説明

汚泥炭化物燃料

【課題】本発明は、廃棄物である汚泥を炭化処理して得られる汚泥炭化物の低い燃焼発熱量の向上および燃焼残渣の低減により化石燃料代替が可能な燃料の提供である。
【解決手段】油脂から化学反応で分離したグリセリンを一定の割合で汚泥炭化物に混合・含浸処理し、これを粉末または種々の形状に成形加工して得られた汚泥炭化物燃料を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥や活性汚泥を炭化して得られる汚泥炭化物を原料とする汚泥炭化物燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等で発生する有機性汚泥は、大半が埋め立てや焼却処理がなされてきた。これを固体燃料として利用しようということから炭化処理をして化石燃料の代替燃料にすることが提案されている。
【0003】
その際の炭化方法や装置に関しても多くの提案がされている。(例えば特許文献1及び2参照)
【特許文献1】特開2001−232397号公報
【特許文献2】特開2005−319374号公報
【0004】
また、高熱量の汚泥燃料を製造するためにタール成分をバインダとした固体の燃料が提案されている。(例えば特許文献3参照)
【特許文献3】特開2002−201481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の汚泥炭化物はバイオマス由来の有機性汚泥を炭化したもので炭酸ガス排出の抑制という点ではこのましいが、燃焼時の発熱量が低く、所定の熱量を発生させるためには多量の化石燃料を併用する必要があった。更に、燃焼残渣が多量に発生しその処理に多くの作業を要する等の問題点があった。また、バインダとしてタール成分を用いることは石炭の乾留工程を必要とする等やはり作業性の点で問題があった。本発明の課題は、特別の工程を必要とせず、汚泥炭の単位体積あたりの燃焼発熱量を高くし、また、燃焼残渣を低減する燃料を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため本発明の汚泥炭化物燃料は、下水道汚泥や産業から排出される活性汚泥を炭化処理を行うことで得られた汚泥炭化物に、汚泥炭との混合が容易で混合物の性状が安定で取り扱いに優れた汚泥炭にグリセリンを混合含有させたものを提案するものである。
【0007】
本発明の汚泥炭化物燃料の製造は、汚泥炭とグリセリンとを一般的な混合攪拌方法により均一に分散混合する方法によって行われる。汚泥炭化物は多孔質であるため高粘度の液体のグリセリンを適当な割合で混合したものの性状は、粉末の状態は変わらずグリセリンの粘着性はなくまた浸みだし、ブロッキング等もなく安定である。貯蔵、運搬および燃焼炉へのフィードも好ましく行うことができる。
【0008】
汚泥炭化物とグリセリンとの混合割合は、汚泥炭化物99〜40重量部とグリセリン1〜60重量部の割合である。グリセリンの割合が60重量部をこれると、グリセリンが滲出しブロッキングを起こす等好ましくない。またグリセリンが1重量部未満では混合した場合は添加効果が得られない。
【0009】
汚泥炭化物は下水道汚泥や産業から排出される活性汚泥を炭化処理を行うことで製造される。燃焼発熱量は通常石炭の約半分以下である。本発明の汚泥炭化物燃料では混合割合に従って高い燃焼発熱が得られる。さらに燃焼残渣が汚泥炭化物単独に比べて1/2〜1/10と低減される。
【0010】
グリセリンは植物油等の油脂を加水分解して得られる。グリセリンは多価アルコールで可燃性材料であるが親水性の物質であり汚泥炭化物との親和性は高い。また多孔質である汚泥炭化物によく含浸吸収される。
【0011】
本発明の汚泥炭化物燃料は汚泥炭化物とグリセリンおよびまたはその縮合物とを混合攪拌した粉末の状態でも用いられるが、これを一般の押出機やペレタイザーを用いて成型加工したペレットまたはより大きなブリケットの形状にして用いることができる。さらに、汚泥炭化物をあらかじめ成型し、その後にグリセリンおよびまたはその縮合物を添加・含浸させて製造することもできる。
【0012】
本発明の汚泥炭化物燃料は発電用、工業用ボイラーや農業用のボイラーおよび加温機等の化石燃料の代替燃料として用いられる。
【発明の効果】
【0013】
汚泥炭化物は、有用なバイオマス資源として見直され発電用等に広く用いられるようになった。しかしながら単位体積あたりの燃焼発熱熱量が低く、また燃焼残渣が多く化石燃料の代替としては不十分なものであった。本発明の汚泥炭化物燃料によれば、単位体積あたりの燃焼発熱量が高く、かつ燃焼残渣を低減することができ、貯蔵および運搬の経費や燃焼時の操作性に優れ、化石燃料の代替として広く用いることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
汚泥炭化物は、例えば次のように製造される。水分を70〜85重量%含んだ汚泥を800℃程度の恒温ガスと接触させ水分を約20%まで低下させる。次いで炭化工程として低酸素雰囲気下において加熱式ロータリーキルンで30分間、約500℃に加熱・熱分解して汚泥炭化物が得られる。汚泥炭化物の炭素含量は約20〜40重量%であり、燃焼発熱量は炭素含量および含有水分量により異なるが600〜1500キロカロリー/リッターの範囲である。グリセリンは通常の油脂工業から製造されるものが用いられるが、特に廃食油等の油脂類をエステル交換してバイオディーゼル燃料を製造した際に副製する粗グリセリンを用いることができる。
【0015】
汚泥炭化物の粉末とグリセリンを混合する際には、攪拌翼または胴体回転式の攪拌装置を備えた容器にまず汚泥炭化物を入れ次に攪拌しながら液体のグリセリンを添加する。混合は、通常室温程度の温度で行い、攪拌時間は1〜2時間であるが、グリセリンが汚泥炭化物に吸収され粉体表面の粘着性がなくなるまで行うことが好ましい。連続式の押出機を用いる場合は、汚泥炭を供給しながら途中からグリセリンを添加して行う。この場合は、汚泥炭の供給量を調整することで滞留混合時間を調整することができる。得られたグリセリンを含んだ汚泥炭化物はそのまま粉体の状態または、ペレット等の状態に成型して固体燃料として供される。
【0016】
本発明において混合するグリセリンの燃焼発熱量は約7000キロカロリー/リッターであり、本発明の汚泥炭化物燃料は混合割合によって最大5500キロカロリー程度の燃焼発熱量が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の汚泥炭化物燃料によれば、化石燃料の代替が可能で高い燃焼熱が得られるバイオマス由来の固体燃料がえられる。また、従来大量に発生していた下水汚泥や活性汚泥等の廃棄物の有効なバイオマス資源としての用途を与えるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥炭化物とグリセリンを含有し、粉末または成形加工したことを特徴とする汚泥炭化物燃料。
【請求項2】
グリセリンを1重量部〜60重量部と汚泥炭化物を99重量部〜40重量部の割合で含有し、粉末または成形加工したことを特徴とする請求項第1項記載の汚泥炭化物燃料。
【請求項3】
汚泥炭化物が下水道の汚泥または活性汚泥を炭化して得られる汚泥炭化物であることを特徴とする請求項第1項記載の汚泥炭化物組燃料。

【公開番号】特開2010−144159(P2010−144159A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336084(P2008−336084)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(508068526)
【Fターム(参考)】