説明

汚染地下水の浄化方法および浄化構造体

【課題】フッ素と、重金属または有機塩素化合物とを含む汚染地下水を、周辺環境に与える影響を低減し、原位置で簡易な手段により浄化できる汚染地下水の浄化方法および浄化構造体を提供する。
【解決手段】汚染地下水を、反応層21、フッ素吸着層22、およびpH調整層23の順に通過させる。反応層21とフッ素吸着層22との通過順は反対にしてもよく、この場合、フッ素吸着層22を通過させた後にpH調整層23を通過させてから反応層21を通過させる。反応層21は、鉄粉を含み、フッ素吸着層22は酸化マグネシウム粒子等を含み、pH調整層23は酸性白土粒子等を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素と、有機塩素化合物または重金属とで汚染された地下水を浄化する方法および構造体に関し、特に汚染地下水を原位置で浄化する方法および構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害物質で汚染された土壌や汚染土壌を流れる地下水を浄化する方法として、汚染土壌を掘削して洗浄等により処理する方法、および汚染地下水を揚水して浄化する方法等が知られている。これらの方法は、汚染土壌・地下水を地上の処理設備で浄化する方法であり、汚染物質を分解等して除去するための処理条件の設定および管理が容易であるという利点を有する。
【0003】
しかし、上記方法では掘削等により土壌または地下水を地上に運び上げる必要があり、処理コストが高くなる。これに対し、土壌を掘削することなく原位置で浄化する原位置浄化方法も提案されている。例えば、特許文献1には、有機塩素化合物で汚染された地下水を原位置で浄化する方法として、汚染地下水が流れる帯水層に浄化壁を設置する汚染地下水の浄化法が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された方法では、浄化壁は透水性で金属鉄を含み、帯水層の下に存在する不透水層に達し、汚染地下水がこの浄化壁を透過する際に有機塩素化合物が金属鉄と反応することにより、汚染地下水が浄化される。また、非特許文献1および非特許文献2には、金属鉄を重金属で汚染された地下水の流路に添加し、汚染地下水に含まれる重金属を還元して除去する汚染地下水の原位置浄化方法が開示されている。
【0005】
上述した原位置浄化方法では、地上の浄化設備が不要であり、地下水等を揚水等する必要がない。このため、地下水等を地上に運び上げて地上の浄化設備で処理する場合に比して、処理コストを低減できるメリットがある。一方、原位置浄化を行なう際の処理条件は、土壌の物理化学的条件や気象条件等の様々な要因の影響を受けるため、厳密に管理することは困難である。
【0006】
このため、汚染物質の種類によっては原位置浄化が困難な場合もある。例えばフッ素を含有する汚染地下水については、原位置で浄化するための方法も提案されているが(特許文献2)、従来は揚水した後、地上設備で浄化する方法が一般的とされている。
【特許文献1】特表平5−501520号公報
【特許文献2】特開2005−815号公報
【非特許文献1】Journal of Hazardous Materials,vol42,42,1995p201−212
【非特許文献2】Environmental Science and Technology,vol31,1997,p3348−3357
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、汚染地下水の原位置浄化は、処理条件の維持管理が困難であり、特に性質の異なる複数の汚染物質を含む汚染地下水を原位置で同時に浄化することは実際には困難であった。例えば、地中に金属鉄を含む浄化壁を設ける上記従来技術によれば、鉛、カドミウム、シアン、砒素、水銀、セレン、または六価クロムといった重金属、および有機塩素化合物を含む汚染地下水を浄化できるが、フッ素を除去することはできない。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法のように、フッ素イオンと反応するフッ素吸着剤を含む浄化壁を地中に設ければ、フッ素を除去することはできる。しかし、フッ素吸着剤の種類によっては、浄化壁の通過前後で水のpH等が変化し、重金属または有機塩素化合物の処理に悪影響を与える場合がある。特に、フッ素吸着剤として酸化セリウム等を用いた場合、高いフッ素除去効果が得られる一方で浄化壁を通過した地下水がアルカリ化するため、金属鉄による重金属等の除去能力を低下させる。
【0009】
このように、フッ素のような陰イオンと、重金属等の陽イオンとを含む汚染地下水を原位置で浄化することはこれまで困難であった。また、原位置浄化の場合は揚水等による地上での処理に比べて処理条件を調整することが困難であることから、複数の汚染物質を原位置で浄化しようとすると、汚染物質の除去が優先されることになる。この結果、処理後の地下水のpH等を自然水に近づけるような対策が考慮されない場合が生じる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、フッ素と、重金属または有機塩素化合物とを含む汚染地下水を、周辺環境に与える影響を低減し、原位置で簡易な手段により浄化できる汚染地下水の浄化方法および浄化構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フッ素、および重金属または有機塩素化合物で汚染された地下水を原位置で浄化する汚染地下水の原位置浄化法であって、汚染地下水をフッ素吸着層および鉄粉を含む反応層を通過させて汚染物質を除去し、特にフッ素吸着層を通過した後の被処理水をpH調整層に通過させる。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0012】
(1)フッ素と、有機塩素化合物または重金属と、を含む汚染地下水を、鉄粉を含む反応層と、フッ素吸着剤を含むフッ素吸着層と、を順不同に通過させ、前記フッ素吸着層を通過させた後にpH調整剤を含むpH調整層に通過させる汚染地下水の浄化方法。
(2)前記フッ素吸着剤は、前記フッ素吸着層を通過した前記汚染地下水をアルカリ化させる固形のアルカリ化成分を含むフッ素吸着剤である(1)に記載の汚染地下水の浄化方法。
(3)前記アルカリ化成分を含むフッ素吸着剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびハイドロタルサイトのいずれか1種以上の化合物である(2)に記載の汚染地下水の浄化方法。
(4)前記反応層、フッ素吸着層、またはpH調整層は、透水性材料をさらに含み、それぞれ、前記鉄粉、フッ素吸着剤、またはpH調整剤と前記透水性材料とが混合されて構成されている(1)から(3)のいずれかに記載の汚染地下水の浄化方法。
(5)前記汚染地下水を、前記反応層、前記フッ素吸着層、および前記pH調整層の順で通過させて処理する(1)から(4)のいずれかに記載の汚染地下水の浄化方法。
(6)前記汚染地下水を、前記フッ素吸着層、前記pH調整層、前記反応層、および第2のpH調整層、にこの順で通過させて処理する(1)から(4)のいずれかに記載の汚染地下水の浄化方法。
(7)フッ素と、有機塩素化合物または重金属と、により汚染された汚染地下水の流路に設けられる汚染地下水の浄化構造体であって、 鉄粉を含む反応層と、フッ素吸着剤を含むフッ素吸着層と、pH調整剤を含むpH調整層と、を含む浄化部を備え、 前記流路の上流から下流側に向かって、前記フッ素吸着層、および前記pH調整層がこの順に配置されている汚染地下水の浄化構造体。
(8)前記流路の上流から下流側に向かって、前記反応層、前記フッ素吸着層、および前記pH調整層がこの順に配置されている(7)に記載の汚染地下水の浄化構造体。
(9)前記pH調整層は、第1pH調整層と、第2pH調整層と、を含み、 前記流路の上流から下流側に向かって、前記フッ素吸着層、前記第1pH調整層、前記反応層、および前記第2pH調整層がこの順に配置されている(7)記載の汚染地下水の浄化構造体。
【0013】
本発明で処理される汚染地下水は、環境基準値を超えるフッ素と、重金属または有機塩素化合物とを含む。そこで、汚染地下水は、フッ素吸着剤を含んでなるフッ素吸着層と、鉄粉を含んでなる反応層とを通過させて処理する。フッ素吸着層と反応層との通過順序は限定されないが、フッ素吸着層の直後にはpH調整層を設ける。これにより、本発明によれば、フッ素吸着層を通過した汚染地下水(フッ素除去水)のpHをコントロールできる。このため、本発明ではフッ素のみならず重金属または有機塩素化合物を含む汚染地下水を同時に原位置で浄化でき、また、周辺環境に与える影響を低減できる。
【0014】
フッ素吸着剤としては、フッ素吸着の前後で被処理水のpHを変化させがたいものを用いてもよく、被処理水をアルカリ化させるもの(例えばアニオン交換樹脂、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびハイドロタルサイト等)を用いてもよい。特に、被処理水をアルカリ化させるアルカリ化成分を含むフッ素吸着剤は、フッ素除去効果が高く、10〜20mg/L程度の濃度のフッ素を含む汚染地下水のフッ素濃度を0.8mg/L以下まで低減できるため好適に使用できる。
【0015】
フッ素吸着層は、フッ素吸着剤以外にフッ素、重金属、および有機塩素化合物のいずれとも反応しない物質であって、槽内に間隙を与えて、透水性を向上させる透水性材料を含んでもよい。透水性材料は粒状であることが好ましく、例えば、砂、または砕石等を使用できる。
【0016】
フッ素吸着剤と透水性材料とを混合してフッ素吸着層を構成する場合、フッ素吸着剤と透水性材料との混合割合は、透水性材料:フッ素吸着剤の容積比が20〜90:10〜80程度とすることが好ましい。反応層は鉄粉を含み、さらに上述した透水性材料を含んでもよい。
【0017】
pH調整層は、pH調整剤を含み、特に粒状の固形pH調整剤を用いることが好ましい。特に、酸性鉱物または酸性化合物の粒状物が好ましく、具体的には、酸性白土、活性白土、珪藻土、腐植土、火山灰土壌、および弱酸性イオン交換樹脂が挙げられる。pH調整層は、上述した透水性材料を含んでもよい。
【0018】
上述したフッ素吸着層、反応層、およびpH調整層は、地中に形成した穴にフッ素吸着剤等の構成材料を投入することにより、形成できる。あるいは地中に管を列状に埋め込み、この管(トレンチ)の中に層の構成材料を投入してもよい。フッ素吸着層、反応層、pH調整層が透水性材料を含む場合、透水性材料は、フッ素吸着剤、鉄粉、またはpH調整剤と混合した状態であってよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フッ素以外に重金属または有機塩素化合物を含む地下水を、原位置で簡易な手法により処理できる。また、本発明によれば、フッ素等を除去する処理を行なう前後での地下水のpHの変化を回避できる。このため、原位置浄化の際に周辺環境に与える影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。以下において、同一部材には同一符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る浄化構造体10が地中に埋設された状態を示す平面図、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。図2に示すように、地表面から所定の深さまでは表層土で構成される飽和層1が存在し、飽和層1より下層に地下水が流れる帯水層2、帯水層2の下部に粘土等が堆積した不透水層(または難透水層)3が存在する。
【0022】
本実施形態では、浄化構造体10は浄化部20と集水構造としての一対の平板状の矢板30a、30bとを含み、浄化部20は、汚染地下水の上流側から下流側に向かって鉄粉を含む反応層21、フッ素吸着層22、およびpH調整層23がこの順に並べられて構成されている。浄化部20全体は、壁状で、壁面が汚染地下水の流れを遮断するように、すなわち矢印Rで示す地下水流向に対して略直交するように配置されている。
【0023】
図2に示すように、浄化部20の一端縁(以下、「下端」)は不透水層3に達し、下端に対向する側の端縁(以下、「上端」)は地下水水位4から0〜100cm程度高くなるように設置されている。浄化部20の下端と上端とを接続する一対の端縁(以下、「側縁」)には、図1に示すように矢板30a、30bの一端縁(側縁)が接するように配置されている。矢板30a、30bの側縁同士を接続する一対の端縁(上端および下端)は、一方(下端)が不透水層3に達し、他方(上端)は地下水水位4から0〜100cm程度高く、好ましくは浄化部20の上端より20〜100cm程度高くなるように設置されている。
【0024】
フッ素、および重金属または有機塩素化合物で汚染された汚染地下水は、図1に示すように矢印Rで示す方向で領域Wを流れる。本実施形態では、矢板30a、30bは、地下水の流路上流側に位置する側縁同士の間隔が広く、下流側に位置する側縁同士の間隔が狭くなるように配置されている。これにより、地下水は地下水流路の上流から下流に向かって幅が狭くなった矢板30a、30bの間を流れ、確実に浄化部20を通過する。
【0025】
浄化部20を構成する反応層21は鉄粉を含み、例えば本実施形態では鉄粉として粒径が0.5〜2mm程度の銑鉄(鋳鉄)屑と、粒径が0.5〜2mm程度の川砂とを混合比30:70で混合して構成されている。反応層21の厚さは、例えば100〜200cm程度である。
【0026】
処理される汚染地下水に含まれるフッ素以外の汚染物質は、重金属としては鉛、カドミウム、シアン、砒素、六価クロム、セレン、および水銀等である。また、有機塩素化合物としては、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス1,2−ジクロロエチレン、トランス1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、塩化ビニルモノマー、1,1,1−トリクロロエタン、および1,1−ジクロロエタン等が挙げられる。
【0027】
汚染地下水は、反応層21を通過することで重金属または/および有機塩素化合物が除去される。具体的には、反応層21を通過した汚染地下水(以下、「反応処理水」)は、地下水基準値以下となる。反応処理水はpH6〜10程度であり、0.9mg/L以上の濃度のフッ素を含むことからフッ素吸着層22を通過させてフッ素を除去する。
【0028】
フッ素吸着層22は、フッ素吸着剤として粒径が0.1〜3mm程度の酸化マグネシウム粒子と粒径0.2〜3mm程度の川砂とを混合比30:70で混合して構成されている。フッ素吸着層22の厚さは、例えば50〜200cm程度である。
【0029】
反応処理水は、フッ素吸着層22を通過することでフッ素が吸着除去される。具体的には、フッ素吸着層22を通過したフッ素除去水は、フッ素濃度は0.8mg/L以下になっている一方、pH10〜12程度であることから、pH調整層23を通過させる。
【0030】
pH調整層23は、pH調整剤として粒径が0.1〜3mm程度の酸性白土粒子と粒径0.1〜3mm程度の川砂とを混合比50:50で混合して構成されている。pH調整層23の厚さは、例えば50〜200cm程度となるように構成している。このように、汚染地下水の流れに対して下流側に、フッ素吸着層22に隣接するpH調整層23を設けることで浄化部20から流出する処理水を中性にし、周辺環境への影響を低減できる。
【0031】
上記実施形態は、適宜変更することができる。例えば、上記実施形態では矢板30a、30bにより遮水層を構成したfunnてもよい。また、壁状の浄化部20に代えてトレンチを列状に形成してフッ素吸着剤等の処理層の構成材料をトレンチに流し込んで浄化部としてもよい。この場合、トレンチの列が汚染地下水の流れに直交するように配置することで、フッ素吸着剤等が層状に配置され、汚染地下水が透過する浄化部を形成できる。
【0032】
また、本発明は重金属等で汚染された土壌が存在する領域を囲い込んで浄化する原位置封じ込め工法に適用できる。図3は、本発明の別の一実施形態に係る浄化構造体100が埋め込まれた汚染地域を示す断面斜視図であり、図4は浄化構造体100の平面図、図5は浄化構造体100の一部の斜視図、図6は図3のY−Y線に沿う断面図、図7は図5のZ−Z線に沿う断面図である。
【0033】
浄化構造体100は、4枚の遮水壁9が略矩形枠状となるように配置されて構成された枠体19と、枠体で囲まれた領域内から周辺領域へ流出する汚染地下水を浄化する浄化部120と、略矩形枠状の集水路14と、を備える。枠体19は、フッ素等の汚染物質で汚染された汚染土壌および地下水が存在する汚染領域8を囲い、周囲8Aと隔絶するように設置されている。枠体19の下端は不透水層3に達している。上端は、本実施形態では地表面Gに達しているが、地下水水位より所定高さ(例えば0〜500cm程度)高ければよい。
【0034】
集水路14は、浄化部120の厚さとほぼ同じ距離で枠体19から離れた位置で枠体19の内側に配置されている。本実施形態では、透水性材料として直径が1cm程度の粗石を柱状に配置して集水路14を構成しているが、他の集水構造、例えば孔あき管を枠状に並べて構成してもよい。集水路14の垂直位置は、飽和層1と帯水層2との間であって地下水水位4を含む位置である。
【0035】
枠体19には、遮水壁9の上端の一部を凹ませて形成された流出部11が3箇所、設けられている。この流出部11が形成された枠体19と集水路14の間には、壁状の浄化部120がそれぞれ設けられ、合計で3つが配置されている。浄化部120の上端は、流出部11の下端より上位、好ましくは0〜200cm程度上位に位置し、下端は流出部11の下端より下位、好ましくは50〜500cm程度下位であって集水路14の下端より下位に位置する。
【0036】
浄化部120の一方の壁面(以下、「外面」)は遮水壁9の内面に接するように配置され、他方の壁面(以下、「内面」)は集水路14の外面に接するように配置されている。浄化部120の外面は、一部が流出部11にはみ出してもよい。浄化部120の幅は、流出部11の幅と同一であってよいが、流出部11の幅より5〜30cm程度大きくしてもよい。浄化部120の外面と内面とを接続する側縁部は、本実施形態のように鋼板等からなる板材13で覆われている。板材13は、汚染地下水の周辺領域への拡散を防止するものであり、省略してもよく、防水コンクリート壁のような他の構造としてもよい。
【0037】
図7は浄化部120の詳細構造を示す。本実施形態では、浄化部120は、汚染地下水の流れの上流側から下流側(すなわち集水路14から流出部11)へ向かって、フッ素吸着層220、第1pH調整層231、反応層210、および第2pH調整層232をこの順で含んで構成されている。
【0038】
浄化部120では、上述した各処理層は直接隣接せず、透水性を高めるための粗砂層24を介して互いに隣接している。粗砂層24は、粒径1cm程度の粗砂を厚さ20cm程度として構成され、浄化部120の最外層および最内層にも配置されている。すなわち、浄化部120は、集水路14から流出部11側に向かって、粗砂層24、フッ素吸着層220、粗砂層24、第1pH調整層231、粗砂層24、反応層210、粗砂層24、第2pH調整層232、および粗砂層24がこの順に並んで構成されている。
【0039】
フッ素吸着層220は、第1実施形態に係る浄化部20のフッ素吸着層22と同様の構造である。反応層210は、第1実施形態に係る浄化部20の反応層21と同様の構造である。第1pH調整層231と第2pH調整層232とは実質的に同一で、第1実施形態の浄化部20のpH調整層23と同様の構造である。
【0040】
本実施形態では、汚染地下水はまずフッ素吸着層220を透過することでフッ素が吸着除去され、第1pH調整層231を通過することで、アルカリ性になったフッ素除去水が中和される。このように、反応層210を透過する被処理水はpHが5〜9程度であることから、還元反応が阻害されず、反応層210の除去能力低下が防止できる。さらに、反応処理水はアルカリ化しているが、第2pH調整層232を通過することで中和され、浄化部120から最終的に流出する処理水のpHは5〜9程度となる。
【0041】
上記実施形態は、適宜、変更可能で、例えば集水路14を矩形枠状に配置する代わりに円形枠状に配置することもできる。また、集水路14を枠状以外の形、例えば櫛の歯状等にしてもよく、枠状に配置する場合に一部が途切れていてもよい。さらに、地表面Gを遮水シート等で覆い、雨水の地下浸透を防止してもよい。
【0042】
図8は、原位置浄化方法に用いられる本発明のさらに別の実施形態に係る浄化構造体200の平面図である。図9は、浄化構造体200の一部を拡大した平面図、図10は図9のV−V線での断面模式図である。
【0043】
浄化構造体200では、集水路140の配置が第2実施形態の浄化構造体100の集水路14と異なり、浄化された処理水を枠体190外へ取り出す排出部25を備える。また、枠体190には流出部は形成されていない。
【0044】
この浄化構造体200では、集水路140は互いに複数の水路が並列に並べられた2列の水路14a、14bの一端同士が直角に交わり、交点部分に中央集水路14cが配置されている。中央集水路14cの一端は、浄化部120の内面側(フッ素吸着層220に近い側)に接続されている。排出部25は、浄化部120の外面側に接続された接続管253、遮水壁9を貫通する排水管251、および接続管と排水管との間に設けられた集水容器252で構成されているが、これに限定されない。
【0045】
本実施形態では、枝状の水路14a、14bから中央集水路14cに集められた汚染地下水は、浄化部120を通過し、浄化された処理水は接続管253を介して集水容器252に集められ、排水管251から枠体190の外側、例えば下水道または周囲へ排出される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、フッ素と、重金属または有機塩素化合物で汚染された地下水の浄化に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る浄化構造体が地中に埋設された状態を示す平面模式図である。
【図2】図1のX−X線断面であり、前記実施形態に係る浄化構造体の浄化部の構造を示す模式図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る浄化構造体の地中に埋設された状態を示す斜視断面図である。
【図4】前記実施形態に係る浄化構造体の平面図である。
【図5】前記実施形態に係る浄化構造体の一部斜視図である。
【図6】図3のY−Y線断面模式図である。
【図7】図5のZ−Z線断面図であり、前記実施形態に係る浄化構造体の浄化部の構造を示す模式図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係る浄化構造体の平面図である。
【図9】前記実施形態に係る浄化構造体の一部を拡大した平面図である。
【図10】図9のV−V線断面模式図である。
【符号の説明】
【0048】
10、100、200 浄化構造体
20、120 浄化部
21、210 反応層
22、220 フッ素吸着層
23、231、232 pH調整層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素と、有機塩素化合物または重金属と、を含む汚染地下水を、鉄粉を含む反応層と、フッ素吸着剤を含むフッ素吸着層と、を順不同に通過させ、前記フッ素吸着層を通過させた後にpH調整剤を含むpH調整層に通過させる汚染地下水の浄化方法。
【請求項2】
前記フッ素吸着剤は、前記フッ素吸着層を通過した前記汚染地下水をアルカリ化させる固形のアルカリ化成分を含むフッ素吸着剤である請求項1に記載の汚染地下水の浄化方法。
【請求項3】
前記アルカリ化成分を含むフッ素吸着剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびハイドロタルサイトのいずれか1種以上の化合物である請求項2に記載の汚染地下水の浄化方法。
【請求項4】
前記反応層、フッ素吸着層、またはpH調整層は、透水性材料をさらに含み、それぞれ、前記鉄粉、フッ素吸着剤またはpH調整剤と前記透水性材料とが混合されて構成されている請求項1から3のいずれかに記載の汚染地下水の浄化方法。
【請求項5】
前記汚染地下水を、前記反応層、前記フッ素吸着層、および前記pH調整層の順で通過させて処理する請求項1から4のいずれかに記載の汚染地下水の浄化方法。
【請求項6】
前記汚染地下水を、前記フッ素吸着層、前記pH調整層、前記反応層、および第2のpH調整層、にこの順で通過させて処理する請求項1から4のいずれかに記載の汚染地下水の浄化方法。
【請求項7】
フッ素と、有機塩素化合物または重金属と、により汚染された汚染地下水の流路に設けられる汚染地下水の浄化構造体であって、
鉄粉を含む反応層と、フッ素吸着剤を含むフッ素吸着層と、pH調整剤を含むpH調整層と、を含む浄化部を備え、
前記流路の上流から下流側に向かって、前記フッ素吸着層、および前記pH調整層がこの順に配置されている汚染地下水の浄化構造体。
【請求項8】
前記流路の上流から下流側に向かって、前記反応層、前記フッ素吸着層、および前記pH調整層がこの順に配置されている請求項7に記載の汚染地下水の浄化構造体。
【請求項9】
前記pH調整層は、第1pH調整層と、第2pH調整層と、を含み、
前記流路の上流から下流側に向かって、前記フッ素吸着層、前記第1pH調整層、前記反応層、および前記第2pH調整層がこの順に配置されている請求項7記載の汚染地下水の浄化構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−260525(P2007−260525A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87065(P2006−87065)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】