説明

沈下量測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法、及び地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法

【課題】簡単に施工することができ、しかも高価な圧力センサーは、埋め殺しをせずに何度も再利用することができる地盤の沈下量を把握する新規な沈下量測定装置を提供する。
【解決手段】地盤の沈下量を把握する沈下量測定装置20であって、地盤上面に配置される、内部が水で満たされている筐体21と、水で満たされ、筐体に繋がっており、その上端部24aが地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、外気に開放されている通水管24と、筐体内に配される空気袋22と、空気袋に下端部が連通し、その上端部が地盤外まで延びる連通管23とを備えており、地盤が沈下したとき、筐体に繋がる通水管の先端部の高さが高くなるのに伴って筐体21内の水頭圧が増大し、これに伴って前記空気袋が圧縮され、そのときの空気袋の圧力変化を前記空気袋に連通する連通管の上端部に取り付けた圧力センサー25で測定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈下量測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法、及び地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法に関する。詳細には簡単に施工することができ、しかも高価な圧力センサーは、埋め殺しをせずに何度も再利用することができる新規な沈下量測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法、及び地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤上に家屋、上下水道、擁壁あるいは舗装道路などの構造物や盛土を設置する場合、これら構造物や盛土を地盤の沈下が完全に終了する前に設置すると、軟弱地盤はその支持力がきわめて弱いことから、これら構造物や盛土の荷重を支えきれずに不等沈下を生じ、この結果、軟弱地盤上の構造物や盛土が損壊してしまうことになる。これは単なる構造物や盛土の損壊に止まらず、人命をも巻き込んだ大災害にも発展する恐れがある。
【0003】
このため、軟弱地盤上への構造物や盛土の設置は、地盤の沈下が完全に終了するのを待って行われていた。この際、軟弱地盤の沈下終了は、沈下計の挙動を測定して判断していた。また確実を期すため、ボーリングによって資料を採取し、強度試験などの分析を行って、この分析結果も合わせて終了判断を行うこともあった。
【0004】
この場合に使用する沈下計としては、例えば対象とする地盤内に沈下板を埋設しておき、沈下板から目盛付きの支柱を立ち上げ、この目盛の移動を沈下しない点に設置した測量機で人が測量する方法などが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
ところが、沈下計の挙動を人が測量機で測定して軟弱地盤の沈下終了を判断する場合、その測定には人為的な誤差が含まれてしまい正確な測定を行うことは難しく、適正な沈下終了の判断を行うことができず、しかも軟弱地盤といっても種類は様々であり、その深度も地層も異なっていることから、例えば沈下量が小さくなったなどの沈下計の挙動だけから、終了判断するのは余りに無謀であり、危険でもあった。
【0006】
ボーリングによる資料の採取、分析は、軟弱地盤の沈下終了を判断する上で大変に有効な手段ではある。しかしながら、ボーリングによる資料の採取、分析には、多額の費用を要するので、ボーリング調査できる箇所も限られていた。
【0007】
このような事情から、軟弱地盤上に構造物や盛土を設置する場合には、安全を期して予め支持杭などを地盤中に打設し、その上に構造物や盛土を設置するという方法が採られていた。
【0008】
このような技術的課題を鑑み、本発明者は、地盤の沈下量を高い精度で把握することで、正確な軟弱地盤の沈下終了の判断を下せるようにした軟弱地盤の沈下量把握システムを提供している(例えば特許文献2参照)。
【0009】
この軟弱地盤の沈下量を把握する手段は、図7に示すように、軟弱地盤A上に設置する測定用貯水管50と、この測定用貯水管50に連結パイプ51を介して水を供給し、前記測定用貯水管50と同一の所定水位に保持されている地盤変動のない場所に設置する水供給用貯水管52とからなるものである。
【0010】
この軟弱地盤の沈下量を把握する手段にあっては、軟弱地盤Aの沈下に伴って前記測定用貯水管50が沈下すると、水供給用貯水管52から水位を同じとするように、水が連結パイプ51を介して供給されるようになっており、この結果、測定用貯水管50の水位(水圧)が上昇するので、これを前記測定用貯水管50内に設置した水位測定端子または水圧測定端子T(圧力センサー)で測定することで、軟弱地盤Cの沈下量が測定できるようになっているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−63584号公報
【特許文献2】特開平09−125355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記システムにおいて、軟弱地盤の沈下量把握手段として使用する圧力センサーは大変に高価であり、より正確な沈下量を把握するためには水位測定端子または水圧測定端子T(圧力センサー)を設置した測定用貯水管を軟弱地盤の改良領域にいくつも設置する必要があり、しかもその端子T(圧力センサー)は施工後、埋め殺しとされるため、大変に多くの手間と費用とを要していた。また、従来のシステムでは、施工後、圧力センサーを地盤内に埋め殺しとするため、端子T(圧力センサー)のキャリブレーションは設置前に行うだけであり、しかも該端子T(圧力センサー)が故障した場合、対処不能であった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、簡単に施工することができ、しかも高価な圧力センサーは、埋め殺しをせずに何度も再利用することができる新規な沈下量測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法、及び地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、地盤の沈下量を把握する沈下量測定装置であって、
地盤上面に配置される、内部が水で満たされている筐体と、
水で満たされ、前記筐体に繋がっており、その先端部が地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、外気に開放されている通水管と、
前記筐体内に配される空気袋と、
前記空気袋に下端部が連通し、その上端部が地盤外まで延びる連通管と、
を備えており、前記地盤が沈下したとき、前記筐体に繋がる通水管の先端部の高さが高くなるのに伴って前記筐体内の水頭圧が増大し、これに伴って前記空気袋が圧縮され、そのときの空気袋の圧力変化を前記空気袋に連通する連通管の上端部に取り付けた圧力センサーで測定するようにしたことを特徴とする沈下量測定装置をその要旨とした。
【0015】
請求項2記載の発明にあっては、地盤の沈下量を把握する沈下量測定装置であって、
地盤上面に間隔を置いて配置される、内部が水で満たされている複数の筐体と、
水で満たされ、前記各筐体に繋がっており、その先端部が地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、外気に開放されている通水管と、
前記各筐体内の長手方向一方端側に配される空気袋と、
前記各空気袋に一端部が連通し、他端部が地盤外まで延びる連通管と、
を備えており、前記各連通管の上端部が1つの圧力センサーにまとめて取り付けられており、前記地盤が沈下したとき、前記筐体に繋がる通水管の先端部の高さが高くなるのに伴って前記筐体内の水頭圧が増大し、これに伴って前記空気袋が圧縮され、そのときの空気袋の圧力変化を前記空気袋に連通する連通管の上端部に取り付けた1つの圧力センサーで測定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の沈下量測定装置をその要旨とした。
【0016】
請求項3に記載の発明にあっては、改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために該地盤上面に配置される沈下量測定手段として用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置をその要旨とした。
【0017】
請求項4に記載の発明にあっては、盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置をその要旨とした。
【0018】
請求項5に記載の発明にあっては、地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置をその要旨とした。
【0019】
請求項6に記載の発明にあっては、改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置を用いたことを特徴とする軟弱地盤の改良工法をその要旨とした。
【0020】
請求項7に記載の発明にあっては、盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置を用いたことを特徴とする盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法をその要旨とした。
【0021】
請求項8に記載の発明にあっては、地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置を用いたことを特徴とする地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0022】
本発明の沈下量測定装置にあっては、地盤が沈下したとき、その沈下した分だけ一定高さ位置に固定された通水管の先端部の高さが高くなり、これに対応して前記通水管が繋がる水で満たされた筐体内の水頭圧も増大し、これにより前記筐体内の空気袋にはその分だけ大きな水圧が加わり該空気袋が圧縮される。そして、この空気袋の圧力変化は該空気袋に連通する連通管の地盤外まで延びる上端部に取り付けられる圧力センサーで測定されるようになっているのである。
【0023】
このため、本発明の沈下量測定装置にあっては、地盤上面に単に筐体を配置するだけで良く、その施工は極めて簡単である。また、この沈下量測定装置にあっては、高価な圧力センサーは、地盤内に配置されるのではなく、空気袋に下端部が連通する連通管の地盤外まで延びる閉鎖された上端部に取り付けられるため、従来の軟弱地盤の沈下量把握システムのように、埋め殺しをせずに何度も再利用することができる。また、この沈下量測定装置にあっては、圧力センサーが地盤外まで延びる連通管の上端部に取り付けられるため、該圧力センサーのキャリブレーションを常時行うことができ、より正確な沈下量の測定ができるようになっている。また、圧力センサーを埋め殺しにしないため、該センサーが故障した場合、いつでも簡単に対処が可能である。
【0024】
また本発明の沈下量測定装置にあっては、高価な圧力センサーは埋め殺しされず、地盤外まで延びる連通管の閉鎖された上端部に取り付けられるようになっており、何度も再利用することができることから、地盤上面にはいくつもの圧力センサーを設置することができ、より精度の高い沈下量の測定が可能となる。
【0025】
本発明の沈下量測定装置は、上記作用効果を奏するものであるから、軟弱地盤の改良工法における上積荷重の把握手段として、盛土構造物の地盤変動に伴う損傷の未然察知手段として、或いは地下埋設物の地盤変動に伴う損傷の未然察知手段として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の沈下量測定装置を軟弱地盤の改良工法における沈下量の把握手段として適用した例であって、該沈下量測定装置の筐体を地盤上面に配置した状態を示す模式図。
【図2】同じく平面図。
【図3】本発明の沈下量測定装置を示す拡大模式図。
【図4】軟弱地盤の改良工法の施工によって地盤が圧密沈下したときの沈下量測定装置を示す模式図。
【図5】本発明の沈下量測定装置を軟弱地盤の改良工法における沈下量の把握手段として適用した別例を示す平面図。
【図6】本発明の沈下量測定装置を盛土構造物が造成される地盤の沈下量の把握手段として適用した別例を示す平面図。
【図7】従来の沈下量測定装置を軟弱地盤の改良工法を適用した地盤を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の沈下量測定装置、、それを用いた軟弱地盤の改良工法、盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法、及び地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法をさらに詳しく説明する。本発明の沈下量測定装置(以下、単に装置という)は、硬質地盤へと改良される軟弱地盤、電話線や上水道などのパイプやケーブルといった地下埋設物が埋設される地盤、高速道路、堤防道路、鉄道、滑走路などの盛土構造物が造成される地盤、法面背後の地盤、或いはトンネル周囲の地盤内に配置されて、これら地盤の沈下量を測定する装置である。以下は、本発明の装置を軟弱地盤の改良工法に用いた例を示す図1〜図4に従って説明する。
【0028】
図1〜図4に示すように、本発明の装置20は、地盤上面に配置される、水で満たされる筐体21と、この筐体21内の配される空気袋22と、この空気袋22に連通する連通管23と、前記筐体21に繋がっており、その先端部が地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、外気に開放されている通水管通水管24と、前記連通管23の上端部に取り付けられる圧力センサー25とを備えている。
【0029】
筐体21は、その内部が水で満たされる長尺状の箱体であり、その材質は特に限定されないが、この筐体21は地盤上面に配置され、その地盤上面には盛土が施される場合もあり、該筐体21内は水で満たされることから、防錆性に富み、かつ盛土荷重にも耐え得る程度の保形性を有するものが望ましい。具体的には、鉄やステンレス、硬質プラスチック、それらの複合物などが好ましい。また筐体21は、長方体や円筒などの形態のものが好ましい。
【0030】
この筐体21内の長手方向一方端側には空気袋22が配される。空気袋22は、天然ゴムや合成ゴム、或いはこれら天然ゴムや合成ゴムの一方面側に織物や編物をラミネートして強度を高めたものなどを材料とし、これを袋状に成形したものを用いることができる。また空気袋22は筐体21内で、運搬時や取り扱い時、後述する傾動時に筐体21に加わる外力によってその位置(筐体21内の長手方向一方端側)が容易にずれることがないように確実に固定しておく必要がある。図示の例では、筐体21内に設けた固定アーム21aによって筐体21内の長手方向一方端側に取り外し可能に固定されるようになっている。
【0031】
空気袋22には、空気が注入されて所定の大きさに膨出された状態におかれるようになっており、固定アーム21aは空気袋22の膨出形態に対応する大きさ及び形態に設けられている。
【0032】
前記空気袋22には連通管23の下端部23bが接続されており、空気袋22内部と連通管23内部とは連通状態に設けられている。連通管23としては、空気袋22内部と連通状態を保持し得る程度の気密性を有しており、かつ外圧によっても管が折れ曲がったり、へこんだり、押し潰されたりしないものが望ましく、例えばコンプレッサーやエアガンなどに接続されるエアホースなどが十分な気密性、形状保持性を有していることから好ましい。また、連通管23は、その上端部23aが地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、地盤が沈下した場合にも対応できる十分な長さを有しており、空気袋22の内圧がそのまま連通管23の上端部の圧力として捉えることができるようになっている。
【0033】
また、前記筐体21の長手方向他方端側には通水管24が接続されている。この通水管24内は水で満たされており、前記筐体21に繋がっている。通水管24の先端部24aは地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、外気に開放されている。このため、この通水管24に繋がる筐体21内には、先端部21aの高さ位置に対応する水頭圧が加わるようになっている。また、図示の形態では、通水管24内に前記連通管23が挿通され、該通水管24が連通管23を内包し保護する役割をなすようになっている。連通管23は通水管24の地盤外まで延びる先端部21a近傍で枝分かれしている。通水管24は、外圧によって連通管23が押し潰されるのを防止するように内包し、これを保護し得る強度を持ち、かつ筐体21を地盤外で引張し得る十分な引張強度を持つものが望ましい。具体的には布入りのゴムクロス製の蛇腹管などを挙げることができる。
【0034】
上記連通管23は、その上端部23aが地盤外まで延びる長さを有しており、空気袋22の内圧がそのまま連通管23の上端部23aの圧力として捉えることができるようになっており、その上端部23aには開口(図示しない)が設けられている。この連通管23上端部23aの開口(図示しない)を覆うように圧力センサー25が取り付けられている。圧力センサー25の受圧部25aは、前記開口(図示しない)の位置に配されて、該受圧部25aが連通管23上端部内に露出するようになっており、空気袋22の内圧の変化を連通管23を通して上端部23aにおける圧力の変化として受圧部25aが捉えようになっている。
【0035】
図1〜図4に示すように、上記構成を有する本発明の装置20は、図1に示すように筐体21が地盤Aの表面に横たわるように配置される。筐体21内の空気袋22と連通する連通管23及びこれを内包する通水管24の上端部24aは地盤A外まで延びて配され、連通管23の上端部23aには圧力センサー25が取り付けられる。こうして、本発明の装置20の設置が完了し、地盤が沈下したとき、その沈下した分だけ一定高さ位置に固定された通水管24の先端部24aの高さ(筐体21からの高さ(h))、これに対応して前記通水管24が繋がる水で満たされた筐体21内の水頭圧も増大し、これにより前記筐体21内の空気袋22にはその分だけ大きな水圧が加わり該空気袋22が圧縮される。
【0036】
空気袋22の圧力変化は該空気袋22に連通する連通管23を介してその上端部23a内に露出する圧力センサー25の受圧部25aによって連通管23の上端部23a内における圧力の変化として捉えられ、圧力センサー25において電気信号に変換し、管理用コンピュータ26に送信され、この結果、地盤の沈下量が空気袋22内の圧力変化、連通管23の上端部23a内における圧力の変化として、リアルタイムでコンピュータ管理されるのである。
【0037】
次に、図5に示す形態について説明する。沈下量の測定は、地盤A表面に複数の筐体21を間隔を置いて配置するなど、測定点を多くすればするほど、より精度の高い測定結果を得ることができ、信頼性はより高まる。しかし、筐体21毎に圧力センサー25を取り付け場合、測定点の数だけの圧力センサーが必要となり、その分コストも高くなる。
【0038】
図5に示す形態は、地盤A表面に複数の筐体21を間隔を置いて配置し、これら複数の筐体21内に配した各空気袋22内の沈下に伴う圧力変化をこれに連通する各連通管23の上端側23aを1つの圧力センサー25にまとめて取り付けることで、1つの圧力センサー25で複数の各空気袋22内の圧力の変化を測定できるようにしたものである。図5に示すように、複数の空気袋22からの各連通管23の各上端側23aを1つの圧力センサー25にまとめて取り付けた場合、使用する圧力センサーの数は大幅に削減できるというメリットがある。尚、このような態様に使用する圧力センサーとしては、例えば複数の空気袋22からの各連通管23の各上端側23a内の圧力の変化を各空気袋22毎に順に繰り返して測定し、データ化できるようにしたものなどを挙げることができる。
【0039】
次に、本発明の装置を軟弱地盤の改良工法に適用した例について説明する。図1に示す改良工法は、改良する軟弱地盤(改良地盤)A中に真空圧を負荷することで、前記改良地盤A中に改良地盤周辺部Bと隔離された減圧領域を造り出すものであり、複数の鉛直ドレーン材31を上端部を残して地盤A中に所定の間隔をおいて打設することにより地盤A中に多数の鉛直排水壁を造成し、前記鉛直ドレーン材31の上端部と接触するように真空タンク33を介して真空ポンプ34に連結した水平ドレーン材32を配置し、次いで、地盤A上を前記鉛直ドレーン材31の上端部及び水平ドレーン材32とともに気密シート35で覆い、この後、前記真空ポンプ34を作動させる工程からなる。
【0040】
真空ポンプ34からの真空圧は真空タンク33を経てこれに接続する水平ドレーン材32へと伝達され、改良地盤Aの表層は負圧状態となる。さらに改良地盤Aの表層が負圧状態となることで、改良地盤A中の間隙水圧との間には差が生じ、この圧力差によって鉛直ドレーン材31によって軟弱地盤A中に造成された鉛直排水壁を通して地盤A中の水と空気とが地盤A表層へと吸い出され、地盤A外へ排出される。この結果、改良地盤A中も負圧状態となり、真空度が高くなる。
【0041】
こうして略真空となった改良地盤Aの空気及び間隙水の排出、これに伴う改良地盤Aの圧密による沈下量を測定することで、地盤Aの沈下終了を判断する材料を得ることができるのである。尚、地盤Aの沈下終了を判断する材料には、地盤の沈下量の他に地盤に対する上積荷重の大小、地盤から排出される間隙水の排水量があり、これらを総合して地盤の沈下終了を判断することになる。
【0042】
また本発明の装置は、盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法や地下埋設物が埋設された地盤の動態把握方法に適用することができる。近年、地下水の過剰揚水によって地下水位が低下し、地盤の沈下を引き起こす例が数多く報告されている。沈下を引き起こした地盤中に例えば電話線や上水道などのパイプやケーブルといった地下埋設物が埋設されていたならば、或いはその地盤上に高速道路、堤防道路、鉄道、滑走路などの盛土構造物が造成されていたならば、これら地下埋設物や盛土構造物が大きな損傷を受け、その機能が失われた場合、国民生活に多大な被害を与えることになる。
【0043】
このため、これら盛土構造物を造成する地盤や地下埋設物が埋設される地盤は、造成前又は埋設前に十分に地盤の調査がなされるが、地下水の過剰揚水による地下水位の低下に伴う地盤の沈下など、事後的に生じる地盤の沈下は予測困難である。
【0044】
そこで、そのような地盤内には圧力センサーを設置して該地盤の沈下量を測定することで、盛土構造物や地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知できる監視システムが提案されている。ところが、圧力センサーの設置場所を高速道路などの盛土構造物を造成する地盤内や電話線や上水道などの地下埋設物が埋設される地盤内であって、地盤の変動、沈下によって被害が予想される場所に限ったとしても、そのエリヤは広く、そのようなシステムを導入するには、圧力センサーの設置作業など、莫大な費用が予測される。
【0045】
本発明の装置を採用した場合、低コストでその監視システムを実現することができる。図6は、盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷するのを未然に察知する手段として本発明の装置を適用した例を示すものである。図6に示す例では、道路41下の地盤A上面に複数の筐体21を間隔を置いて配置している。また図5に示す例と同じく、複数の筐体21内に配される空気袋22と繋がる連通管23の各上端側23aを1つの圧力センサー25にまとめて取り付けることで、コストの低減化を図ると共により精度の高い測定結果を得ることができるようにしている。
【0046】
図4に示す例と同様に、地下水の低下などを原因として地盤Aに沈下が生じた場合、筐体21に繋がる通水管24の上端部24aの高さの変動として現れる。これが筐体21内の水頭圧を増大させ、該筐体21内の空気袋22を圧縮し、その圧力変化は、空気袋22に繋がる連通管23の上端部23aの圧力の変化として現れる。このため、これを連通管23の上端部23aに取り付けた圧力センター25で測定することで、地盤Aの沈下量を把握でき、道路51(盛土構造物)が地盤Aの変動に伴って損傷するのを未然に察知できるようにしているのである。
【0047】
図6に示す例では、連通管23の上端側23aに設けた圧力センサー25によって測定される圧力変化が電気信号に変換され、無線で管理用コンピュータ26に送信される。この結果、地盤Aの変動がリアルタイムでコンピュータ管理できるようになっている。
【0048】
また本発明の装置は、地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷するのを未然に察知する手段として適用することもできる。この場合、本発明の装置は、地盤内の地下埋設物近傍に配置する。地下水の低下を原因として地盤沈下が生じた場合、図4に示す例と同様に、筐体21に繋がる通水管24の上端部24aの高さの変動として現れる。これが筐体21内の水頭圧を増大させ、該筐体21内の空気袋22を圧縮し、その圧力変化は、空気袋22に繋がる連通管23の上端部23aの圧力の変化として現れる。このため、これを連通管23の上端部23aに取り付けた圧力センター25で測定することで、地盤Aの沈下量を把握でき、地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷するのを未然に察知できるようになるのである。
【0049】
地下埋設物を埋設した地盤の変動を把握する場合も、図4に示す例のように、連通管の上端側に設けた圧力センサーによって測定される圧力変化を電気信号に変換し、無線で管理用コンピュータに送信して、地盤の変動をリアルタイムでコンピュータ管理することができる。
【0050】
尚、本発明は、図面に示した例に限定されず、例えば連通管23及び通水管24を筐体21からそれぞれ別々に地盤外に延びるようにしても良く、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
21 ・・・筐体
22 ・・・空気袋
23 ・・・連通管
23a ・・・上端部
24 ・・・通水管
24a ・・・上端部
25 ・・・圧力センサー
41 ・・・盛土構造物
A ・・・地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の沈下量を把握する沈下量測定装置であって、
地盤上面に配置される、内部が水で満たされている筐体と、
水で満たされ、前記筐体に繋がっており、その先端部が地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、外気に開放されている通水管と、
前記筐体内に配される空気袋と、
前記空気袋に下端部が連通し、その上端部が地盤外まで延びる連通管と、
を備えており、前記地盤が沈下したとき、前記筐体に繋がる通水管の先端部の高さが高くなるのに伴って前記筐体内の水頭圧が増大し、これに伴って前記空気袋が圧縮され、そのときの空気袋の圧力変化を前記空気袋に連通する連通管の上端部に取り付けた圧力センサーで測定するようにしたことを特徴とする沈下量測定装置。
【請求項2】
地盤の沈下量を把握する沈下量測定装置であって、
地盤上面に間隔を置いて配置される、内部が水で満たされている複数の筐体と、
水で満たされ、前記各筐体に繋がっており、その先端部が地盤外まで延びて一定高さ位置に固定され、外気に開放されている通水管と、
前記各筐体内の長手方向一方端側に配される空気袋と、
前記各空気袋に一端部が連通し、他端部が地盤外まで延びる連通管と、
を備えており、前記各連通管の上端部が1つの圧力センサーにまとめて取り付けられており、前記地盤が沈下したとき、前記筐体に繋がる通水管の先端部の高さが高くなるのに伴って前記筐体内の水頭圧が増大し、これに伴って前記空気袋が圧縮され、そのときの空気袋の圧力変化を前記空気袋に連通する連通管の上端部に取り付けた1つの圧力センサーで測定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の沈下量測定装置。
【請求項3】
改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために該地盤上面に配置される沈下量測定手段として用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置。
【請求項4】
盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置。
【請求項5】
地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置。
【請求項6】
改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置を用いたことを特徴とする軟弱地盤の改良工法。
【請求項7】
盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置を用いたことを特徴とする盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法。
【請求項8】
地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤上面に配置され、前記地盤の変動に伴う地盤の沈下量の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の沈下量測定装置を用いたことを特徴とする地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−219487(P2012−219487A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85282(P2011−85282)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(595107508)丸山工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】