説明

汚泥処理方法

【課題】コストメリットが出る汚泥処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】有機汚泥を脱水装置5により脱水処理し、得られた脱水ケーキを乾燥装置6により乾燥処理して乾燥汚泥を得る汚泥処理方法であって、乾燥汚泥が有するエネルギーが、脱水装置5に対して投入するエネルギーと乾燥装置6に対して投入するエネルギーとの合算値より大きくなるように、脱水装置5の脱水処理条件及び乾燥装置6の乾燥処理条件を設定し、得られた乾燥汚泥を汚泥燃料とする。すなわち、得られた汚泥燃料の価値が、当該汚泥燃料を得るのにかかる脱水及び乾燥の合算コストを上回るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥の処理方法として、例えば、円筒スクリーン内で軸線方向に延びるスクリューを回転させ当該円筒スクリーン内の汚泥を軸線方向に搬送しながら圧搾するスクリュープレス脱水機や、2枚の無端状の濾布ベルトの間に汚泥を挟み込み、多数のローラの回転に従い当該2枚の濾布ベルトを循環移動させながら濾布ベルト間の汚泥をローラの曲面部で圧搾していくベルトプレス脱水機等を用い、汚泥を脱水して厚み5〜20mm程度、含水率85%程度の塊状の脱水ケーキとし、この塊状の脱水ケーキの乾燥に好適な例えば回転乾燥機や、通気回転又は通気竪型乾燥機等を用い、脱水ケーキを乾燥させて含水率10%程度の乾燥汚泥を得る汚泥処理方法が知られている。
【0003】
このような汚泥処理方法にあっては、乾燥機で含水率を85%程度から10%程度に下げるため、水分を蒸発させるために大きな乾燥エネルギーが必要であり、且つ、上記乾燥機の熱効率が45〜80%と高くないことから、乾燥コストが非常に高いという問題がある。
【0004】
従って、従来は、脱水機からの脱水ケーキを、廃棄物処理業者に処理委託する場合が多いが、このように脱水ケーキを廃棄物処理業者に処理委託する場合は、処理費を重量ベースで支払うため、この場合も費用が結構かかってしまう。また、廃棄物処理業者に処理委託する重量を減らすべく、脱水ケーキを上述のように乾燥機で乾燥させる場合には、乾燥コストが高いためコストメリットはあまり無い。
【0005】
そこで、従来と同様な一般的な汚泥脱水機を用いて従来と同様な含水率85%程度の脱水ケーキを得、この脱水ケーキを、ケーキ厚み成形機で水分蒸発可能な例えば0.5mm〜数mmの薄片状に形成し、得られた薄片状ケーキを、乾燥装置に導入し油槽で搬送しながら加熱により乾燥させ、得られた乾燥汚泥を焼却処理し廃棄物とする汚泥処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−218397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記公報に記載の汚泥処理方法では、乾燥汚泥を得るのに、脱水、厚み成形、乾燥の3工程が必要であるため、必然的に、その設備コスト及びその消費電力等のコストが非常にかかってしまい、また、得られた乾燥汚泥を焼却処理するのにもコストがかかってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、コストメリットが出る汚泥処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による汚泥処理方法は、有機汚泥を脱水装置により脱水処理し、得られた脱水ケーキを乾燥装置により乾燥処理して乾燥汚泥を得る汚泥処理方法であって、脱水装置の脱水処理条件及び乾燥装置の乾燥処理条件を、(脱水装置に対して投入するエネルギー)+(乾燥装置に対して投入するエネルギー)<(乾燥汚泥が有するエネルギー)を満たすように設定し、乾燥汚泥を汚泥燃料として得ることを特徴としている。
【0010】
このような汚泥処理方法によれば、乾燥汚泥が有するエネルギーが、脱水装置に対して投入するエネルギーと乾燥装置に対して投入するエネルギーとの合算値より大きくなるように、脱水装置の脱水処理条件及び乾燥装置の乾燥処理条件が設定され、得られた乾燥汚泥が汚泥燃料とされる、すなわち、得られた汚泥燃料の価値が、当該汚泥燃料を得るのにかかる脱水及び乾燥の合算コストを上回るため、コストメリットが出るようになる。
【0011】
ここで、脱水装置として、所定の周回軌道を移動する濾布及び当該濾布上に供給された有機汚泥を、対向するプレスロール間で圧搾し薄膜の脱水ケーキを得る濾布走行式脱水機を用い、乾燥装置として、脱水ケーキを熱風の気流に乗せ搬送しながら乾燥させる気流乾燥機を用いるのが好ましい。
【0012】
これによれば、濾布走行式脱水機により、脱水ケーキの厚みが従来の約5〜20mmから約1〜2mmの薄膜とされ、且つ、脱水ケーキの含水率が従来の約85%から約70%以下に下げられ、このように脱水ケーキが薄膜且つ低含水率とされるため、薄膜且つ低含水率の乾燥に好適な気流乾燥機により、短時間で、脱水ケーキが乾燥されてその含水率が約10〜30%に下げられ、例えば木屑並みの発熱量を有する燃料(汚泥燃料)とされる。すなわち、コストの多くを占める乾燥装置に着目し、脱水装置としては、大量の有機汚泥処理には向かないが、後工程の気流乾燥機での最適な処理を可能とすべく従来よりも脱水ケーキの厚みを薄く含水率を低くできると共に厚み成形工程を不要にできる濾布走行式脱水機を用い、後工程の乾燥装置としては、薄膜且つ低含水率の汚泥を、熱容量負荷が高く乾燥効率の高い気流乾燥機を用いることで、短時間で乾燥でき、装置を小型化すると共に乾燥エネルギーも低減できる。その結果、脱水及び乾燥の合算コストを従来に比して容易に下げることができ、当該合算コストを、得られる汚泥燃料の価値より容易に下げることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明による汚泥処理方法によれば、コストメリットが出る汚泥処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法を採用した汚泥処理システムを示す構成図である。
【図2】図1中の濾布走行式脱水機を示す断面図である。
【図3】図2中の圧搾転着部を示す断面図である。
【図4】脱水助剤添加率と湿量基準含水率との関係を示す線図である。
【図5】汚泥発熱量と投入エネルギーとの関係を本実施形態と従来技術とで比較して示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による汚泥処理方法の好適な実施形態について図1〜図5を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法を採用した汚泥処理システムを示す構成図、図2は、図1中の濾布走行式脱水機を示す断面図、図3は、図2中の圧搾転着部を示す断面図であり、この汚泥処理システムは、ここでは、食品工場に採用されているシステムである。
【0016】
図1に示すように、汚泥処理システム100は、食品排水を例えば生物処理し固液分離することにより得られた有機汚泥に対して、順次処理を行っていくものであり、前処理装置1、濾布走行式脱水機5、気流乾燥機6をこの順に備える。
【0017】
前処理装置1は、槽内に導入される有機汚泥に必要に応じて脱水助剤を供給する脱水助剤供給装置1a、無機凝集剤を供給する無機凝集剤供給装置1b及び高分子凝集剤を供給する高分子凝集剤供給装置1cをそれぞれ備えると共に、槽内の汚泥、脱水助剤及び凝集剤に浸漬する羽根1dが駆動源1eの駆動により回転し汚泥、脱水助剤、凝集剤を撹拌し混合させて反応させる撹拌機1fを備えている。
【0018】
濾布走行式脱水機5は、前処理装置1から汚泥を導入し脱水して脱水ケーキを得るものであり、処理する際の汚泥の厚さが非常に薄く、従って、薄膜の脱水ケーキを得るのに好適なものである。
【0019】
そして、濾布走行式脱水機5は、図2に示すように、無端状を成して所定の周回軌道を移動すると共に、前処理装置1からの汚泥Sが供給される単一の濾布ベルト(濾布)5Vを備え、この濾布ベルト5Vに対して順に作用する真空脱水部5Xと、圧搾転着部5Yと、洗浄・脱水部5Zと、を備えている。
【0020】
濾布ベルト5Vは、厚さが4〜8mm、幅が500〜4200mm程度の無端ベルトであり、図3に示すように、3層構造のフェルト材から成り、具体的には、汚泥Sを濾過する極細繊維層で構成された外面層5aと、水分の浸透を促進する中細繊維層で構成された中間層5bと、水切れを促進する基布層で構成された内面層5cと、を備えている。これらの外面層5a、中間層5b及び内面層5cは、接着剤等を使用することなく、綿打ち加工と同様の加工によって相互に繊維が絡み合うように接合されている。そして、図2に示すように、無端状の濾布ベルト5Vは、多数のロール5gと下側のプレスロール5e及び下側のスクイズロール5i(詳しくは後述)に掛け渡され、毎分5〜50m程度の移動速度で図2の時計回りの方向に所定の周回軌道を移動するように構成されている。
【0021】
真空脱水部5Xは、濾布ベルト5Vの上面側に供給される汚泥Sを初期脱水するものであり、当該汚泥Sに対し濾布ベルト5Vの下面側から例えば最初の脱水部で7kPa程度の吸引負圧を作用させ、次の脱水部で25kPa程度の吸引負圧を作用させて脱水する真空装置5dを備えている。
【0022】
圧搾転着部5Yは、真空脱水部5Xからの汚泥Sを圧搾し脱水ケーキMを得るものであり、汚泥Sを濾布ベルト5Vと共に圧搾して脱水する上下一対の対向するプレスロール5e,5eを備えると共に、上側のプレスロール5eの下流側の近傍に、圧搾脱水により上側のプレスロール5eの周面に転着した脱水ケーキMを剥離させて掻き落とすスクレーパ5fを備えている。そして、プレスロール5e,5eによるプレス圧力は、100〜600kPa程度の圧力に設定されている。
【0023】
洗浄・脱水部5Zは、圧搾転着部5Yからの濾布ベルト5Vを洗浄し絞るものであり、当該濾布ベルト5Vを洗浄水に浴させるための洗浄プール5hを備えると共に、この洗浄プール5hの下流側に、濾布ベルト5Vに洗浄水を噴射する水洗シャワー5jを備え、さらに、この水洗シャワー5jの下流側に、洗浄された濾布ベルト5Vを絞る上下一対の対向するスクイズロール5i,5iを備えている。
【0024】
図1に戻って、気流乾燥機6は、薄膜且つ低含水率の脱水ケーキMの乾燥に好適なものであり、濾布走行式脱水機5からの脱水ケーキを導入し、略逆U字状の経路6a内において高速の熱風の気流に乗せ搬送しながら乾燥させて乾燥汚泥とするものである。
【0025】
次に、このように構成された汚泥処理システム100の作用について説明する。
【0026】
汚泥は前処理装置1の槽内に導入され、先ず、脱水助剤供給装置1aから例えば木屑、灰、石炭等の脱水助剤が槽内に必要に応じて適量供給され、撹拌機1fにより汚泥及び脱水助剤が撹拌されることで混合される。
【0027】
図4は、脱水助剤添加率と湿量基準含水率との関係を示す線図であり、図中、四角印は長径が0.25mmより小さい木屑を、三角印は長径が0.5〜1.0mmの木屑を、菱形印は灰を、×印は長径が0.5mmより小さい石炭を、丸印は長径が0.5〜1.0mmの石炭をそれぞれ示している。
【0028】
図4より明らかなように、灰及び石炭は、助剤添加率50%で含水率が65%以下まで低下しているため、脱水助剤としては灰や石炭を用いるのが好ましい。
【0029】
そして、脱水助剤の供給、混合が終わったら、次いで、無機凝集剤供給装置1bから例えばPAC、ポリ鉄等の無機凝集剤が供給され、撹拌機1fにより混合されることで、凝結作用により小さなフロックが形成される。
【0030】
次いで、高分子凝集剤供給装置1cから例えばアニオン、カチオン等の高分子凝集剤が供給され、撹拌機1fにより混合されることで、凝集作用により小さなフロックが集められて大きなフロックが形成される。そして、前処理装置1からの汚泥Sは濾布走行式脱水機5に導入される。
【0031】
濾布走行式脱水機5では、図2に示すように、汚泥Sは濾布ベルト5V上に供給され、真空脱水部5Xにおいて、当該汚泥Sに対して真空装置5dにより濾布ベルト5Vの下面側から吸引負圧が作用し、汚泥S中の水分が濾布ベルト5Vに浸透する。その際、濾布ベルト5Vの極細繊維層から成る外面層5aが毛細管現象により水分のみを透過させて汚泥Sを確実に濾過し、中細繊維層から成る中間層5bが毛細管現象により水分の透過を促進し、基布層から成る内面層5cが水切れを促進する。従って、濾布ベルト5Vは、目詰まりを生じることなく汚泥Sを効率的に初期脱水する。なお、真空装置5dにより吸引された水分は回収タンク(不図示)に回収される。
【0032】
初期脱水された汚泥Sは、圧搾転着部5Yにおいて、濾布ベルト5Vと共に、対向するプレスロール5e,5e間を通過する際に、これらのロール5e,5eにより圧搾されて脱水される。その際、真空脱水部5Xで述べたのと同様に、外面層5aが水分のみを透過させて汚泥Sを確実に濾過し、中間層5bが水分の透過を促進し、内面層5cが水切れを促進する。
【0033】
これらの汚泥脱水の過程にあっては、脱水助剤が、生成される脱水ケーキMの含水率の低下に寄与する。
【0034】
そして、プレスロール5e,5eの圧搾により、約1〜2mmの薄膜で含水率が約70%以下の脱水ケーキMが形成される。
【0035】
この脱水ケーキMは、上側のプレスロール5eの周面に転着しスクレーパ5fにより掻き落されて回収される。この回収された脱水ケーキMはフレーク状を呈する。
【0036】
圧搾転着部5Yを通過し脱水ケーキMが剥離された濾布ベルト5Vは、洗浄・脱水部5Zにおいて、洗浄プール5hの洗浄水に浴することで洗浄され、次いで、水洗シャワー5jによる洗浄水の噴射によって洗浄され、次いで、スクイズロール5i,5i間を通過する際に、これらのロール5i,5iにより絞られて脱水され元の状態に戻る。
【0037】
一方、回収されたフレーク状の脱水ケーキMは、図1に示すように、気流乾燥機6に導入される。ここで、気流乾燥機6の略逆U字状の経路6a内を流れる熱風は400〜450°C程度であり、脱水ケーキMは、熱風の気流に乗って経路6a内を高速に搬送されながら十分に乾燥されて乾燥汚泥とされる。この乾燥汚泥は、その含水率が約10〜30%であり、例えば木屑並みの発熱量を有する燃料(汚泥燃料)とされる。
【0038】
この乾燥汚泥は、燃料として外部に販売されても良いし、汚泥処理システム100に設けられた例えばボイラ等の燃焼装置の燃料としても良い。
【0039】
次に、濾布走行式脱水機5に対して投入するエネルギー、気流乾燥機6に対して投入するエネルギー、乾燥汚泥が有するエネルギー等の具体的な算出方法について図5を参照しながら説明する。
【0040】
図5は、汚泥発熱量と投入エネルギーとの関係を本実施形態と従来技術とで比較して示す線図である。
【0041】
ここで、余剰汚泥量;Y(kg)
余剰汚泥の含水率;H(%)
脱水機の効率;A(kg-dry/h)、動力;E(kW)
脱水機による脱水後の含水率;H(%)
乾燥機の効率;ε
乾燥後の含水率;H(%)
汚泥低位発熱量;LHV(Drybase、kcal/kg)
水の蒸発潜熱;Q(20°C、585.9 kcal/kg)とする。
【0042】
そして、本実施形態では、脱水機として濾布走行式脱水機5を用いているため、当該脱水機5による脱水後の含水率H=70%とし、気流乾燥機6による乾燥後の含水率H=10%とする。なお、乾燥後の含水率は、本実施形態と従来技術ともに同じで10%である。
【0043】
固形物量S(kg)は以下の数式(1)で表される。
S=Y(100−H)/100…(1)
ここで、ある時点での水分量をWとすると、以下の数式(2)の関係があるから、
/(W+S)=H/100…(2)
(式中、n=0、1、2)
数式(1)、(2)より、余剰汚泥の水分量W(kg)は以下の数式(3)で表され、
=Y×H/100…(3)
脱水機5による脱水後の水分量W(kg)は以下の数式(4)で表され、
=Y×H(100−H)/{(100−H)×100}…(4)
乾燥後の水分量W(kg)は以下の数式(5)で表される。
=Y×H(100−H)/{(100−H)×100}…(5)
【0044】
汚泥発熱量(獲得エネルギー)QQHn(kcal)は以下の数式(6)で表される。
QQHn=LHV×S−Q×W…(6)
【0045】
脱水機5による脱水経済効率k1は以下の数式(7)で表される。
k1=(獲得エネルギー)/(投入エネルギー)…(7)
【0046】
脱水機5による獲得エネルギーQH1−H0(kcal)は、数式(6)、(3)、(4)より、以下の数式(8)で表される。
H1−H0=QQH1−QQH0
=Q(W−W
=Q×Y[(H/100)−{H(100−H)/{(100−H)×100}]…(8)
【0047】
脱水機5に対する投入エネルギーEA(kcal)は以下の数式(9)で表される。
EA=(S/A)×E×860(kcal/kW) …(9)
【0048】
すなわち、数式(7)より、
k1=数式(8)/数式(9)
【0049】
k1は、図5中の下側の実線D1の傾きに相当する。従って、本実施形態によれば、脱水機5により得られた脱水ケーキは、図5中の位置P1(含水率H=70%)に位置する。
【0050】
乾燥機6による乾燥経済効率k2は以下の数式(10)で表される。
k2=(獲得エネルギー)/(投入エネルギー)…(10)
【0051】
乾燥機6による獲得エネルギーQH2−H1(kcal)は以下の数式(11)で表される。
H2−H1=QQH2−QQH1…(11)
【0052】
乾燥機6に対する投入エネルギーEB(kcal)は以下の数式(12)で表される。
EB=(QQH2−QQH1)/ε…(12)
【0053】
すなわち、数式(10)、(11)、(12)より、
k2=εとなる。
【0054】
ここで、k2は、図5中の上側の実線D2の傾きに相当する。従って、本実施形態によれば、乾燥機6により得られた乾燥汚泥は、図5中の位置P2(含水率H=10%)に位置する。なお、εは、大凡、0.45<εn<0.8である。
【0055】
そして、本実施形態によれば、上記濾布走行式脱水機5及び上記気流乾燥機6を用いることにより、投入エネルギー2000(kcal/kg)に対し、汚泥発熱量(乾燥汚泥が有するエネルギー)は3100(kcal/kg)であった(位置P2参照)。
【0056】
すなわち、得られた汚泥燃料の価値が、当該汚泥燃料を得るのにかかる脱水及び乾燥の合算コストを上回り、コストメリットが出た。
【0057】
なお、ここでは、図5中の乾燥汚泥の位置は位置P2となっているが、コストメリットが出る領域は、2点鎖線で示す傾き1の直線Rより左側の領域Mであるから、この領域M内に乾燥汚泥が位置するように、脱水処理条件及び乾燥処理条件を設定すれば良い。
【0058】
このように、本実施形態の汚泥処理方法によれば、乾燥汚泥が有するエネルギーが、脱水装置に対して投入するエネルギーと乾燥装置に対して投入するエネルギーとの合算値より大きくなるように、脱水装置の脱水処理条件及び乾燥装置の乾燥処理条件を設定して、得られた乾燥汚泥を汚泥燃料とするようにしているため、得られた汚泥燃料の価値が、当該汚泥燃料を得るのにかかる脱水及び乾燥の合算コストを上回り、コストメリットが出るようになっている。
【0059】
また、本実施形態によれば、脱水装置として濾布走行式脱水機5を用い、乾燥装置として気流乾燥機6を用いているため、濾布走行式脱水機5により、脱水ケーキの厚みが従来の約5〜20mmから約1〜2mmの薄膜とされ、且つ、脱水ケーキの含水率が従来の約85%から約70%以下に下げられ、このように脱水ケーキが薄膜且つ低含水率とされるため、薄膜且つ低含水率の乾燥に好適な気流乾燥機6により、短時間で、脱水ケーキが乾燥されてその含水率が約10〜30%に下げられ、例えば木屑並みの発熱量を有する燃料(汚泥燃料)とすることができる。すなわち、コストの多くを占める乾燥装置に着目し、脱水装置としては、大量の有機汚泥処理には向かないが、後工程の気流乾燥機6での最適な処理を可能とすべく従来よりも脱水ケーキの厚みを薄く含水率を低くできると共に厚み成形工程を不要にできる濾布走行式脱水機5を用い、後工程の乾燥装置としては、薄膜且つ低含水率の汚泥を、熱容量負荷が高く乾燥効率の高い気流乾燥機6を用いることで、短時間で乾燥でき、装置を小型化し、乾燥エネルギーも低減できる。その結果、脱水及び乾燥の合算コストを従来に比して容易に下げることができ、当該合算コストを、得られる汚泥燃料の価値より容易に下げることができる。
【0060】
なお、従来の脱水機として代表的な例えばベルトプレス脱水機を用いると共に、従来の乾燥機として代表的な例えばキルン式乾燥機を用いると、ベルトプレス脱水機による脱水後の含水率H=82.9%となり、キルン式乾燥機による乾燥後の含水率H=H=10となり、上記数式に当てはめていくと、ベルトプレス脱水機による脱水経済効率k3は、図5中の下側の点線D3の傾きに相当し、ベルトプレス脱水機により得られた脱水ケーキは、図5中の位置P3に位置する。また、キルン式乾燥機による乾燥経済効率k4は、図5中の上側の点線D4の傾きに相当し、キルン式乾燥機より得られた乾燥汚泥は、図5中の位置P4に位置する。
【0061】
このように、従来のベルトプレス脱水機及びキルン式乾燥機を用いた場合には、上記汚泥発熱量(乾燥汚泥が有するエネルギー)3100(kcal/kg)を得るのに要する投入エネルギーは3200(kcal/kg)であり(位置P4参照)、得られた汚泥燃料の価値が、当該汚泥燃料を得るのにかかる脱水及び乾燥の合算コストを下回るため(乾燥汚泥が2点鎖線で示す傾き1の直線Rより右側の領域Nに位置しているため)、コストメリットが出ない。
【0062】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、食品工場で生じる有機汚泥を対象としているが、食品工場の有機汚泥に限定されるものではない。
【0063】
また、上記実施形態においては、脱水と乾燥の合算コストを、得られる汚泥燃料の価値より容易に下げることができるとして、濾布走行式脱水機5及び気流乾燥機6を用いているが、乾燥汚泥が図5中の上記領域M内に位置できれば、他の脱水機や乾燥機を用いても良い。
【0064】
因みに、採用しようとしている乾燥機の効率が、従来の乾燥機の効率より高ければ、採用しようとしている脱水機による脱水ケーキの図5中の位置P1が、従来の乾燥機による点線D4より左側の領域に位置することで、従来よりもコストメリットが出ることになる。
【符号の説明】
【0065】
5…濾布走行式脱水機(脱水装置)、5e…プレスロール、5V…濾布ベルト(濾布)、6…気流乾燥機(乾燥装置)、100…汚泥処理システム、M…脱水ケーキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機汚泥を脱水装置により脱水処理し、得られた脱水ケーキを乾燥装置により乾燥処理して乾燥汚泥を得る汚泥処理方法であって、
前記脱水装置の脱水処理条件及び前記乾燥装置の乾燥処理条件を、
(前記脱水装置に対して投入するエネルギー)+(前記乾燥装置に対して投入するエネルギー)<(前記乾燥汚泥が有するエネルギー)
を満たすように設定し、
前記乾燥汚泥を汚泥燃料として得ることを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
前記脱水装置として、所定の周回軌道を移動する濾布及び当該濾布上に供給された前記有機汚泥を、対向するプレスロール間で圧搾し薄膜の前記脱水ケーキを得る濾布走行式脱水機を用い、
前記乾燥装置として、前記脱水ケーキを熱風の気流に乗せ搬送しながら乾燥させる気流乾燥機を用いることを特徴とする請求項1記載の汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218260(P2011−218260A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87780(P2010−87780)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】