説明

汚濁水浄化用の回転フィルター

【課題】 凝集剤を用いた汚濁水から、水と汚濁物質を簡単に分離させ効率的に回収するフィルターを提供する。
【解決手段】 対向配置させた円形の端面骨材21、22と横材24とからなる円柱状骨子20の表面にメッシュフィルターを設ける。端面骨材の片側中央に、円形の排水開口15、排水開口と対向する側の端面骨材の中央に回転駆動用のチェーンベルトと噛合する歯車11を備える。メッシュフィルターを透過した水は、排水開口15から外部に排出でき、凝集剤を用いて沈殿させた懸濁物質はメッシュフィルターの表面に付着するので適宜手段をもって掻き落とすことができる。水の回収と懸濁物質の除去を同時進行で行うことが出来るため、単位時間当たりの浄化能力が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の濁水を短時間で浄化処理する技術に係り、とくに凝集剤を用いたときの汚濁水の浄化を効率的に行う回転フィールターに関する。
【背景技術】
【0002】
下水、パルプ廃液、家畜糞尿、浚渫工事汚水等の処理では、汚濁成分を除去するため各種の凝集剤を使用することがある。汚濁水に凝集剤を加えると、有機質や金属成分等を速やかに水と分離させることができる。
【0003】
凝集剤による汚濁水の処理方式は、汚濁水に含まれる汚濁成分の種類に応じて各種ある。複数段の処理槽を設けて異なる凝集剤を添加することや、適宜の処理段で攪拌や曝気処理を行うことなどは公知である。
【0004】
凝集剤を用いた汚濁水の浄化は、除去しようとする対象物(有機成分や金属等の無機質成分)を沈降可能な状態に変質させ、水分を除去した状態で汚濁物質(懸濁物質)を回収し処理する。汚濁物質から水分を除去する方法としては、下記特許文献1のように圧搾機を用いるものや脱水機を用いるものなどが知られている。
【特許文献1】特開2004−243185
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
問題は、凝集剤を用いつつ攪拌処理や曝気処理を行って水と分離させ沈降させた汚濁物質を回収するために、圧搾機、脱水機、バキューム装置など、フィルター以外の別途の装置を要する点にある。
【0006】
圧搾機や脱水機を用いれば、ほぼ完全に脱水させた状態で汚濁物質を回収できる。しかし、汚濁水の処理目的によっては、最初から完全な汚泥脱水を必要としない場合もある。このような場合にまで、圧搾機や脱水機を用いるのは装置価格を高めるだけでありコストパフォーマンスの点で問題がある。
【0007】
また、かかる方式では汚濁物質の回収と上澄み水の回収とが表裏一体の処理工程で行われることから、上澄み水だけを単位時間当たりに大量回収することも難しい。
【0008】
一方、沈降した汚濁物質をバキューム装置によって汲み上げる方式では、爾後に脱水処理が可能であるとしても、処理槽に溜まった汚泥を定期的にバキューム処理する必要があることから、大量の汚濁水を連続的に浄化処理することは困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、凝集剤を用いた汚濁水から、水と汚濁物質を簡単に分離させ効率的に回収するフィルターを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る汚濁水浄化用の回転フィルターは、対向配置させた円形の端面骨材と、この端面骨材を連絡する複数本の横材とからなる円柱状骨子の表面にメッシュフィルターを設けたものであって、前記端面骨材の片側中央に、円形の排水開口を備える一方、当該排水開口と対向する側の端面骨材の中央に、回転駆動用のチェーンベルトと噛合する歯車を備える。
【0011】
この浄化フィルターは、端面骨材に配した歯車を用いてチェーンベルトによって回転駆動することができる。
【0012】
メッシュフィルターを透過した水は、端面骨材の片側中央に設けた円形の排水開口を介して外部に排出でき、凝集剤を用いて沈殿させた懸濁物質はメッシュフィルターの表面に付着するので、回転ブラシ等の適宜手段をもって掻き落とすことができる。水の回収と懸濁物質の除去を同時進行で行うことが出来るため、単位時間当たりの浄化能力が高まる。
【0013】
円柱状骨子の表面に配するメッシュフィルターは、水を透過し、懸濁物質を通さない微小な網目または孔をもったメッシュ材を用いる。多孔膜材または金属線を編んだ網のいずれでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る汚濁水浄化用の回転フィルターによれば、水は、ポンプ装置を用いて排水開口から容易に回収可能であり、メッシュフィルターの表面に付着した汚濁物質は回転ブラシ等を利用して掻き落とすことが出来る。
【0015】
浄化フィルターを回転駆動させれば、メッシュフィルターの表面に付着した汚濁物質は、水分含有率が少ない状態で容易に回収できるため、従来のように脱水装置等の複雑な装置構成を必要とせず、コストを抑えつつ汚濁物質の回収が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3は、本発明に係る汚濁水浄化用の回転フィルターの一実施形態を示すものである。
【0017】
この回転フィルター10は、図1、図2に示すように、全体形状が略円筒形であり、一方の端面S1の中央に回転駆動用のチェーンベルトと噛合する歯車11を備え(図1)、他方の端面S2の中央に円形の排水開口15を備える(図2)。また排水開口15には、例えば環状のベアリング16を設けておき、図3に示すように、排水用のダクト17を挿入させた状態でも回転フィルター10を回転できるようにしておく。
【0018】
回転フィルター10を適当箇所、例えば下二点で回転自在に支持したとき、歯車11を回転駆動に伴い、端面S1、S2の中心を結ぶラインLが、回転軸線となる。回転フィルター10を回転可能に支持するには、ローラ等の転がり手段を用いればよい。
【0019】
回転フィルター10の表面には、肉薄のメッシュフィルター18を設ける。メッシュフィルター18は、好ましくはステンレス製のメッシュ材(微小孔を備える網状物)を用いる。耐久性に優れるからである。目の大きさは、水を透過し、懸濁物質を透過させない1mm以下のものを使用する。
【0020】
図4は、メッシュフィルター18の内側にある、円柱状骨子20を例示するものである。この円柱状骨子20は、対向配置させた円形の端面骨材21、22と、この端面骨材21、22を連絡する複数本の横材24とによって構成する。好ましくは、適当間隔で、円形(環状)の補強材25を設ける。
【0021】
先に述べたように、一方の端面S1(例えば端面骨子21側)には歯車11を設け、他方の端面S2(例えば端面骨子22側)には排水開口15を設けるので、端面骨子21、22にはそれぞれ筋交部材27、28を設ける。筋交部材27の交点、つまり円形の端面骨材の中央に歯車11を位置させ、排水開口15は、例えば環状部材Rを用いて、この環状部材Rの外周を筋交部材28の先端によって支持する。なお、前記ベアリング16を用いる場合は、ベアリング16が環状部材Rとしての役割を果たすため、特に必要がなければ、環状部材Rとベアリング16とを併せて用いる必要はない。
【0022】
円形の端面骨材21、22は、歯車11や排水開口15のぶれ(回転時の変動)を防止するためにも、横材24や補強材25に較べて強度を高めておくことが望ましい。幅を大きくしたり、肉厚を大きくする等である。
【0023】
かかる構成によれば、図示しないチェーンベルトによって歯車11を回転させると、回転フィルター10は前記ラインLを回転中心として回転する。
【0024】
この回転フィルター10を、懸濁物質が混じった水中に配置すると、表面のメッシュフィルター18を透過する上澄水を、排水開口15およびダクト17を介して大量に回収することが出来る。回収量は、ダクト17に接続するポンプ装置の吸引能力に応じて適宜設定できる。
【0025】
一方、メッシュフィルター18を透過しない懸濁物質は、メッシュフィルター18の表面に付着して回転する。従って、例えば、これを人力や電動ブラシ等の適当手段によって掻き落とすことが出来る。
【0026】
図5は、回転フィルター10を用いて、大量の汚濁水を効率的に処理するための浄化装置を例示するものである。
【0027】
この浄化装置は、定法に従って、汚濁水に凝集剤を添加する前処理部31と、前処理部31から送られた汚濁水を適当手段、例えば水中ポンプ32を用いて攪拌する攪拌槽33と、攪拌槽33から流入させた汚濁水に含まれる懸濁物質を沈降させつつ後段へ移動させる一次分離槽34を備える。35は、沈降させた懸濁物質を滑らかに後段へ移動させるための溝材である。
【0028】
この溝材35は、例えば図6に示すように、複数の溝36をもっており、溝36の底面を略半円形状に湾曲させておくことが望ましい。複数の溝36に区分して、底面を湾曲させておくと、攪拌槽33から流入する水圧により、ヘドロ状の懸濁物質は溝36に沿って滑らかに後段方向へ移動する。
【0029】
一次分離槽34の後段に最終段としての二次分離槽39を設け、ここに回転フィルター10を配する。
【0030】
一次分離槽34と二次分離槽39との間には、上下方向に駆動可能な仕切壁38を配し、一次分離槽34の底面Bと仕切壁38の下端が作る隙間Pの大きさによって、二次分離槽39へ送り込む水量を調節する。
【0031】
回転フィルター10は、歯車11に掛けたチェーンベルト40を駆動モータ41によって駆動し、一次分離槽34が右側にあるときは反時計回りの方向に回転させる。反対側からみたときは、回転フィルター10の回転方向は時計回りとなってあらわれる。
【0032】
チェーンベルト40による駆動を滑らかにするため、回転フィルター10の下側には適宜数のローラ42を配しておく。振動を抑えるためには、上側にもローラ(図示せず)を配しておくことが望ましい。ローラ42は、径の大きさ、軸方向の長さを問わない。それ自体が回転材であり、回転フィルター10の回転を円滑にできるものであればよい。設置個数は、回転フィルター10の大きさ、回転速度、重量によって適宜増減して構わない。
【0033】
一次分離槽34から二次分離槽39に流入する懸濁物質は、回転フィルター10の側面に付着させることが望ましい。このため、一次分離槽34と二次分離槽39とをつなぐ底板Bの端末は回転フィルター10の側面まで延設し、床板Bの端末に柔軟性のあるシール材44を配する。
【0034】
このシール材44は、例えばゴムであり、回転フィルター10の長手方向の略全域で回転フィルター10の表面に接触させておく。懸濁物質の沈降と滞留を可能な限り抑制するためである。
【0035】
50は、二次分離槽39に流入して回転フィルター10の表面に付着した懸濁物質Dを、回転フィルター10の回転下流側で払拭する回転ブラシである。この回転ブラシ50は、例えば、モータ51と駆動ベルト53を介して回転駆動する。モータによる直接の回転駆動であってもよい。
【0036】
回転ブラシ50は、回転フィルター10の表面に付着した懸濁物質Dを払拭するものであるから、回転フィルター10の長手方向の略全域にわたって懸濁物質Dを掻き落とす長さに設計する。回転ブラシ50の回転方向は問わないが、回転ブラシ50の下方には、払拭させた懸濁物質Dを受け止めるための回収容器59を設ける。回収容器59には、例えばベルトコンベア等の搬送手段を配しておき、払拭した懸濁物質Dを連続的に外部に送り出すことが望ましい。
【0037】
符号Fは、上澄水の貯留部である。この部分には、回転フィルター10のメッシュを通して自由に流動する上澄水が留まる。
【0038】
かかる構成によれば、前処理部31、攪拌槽33、一次分離槽34によって沈降処理した懸濁物質を、二次分離槽39に送り込み、回転フィルター10の表面に付着させた懸濁物質Dを、回転ブラシ50によって連続的に払拭する一方、上澄水を前記の排水開口15およびダクト17を介して大量に吸引回収することが出来る。
【0039】
処理すべき汚濁水によっては、回収する上澄水の量に較べて懸濁物質Dの量が相対的に少ない場合もあるし、その逆の場合もある。いずれにせよ、回転フィルター10を用いれば、上澄水の回収量を増大させるときはダクト17の経路上に設けるポンプ装置の排水能力を高めることで対応可能であり、懸濁物質Dの払拭能力を高める必要があるときは、回転フィルター10や回転ブラシ50の回転速度の増大、回転フィルター10や回転ブラシ50の直径や長手寸法の増大等によって対応することが出来る。
【0040】
回転フィルター10を支持して自由な回転を保証するローラ42は、二次分離槽39の底板Mより若干上方に位置させる。ローラ42が二次分離槽39の底板Mに接触していると、自由な回転が出来ないからである。ローラ42を支持する軸材は図示していないが、二次分離槽39の側壁に一端を固定する等、適宜の構成をとることが出来る。
【0041】
なお、回転フィルター10に使用するメッシュフィルターは、剛性確保の点からはステンレス等の難錆金属の多孔性の薄板を用いることが望ましいが、難錆金属の金網を使用してもよい。また、難錆金属でなくとも表面に防錆コーティングを施す処理によって同じ効果を得る。金属でなくとも、樹脂の多孔質板を用いることも出来る。回転フィルター10の表面には大きな外力が加わらないからである。
【0042】
ダクト17は、ベアリング16を介して水密に排水開口15に配するよう説明したが、回転フィルター10の内側の上澄水はどのような状態で吸引回収してもよい。排水開口15に径の小さなダクト17を差し込んで、排水開口15の開口まわりに隙間が生じても、ダクト17が上澄水を確実に吸引できるならばベアリング16のような付加的手段は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態に係る回転フィルターの歯車側を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る回転フィルターの排水開口側を示す斜視図である。
【図3】図2の排水開口にダクトを配した図である。
【図4】実施形態に係る円柱状骨子を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る回転フィルターを用いた浄化装置を例示する図である。
【図6】図5に示す溝材の具体的構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10 回転フィルター
11 歯車
15 排水開口
16 ベアリング
17 ダクト
18 メッシュフィルター
20 円柱状骨子
21、22 端面骨材
24 横材
27、28 筋交部材
31 前処理部
32 水中ポンプ
33 攪拌槽
34 一次分離槽
35 溝材
36 溝
38 仕切壁
39 二次分離槽
40 チェーンベルト
41 駆動モータ
42 ローラ
44 シール材
50 回転ブラシ
51 モータ
53 駆動ベルト
59 回収容器
B (一次分離槽の)底面
D 懸濁物質
F (上澄水の)貯留部
L (回転軸線となる)ライン
M (二次分離槽の)底板
P 隙間
S1、S2 (回転フィルターの)端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置させた円形の端面骨材と、この端面骨材を連絡する複数本の横材とからなる円柱状骨子の表面にメッシュフィルターを設けたものであって、
端面骨材の一方の中央に円形の排水開口を備える一方、
当該排水開口と対向する側の端面骨材の中央に、回転駆動用のチェーンベルトと噛合する歯車を備えることを特徴とする汚濁水浄化用の回転フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319740(P2007−319740A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150663(P2006−150663)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(503106270)株式会社クリエイター (4)
【Fターム(参考)】