説明

汚泥濃縮装置

【課題】濾過面の目詰まりと固定成分のリークの発生を抑えて濃縮汚泥濃度と固形物回収率の向上を図ることができるとともに、濃縮倍数を原泥濃度の変動に追従させて良好な濃縮処理を行うことができる汚泥濃縮装置を提供すること。
【解決手段】濾過筒3の内部にスパイラルスクリュー4を回転可能に収容し、該スパイラルスクリュー4を回転駆動することによって、汚泥凝集槽11から前記濾過筒3内に導入される汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒3の濾過面3aを通過させて分離液として外部に排出して汚泥を濃縮するとともに、濾過筒3の内部より濃縮された汚泥を排出する汚泥濃縮装置1において、前記スパイラルスクリュー4を汚泥導入側の前半部4Aと汚泥排出側の後半部4Bとに2分割し、前半部4Aの回転速度を後半部4Bのそれよりも高く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過筒内でスパイラルスクリューを回転駆動することによって、汚泥凝集槽から濾過筒内に導入される汚泥を搬送しながらこれを濃縮するスクリュープレス型の汚泥濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種汚泥を廃棄又は焼却するため、汚泥を脱水機にて脱水処理することが行われるが、脱水機の処理能力のみで汚泥の脱水を効率良く行うことはできない。このため、汚泥の脱水機による脱水処理に先立って、汚泥を凝集剤で凝集させ、この凝集された汚泥(凝集汚泥)から水分を分離して汚泥を濃縮することが行われ、これを実施するための汚泥濃縮装置が種々提案されて実用に供されている。
【0003】
ところで、汚泥濃縮装置として、スクリュープレス型があるが、本出願人が先に提案したスクリュープレス型の汚泥濃縮装置の一例を図3に示す(特許文献1参照)。
【0004】
即ち、図3は従来の汚泥濃縮装置1’の基本構成を示す概略図であり、図示の汚泥濃縮装置1’は、密閉構造を有する円筒タンク状の外筒2を略水平に設置し、この外筒2の内部に両端が密閉された円筒状の濾過筒3を略水平に配置し、該濾過筒3内にスパイラルスクリュー4を回転可能に収容して構成されている。
【0005】
ここで、上記濾過筒3の前記外筒2内に臨む部位の周面は、パンチングプレート又はウェッジワイヤー等から成る濾過面3aを構成しており、濾過筒3の一端底部からは濃縮汚泥排出管5が導出している。そして、濃縮汚泥排出管5には濃縮汚泥ポンプ6が設けられている。
【0006】
又、前記外筒2の上部側方からは分離液排出管7が導出しており、この分離液排出管7の排出部の高さはh2
に設定されている。
【0007】
更に、前記スパイラルスクリュー4は、回転軸4aに螺旋状のスクリユー羽根4bを巻装して構成されており、回転軸4aには、駆動源であるモータ8が直結されている。尚、スパイラルスクリュー4(スクリュー羽根4b)の外径は濾過筒3の濾過面3aの内径よりも僅かに小さく設定されており、スパイラルスクリュー4(スクリュー羽根4b)の外周縁と濾過筒3の濾過面3aとの間には微小隙間が形成されている。
【0008】
又、前記外筒2の底部には、逆洗用の圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ9から導出する空気配管10が接続されている。
【0009】
他方、11は上面が開口した円筒タンク状の汚泥凝集槽であり、その内部には汚泥が収容されている。そして、この汚泥には凝集剤が添加され、モータ12によって回転駆動される攪拌機13によって汚泥と凝集剤が撹拌されることによって、汚泥は、これに含まれる固形成分が凝集されて凝集汚泥となる。
【0010】
又、汚泥凝集槽11の上部側方から略水平に延びる凝集汚泥導入管14は、前記濾過筒2の上端入口部に接続されている。
【0011】
而して、汚泥凝集槽11内の凝集汚泥が凝集汚泥導入管14を通って濾過筒3内にその一端上部から導入されると、この凝集汚泥は、モータ8によって所定速度で回転駆動されるスパイラルスクリュー4によって入口側から出口側に向かって(図3の右方に向かって)搬送されるとともに、これに含まれる水分が濾過筒3の濾過面3aを通過して外筒2内に分離液として収容される。ここで、前記分離液排出管7の排出部の高さh2 は汚泥凝集槽11の液位h1 よりも低く(h2 <h1 )設定されているため、配管の圧力損失を無視すれば、両者h1 ,h2 の差(ヘッド差)Δh12(=h1 −h2 )に基づく差圧を濾過圧力として、凝集汚泥から分離された水分が濾過筒3の濾過面3aを通過して外筒2内に分離液として収容される。又、この場合、外筒2は、汚泥凝集槽11の液位h1 よりも下方に配置されているため、外筒2内に収容される分離液は外筒2内に充満し、この分離液中に濾過筒3の濾過面3aが埋没することとなる。
【0012】
そして、外筒2内に収容された分離液は、分離液排出管7を通って外部へと排出される。又、スパイラルスクリュー4の回転によって濾過筒3内を入口側から出口側に向かって搬送される凝集汚泥は、その途中で水分が分離されることによって濃縮されて濃縮汚泥となり、この濃縮汚泥は、濃縮汚泥ポンプ6によって濃縮汚泥排出管5を通って外部へと排出され、不図示の脱水機による脱水処理に供される。
【0013】
而して、以上説明した汚泥濃縮装置1’においては、前述のように濾過筒3の濾過面3aが外筒2内の分離液中に埋没すると、該濾過面3aは、その全面が凝集汚泥から水分を分離するために供されるため、その分離能率が高められて濾過筒3、延ては汚泥濃縮装置1’全体の小型化が図られる。
【0014】
又、濾過筒3の濾過面3aでの濾過圧力は、濾過筒3の液位h3 と分離液排出管7の排出部の高さh2 との差Δh32(=h3 −h2 )に基づく差圧によって決定されるため、分離液排出管7の排出部の高さh2 を任意に設定することによって濾過圧力を最適値に保つことができ、濾過筒3の濾過面3aにおける固形成分のリークが抑制され、この固形成分のリークを防止するために凝集剤の添加量を多くする必要もなくなる。
【0015】
更に、スパイラルスクリュー4は、濾過筒3の濾過面3aとの間に微小隙間を形成して濾過筒3内を回転するため、濾過面3aの内面がスパイラルスクリュー4によって清掃され、濾過面3aに固形成分が付着しても、この固形成分はスパイラルスクリュー4によって掻き取られる。このため、濾過面3aに目詰まりが発生せず、該濾過面3aは、その本来の濾過機能を安定的に果たすことができる。
【0016】
【特許文献1】特開2003−164899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、汚泥濃縮装置において、濾過筒内で回転するスパイラルスクリューの機能としては、
1)濾過の進行に伴って濾過面に付着する固形成分等を除去して濾過面を更新する機能
2)凝縮汚泥を濾過筒内で搬送する機能
が挙げられるが、濾過面を清掃するためには、スパイラルスクリューを或る程度速く回転させる必要があり、通常の運転では、スパイラルスクリューの回転速度としては30rpm(濾過面が2秒に1回掻き取られる程度の速度)程度が望ましい。尚、装置の入口側の前半部では、濃縮汚泥の濃度が低くて濾過速度が速いために濾過面の目詰まりが発生し易いが、出口側の後半部では、濃縮汚泥の濃度が高くて濾過速度が遅いために濾過面の目詰まりが発生にくい。
【0018】
又、スパイラルスクリューによる凝集汚泥の搬送においては、例えば濃度0.5%の汚泥を濃度5%まで濃縮する場合には、固形物当たりの汚泥の容積は1/10まで減少する。従って、スパイラルスクリューによる凝集汚泥の搬送量が汚泥濃縮装置の入口と出口で等しいものと仮定すると、出口での固形物の搬送量は入口での固形物の搬送量の10倍となる。
【0019】
而して、汚泥の濃度が低くて該汚泥の流動性が高い入口付近では、スパイラルスクリューの搬送力が弱く、汚泥は、隣接する前後のスクリュー羽根の間を通って逆流することができるため、スパイラルスクリューの回転速度を速くしても問題は発生しない。
【0020】
ところが、汚泥の濃縮が進む出口付近では、汚泥の濃度が高くなってスパイラルスクリューの搬送力が強くなるため、濃縮汚泥を出口に向かって押し付ける作用が生じて濾過筒内の圧力が上昇し、この圧力上昇によって汚泥の固形成分が濾過面をリークするという問題が発生する。
【0021】
上記問題は、図4に示すように、スパイラルスクリュー4のスクリュー羽根4bのピッチ(羽根ピッチ)を入口から出口に向かって次第に小さくすれば或る程度は解消されるが、スクリュー羽根4bのピッチを極端に小さくすることは物理的に不可能であるため、前記問題の解決には限界があった。尚、図4においては、図3に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0022】
又、濃縮汚泥濃度を或る値に設定している場合、装置の入口と出口での汚泥量の比(濃縮倍数)は原泥濃度によって変化する。例えば、濃縮汚泥濃度が5%に設定されている場合、原泥濃度が0.5%、1.0%であれば、濃縮倍数はそれぞれ10倍、5倍となるが、スパイラルスクリューの羽根ピッチは不変であって、この羽根ピッチを装置の運転中に変えることは不可能であるため、濃縮倍数を原泥濃度の変動に追従させることは困難であった。
【0023】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、濾過面の目詰まりと固定成分のリークの発生を抑えて濃縮汚泥濃度と固形物回収率の向上を図ることができるとともに、濃縮倍数を原泥濃度の変動に追従させて良好な濃縮処理を行うことができる汚泥濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、濾過筒の内部にスパイラルスクリューを回転可能に収容し、該スパイラルスクリューを回転駆動することによって、汚泥凝集槽から前記濾過筒内に導入される汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させて分離液として外部に排出して汚泥を濃縮するとともに、濾過筒の内部より濃縮された汚泥を排出する汚泥濃縮装置において、前記スパイラルスクリューを汚泥導入側の前半部と汚泥排出側の後半部とに2分割し、前半部の回転速度を後半部のそれよりも高く設定したことを特徴とする。
【0025】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記スパイラルスクリューの軸を2重軸とし、該スパイラルスクリューの前半部と後半部を各軸によってそれぞれ独立に回転駆動することを特徴とする。
【0026】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記スパイラルスクリューの後半部の羽根ピッチを前半部のそれよりも小さく設定したことを特徴とする。
【0027】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記スパイラルスクリューの前半部と後半部の各羽根ピッチを汚泥導入側から汚泥排出側に向かって漸減させたことを特徴とする。
【0028】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記濾過筒の濾過面を通過した水分を収容するとともに、該濾過筒を内部に有する外筒と、該外筒内に収容された水分を分離液として外部に排出する排出部とを備え、濾過筒の濾過面を前記汚泥凝集槽の液位よりも下方に配置し、該濾過筒の少なくとも濾過面を前記外筒内の分離液中に埋没させたことを特徴とする。
【0029】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記分離液の排出部の液位を前記汚泥凝集槽の液位よりも下方に位置せしめ、両液位の差を濾過圧力として、汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させてこれを分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
請求項1記載の発明によれば、スパイラルスクリューを汚泥導入側の前半部と汚泥排出側の後半部とに2分割し、前半部の回転速度を後半部のそれよりも高く設定したため、汚泥の濃縮が進む後半部における汚泥の搬送力が弱くなり、後半部での濾過筒内での圧力上昇が抑えられ、この結果、固形成分のリークの発生が抑えられて濃縮汚泥濃度と固形物回収率の向上が図られる。
【0031】
又、汚泥濃度が低くて濾過速度が速いために濾過面の目詰まりが発生し易い前半部では、回転速度を上げて濾過面の清掃能力を高め、濾過面の目詰まりの発生を防ぐことができる。尚、汚泥濃度が高くて濾過速度が遅い後半部では、濾過面の目詰まりが軽微であるため、回転速度が遅くても問題は発生しない。
【0032】
更に、汚泥濃度が低い前半部での汚泥搬送量が汚泥濃度が高い後半部のそれよりも多くなるため、濃縮倍数を原泥濃度の変動に追従させて良好な濃縮処理を行うことができる。
【0033】
請求項2記載の発明によれば、スパイラルスクリューの軸を2重軸とし、該スパイラルスクリューの前半部と後半部を各軸によってそれぞれ独立に回転駆動するようにしたため、前半部と後半部の回転速度を独立に設定することができ、前半部の回転速度を後半部のそれよりも高くすることができる。
【0034】
請求項3記載の発明によれば、スパイラルスクリューの後半部の羽根ピッチを前半部のそれよりも小さく設定したため、回転速度と羽根ピッチの双方によって後半部の汚泥搬送量を前半部のそれに対して小さく抑えることができ、請求項1記載の発明の効果を更に高めることができる。
【0035】
請求項4記載の発明によれば、スパイラルスクリューの前半部と後半部の各羽根ピッチを汚泥導入側から汚泥排出側に向かって漸減させたため、汚泥導入側から汚泥排出側に向かって高くなる汚泥濃度に合わせて汚泥搬送量も漸減させることができ、濃縮倍数を原泥濃度の変動に精度良く追従させて一層良好な濃縮処理を行うことができる。
【0036】
請求項5記載の発明によれば、濾過筒の濾過面を汚泥凝集槽の液位よりも下方に配置して該濾過筒の少なくとも濾過面を外筒内の分離液中に埋没させたため、濾過面は、その全面が凝集汚泥から水分を分離するために供され、その分離能率が高められて濾過筒、延ては汚泥濃縮装置全体の小型化が図られる。
【0037】
請求項6記載の発明によれば、分離液の排出部の液位と汚泥凝集槽の液位の差を濾過圧力とし、この濾過圧力によって汚泥からの水分を濾過筒の濾過面を通過させてこれを分離するようにしたため、分離液排出管の排出部の高さを任意に設定することによって濾過圧力を最適値に保つことができ、濾過筒の濾過面における固形成分のリークを抑制し、この固形成分のリークを防止するために凝集剤の添加量を多くする必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0039】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る汚泥濃縮装置1の基本構成を示す概略図であり、本図においては、図3に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての説明は省略する。
【0040】
本発明に係る汚泥濃縮装置1は、濾過筒3内で回転駆動されるスパイラルスクリュー4を汚泥導入側から汚泥排出側に向かって前半部4Aと後半部4Bに2分割し、前半部4Aの回転速度を後半部のそれよりも高く設定したことを特徴とし、他の構成は図3に示した従来の汚泥濃縮装置1’の構成と同じである。
【0041】
前記スパイラルスクリュー4は、二重軸構造を備える外軸4a1と内軸4a2を備え、前半部4Aは、外軸4a1に螺旋状のスクリュー羽根4b1を巻装して構成され、後半部4Bは、内軸4a2にスクリュー羽根4b2を巻装して構成されている。そして、本実施の形態では、スパイラルスクリュー4の後半部4Bのスクリュー羽根4b2のピッチ(羽根ピッチ)は、前半部4Aのスクリュー羽根4b1のピッチ(羽根ピッチ)よりも小さく設定されている。
【0042】
ここで、外軸4a1は前半部4Aのみに設けられ、その内部を内軸4a2が回転可能に挿通しており、外軸4a1の一端には大径のギヤ15が結着され、このギヤ15には、駆動源としてのモータ16の出力軸に結着された小径のギヤ17が噛合している。又、内軸4a2の一端には駆動源としてのモータ8が直結されている。従って、スパイラルスクリュー4の前半部4Aと後半部4Bは、各モータ16,8によってそれぞれ独立に異なる速度で回転駆動され得ることとなり、本実施の形態では、前半部4A(外軸4a1)の回転速度を後半部4B(内軸4a2)のそれよりも高く設定している。
【0043】
即ち、スパイラルスクリュー4の前半部4Aにおいては、モータ16の出力軸の回転は、ギヤ17,15を経て減速されて外軸4a1に伝達されるため、該外軸4a1及びこれに巻装されたスクリュー羽根4b1が所定の速度で回転駆動される。又、スパイラルスクリュー4の後半部4Bにおいては、モータ8の回転は、そのまま内軸4a2に伝達されるため、該内軸4a2及びこれに巻装されたスクリュー羽根4b2が所定の速度で回転駆動される。
【0044】
ところで、本実施の形態に係る汚泥濃縮装置1においても、濾過筒3の濾過面3aを汚泥凝集槽11の液位h1 よりも下方に配置し、該濾過筒3の濾過面3aを外筒2内の分離液中に埋没させている。
【0045】
而して、上面が開口した汚泥凝集槽11内に収容された汚泥に凝集剤が添加され、モータ12によって回転駆動される攪拌機13によって汚泥と凝集剤が撹拌されることによって、汚泥は、これに含まれる固形成分が凝集されて凝集汚泥となる。そして、汚泥凝集槽11内の凝集汚泥が凝集汚泥導入管14を通って濾過筒3内にその一端上部の入口から導入される。
【0046】
又、スパイラルスクリュー4は、その前半部4Aと後半部4Bがモータ16,8によってそれぞれ独立に異なる速度で回転駆動されており、濾過筒3内に導入された凝縮汚泥は、それぞれ異なる速度で回転するスパイラルスクリュー4の前半部4Aと後半部4Bによって図1の右方の汚泥排出側、即ち出口側に向かって搬送されるとともに、これに含まれる水分が濾過筒3の濾過面3aを通過して外筒2内に分離液として収容される。ここで、前記分離液排出管7の排出部の高さh2 は濾過筒3の液位h3 よりも低く(h2 <h3 )設定されているため、両者h3 ,h2 の差(ヘッド差)Δh32(=h3 −h2 )に基づく差圧を濾過圧力として、凝集汚泥から分離された水分が濾過筒3の濾過面3aを通過して外筒2内に分離液として収容される。又、この場合、外筒2は、汚泥凝集槽11の液位h1 よりも下方に配置されているため、外筒2内に収容される分離液は外筒2内に充満し、この分離液中に濾過筒3の濾過面3aが埋没することとなる。
【0047】
而して、本実施の形態では、スパイラルスクリュー4の前半部4Aの回転速度を後半部4Bのそれよりも高く設定するとともに、後半部4Bの羽根ピッチを前半部のそれよりも小さく設定したため、回転速度と羽根ピッチの双方によって後半部4Bの汚泥搬送量が前半部のそれに対して小さく抑えられる。このため、汚泥の濃縮が進む後半部4Bにおける濃縮汚泥の搬送力が弱くなり、後半部4Bでの濾過筒3内での圧力上昇が抑えられ、これによって固形成分のリークの発生が抑えられて濃縮汚泥濃度と固形物回収率の向上が図られる。
【0048】
又、汚泥濃度が低くて濾過速度が速いために濾過面3aの目詰まりが発生し易い前半部4Aでは、回転速度が高いために濾過面3aの清掃能力が高められ、濾過面3aの目詰まりの発生が防がれる。尚、汚泥濃度が高くて濾過速度が遅い後半部4Bでは、濾過面3aの目詰まりが軽微であるため、回転速度が遅くても問題は発生しない。
【0049】
更に、汚泥濃度が低い前半部4Aでの汚泥搬送量が汚泥濃度が高い後半部4Bのそれよりも多くなるため、濃縮倍数を原泥濃度の変動に追従させて良好な濃縮処理を行うことができるという効果も得られる。
【0050】
尚、定期的にエアコンプレッサ9から圧縮空気を空気配管10から外筒2と濾過筒3との間の分離液中に瞬間的に噴射することによって、分離液を外筒2から濾過筒3内へと逆流させ、濾過面3aの孔の周囲に付着した固形成分等を除去することによって濾過面3aの目詰まりを防ぐ逆洗と称される操作がなされる。
【0051】
以上の工程を経て濃縮汚泥から分離されて外筒2内に収容された分離液は、分離液排出管7を通って外部へと排出される。又、スパイラルスクリュー4の前半部4Aと後半部4Bによって濾過筒3内を汚泥排出側(図1の右方)へと搬送される凝集汚泥は、その途中で水分が分離されることによって濃縮されて濃縮汚泥となり、この濃縮汚泥は、濃縮汚泥ポンプ6によって濃縮汚泥排出管5を通って外部へと排出され、不図示の脱水機による脱水処理に供される。
【0052】
ところで、本実施の形態においても、濾過筒3の濾過面3aを汚泥凝集槽9の液位h1 よりも下方に配置して該濾過筒3の少なくとも濾過面3aを外筒2内の分離液中に埋没させたため、濾過面3aは、その全面が凝集汚泥から水分を分離するために供され、その分離能率が高められて濾過筒3、延ては汚泥濃縮装置1全体の小型化が図られる。
【0053】
又、分離液排出管7の排出部の液位h2 と濾過筒3の液位h3 の差Δh32(=h3 −h2 )を濾過圧力とし、この濾過圧力によって汚泥からの水分に濾過筒3の濾過面3aを通過させてこれを分離するようにしたため、分離液排出管7の排出部の液位h2 を任意に設定することによって濾過圧力を最適値に保つことができ、濾過筒3の濾過面3aにおける固形成分のリークを抑制し、この固形成分のリークを防止するために凝集剤の添加量を多くする必要がなくなる。
【0054】
尚、本実施の形態に係る汚泥濃縮装置1おいては、濾過筒3をその長手方向が略水平になるよう設置したが、略垂直になるよう設置しても良い。
【0055】
次に、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明するが、以下に挙げる実施例は本発明を何ら限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0056】
図1に示す本発明に係る汚泥濃縮装置1と図3に示す従来の汚泥濃縮装置1’を並設し、下水をオキシデーションディッチで処理した余剰汚泥を濃縮する運転を下記条件にて行った。
【0057】
<運転条件>
原汚泥濃度:平均1.0%
高分子凝集剤添加率:0.7%/TS
<運転結果>
本実施例及び比較例についての運転結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

本実施例では、比較例に対して処理量、濃縮汚泥濃度及び固形物回収率の何れにおいてても良好な結果が得られた。
【0059】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図2に基づいて説明する。
【0060】
図2は本発明の実施の形態2に係る汚泥濃縮装置1の基本構成を示す概略図であり、本図においては、図1に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての説明は省略する。
【0061】
本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様に、濾過筒3内で回転駆動されるスパイラルスクリュー4を汚泥導入側の前半部4Aと汚泥排出側の後半部4Bとに2分割し、前半部4Aの回転速度を後半部4Bのそれよりも高く設定するとともに、後半部4Bの羽根ピッチを前半部のそれよりも小さく設定しているが、前半部4Aと後半部4Bの各スクリュー羽根4b1,4b2のピッチ(羽根ピッチ)を汚泥導入側から汚泥排出側に向かって漸減させたことを特徴としており、他の構成は実施の形態1の構成と同じである。
【0062】
而して、本実施の形態によれば、前記実施の形態1と同様の効果が得られるが、スパイラルスクリュー4の前半部と後半部の各羽根ピッチを汚泥導入側から汚泥排出側に向かって漸減させたため、汚泥導入側から汚泥排出側に向かって高くなる汚泥濃度に合わせて汚泥搬送量も漸減させることができ、濃縮倍数を原泥濃度の変動に精度良く追従させて一層良好な濃縮処理を行うことができるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、前記特開2003−164899号公報に記載された汚泥濃縮装置以外の他のスクリュープレス型の汚泥濃縮装置に対して適用可能であって、その処理対象である汚泥の種類を問わない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【図3】従来例1に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【図4】従来例2に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1 汚泥濃縮装置
2 外筒
3 濾過筒
3a 濾過面
4 スパイラルスクリュー
4A スパイラルスクリューの前半部
4B スパイラルスクリューの後半部
4a1 外軸
4a2 内軸
4b1 スクリュー羽根
4b2 スクリュー羽根
5 濃縮汚泥排出管
6 濃縮汚泥ポンプ
7 分離液排出管
8 モータ
9 エアコンプレッサ
10 空気配管
11 汚泥凝集槽
12 モータ
13 撹拌機
14 凝集汚泥導入管
15 ギヤ
16 モータ
17 ギヤ
1 汚泥凝集槽の液位
2 分離液排出管の液位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過筒の内部にスパイラルスクリューを回転可能に収容し、該スパイラルスクリューを回転駆動することによって、汚泥凝集槽から前記濾過筒内に導入される汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させて分離液として外部に排出して汚泥を濃縮するとともに、濾過筒の内部より濃縮された汚泥を排出する汚泥濃縮装置において、
前記スパイラルスクリューを汚泥導入側の前半部と汚泥排出側の後半部とに2分割し、前半部の回転速度を後半部のそれよりも高く設定したことを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項2】
前記スパイラルスクリューの軸を2重軸とし、該スパイラルスクリューの前半部と後半部を各軸によってそれぞれ独立に回転駆動することを特徴とする請求項1記載の汚泥濃縮装置。
【請求項3】
前記スパイラルスクリューの後半部の羽根ピッチを前半部のそれよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の汚泥濃縮装置。
【請求項4】
前記スパイラルスクリューの前半部と後半部の各羽根ピッチを汚泥導入側から汚泥排出側に向かって漸減させたことを特徴とする請求項3記載の汚泥濃縮装置。
【請求項5】
前記濾過筒の濾過面を通過した水分を収容するとともに、該濾過筒を内部に有する外筒と、該外筒内に収容された水分を分離液として外部に排出する排出部とを備え、濾過筒内の濾過面を前記汚泥凝集槽の液位よりも下方に配置し、該濾過筒の少なくとも濾過面を前記外筒内の分離液中に埋没させたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の汚泥濃縮装置。
【請求項6】
前記分離液の排出部の液位を前記汚泥凝集槽の液位よりも下方に位置せしめ、両液位の差を濾過圧力として、汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させてこれを分離することを特徴とする請求項5記載の汚泥濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−75673(P2006−75673A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259703(P2004−259703)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】