説明

汚泥炭化システム

【課題】 脱水汚泥等の含水率が変化しても、均質な炭化物を得ることができる汚泥炭化システムを提供すること。
【解決手段】 脱水汚泥Aを乾燥機11で乾燥し、この乾燥汚泥Bを造粒機12で造粒した後、炭化炉13で炭化処理する汚泥炭化システムであって、前記造粒機12の駆動電流値を測定し、その測定値から含水率推定手段26により前記乾燥汚泥Bの含水率を推定し、この推定された乾燥汚泥Bの含水率に基き含水率制御手段27より乾燥汚泥Bの含水率を所定範囲に維持することで均質な炭化物Dを得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業集落排水処理施設、下水処理場、有機排水処理施設等から排出される汚泥を炭化処理する汚泥炭化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農業集落排水処理施設、下水処理場、有機排水処理施設等から排出される汚泥のリサイクル手法の一つとして、遠心脱水機で濃縮・脱水後に遠心薄膜乾燥機等により乾燥し、コンポスト堆肥として農地還元する方法がある。しかし、コンポスト堆肥としての利用では使用時期が偏っている為に、季節的な需給のアンバランスにより余剰が発生し産廃処分を余儀なくされる場合がある。また、堆肥として全量使用される場合でも長期の貯蔵が必要となり、悪臭の発生や広い保管スペースの確保等の問題が発生する。
【0003】
その解決手段として脱水汚泥を炭化して土壌改良材や肥料、吸着材などに再利用することが考えられているが、再利用時に常に一定の性能を発揮するためには均質な炭化物を製造する必要がある。そのため、下水処理やし尿処理等で発生した有機質汚泥の脱水汚泥を乾燥後に造粒、あるいは造粒後に乾燥させた造粒汚泥を炭化する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平7-242408号公報
【特許文献2】特開平11-310782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、脱水汚泥の含水率が変化すると炭化炉に投入する造粒汚泥の含水率も変わるため、炭化時に汚泥の固形分に加わる総熱量が変化してしまう。たとえ炭化温度が一定であったとしても、汚泥の含水率が増加すると増加した水分を蒸発させるためにより多くのエネルギーが消費されるので、その分汚泥の固形分の熱分解に消費できるエネルギーは減少し、十分な炭化ができなくなる。すなわち、汚泥の含水率変化により炭化状態が変わり、炭化物の均質性が保たれなくなるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、脱水汚泥等の含水率が変化しても、均質な炭化物を得ることができる汚泥炭化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の汚泥炭化システムは、脱水汚泥を乾燥機で乾燥し、この乾燥汚泥を造粒機で造粒し、この造粒汚泥を炭化炉で炭化処理する汚泥炭化システムであって、前記造粒機の駆動電流値を測定し、その測定値から前記乾燥汚泥の含水率を推定する含水率推定手段と、この含水率推定手段により推定された乾燥汚泥の含水率を所定範囲に維持する含水率制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明では、含水率制御手段として、乾燥機の乾燥温度を制御するものを用いるとよい。
【0008】
また、本発明では、乾燥機への汚泥供給機を有し、含水率制御手段は、汚泥供給機による乾燥機への汚泥供給量を制御するように構成するとよい。
【0009】
また、本発明では、脱水汚泥への水分調整剤供給装置を有し、含水率制御手段は、水分調整剤供給装置による脱水汚泥への水分調整剤供給量を制御するように構成してもよい。
【0010】
また、本発明では、乾燥汚泥への水分調整剤供給装置を有し、含水率制御手段は、水分調整剤供給装置による乾燥汚泥への水分調整剤供給量を制御するように構成してもよい。
【0011】
また、本発明では、乾燥機への入口部分に脱水汚泥に対する予熱手段を設け、含水率制御手段は、予熱手段による脱水汚泥への予熱量を制御するように構成してもよい。
【0012】
また、本発明では、造粒機への入口部分に乾燥汚泥に対する予熱手段を設け、含水率制御手段は、予熱手段による乾燥汚泥への予熱量を制御するように構成してもよい。
【0013】
これら予熱手段の熱源として、炭化炉からの排ガスを用い、含水率制御手段は、予熱手段に供給される排ガス量を制御するように構成してもよい。
【0014】
さらに、本発明の汚泥炭化システムは、含水率推定手段により推定された乾燥汚泥の含水率に応じて炭化炉の加熱量を制御する加熱量制御手段を備えた構成でもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭化炉に投入される造粒汚泥の含水率を推定することにより、この含水率を一定に制御したり、もしくは炭化炉への加熱量を制御することにより、均質な汚泥炭化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明による汚泥炭化システムの一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る汚泥炭化システムは、例えば、遠心薄膜乾燥機から排出した乾燥汚泥を造粒する際に、汚泥の含水率と造粒機の駆動電流値に比例関係があることを利用するものである。すなわち、運転中の造粒機の駆動電流値を計測して、得られた駆動電流値から炭化炉に投入される造粒汚泥の含水率を推定することにより、この含水率を一定に制御したり、もしくは炭化炉への加熱量を制御するなど、システムを制御する。この結果、脱水汚泥の含水率が変化しても均質な汚泥炭化物を得ることが可能となる。
【0018】
図1は、本発明に係わる汚泥炭化システムの構成を示している。図1において、11は遠心薄膜乾燥機などの汚泥乾燥機で、農業集落排水や下水などから生じる有機性排水汚泥を脱水後、脱水汚泥Aとして受け入れ、水分60%以下(望ましくは含水率50%程度)に乾燥し、乾燥汚泥Bとする。12は造粒機で、乾燥汚泥Bを、例えば、直径約5〜10mm、長さ約10〜20mm程度の円筒状に造粒し、造粒汚泥Cとして排出する。
【0019】
13は炭化炉で、内筒13a及び外筒13bからなる二重筒構造であり、造粒汚泥Cは造粒汚泥定量供給機14により内筒13a内に供給される。炭化炉13では、造粒汚泥Cが入口側から出口側に向かって移動する約15〜30分の間に、後述する燃焼炉15から外筒13bとの間に供給される燃焼ガスにより加熱され、約500〜700℃で炭化される。炭化された炭化物Dは内筒13aから排出される。
【0020】
ここで、造粒汚泥Cは圧縮作用を受けて造粒されているため、炭化物Dも適度な機械的強度を持っており、容易に壊れないため発塵が少なく取扱い易いという特徴がある。
【0021】
前記燃焼炉15には、燃焼用空気や灯油・プロパンガスのような補助燃料が供給されており、立上げ時などこれらを燃焼させて燃焼ガスを得ている。燃焼ガスは前述のように外筒13bとの間に供給され、内筒13a内の造粒汚泥を加熱し、炭化させる。
【0022】
炭化炉13の内筒13a内において、汚泥の熱分解により乾留ガスが発生するが、この乾留ガスは燃焼炉15に送られ、補助燃料と共に燃焼用空気と混合され燃焼する。燃焼炉15では、乾留ガスの燃焼と悪臭物質の分解およびダイオキシン分解のため、800℃以上で燃焼される。燃焼された高温の加熱ガスは炭化炉13の外筒13bと内筒13aの間を流れ、上述のように内筒13a内を加熱後、排ガス処理装置16で粉塵や有害成分を除去後に、排ガスとして排出される。
【0023】
前記汚泥乾燥機11に対しては、その入口側に汚泥供給機18が設けられており、脱水汚泥Aを、乾燥機11に定量供給する。この乾燥機11への汚泥供給量は後述するように可変制御することができる。
【0024】
また、この汚泥乾燥機11の入口側には、水分調整剤供給装置19が設けられており、脱水汚泥Aへ水分調整剤を供給する。この脱水汚泥Aへの水分調整剤供給量は後述するように可変制御することができる。
【0025】
さらに、汚泥乾燥機11への入口部分には、脱水汚泥Aに対する予熱手段(例えば、熱交換器)20が設けられており、乾燥機11へ供給される脱水汚泥Aを予熱する。この予熱手段20の熱源としては、例えば、図示のように炭化炉13からの排ガスを、排ガス処理装置16を介して導入する。この脱水汚泥Aへの予熱量は、この実施の形態では、予熱手段20に供給される排ガス量を制御することにより可変とすることができる。
【0026】
汚泥乾燥機11は、乾燥対象汚泥に対する乾燥温度を可変制御可能に構成されている。この乾燥温度は、例えば、乾燥機11に対する加熱用の燃料調節弁21の開度調整により可変制御される。
【0027】
前記造粒機12の入口側には、水分調整剤供給装置23が設けられており、乾燥機11により乾燥処理された乾燥汚泥Bへ水分調整剤を供給する。この乾燥汚泥Bへの水分調整剤供給量は後述するように可変制御することができる。
【0028】
また、この造粒機12への入口部分には、乾燥汚泥Bに対する予熱手段(例えば、熱交換器)24が設けられており、造粒機12へ供給される乾燥汚泥Bを予熱する。この予熱手段24の熱源としては、同様に、排ガス処理装置16を介して導入される炭化炉13からの排ガスを用いる。この乾燥汚泥Bへの予熱量も、予熱手段24に供給される排ガス量を制御することにより可変とすることができる。
【0029】
造粒機12としては、例えば、スクリュー押し出し方式のものを用いる。この場合、造粒機12内に供給された乾燥汚泥Bは、内蔵されたスクリューによって圧縮作用を受けながら前方(図示左方)に送られ、最前部に取り付けたプレ−ト盤の孔より乾燥汚泥Bを円柱状に押し出される。押し出された汚泥は、回転式のカッタ−で所定の長さに切断され、造粒汚泥Cとなる。造粒機12の駆動電流値はスクリューが受ける負荷に比例するもので、乾燥汚泥Bの含水率が低いと押し出しに負荷が大きくなり、駆動電流値が上昇する。逆に含水率が高いと孔から容易に押し出されるため駆動電流値は低くなる。この関係から造粒機12の駆動電流値を計測すれば乾燥汚泥Bの含水率の連続的な推測が可能である。
【0030】
26は乾燥汚泥Bの含水率を推定する含水率推定手段で、造粒機14の駆動電流値を測定する計測装置26aと、その測定値から乾燥汚泥Bの含水率を推定する演算装置26bとで構成される。27は含水率制御手段で、含水率推定手段26により推定された乾燥汚泥Bの含水率が所定範囲に維持されるようにシステムを制御する。この実施の形態では、乾燥汚泥Bの含水率を所定範囲に維持するため、乾燥機11の乾燥温度を制御しており、そのために乾燥機11の燃料調整弁21を開度制御している。
【0031】
上記構成において、農業集落排水処理施設、下水処理場、有機排水処理施設等から排出される余剰汚泥(含水率約98〜99%)は、高分子凝集剤と混合した後、遠心脱水機あるいはベルトプレス、フィルタープレス等の図示しない脱水機により含水率が約85%に脱水される。脱水された脱水汚泥Aは、脱水汚泥供給機18により、遠心薄膜乾燥機、真空乾燥機、熱風乾燥機等の汚泥乾燥機11に定量供給される。そして、この乾燥機11にて含水率が約50%になるまで乾燥され、乾燥汚泥Bとして排出される。
【0032】
乾燥汚泥Bは、造粒機12で直径約5〜10mm、長さ約10〜20mmの円筒状に造粒され、造粒汚泥Cとして排出される。造粒汚泥Cは造粒汚泥定量供給機14により二重筒構造の炭化炉13の内筒13a内に供給される。炭化炉13では、造流汚泥Cが入口側から出口側に向かって移動する約15〜30分の間に、燃焼炉15からの燃焼熱により約500〜700℃で炭化され、炭化物Dは炭化炉13の内筒13aから排出される。
【0033】
炭化炉13の内筒13aでは、汚泥の熱分解により乾留ガスが発生する。この乾留ガスは燃焼炉15に送られ、燃焼用空気や補助燃料と混合して燃焼される。なお、立上げ時など乾留ガスが不足する場合は、補助燃料11を主に燃焼させる。
【0034】
燃焼された高温の加熱ガスは炭化炉13の外筒13bと内筒13aとの間を流れ、内筒13aを加熱する。加熱後のガスは排ガス処理装置16で粉塵などを除去した後、排ガスとして排出される。この排ガスは高温であるため、脱水汚泥Aや乾燥汚泥Bの予熱に利用し有効活用を図る。
【0035】
また、乾燥機11に投入される脱水汚泥Aの含水率を調整するため、水分調整剤供給装置19から水分調整剤を供給し、同様に、乾燥汚泥Bの含水率を調整するため、水分調整剤供給装置23から水分調整剤を供給する。なお、造粒機12で乾燥汚泥を造粒する際、造粒前後での含水率の変化は無視できる。
【0036】
次に、乾燥汚泥Bの含水率を推測し、汚泥の固形分に加わる熱量が一定になるように制御する機能を説明する。造粒機12の運転中における駆動電流値やその他各機器の供給量、温度、圧力等の計測データを計測装置26aで収集し、演算装置26bにより含水率など制御に必要な値を演算する。そして、この演算装置26bからのデータをもとに制御手段27で各機器を制御する。
【0037】
ここで、均質な炭化物Dを得るためには造粒汚泥Cが一定の含水率で供給されることが必要である。しかし、実際には脱水時に使用される高分子凝集剤の種類、使用量、汚泥の負荷量、季節変動などにより脱水汚泥Aの含水率は大きく変化する。したがって、汚泥乾燥機11の温度や供給量等の運転条件を変えない限り、脱水汚泥Aの含水率変化に伴い造粒汚泥Cの含水率も変化してしまう。特に、数ヶ所の処理場の脱水汚泥を集積して処理する場合の含水率は、各処理場の水処理方式、汚泥処理方式、脱水方法によって大きく異なり、その混合割合の違いにより脱水汚泥Aの含水率が大きく変わる恐れがあるため、粒汚泥Cの含水率は変化する。
【0038】
造粒汚泥Cの含水率を一定にするためには、造粒前後での含水率変化は無視できるので、乾燥汚泥Bの含水率を簡単に連続計測しこれを一定に制御すればよい。乾燥汚泥Bの含水率の連続測定には、従来、一般に光ファイバー式赤外線センサが用いられている。しかし、この方式は汚泥表面の水分測定であり、表面状態や色の変化の影響を受けること、かつ測定範囲は狭く必ずしも全体を代表した値でないこと、などの理由により乾燥汚泥Bへの適用は困難であった。
【0039】
簡単に連続的に乾燥汚泥Bの含水率を測定する方法について鋭意検討した結果、乾燥汚泥Bの含水率と押し出し式の造粒機12の駆動電流値との間には、図2に示すような比例関係があることを見出した。すなわち、造粒機12として、スクリュー押し出し方式のものを用いた場合、前述したように、乾燥汚泥Bの含水率が低いと押し出し負荷が大きくなり、駆動電流値が上昇する。逆に含水率が高いと孔から容易に押し出されるため、駆動電流値は低くなる。この関係から造粒機12の駆動電流値を計測すれば乾燥汚泥Bの含水率の連続的な推測が可能である。
【0040】
このように、造粒機12の駆動電流値から乾燥汚泥Bの含水率を求め、この乾燥汚泥Bの含水率が所定の含水率になるように、この実施の形態では、乾燥機11に加える燃料の量を調整して加熱温度を調整している。すなわち、脱水汚泥Aを脱水汚泥供給機18で乾燥機11に定量供給しながら、その乾燥汚泥Bを造粒する造粒機12の駆動電流値と、汚泥乾燥機11の加熱温度を計測し、その計測データを計測装置26aで収集する。そして、演算装置26bにより、図2に示す造粒機12の駆動電流値と乾燥汚泥Bの含水率の関係から、乾燥汚泥Bの含水率を推定し、この乾燥汚泥Bが所定の含水率になるように制御手段27で汚泥乾燥機11の加熱用燃料調節弁21の開度を調節して乾燥温度を制御する。
【0041】
この場合、一定間隔ごとに造粒機12の駆動電流値を収集し、目標の含水率とずれている場合は、そのずれ幅に応じて汚泥乾燥機11の乾燥温度設定値を変更する。これを繰り返して目標の含水率に一致させる。このように乾燥汚泥Bの含水率を一定に制御することにより造粒汚泥Cの含水率も一定となり、炭化炉13において造粒汚泥Cの固形分に加わる受熱量が一定となり均質な炭化物が得られる。
【0042】
ここで、炭化炉13において造粒汚泥Cに加えられる熱量は、造粒汚泥C中の固形分を熱分解した際に発生した乾留ガスの発熱量と、補助燃料による発熱量の総和である。一方、消費されるエネルギーは、造粒汚泥C中の水分の蒸発潜熱によるエネルギー消費量と、造粒汚泥C中の固形分を熱分解するエネルギー消費量と、炭化炉の放熱によるエネルギー消費量の総和である。供給されるエネルギーは、炭化温度が一定になるように補助燃料で調整されるので一定である。従って、エネルギー消費量が一定であれば造粒汚泥C中の固形分の受熱量も一定になる。エネルギー消費量の内、炭化炉13の放熱は一定であるが、造粒汚泥Cの含水率に変化があれば、水分の蒸発潜熱によるエネルギー消費量が変化するため、造粒汚泥C中の固形分が受取る熱量もそれに伴い変化する。このため、均質な炭化物Dを得るためには造粒汚泥Cの水分量を一定にする必要がある。
【0043】
造粒汚泥C中の固形分を乾留するのに必要なエネルギー量は、固形分中の有機物量によるが、実験結果から造粒汚泥Cの固形物中の有機物量は約60%とほほ一定であることが分かっている。以上のことから、造粒汚泥Cの固形分に加わる熱量を一定にするには造粒汚泥Cの水分量を一定にすれば良く、そのためには運転中の造粒機の駆動電流値から乾燥汚泥Bの含水率を推測し、乾燥汚泥Bと同じ含水率である造粒汚泥Cの含水率が一定になるように乾燥機の加熱温度を制御したので、造粒汚泥Cの固形分に加わる熱量を一定にでき、均質な炭化物Dを得ることができる。
【0044】
次に、図3で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、乾燥汚泥Bの含水率を一定にするため、造粒機12の駆動電流値から乾燥汚泥Bの含水率を求め、これが所定の含水率になるように、乾燥機11に供給する脱水汚泥Aの供給量を調整している。すなわち、脱水汚泥Aは脱水汚泥供給機18で汚泥乾燥機11に供給され、乾燥汚泥Bとなるが、この乾燥汚泥Bを造粒する造粒機12の駆動電流値を測定することにより、図2に示した関係から演算装置26bが乾燥汚泥Bの含水率を推定し、この含水率の増減に対応させて汚泥乾燥機11に供給される脱水汚泥Aの供給量を変化させる。つまり、制御手段27は、演算装置26bにより推定された乾燥汚泥Bの含水率が高くなると、脱水汚泥供給機18を制御して、脱水汚泥Aの供給量を減少させ、反対に、乾燥汚泥Bの含水率が低くなると脱水汚泥Aの供給量を増加させる。この結果、乾燥汚泥Bの含水率は所定の含水率に調整される。
【0045】
この場合、造粒機12の駆動電流値は一定間隔ごとに収集し、目標の汚泥含水率とずれている場合は、そのずれ幅に応じて脱水汚泥供給機18の供給量を変更する。これを繰り返すことにより、目標の汚泥含水率に一致する。このように乾燥汚泥Bの含水率を一定に制御することにより造粒汚泥Cの含水率も一定となり、炭化炉13において造粒汚泥Cの固形分に加わる受熱量が一定となり、均質な炭化物が得られる。
【0046】
次に、図4で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、造粒機12の駆動電流値から乾燥汚泥Bの含水率を求め、造粒汚泥Cが所定の含水率になるように水分調整剤の供給量を制御している。演算装置26bにより、図2に示す造粒機12の駆動電流値と乾燥汚泥Bの含水率の関係から乾燥汚泥Bの含水率を推定し、その含水率が目標の含水率になるように水分調整剤供給装置19または23により、水分調整剤の供給量を制御し、図示しない混合装置により脱水汚泥Aまたは乾燥汚泥Bと混合して乾燥汚泥Bが一定の含水率になるように調節する。
【0047】
すなわち、一定間隔ごとに造粒機12の駆動電流値を収集し、目標の含水率とずれている場合は、そのずれ幅に応じて水分調整剤の供給量の設定値を変更する。これを繰り返して目標の含水率に一致させる。このように乾燥汚泥Bの含水率を一定に制御することにより造粒汚泥Cの含水率も一定となり、炭化炉13おいて造粒汚泥Cの固形分に加わる受熱量が一定となり均質な炭化物が得られる。
【0048】
次に、図5で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、造粒機12の駆動電流値から乾燥汚泥Bの含水率を求め、造粒汚泥Cが所定の含水率になるように、汚泥の予熱度合いを制御している。すなわち、排ガス処理装置16から予熱手段20,24への排ガス供給路に調整弁31,32を設け、予熱手段20,24への排ガス供給量を調整している。
【0049】
この場合、演算装置26bにより図2に示す造粒機12の駆動電流値と乾燥汚泥Bの含水率の関係から乾燥汚泥Bの含水率を推定し、その含水率が目標の含水率になるように、脱水汚泥Aの予熱手段(熱交換器)20に加える排ガス供給量を調整弁31により調整する。あるいは、乾燥汚泥Bの予熱手段(熱交換器)24に加える排ガス供給量を調整弁32により調整する。
【0050】
すなわち、一定間隔ごとに造粒機12の駆動電流値を収集し、目標の含水率とずれている場合は、そのずれ幅に応じて予熱手段20あるいは24に加える排ガス供給量の設定値を変更する。このように乾燥汚泥Bの含水率を一定に制御することにより造粒汚泥Cの含水率も一定となり、炭化炉6において造粒汚泥Cの固形分に加わる受熱量が一定となり均質な炭化物が得られる。
【0051】
次に、図6で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、造粒機12の駆動電流値から乾燥汚泥Bの含水率を求め、この含水率に応じて、加熱量制御手段37により、後段の炭化炉13への加熱エネルギー量を調整する。これにより、含水率の変化によるエネルギー変化を相殺し、受熱量が一定になるように制御するものである。
【0052】
この実施の形態でも、含水率推定手段26の計測装置26aで造粒機12の運転中の駆動電流値が収集され、演算装置26bにより図2の関係から乾燥汚泥Aの含水率が推定される。この演算装置26bでは、この推定含水率と乾燥汚泥定量供給機14の供給量から、単位時間当たりに炭化炉27に供給される水分量が算出できる。
【0053】
加熱量制御手段37は、含水率推定手段26により推定された乾燥汚泥Bの含水率に応じて炭化炉13の加熱量を制御する。すなわち、目標の水分量より多い場合は増加分の蒸発潜熱による消費エネルギーを計算し、そのエネルギーに相当する熱量を加えるべく、燃焼炉15に対する補助燃料を追加する。反対に目標の水分量より少ない場合は減少分の蒸発潜熱による消費エネルギーを計算し、そのエネルギーに相当する熱量を減少させるべく燃焼炉15への補助燃料を削減する。このように燃焼炉15による燃焼量を制御し、炭化炉13を加熱する。
【0054】
この実施の形態では、上述のように、汚泥含水率の変動に伴う蒸発潜熱によるエネルギー消費量の変動量を事前に算出し、この変動量に対応する供給エネルギーを炭化炉13に追加もしくは削減することにより、汚泥に加わる受熱量を一定にしたので、均質な炭化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による汚泥炭化システムの一実施の形態を示すシステムブロック図である。
【図2】同上一実施の形態における汚泥含水率と造粒機の駆動電流値との関係を示す特性図である。
【図3】本発明の、駆動電流値により脱水汚泥の供給量を調整する実施の形態を示すシステムブロック図である。
【図4】本発明の、駆動電流値により水分調整剤の供給量を調整する実施の形態を示すシステムブロック図である。
【図5】本発明の、駆動電流値により脱水汚泥又は乾燥汚泥に対する予熱量を調整する実施の形態を示すシステムブロック図である。
【図6】本発明の、駆動電流値により炭化炉に対する加熱量を調整する実施の形態を示すシステムブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
11 汚泥乾燥機
12 造粒機
13 炭化炉
15 燃焼炉
16 排ガス処理装置
18 汚泥供給機
19,23 水分調整剤供給装置
20,24 予熱手段
26 含水率推定手段
27 含水率制御手段
37 熱量制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水汚泥を乾燥機で乾燥し、この乾燥汚泥を造粒機で造粒し、この造粒汚泥を炭化炉で炭化処理する汚泥炭化システムであって、
前記造粒機の駆動電流値を測定し、その測定値から前記乾燥汚泥の含水率を推定する含水率推定手段と、
この含水率推定手段により推定された乾燥汚泥の含水率を所定範囲に維持する含水率制御手段と
を備えたことを特徴とする汚泥炭化システム。
【請求項2】
含水率制御手段として、乾燥機の乾燥温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の汚泥炭化システム。
【請求項3】
乾燥機への汚泥供給機を有し、含水率制御手段は、汚泥供給機による乾燥機への汚泥供給量を制御することを特徴とする請求項1に記載の汚泥炭化システム。
【請求項4】
脱水汚泥への水分調整剤供給装置を有し、含水率制御手段は、水分調整剤供給装置による脱水汚泥への水分調整剤供給量を制御することを特徴とする請求項1に記載の汚泥炭化システム。
【請求項5】
乾燥汚泥への水分調整剤供給装置を有し、含水率制御手段は、水分調整剤供給装置による乾燥汚泥への水分調整剤供給量を制御することを特徴とする請求項1に記載の汚泥炭化システム。
【請求項6】
乾燥機への入口部分に脱水汚泥に対する予熱手段を設け、含水率制御手段は、予熱手段による脱水汚泥への予熱量を制御することを特徴とする請求項1に記載の汚泥炭化システム。
【請求項7】
造粒機への入口部分に乾燥汚泥に対する予熱手段を設け、含水率制御手段は、予熱手段による乾燥汚泥への予熱量を制御することを特徴とする請求項1に記載の汚泥炭化システム。
【請求項8】
予熱手段の熱源として、炭化炉からの排ガスを用い、含水率制御手段は、予熱手段に供給される排ガス量を制御することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の汚泥炭化システム。
【請求項9】
脱水汚泥を乾燥機で乾燥し、この乾燥汚泥を造粒機で造粒し、この造粒汚泥を炭化炉で炭化処理する汚泥炭化システムであって、
前記造粒機の駆動電流値を測定し、その測定値から前記乾燥汚泥の含水率を推定する含水率推定手段と、
この含水率推定手段により推定された乾燥汚泥の含水率に応じて炭化炉の加熱量を制御する加熱量制御手段と、
を備えたことを特徴とする汚泥炭化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−263662(P2006−263662A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89038(P2005−89038)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】