説明

汚染土壌浄化方法

【課題】汚染土壌を浄化すると同時に地盤強化を行い、かつ、地盤強化後においても汚染土壌及び汚染された地下水の浄化を可能とする汚染土壌浄化方法を提供する。
【解決手段】汚染土壌50に地中杭54aを立設して土壌を浄化する方法であって、汚染土52が存在する深さまで竪孔51を掘削する工程と、掘削により排出された排出土又はあらかじめ用意された地中造成用土Bと過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのうちいずれかから選択される浄化剤Aとしてのアルカリ活性化過硫酸塩とが混合された地中杭造成用混合材Cを竪孔51内に投入して竪孔51を埋め戻し、地中杭造成用混合材Cを竪孔51内に投入した後に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを竪孔51内に投入して浄化するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中の汚染土壌の浄化と地盤強化を同時に行うことが可能な汚染土壌浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚染土壌の浄化方法としては、特許文献1に示すように、水溶液状の過酸化物、例えば、フェントン試薬、過マンガン酸カリウムを汚染土壌に混入して酸化反応させ、汚染物質として有機塩素化合物からなる油(石油系炭化水素,多環芳香族炭化水素等),ベンゼン,トルエン,キシレン,塩素化エチレン(トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,ジクロロエチレン等)を無機化することが知られている。
具体的には、フェントン試薬によるフェントン反応を利用する浄化方法は、過酸化水素水に触媒としての二価の鉄イオンを反応させてヒドロキシラジカルを生成し、上記有機塩素化合物と反応させることで、二酸化炭素、水、塩素イオン及び水素イオンに分解し、無機化して汚染土壌を浄化している。
【0003】
上記反応を用いた浄化方法は、特許文献2や特許文献3に示すように、例えば、アースドリルやオーガマシンにより汚染土の存在する地層まで竪孔を掘削し、この竪孔に直接、浄化剤としての水溶液状の過酸化物を投入することで、汚染物質と反応させて無機化して竪孔周囲の地層を浄化した後に、掘削の際に排出された浄化済の土で埋め戻すことにより行われる。
また、汚染土壌は、地層中に含まれる水分が移動することで汚染物質が広範囲に拡散し、特に、近傍に地下水が流れるような水分を多く含んだ軟弱な地盤に多く見られることが知られ、このような土壌を利用,再利用する場合には、土壌汚染の浄化と合わせて土壌改良を行う必要があり、一般には、汚染土壌の浄化を行った後の地層中に地中杭が造成される。
【0004】
しかしながら、竪孔内に直接、浄化剤である水溶液状の過酸化物質を投入又は注入する場合、汚染物質と過酸化物質が投入直後から局所的に急激に反応が進むため、反応した物質が噴出する危険性がある。また、浄化処理を行う地層は多くの水分を含み、近傍に地下水が流れていることが多いため、浄化剤が局所的な反応をするか、十分に汚染物質と反応することなく地下水に流されてしまうため、汚染土壌の浄化を効率的に行うことができないという問題がある。
また、汚染土を汚染土が存在する地層から取り除き、処理施設に搬送して浄化した後に再び埋め戻す方法や浄化処理済の土により埋め戻す方法もあるが、汚染土を掘削して搬送し、浄化処理済の土を再び搬送して埋め戻す必要があるため、汚染土壌の浄化にかかる手間と費用が膨大になるとともに長い工期が必要となってしまい経済的に非効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−183310号公報
【特許文献2】特開2002−188137号公報
【特許文献3】特開2009−56356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、汚染土壌を浄化すると同時に地盤強化を行い、かつ、地盤強化後においても汚染土壌及び汚染された地下水の浄化を可能とする汚染土壌浄化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の形態として、汚染土壌に地中杭を立設して土壌を浄化する方法であって、汚染土が存在する深さまで竪孔を掘削する工程と、掘削により排出された排出土又はあらかじめ用意された地中杭造成用土と過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのうちいずれかから選択されるアルカリ活性化過硫酸塩とが混合された地中杭造成用混合材を竪孔内に投入して竪孔を埋め戻す工程とを含み、地中杭造成用混合材を竪孔内に投入した後に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを竪孔内に投入する形態とした。
本発明によれば、排出土または地中杭造成用土に汚染土の浄化剤としてのアルカリ活性化過硫酸塩を混合して、掘削した竪孔に埋め戻して地中杭を立設することにより、造成した地中杭から土壌を浄化する浄化物質が染み出して、地中杭の周囲に存在する汚染土を浄化することが可能となる。さらに、この地中杭を通過する地下水に含まれる汚染物質が浄化されるので、地中杭設置後においても長期間に渡って汚染物質を浄化することができる。
また、浄化剤を過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのうちいずれかから選択されるアルカリ活性化過硫酸塩とすれば、アルカリ活性化過硫酸塩が常態において、固体であることから排出土や地中造成用土と混合することで急激に反応することがなく、混合作業が安全になり、汚染土壌を浄化する施設だけでなく、地中杭を造成する現場で混合作業をすることができる。
また、地中杭造成用混合材に含まれるアルカリ活性化過硫酸塩と汚染物質とを反応させる触媒としての水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを投入することで、汚染物質との反応を連鎖的に行わせることが可能となり、効率的に浄化することができる。
本発明に係る第2の形態として、竪孔を埋め戻す工程は、竪孔内に貫入されたケーシング内に地中杭造成用混合材を投入し、地中杭造成用混合材をケーシング内部のスラストスクリューの回転力で地中杭造成用混合材を竪孔内で締め固める形態とした。
本発明によれば、地中杭造成用混合材がスラストスクリューの回転力により竪孔内で締め固められることで、地中杭を形成する地中杭造成用混合材が圧縮され、強固な地中杭を造成することが可能となる。
本発明に係る第3の形態として、アルカリ活性化過硫酸塩は、水溶性高分子により被覆されるようにした。
本発明によれば、アルカリ活性化過硫酸塩が水溶性高分子により被覆されることにより、直ちにアルカリ活性化過硫酸塩が地中の水分と反応することがないので、水溶性高分子の被覆からアルカリ活性化過硫酸塩を徐々に滲出させて、アルカリ活性化過硫酸塩を汚染土壌の広範囲に浸透させることができる。
本発明に係る第4の形態として、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの投入と地中杭造成用混合剤の締め固めとを交互に行い、当該締め固められた地中杭造成用混合材を竪孔内における汚染土が存在する高さまで到達させるようにした。
本発明によれば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの投入と地中杭造成用混合材の締め固めとを交互に行うことにより、締め固められる地中杭造成用混合材に対して均一に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを行き渡らせることが可能となる。
本発明に係る第5の形態として、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムは、締め固められた地中杭造成用混合材を竪孔内における汚染土が存在する高さまで到達させた後に投入するようにした。
本発明によれば、水溶性高分子の被覆からアルカリ活性化過硫酸塩を徐々に滲出させて、アルカリ活性化過硫酸塩を汚染土壌の広範囲に浸透させた後に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが投入されるので、広範囲の汚染土壌を浄化することができる。
本発明に係る第6の形態として、締め固めにより、竪孔における汚染土が存在する高さの範囲を拡径するようにした。
本発明によれば、竪孔における汚染土が存在する高さの範囲を拡径することにより、汚染土が存在する地層における単位面積あたりの地中杭が存在する割合を高めることができるので、より広範囲な浄化が可能となる。
本発明に係る第7の形態として、汚染土壌に複数の地中杭を立設する場合において、竪孔の孔径は汚染土壌を平面視したときに拡径後の竪孔同士がラップする孔径とするようにした。
本発明によれば、汚染土壌に立設された複数の地中杭が汚染土が存在する範囲において重なり合うため、汚染土が存在する地層における単位面積あたりの地中杭が存在する割合をより高めることができるので、より広範囲な浄化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る汚染土壌浄化方法に用いられる汚染土壌改良装置を示す概略図。
【図2】本発明に係る汚染土壌浄化方法の工程図。
【図3】本発明に係る汚染土壌浄化方法の工程図。
【図4】本発明に係る地中杭造成位置を示す平面図。
【図5】本発明に係る他の形態の汚染土壌浄化方法の工程図。
【図6】本発明に係る他の形態の地中杭造成位置を示す平面図。
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態1
以下、本発明の汚染土壌の浄化方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、汚染土壌50を浄化する汚染土壌改良装置を示し、同図において、汚染土壌改良装置は地盤改良等に用いられるクレーン1を備える。クレーン1は、任意の作業位置に移動可能なクローラ2と、このクローラ2の上に搭載される水平方向に旋回自在な台車3と、台車3前部に垂直上方に立設されるポスト4と、台車3後部から延長され、ポスト上部4aと接続してポスト4を支持するバックステー5と、ワイヤ7を巻取り、巻出しするウインチ6とを備える。ワイヤ7は、ウインチ6及びポスト上端部4bに設けられたシーブ部8のプーリに掛け渡されて、ワイヤ先端7aに汚染土壌50を掘削するためのケーシング用オーガマシン11やスラストスクリュー用オーガマシン12が吊設される。
【0011】
ケーシング用オーガマシン11は、図1に示すように、中空状のケーシング14と、ケーシング14を回転させる図外のモータと、後述の地中杭造成用混合材Cを投入するホッパ15とを備え、ケーシング14はワイヤ7で吊設されることにより汚染土壌50の地表面に対して略垂直に設置される。
スラストスクリュー用オーガマシン12は、ケーシング用オーガマシン11の上部に設けられ、ケーシング14の延長方向内部に貫通するシャフト16と、シャフト16を回転駆動する図外のモータとを備える。シャフト16は内部にシャフト16の延長方向に渡って貫通する貫通孔18を有し、当該貫通孔18の上端部は流体供給手段20と接続される。流体供給手段20は、後述の触媒Dとしての水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを貫通孔18の先端部18aから吐出させる装置である。また、シャフト16は、汚染土壌50側の外周面にスラストスクリュー17を備え、スラストスクリュー17の先端17aとケーシング14の先端とがほぼ面一となるようにケーシング14の中心に配置される。
汚染土壌50に対して竪孔51を掘削する際には、各オーガマシン11,12の自重で汚染土壌50の地表面に荷重をかけつつ、図外モータの駆動によりケーシング14を回転させながら貫入し、ケーシング14の外側表面から地上に土を排出しつつ、汚染土壌50における汚染土52を含む地層まで竪孔51を形成する。以下、具体的に説明する。
【0012】
まず、図2(a),(b)に示すように、汚染土壌50における汚染土52が存在する地層に到達するまでケーシング14を回転させつつ貫入することで竪孔51を形成する。具体的には、竪孔51の底部51aが汚染土52が存在する地層の最深部にまで到達するまでケーシング14を貫入する。また、竪孔51を形成するに際して排出される汚染土52を含む土は、例えばダンプトラック等により、図外の土壌の浄化処理施設に搬送され後述の地中杭造成用混合材Cを構成する地中杭として用いられる。
【0013】
次に、図2(c)に示すように所定の深さまで竪孔51を形成した後に、竪孔51内にホッパ15を介してケーシング14の下方に地中杭造成用混合材Cを投入する。地中杭造成用混合材Cは、浄化剤Aと地中造成用土Bとが混合されることにより構成されるものであって、浄化剤Aとしては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のアルカリ活性化過硫酸塩が好ましく、地中造成用土Bとしては、竪孔51を形成する際に排出された排出土又は当該排出土とは別にあらかじめ用意された浄化済の砂や砕石が混ぜられた地中杭造成用の土が採用される。
浄化剤Aをアルカリ活性化過硫酸塩としたのは、アルカリ活性化過硫酸塩が通常の状態として固体、例えば粉体であるため、地中造成用土Bとの混合作業がし易く、かつ、竪孔51内に埋め戻されたときに汚染土壌50に存在する水分と反応することで液化し、液化したアルカリ活性化過硫酸塩と汚染物質とが穏やかに反応することから安全に埋め戻し作業を行うことができるからである。
【0014】
以下、浄化剤Aとして過硫酸ナトリウムを用いて地中杭造成用混合材Cを作成し、当該地中杭造成用混合材Cを竪孔51における汚染土52が存在する範囲に投入した場合の化学反応について説明する。
(1)水和反応:Na(過硫酸ナトリウム)+HO →S―+Na
この反応により、粉体であった過硫酸ナトリウムは竪孔51の周囲の地層に含まれる水分と反応して、水溶液となり、水溶液中で硫酸イオンとナトリウムイオンとなる。
(2)この水溶液にアルカリ活性化剤としての水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを汚染物質との反応触媒Dとして注入することで、反応が促進されて次のような反応を示す。
―+Na+ +OH−↓
SO−・(硫酸ラジカル)+HO → HSO−+OH・(ヒドロキシラジカル)
この反応では、ヒドロキシラジカルと汚染物質とが、連鎖的に反応することで汚染物質がRH → R・となる。
なお、RHは汚染物質を示し、例えば、油(石油系炭化水素、多環芳香族炭化水素)、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩素化エチレン(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエチレン他)と反応して無機化され、例えば、HO、CO、ハロゲン物質等になり無害の物質に変換されて土壌が浄化される。
【0015】
図2(d)に戻り、地中杭造成用混合材Cの埋め戻し工程について説明する。ケーシング14に投入された地中杭造成用混合材Cは、スラストスクリュー17の上端面上に蓄積する。そしてこの状態において、スラストスクリュー17を竪孔51に排出する方向に回転させて、複数のスクリューフィン間に地中杭造成用混合材Cを充填し、さらにスラストスクリュー17を回転させることにより竪孔51の底部51aに向けて地中杭造成用混合材Cを排出する。また、スラストスクリュー17の回転開始と同時にケーシング14をスラストスクリュー17の回転方向とは逆方向に回転させて、スラストスクリュー17とケーシング14の先端を徐々に地表側に移動させることにより、竪孔51の底部51aとケーシング14の先端までの空間に地中杭造成用混合材Cを充填する。地中杭造成用混合材Cの埋め戻し後、シャフト16の先端部18aから貫通孔18を介して供給される触媒Dを埋め戻された地中杭造成用混合材Cに対して注入する。なお、地中杭造成用混合材Cの排出と、触媒Dの注入とを同時に行ってもよい。即ち、地中杭造成用混合材Cの排出開始と同時に触媒Dの注入を開始し、排出される地中杭造成用混合材Cに触媒Dを含ませるようにすれば、地中杭造成用混合材Cに対して触媒Dを一層均一に浸透させることができる。
【0016】
図2(e)に示すように、上記地中杭造成用混合材Cの埋め戻し工程終了後には、地中杭造成用混合材Cの締め固め工程が実行される。具体的には、ケーシング14の回転を停止した後に、スラストスクリュー17のみに回転力を与え、地中杭造成用混合材Cを竪孔51の底部51aに向けて排出し、竪孔51の底部51aに充填された地中杭造成用混合材Cの締め固めを行う。そして、さらに地中杭造成用混合材Cを投入し、スラストスクリュー17を回転させることにより、竪孔51の当初の孔径D1を孔径D2に拡径させることができる。当該締め固め工程により、地中杭造成用混合材Cに注入された触媒Dが下方に向かって浸透するので地中杭造成用混合材Cに対して触媒Dを均一に拡散することができる。
なお、上記埋め戻し及び締め固めによる拡径の作業において、スラストスクリュー17に作用する抵抗を図外のモータの駆動トルクの変化として検出すれば、トルクの変化を測定することで締め固めにより拡径した孔径がわかるので、孔径D1から孔径D2に拡径されるまでのトルクの変化を例えば、図外のスラストスクリュー用オーガマシン12のモータの制御装置に記憶しておくことで容易に拡径作業を行うことができる。
【0017】
以上の埋め戻し工程、及び、締め固め工程により、竪孔51における汚染土52が存在する高さの範囲の一部に形成される地中杭の一回の作成工程が終了し、当該工程を繰り返すことにより、地中杭造成用混合材Cからなる地中杭を汚染土52が存在する高さT1まで到達するように造成する。即ち、図3(f)乃至(j)に示すように、一回の作成工程により造成された地中杭54aの上方の竪孔51を再度埋め戻し、締め固めることにより二段目の地中杭54bを作成し、さらに二段目の地中杭54bの上方の竪孔51を埋め戻し、締め固めることにより三段目の地中杭54cを作成することより、少なくとも汚染土52が存在する高さの範囲に渡って拡径された地中杭54を造成することができる。
即ち、地中杭54は、汚染土52が存在する地中側の境界52aまでを掘削して形成された竪孔51に地中杭造成用混合材Cを投入して埋め戻し、この埋め戻された地中杭造成用混合材Cに対して触媒Dを注入して締め固めるとともに拡径して一段目の地中杭54aを造成し、地中杭54aの上に地中杭造成用混合材Cを投入して埋め戻し、埋め戻された地中杭造成用混合材Cに対して触媒Dを注入して締め固めるとともに竪孔51を拡径して二段目の地中杭54bを造成し、地中杭54bの上に地中杭造成用混合材Cを投入して埋め戻し、埋め戻された地中杭造成用混合材Cに対して触媒Dを注入して締め固めるとともに竪孔51を拡径して三段目の地中杭54cを造成し、このように、触媒Dの注入と地中杭造成用混合材Cの締め固めを交互に汚染土52が存在する地表側の境界52bに到達する高さの範囲まで行うことで造成される。
なお、竪孔51における残余部分、即ち、汚染土52が存在しない地層53に相当する部分については、拡径せずに締め固めてもよい。
【0018】
図4は、汚染土壌50に対して複数の地中杭54を造成する場合において、当該汚染土壌50を平面視した場合の各地中杭54の位置関係を示す図である。
図4に示すように、竪孔51の孔径D1は汚染土壌50を平面視したときに、拡径後の竪孔同士がラップする孔径、すなわち、孔径D1の竪孔51を締め固めにより孔径D2に拡径して造成される地中杭54の拡径部分同士が重なるように汚染土壌50に対して各竪孔51を掘削する。具体的には、隣接する地中杭54の拡径部分同士が重なりを持って連続するように、汚染土52に対して千鳥状又は、方形状に地中杭54を複数造成して地中杭54が最も少なくなるように造成することで、汚染土壌50に立設された複数の地中杭54が汚染土52の存在する範囲において重なり合うため、汚染土52が存在する地層における平面視したときの単位面積あたりの地中杭が存在する割合が高まり、広範囲な浄化を効率的に行うことが可能となる。
また、汚染土壌50内に立設される複数の地中杭54が地中におけるフィルターのように作用するため、地中杭54が設けられた領域を地下水とともに汚染物質が通過することで、この汚染物質を浄化することができる。
【0019】
なお、上記実施形態において、地中造成用土Bとして、竪孔51を形成する際に排出された排出土又は当該排出土とは別にあらかじめ用意された浄化済の砂や砕石が混ぜられた地中杭造成用の土としたが、排出土及びあらかじめ用意された浄化済の地中杭造成用の土を混合して地中造成用土Bとしても良い。
また、浄化反応を連鎖的に行わせる触媒Dとしての水酸化ナトリウムや水酸化カリウムは、埋め戻し後、締め固め前に注入することに限らず、スラストスクリュー17による締め固め中、又は、締め固め後に注入しても良い。
【0020】
実施形態2
上記実施形態1では、地中造成用土Bと浄化剤Aとしての粉体のアルカリ活性化過硫酸塩とが混合された地中杭造成用混合材Cを竪孔51内に投入して竪孔51を埋め戻し、触媒Dとしての水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを注入して締め固める工程を交互に行い、地中杭54を造成するとして説明したが、実施形態2では、浄化剤Aの粉体のアルカリ活性化過硫酸塩をキトサンやアルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子によって被覆した浄化剤A′と地中造成用土Bとが予め混合された地中杭造成用混合材C′を竪孔51に投入して地中杭54を造成する。
本発明に係る浄化剤A′は、例えば、粉体の浄化剤Aを水溶性高分子からなる薄膜により所定量ずつ被包したものである。なお、浄化剤Aの被覆方法は、上記に限らず、水溶性高分子からなるカプセル内に密封しても良く、また、粉体の浄化剤Aを生成する過程で水溶性高分子によりコーティングしても良い。
【0021】
以下、本発明に係る実施形態2の地中杭54の造成方法について説明する。なお、竪孔51の形成までの工程については、実施形態1と同一のため、説明を省略する。本実施形態2では、実施形態1の埋め戻し工程において触媒Dの投入を行わない。
即ち、図3(f)乃至(j)に示すように、地中杭54は、汚染土52が存在する地中側の境界52aまでを掘削して形成した竪孔51に地中杭造成用混合材C′を投入して埋め戻し、この埋め戻された地中杭造成用混合材C′を締め固めるとともに拡径して一段目の地中杭54aを造成し、地中杭54aの上に地中杭造成用混合材C′を投入して埋め戻し、埋め戻された地中杭造成用混合材C′を締め固めるとともに竪孔51を拡径して二段目の地中杭54bを造成し、地中杭54bの上に地中杭造成用混合材C′を投入して埋め戻し、埋め戻された地中杭造成用混合材C′を締め固めるとともに竪孔51を拡径して三段目の地中杭54cを造成し、このように、地中杭造成用混合材C′の締め固めを交互に汚染土52が存在する地表側の境界52bに到達する高さの範囲まで行うことで地中杭54が造成される。
なお、竪孔51における残余部分の汚染土52が存在しない地層53に相当する部分については、拡径せずに締め固める。
【0022】
次に、図3(j)に示す工程の後に、図5(k)に示すように造成した地中杭54の中心を境界52aの深さまでボーリングし、細管25の一部が地層53の表面から突出するように、境界52aから地層53の表面まで地中杭54内に細管25を建て込み、図5(m)に示すように地表に突出する細管25の一部に液体供給手段20から延長されるチューブを接続し、流体供給手段20から供給される触媒Dを地中杭54内に注入する。
具体的には、境界52aから境界52bまでに地中杭54に建て込む細管25には、細管25の外周面を径方向に貫通する複数の孔25aが形成され、細管25内に供給される触媒Dを複数の孔25aから流出させて地中杭造成用混合材C′に浸透させる。つまり、触媒Dとしての水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが締め固められた地中杭造成用混合材C′を竪孔51内における汚染土が存在する高さまで到達させた後に投入される。
よって、触媒Dの供給よりも先に、浄化剤A′の薄膜が地中杭造成用混合材C′の水分と反応して溶解することにより、地中杭造成用混合材C′から造成されていない汚染土壌50に徐々に浄化剤Aが浸透する。そして、広範囲に渡り浸透した浄化剤Aに対して、細管25から供給され、地中杭造成用混合材C′内を浸透する触媒Dとが反応することにより、広範囲に渡り汚染土壌50が浄化される。
上記工程を汚染土壌50の浄化する範囲に行うことにより広範囲の汚染土壌50を確実に浄化することができるとともに地盤強化もすることができる。
【0023】
図6は、広範囲に渡り上記工程により地中杭54を造成する場合の一例を示した図である。同図は、20m×20mの400mの範囲に対して、地中杭54の中心間距離が2mとなるように設定して造成する場合について示している。
この場合、図6に示すように、施工する地中杭54の総数は100本となり、1日当たりの施工工数を10本とすれば、全施工日数は10日を要することになる。
本発明に係る浄化剤A′と地中造成用土Bとが混合された地中杭造成用混合材C′を用いて地中杭54を造成することにより、まず、地盤強化をすることができる。次に、全ての地中杭54に対して同時に触媒Dを浸透させることにより、汚染土壌50の浄化を広範囲に渡り一度に施工することができる。
即ち、上記範囲の汚染土壌50の浄化及び地盤強化の施工1日目に造成された地中杭造成用混合材C′の浄化剤A′は、水溶性高分子により被覆されているので、直ちに全ての浄化剤Aが地中の水分と反応することなく、徐々に反応し、浄化剤Aが地中杭54内から造成されていない汚染土壌50にまで浸透する。これにより、施工完了の10日目までゆっくりと広範囲に浄化剤Aを浸透させることができる。
そして、全ての地中杭54の造成が完了した後に、地中杭54の全てに対して一度に触媒Dを注入することにより、地中杭造成用混合材C′から汚染土壌50まで触媒Dを浸透させて浄化剤Aと汚染物質とを反応させて一度に広範囲を浄化させることができる。
なお、触媒Dを注入する細管25を地中杭54に建て込むとして説明したが、互いに対角に位置する地中杭54の中心(図6の黒丸で示す点Pの位置)に細管25を建て込み、触媒Dを注入して、汚染土壌50の地中において触媒Dを浸透させて、浄化剤A′の溶解した薄膜部分から滲出する浄化剤Aを反応させるようにしても良い。このように細管25を建て込み、触媒Dを浸透させることにより、細管25を設ける工数を少なくすることができるので、工期を短縮することができる。
また、全範囲において地中杭54を境界52bまで造成した後に、地層53に開口する穴に触媒Dを投入し、重力方向に触媒Dを浸透させて、浄化剤A′と反応させても良い。この場合、触媒Dを供給するための細管を建て込む必要がないので工数をさらに抑制することができる。
即ち、本実施形態2によれば、浄化剤A′が水溶性高分子によりコーティングされたことにより、直ちに浄化剤A′が地中の水分と反応することがないので、浄化剤A′から浄化剤Aを徐々に滲出させて、浄化剤Aが汚染土壌50内を浸透する時間を設定することができる。よって、汚染土壌50の浄化の範囲が広範囲であっても、部分的に浄化したときのように浄化した領域が再び汚染されることを防止し、汚染土壌50に浄化されない領域の発生を防止できる。
【0024】
また、上記実施形態2において、浄化剤Aを薄膜で被包するとしたが、工期日程に応じて被包する薄膜の枚数を変えた浄化剤A′と地中造成用土Bとを混合し、地中杭造成用混合材C′を構成するようにしても良い。このように構成することにより、地中杭54の造成が全て完了して地盤強化した後に、触媒Dを浸透させ、汚染土壌50の全ての領域を一度に浄化することができる。
なお、汚染土壌に複数の地中杭を立設する場合においても、図4に示すように、竪孔の孔径は汚染土壌を平面視したときに拡径後の竪孔同士がラップする孔径で立設するようにしても良い。
【0025】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 クレーン、11 ケーシング用オーガマシン、
12 インナースクリュー用オーガマシン、14 ケーシング、15 ホッパ、
16 シャフト、17 スラストスクリュー、18 貫通孔、20 流体供給手段、
50 汚染土壌、51 竪孔、52 汚染土、54 地中杭、
A;A′ 浄化剤、B 地中造成用土、C;C′ 地中杭造成用混合材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌に地中杭を立設して土壌を浄化する方法であって、
汚染土が存在する深さまで竪孔を掘削する工程と、
前記掘削により排出された排出土又はあらかじめ用意された地中杭造成用土と過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのうちいずれかから選択されるアルカリ活性化過硫酸塩とが混合された地中杭造成用混合材を前記竪孔内に投入して竪孔を埋め戻す工程とを含み、
前記地中杭造成用混合材を前記竪孔内に投入した後に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを前記竪孔内に投入することを特徴とする汚染土壌浄化方法。
【請求項2】
前記竪孔を埋め戻す工程は、前記竪孔内に貫入されたケーシング内に地中杭造成用混合材を投入し、当該地中杭造成用混合材を前記ケーシング内部のスラストスクリューの回転力で地中杭造成用混合材を前記竪孔内で締め固めることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌浄化方法。
【請求項3】
前記アルカリ活性化過硫酸塩は、水溶性高分子により被覆されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚染土壌浄化方法。
【請求項4】
前記水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの投入と地中杭造成用混合材の締め固めとを交互に行い、当該締め固められた地中杭造成用混合材を前記竪孔内における汚染土が存在する高さまで到達させることを特徴とする請求項2に記載の汚染土壌浄化方法。
【請求項5】
前記水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムは、締め固められた地中杭造成用混合材を前記竪孔内における汚染土が存在する高さまで到達させた後に投入することを特徴とする請求項3に記載の汚染土壌浄化方法。
【請求項6】
前記締め固めにより、前記竪孔における前記汚染土が存在する高さの範囲を拡径することを特徴とする請求項2乃至請求項5いずれかに記載の汚染土壌浄化方法。
【請求項7】
前記汚染土壌に複数の地中杭を立設する場合において、前記竪孔の孔径は汚染土壌を平面視したときに前記拡径後の竪孔同士がラップする孔径とすることを特徴とする請求項6に記載の汚染土壌浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167619(P2011−167619A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32851(P2010−32851)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】