説明

汚泥脱水装置

【課題】電気分解や電気浸透による水分の排出ではなく、電気泳動による汚泥ケーキ中の水分の移動偏在により、偏在した水分を不織布で吸引することにより高い脱水効果を得ることが出来る装置を提供する
【解決手段】濾過脱水機構を上下に装備した汚泥脱水装置において、濾過脱水機構が、濾体と、該濾体を軸受けブロックとカムフォロワに接合する濾体軸と、軸受けブロックと、軸受けブロックを設置するためのチェーンアタッチメントを装備したチェーンと、濾体軸を進行方向へ動かすためのチェーン駆動用のローラと、凹凸のある板カムと、濾体軸と接合するカムフォロワとからなるとともに、隣接する濾体との間に汚泥が滞留して目詰まりを起さないように、吸水布の下部に設置される複数の濾体の各軸を隣接する濾体軸とずらして設置して隣接する濾体を不規則に動作させるように濾体軸に接合しているカムフォロワが板カムの形状に沿って上下にランダムに動く構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種産業排水すなわち下水道汚泥、衛生センター(し尿処理等)汚泥、水産加工業汚泥、食肉加工業汚泥、食品飲料工業汚泥、化学工業汚泥、畜産汚泥、産廃汚泥等々の汚泥排水の脱水処理装置に関し、特に、汚泥水を汚泥処理装置で脱水する際に使用する吸水布が伸びてしまうのを防ぐと共に、吸水布を毛羽立たせないために保護ネットを装備し、更に吸水布を設置する濾過脱水機構が目詰まりを起こさないように複数の濾体が交互に動く構造とした吸水布及び濾過脱水機構を備えた汚泥脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥を脱水する装置としては様々な脱水方法による装置が開発されており、それぞれの装置は最終的に水分の脱水された汚泥ケーキを排出口より排出し、汚泥ケーキは適宜な運搬手段で搬出されている。排出される汚泥ケーキの含水率を下げることは、運搬の重量と体積に関連するので、少しでも含水率を下げる技術が研究開発されている。
【0003】
含水率を下げる方法として、脱水された汚泥ケーキにさらに強加圧を加えて脱水する物理的な方法や電気分解や電気浸透等の電気的な方法で脱水する方法が用いられている。強加圧脱水方式では、含水率を下げる為に汚泥ケーキを挟む圧力を上げて脱水効率を上げることが工夫されている。ただし、実測では圧力を上げても効果的には含水率は下がらない欠点がある。また、汚泥ケーキを揉むようにするとさらに脱水が進行することが知られているが、汚泥ケーキを挟んだ状態で脱水布に揉むような特殊な力をかけると脱水布が破損する可能性もある他に、脱水布自体が目詰まり状態となり、実験的にも効率的な脱水は困難であった。また、一度目詰まりを起こした脱水布はその後の工程で洗浄しても目詰まりは容易に解消できないという欠点もある。
【0004】
一般的な脱水方式としては、吸水布を汚泥ケーキに密着させて毛細管現象により水分を吸収する方式がある。この方式は電気分解のように多量の電気を使用しないためコストに優れている利点がある。水分を含んだ吸水布は絞りロール等で水分を押圧搾出させて再度汚泥ケーキに押圧させて水分を吸収する。しかし、吸水布は使用すれば使用するほど弛んで伸びる欠点がある。一度弛んだ吸水布は再生不可能であり吸水効果が下がるので、吸水布の交換を余儀なくされる。
【0005】
また、汚泥ケーキに押圧させて水分を吸収する吸水布は、付着物が表面に付くために回転ブラシ等で表面の汚れを落とす必要がある。しかし、回転ブラシを使用して付着物を除去すると、逆に泥等が吸水布内部に潜入して吸水布の洗浄が困難となり、さらに回転ブラシにより吸水布の表面が毛羽立つという問題があった。表面が毛羽立つと汚泥ケーキに接触させて水分を吸収する際に吸水布に泥が入り込みやすくなり吸水率が落ちるという問題を生じていた。
【0006】
吸水布を装備するとともに、複数の濾体列の上に汚泥を搭載して、濾体の隙間から汚泥の水分を排出させる方式の汚泥脱水装置も開発されている。この装置では、吸水布で水分を吸収し、更に吸水布の下部に濾体を配置して、濾体と濾体の間にできる間隙から水分を排水している。吸水布と濾体による濾過脱水との組み合わせは汚泥から水分を効果的に排水できる効果がある。しかし、複数の濾体間に汚泥が付着すると、間隙を泥が塞いでしまうため目詰まりを起こし水分の排水効果が低下する問題があった。
吸水効果の高い吸水布と複数の濾体を持つ脱水機構を組み合わせて用いても上記のような問題があったため、効率的な排水が実現できない問題点があったので、上記問題を解決する汚泥脱水装置の開発が待たれていた。
【特許文献1】特開平1−49898号公報
【特許文献2】特開平11−165196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件発明は、上記の問題を解決するための装置であり、吸水布が伸びて弛まず且つ濾体に目詰まりの起きない吸水効率のよい汚泥脱水装置を提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る汚泥脱水装置は、汚泥ケーキに押圧接触させて水分を吸い取る吸水布と複数の濾体を整列させた濾過脱水機構を上下に装備した汚泥脱水装置において、濾過脱水機構が、濾体と、該濾体を軸受けブロックとカムフォロワに接合する濾体軸と、軸受けブロックと、軸受けブロックを設置するためのチェーンアタッチメントを装備したチェーンと、濾体軸を進行方向へ動かすためのチェーン駆動用のローラと、凹凸のある板カムと、濾体軸と接合するカムフォロワとからなるとともに、隣接する濾体との間に汚泥が滞留して目詰まりを起さないように、吸水布の下部に設置される複数の濾体の各軸を隣接する濾体軸とずらして設置して隣接する濾体を不規則に動作させるように濾体軸に接合しているカムフォロワが板カムの形状に沿って上下にランダムに動く構成である。
【0009】
汚泥ケーキに吸水布を押圧接触させて水分を吸い取る方式の汚泥脱水装置において、係止突起を突設した伸延しない素材からなる伸び防止帯を吸水布の裏面側に係止突起で刺合させて装着した構成である。また、前記伸び防止帯は、面ファスナーからなる構成でもある。また、前記伸び防止帯は、通水用の貫通孔若しくはスリットが設けられている構成でもある。さらに、前記伸び防止帯は、吸水布の幅と同一に形成され、吸水布の裏面の全面に装着されるか、または、細長帯体からなり吸水布の裏面に間隔を開けて帯状に装着される構成でもある。
【0010】
汚泥ケーキに吸水布を押圧接触させて汚泥の水分を吸水し、吸水布を押圧脱水するとともに回転ブラシで清掃する方式の汚泥脱水装置において、脱水した状態の吸水布の汚れを取る回転ブラシの回転により吸水布の表面が毛羽立たないように回転ブラシを保護ネットの内部に装備した構成でもある。前記保護ネットは、円筒形若しくは円弧形状の長板からなる構成でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る汚泥脱水装置は上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.更に、吸水布と濾体を組み合わせた濾過脱水機に、隣接する濾体が交互に動く濾体軸をずらした機構を加えることにより汚泥が濾体上に滞留して目詰まりを起す事がない。
2.不織布とランダムに作動する濾体を組み合わせた濾過脱水機に伸び防止帯を装備することもできる。
3.面ファスナーを用いているので素材の入手が簡単で、安価で作成する事ができる。
4.伸び防止帯に通水用の貫通孔またはスリットが設けられているので排水効率が良い。
5.伸び防止帯が吸水布の幅の全面に装着され手いるので確実に伸びを防止できる。
6.保護ネットが設けられているので吸水布を洗浄しても表面が毛羽立たないので吸水効率が低下しない。
7.回転ブラシを円筒形若しくは円弧形状の保護ネットで覆っているので作業効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明にかかる汚泥脱水装置を図面に示す実施に基づいて詳細に説明する。図1は伸び防止帯と保護ネットを装備した本発明にかかる汚泥脱水装置の構成図であり、図2(a)伸び防止帯を装備した吸水布の側面図、(b)孔を穿孔した伸び防止帯の構成図、(c)孔を穿孔し更にスリットを設けた伸び防止帯の構成図である。図3(a)円筒形の保護ネットを回転ブラシに装備した斜視図、(b)円弧形状の保護ネットを回転ブラシに装備した斜視図であり、図4は複数の濾体を用いた濾過脱水機構の構成斜視図である。図5(a)濾過脱水機構の平面図(b)濾過脱水機構の側面図(c)濾過脱水機構の右側面図であり、図6は汚泥脱水装置に装備される濾過脱水機構の側面図であり、図7は濾過脱水機構の動作図である。
汚泥脱水装置10は、吸水布20と伸び防止帯30と回転ブラシ40と駆動ロール50と従動ロール60と絞りロール70とスクレーパ80とからなる。また、回転ブラシに保護ネット90を装備する構成とすることも可能である。
【0013】
図1により本発明の汚泥脱水装置の構成を詳細に説明すると、汚泥脱水装置10は上部脱水装置12と下部脱水装置13により汚泥ケーキを挟んで水分を吸引する構成である。吸水布20は、汚泥ケーキに接触させてケーキに含有する水分を毛細管現象により吸水するための布であり、この実施例では一定幅の帯体からなる不織布を使用しており、ループ(環)状に形成されている。吸引した水分は基本的には吸水布の下部から液体として自重により落水する構成である。また、残存する水分は吸水布が回転移動して絞りロール70で絞り取られる構成でもある。しかし、吸水布は使用により後述する駆動ロール50や従動ロール60や絞りロール70で引っ張られて伸びて弛んでしまう傾向があった。
【0014】
伸び防止帯30は、伸縮性のない素材に突起が突設されているものを使用する。この実施例では面ファスナーを使用している。伸び防止帯30を吸水布20の下部から突起で刺合させて吸水布20を下から刺すように装着することにより、吸水布20と伸び防止帯30が一体となり伸びて弛んでしまうことを防いでいる。また、突起は面ファスナー上に装備されており、面ファスナー自体に伸縮性がないので面ファスナーを利用するのが便利であるが、他にも伸縮性のない素材なら利用可能である。さらに、水分を吸収して飽和状態となった吸水布から水分が垂れ落ちるように伸び防止帯30には図2で示すような孔34もしくはスリット孔(図示せず)が設けられている。また、伸び防止帯30は吸水布20の裏側全長に渡って装着される構成であるが、長手方向に縦に帯状に装着して、スリットを形成することも可能である。帯状に装着する際には吸水布の長手方向に平行になるように伸び防止帯30を装着する必要がある。
【0015】
回転ブラシ40は、吸水布20の表面に付着した汚泥を取り除くための洗浄用のブラシであり、吸水布20の表面を回転するブラシを接触させて擦って汚泥を取り除いている。回転ブラシ40は、中心軸により回転する構成であり、回転しながら吸水布20の表面をこするため汚泥の除去を効率的に行う事が可能である。
【0016】
駆動ロール50は、吸水布20をスムーズに動作させるための円柱または円筒形状の駆動部であり、回転をすることにより表面で接触している吸水布20を回転移動させる。
従動ロール60は、駆動ロール50が一端に配置さている際の他端に設置される。駆動ロール50と従動ロール60はセットで設置され、図1で示すように脱水装置上部と下部にそれぞれ1セットづつ配置される。駆動ロール50はモータやエンジン等の駆動源と接続しているが、従動ロール60には駆動源がなく、吸水布20を誘導するために設置される。
【0017】
絞りロール70は、水分を含んだ吸水布20から水分を絞り取るためのロールであり、この実施例では脱水装置上部に3箇所、脱水装置下部に2箇所設置されている。図1に示すように脱水装置上部には吸水布の裏側に2箇所、表面上に1箇所設置されており、交互に配置されている。また、脱水装置下部には裏側に1箇所、表面上に1箇所配置されている。これは表面側と裏側に交互に配置することにより吸水布20が圧縮されて水分を絞り取る効率が良いためである。
【0018】
スクレーパ80は、回転ブラシ40では落としきれなかった表面上の汚泥を剥がし取るために設置するブレードである。回転ブラシ40はブラシで吸水布20の表面を掻き落とすが、毛先は柔らかいために汚泥が表面に残ってしまう可能性がある。汚泥が残ったまま再度汚泥ケーキから吸水することも可能であるが、吸水効果が下がるので、表面の清掃のために剥がす装置を装備している。
【0019】
また、この構成の汚泥脱水装置に保護ネット90を装備することも可能である。
保護ネット90は、回転ブラシ40の外側周面に配置する網体であり、回転ブラシ40の毛先が吸水布の表面を損傷することを防ぎ、汚泥が除去された後の吸水布20の表面が毛羽立つのを防ぐものである。保護ネット90は図3(a)に示すような円筒状に限定されず、図3(b)に示すような円弧状のものを用いても良い。従来はこの種の保護ネット90を装備していなかったため、回転ブラシ40により吸水布20の表面に付着している汚泥を除去する際にブラシの毛先が吸水布に刺さり吸水布20の表面を毛羽立たせていた。表面が毛羽立ったままの状態で吸水布20が再度汚泥ケーキに接触して水分を吸水すると、汚泥が吸水布の内部にまで入り込んで吸水効果が低下すると共に爾後の洗浄が難しくなっていた。この問題を解決するために保護ネット90を装備した構成であり、伸び防止帯を装備しない汚泥脱水装置にも装備することが可能である。
【0020】
本発明の汚泥脱水装置の動作を図1により詳細に説明する。図1では上部脱水装置12と下部脱水装置13の間の間隔が広く取られているが、これは構成を明確に説明するためであり、実際の間隔は図1の間隔より狭く取られている。吸水布20は駆動ロール50によりA方向に移動する。汚泥ケーキは図左上から順次脱水装置の吸水布20の上に搭載供給される。上部脱水装置12と下部脱水装置13に装備された吸水布20が上下から挟むように汚泥ケーキに接触する。汚泥ケーキの水分は毛細管現象により吸水布に吸引される。水分は毛細管現象により吸水布20に吸い取られ汚泥ケーキは図右端に向かって排出される。吸水布20に吸引された水分は自重により吸水布20の背面の伸び防止帯30に穿孔された孔34より落下排出される構成である。
【0021】
水分を吸水した吸水布20は駆動ロール50により回転移動しており、まずスクレーパ80で表面についた汚泥が剥離分離される。次に回転ブラシ40により表面についた汚泥が掻き落とされる。本発明では回転ブラシに保護ネット90が装備されているので吸水布20が毛羽立たず再度汚泥ケーキから水分を吸収するときに汚泥が吸水布20の内部に入り込んでしまう心配が無い。次に上部脱水装置と下部脱水装置はそれぞれの絞りロール70により吸水布20内部に吸水されている水分が絞られて、再度汚泥の供給される図左側へ回転移動し再度汚泥ケーキから水分を取ることを繰り返す構成である。
【0022】
本発明の汚泥脱水装置10は下部脱水装置の中に、図4に示すような濾過脱水機構100を装備することが可能である。
濾過脱水機構100は、濾体110と、濾体軸120と、軸受けブロック130、とチェーン用ローラ140と、チェーン150と、板カム160と、カムフォロワ162と、駆動ロール170とからなる。
【0023】
濾体110は、図4に示すように細長の長方体であり、濾体軸120に接合するための円筒形状の接合部112が設けられている構成である。また、濾体110は僅かな隙間を空けて並行に複数本並べて幅のある帯状に形成している。さらに、この実施例では隣り合う濾体110は同じ濾体軸120に接合されるのではなく、濾体110は一つおきに別の濾体軸120aに接合されている。これにより、隣接する濾体は異なる軸に応動して上下するためランダムな動きとなり汚泥は常に揺らされて移動させられており、一箇所に停滞して目詰まりを起こす事が無くなる。
【0024】
濾体軸120,120aは、濾体110の接合部112と接合する軸であり、両端は軸受けブロック130と接合しており、一方の端部の伸延部でカムフォロワ162と接合している。濾体軸120は軸受けブロック130の移動により移動する構成である。
【0025】
軸受けブロック130は、濾体軸120と嵌合する部材であり、チェーン150に設置されている。軸受けブロック130は濾体軸120を支持するための支持部材であり、回転自在に係合している。
【0026】
チェーン用ローラ140は、チェーン150に係合する円柱状のローラであり、スムーズに動作するために表面は滑らかになっている。また、中心軸でチェーン150と係合している。
【0027】
チェーン150は、ローラの回転を濾体に伝えて濾体列を回転させる伝導部材であり、軸受けブロック130が設置され、左右からチェーン用ローラ140を挟持し係合している。チェーン150は駆動ロール170と係合しており、駆動ロール170の動作により回転移動する。
【0028】
板カム160は、連続した山形の設けられた凹凸のある直方体状の板であり、カムフォロワ162がその端面に沿って摺動する構成である。この実施例では板カム160の凹凸は滑らかな略三角形状の凹凸であり、カムフォロワ162が板カム上を通過していくことによりカムフォロワ162が上下に揺動する構成である。
カムフォロワ162は、図4で示すように円筒形の接合部164と円柱状の当接部166とからなる。接合部164は濾体軸120、120aと堅固に接合しており、また当接部166は板カム160の端面に接して摺動する構成である。
【0029】
駆動ロール170は、濾体を駆動させる回転体であり、図6で示すようにロールに係合しているチェーン150を回転させて濾体に回転運動を伝達している。駆動ロール170にはエンジンやモータ等の駆動源が接続されている。駆動ロール170が回転動作することによりチェーン150に係合している濾体110と濾体軸120、120aを回転させる構成である。
【0030】
濾過脱水機構100は、図6に示すように駆動ロール170によりチェーン150が回転駆動し濾体列の全体が回転動作する構成である。図5で示すようにチェーン150には軸受けブロック130が設置されており、軸受けブロックには図4に示すように濾体軸120、120aが嵌合している。濾体軸120、120aには細長直方体の濾体110の接合部112が接続されており、さらに濾体軸の長手方向の片端にはカムフォロワ162が設けられている。図4に示すように、隣り合う濾体は同じ濾体軸120で接合せずに一つ若しくは2つ程前後に配置されている濾体軸120aと接合している。チェーン150により全体が一体となって進行方向に移動するが、板カム160の凹凸によりカムフォロワ162が上下に揺動することにより接合している濾体軸120、120aも上下に移動する。濾体軸120、120aの運動により、接合されている濾体110も上下に揺動する。その結果、隣り合う濾体110は別の濾体軸120と120aに接合しているため、それぞれ別個の動きとなり、ランダムに上下動することになる。
【0031】
この濾体110の動作を図7により更に詳しく説明すると、第一濾体200と第二濾体210は隣り合う濾体であるため、お互いに別の濾体軸と接合している。上述した濾体軸120の動きにより図7(a)のように第一濾体200が低位置にあり、第二濾体210が高位置にある。また板カム160の凹凸により逆に図7(b)に示すように第一濾体200が高位置にあり、第二濾体210が低位置にある状態にもなり、図7(a)と(b)の状態に交互になるように動作する。
この動作により、従来の濾過脱水装置では均等に濾体が並べられていたため汚泥の粒子等が隙間に入り込み目詰まりを起こしていたが上記の構成にする事により隣り合う濾体が別々の動きをするため、汚泥の粒子等が常に動かされる状態となり目詰まりを防止することが可能となる。また、隣り合う濾体が別々の動作を行う構成とすればよいので、3つ若しくは複数の濾体軸にそれぞれ濾体を設置する構成としてもよい。
【0032】
この濾過脱水機構100は、従来のどの汚泥脱水装置にも装備する事が可能であり、もちろん吸水布で汚泥ケーキから水分を吸収する他の構造の汚泥脱水装置にも設置する事が可能となる。また、この実施例では板カムおよびカムフォロアにより構成されているが、ラック(歯条)&ピニオン(歯車)方式とすることも可能であり、その他の方法で構成することもできる。
【0033】
本発明の汚泥脱水装置は、伸び防止帯を装備した吸水布を用いる事により、従来では延び弛んで吸水効果が低下して交換を余儀なくされていた吸水布を長期間使用することが可能となった。また、回転ブラシに保護ネットを装備することにより吸水布表面を毛羽立たせない構成としたので汚泥が吸水布内部に入り込む心配がなくなった。さらに濾過脱水機構の隣り合う濾体の動きをランダムにしたため、汚泥の粒子等で目詰まりが起きることを防止することが可能であり、効率よく水分を濾過する事が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】伸び防止帯と保護ネットを装備した本発明にかかる汚泥脱水装置の構成図
【図2】(a)伸び防止帯を装備した吸水布の側面図(b)孔を穿孔した伸び防止帯の構成図(c)孔を穿孔し更にスリットを設けた伸び防止帯の構成図
【図3】(a)円筒形の保護ネットを回転ブラシに装備した際の斜視図(b)円弧形状の保護ネットを回転ブラシに装備した際の斜視図
【図4】濾過脱水機構の構成を示す斜視図
【図5】(a)濾過脱水機構の平面図(b)濾過脱水機構の側面図(c)濾過脱水機構の右側面図
【図6】汚泥脱水装置に装備される濾過脱水機構の側面図
【図7】濾過脱水機構の動作図
【符号の説明】
【0035】
1 汚泥ケーキ
10 汚泥脱水装置
12 上部脱水装置
13 下部脱水装置
20 吸水布
30 伸び防止帯
34 孔
40 回転ブラシ
50 駆動ロール
60 従動ロール
70 絞りロール
80 スクレーパ
90 保護ネット
100 濾過脱水機構
110 濾体
112 接合部
120、120a 濾体軸
130 軸受けブロック
140 チェーン用ローラ
150 チェーン
160 板カム
162 カムフォロワ
164 接合部
166 当接部
170 駆動ロール
200 第一濾体
210 第二濾体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥ケーキに押圧接触させて水分を吸い取る吸水布と複数の濾体を整列させた濾過脱水機構を上下に装備した汚泥脱水装置において、
濾過脱水機構が、濾体と、該濾体を軸受けブロックとカムフォロワに接合する濾体軸と、軸受けブロックと、軸受けブロックを設置するためのチェーンアタッチメントを装備したチェーンと、濾体軸を進行方向へ動かすためのチェーン駆動用のローラと、凹凸のある板カムと、濾体軸と接合するカムフォロワとからなるとともに、
隣接する濾体との間に汚泥が滞留して目詰まりを起さないように、吸水布の下部に設置される複数の濾体の各軸を隣接する濾体軸とずらして設置して隣接する濾体を不規則に動作させるように濾体軸に接合しているカムフォロワが板カムの形状に沿って上下にランダムに動くことを特徴とする汚泥脱水装置
【請求項2】
汚泥ケーキに吸水布を押圧接触させて水分を吸い取る方式の汚泥脱水装置において、係止突起を突設した伸延しない素材からなる伸び防止帯を吸水布の裏面側に係止突起で刺合させて装着したことを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水装置
【請求項3】
前記伸び防止帯は、面ファスナーからなることを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水装置
【請求項4】
前記伸び防止帯は、通水用の貫通孔若しくはスリットが設けられていることを特徴とする請求項1および2記載の汚泥脱水装置
【請求項5】
前記伸び防止帯は、吸水布の幅と同一に形成され、吸水布の裏面の全面に装着されるか、または、細長帯体からなり吸水布の裏面に間隔を開けて帯状に装着されることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の汚泥脱水装置
【請求項6】
汚泥ケーキに吸水布を押圧接触させて汚泥の水分を吸水し、吸水布を押圧脱水するとともに回転ブラシで清掃する方式の汚泥脱水装置において、脱水した状態の吸水布の汚れを取る回転ブラシの回転により吸水布の表面が毛羽立たないように回転ブラシを保護ネットの内部に装備したことを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水装置
【請求項7】
前記保護ネットは、円筒形若しくは円弧形状の長板からなることを特徴とする請求項6記載の汚泥脱水装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−55857(P2006−55857A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322906(P2005−322906)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【分割の表示】特願2003−306522(P2003−306522)の分割
【原出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(398020840)
【Fターム(参考)】