒としては、アセトン、へキサンまたはアルコール類のメタノールもしくはエタノールを好適に使用できる。特に、エタノールを用いるのがより好ましい。汚染土壌と混合溶媒との混合方法は、攪拌羽根を用いた攪拌以外に、超音波処理等の他の方法であっても良い。また、処理する汚染土壌の性状および土壌に含まれている有機性汚染物質の種類・含有量に応じて、混合溶媒の添加量の制御および有機溶媒の種類の選択を行い、効率的に汚染土壌を処理することが好ましい。また、有機性汚染物質の溶出効率をより向上させる目的で、必要に応じて、洗浄タンク中で加温した状態で混合攪拌を行っても良い。
【0036】
また、必要に応じて、汚染土壌は、混合溶媒中にて複数回洗浄されても良い。この結果、有機性汚染物質の溶出効率の向上が可能となる。ただし、必ずしも複数回の洗浄を行う必要はない。
【0037】
(2)第1分離工程(ステップS102)
この工程は、洗浄工程により得られた有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する工程である。この実施の形態では、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離することによって、有機性汚染物質を土壌から効率的に徐去させることができる。なお、土壌と混合溶媒との分離方法は、加圧濾過、吸引濾過等の濾過方法以外に、遠心分離等の他の分離方法であっても良い。また、混合溶媒相と土壌の固形分相が懸濁したままであっても、また一定時間静置させた後に行っても良い。
【0038】
(3)第2分離工程(ステップS103)
この工程は、第1分離工程により得られた有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する工程である。この実施の形態では、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離することによって、汚染土壌に付着・混合された有機性汚染物質のみが得られました。このため、無害化処理対象は大幅な減容化ができ、有機性汚染物質を分解処理するエネルギーは、従来の焼却法に比べて僅かである。その結果、経済的で効率の良い有機性汚染物質の無害化処理となる。本実施の形態で混合溶媒と有機性汚染物質との分離方法としては、有機溶媒を蒸発できるあらゆる公知の方法を採用できる。例えば、通常、ヒーターにより60〜100℃、好ましくは60〜80℃で加熱する。加熱方法は特に限定されないが、連続式でもバッチ式でも良く、また、常圧あるいは減圧で加熱しても良い。また、有機溶媒の種類に応じて、さらに高温で加熱工程を行っても良い。
【0039】
(4)混合溶媒の再生工程(ステップS104)
この工程は、第2分離工程により蒸発された混合溶媒を循環して使用させるように再生する工程である。この実施の形態では、混合溶媒を再生することによって、再生した混合溶媒を、有機性汚染物質により汚染された土壌の無害化処理系に循環して使用させることができる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。本実施の形態で混合溶媒の再生方法としては、有機溶媒の蒸発状態から液状になれる公知の方法を採用できる。例えば、冷却装置を用い、混合溶媒を構成するHFCおよび有機溶媒に対して、沸点以下に冷却する。方法は特に限定されないが、加圧で冷却するのが好ましい。
【0040】
(5)汚染物質の無害化工程(ステップS105)
この工程は、第2分離工程により得られた有機性汚染物質を無害化処理するする工程である。この実施の形態では、超臨界水酸化法を用いて、有機性汚染物質を無害化処理することが好ましい。具体的には、例えば、ステンレス製の耐圧トラップを使用し、トラップに硝酸ナトリウムの適量を入れ、密閉後、450℃の電気炉に入れ、1時間放置することによって、トラップ内部は超臨界状態になり、PCB等の有機性汚染物質は完全に分解・無害化される。ただし、上述の超臨界水酸化法は一例に過ぎず、他の有機性汚染物質の無害化処理法、例えば、熱分解法、脱塩素化法等により有機性汚染物質を分解処理しても良い。
【0041】
以上、本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法およびそのシステムの好適な実施の形態について説明した。その結果、短時間で、かつ簡単な装置を用いて、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を効率よく無害化でき、処理コストも低減できる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の各実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の各実施例において、各共通の実施方法については、重複する説明を省略する。以下に説明する各実施例において、汚染土壌に含む有機塩素化合物の洗浄状況および有機塩素化合物の残存状況については、島津製作所製GC/MS QP5000を用いて測定されたGC/MSスペクトルから把握した。
【0043】
A.処理手順
(実施例1)
まず、HFCの100容量に対し、5容量のアセトンを含む混合溶媒を調整した。次に、100ppmのPCBにより汚染された土壌10gと上述の混合溶媒30mlを密閉した容器に入れた。続いて、常温で30分間、攪拌処理した後、吸引濾過し、固液分離を行った。その後、濾液(混合溶媒)をエバポレーターにより蒸発し、残留物を2mlのへキサンで溶かし、これを、汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0044】
また、濾過した残渣を乾燥し、乾燥した残渣5gを秤量し、ヘキサン50mlと混合し、超音波により30分間攪拌した。濾過により固形物を分離した後、濾液の全量をエバポレーターにより蒸発し、2mlのヘキサンで残留物を溶解し、これを、洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0045】
(実施例2)
この実施例では、溶媒のアセトンの代わりに、へキサンを用いて混合溶媒を調整した。処理手順は、実施例1と同じ手順とした。処理後の汚染土壌に含むPCBの洗浄状況および洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料がそれぞれ得られた。
【0046】
(実施例3)
この実施例では、溶媒のアセトンの代わりに、メタノールを用いて混合溶媒を調整した。処理手順は、実施例1と同じ手順とした。処理後の汚染土壌に含むPCBの洗浄状況および洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料がそれぞれ得られた。
【0047】
(実施例4)
この実施例では、溶媒のアセトンの代わりに、エタノールを用いて混合溶媒を調整した。処理手順は、実施例1と同じ手順とした。処理後の汚染土壌に含むPCBの洗浄状況および洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料がそれぞれ得られた。
【0048】
(比較例1)
まず、100ppmのPCBにより汚染された土壌10gとHFC30mlを密閉した容器に入れた。続いて、常温で30分間、攪拌処理した後、吸引濾過し、固液分離を行った。その後、濾液(混合溶媒)をエバポレーターにより蒸発し、残留物を2mlのへキサンで溶かし、これを、汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0049】
また、濾過した残渣を乾燥し、乾燥した残渣5gを秤量し、ヘキサン50mlと混合し、超音波により30分間攪拌した。濾過により固形物を分離した後、濾液の全量をエバポレーターにより蒸発し、2mlのヘキサンで残留物を溶解し、これを、洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0050】
B.分析結果
図3は、ヘキサンで希釈した100pmm濃度のPCB標準溶液のGC/MS測定の結果である。図4〜図7は、それぞれ、実施例1〜4の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。また、図8〜図11は、それぞれ、実施例1〜4の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。図12は、比較例1の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。また、図13は、比較例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【0051】
図3に示すように、ピーク1〜3は、塩素2個を含むPCB(分子量222)であり、ピーク4〜11は、塩素3個を含むPCB(分子量256)であり、ピーク11〜21は、塩素4個を含むPCB(分子量290)である。保持時間9.15minにおけるピーク9は最強のピークで明確に検出された。
【0052】
図4〜図7および図12に示す各スペクトルの右上部にある数値は、最強のピーク9の濃度に比例する。図4〜図7および図12に示すように、比較例1と比べて、実施例1〜4の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄効率は、それぞれ、1.18倍、1.17倍、1.36倍および1.61倍と確認することができた。このような結果から、HFCに有機溶媒の添加によって、汚染土壌に含むPCBの洗浄効率が向上し、汚染土壌を無害化する方法としての実用が期待できることがわかった。
【0053】
また、図8〜図11および図13に示すように、比較例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCBのピーク9の高さは、3.2である。そのピーク9の高さと比較して、実施例1〜4の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCBのピーク9の高さは、それぞれ、2.9、3.1、2.2、2.4である。このような結果から、さらにHFCに有機溶媒の添加によって、汚染土壌に含むPCBの洗浄効率が向上し、PCBを効率よく除去することができると判断した。
【0054】
次に、ベンゼンで汚染された水の無害化処理方法の別の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。以下に説明する実施例において、水に含むベンゼンの洗浄状況およびベンゼンの残存状況については、核磁気共鳴装置(JEOL GX−500 NMR Spectrometer)を用いて測定されたNMRスペクトルから把握した。
【0055】
A.処理手順
まず、0.05%のベンゼンで汚染された水とHFCを5:1の容量の割合(汚染水50mlとHFC10mlを混合)で100mlの分液濾斗に投入し、十分に振蕩した後、10分間放置した。この結果、HFC相が下、水相が上で2層に分離した。その後、下のHFC相を分取した。また、HFCが水相に混入しないように、分液界面に近い水溶液を捨て上の水相を分取した。このため、分離処理によって、汚染水に含まれるベンゼンをHFCに選択的に抽出した。また、ベンゼンの抽出状況を確認するため、分取したHFC相および水相をそれぞれ5mlを採取し、HFC−1および水−1に名付け、測定用の試料とした。
【0056】
続いて、分取した水相にHFC10mlを加え、再び分液濾斗に投入する。上記と同様な分液処理を行った後に、ベンゼンの抽出状況を確認するため、分取したHFC相および水相をそれぞれ5mlを採取し、HFC−2および水−2と名付け、測定用の試料とした。
【0057】
B.分析結果
表1は、ベンゼンで汚染された水の無害化処理方法における実施例の条件にてベンゼンの抽出効果を示す表である。
【表1】
【0058】
実施例の結果において、表1に示すように、0.05%のベンゼンで汚染された水(原液)を1/5容量のHFCで一回抽出すると、原液と比べて、水−1に含まれたベンゼンは約1/5程度に減少した。同時に、HFC−1には高い濃度のベンゼンが検出された。同じ分液操作を2回繰り返したところ、2回目の抽出では、水−2からベンゼンのピークは検出されなかった。また、2回目の抽出液(HFC−2)には1回目の抽出液(HFC−1)の約1/10程度のベンゼンが検出された。
【0059】
以上のような結果から、HFCを用いて、1回のみ抽出することで汚染水に含まれたベンゼンを有効に除去することができ、ベンゼンに対するHFCの高い抽出能を示した。本発明に係るベンゼンで汚染された水の無害化処理方法は、従来の無害化処理方法、例えば、ベンゼンで汚染された水溶液に酸化剤または還元剤を添加して電磁波を照射する処理等の無害化処理方法と比べて、短時間、低コストで且つ周辺環境への影響も少なく、汚染水を浄化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を無害化に処理する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理を行う処理システムの概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】ヘキサンで希釈した100pmm濃度のPCB標準溶液のGC/MS測定の結果である。
【図4】実施例1の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図5】実施例2の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図6】実施例3の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図7】実施例4の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図8】実施例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図9】実施例2の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図10】実施例3の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図11】実施例4の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図12】比較例1の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図13】比較例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌から有機性汚染物質を溶出させる汚染土壌の無害化処理方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種製造工場の敷地およびその隣接地等における土壌がPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質によって汚染されているという問題が指摘されている。POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質といった汚染物質により人体への悪影響が懸念されることから、その汚染土壌を無害化するための有効な処理方法が望まれている。
【0003】
従来より、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌の無害化処理方法として、セメント固化処理が提案されている。しかし、セメント内にPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を封じ込めているので、長時間が経過すると、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質がセメント内から溶出する危険性を有するため、安全な処理方法とは言えない。
【0004】
このような問題に鑑み、無害化処理方法として、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を焼却する処理が検討されている。具体的には、例えば、大小の石類の固形物を含むダイオキシン類等有機ハロゲン化合物で汚染された土壌類を浄化する方法において、土壌類を分離装置に導入して土壌類から大きい固形物を分離した後、有機ハロゲン化合物を含む土壌類を低酸素雰囲気中で撹拌しながら搬送し、その土壌類を外部加熱処理手段で加熱することで存在する有機ハロゲン化合物の分解を行い、分解したハロゲン物質の成分と添加した処理剤とを、接触反応させて無害な化合物を生成せしめて土壌類と排気ガスから有機ハロゲン物質の除去を行う土壌類の浄化方法が、既に開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、有機塩素系溶媒またはトルエンもしくはベンゼン等の芳香族系溶媒を用いてPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を洗浄する無害化処理方法も知られている。
【0006】
さらに、溶融固定無害化処理法を採用してPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された汚染土壌を埋設ピット内に埋め、電極を挿入し、通電することによって、汚染土壌を無害化処理する技術も知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−205049号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌の無害化処理方法には、次のような問題がある。焼却処理の場合には、焼却処理の過程で被処理物中の有機塩素化合物により発生するダイオキシンが排ガスに含まれて、それが広範囲に拡散し、焼却処理場周辺の土壌を汚染するという問題がある。また、有機性汚染物質が土壌に散在し混入しているので、大量の土壌と共に処理しなければならない。このため、多大なエネルギーを必要とし、運転コストが高くなるという問題もある。
【0009】
一方、有機塩素系溶媒または芳香族系溶媒による汚染土壌の洗浄処理方法は、洗浄性に優れているが、有機塩素系溶媒または芳香族系溶媒が人体に対する発ガン性を有するため、労働安全面の問題がある。また、有機塩素系溶媒または芳香族系溶媒は土壌に残留する可能性が高いので、新たな二次汚染を生じるという問題がある。
【0010】
また、溶融固定無害化処理法を採用する場合には、埋設ピット内の汚染処理物の中心温度が高くなるため、多量の電力が必要となり、設備導入コスト、処理コストがともに高価になるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、低コストで容易に、かつ環境に悪影響を及ぼすことなく、土壌中のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を無害化する方法およびそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化する方法であって、汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、汚染土壌を混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄工程と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する第1分離工程と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する第2分離工程と、分離された有機性汚染物質を分解する無害化工程とを有する汚染土壌の無害化処理方法としている。
【0013】
このため、低コストで容易に、かつ環境に悪影響を及ぼすことなく、土壌中のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を無害化処理できる。汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、1回または複数回洗浄することによって、上述の有機性汚染物質を土壌から効率的に溶出させることができる。また、有機性汚染物質と土壌とを分離することによって、無害化処理対象は大幅な減容化が可能となる。例えば、1tの1ppbのダイオキシン汚染土壌には1mgのダイオキシンしか含まれていない。1mgのダイオキシンを分解処理するエネルギーは、1tの汚染土壌全てを焼却する焼却法に比べて僅かである。また、ハイドロフルオロカーボンは、非常に揮発性が強いので、第2分離工程において、有機性汚染物質と効率良く分離できると共に、塩素を含まないため、オゾン破壊係数が0である。このため、消費エネルギーが少なく、環境負荷が低く、経済的で効率の良い有機性汚染物質の無害化処理が期待できる。
【0014】
また、別の本発明は、第2分離工程を行うと共に、さらに、混合溶媒を循環して使用させるように混合溶媒を再生する再生工程を含む汚染土壌の無害化処理方法としている。混合溶媒を再生することによって、溶媒の循環利用が可能となる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。
【0015】
また、別の本発明は、有機性汚染物質を分解する無害化工程が、超臨界水酸化法により行う汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、有機性汚染物質を効率的に完全に分解・無害化することができる。
【0016】
また、別の本発明は、混合溶媒がハイドロフルオロカーボン100容量に対し、5容量の有機溶媒を含む汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、混合溶媒によるPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を、土壌から、より効率的に溶出させることができる。
【0017】
また、別の本発明は、有機溶媒がアセトン、ヘキサン、メタノールまたはエタノールである汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、混合溶媒によるPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を、土壌から、より効率的に溶出させることができる。
【0018】
また、別の本発明は、有機性汚染物質がポリ塩化ビフェニール類である汚染土壌の無害化処理方法としている。このため、ポリ塩化ビフェニール類である有機性汚染物質をより効果的に無害化処理できる。
【0019】
また、本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化するシステムであって、汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、汚染土壌を混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄手段と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する第1分離手段と、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する第2分離手段と、分離された有機性汚染物質を分解する無害化手段とを備える汚染土壌の無害化処理システムとしている。このため、消費エネルギーが少なく、環境負荷が低く、経済的で効率の良い有機性汚染物質の無害化処理が期待できる。
【0020】
また、別の本発明は、第2分離手段を行う際に、さらに、混合溶媒を循環して使用させるように再生した混合溶媒を貯蔵する貯蔵手段を備える汚染土壌の無害化処理システムとしている。混合溶媒を再生して貯蔵する手段を有することによって、溶媒の循環利用が可能となる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。
【0021】
また、別の本発明は、溶出手段が超音波を発生させる発振手段を備える汚染土壌の無害化処理システムとしている。このため、超音波が溶液内に伝わることにより、土壌に付着或いは混合している有機性汚染物質が剥離し、混合溶媒中により効率的に溶出させることができる。
【0022】
本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法において、処理対象となる汚染土壌は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む土壌である。有機性汚染物質としては、具体的には、例えば、ポリ塩化ビフェニール(PCB)、DDT、BHC、エンドリン、スポルタック、トリフミン、ダイオキシン類等を挙げることができ、本発明は、特に、PCBを含む汚染土壌を処理するのに適している。ただし、上述の分解対象となる有機性汚染物質は一例に過ぎず、他の種類の有機性汚染物質により汚染された土壌を処理しても良い。また、本発明により無害化処理することができる汚染土壌とは、上述の有機性汚染物質を何らかの理由で、工場敷地、一般居住地または公共用地に、漏洩、散布した事により,汚染された土地、農耕地、土砂、水底土砂および汚泥類等を挙げることができる。
【0023】
本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法に選択的に用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、3−ペンタノール等のアルコール類またはアセトン、へキサン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの有機溶媒のうち、沸点が低く、容易に回収できる低分子量の親水性有機溶媒を用いるのが好ましい。特に、エタノールを用いるのがより好ましい。ただし、上述の有機溶媒は一種のみを用いあるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。有機性汚染物質の種類に応じて、有機溶媒の種類及び配合量を変えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低コストで容易に、かつ環境に悪影響を及ぼすことなく、土壌中のPOPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質を無害化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法およびそのシステムの好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理を行う処理システムの概略図である。
【0027】
この処理システム1は、洗浄としての洗浄機器手段10と、第1分離手段としての第1分離器20と、第2分離手段としての第2分離器30と、貯蔵手段としての貯蔵器40と、無害化手段としての無害化機器50とを備えている。
【0028】
洗浄機器10は、有機性汚染物質を土壌から効率的に溶出させる機器である。図1に示すように、主に汚染土壌を投入して洗浄するための洗浄タンク5を備えている。洗浄タンク5は、洗浄しようとする処理対象土壌の量によって異なる鉄またはステンレス製の丈夫な容器であり、また、適切な位置に密閉可能な蓋を有している。密閉式洗浄タンク5を用いる理由は、混合溶媒の発揮を防ぐことができるためである。また、洗浄タンク5の底部に攪拌装置6が設けられている。これは、洗浄溶媒中の汚染土壌の分散を大きくし、汚染土壌に含まれる有機性汚染物質の溶出効率を上げることができるためである。
【0029】
第1分離器20は、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離させる。図1に示すように、洗浄タンク5の下部に濾過装置7が設けられている。濾過装置7を介して、溶出手段による有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを加圧濾過、吸引濾過または遠心分離等方法を用いて分離することができる。第1分離手段器は、混合溶媒相と土壌の固形分相が懸濁したままであっても、また一定時間静置させた後に行っても良い。
【0030】
第2分離器30は、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離させる。図1に示すように、洗浄タンク5の外部に洗浄液トラップ8が配置されている。混合溶媒を蒸発させるのため、加熱装置9が設けられている。洗浄液トラップ8に貯留される第1分離器20による得られた有機性汚染物質を含有する混合溶媒は、加熱蒸発等の処理によって蒸発されるので、有機性汚染物質が分離される。このため、無害化処理対象は大幅な減容化が可能となる。
【0031】
貯蔵器40は、第2分離器における蒸発される混合溶媒を循環して使用させるように再生した混合溶媒を貯蔵する。図1に示すように、蒸発された混合溶媒を冷却するための冷却装置11が配置されていることが好ましい。冷却装置11を備えることによって、混合溶媒を再生することができ、溶媒の循環利用が可能となる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。
【0032】
無害化機器50は、分離された有機性汚染物質を分解する機器である。有機性汚染物質は、超臨界水酸化法により無害化処理することが好ましい。これによって、有機性汚染物質を効率的に完全に分解・無害化することができる。ただし、ただし、上述の超臨界水酸化法は一例に過ぎず、他の有機性汚染物質の無害化処理法、例えば、熱分解法、脱塩素化法等により有機性汚染物質を分解処理しても良い。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0034】
以下、汚染土壌の無害化処理を行う工程手順につき、図2に基づいて説明する。
【0035】
(1)有機性汚染物質の洗浄工程(ステップS101)
この工程は、有機性汚染物質をハイドロフルオロカーボン(ハイドロフルオロカーボン、以後、HFCという。)と有機溶媒からなる混合溶媒に溶出させる工程である。まず、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を洗浄タンクに投入する。続いて、HFCと有機溶媒からなる混合溶媒を添加して攪拌する。有機性汚染物質により汚染された土壌の処理にあたって、混合溶媒は、HFCの100容量に対して5容量の有機溶媒が含まれている。このように混合溶媒を調整することにより、有機性汚染物質を、土壌からより効率的に溶出させることを図ることができる。ここで、有機溶媒としては、アセトン、へキサンまたはアルコール類のメタノールもしくはエタノールを好適に使用できる。特に、エタノールを用いるのがより好ましい。汚染土壌と混合溶媒との混合方法は、攪拌羽根を用いた攪拌以外に、超音波処理等の他の方法であっても良い。また、処理する汚染土壌の性状および土壌に含まれている有機性汚染物質の種類・含有量に応じて、混合溶媒の添加量の制御および有機溶媒の種類の選択を行い、効率的に汚染土壌を処理することが好ましい。また、有機性汚染物質の溶出効率をより向上させる目的で、必要に応じて、洗浄タンク中で加温した状態で混合攪拌を行っても良い。
【0036】
また、必要に応じて、汚染土壌は、混合溶媒中にて複数回洗浄されても良い。この結果、有機性汚染物質の溶出効率の向上が可能となる。ただし、必ずしも複数回の洗浄を行う必要はない。
【0037】
(2)第1分離工程(ステップS102)
この工程は、洗浄工程により得られた有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離する工程である。この実施の形態では、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と土壌とを分離することによって、有機性汚染物質を土壌から効率的に徐去させることができる。なお、土壌と混合溶媒との分離方法は、加圧濾過、吸引濾過等の濾過方法以外に、遠心分離等の他の分離方法であっても良い。また、混合溶媒相と土壌の固形分相が懸濁したままであっても、また一定時間静置させた後に行っても良い。
【0038】
(3)第2分離工程(ステップS103)
この工程は、第1分離工程により得られた有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離する工程である。この実施の形態では、有機性汚染物質を含有する混合溶媒と有機性汚染物質とを分離することによって、汚染土壌に付着・混合された有機性汚染物質のみが得られました。このため、無害化処理対象は大幅な減容化ができ、有機性汚染物質を分解処理するエネルギーは、従来の焼却法に比べて僅かである。その結果、経済的で効率の良い有機性汚染物質の無害化処理となる。本実施の形態で混合溶媒と有機性汚染物質との分離方法としては、有機溶媒を蒸発できるあらゆる公知の方法を採用できる。例えば、通常、ヒーターにより60〜100℃、好ましくは60〜80℃で加熱する。加熱方法は特に限定されないが、連続式でもバッチ式でも良く、また、常圧あるいは減圧で加熱しても良い。また、有機溶媒の種類に応じて、さらに高温で加熱工程を行っても良い。
【0039】
(4)混合溶媒の再生工程(ステップS104)
この工程は、第2分離工程により蒸発された混合溶媒を循環して使用させるように再生する工程である。この実施の形態では、混合溶媒を再生することによって、再生した混合溶媒を、有機性汚染物質により汚染された土壌の無害化処理系に循環して使用させることができる。このため、溶媒の無駄を省くことができ、無害化処理の運転コストが削減することができる。本実施の形態で混合溶媒の再生方法としては、有機溶媒の蒸発状態から液状になれる公知の方法を採用できる。例えば、冷却装置を用い、混合溶媒を構成するHFCおよび有機溶媒に対して、沸点以下に冷却する。方法は特に限定されないが、加圧で冷却するのが好ましい。
【0040】
(5)汚染物質の無害化工程(ステップS105)
この工程は、第2分離工程により得られた有機性汚染物質を無害化処理するする工程である。この実施の形態では、超臨界水酸化法を用いて、有機性汚染物質を無害化処理することが好ましい。具体的には、例えば、ステンレス製の耐圧トラップを使用し、トラップに硝酸ナトリウムの適量を入れ、密閉後、450℃の電気炉に入れ、1時間放置することによって、トラップ内部は超臨界状態になり、PCB等の有機性汚染物質は完全に分解・無害化される。ただし、上述の超臨界水酸化法は一例に過ぎず、他の有機性汚染物質の無害化処理法、例えば、熱分解法、脱塩素化法等により有機性汚染物質を分解処理しても良い。
【0041】
以上、本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法およびそのシステムの好適な実施の形態について説明した。その結果、短時間で、かつ簡単な装置を用いて、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を効率よく無害化でき、処理コストも低減できる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明に係る汚染土壌の無害化処理方法の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の各実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の各実施例において、各共通の実施方法については、重複する説明を省略する。以下に説明する各実施例において、汚染土壌に含む有機塩素化合物の洗浄状況および有機塩素化合物の残存状況については、島津製作所製GC/MS QP5000を用いて測定されたGC/MSスペクトルから把握した。
【0043】
A.処理手順
(実施例1)
まず、HFCの100容量に対し、5容量のアセトンを含む混合溶媒を調整した。次に、100ppmのPCBにより汚染された土壌10gと上述の混合溶媒30mlを密閉した容器に入れた。続いて、常温で30分間、攪拌処理した後、吸引濾過し、固液分離を行った。その後、濾液(混合溶媒)をエバポレーターにより蒸発し、残留物を2mlのへキサンで溶かし、これを、汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0044】
また、濾過した残渣を乾燥し、乾燥した残渣5gを秤量し、ヘキサン50mlと混合し、超音波により30分間攪拌した。濾過により固形物を分離した後、濾液の全量をエバポレーターにより蒸発し、2mlのヘキサンで残留物を溶解し、これを、洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0045】
(実施例2)
この実施例では、溶媒のアセトンの代わりに、へキサンを用いて混合溶媒を調整した。処理手順は、実施例1と同じ手順とした。処理後の汚染土壌に含むPCBの洗浄状況および洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料がそれぞれ得られた。
【0046】
(実施例3)
この実施例では、溶媒のアセトンの代わりに、メタノールを用いて混合溶媒を調整した。処理手順は、実施例1と同じ手順とした。処理後の汚染土壌に含むPCBの洗浄状況および洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料がそれぞれ得られた。
【0047】
(実施例4)
この実施例では、溶媒のアセトンの代わりに、エタノールを用いて混合溶媒を調整した。処理手順は、実施例1と同じ手順とした。処理後の汚染土壌に含むPCBの洗浄状況および洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料がそれぞれ得られた。
【0048】
(比較例1)
まず、100ppmのPCBにより汚染された土壌10gとHFC30mlを密閉した容器に入れた。続いて、常温で30分間、攪拌処理した後、吸引濾過し、固液分離を行った。その後、濾液(混合溶媒)をエバポレーターにより蒸発し、残留物を2mlのへキサンで溶かし、これを、汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0049】
また、濾過した残渣を乾燥し、乾燥した残渣5gを秤量し、ヘキサン50mlと混合し、超音波により30分間攪拌した。濾過により固形物を分離した後、濾液の全量をエバポレーターにより蒸発し、2mlのヘキサンで残留物を溶解し、これを、洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトル測定用の試料とした。
【0050】
B.分析結果
図3は、ヘキサンで希釈した100pmm濃度のPCB標準溶液のGC/MS測定の結果である。図4〜図7は、それぞれ、実施例1〜4の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。また、図8〜図11は、それぞれ、実施例1〜4の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。図12は、比較例1の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。また、図13は、比較例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【0051】
図3に示すように、ピーク1〜3は、塩素2個を含むPCB(分子量222)であり、ピーク4〜11は、塩素3個を含むPCB(分子量256)であり、ピーク11〜21は、塩素4個を含むPCB(分子量290)である。保持時間9.15minにおけるピーク9は最強のピークで明確に検出された。
【0052】
図4〜図7および図12に示す各スペクトルの右上部にある数値は、最強のピーク9の濃度に比例する。図4〜図7および図12に示すように、比較例1と比べて、実施例1〜4の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄効率は、それぞれ、1.18倍、1.17倍、1.36倍および1.61倍と確認することができた。このような結果から、HFCに有機溶媒の添加によって、汚染土壌に含むPCBの洗浄効率が向上し、汚染土壌を無害化する方法としての実用が期待できることがわかった。
【0053】
また、図8〜図11および図13に示すように、比較例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCBのピーク9の高さは、3.2である。そのピーク9の高さと比較して、実施例1〜4の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCBのピーク9の高さは、それぞれ、2.9、3.1、2.2、2.4である。このような結果から、さらにHFCに有機溶媒の添加によって、汚染土壌に含むPCBの洗浄効率が向上し、PCBを効率よく除去することができると判断した。
【0054】
次に、ベンゼンで汚染された水の無害化処理方法の別の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。以下に説明する実施例において、水に含むベンゼンの洗浄状況およびベンゼンの残存状況については、核磁気共鳴装置(JEOL GX−500 NMR Spectrometer)を用いて測定されたNMRスペクトルから把握した。
【0055】
A.処理手順
まず、0.05%のベンゼンで汚染された水とHFCを5:1の容量の割合(汚染水50mlとHFC10mlを混合)で100mlの分液濾斗に投入し、十分に振蕩した後、10分間放置した。この結果、HFC相が下、水相が上で2層に分離した。その後、下のHFC相を分取した。また、HFCが水相に混入しないように、分液界面に近い水溶液を捨て上の水相を分取した。このため、分離処理によって、汚染水に含まれるベンゼンをHFCに選択的に抽出した。また、ベンゼンの抽出状況を確認するため、分取したHFC相および水相をそれぞれ5mlを採取し、HFC−1および水−1に名付け、測定用の試料とした。
【0056】
続いて、分取した水相にHFC10mlを加え、再び分液濾斗に投入する。上記と同様な分液処理を行った後に、ベンゼンの抽出状況を確認するため、分取したHFC相および水相をそれぞれ5mlを採取し、HFC−2および水−2と名付け、測定用の試料とした。
【0057】
B.分析結果
表1は、ベンゼンで汚染された水の無害化処理方法における実施例の条件にてベンゼンの抽出効果を示す表である。
【表1】
【0058】
実施例の結果において、表1に示すように、0.05%のベンゼンで汚染された水(原液)を1/5容量のHFCで一回抽出すると、原液と比べて、水−1に含まれたベンゼンは約1/5程度に減少した。同時に、HFC−1には高い濃度のベンゼンが検出された。同じ分液操作を2回繰り返したところ、2回目の抽出では、水−2からベンゼンのピークは検出されなかった。また、2回目の抽出液(HFC−2)には1回目の抽出液(HFC−1)の約1/10程度のベンゼンが検出された。
【0059】
以上のような結果から、HFCを用いて、1回のみ抽出することで汚染水に含まれたベンゼンを有効に除去することができ、ベンゼンに対するHFCの高い抽出能を示した。本発明に係るベンゼンで汚染された水の無害化処理方法は、従来の無害化処理方法、例えば、ベンゼンで汚染された水溶液に酸化剤または還元剤を添加して電磁波を照射する処理等の無害化処理方法と比べて、短時間、低コストで且つ周辺環境への影響も少なく、汚染水を浄化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質により汚染された土壌を無害化に処理する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理を行う処理システムの概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る汚染土壌の無害化処理方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】ヘキサンで希釈した100pmm濃度のPCB標準溶液のGC/MS測定の結果である。
【図4】実施例1の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図5】実施例2の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図6】実施例3の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図7】実施例4の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図8】実施例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図9】実施例2の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図10】実施例3の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図11】実施例4の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図12】比較例1の条件にて汚染土壌に含むPCBの洗浄状況を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【図13】比較例1の条件にて洗浄した後の土壌中に残留するPCB濃度を確認するためのGC/MSスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化する方法であって、
上記汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、上記汚染土壌を上記混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄工程と、
上記有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と土壌とを分離する第1分離工程と、
有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と上記有機性汚染物質とを分離する第2分離工程と、
分離された上記有機性汚染物質を分解する無害化工程と、
を有することを特徴とする汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項2】
前記第2分離工程を行うと共に、さらに、前記混合溶媒を循環して使用させるように混合溶媒を再生する再生工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項3】
前記有機性汚染物質を分解する無害化工程は、超臨界水酸化法により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項4】
前記混合溶媒は、前記ハイドロフルオロカーボン100容量に対し、5容量の有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は、アセトン、ヘキサン、メタノールまたはエタノールであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項6】
前記有機性汚染物質は、ポリ塩化ビフェニール類であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項7】
POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化するシステムであって、
上記汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、上記汚染土壌を上記混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄手段と、
上記有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と土壌とを分離する第1分離手段と、
有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と上記有機性汚染物質とを分離する第2分離手段と
分離された上記有機性汚染物質を分解する無害化手段と、
を備えることを特徴とする汚染土壌の無害化処理システム。
【請求項8】
前記第2分離手段を行う際に、さらに、前記混合溶媒を循環して使用させるように再生した混合溶媒を貯蔵する貯蔵手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の汚染土壌の無害化処理システム。
【請求項9】
前記洗浄手段は、超音波を発生させる発振手段を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の汚染土壌の無害化処理システム。
【請求項1】
POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化する方法であって、
上記汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、上記汚染土壌を上記混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄工程と、
上記有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と土壌とを分離する第1分離工程と、
有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と上記有機性汚染物質とを分離する第2分離工程と、
分離された上記有機性汚染物質を分解する無害化工程と、
を有することを特徴とする汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項2】
前記第2分離工程を行うと共に、さらに、前記混合溶媒を循環して使用させるように混合溶媒を再生する再生工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項3】
前記有機性汚染物質を分解する無害化工程は、超臨界水酸化法により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項4】
前記混合溶媒は、前記ハイドロフルオロカーボン100容量に対し、5容量の有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は、アセトン、ヘキサン、メタノールまたはエタノールであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項6】
前記有機性汚染物質は、ポリ塩化ビフェニール類であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の汚染土壌の無害化処理方法。
【請求項7】
POPs類またはダイオキシン類等の有機性汚染物質含む汚染土壌を無害化するシステムであって、
上記汚染土壌に、ハイドロフルオロカーボンと有機溶媒からなる混合溶媒を加えて、上記汚染土壌を上記混合溶媒にて少なくとも1回洗浄する洗浄手段と、
上記有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と土壌とを分離する第1分離手段と、
有機性汚染物質を含有する上記混合溶媒と上記有機性汚染物質とを分離する第2分離手段と
分離された上記有機性汚染物質を分解する無害化手段と、
を備えることを特徴とする汚染土壌の無害化処理システム。
【請求項8】
前記第2分離手段を行う際に、さらに、前記混合溶媒を循環して使用させるように再生した混合溶媒を貯蔵する貯蔵手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の汚染土壌の無害化処理システム。
【請求項9】
前記洗浄手段は、超音波を発生させる発振手段を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の汚染土壌の無害化処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−279498(P2009−279498A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132680(P2008−132680)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(390033961)株式会社日本ティーエムアイ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(390033961)株式会社日本ティーエムアイ (10)
【Fターム(参考)】
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