説明

汚染土壌調査及び処理装置

【課題】深度方向の土壌ガスの濃度を測定調査することができるとともに当該箇所の汚染処理を行うことができる汚染土壌調査及び処理装置を提供する。
【解決手段】汚染土壌の調査及び処理を行う装置であって、土壌ガスを取り込むための吸気孔を有する採取管3と、この採取管3内に上下動可能に設けた土壌ガスセンサ4と、前記採取管の内面に摺接するように土壌ガスセンサの上部及び下部に設けたシール体7と、前記土壌ガスセンサの信号線を内蔵し、前記土壌ガスセンサに連結したワイヤ9と、前記ワイヤ内の信号線に接続した濃度測定装置12と、前記土壌ガスセンサの上部及び下部のシール体で区画される空間内に導入された吸気管15と、前記吸気管に連結した吸気ポンプ19と、前記吸気ポンプに連結した土壌ガス浄化装置20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌の調査及び処理装置に係り、更に詳しくは、深度方向の土壌ガスの濃度を測定調査することができるとともに当該箇所の汚染処理を行うことができる汚染土壌調査及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、クリーニング用の洗浄液、半導体製造行程で使用する洗浄液、その他工場等における油の洗浄液等から発生する揮発性有機化合物(例えば、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のいわゆるVOC)、もしくは、ガソリンスタンド等におけるガソリン、軽油等の油分の漏洩等による環境汚染の問題が提起されつつある。こうした揮発性有機化合物等が何らかの事情により漏出して土壌中へ混入された場合、その土壌が揮発性有機化合物等により汚染され、更に、この汚染土壌がそのまま放置されてしまうと、自然浸透や降雨等により土壌深くに浸透し、いずれ地下水を汚染してしまう。
【0003】
このため、その汚染処理方策の一例として、例えば、地表面より下方で地下水の水面より上方の少なくとも1箇所以上の位置に設けたガス捕集器によって土壌中の空気(ガス)を回収し、このガス捕集器によって捕集されたガス中の汚染物質の濃度を検出する検出器によって検出し、この検出器からの検出値と予め設定した設定値とを制御手段に取り込み、空気注入パイプに注入する空気(エア)の量を調整する汚染処理対策システムがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−144364号公報(段落0042.図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような汚染処理対策システムにおいては、空気注入パイプによる空気(エア)の注入により、地面内の圧力が上昇する。この地面内の圧力が上昇すると、この圧力上昇が揮発性有機化合物に作用し、揮発性有機化合物の沸点を上昇させる。揮発性有機化合物の沸点が上昇すると、その揮発性が低下するので、揮発性有機化合物のガス化処理の促進が遅れ、その回収作業性が悪くなるという憾みがあった。
【0006】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、深度方向の土壌ガスの濃度を測定調査することができるとともに当該箇所の汚染処理を行うことができる汚染土壌調査及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、汚染土壌の調査及び処理を行う装置であって、土壌ガスを取り込むための吸気孔を有する採取管と、この採取管内に上下動可能に設けた土壌ガスセンサと、前記採取管の内面に摺接するように土壌ガスセンサの上部及び下部に設けたシール体と、前記土壌ガスセンサの信号線を内蔵し、前記土壌ガスセンサに連結したワイヤと、前記ワイヤ内の信号線に接続した濃度測定装置と、前記土壌ガスセンサの上部及び下部のシール体で区画される空間内に導入された吸気管と、前記吸気管に連結した吸気ポンプと、前記吸気ポンプに連結した土壌ガス浄化装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記ワイヤは、ワイヤ巻取装置を介して前記濃度測定装置に接続されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、第3の発明は、第2の発明において、前記吸気管は、吸気管巻取装置吸気ポンプを介して前記土壌ガス浄化装置に連結されていることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記土壌ガスセンサは、空気注入パイプから供給された空気(エア)の気泡との接触により生起する土壌ガスを検知することを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第4の発明において、前記土壌ガスセンサの下部に水検知センサを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、深度方向の土壌ガスの濃度を測定調査することができるとともに当該箇所の汚染処理を行うことができるので、汚染土壌調査作業及びその処理作業が迅速になり、当該汚染土壌の改善時間が短縮され、更に、汚染物の拡散を速やかに抑えることができる。その結果、清浄な土地への回復を早期に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の汚染土壌調査及び処理装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図3は、本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を示すもので、図1は、本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を示す全体構成図、図2は本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を構成するワイヤ巻取装置を一部断面にて示す正面図、図3は、本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を構成する土壌ガス吸引管巻取装置を一部断面にて示す正面図である。
【0014】
図1において、1は土壌、2は土壌1中の揮発性有機化合物等により汚染された汚染箇所を示す。3は土壌1中に埋設された採取管で、この採取管3は、土壌ガスを取り込むための吸気孔3Aが複数個設けられている。この採取管3は汚染処理によって異なるが、一般的には、その先端が汚染箇所2に達するように土壌1中に埋設される。また、汚染物が地下水位付近に存在する場合には、その先端が地下水位付近の高さまで土壌1中に埋設される。
【0015】
4は、採取管3内に挿入された土壌ガスセンサである。この土壌ガスセンサ4の上部には、上側蓋体5が、また、ガスセンサ4の下部には、重錘としての役割を兼ねる下側蓋体6が設けられている。これらの蓋体5,6の外周には、採取管3の内面に摺接するゴム等のシール体7がそれぞれ設けられている。これにより、土壌ガスセンサ4の上側蓋体5と下側蓋体6との間に、土壌ガスを採取する空間が形成される。換言するならば、土壌ガスセンサ4は、採取管3内に存在する位置(深さ)における土壌ガスのみを測定することができる。
【0016】
下側蓋体6の下面には、水と接触することにより電流が流れる水検知センサ8が設けられている。土壌ガスセンサ4には、この土壌ガスセンサ4を採取管3内で上下動させるためのワイヤ9の一端が接続されている。このワイヤ9は、前述した土壌ガスセンサ4及び水検知センサ8の検出信号を伝送する信号線を内蔵している。
【0017】
ワイヤ9の他端側は、採取管3上のシーブ10を介して地上に設置したワイヤ巻取装置11に連結されている。ワイヤ巻取装置11は、図1及び図2に示すように、ワイヤ9を巻取りまたは繰り出すための中空状のワイヤ巻取リール110と、その一方側の回転軸111及び他方側の中空状の回転軸112と、これらの回転軸111、112を支持するブラケット113と、ブラケット113の支持用のベース114とを備えている。
【0018】
ワイヤ巻取装置11の一方側の回転軸111には、駆動モータ115と土壌ガスセンサ4の深さを計測するためのエンコーダ116が設けられている。ワイヤ巻取装置11の他方側の中空状の回転軸112には、ワイヤ巻取リール110に巻かれたワイヤ9の他端が導入固定されている。ワイヤ9に内蔵した信号線117は、スリップリングとワイヤブラシ等による電気的な回転継手118によって、固定側の信号線119に接続されている。この信号線119は、図1に示す濃度測定装置12に接続されている。この濃度測定装置12は、土壌ガスセンサ4によって検出した信号を取り込み、土壌ガスセンサ4が存在する位置の土壌ガスの濃度を分析する。
【0019】
エンコーダ116は、図1に示す深さ検出制御装置13に接続されている。この深さ検出制御装置13は、エンコーダ116からの信号を取り込み、採取管3内の土壌ガスセンサ4の高さ(深さ)を測定するとともに、モータ制御装置14を制御して土壌ガスセンサ4を採取管3内における測定したい箇所に上下動制御する機能を有している。
【0020】
図1に戻り、土壌ガスセンサ4における上側蓋体5には、土壌ガスを吸引するための吸引管15の一方端がその内側に位置するように固定されている。吸引管15の他方端は、採取管3上のシーブ16を介して地上に設置した吸引管巻取装置17に連結されている。この吸引管巻取装置17は、図1及び図3に示すように、吸引管15を巻取りまたは繰り出すための中空状の吸引管巻取リール170と、その一方側の回転軸171及び他方側の中空状の回転軸172と、これらの回転軸171、172を支持するブラケット173と、ブラケット173の支持用のベース174とを備えている。
【0021】
吸引管巻取装置17の一方側の回転軸171とブラケット173との間には、吸引管巻取リール170に吸引管15に対する巻き取り力を与える弦巻状のばね175が設けられている。吸引管巻取装置17の他方側の中空状の回転軸172には、吸引管巻取リール170に巻かれた吸引管15の他端が導入固定されている。この吸引管15の他端側は、回転継手176によって、固定側の管18に連結されている。
【0022】
管18は、図1に示すように、地上に設置した吸気ポンプ19の吸込側に連結している。吸気ポンプ19の吐出側は、活性炭を備える土壌ガス浄化装置20に連結されている。図1中の符号21は、土壌ガスセンサ4の上下移動の補助をするための補助輪である。
【0023】
次に上述した本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を図1乃至図3を用いて説明する。
まず、汚染土壌を調査するために、吸気孔3Aを有する採取管3を、例えば先端が地下水位付近の高さまで地盤内に挿入する。次に、土壌ガスセンサ4を採取管3内に設置し、ワイヤ巻取装置11のワイヤ9を、ワイヤ巻取リール110から繰り出すことにより、土壌ガスセンサ4を採取管3内の所望の位置に位置決めすることができる。この際、土壌ガスセンサ4の下降移動に追随して、吸引管15も吸引管巻取装置17における弦巻状のばね175に抗して吸引管巻取リール170から、繰り出された状態になっている。
【0024】
土壌ガスセンサ4の採取管3内での位置は、エンコーダ116の回転信号を取り込んでいる深さ検出制御装置13によって検出されている。また、土壌ガスセンサ4は、採取管3の吸気孔3Aを通して、上側蓋体5と下側蓋体6との間の空間内に流入する土壌ガスの濃度に対応する電気信号を、信号線117、回転継手118、固定側の信号線119を介して図1に示す濃度測定装置12に伝送する。これにより、濃度測定装置12は、採取管3内に位置している土壌ガスセンサ4に対応する箇所の汚染濃度を測定することができる。
【0025】
この際、当該箇所の汚染濃度が基準値より高い場合には、吸気ポンプ19を駆動しれば、当該箇所の土壌ガスが吸引管15によって吸引され、土壌ガス浄化装置20に供給される。土壌ガス浄化装置20は、土壌ガスを清浄化し外気に放出する。
【0026】
上述した土壌ガスセンサ4及び濃度測定装置12による土壌ガス濃度の検出と、土壌ガス浄化装置20による当該検出位置での土壌ガスの清浄化処理を、協働して行うことができる。その結果、深度方向の土壌ガスの濃度を測定調査することができるとともに当該箇所の汚染処理を行うことができるので、汚染土壌調査作業及びその処理作業が迅速になり、当該汚染土壌の改善時間が短縮され、更に、汚染物の拡散を速やかに抑えることができ、清浄な土地への回復を早期に実現することができる。
【0027】
なお、上述の実施の形態においては、蓋体5,6の外周には、採取管3の内面に摺接するゴム等のシール体7をそれぞれ設けた構成としたが、蓋体5,6を弾性体にすることも可能である。また、上述の実施の形態においては、リール形式のワイヤ巻取装置11及び吸引管巻取装置17を備えたが、ワイヤ9及び吸引管15をそれぞれ上下方向から挟持する上側シーブと下側シーブと、これらのシーブのいずれか一方に設けたモータとからなる駆動形式にすることも可能である。
【0028】
図4は、本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態の適用例を示すもので、この図において、図1乃至図3と同符号のものは同一部分または相当する部分である。
この実施の形態は、空気(エア)との接触によって汚染物質を揮発促進させ、そのガス化した汚染物質の濃度検出及びその浄化処理を可能としたもので、具体的には、処理対策すべき例えば、ガソリン、軽油等といった油類の汚染物質40は、その比重が水よりも小さいために、地下水41の水面付近に滞留している。この汚染物質を処理するために、空気注入パイプ42にブロア43によって空気(エア)を圧入する。この空気注入パイプ42に供給された空気は、空気注入パイプ42の先端の開口から気泡44となり地下水41中へ送られ、上昇する。
【0029】
この気泡44は、地下水41の水面上に滞留している汚染物質40と接触する。このとき、汚染物質40の揮発が促進され、ガス化し、地下水41の水面上方である不飽和帯の地中を空気の流れに乗って上昇する。この土壌ガスを、本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態によって、深度方向の土壌ガスの濃度を測定調査することができるとともに当該箇所の汚染処理を行うことができるようにしたものである。
【0030】
この実施の形態によれば、本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を、汚染現場の任意の地点に複数本設置することにより、深度方向における土壌ガス分布と同時に平面における土壌ガス分布も把握することが可能となり、汚染現場の汚染物質の分布を把握することが可能となる。さらに、浄化処理中における土壌ガスの濃度分布も把握することが可能で、これにより、土壌ガスの流れ方向を把握することが可能となるために、例えば、エアスパージング井戸の設置箇所や土壌ガス吸引井戸の設置箇所、さらには、汚染ガス吸着槽の設置箇所の高効率設置箇所を把握することが可能となる。また、浄化処理も可能である。
【0031】
また、土壌ガスセンサ4における下側蓋体6の下面には、水と接触することにより電流が流れる水検知センサ8が設けられているので、降雨等によって地下水位が上昇してきた場合、常に土壌ガスセンサ4が地下水位より上部に配置されるように制御される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【図2】本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を構成するワイヤ巻取装置を一部断面にて示す正面図である。
【図3】本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態を構成する土壌ガス吸引管巻取装置を一部断面にて示す正面図である。
【図4】本発明の汚染土壌調査及び処理装置の一実施の形態の適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 土壌
2 汚染箇所
3 採取管
3A 吸気孔
4 土壌ガスセンサ
5 上側蓋体
6 下側蓋体
7 シール体
8 水検知センサ
9 ワイヤ
11 ワイヤ巻取装置
12 濃度測定装置
13 深さ検出制御装置
14 モータ制御装置
15 吸引管
17 吸引管巻取装置
19 吸気ポンプ
20 土壌ガス浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌の調査及び処理を行う装置であって、土壌ガスを取り込むための吸気孔を有する採取管と、この採取管内に上下動可能に設けた土壌ガスセンサと、前記採取管の内面に摺接するように土壌ガスセンサの上部及び下部に設けたシール体と、前記土壌ガスセンサの信号線を内蔵し、前記土壌ガスセンサに連結したワイヤと、前記ワイヤ内の信号線に接続した濃度測定装置と、前記土壌ガスセンサの上部及び下部のシール体で区画される空間内に導入された吸気管と、前記吸気管に連結した吸気ポンプと、前記吸気ポンプに連結した土壌ガス浄化装置とを備えたことを特徴とする汚染土壌調査及び処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の汚染土壌調査及び処理装置において、前記ワイヤは、ワイヤ巻取装置を介して前記濃度測定装置に接続されていることを特徴とする汚染土壌調査及び処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の汚染土壌調査及び処理装置において、前記吸気管は、吸気管巻取装置吸気ポンプを介して前記土壌ガス浄化装置に連結されていることを特徴とする汚染土壌調査及び処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の汚染土壌調査及び処理装置において、前記土壌ガスセンサは、空気注入パイプから供給された空気(エア)の気泡との接触により生起する土壌ガスを検知することを特徴とする汚染土壌調査及び処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の汚染土壌調査及び処理装置において、前記土壌ガスセンサの下部に水検知センサを備えたことを特徴とする汚染土壌調査及び処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−41996(P2009−41996A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205736(P2007−205736)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】