説明

汚泥濃縮機

【課題】 汚泥濃縮機の流下通路を流れ下る汚泥は、フロック塊になっても、液体を分離し易くする。また、流下通路の透過孔は、目詰まりし難くする。
【解決手段】 汚泥が流れ下る液体透過性の流下通路を設けた汚泥濃縮機において、流下通路1の上流側から下流側に移動する調速板36で汚泥の流下速度を制御する流下速度制御装置を設けた。流下通路は、床板3の上に切断片14を突出し、床板上のフロックを含む汚泥Sを調速板で押して切断片で切断する構成にした。また、流下通路は、床板に細長い透過孔を設け、透過孔に掃除片13を嵌合し、掃除片は、細長い透過孔に沿って移動可能にし、掃除片の移動で透過孔を掃除する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を液体透過性の流下通路に流して液体を分離する濃縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃水や生活廃水は、凝集反応槽に供給して凝集剤を添加し、液体中の懸濁粒子を凝集してフロックを生成する。液体中にフロックを含む汚泥は、濃縮機に供給し、重力で液体を分離し、濃度を高める。濃縮汚泥は、スクリュープレスに供給し、圧搾で液体を分離し、脱水ケーキにする。
汚泥の濃縮機は、特許文献1に例示されているように、汚泥が流れ下って濃縮される流下通路を斜めに設けている。流下通路の上端の入口には、凝集反応槽の出口を接続する。流下通路の下端の出口は、スクリュープレスの入口に接続する。
流下通路は、横断面形状を溝形にし、床板を液体透過性にしている。流下通路の下には、床板の透過孔から流れ落ちる液体を集める液体室を設けている。流下通路の上には、底板をブラシで掃くと共に、汚泥が流れ下る速度をせき止め板で制御する掃き掃除装置兼用の流下速度制御装置を設けている。また、底板に洗浄水を設定時間毎に噴射する洗浄装置を設けている。
【0003】
【特許文献1】特許第2934179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[背景技術の課題]
上記のような汚泥濃縮機において、液体中にフロックを含む汚泥は、流下通路を流れ下る際、その上流側部分では、液体中にフロックが分散した状態であって、川のように流れ、液体が分離する量が多い。そのような汚泥は、流下通路の中程位に達すると、液体の減少によってフロックが集まって塊になる。流下通路の下流側部分では、フロック塊が流れ下る。フロック塊は、塊の外面に液体が膜状に付着し、隣接するフロックの間に液体が挟まれている。このフロック塊は、内部の液体が分離し難い。また、液体の粘度又は表面張力が高いと、塊外面の液体膜も分離し難い。
【0005】
その上、液体の粘度又は表面張力が高いと、流下通路は、床板に液体が膜状に付着し、床板の透過孔が目詰まりし易い。流下通路の床板の目詰まり除去、掃除には、ブラシと洗浄水を用いている。洗浄水は、消費量が多い。
【0006】
[課題を解決するための着想]
流下通路は、床板上に刃物のような切断片を突出することとした。すると、汚泥ないしフロック塊は、流下通路を流れ下る際、床板上に突出した切断片で切断される。フロック塊は、塊外面の液体膜が破られ、内部のフロック群が切り開かれる。塊外面の液体も、内部のフロック間の液体も、分離し易くなる。
【0007】
また、流下通路の床板の透過孔は、細長い形状にし、掃除片を嵌合し、掃除片を透過孔に沿って移動することとした。すると、床板の透過孔は、掃除片の移動で掃除され、目詰まりし難い。洗浄水は、必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1)汚泥が流れ下る液体透過性の流下通路を設けた汚泥濃縮機において、
流下通路の上流側から下流側に移動する調速板で汚泥の流下速度を制御する流下速度制御装置を設け、
流下通路は、床板の上に切断片を突出し、床板上のフロックを含む汚泥を調速板で押して切断片で切断する構成にしたことを特徴とする。
2)上記の汚泥濃縮機において、
切断片は、複数を流下通路の横断方向に並列し、並列数を流下通路の下流側では上流側より多くしたことを特徴とする。
3)上記の汚泥濃縮機において、
調速板は、台に多数の毛を突出してブラシ状にし、毛が床板を掃くと共に毛の列が床板上の切断片を通過する構成にしたことを特徴とする。
4)上記の汚泥濃縮機において、
流下通路は、床板に細長い透過孔を設け、透過孔に掃除片を嵌合し、
掃除片は、細長い透過孔に沿って移動可能にし、
掃除片の移動で透過孔を掃除する構成にしたことを特徴とする。
5)上記4)の汚泥濃縮機において、
床板の透過孔には、板片を貫通し、
板片は、床板の上に突出した部分を切断片にし、透過孔に嵌合した部分を掃除片にしたことを特徴とする。
6)汚泥が流れ下る液体透過性の流下通路を設けた汚泥濃縮機において、
流下通路は、床板に細長い透過孔を設け、透過孔に掃除片を嵌合し、
掃除片は、細長い透過孔に沿って移動可能にし、
掃除片の移動で透過孔を掃除する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
流下通路を流れ下る汚泥は、フロックの塊になっても、その塊は、流下通路に突出した切断片で切断される。液体が分離し易い。
【0010】
また、流下通路の透過孔は、これに嵌合した掃除片の移動で掃除される。目詰まりし難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施形態の汚泥濃縮機は、図1に示すように、汚泥が流れ下って濃縮される流下通路1を前下がりの斜めに設けている。流下通路1の後上端の入口には、図示しない凝集反応槽の出口を接続する。流下通路1の前下端の出口は、図示しないスクリュープレスの入口に接続する。
【0012】
流下通路1は、図1〜図5に示すように、左右の側壁2と底板3を備え、横断面形状を溝形にしている。底板3は、多数の透過孔を貫通し、液体透過性にしている。
【0013】
床板3は、ヴェッジワイヤスクリーンにし、楔形状断面のワイヤ4を前後方向の汚泥流下方向に沿って配置している。ワイヤ4は、多数本を左右方向、横断方向に隙間を置いて並列している。ワイヤ4の下には、桟5を横断方向に沿って配置している。桟5は、複数本を汚泥流下方向に間隔を置いて並列している。ワイヤ4は、桟5に固定している。桟5は、左右の側壁2に掛け渡して固定している。ワイヤ4と桟5の間の隙間は、透過孔にしている。透過孔は、汚泥流下方向に細長い長方形孔、スリットにしている。多数の透過孔は、汚泥流下方向と横断方向にそれぞれ均等間隔に配列している。流下通路1の下には、床板3の透過孔から流れ落ちる液体を集める液体室6を設けている。
【0014】
流下通路1と液体室6の間には、図1〜図5に示すように、床板3の透過孔の掃除装置を兼ねた汚泥切断装置を設けている。
この装置は、床板3の下に可動軸11を汚泥流下方向に沿って軸受けし、軸心方向の汚泥流下方向に移動可能にしている。可動軸11は、2本を左右に並列している。左右の可動軸11には、横棒12を横断方向に沿って掛け渡して固定している。横棒12は、複数本を汚泥流下方向に間隔を置いて並列している。横棒12の並列間隔は、床板3の桟5のそれと同一にしている。
【0015】
各横棒12には、それぞれ、板片13を貫通して固定している。板状の板片13は、縦にして汚泥流下方向即ち床板3の透過孔の長手方向に沿って配置している。この板片13は、多数枚を横断方向に隙間を置いて並列している。板片13の並列間隔は、床板3の透過孔の横断方向間隔と同一にしている。
【0016】
一部の板片13は、背を高くし、床板3の透過孔を貫通し、床板3の上に突出している。背の高い板片13は、床板3上に突出している部分を切断片14にし、床板3の透過孔に嵌合している部分を掃除片にしている。掃除片は、汚泥流下方向の長さが床板3の透過孔のそれより短い。背の高い板片13ないし切断片14は、横断方向の並列間隔を均等にしている。また、切断片14は、流下通路1の下流側の横棒12上の列では上流側の横棒12上の列より、並列枚数を多くし、並列間隔を狭くしている。
【0017】
残部の板片13は、背を低くし、上端を床板3の透過孔に差し込み、床板3上に突出していない。背の低い板片13は、床板3の透過孔に嵌合し、掃除片にしている。掃除片13は、汚泥流下方向の長さが床板3の透過孔のそれより短い。
【0018】
すべての板片13、横棒12と可動軸11は、板片13が床板3の透過孔に嵌合した状態で、汚泥流下方向に沿って移動可能にしている。その移動可能範囲は、板片13が床板3の透過孔の上流端、後端に当る後退端と、床板3の透過孔の下流端、前端に当る前進端の間である。
【0019】
板片13の移動駆動装置は、左右の可動軸11の下面側をラック15にしている。左右のラック15の下には、回転軸16を横断方向に沿って軸受けしている。回転軸16には、ピニオン17を左右位置にそれぞれ固定している。左右のピニオン17は、それぞれ、左右のラック15に噛み合わせている。回転軸16は、傘歯車伝動機構で電動機18に連結している。
【0020】
可動軸11には、作動片19を固定している。作動片19の前側と後側には、それぞれ、スイッチ20、21を設けている。可動軸11ないし板片13が後退端に位置すると、図1に示すように、作動片19が後側のスイッチ21を作動する。逆に、前進端に位置すると、図6に示すように、作動片19が前側のスイッチ20を作動する。
【0021】
板片13の移動を制御する電気回路を設けている。電気回路は、板片13が後退端に停止している時間が設定値になる毎に、電動機18を回転して板片13を前進させ、前側のスイッチ20が作動すると、電動機18を停止して板片13を前進端に停止させる。また、板片13が前進端に停止している時間が設定値になる毎に、電動機18を逆転して板片13を後退させ、後側のスイッチ21が作動すると、電動機18を停止して板片13を後退端に停止させる。
【0022】
流下通路1の上には、底板3の掃き掃除装置を兼ねた汚泥の流下速度制御装置を設けている。
この装置は、流下通路1上の入口側と出口側に、それぞれ、駆動軸31と従動軸32を横断方向に沿って軸受けしている。駆動軸31は、鎖伝動機構で電動機33に連結している。駆動軸31と従動軸32は、それぞれ、左右位置に鎖車34を固定している。駆動軸31と従動軸32の左側の鎖車34には、無端の鎖35を掛け渡している。また、駆動軸31と従動軸32の右側の鎖車34にも、無端の鎖35を掛け渡している。左右の鎖35には、調速板36を横断方向に沿って掛け渡して取り付けている。調速板36は、複数枚を鎖35の外周側に等間隔位置に並列して外向きに突出している。
【0023】
この調速板36は、鎖35に取り付けた台に多数の毛を並列して突出し、ブラシ状にしている。ブラシの毛は、底板3上に突出した切断片14より長くしている。ブラシ状の調速板36は、鎖35の下側に位置する間、流下通路1に横断方向に沿って嵌合し、毛の端が底板3に接触する。この調速板36は、底板3上に突出している切断片14に当たると、毛の列が切断片14で左右に押し分けられ、切断片14を通過する。
【0024】
電動機33を駆動すると、調速板36は、駆動軸31を回って鎖35の下側に達し、流下通路1の入口に入り込み、流下通路1に嵌合する。そして、流下通路1に嵌合した状態で、ブラシの毛が底板3を掃きながら、底板3上に突出した切断片14を順次通過し、流下通路1を設定速度で下る。調速板36は、流下通路1の出口に達すると、流下通路1から抜け出し、従動軸32を回って鎖35の上側に至る。
【0025】
この汚泥濃縮機においては、図7に示すように、流下通路1の入口に、液体中にフロックを含む汚泥Sを供給する。汚泥Sは、流下通路1を流れ下る際、その上流側部分では、液体が分離する量が多く、流下通路1の中程位では、液体の減少によってフロックが集まって塊になる。流下通路1の下流側部分では、フロック塊が流れ下る。フロック塊は、フロックが分散した汚泥Sより、自然流下速度が遅くなる。
【0026】
流下通路1を流れ下るフロック塊は、流下通路1の上流側から下流側に移動する調速板36で押されて流れ、床板3上に突出した切断片14の列に押し付けられ、切断片14で切断される。調速板36で押し流されるフロック塊は、切断片14の列を順次通過し、複数回切断される。フロック塊は、切断片14の通過で、塊外面の液体膜が破られ、内部のフロック群が切り開かれる。塊外面の液体も、内部のフロック間の液体も、分離する。
【0027】
また、ブラシ状の調速板36は、毛が底板3に接しつつ移動し、底板3を掃除する。更に、板片13ないし掃除片13は、設定時間が経過する毎に、床板3の透過孔に嵌合した状態で前進又は後退し、床板3の透過孔を掃除する。床板3の透過孔は、目詰まりしない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、産業廃水や生活廃水の処理に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態における汚泥濃縮機の概略部分縦断側面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図2の流下通路付近の拡大図。
【図4】図1のB−B線断面図。
【図5】図4の流下通路付近の拡大図。
【図6】同汚泥濃縮装置の板片、切断片、掃除片の前進状態を示す概略部分縦断側面図。
【図7】同汚泥濃縮装置の使用状態を示す概略部分縦断側面図。
【符号の説明】
【0030】
1 流下通路
2 側壁
3 底板
4 底板のワイヤ
5 底板の桟
6 液体室
11〜21 透過孔掃除装置兼用の汚泥切断装置
11 可動軸
12 横棒
13 板片
13 背の高い板片、切断片と掃除片
13 背の低い板片、掃除片
14 切断片
15〜21 板片の移動駆動装置
15 ラック
16 回転軸
17 ピニオン
18 電動機
19 作動片
20 前側のスイッチ
21 後側のスイッチ
31〜36 底板掃き掃除装置兼用の汚泥流下速度制御装置
31 駆動軸
32 従動軸
33 電動機
34 鎖車
35 無端の鎖
36 調速板、ブラシ状の調速板
S 液体中にフロックを含む汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥が流れ下る液体透過性の流下通路を設けた汚泥濃縮機において、
流下通路の上流側から下流側に移動する調速板で汚泥の流下速度を制御する流下速度制御装置を設け、
流下通路は、床板の上に切断片を突出し、床板上のフロックを含む汚泥を調速板で押して切断片で切断する構成にしたことを特徴とする汚泥濃縮機。
【請求項2】
切断片は、複数を流下通路の横断方向に並列し、並列数を流下通路の下流側では上流側より多くしたことを特徴とする請求項1に記載の汚泥濃縮機。
【請求項3】
調速板は、台に多数の毛を突出してブラシ状にし、毛が床板を掃くと共に毛の列が床板上の切断片を通過する構成にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の汚泥濃縮機。
【請求項4】
流下通路は、床板に細長い透過孔を設け、透過孔に掃除片を嵌合し、
掃除片は、細長い透過孔に沿って移動可能にし、
掃除片の移動で透過孔を掃除する構成にしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の汚泥濃縮機。
【請求項5】
床板の透過孔には、板片を貫通し、
板片は、床板の上に突出した部分を切断片にし、透過孔に嵌合した部分を掃除片にしたことを特徴とする請求項4に記載の汚泥濃縮機。
【請求項6】
汚泥が流れ下る液体透過性の流下通路を設けた汚泥濃縮機において、
流下通路は、床板に細長い透過孔を設け、透過孔に掃除片を嵌合し、
掃除片は、細長い透過孔に沿って移動可能にし、
掃除片の移動で透過孔を掃除する構成にしたことを特徴とする汚泥濃縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−56390(P2009−56390A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225635(P2007−225635)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(394006141)
【Fターム(参考)】