説明

汚染土壌運搬用容器および浄化土壌の生成方法

【課題】汚染土壌による容器自身の汚染、腐食性ガスの発生を抑制しえる汚染土壌運搬用容器及び浄化土壌の生成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】実施形態によれば、有機ハロゲン化合物を含有する汚染土壌を運搬するための汚染土壌運搬用容器であって、外容器2と、この外容器の内側に配置された,ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかに炭酸カルシウムを添加してなる内容器3とを具備することを特徴とする汚染土壌運搬用容器1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚染土壌運搬用容器および浄化土壌の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PCB類もしくはダイオキシン類は難分解性の物質であり、人体に悪影響を及ぼす有害な物質であることから、これまで生産しもしくは副生成物として生成したこれらの有機ハロゲン化合物の処理が急がれている。ところで、これらの物質が純粋な形態で保管されている場合には、比較的簡単に処理を行うことができる。しかし、これらの物質が低濃度で土壌に含まれている場合には、このような汚染された土壌を処理することは、極めて困難であった。これらの問題を解決する手法として、特許文献1が知られている。特許文献1には、汚染土壌を間接加熱法により分離揮発したPCB類、ダイオキシン類を、水蒸気分解により安全かつ確実に分解することができる汚染土壌の処理方法が記載されている。
【0003】
現在、汚染土壌はドラム缶などの容器に密閉して間接加熱処理による処理場まで運搬しているが、その過程で汚染土壌により容器自身が汚染される恐れや、腐食性ガスの発生などの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3727908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、汚染土壌による容器自身の汚染、腐食性ガスの発生を抑制しえる汚染土壌運搬用容器及び浄化土壌の生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る汚染土壌運搬用容器は、有機ハロゲン化合物を含有する汚染土壌を運搬するための汚染土壌運搬用容器であって、外容器と、この外容器の内側に配置された,ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかに炭酸カルシウムを添加してなる内容器とを具備することを特徴とする。
本発明に係る浄化土壌の生成方法は、汚染土壌と、前記内容器を裁断したものを、400〜850℃で加熱処理することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る汚染土壌運搬用容器の説明図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る浄化土壌の生成方法の説明図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る浄化土壌の生成方法の説明図。
【図4】本発明に係る内容器における炭酸カルシウムの含有率とMD(流れ方向)の破断点強度との関係を示す特性図。
【図5】本発明に係る内容器における炭酸カルシウムの含有率とTD(垂直方向)の破断点強度との関係を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る汚染土壌運搬用容器及び浄化土壌の生成方法について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は下記に述べることに限定されない。
(第1の実施形態)
本実施形態に係る汚染土壌運搬用容器について図1を参照する。
汚染土壌運搬容器1は、外容器としてのドラム缶2と、このドラム缶2の内側に配置される内容器としての内袋3とから構成されている。ここで、内袋3は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂のいずれかに炭酸カルシウムを、内袋3の重量の30%添加して得られる袋である。内袋3に汚染土壌4を収容した後は、内袋3の開口部を図示しない紐などにより閉じて容器1が汚染土壌処理施設に運搬される。
【0009】
第1の実施形態の汚染運搬用容器によれば、以下に述べる効果を有する。
内袋3に添加した炭酸カルシウムに含まれるカルシウムは、PCBが分解して生成する塩素と反応して、塩素を塩化カルシウム(CaCl)の形態で中和・固定化する作用がある。そのため、塩素や塩化水素などの腐食性ガスの発生が抑制されるので、無害化処理の信頼性が向上する。
【0010】
例えば、汚染土壌のPCB(=C12Cl)濃度が1000mg/kgの場合、中和に必要なカルシウムは、内袋に含まれる30wt%のカルシウムでまかなえる。これについて以下に詳しく説明する。但し、1つのドラム缶内に収容される汚染土壌の重量を250kg、内袋の重量を0.3kgと仮定した。
(1)ドラム缶当たりのPCB由来の塩素量:
250kg−soil×1000mg−PCB/kg−soil×106.5−PCB1モルあたりの塩素量÷257.5−PCBモル質量=103g−塩素
(2)中和に必要なカルシウム量:
カルシウムは塩素と反応して塩化カルシウム(CaCl)になる。ドラム缶あたりのPCB由来の塩素を中和するのに必要なカルシウム量は、下記のとおりである。
103g−塩素×40−カルシウムモル質量÷35.5−塩素モル質量÷2=58g−カルシウム
(3)内袋中のカルシウム量:
内袋0.3kgあたりのカルシウム量は、下記のとおりである。
0.3kg−内袋質量×40−カルシウムモル質量÷100−炭酸カルシウムモル質量=120g−カルシウム
従って、PCB由来の塩素を中和するのに必要なカルシウム量58gに対して内袋のカルシウム量は120gであるから、汚染土壌のPCBは塩化カルシウムとして中和・固定化される。
【0011】
なお、第1の実施形態では、炭酸カルシウムを内袋の重量の30%添加した場合について述べたが、これに限らず、30%以下であればよく、望ましくは25%以下である。ここで、炭酸カルシウムの添加量が内袋の重量の30%を超えると、図4、図5に示すように内袋の強度が低下するためである。但し、図4、図5において、縦軸は内袋の破断強度(MPa)、横軸は炭酸カルシウムの含有率(%)を示す。
【0012】
(第2の実施形態)
本実施形態に係る浄化土壌の生成方法について図2を参照する。
本実施例形態では、PCB類やダイオキシン類で汚染された汚染土壌及び図1の内袋3を裁断した裁断物を、土壌加熱部11に供給し、汚染土壌及び前記内袋3の裁断物を400〜850℃で間接的に加熱処理して、浄化土壌を生成する。また、土壌加熱部11で揮発した有機ハロゲン化合物はブロア12により排出する。ここで、処理温度を上記のように設定するのは、400℃未満ではPCBが全て蒸発せず、850℃を超えると土壌が溶融する恐れがあるからである。汚染土壌や裁断物を土壌加熱部に送る手段としては、例えば回転式スクリューフィーダーや回転式キルンが挙げられる。また、加熱手段としては、例えば外部加熱用の電気ヒーターもしくは外部からの燃焼バーナーが挙げられる。
【0013】
第2の実施形態によれば、内袋の素材を炭酸カルシウム入りポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)にしたことにより、内袋ごと裁断して汚染土壌とともに間接加熱法で処理した際、CO削減や省エネ効果が得られる。例えば、内袋がポリエチレン製であれば、間接加熱法で熱分解してエチレン等の炭化水素に変換し、水蒸気分解プロセスのエネルギー源となる。年間1700トンのPCB汚染土壌を処理する場合、下記の省エネ量となる。
【0014】
省エネ量:1700t/年×(0.3kg/250kg)×(PEの発熱量×PEの内袋に対する重量比)×1000kg/t=1700t/年×(0.3kg/250kg)×11000kcal/kg×0.7×1000kg/t=15700000kcal
CO削減量:15700000kcal/年÷860kWh/kcal×0.555kg−CO/kWh=10132kg−CO/年
なお、1kWhは860kcalである。
また、上述したように、内袋3の裁断物を間接加熱法で熱分解して炭化水素に変換することにより、内袋3が廃棄物にならないという利点が得られる。
【0015】
(第3の実施形態)
本実施形態に係る浄化土壌の生成方法について図3を参照する。但し、図2と同部材は同符番を付して説明を省略する。
本実施形態では、まず、汚染土壌及び裁断物を土壌加熱部11で200〜600℃で加熱処理する。次に、土壌加熱部11で生成した有機ハロゲン化合物を含有するガスを加熱分解部15に送る。加熱分解部15にも図2の場合と同様に、図示しない加熱手段が設けられ、これにより揮発した有機ハロゲン化合物と水蒸気が600〜1300℃で間接的に加熱され、ハロゲン化水素と二酸化炭素を含む物質に分解する。
【0016】
加熱分解部15での加熱温度を上記の範囲に設定したのは、以下の理由による。即ち、温度が600℃未満では、土壌加熱部11で汚染土壌から揮発したPCB類やダイオキシン類が水蒸気と完全に反応せず、有機ハロゲン化合物の分解効率が非常に悪い。一方、温度が1300℃を超えると、加熱分解部15を構成する炉体の寿命低下、間接加熱によるエネルギー投入量の増大、後処理工程(ガス冷却)の負担増大などの問題が生ずる。また、土壌加熱部11で汚染土壌から揮発したPCB類やダイオキシン類に含まれている炭素が炭化してしまい、反応部本体内部に炭素質生成物が蓄積し反応部本体の機能を損なう可能性がある。
【0017】
加熱分解部15で使用される水蒸気としては、土壌加熱部11の汚染土壌に含まれ加熱により蒸発した水が用いられる。しかし、処理する土壌中に十分量の水分が含まれておらず、有機ハロゲン化合物の分解が不十分な場合は、土壌加熱部11に土壌を投入する前に土壌に水を添加することもできる。
加熱分解部15では、所要の時間及び温度で加熱処理され、PCB類やダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物は水蒸気と化学量論的に反応し、少なくともハロゲン化炭化水素と二酸化炭素を含む物質に分解される。
次に、加熱分解部15で生成されたハロゲン化炭化水素と二酸化炭素を含む物質は、冷却部16に送られて冷却され、さらに図示しない排ガス処理装置を経た後、ブロア12により外部に排出される。
【0018】
第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様に、内袋の裁断物を汚染土壌とともに間接加熱法で処理した際、CO削減や省エネ効果が得られる。また、加熱分解部15で加熱処理するので、PCB類やダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物を、少なくともハロゲン化炭化水素と二酸化炭素を含む物質に分解される。従って、汚染土壌を間接加熱法により分離揮発したPCB類、ダイオキシン類を多量の排ガスを放出することなく、また新たにダイオキシン類を生成することなくPCB類、ダイオキシン類を安全且つ確実に分解することができる。
【0019】
なお、本開示は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。具体的には、外容器としては、ドラム缶の代りに、例えば、汚染土壌に対し十分な強度、耐候性を有した折り畳み可能な繊維強化材料からなる角形バッグ(タニエ業(株)の商品名:HK−1K)を用いることができる。
【符号の説明】
【0020】
1…汚染土壌運搬用容器、2…ドラム缶(外容器)、3…内袋(内容器)、11…土壌加熱部、12…ブロア、15…加熱分解部、16…冷却部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化合物を含有する汚染土壌を運搬するための汚染土壌運搬用容器であって、外容器と、この外容器の内側に配置された,ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかに炭酸カルシウムを添加してなる内容器とを具備することを特徴とする汚染土壌運搬用容器。
【請求項2】
前記内容器の炭酸カルシウムの添加量は、内容器の重量の30%以下であることを特徴とする請求項1記載の汚染土壌運搬用容器。
【請求項3】
汚染土壌と、請求項1もしくは2記載の内容器を裁断した裁断物を、400〜850℃で加熱処理することを特徴とする浄化土壌の生成方法。
【請求項4】
前記汚染土壌及び裁断物を加熱処理した後、加熱処理で揮発した有機ハロゲン化物を水蒸気と反応させて有機ハロゲン化物を分解することを特徴とする請求項3記載の浄化土壌の生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−189966(P2011−189966A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58131(P2010−58131)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】