説明

汚濁水の処理方法

【課題】
汚濁水を処理するにあたり、少量の凝集剤により効率的に汚濁水の清澄化を行い、装置の簡易化を計る。
【解決手段】
汚濁水中に区画を有する小規模の滞留域部を設け、該滞留域部に凝集剤溶液を添加する原水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で掘削および雑石・ブロックの設置・撤去する際の汚濁防止枠内に発生する汚濁水の処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中で掘削する場合は、汚濁対策として、汚濁防止枠が使用されているが、汚濁水を拡散させないために汚濁防止枠のカーテンを水底に着定させた場合に、グラブバケットを水中に降ろすまたは引き揚げる際の大きな振動で水を揺らし、カーテンを広げたり、狭めたりして、カーテンとグラブバケットが接触して破損させるので、水深下にカーテン丈を長く設置できず、ゆえにカーテン丈を2〜4mと短くして水面上層部の一部だけにカーテンを展張しており、水底部の掘削時に発生する汚濁は拡散していた。
更に次の掘削する場合に移動するために、汚濁防止枠内に発生した汚濁を沈降させてから移動させなければならず、自然沈降では時間を要した上、微細な汚濁粒子は沈降せずに濁防止枠内に留まり、汚濁防止枠を移動する際に汚濁防止枠の外に拡散していた。短時間に微細な汚濁粒子も沈降させる方法として、汚濁防止枠内に凝集剤を用いて水中の汚濁物質をフロック化させて沈降処理する方法が採用されている。
このような凝集剤を用いて処理する場合、汚濁水に直接凝集剤溶液を添加する方法が採用されている。そして凝集剤溶液は比重が大きく沈降しやすいため、過剰的に使用されているのが現状である。
また、掘削時に使用するグラブバケットに固形凝集剤を取り付け水中攪拌し、水中の汚濁物質をフロック化させて沈降処理する方法が採用されている。
【0003】
しかしながら、従来法は、大量の汚濁水に凝集剤溶液あるいは固形凝集剤を添加するが、希薄な凝集剤注入となり、物理的にも過激な凝集がのぞめない。また水中の汚濁物質のフロック化が充分に行われないと凝集不良になり、処理された水中に例えば凝集剤に基因するアルミニウムイオンが残存する等の新たな問題も生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明者は、汚濁防止枠と凝集反応装置を組み合わせ、更に少量の凝集剤で、良好なフロックを形成する方法により、水中の汚濁物質を効率よく除去する方法について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、汚濁防止枠内に発生する汚濁水の処理において、汚濁水を水中ポンプ等で取水し、汚濁水流入部近傍に、区画を有する小規模の滞留域部を設け、該滞留域部に汚濁水と凝集剤または少量のスラリーに凝集剤を添加して模擬フロック化した模擬凝集体を水流混合せしめ、良好なフロックを形成して、グラブ枠内に戻し、汚濁水を処理する方法にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明方法によれば、区画内の汚濁水に所定の凝集剤を添加すると高濃度となり、過激な凝集反応がおこる。
凝集剤の使用量は従来の様に過剰でなくても適量でよいことになる。また、事前に高濃度凝集を行えば、凝集剤添加後における急速攪拌を低減させる事ができる。
凝集の効果は、少量の汚濁水に高濃度の凝集剤を混合させることが最重要である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明における汚濁水の処理装置の一例を示す斜視図
【図2】本発明における汚濁水の処理装置を上から見た平面図
【図3】本発明における汚濁水の処理装置の図2の側断面図
【図4】本発明における汚濁水の処理装置の他の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
【0009】
図1は本発明における汚濁水の処理装置を用いる場合を例にとり説明する。
1の汚濁防止枠は、正方形または長方形の構造を有する枠2を有し、枠に浮体3を設け、水面に浮上している。枠2は汚濁防止枠1の内側枠2aと外側枠2bの二重構造から成り、四方の内側枠2aには、それぞれ網枠4aとカーテン5aが設けられ、網枠4aとカーテン5aが内側枠2aから垂下している。カーテン5aの下端にウエイトを設けている。同様に四方の外側枠2bにも、それぞれ網枠(図示せず)とカーテン5bを設け垂下させ、カーテン5bの下端にウエイト6を設けている。
浮体3の上部且つ内側枠2aと外側枠2bの間に水路7を四角く設ける。
この水路7の一端に汚濁水8を流入させ、該流入口近傍に凝集剤9を添加し、水に勢いで急速攪拌と緩速攪拌を行って原水中の汚濁物質をフロック化させた後、沈澱処理装置で固液分離され、汚濁防止枠1の内側に処理水10を放流されている。
【0010】
図2は本発明における汚濁水の処理装置を上から見た平面図である。汚濁防止枠1の上に設けられた水路7について説明する。水路7の内側の初めに越流壁11を設けた区画を有する滞留域部12が有り、汚濁防止枠内の汚濁水を水中ポンプ13で取水した汚濁水8が水勢を伴って流入させ、凝集剤9を添加し、汚濁水8と凝集剤9が、初期混合される状態になっており、逐次滞留域部12から汚濁水が流出し、常に徐々に汚濁水が入れ替わる状態にある。
本発明は、区画された滞留域部12の汚濁水8に所定の凝集剤9を添加すると高濃度と成り過激な凝集反応が起こり、更に水路7について汚濁水8と凝集剤9を水流攪拌を行うための迂流攪拌板14がある。迂流攪拌板14の間隔が近い急速攪拌と迂流攪拌板14の間隔が離れた緩速攪拌を設けると更に良好な攪拌が行われ凝集が促進される状況下にある。図2に示す迂流攪拌板14は水路の内壁の左右交互に突部を設けたものであり、他の方法(図示せず)としては、水路の底部と上部に交互に突部を設けたものも有効な迂流攪拌方法である。
水路7の最終は越流壁11を設ける。良好なフロックを形成した処理水10は越流壁11を越え、汚濁防止枠内に放流される。
【0011】
図3は本発明における汚濁水の処理装置を側面から見た断面図(図2A−A断面図)である。
グラブ枠1は、汚濁防止枠を正方形または長方形の構造を形作る枠2を有し、枠の下に浮体3を設け、水面に浮上している。枠2はグラブ枠1の内側枠2aと外側枠2bの二重構造から成り、四方の内側枠2aには、それぞれ網枠(図示せず)とカーテン5aが設けられ、網枠とカーテン5aが内側枠2aから垂下している。カーテン5aの下端にウエイト6を設けている。同様に四方の外側枠2bにも、それぞれ網枠4bとカーテン5bを設け垂下させ、カーテン5bの下端にウエイト6を設けている。
グラブバケットを使用して汚濁防止枠内を掘削する場合、水中にグラブバケットを上下移動する際、その振動でカーテン5aを揺らし、グラブバケットとカーテン5aの接触を防止するため、カーテン5aと並列して内側網枠4aを設け、カーテン5aが内側に吹かれるのを防止する。
更に、流れによってカーテンが吹かれるのを防止するために、カーテン5bと並列して外側網枠4bを設け、カーテン5bが内側または外側に吹かれるのを防止する。内側網枠4a及び外側網枠4bの丈長は、1m以上で、カーテン5a、5bの丈長の3分の1程度が好ましい。
【0012】
発明における汚濁水の処理装置に使用する凝集剤としては、無機系の凝集剤である汚濁物質の(1)表面電荷を下げ、(2)電気二重層を壊し、(3)イオン性中和を図り凝集させる効果と高分子凝集剤の汚濁物質の(4)架橋・吸着させて凝集させる効果を有した1液性の無機系高分子凝集剤を定量ポンプで滞留域部12に注入するか、或いは薬注設備不要の固形の無機系高分子凝集剤を滞留域部12に置く方法がある。
【0013】
他の汚濁水と凝集剤の混合方法として、フロックを含有する少量のスラリーに凝集剤を添加し模擬フロック化した模擬凝集体と汚濁水を滞留域部12注入し、水流混合せしめ高密度凝集することで、薬注量を削減し、良好なフロックを形成され、処理水を汚濁防止枠内に戻し、汚濁水を処理する。
【0014】
本発明方法によれば、区画された滞留域部12の汚濁水に所定の凝集剤を添加すると高濃度となり、過激な凝集反応がおこる。
凝集剤の使用量は従来の様に過剰でなくても適量でよいことになる。また、事前に高密度凝集を行えば、凝集剤添加後における急速攪拌を低減させる事ができる。
凝集の効果は、少量の汚濁水に高濃度の凝集剤を混合させることが最重要である。
【0015】
発明における汚濁水の処理装置に使用するカーテンは、キャンバス布地・ターポリン地またはネット地等があり、内側カーテン5aをキャンバス布地に外側カーテン5bをネット地或いはその反対に組み合わせて使用することも単独で使用することもできる。
汚濁防止枠を使用する際の水深が浅いかまたは湖沼、入江等の流れが遅い場所ではカーテンの下部を底床に着定させて、汚濁防止枠内の汚濁水を汚濁防止枠外に出さないときのカーテンは、ターポリン地を使用すると水の出入りを遮断でき良い。また、流れが速い場合のカーテンは、ネット地を使用するとカーテンの吹かれを小さく抑えることが出来るので好ましい。
【0016】
発明における汚濁水の処理装置に使用するカーテンの素材としては、ポリエステル繊維シート、ナイロン繊維シート、ポリエステル繊維含芯特殊樹脂シート、ポリプロピレン繊維シート、ポリエチレン網地、ポリエステル網地、ナイロン網地等が使用される。
【0017】
発明における汚濁水の処理装置に使用する網枠としては、鋼製枠に金属性網、合成繊維性網等を使用したものが挙げられる。
【0018】
図4は本発明における他の方法の汚濁水の処理装置を用いる場合を説明する。
グラブ枠1の内側に物品15を設ける。該物品15は開放部・側壁部・底部から成る区画された小規模の滞留域部12で有り、側壁部の上部が水面上に有するように汚濁防止枠1の内側枠2aに固定するか或いは側壁部に浮体(図示せず)を設ける。該物品15の開放部にグラブ枠1の内の水中ポンプ13で取水した汚濁水8を水勢を伴って流入させ、該開放部に凝集剤9を添加し、汚濁水8と凝集剤9が初期混合される状態になっており、逐次物品15外から流出し、常に徐々に汚濁水が入れ替わる状態にある。
本発明は、区画された滞留域部12の汚濁水8に所定の凝集剤9を添加すると高濃度と成り過激な凝集反応が起こり、更に汚濁水8と混合攪拌され凝集が促進される状況下にある。
本発明における汚濁水の処理装置としては、汚濁防止枠の使用場所が波や流れ等によって、フロート部が揺れ、水路を流れる処理水が逆流する恐れがある場合には、フロート部の揺れに影響を受けない処理方法である、汚濁防止枠1の内側に物品15を設ける方法が好適である。
【0019】
本発明における物品15は、側壁部或いは底部に穴等の開放部を設けることも出来る。物品15は、円筒、箱、カゴ、布製容器、金網製容器、鋼製容器、木製容器、合成樹脂製容器、コンクリート製容器等種々の物が用いられる。
【0020】
本発明方法のように、原水中に比較的小規模の滞留域部を設け、該滞留域部に凝集剤を添加し、高濃度の凝集を行うことによって、最適な処理を行う事が出来きるとともに、薬注量の削減を行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・・・・汚濁防止枠
2・・・・・枠
2a・・・・内側枠
2b・・・・外側枠
3・・・・・浮体
4a・・・・内側網枠
4b・・・・外側網枠
5a・・・・カーテン
5b・・・・カーテン
6・・・・・ウエイト
7・・・・・水路
8・・・・・汚濁水
9・・・・・凝集剤
10・・・・処理水
11・・・・越流壁
12・・・・滞留域部
13・・・・水中ポンプ
14・・・・迂流攪拌板
15・・・・物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚濁防止枠内に発生する汚濁水の処理において、汚濁水を取水して区画された小規模の滞留域部を設け、該滞留域部に凝集剤を添加することを特徴とする原水の処理方法。
【請求項2】
予めフロックを含有したものである請求項1記載の凝集剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274161(P2010−274161A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126799(P2009−126799)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000229162)日本ソリッド株式会社 (39)
【Fターム(参考)】