説明

汚泥脱水剤およびこれを用いた有機汚泥の脱水処理方法

【課題】有機汚泥の脱水処理に対し、従来の汚泥脱水剤よりも少ない添加量で大きく強固な凝集フロックを形成し、これにより処理液量は多く、そのSS量が少なく、および脱水後のケーキ含水率が低い汚泥脱水剤、および該汚泥脱水剤を用いた有機汚泥の脱水処理方法を提供する。
【解決手段】アミジン構成単位および(メタ)アクリル酸構成単位を必須成分とする架橋型アミジン系両性ポリマーから成る汚泥脱水剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥脱水剤およびこれを用いた有機汚泥の脱水処理方法に関し、詳しくは、アミジン構成単位および(メタ)アクリル酸構成単位を必須成分とする架橋型アミジン系両性ポリマーから成る汚泥脱水剤、および該汚泥脱水剤を有機汚泥に添加混合し、脱水機を用いて脱水処理する有機汚泥の脱水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、し尿などの有機汚泥の脱水には、カチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤が使用されている。しかしながら、近年の汚泥発生量の増加および汚泥性状の悪化により、従来のカチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤では、汚泥の処理量に限界があり、更に凝集後のフロック粒径とその強度、SS回収率、脱水後のケーキ含水率などの点で処理状態は必ずしも満足できるものではなく、その改善が求められている。
【0003】
従来のカチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤の欠点を改良するため、架橋型イオン性ポリマーや両性タイプのアミジン系ポリマーが提案されているが、必ずしも満足できるものではない。
【0004】
架橋型イオン性ポリマーの場合、有機汚泥に添加混合したときに生成する凝集フロックは強固になるものの、水溶液中での分子鎖の広がりが小さいため、直鎖型イオン性ポリマーに比較してその添加量は増加してしまうという問題がある。その改良として、架橋型イオン性ポリマーとアミジン系ポリマーとの混合物から成る汚泥脱水剤が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この汚泥脱水剤によれば、直鎖型イオン性ポリマーとアミジン系ポリマーとの混合物に比較してその添加量、処理液のSS量、および脱水ケーキ含水率は改善されるものの、上記問題点を全て満足できるものではない。
【0005】
一方、両性タイプのアミジン系ポリマー(特許文献2)の場合、汚泥脱水剤として見た場合、従来のアミジン系ポリマーやカチオン性ポリマーに比較して処理液量や脱水ケーキ含水率は改善されるものの、前記の問題点を全て克服できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−25095号公報
【特許文献2】特開平8−243600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機汚泥の脱水処理を行う際に用いられる汚泥脱水剤には、架橋型イオン性ポリマーとアミジン系ポリマーとの混合物の持つ強固な凝集フロックや低い処理液のSS量、および両性タイプのアミジン系ポリマーの持つ多い処理液量や低い脱水ケーキ含水率、更には、少ない添加量が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、上記のような要求性能を持つ汚泥脱水剤について検討した結果、アミジン構成単位および(メタ)アクリル酸構成単位を必須成分とする架橋型アミジン系両性ポリマーは、架橋型ポリマーであるにも拘わらず、従来のポリマーより少ない添加量で大きく強固な凝集フロックを形成し、処理液量が多く、そのSS量が少なく、脱水後のケーキ含水率が低く、優れた汚泥脱水剤となり得ることを見出し、本発明に達した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミジン構成単位および(メタ)アクリル酸構成単位を必須成分とする架橋型アミジン系両性ポリマーから成ることを特徴とする汚泥脱水剤に存する。
【0010】
【化1】

[式(1)及び(2)中、RおよびRは各々同一または異なる水素原子またはメチル基を示し、Xはアニオン基を示す。]
【0011】
そして、本発明の第2の要旨は、有機汚泥に汚泥脱水剤を添加した後、脱水機を用いて脱水処理する有機汚泥の脱水処理方法において、汚泥脱水剤として上記の汚泥脱水剤を使用することを特徴とする有機汚泥の脱水処理方法に存する。
【0012】
汚泥脱水剤の好適な態様においては、アミジン構成単位の割合は20〜70モル%、(メタ)アクリル酸構成単位の割合は3〜30モル%である。有機汚泥の脱水処理方法の好適な態様においては、上記の汚泥脱水剤と共に凝結剤を併用し、また、脱水機としてスクリュープレス型脱水機を使用する。更に、有機汚泥は、繊維分:1〜15質量%/TSの難脱水性有機汚泥であることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の汚泥脱水剤は、従来の汚泥脱水剤よりも少ない添加量で大きく強固な凝集フロックを形成させることが出来、これにより有機汚泥の脱水処理を効率良く行うことが出来る。そのため、スクリュープレス型脱水機を用いた脱水処理に要求される脱水初期での良好な水切れ、および脱水の際に凝集フロックに働くせん断力に対して優れた耐性を有する強固な凝集フロックを満足することが可能である。更に、繊維分:1〜15質量%/TSの難脱水性有機汚泥に対してもその脱水処理を効率良く行うことも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
<汚泥脱水剤>
本発明の汚泥脱水剤(以下、「本汚泥脱水剤」という。)は、アミジン構成単位およびアニオン性構成単位として(メタ)アクリル酸構成単位を必須成分とする架橋型アミジン系両性ポリマーから成る。
【0016】
架橋型アミジン系両性ポリマーは、下記一般式(3)、(4)、(5)及び/又は(6)で表されるモノマーを共重合し、得られたコポリマーを酸加水分解反応およびアミジン化反応をすることにより得ることが出来る。
【0017】
【化2】

[式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。]
本発明に用いる一般式(3)で表される化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。その中でも特にアクリロニトリルが好ましい。
【0018】
【化3】

[式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
本発明に用いる一般式(4)で表されるN−ビニルカルボン酸アミド化合物としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルブチルアミド等が挙げられる。その中でも特にN−ビニルホルムアミドが好ましい。
【0019】
【化4】

[式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R、Rは、各々同一または異なる水素または炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
本発明に用いる一般式(5)で表されるアクリルアミド系化合物としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルエチル(メタ)アクリルアミド、メチルプロピル(メタ)アクリルアミド、エチルプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。その中でも特にアクリルアミドが好ましい。
【0020】
【化5】

[式(6)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Aは水素原子またはカチオン基を示す。]
本発明に用いる一般式(6)で表されるアクリル酸系化合物としては、アクリル酸、およびその塩、メタクリル酸、およびその塩が挙げられる。その中でも特にアクリル酸塩が好ましい。
【0021】
一般式(3)、(4)、(5)及び/又は(6)で表されるモノマーを共重合する際のモノマーの重合モル比は、次の通りである。すなわち、一般式(3)で表されるモノマーは、通常35〜70モル%、好ましくは40〜60モル%、一般式(4)で表されるモノマーは、通常35〜70モル%、40〜60モル%、一般式(5)及び/又は(6)で表されるモノマーは、通常3〜30モル%、好ましくは5〜20モル%である。
【0022】
更に、一般式(3)及び(4)の重合モル比は、接近している方がより好ましい。これは、両者の高い交互共重合性および重合後の酸加水分解反応により、一般式(4)から成るモノマー構成単位の一部はビニルアミン構成単位となる。その後、一般式(3)から成るモノマー構成単位とビニルアミン構成単位との側鎖間でのアミジン化反応によりアミジン環構造を形成し、前記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミジン構成単位となるからである。
【0023】
一般式(3)及び(4)で表されるモノマー構成単位の含有量が35〜70モル%、および一般式(5)及び/又は(6)で表されるモノマー構成単位の含有量が3〜30モル%であれば、本汚泥脱水剤を有機汚泥に添加した際、架橋型アミジン系両性ポリマー中のアミジン構成単位および(メタ)アクリル酸構成単位が有機汚泥と荷電中和反応し、大きく強固な凝集フロックを形成させること出来る。
【0024】
架橋型アミジン系両性ポリマーを得る方法、特に架橋させる方法に関しては、これまで具体的な提案がなされていないが、本発明者は、鋭意検討した結果、例えば以下の2つの方法で実現できることを見出した。
【0025】
(a)重合性モノマーの重合により得た水溶性ポリマーを加熱などにより後架橋(自己架橋)させる方法
(b)重合性モノマーと共に多官能基を有する架橋型モノマーを用いて重合し、重合時に架橋させる方法
【0026】
重合時に架橋する方法としては、主成分としてのエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーと一緒に多官能性のモノマー(架橋性モノマー)を用いる方法が一般的である。架橋性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を2以上有するモノマーであれば特に制限はなく、N,N‘−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルアミン等が挙げられる。
【0027】
以上説明した(a)及び(b)の方法などを用いて架橋されたポリマーを得ることが出来るが、この架橋型ポリマーを高分子凝集剤とした場合、これらの架橋の度合いが小さすぎれば架橋型としての高分子凝集剤の性質が得られず、大きすぎれば水に対する膨潤度が小さくなるため、高分子凝集剤としての機能が弱くなる。本発明の架橋型アミジン系両性ポリマーを得るためには、方法(b)がポリマーの架橋度を制御するために好ましい。
【0028】
架橋性モノマー又は架橋剤の添加量としては、ポリマー又は原料全モノマーに対して、通常1〜1000ppm、好ましくは5〜100ppmである。架橋性モノマー又は架橋剤の添加量が、ポリマー又は原料全モノマーに対して1〜1000ppmであれば、本発明の架橋型アミジン系両性ポリマーは水溶液中で直鎖型よりは分子の広がりが抑制されるものの、粒子状とはならないため、汚泥脱水剤として有機汚泥、特に繊維分の少ない難脱水性有機汚泥に添加混合した場合、大きく強固な凝集フロックを得ることが出来る。
【0029】
架橋型アミジン系両性ポリマーの製造方法は、特に制限されず、通常のラジカル重合法が用いられ、塊状重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相乳化重合などのいずれも選択することが出来る。重合反応は、一般に、不活性ガス気流下、温度30〜100℃で実施される。溶媒中で重合を行う場合、モノマー濃度は通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%である。重合開始剤は一般的なラジカル重合開始剤が用いられるが、好ましくはアゾ系開始剤であり、例えば2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などが挙げられる。重合開始剤の使用量は、生成するポリマーの重合度や粘度などを考慮して適宜決められるが、通常原料全モノマーに対して100〜10000ppm程度である。重合pHはモノマー溶液調合時の安定性から5〜8に調節することが好ましい。
【0030】
得られるポリマーはそのままの状態で、あるいは溶剤で希釈してすなわち溶液状態または懸濁状態で酸加水分解反応およびアミジン化反応(以下、「酸変性反応」という。)に供することが出来る。あるいは公知の方法で脱溶媒、乾燥することでポリマーを固体として取り出し、酸変性反応に供することも出来る。通常は、水懸濁液中で酸変性反応に供される。酸変性反応時のポリマー濃度としては、1〜20質量%である。1質量%未満のポリマー濃度では、得られるポリマーの品質上特に問題はないが、生産性が低下する。20質量%超のポリマー濃度では、酸変性反応が進むにつれてポリマー水溶液の粘度が高くなり、反応時に使用する攪拌翼の回転が困難となり、酸変性反応が系内で不均一となる。
【0031】
酸変性反応に用いられる酸は、一般に鉱酸であり、好ましくは塩酸である。酸の添加量は、N−ビニルカルボン酸アミド構成単位と一般式(5)及び/又は(6)で表されるモノマー構成単位の合計に対して、通常0.5〜5.0倍当量、好ましくは1.0〜2.0倍当量である。反応温度は、通常60〜150℃、好ましくは80〜120℃である。反応時間は通常1〜20時間である。
【0032】
酸変性反応時、反応の阻害あるいは得られたポリマーの品質に問題がなければ、その他添加剤を適宜加えることが出来る。例えば、重合後の残存モノマーを低減させるための添加剤として、硫酸ヒドロキシアンモニウムが挙げられる。
【0033】
このようにして得られた架橋型アミジン系両性ポリマーのアミジン構成単位の割合は、通常20〜70モル%、好ましくは30〜60モル%、(メタ)アクリル酸構成単位の割合は、通常3〜30モル%、好ましくは5〜20モル%である。この結果、本発明の架橋型アミジン系両性ポリマーを汚泥脱水剤として有機汚泥に添加混合した場合、より少ない添加量で有機汚泥とポリマーとの効率的な荷電中和反応により、処理液量は多く、そのSS量が少なく、脱水後のケーキ含水率の低い凝集フロックを得ることが出来る。これは、架橋型アミジン系両性ポリマーは陽イオンを持つアミジン構成単位と陰イオンを持つ(メタ)アクリル酸構成単位が近接しており、従来の架橋型アミジン系ポリマーと両性ポリマーとの混合物に比較して、荷電中和反応が起こりやすいためであり、更に正負間の荷電距離を短くすることで水和圏を狭くしたポリマー構造になっていると考えられる。
【0034】
本汚泥脱水剤は、高分子量であることが好ましく、分子量の指標となる1Nの硫酸ナトリウム水中、0.1g/dLのポリマー水溶液として30℃で測定した還元粘度は、通常0.1〜10dL/g、好ましくは1〜5dL/gである。
【0035】
上記の水溶液物性を有する架橋型アミジン系両性ポリマーを製造するためには、必要に応じて重合を連鎖移動剤の存在下で行うことが出来る。連鎖移動剤は適宜添加され、その種類は特に制限されず、例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸水素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等の還元性無機塩類などが挙げられる。その中でも特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、生成するポリマーの重合度や粘度などを考慮して適宜決められるが、原料全モノマーに対して通常1〜1000ppm程度である。
【0036】
本汚泥脱水剤によれば、有機汚泥、特に繊維分の低い難脱水性有機汚泥において、従来の汚泥脱水剤より少ない添加量で大きく強固な凝集フロックを形成させることが出来る。更に、その後、SS量が少ない多量の処理液と含水率が十分に低い脱水ケーキを得ることが出来る。
【0037】
<有機汚泥の脱水処理方法>
本発明の有機汚泥の脱水処理方法(以下、「本有機汚泥の脱水処理方法」という。)は、前述した本汚泥脱水剤を有機汚泥に添加した後、脱水機を用いて脱水処理する有機汚泥の脱水処理方法である。
【0038】
本有機汚泥の脱水処理方法が対象とする有機汚泥としては、下水処理場およびし尿処理場から排出される生汚泥、混合生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、オキシデーションディッチ処理した有機汚泥、あるいは製紙工業廃水、化学工業廃水、食品工業廃水、畜産工業廃水などの生物処理したときに排出される余剰汚泥などが好適である。この内、JIS規格に記載された分析方法を用いて測定された有機汚泥の繊維分が1〜15質量%/TSであると優れた効果が得られ、特に5〜10質量%/TSであるとより優れた効果が得られる。本汚泥脱水剤を前記有機汚泥に加えることで、フロック粒径、フロック強度、処理速度(ろ過速度)、処理液中のSS量、脱水ケーキ含水率のバランス性などが安定した凝集フロックを形成することが出来る。
【0039】
本汚泥脱水剤の有機汚泥への添加方法および凝集フロックの形成方法としては、本汚泥脱水剤を用いる以外は公知の方法が適用できる。すなわち、本汚泥脱水剤を公知の方法で有機汚泥に添加することで凝集フロックを形成させることが出来る。
【0040】
本汚泥脱水剤の添加方法としては、汚泥脱水剤を水に0.2〜0.3質量%の濃度で溶解させた後、有機汚泥に添加することが好ましい。また、本汚泥脱水剤は、他のカチオン性ポリマー、両性ポリマー、ノニオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、及び/又はアミジン系ポリマーを混合した1剤型薬剤として添加しても良い。場合によっては、本汚泥脱水剤を粉末のまま有機汚泥に添加しても良い。また、本汚泥脱水剤に加えて、本汚泥脱水剤の水への溶解性を向上させるために酸性物質を添加しても良い。酸性物質としては、例えば、スルファミン酸が挙げられる。
【0041】
凝集フロックを形成させた後は、脱水機を用いて凝集フロックを脱水し、脱水ケーキを得ることにより汚泥脱水処理を完了することが出来る。脱水機としては、特に制限はなく、例えば、フィルタープレス型脱水機、スクリュープレス型脱水機、真空型脱水機、ベルトプレス型脱水機、遠心型脱水機、多重円板型脱水機が挙げられる。本有機汚泥の脱水処理方法では、安定して凝集フロック粒径と凝集フロック強度を保ちやすい点から、スクリュープレス型脱水機が好ましい。
【0042】
本汚泥脱水剤の添加量は、有機汚泥の質、濃度などにより異なり画一的に決められないが、大まかな目安として、汚泥の乾燥固形物100質量部に対し、通常0.1〜3.0質量部、好ましくは1.0〜2.0質量部である。本汚泥脱水剤の前記添加量が0.1質量部以上であれば、十分なフロック粒径およびフロック強度を有する凝集フロックが形成されやすい。また、本汚泥脱水剤の前記添加量が3.0質量部以下であれば、本汚泥脱水剤が過剰となることで形成される凝集フロックの粒径が小さくなったり、処理速度が遅くなったり、脱水ケーキの含水率が高くなったりすることを抑制しやすい。
【0043】
また、本有機汚泥の脱水処理方法においては、本汚泥脱水剤に加えて、無機凝結剤及び/又は有機凝結剤(以下、これらをまとめて単に「凝結剤」という。)を併用することが好ましい。
【0044】
無機凝結剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、ポリ鉄(ポリ硫酸鉄、ポリ塩化鉄など)が挙げられる。有機凝結剤としては、例えば、ポリアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアルキルアミノアルキルメタクリレートのアルキルクロライド4級塩、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレートのアルキルクロライド4級塩−アクリルアミド)、カチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
凝結剤は、特に制限はないが、汚泥脱水剤を添加する前の工程で添加することが好ましい。凝結剤の添加量は、本汚泥脱水剤100質量部に対して、1〜3000質量部が好ましい。凝結剤の前記添加量が1質量部未満であると、凝結剤を併用した効果が得られ難く、有機汚泥によっては本汚泥脱水剤の性能が発揮され難くなる。また、凝結剤の前記添加量が3000質量部を超えると、特に無機凝結剤では添加量の増加に伴って脱水ケーキの含水率が増加する傾向がある。
【0046】
以上説明した本有機汚泥の脱水処理方法によれば、各種廃水処理施設より排出される有機汚泥の脱水処理において、大粒径高強度の凝集フロックを安定して形成させることが出来、SS量が少ない処理水および含水率の低い脱水ケーキが得られる。
【0047】
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の記載によって限定されるものではない。なお、本実施例および比較例における「%」は特に断りのない限り「質量%」を示す。また、以下の製造例および比較製造例で得られた各ポリマーについては、その物性を示す指標として下記に示す還元粘度、カチオン当量、および0.5%不溶解分量の測定を行った。
【0048】
[還元粘度の測定]
製造例および比較製造例で得られた3質量%ポリマー水溶液あるいは比較製造例で得られた粉末状ポリマーを1規定の硝酸ナトリウム水中に、純分(別途、105℃で90分間熱風乾燥した後の乾燥残分より算出)0.1g/dLの濃度に溶解し、ガラスフィルターでろ過後、30℃においてオストワルド型粘度計を用いて流下時間を測定した。同様に、1規定硝酸ナトリウム水の流下時間を測定し、次式により還元粘度を算出した。
【0049】
【数1】

【0050】
[カチオン当量値の測定]
製造例および比較製造例で得られたポリマーサンプルのカチオン当量値は、以下に示すコロイド滴定法により測定した。
【0051】
(1)コニカルビーカーに脱イオン水90mLを計り取り、下記(2)の方法で調製したポリマーサンプル500ppm水溶液の10mLを加え、塩酸水溶液でpHを3.0に調整し、約10分間撹拌した。次に、トルイジンブルー指示薬を2、3滴加え、N/400−ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400−PVSK)で滴定した。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色し、10秒間以上保持する時点を終点とした。N/400−PVSKの滴定量から、以下に記載の式によりカチオン当量値(Cv)を算出した。
【0052】
(2)上記サンプル500ppm水溶液の調製は以下の方法で行った。共栓付三角フラスコに製造例および比較製造例で得られた3質量%ポリマー水溶液1.0gを、あるいは比較製造例で得られた粉末状ポリマー0.03gを精秤し、脱イオン水11mLを加えて溶解した。この5mLを25mLメスフラスコにて脱イオン水でメスアップした。
【0053】
[数2]
カチオン当量値 Cv(meq./g)=(N/400−PVSK滴定量)×(N/400−PVSKの力価)/2
【0054】
[0.5%不溶解分量の測定]
製造例および比較製造例で得られた3質量%ポリマー水溶液83.3gを、あるいは比較製造例で得られた粉末状ポリマー2.5gを脱イオン水に溶解し、0.5%ポリマー水溶液の500gを調製した。これを直径20cm、目開き180μmの篩でろ過し、篩上の残留物(不溶解分)の水分を拭き取り、その質量を測定した。
【0055】
本製造例で用いた原料を以下に示す。
【0056】
[モノマー]
N−ビニルホルムアミド(以下、「NVF」という。)、ダイヤニトリックス社製、純度99.2%。
アクリロニトリル(以下、「AN」という。)、ダイヤニトリックス社製、純度100%。
アクリルアミド(以下、「AAM」という。)、ダイヤニトリックス社製、純度50%水溶液。
アクリル酸(以下、「AA」という。)、三菱化学社製、純度100%。
N,N‘−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド4級塩(以下、「DME」という。)、大阪有機化学工業社製、純度80%水溶液。
N,N‘−メチレンビスアクリルアミド(以下、「MBAAM」という。)、和光純薬社製、純度100%。
【0057】
[開始剤]
2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、商品名V−50(以下、「V−50」という。)、和光純薬社製、純度100%。
DAROCUR 1173(以下、「D−1173」という。)、Ciba社製、純度100%。
【0058】
[分散媒]
シクロヘキサン(以下、「CHX」という。)、林純薬社製、純度100%。
【0059】
[界面活性剤]
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、商品名ノイゲンET140E(以下、「ノイゲンET140E」という。)、第一工業製薬社製、HLB=14.0、純度100%。
【0060】
[添加剤]
塩化アンモニウム(以下、「AC」という。)、和光純薬社製、純度100%。
硫酸ヒドロキシアンモニウム(以下、「HX」という。)、キシダ化学社製、純度100%。
【0061】
[酸]
塩酸(以下、「HCA」という。)、和光純薬社製、純度35%水溶液。
【0062】
[連鎖移動剤]
次亜リン酸(以下、「HP」という。)、関東化学社製、純度100%。
【0063】
<架橋型アミジン系両性ポリマーの製造>
【0064】
[製造例1]
攪拌機、冷却管、滴下ロート、および窒素ガス導入管を備えた1リットルの4ツ口フラスコにCHX338.0g、ノイゲンET140E3.0g、AC5.7g、および脱イオン水39.7gを入れ、攪拌下50℃に昇温した。
【0065】
次に、NVF50.8g、AN37.6g、AAM50.4g、MBAAMの0.1%水溶液3.4g、および脱イオン水7.8gを十分に混合し、モノマー水溶液を調製した(NVF:AN:AAM=40:40:20(モル比)、MBAAM=30ppm/全モノマー総質量、モノマー濃度60%)。これを滴下ロート内に充填した。
【0066】
窒素ガス気流下、V−50の12%水溶液2.8gを添加した後、上記モノマー水溶液を3時間かけて上記フラスコ内に滴下した。その後、50℃で1時間保持し、更に55℃で2時間保持した。これにより、架橋型NVF−AN−AAMポリマーを得た。得られたポリマーをフラスコから取り出し、ロートにて固液分離した。分離した湿粉状のポリマーを減圧乾燥機にて、真空下、60℃で10時間乾燥させた。これにより、粉末状架橋型NVF−AN−AAMポリマーを得た。
【0067】
攪拌機、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた1リットルの3ツ口フラスコに脱イオン水466.9gおよび上記粉末状ポリマー15.0gを入れ、攪拌下50℃に昇温した。昇温後、HXの25%水溶液3.6gを添加し、1時間保持した。その後、70℃に昇温し、HCA14.5g(NVFおよびAAM構成単位の合計に対して1.1倍当量)添加し、1時間保持した。更に80℃で10時間保持した。これにより、3%の架橋型アミジン系両性ポリマー(ポリマーCAD−1)水溶液を得た。
【0068】
[製造例2]
製造例1において、使用するモノマーを、NVF61.8g、AN45.8g、AAM12.9g、および脱イオン水25.7gに変更する(NVF:AN:AAM=47.5:47.5:5(モル比)、MBAAM=30ppm/全モノマー総質量、モノマー濃度60%)以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%の架橋型アミジン系両性ポリマー(ポリマーCAD−2)水溶液を得た。
【0069】
[製造例3]
製造例1において、使用するモノマーを、NVF43.5g、AN32.2g、AAM74.0g、および脱イオン水3.7gに変更する(NVF:AN:AAM=35:35:30(モル比)、MBAAM=30ppm/全モノマー総質量、モノマー濃度60%)以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%の架橋型アミジン系両性ポリマー(ポリマーCAD−3)水溶液を得た。
【0070】
[製造例4]
実施に当たり、AAはあらかじめ48%水酸化ナトリウムでpH7に調整し、純度50%水溶液(以下、「AA−Na」という。)として使用した。製造例1において、使用するモノマーを、NVF61.8g、AN45.8g、AA−Na12.9g、および脱イオン水25.7gに変更する(NVF:AN:AA−Na=35:35:30(モル比)、MBAAM=30ppm/全モノマー総質量、モノマー濃度60%)以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%の架橋型アミジン系両性ポリマー(ポリマーCAD−4)水溶液を得た。
【0071】
[比較製造例1]
製造例1において、使用するモノマーを、NVF65.2g、AN48.3g、および脱イオン水31.7gに変更する(NVF:AN=50:50(モル比)、MBAAM=30ppm/全モノマー総質量、モノマー濃度60%)以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%の架橋型アミジン系両性ポリマー(ポリマーAD−1)水溶液を得た。
【0072】
[比較製造例2]
製造例1において、MBAAMの0.1%水溶液0gおよび脱イオン水10.5gに変更する(NVF:AN:AAM=40:40:20(モル比)、MBAAM=0ppm/全モノマー総質量、モノマー濃度60%)以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%の架橋型アミジン系両性ポリマー(ポリマーAD−2)水溶液を得た。
【0073】
[比較製造例3]
DME1030.5g、AAM151.2g、およびMBAAMの0.1%水溶液13.5gを、内容積2000mL褐色耐熱瓶に投入し、HPを、全モノマーの総質量に対して、1000ppm(0.9g)となるように投入し、更に蒸留水を加え、総質量が1200gのモノマー水溶液(DME:AAM=80:20(モル比)、MBAAM=15ppm/全モノマー総質量、モノマー濃度75%)を調製した。このモノマー水溶液を1mol/L硫酸により、pH4.5となるようにpHを調整した。更に、D−1173を、全モノマーの総質量に対して、30ppm(0.036g)となるように投入し、これに窒素ガスを30分間吹き込みながらモノマー水溶液の温度を15℃に調節した。
【0074】
その後、モノマー水溶液をステンレス反応容器に移し、容器の下方から10℃の水を噴霧しながら、ケミカルランプを用いて、容器の上方から5W/mの照射強度で、表面温度計が40℃になるまで光を照射した。表面温度計が40℃に到達した後は、0.5W/mの照射強度で30分間光を照射した。更にモノマーの残存量を低減させるために、照射強度を50W/mにして15分間光を照射した。これにより、含水ゲル状のポリマーを得た。
【0075】
得られた含水ゲル状のポリマーを容器から取り出し、小型ミートチョッパーを用いて10mm以下に切断した後、温度60℃で16時間乾燥した。その後、ウィレー型粉砕機を用いて乾燥したポリマーを粉砕し、粉末状架橋型エステル系カチオン性ポリマー(比較ポリマーCES−1)を得た。
【0076】
[比較製造例4]
比較製造例3において、モノマー種、モノマー比、モノマー濃度、MBAAM、開始剤、および連鎖移動剤を表2−1及び表2−2に記載の内容に変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、粉末状架橋型エステル系両性ポリマー(比較ポリマーCES−2)を得た。
【0077】
前記の各製造例で得られたポリマーの組成を次のようにして求め、表2−1に示した。
【0078】
(1)製造例1〜4及び比較製造例1、2のポリマーについては、それぞれ得られた3%のポリマー水溶液に重水を加え、NMRスペクトロメーター(日本電子社製、270MHz)にて13C−NMRスペクトルを測定し、13C−NMRスペクトルの各構成単位に対応したピークの積分値より各構成単位の組成を算出した。なお、前記一般式(1)及び(2)の構成単位は区別することなく、その総量として求めた。
【0079】
(2)比較製造例3、4のポリマーについては、各々のモノマーに由来する構成単位の割合を各モノマーの仕込み量から計算した。
【0080】
また、前記の各製造例で得られたポリマーについて、ポリマーの還元粘度、カチオン当量値、および0.5%不溶解分量を測定し、表2−2に示した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2−1】

【0083】
【表2−2】

【0084】
以下、上記製造例で得られたポリマー(CAD−1〜CAD−4)及び比較製造例で得られたポリマー(AD−1〜AD−2、CES−1〜CES−2)を汚泥脱水剤として用いた有機汚泥処理について説明する。
【0085】
[実施例1〜4]
下水処理場から排出されるオキシデーションディッチ処理した余剰汚泥(pH=6.6、TS=1.9%、繊維分=3.4%/TS)を用い、次のように脱水試験を実施した。
500mLビーカーに前記有機汚泥300mLを採取した。次いで、表2−1及び表2−2に記載のポリマーを各々脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を表3に記載の最適添加量にて余剰汚泥に添加した。次いで、この余剰汚泥をスパチュラで攪拌速度:180回転/分、攪拌時間:30秒間撹拌混合して凝集フロックを形成させ、有機汚泥の脱水処理を行った。
【0086】
[実施例5]
500mLビーカーに前記有機汚泥300mLを採取した。次いで、無機凝集剤としてポリ硫酸鉄を表3に記載の最適添加量にて余剰汚泥に添加した。次いで、ポリマーCAD−1を脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を表3に記載の最適添加量にて余剰汚泥に添加した。その後は実施例1〜4と同様にして凝集フロックを形成させ、有機汚泥の脱水処理を行った。
【0087】
[実施例6]
実施例5において、ポリ硫酸鉄の代わりに有機凝結剤としてポリジアルキルアミノアルキルメタクリレートのアルキルクロライド4級塩を用いた以外は同様の操作を行った。
【0088】
[実施例7]
実施例5において、ポリ硫酸鉄のみの代わりにポリ硫酸鉄とポリジアルキルアミノアルキルメタクリレートのアルキルクロライド4級塩を併用して用いた以外は同様の操作を行った。
【0089】
[実施例8]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表3に示す通りに変更した以外は、実施例1〜4と同様の操作を行った。なお、ポリマーCAD−2とポリマーCES−2を50:50の質量比で混合した混合物を脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を用いた。
【0090】
[比較例1〜4]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表4に示す通りに変更した以外は、実施例1〜4と同様にして凝集フロックを形成させ、有機汚泥の脱水処理を行った。なお、比較例3は、ポリマーAD−1とポリマーCES−2を50:50の質量比で混合した混合物を脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を用いた。比較例4は、ポリマーAD−2とポリマーCES−1を50:50の質量比で混合した混合物を脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を用いた。
【0091】
[評価方法]
実施例および比較例における脱水処理の評価は、以下に示す通りに行った。
【0092】
(凝集フロック粒径、ろ過性能、ろ過水のSS量)
各例において凝集フロックを形成させた後に攪拌を止め、凝集フロック粒径を目視により測定した。その後、あらかじめろ布を敷いたヌッチェに凝集した有機汚泥を移し、ろ過性能(10秒間のろ過水量)を測定した。このとき、60秒間ろ過した後のろ過水のSS量を目視により以下の基準で評価した。
【0093】
− :ろ過水がほとんど透き通っており、浮遊物はほぼ見られない(SS量目安:50ppm未満)。
+ :ろ過水に一部濁りが見られ、浮遊物がわずかに存在する(SS量目安:50〜100ppm未満)。
++ :ろ過水に部分的に濁りが見られ、浮遊物がところどころ存在する(SS量目安:100〜200ppm未満)。
+++ :ろ過水に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在する(SS量目安:200〜500ppm未満)。
++++:ろ過水に全体的に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在し、一部粗大な大きさで存在する(SS量目安:500〜1000ppm未満)。
× :ろ過水が完全に濁り、粗大な浮遊物が多数存在する(SS量目安:1000ppm以上)。
【0094】
(凝集フロック強度、脱水ケーキの含水率)
更に、ろ過濃縮した有機汚泥(凝集フロック)をろ布上で50回転がし、凝集フロックの強度(団粒性)を以下の基準で評価した。
【0095】
◎:ろ布上で転がすことにより水が切れ、凝集フロックが数個の団子状になる。
○:ろ布上で転がすことにより水が切れ、凝集フロックが一塊状になる。
△:ろ布上で転がすことにより水が切れるが、凝集フロックが崩れ塊状にならない。
×:ろ布上で転がすことにより、凝集有機汚泥が崩れて流れ、ドロドロになる。
【0096】
その後、0.1MPaの圧力でプレス脱水し、脱水ケーキを得た。この脱水ケーキの含水率を、常法((財)日本下水道協会編、「下水道試験法上巻1997年度版」p296〜297)により測定した。
【0097】
実施例および比較例における各試験結果を表3及び表4に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
表3及び表4に示すように、本汚泥脱水剤を用いた実施例1〜8では、粗大な凝集フロックを生成させることが出来た。また、特に実施例1、4では、生成した凝集フロックの粒径が非常に大きく、その強度も非常に高い。更に、ろ過性能は非常に優れており、得られた脱水ケーキの含水率は低かった。無機凝集剤および有機凝集剤を併用し、本発明の汚泥脱水剤を用いた実施例5〜7では、脱水性能に優れ、脱水ケーキの含水率は非常に低い結果であった。更に、ポリマーCAD−2と架橋型エステル系カチオン性ポリマーとの混合物から成る汚泥脱水剤(CAD−2/CES−2混合物)を用いた実施例8では、凝集フロックの粒径および強度、脱水性能に悪影響を与えることなく、有機汚泥を脱水処理することが出来た。
【0101】
一方、ポリマーの構成単位にAAを含有しない汚泥脱水剤(AD−1)、架橋構造を持たない汚泥脱水剤(AD−2)、AD−1とCES−2との混合物から成る汚泥脱水剤(AD−1/CES−2混合物)、およびAD−2とエステル系両性ポリマーとの混合物から成る汚泥脱水剤(AD−2/CES−1混合物)を用いた比較例1〜4では、その最適添加量が本汚泥脱水剤を用いた実施例1〜8よりも多く、生成した凝集フロック粒径は小さく、その強度も低い。そのため、ろ過性能は低く、得られた脱水ケーキの含水率は高い結果であった。
【0102】
[実施例9〜16]
下水処理場から排出される消化汚泥(pH=7.1、TS=1.6%、繊維分=9.3%/TS)を用い、実施例9〜12は実施例1〜4と、実施例13は実施例5と、実施例14は実施例6と、実施例15は実施例7と、実施例16は実施例8とそれぞれ同様の脱水試験を実施した。結果を表5に示す。
【0103】
[比較例5〜8]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表6に示す通りに変更した以外は、実施例1〜4と同様にして凝集フロックを形成させ、有機汚泥の脱水処理を行った。結果を表6に示す。
【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
表5に示すように、本汚泥脱水剤を用いた実施例9〜16では、粗大な凝集フロックを生成させることが出来た。また、特に実施例9、12では、生成した凝集フロックの粒径が非常に大きく、その強度も非常に高い。更に、ろ過性能は非常に優れており、得られた脱水ケーキの含水率は低かった。無機凝集剤および有機凝集剤を併用し、本発明の汚泥脱水剤を用いた実施例13〜15では、脱水性能に優れ、脱水ケーキの含水率は非常に低い結果であった。更に、ポリマーCAD−2/CES−2混合物を用いた実施例16では、凝集フロックの粒径および強度、脱水性能に悪影響を与えることなく、有機汚泥を脱水処理することが出来た。
【0107】
一方、表6に示すように、ポリマーAD−1、ポリマーAD−2、ポリマーAD−1/ポリマーCES−2混合物、およびポリマーAD−2/CES−1混合物を用いた比較例5〜8では、その最適添加量が本汚泥脱水剤を用いた実施例9〜16よりも多く、生成した凝集フロック粒径は小さく、その強度も低い。そのため、ろ過性能は低く、得られた脱水ケーキの含水率は高い結果であった。
【0108】
以上の有機汚泥の脱水処理評価結果より、本発明の架橋型アミジン系両性ポリマーである製造例1〜4で得られたポリマーCAD−1〜CAD−4は、汚泥脱水剤として、その性能を十分に発揮することを示している。特に、繊維分の少ない難脱水性の有機汚泥に対しては非常に優れた性能であることを例証していることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミジン構成単位および(メタ)アクリル酸構成単位を必須成分とする架橋型アミジン系両性ポリマーから成ることを特徴とする泥脱水剤。
【化1】

[式(1)及び(2)中、RおよびRは各々同一または異なる水素原子またはメチル基を示し、Xはアニオン基を示す。]
【請求項2】
アミジン構成単位の割合が20〜70モル%、(メタ)アクリル酸構成単位の割合が3〜30モル%である請求項1記載の汚泥脱水剤。
【請求項3】
有機汚泥に汚泥脱水剤を添加した後、脱水機を用いて脱水処理する有機汚泥の脱水処理方法において、汚泥脱水剤として請求項1又は2記載の汚泥脱水剤を使用することを特徴とする有機汚泥の脱水処理方法。
【請求項4】
汚泥脱水剤と共に凝結剤を併用する請求項3に記載の有機汚泥の脱水処理方法。
【請求項5】
有機汚泥が繊維分:1〜15質量%/TSの難脱水性有機汚泥である請求項3又は4に記載の有機汚泥の脱水処理方法。
【請求項6】
脱水機としてスクリュープレス型脱水機を使用する請求項3〜5の何れかに記載の有機汚泥の脱水処理方法。

【公開番号】特開2013−94739(P2013−94739A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240671(P2011−240671)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】