説明

決済システム

【課題】 セキュリティ面と利便性の面で優れた決済システムを提供する。
【解決手段】 個人認証装置26は、顧客Uがショップ20へ入るときこの顧客を個人認証する。ショップ20へ入った顧客Uが携帯電話32で商品のバーコードを写す。顧客認証装置42は、個人認証装置26および携帯電話32からの情報のマッチングをとり、顧客を認証するとともに決済処理へすすむ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、商品の購入に伴う決済を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者である國井博士は1969年において既に「サイバーワールド」という概念で「情報空間上に創設される世界というシステム」を軸に、来るべき情報社会の姿を示唆した(東京大学理学部情報科学研究施設の新設提案書、および「システム科学へのいざない -コンピュータ時代の詩と哲学と科学-」、サイエンス社の数理科学1969年10月号(54−56頁)など。後に「synthetic worlds」という概念も提唱)。
インターネットの活用やウェブ技術の進展により、情報社会の姿は國井が予想した通りの展開をみせている。このサイバーワールドを支えるうえで、現実の現場としての重要性が高まっているのは、いわゆるコンビニエンスストアである。コンビニエンスストアは、24時間365日営業しているところも多く、消費者の利便性の面から金融機関の端末が置かれ、クレジットカード等の各種決済も可能になっている。
一方、サイバーワールドをITの面からささえるひとつのコア技術は、モバイルテクノロジである。現実に、コンビニエンスストアで商品を購入する際、携帯電話やICカードをレジの端末にかざすだけですむ光景が日常的になりつつある。今後も、ウェブ技術と結びついたモバイルテクノロジが、サイバーワールドを牽引するハードウェアテクノロジとして中心的な役割を担ってゆく。
【特許文献1】特開2003−91778号公報
【特許文献2】特開2002−366865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、モバイルテクノロジのひとつの欠点は、本人認証の問題である。昨今、クレジットカードの偽造やスキミングといった問題が世界的にクローズアップされている。決済機能のある携帯電話などの端末にしても同様で、端末の内部情報または端末自体を盗まれたとき、クレジットカード同様、悪用されてしまう。モバイル端末は、利便性が高いだけにいっそう悪用に対する配慮が必要になる。
【0004】
本発明は、こうした現状に鑑みてなされたものであり、その目的は高いセキュリティを実現しつつ、利便性を損なわない決済システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、ゲート装置と、モバイル端末と、決済処理装置とを備える決済システムである。ゲート装置は、個人認証装置をもち、所定の管理領域、例えば店内に顧客が入る際、この顧客を個人認証する。認証結果は決済処理装置へ通知される。
【0006】
モバイル端末は情報入力装置をもち、顧客が商品の購入を希望する際、その商品情報および顧客情報を取得する。取得された商品情報および顧客情報は決済処理装置へ通知される。
【0007】
決済処理装置は顧客認証装置をもち、ゲート装置から受信した個人認証の結果とモバイル端末から受信した顧客情報とを比較して顧客を認証する。顧客が正しく認証された場合、決済装置によって、その顧客の口座から商品代金を引き落とすと共に、ゲート装置の位置から定まる前記管理領域において商品を販売した販売主体に商品代金が振り込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態では、ある人(顧客という)が店に入り、商品を買って店を出る一連の流れの中で決済をするシステムに関する。店の入り口にはゲート装置がおかれ、この装置が店内に入る顧客をひとりひとり個人認証する。店内にいる顧客の情報は、この顧客を認証したゲート装置のIDとともに決済処理装置へ送られる。
【0009】
顧客は携帯電話を持っている。顧客が商品を購入するとき、携帯電話内蔵カメラで商品のバーコードを撮影する。バーコードにふくれる商品情報と携帯電話に実装されているこの顧客のクレジットカード情報(単に「顧客情報」ともいう)は決済処理装置へ送られる。
【0010】
決済処理装置は、ゲート装置から送られた個人認証結果、すなわち店内にいる人の情報と、携帯電話から送られた商品情報および顧客情報を受信する。個人認証の結果と顧客情報とのマッチングがとれれば、決済処理装置は正当な顧客による購入と判断する。決済処理装置はゲート処理装置のIDから店を特定する。その結果、店はレジを置かずとも、決済処理装置は顧客から店への商品代金の支払いを仲介することができる。
【0011】
以上の流れからわかるとおり、本実施の形態は、以下の知見に基づいている。
【0012】
1.携帯電話をはじめとするモバイル端末は、購入行為が「店の中」で正しく行われているか、という観点で設計されていない。モバイルではない通常の銀行端末のような固定端末は、設置場所が決まっているため、いずれの顧客がどの場所で利用したか把握できるが、モバイル端末はこの観点をもたない。そのため、例えばモバイル端末をクレジットカードの替わりに用いて決済をする場合、クレジットカード会社が保証するグローバル同期システム等、グローバルな管理はなされても、ローカルな管理の面で配慮が必要になる。
【0013】
2.一方、店内にある商品は、商品個別の情報をタグやバーコードなどの符号で示している。しかし、こうした情報はあくまでもその商品自体の情報にとどまり、店内で販売されるとき、すなわちローカルな管理においてしか意味をもたない。したがって、ローカルな管理はなされても、これを決済等のグローバルな管理に利用される観点が弱い。
【0014】
本実施の形態は、1.と2.の問題が実は相互補完的に解決できる点に着目してなされたものであり、その意味で、クレジットカード会社が進めるグローバル同期管理システムと、印刷会社等が進める商品のICタグによる表示というローカル管理システムとの融合を図ることができる。
【0015】
図1は、実施の形態にかかる決済システム100の全体構成を示す。決済システム100は、商品を販売するショップ20と、クレジットカード会社の中に設けられた決済処理装置である管理装置38と含み、決済に必要な口座がある銀行46を補足的に描いている。銀行46には、顧客の口座52とショップ20の口座54が存在する。情報の授受には通信装置が用いられるが、図1ではこれを省略している。
【0016】
ショップ20は、その入口にゲート装置24を持つ。ゲート装置24は、指紋、虹彩などの生体情報をもとに顧客を個人認証する個人認証装置26と、顧客がショップ20の中で購入が完了した商品以外の商品(以下「未決済商品」という)の持ち出しを監視する監視装置28を備える。
【0017】
管理装置38は、個人認証装置26から受信する個人認証の結果と、顧客がショップ20内で購入行為をしたときに送られてくる情報をもとに、購入行動をとっている顧客を認証する顧客認証装置42と、顧客認証装置42で正しく認証された顧客の購入行為に対し、銀行46との間で決済を実行する決済装置44を備える。
【0018】
以上の構成における顧客の購買処理を説明する。まず、顧客Uがショップ20外からゲート装置24を経てショップ20内へ入る。このとき、個人認証装置26は顧客Uの生体情報などをもとに顧客Uの認証をする。認証結果である顧客ID(「UID」(User ID)と表記)と、個人認証装置26自身がおかれているショップ20のID(「SID」(Shop ID)と表記)を顧客認証装置42へ送信する。
【0019】
ショップ20内へ入った顧客Uは、いろいろな商品(#1、#2などと表記)を見て回る。その結果、顧客Uは商品#3の購入を決める。商品#3には予めその商品のIDを含む二次元バーコードが添付されている。顧客Uはその二次元バーコードを携帯電話32のカメラで撮影する。こうして特定された商品ID(「MID」(Merchandise ID)と表記)および顧客のクレジットカードの情報(「CID」(Credit ID)と表記)は、携帯電話32から顧客認証装置42へ送信される。CIDから判明するクレジットカードの所持者と、個人認証装置26によって取得されたUIDとが一致すれば、正当な顧客Uが自身の携帯電話32をもってショップ20へ入り、商品を購入しようとしていることがわかる。したがって、顧客認証装置42は、UIDとCIDのマッチングをとり、正しくマッチングがとれた場合、この顧客Uが認証できたものとみなす。
【0020】
顧客認証装置42で認証が正しくとられたとき、顧客認証装置42からSIDが決済装置44へ送られる。またこれと前後して、CIDおよびMIDが決済装置44へ送られる。その結果、決済装置44はSID、CID、MIDを取得し、まずMIDから商品と価格を取得する。続いて、CIDからクレジットカード決済の準備ができる。さらにSIDから、決済によって商品代金を振り込むべきショップ20を特定する。その結果、決済装置44と銀行46の相互作用により、顧客の口座52から必要な商品代金が引き落とされ、これがショップの口座54へ振り込まれる。もちろんその際、クレジットカード会社の手数料を差し引いた額がショップの口座54へ入金されることになる。
【0021】
決済装置44はさらに、こうして決済が終わった商品に関する情報(「PI」(Information on Paid merchandise)と表記)を監視装置28へ送信する。監視装置28は、ショップ20内において決済が済んだ商品のリストを内部に構築する。そのため、顧客Uが商品を持ってショップ20を出るとき、ゲート装置24を通過する際に監視装置28が未決済商品の有無をチェックすることができる。仮に、顧客Uが未決済商品を持ち出そうとすれば、監視装置28はその旨を警告したり、場合によっては物理的にゲート装置24のゲート(図示しない)を閉じるなどの措置をとる。
【0022】
以上、本実施の形態によれば、ゲート装置24を導入して物理的または論理的に管理すべき領域や空間を画定したため、モバイル端末を利用する者の物理的または論理的な位置を把握することができる。その結果、モバイル端末固有の欠点、たとえばそのモバイル端末が盗難等により不正な者へ渡った場合においても、そのモバイル端末の悪用を防止することができる。また、モバイル端末の利用と個人認証を組み合わせることにより、ショップ20内にはわざわざ決済のためのレジを置く必要すらなくなる。そのため顧客はレジに並ぶ手間も省けるし、ショップ20としてもレジのコストやスペース、または店員の人件費の面で有利である。
【0023】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。以下、実施の形態の変形例を述べる。
【0024】
(1)顧客認証装置42にグローバル同期の機能を持たせてもよい。グローバル同期とは、世界のいずれの個所でクレジットカードが利用されても、利用行為の整合性をリアルタイムにチェックする機能をいう。例えば、同じ顧客情報を持つ者が同時に日本と米国で同じクレジットカードによる購入行為をなしたとすれば、これは一般に物理的にありえない行為であるため、なんらかの不正使用が推定される。たとえそれら二つの購入行為に時間的な差があったとしても顧客が物理的にその距離を移動不可能であればやはり同様の推定をすることができる。したがって、本実施の形態においても認証装置42にそうしたグローバル同期の機能を持たせることは、購入場所を認識しないモバイル端末との組合せにおいて有用である。
【0025】
(2)本実施の形態では、ショップ20の中にレジを持たせないこととした。しかしながら、既存のインフラを利用する場合、レジがある形であってもよい。その場合、顧客Uは携帯電話32などをレジにかざすことにより商品の購入をすることができる。ショップ20の情報はレジに与えられているため、その場合、個人認証装置26から顧客認証装置42へSIDを提供する必要はない。
【0026】
(3)ゲート装置24によって物理的または論理的に管理すべき領域をショップ20としたが、管理領域はどのような領域であってもよい。店だけでなく例えば駅、劇場、図書館、プレイグラウンド、空港内のセキュリティ領域などであってもよい。
【0027】
(4)本実施の形態では、ショップ20内をひとつの管理領域とした。しかしながら、単一の領域を複数のゲート装置24によって複数の管理領域へ分割して管理してもよい。例えば、ある程度広い百貨店などの場合、認証装置42で認証すべき顧客Uの数が多くなりすぎないよう、複数の領域へ分割して管理することが望ましい。
【0028】
(5)ショップ20内における携帯電話32の盗難による不正使用という問題も、可能性としてはゼロではない。そうした事態に対処するには、購入の場面においても個人認証機能を導入すればよい。簡単な例としては、携帯電話32で購入処理をする際、顧客にパスワードの入力等を求める端末側認証装置(図示せず)を設ければよい。この装置は、端末内で顧客を認証してもよいし、パスワード等の認証用情報を顧客認証装置42等へ送り、そうした外部の機関で認証を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る決済システムの構成図である。
【符号の説明】
【0030】
20 ショップ、 24 ゲート装置、 26 個人認証装置、 28 監視装置、 32 携帯電話、 38 管理装置、42 認証装置、 44 決済装置、 52 顧客の口座、 54 ショップの口座、 100 決済システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート装置と、モバイル端末と、決済処理装置とを備える決済システムであって、
ゲート装置は、
所定の管理領域に顧客が入る際、この顧客を個人認証する個人認証装置と、
個人認証装置による認証結果を決済処理装置へ通知する通信装置と、
を備え、モバイル端末は、
顧客が商品の購入を希望する際、その商品情報および顧客情報を取得する情報入力装置と、
取得された商品情報および顧客情報を決済処理装置へ通知する通信装置と、
を備え、決済処理装置は、
ゲート装置およびモバイル端末からの通知を受信をする通信装置と、
ゲート装置から受信した個人認証の結果とモバイル端末から受信した顧客情報とを比較して顧客を認証する顧客認証装置と、
顧客認証装置によって顧客が正しく認証された場合、その顧客の口座から商品代金を引き落とすと共に、ゲート装置の位置から定まる前記管理領域において商品を販売した販売主体に商品代金を振り込む決済装置と、
を備えることを特徴とする決済システム。

【図1】
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