説明

沈降ケイ酸の安定な水性分散液

【課題】カチオン的に安定化された沈降ケイ酸分散液の製造方法において、従来技術から公知の方法の欠点の少なくとも幾つかを有さない製造方法、従来技術の二酸化ケイ素分散液の欠点の少なくとも幾つかを有さないか又は低い程度でしか有さないカチオン的に安定化された沈降ケイ酸分散液を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の沈降ケイ酸の予備分散液を製造し、それを粉砕装置に供給して粉砕することを含み、その間に、沈降ケイ酸粒子の少なくとも一部の表面及び/又は粉砕の間に新たに生ずる沈降ケイ酸粒子の表面を、少なくとも1種のアミノシランを用いて、該アミノシランがSi−O−Si結合を介して前記沈降ケイ酸粒子に共有結合されるように被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈降ケイ酸の安定化された分散液、その製造方法並びに前記分散液を、特にインクジェット印刷用の光沢写真紙用の紙用塗料の製造のために用いる使用に関する。
【背景技術】
【0002】
沈降二酸化ケイ素を基礎とする分散液は、既に先行技術において記載されている。先行技術文献の中心的主題は、分散液の安定化である。
【0003】
ここで、例えばJP−OS−09142827号は、安定なケイ酸分散液であって、その貯蔵安定性が、ケイ酸粒子の平均粒度が100nm未満であることによって達成される分散液を記載している。これらの分散液は、ケイ酸粒子をそのような小さい粒度にまで粉砕するためには非常に費用がかかり、かつエネルギー集中的であるという欠点を有する。JP0914287号に記載される方法は、従って、経済的観点から、技術的関連性を獲得しない。
【0004】
EP0368722号、EP0329509号、EP0886628号及びEP0435936号においては、安定化剤によって安定化されたケイ酸の分散液が記載されている。前記安定化剤は、とりわけ粒子の沈殿を回避するために添加される。前記安定化剤は、例えばバイオガム(Biogummi)又はアルミニウム化合物とアニオン系分散剤とからなる系又はラテックス又は二酸化ケイ素と化学的かつ物理的に相容性の微粉砕された固体である。かかる安定化剤の使用は、コストの理由からも、分散液の後の使用に関しても欠点がある。特に、かかる分散液は、インクジェット印刷用の高光沢写真紙のためのトップコートの製造のためには不適である。
【0005】
二酸化ケイ素分散液の安定化のための別のアプローチは、DE102006049526.8号で紹介されている。そこでは、沈降ケイ酸の分散液であって、アルカリ性のpH値と大きく負のゼータ電位に基づき貯蔵安定な分散液が記載されている。従って、ここでもアニオン的に安定化された分散液である。しかしながら、これらの分散液は、インクジェット印刷用の高光沢写真紙のためのトップコートの製造のためには不適である。それというのも、通常のアニオン系の染料は、とりわけ耐水及び高い明るさを達成するためには、カチオン系の多孔質の印刷素材上に固定せねばならないからである。
【0006】
カチオン的に安定化された分散液は、同様に既に知られている。ここで、DE−A−10033054号は、カチオン系の有機ポリマーを用いてシリカ分散液を安定化することを記載している。US−A−6777039号は、ポリビニルアルコールの水溶液と、有機溶剤と、界面活性剤とを、シリカ及びカチオン系ポリマーの分散液に添加することによる、インクジェット印刷媒体の被覆の製造を記載している。US−A−6417264号は、シリカの分散液であって、有機のカチオン系ポリマーと一緒に極性溶剤中に分散されている分散液を記載している。US−A−6420039号は、カチオン系のシリカ分散液であって、安定化の達成のために、SiO2粒子とアルミニウム化合物とが組み合わされた分散液を記載している。
【0007】
例えばp−DADMACなどのカチオン系ポリマーによる安定化は、とりわけ熱分解法二酸化ケイ素の分散液のために関心が持たれている。しかしながら、この方法は、沈降ケイ酸の分散液のためには、問題があることが明らかになった。それというのも、沈殿プロセスからの多価アニオン、例えば硫酸イオンは、分散されたケイ酸粒子の再凝集をもたらしたからである。従って、上述の方法は、沈降ケイ酸分散液のカチオン的な安定化のためには十分好適ではない。
【0008】
EP1894888号A1は、ケイ酸分散液のカチオン的な安定化のための代替的なアプローチを提供している。そこには、アミノシランによるシリカの直接的な変性によって容易に高い安定性を有する分散液が、追加の試薬を最小限に得られることが開示されている。しかしながら、この方法によって得られた分散液は、それらの実施例によれば、10〜19質量%のみの固体含有率しか有さない。これは、商業的用途には適当とは思えない。
【0009】
従って、熱分解法ケイ酸と比較して明らかに少ない沈降ケイ酸の製造コストに基づき、従来と同じく、高い固体含有率と良好な貯蔵安定性を有するカチオン的に安定化された沈降ケイ酸分散液を廉価に製造を可能にする方法に要求が存在している。理想的には、この方法は、沈降ケイ酸分散液の安定化を、分散液中に多価アニオンもしくは明らかな量の無機塩が存在しても可能にするべきであるので、これらの塩/アニオンは費用をかけた精製工程で完全に除去する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】JP−OS−09142827号
【特許文献2】JP0914287号
【特許文献3】EP0368722号
【特許文献4】EP0329509号
【特許文献5】EP0886628号
【特許文献6】EP0435936号
【特許文献7】DE102006049526.8号
【特許文献8】DE−A−10033054号
【特許文献9】US−A−6777039号
【特許文献10】US−A−6417264号
【特許文献11】US−A−6420039号
【特許文献12】EP1894888号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、カチオン的に安定化された沈降ケイ酸分散液の製造方法において、従来技術から公知の方法の欠点の少なくとも幾つかを有さない製造方法を提供することであった。本発明の特定の一つの課題は、カチオン的に安定化された沈降ケイ酸分散液を、多価アニオン及び/又は多量の無機塩の存在下に製造可能にする方法を提供することであった。非常に特定の一つの課題は、多価アニオンを含有し、高い固体含有率、好ましくは20質量%より高い固体含有率を有し、かつ良好な貯蔵安定性を有する沈降ケイ酸分散液の製造方法を提供することであった。特に、本発明の課題は、カチオン的に安定化された沈降ケイ酸分散液であって、更に加工して光沢インクジェット紙のトップコートとすることができる分散液の多価アニオンの存在下での製造方法を作り上げることであった。
【0012】
更に、本発明の課題は、新規のカチオン的に安定化された沈降ケイ酸分散液であって、従来技術の二酸化ケイ素分散液の欠点の少なくとも幾つかを有さないか又は低い程度でしか有さない分散液を提供することであった。
【0013】
他の明示されていない課題は、以下の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲の全体の文脈から生ずる。
【0014】
本発明者は、驚くべきことに、沈降ケイ酸粒子を、アミノシランによって、予備分散液の製造と引き続いての好適なミル中での前記予備分散液の粉砕を含む好適な方法において表面変性することによって、再加工して光沢インクジェット紙用のトップコートとなる出発分散液として卓越して適している分散液を製造できることを見出した。特許請求の範囲と以下の詳細な説明において詳細に定義される方法によって、沈降ケイ酸の安定化分散液を、無機塩の存在下でも、特に多価アニオンを有するものの存在下でも製造することに成功する。従って、本発明による方法は、カチオン系ポリマーが添加される公知の方法に対して、塩及び/又は多価アニオンをppmの範囲にまで除去するために費用のかかる精製工程を省くことができるという大きな利点を有する。それは、インクジェット媒体用の塗工インキに関する市場(これは今まで沈降ケイ酸の場合の無機塩及び多価アニオンに伴う問題点に基づき、もっぱら熱分解法ケイ酸に委ねられていた)を、沈降ケイ酸についても立ち入ることができるようにする実質的なステップである。それは、更に、沈降ケイ酸に関する良好な入手性と低い製造コストに基づき、相当のコスト的利点に導く。
【0015】
事前に既に暗示したように、沈降ケイ酸分散液は、多価アニオンの存在下では、例えばp−DADMACなどのカチオン系ポリマーで、不十分にしか安定化できない。本発明者は、彼の研究論文の範囲においては、多価アニオンの存在下でのp−DADMACでの沈降ケイ酸分散液の安定化に際して、粉砕での問題が生ずること、すなわち例えばボールミルなどの簡単な粉砕技術では、分散液中の沈降ケイ酸粒子の平均粒度d50をはるか十分には低減できないという問題が生ずることを見出した。決められた理論に縛られずに、本発明者は、沈殿の間に酸性化剤を通じて投入される、例えば硫酸イオンなどの多価アニオンのせいであるという見解である。これらをほぼ完全に除去した場合にはじめて、p−DADMACなどのカチオン系ポリマーによる安定化が可能である。本発明による方法によって、この付加的な精製工程を省き、それでもなお十分に小さい平均粒度を有する粒子を作成することに成功した。この粒度は、紙用塗料における高い画像品質を達成するために必要である。
【0016】
十分に小さい粒度の他に、本発明による方法は、狭い粒度分布を有する分散液を製造することも可能にする。これは、同様に紙用塗料の画像品質のために重要である。ここで、すなわち、非常に高い解像度は、吸収されるインキ滴の非常に小さい粒径を必要とする。これは、改めて、インキを吸収する粒子の粒度に依存する。広い粒度分布は、かなり大きい粒子を含むため、従って高解像度のインクジェット印刷には不適である。
【0017】
今までに知られたアミノシラン安定化された沈降ケイ酸分散液の製造方法(例えばEP1894888号のような)であって、シランと二酸化ケイ素を単に互いに混合し、場合により剪断力を加えるが粉砕しない製造方法と比較して、本発明による方法は、粉砕に際してケイ酸粒子の新たな表面が形成され、それが直接的にシランと反応でき、それから再凝集に至るという利点を提供する。例えばEP1894888号などの別の刊行物は、たしかに一般的に分散液の高い固体含有率を示すが、実施例においては20質量%未満の固体含有率しか達成されない一方で、本発明による方法では、事実、多価アニオンの事前の完全な除去をすることなく、25質量%より高い高固体含有率を達成することに成功する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の対象は、沈降ケイ酸を含む分散液の製造方法において、
a)少なくとも1種の沈降ケイ酸の予備分散液を製造する工程と、
b)前記予備分散液を、粉砕装置に供給して、引き続き粉砕する工程と、
を含むことと、前記製造方法の間に、沈降ケイ酸粒子の少なくとも一部の表面及び/又は粉砕の間に新たに生ずる沈降ケイ酸粒子の表面を、少なくとも1種のアミノシランを用いて、該アミノシランがSi−O−Si結合を介して前記沈降ケイ酸粒子に共有結合されるように被覆することと、を特徴とする、沈降ケイ酸を含む分散液の製造方法である。
【0019】
更に、本発明の対象は、沈降ケイ酸の分散液であって、
a)少なくとも1種のアミノシランが、沈降ケイ酸粒子の表面の少なくとも幾つかの位置に、Si−O−Si結合を介して共有結合されており、
b)表面変性された沈降ケイ酸粒子の平均粒径d50が50〜500nmであり、かつ/又は表面変性された沈降ケイ酸粒子の粒度分布曲線のd90値が150〜800nmであり、
c)分散液の固体含有率が、20質量%以上であり、
d)分散液のpH値が5以下である
ことを特徴とする、沈降ケイ酸の分散液である。
【0020】
最後に、本発明の対象は、本発明による沈降ケイ酸分散液を、紙用塗料、好ましくはインクジェット紙用の紙用塗料の製造のために、特に好ましくは光沢インクジェット紙用のトップコートとして、又は鋼製部材、好ましくは鋼管の被覆のための耐腐食性プライマーとして用いる使用である。
【0021】
本発明の対象を以下に詳細に説明するが、その際、ケイ酸、沈降ケイ酸、沈降されたケイ酸もしくは沈降二酸化ケイ素という概念は、同義で使用される。全ての場合に、その概念は、例えばウールマンの工業化学事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry),第5版,第A23巻,第642〜647頁に記載される沈降二酸化ケイ素と解されるべきである。単なる繰り返しを避けるために、この刊行物の内容を、これをもって本発明の対象及び詳細な説明に明示的に取り入れる。沈降二酸化ケイ素は、800m2/gまでのBET表面積を有し、かつ少なくとも1種のケイ酸塩、好ましくはアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩と、少なくとも1種の酸性化剤、好ましくは少なくとも1種の鉱酸との反応によって得られる。シリカゲル(ウールマンの工業化学事典,第5版,第A23巻,第629〜635頁を参照)とは異なって、沈降ケイ酸は、一様な三次元のSiO2網目構造からなっておらず、孤立した凝集物及び凝塊物からなっている。沈降二酸化ケイ素の特定の一つの特徴は、高い割合の、いわゆる内部表面であり、それはミクロ孔及びメソ孔を有する非常に多孔質の構造に反映する。
【0022】
沈降ケイ酸は、更に、AEROSIL(登録商標)とも呼称される、熱分解法ケイ酸(ウールマンの工業化学事典,第5版,第A23巻,第635〜642頁を参照)とは異なる。熱分解法ケイ酸は、四塩化ケイ素から火炎加水分解によって得られる。全く異なる製造方法に基づき、熱分解法ケイ酸は、とりわけ沈降ケイ酸とは異なる表面積状態を有する。それは、例えば表面上にあるシラノール基の数がより少ないことに表れる。更に、熱分解法ケイ酸の製造に際しては、多価アニオンは生じない。従って、熱分解法ケイ酸と沈降ケイ酸の水性分散液中での挙動は、これは主に表面特性によって決定されるが、互いに比較することはできない。沈降ケイ酸は、熱分解法ケイ酸に対して、とりわけ該ケイ酸が実質的に価格的に好ましいという利点を有する。
【0023】
本発明による方法は、少なくとも1種のアミノシランを、沈降ケイ酸粒子の表面の少なくとも幾つかの位置にSi−O−Si結合を介して共有結合させる、沈降ケイ酸を含む分散液の製造方法であって、
a)少なくとも1種の沈降ケイ酸の予備分散液を製造する工程と、
b)前記予備分散液を、粉砕装置に供給し、引き続き粉砕させる工程と、
を含む、沈降ケイ酸を含む分散液の製造方法である。
【0024】
予備分散液の製造のためには、原則的に、あらゆる沈降ケイ酸を、その取得形態とは無関係に使用することができる。ここで、例えば沈降ケイ酸は、乾燥された形態で、例えば粉末形、造粒物形もしくはマイクロパール形で、又は洗浄されたもしくは洗浄されていない濾過ケークの形態で使用することができる。しかしながらまた、直接的に沈降懸濁液を使用することも可能である。洗浄されていない濾過ケークもしくは沈降懸濁液は、通常は非常に多量の無機塩、例えば硫酸ナトリウムなどの塩が存在しているという欠点を有する。高すぎる塩濃度は、多くの用途にとって不利なことがある。従って、該分散液をまずは濾過し、洗浄し、次いで得られた濾過ケークを再分散させることが好ましいことがある。従って、この変法は、洗浄されていない濾過ケークもしくは沈降懸濁液の使用に対して、低減された塩含有率という利点を有し、乾燥された沈降ケイ酸の使用に対して、それらはそれに反して、乾燥する必要がなく、それにより方法工程も削減できエネルギーコストも節約できるという利点を有する。従って、洗浄された濾過ケークの使用が特に好ましい。濾過ケークの洗浄(沈降ケイ酸のあらゆる製造に際して決まり切った手順で実施されるように)は、無機塩の量を大きく減らすが、ケイ酸分散液の自己安定化又はp−DADMACなどのカチオン系ポリマーによるその安定化を可能にするにはとても十分とはいえない。それについては、更に前記で既に詳細に対応した。カチオン系ポリマーでの安定化のためには、高純度精製のために特定の非常に費用のかかる工程を実施せねばならない。これは費用も時間もかかるものである。本発明による方法のためには、標準的な洗浄で十分であり、残留量の無機塩及び特に多価アニオンは、妨害しない。
【0025】
乾燥された沈降ケイ酸の使用は、例えば複数の沈降ケイ酸を混合すべき場合又は分散液の製造所にまずは沈降ケイ酸の輸送を行わねばならない場合に合理的なことがある。本発明による方法は、当然のように、上述の方法の混合形も含む。すなわち、沈降ケイ酸粉末及び濾過ケークの予備分散液の製造も含む。種々の沈降ケイ酸の混合によって、本発明による方法は、分散液の特性をオーダーメードに調整しうるという可能性をもたらす。
【0026】
本発明による懸濁液に含まれる沈降ケイ酸は、任意の方法により製造でき、かつ意図する利用分野にあつらえの特性プロフィールを有しうる。特に好ましくは、Degussa AG社の製品パンフレット「Sipernat − Performance Silica」(2003年11月)に記載されるようなケイ酸が使用される。例えばW.R.Grace&Co.、Rhodia Chimie、PPG Industries、Nippon Silica、Huber Inc.などの別の製造元の沈降ケイ酸は、当然のように同様に使用できる。特に好ましくは、Evonik Degussa GmbHのSipernat(登録商標)200及びCarplex(登録商標)80が使用される。
【0027】
多価アニオンを含む無機塩とは、好ましくは、2価もしくは3価のアニオンを有するもの、特に好ましくは硫酸イオンと解されるべきである。無機塩には、沈降反応で生ずる塩、沈降反応の前もしくはその間に電解質として添加された塩及び/又は懸濁液中に含まれているその他の不所望な無機塩もしくは有機塩、例えば沈降反応の出発物質もしくは分散媒体中に既に不純物として含まれていた塩が含まれる。特に好ましくは、予備分散液の製造のために使用されるケイ酸もしくは濾過ケークもしくは分散液(例えば液状化された濾過ケーク、沈降懸濁液)は、多価アニオンである硫酸イオン、リン酸イオン及び炭酸イオンを、合計で、二酸化ケイ素及びそこに含まれる不純物の質量に対して、0.005〜2質量%、好ましくは0.05〜1質量%、特に好ましくは0.08〜0.3質量%の全量で有する。
【0028】
本発明による方法で使用される沈降ケイ酸は、その表面上に、アミノシランと反応しうる反応性基を有する。ケイ酸表面上の反応性基は、既に使用される粒子上に存在するものも、分散過程の間、すなわち予備分散液の製造に際してもしくは粉砕に際して形成されるものも含む。反応性基は、主に又は専ら、OH基である。
【0029】
予備分散液中に存在する沈降ケイ酸粒子の平均粒径d50は、好ましくは100nmより大きく、特に好ましくはその平均粒径は、200nmから数百マイクロメートルまでである。その際、前記粒子は、一次粒子、凝集物も、凝塊物をも含む。通常は、平均粒径d50は、1〜500μmである。平均粒径は、例えば動的光散乱によって測定できる。
【0030】
予備分散液中の沈降ケイ酸の、予備分散液の全質量に対する固体含有率は、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは20〜40質量%、殊に好ましくは25〜35質量%である。
【0031】
既に暗示したように、本発明による方法の特定の利点は、沈降ケイ酸を通じて分散液中に持ち込まれた無機塩もしくは多価アニオンを完全に除去する必要がないこということにある。従って、予備分散液は、本発明による方法の好ましい一実施態様においては、無機塩を、それぞれ予備分散液の全質量に対して、0.00015〜0.6質量%、特に好ましくは0.0015〜0.3質量%、殊に好ましくは0.0024〜0.09質量%、特に有利には0.0024〜0.03質量%の含有率で有する。この箇所で指摘されることは、本発明による方法は、多価アニオンを含む分散液の場合にその特定の価値が現れるが、該方法は、当然のように、一価アニオンを有する分散液の場合にも使用でき、これらの方法は一緒に含められているということである。
【0032】
少なくとも1種の沈降ケイ酸の他に、予備分散液は、分散剤として、一般に、水、好ましくは脱塩水もしくは完全脱塩水(VE水)を含む。水の脱塩のための技術、例えば蒸留もしくは逆浸透などの技術は、当業者に公知である。更に、予備分散液は、種々の溶剤を含有してよい。それは、1種以上の有機溶剤であってよく、該溶剤は、一般により低い割合で、例えば助溶剤として添加される。付加的な有機溶剤もしくは分散剤としては、極性溶剤も、非極性及び非プロトン性の溶剤も適している。
【0033】
好ましくは、予備分散液は、予備分散液のpH値を、好ましくは2〜6の値、殊に好ましくは3〜5の値に調整する酸性化剤も含む。酸としては、当業者に公知のあらゆる有機酸もしくは無機酸も使用できる。好ましくは、前記酸には、pKs値<6を有する少なくとも1種の酸グループが含まれる。例は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリオキサデカン酸、クエン酸及びスルホン酸である。好ましくは、一価の有機酸もしくは無機酸、特に好ましくは塩酸及び特に好ましくはギ酸が使用される。それは、酸性化に際して、更に他の多価アニオンが予備分散液中に投入されないという利点を有する。前記酸は、そのままでも、又は溶剤中で添加してもよい。好ましくは、酸は、水溶液の形で添加される。
【0034】
本発明による方法及び本発明による分散液は、それらが特定の安定化剤を添加せずにも沈殿安定性であるという利点を有する。この利点は、かかる安定化剤が、それが特に好ましくは分散液の全質量に対して2質量%未満の量でのみそうなるか又は全くそうならないときにも添加されることを例外としない。
【0035】
予備分散液は、個々の成分を1つの容器に充填し、そして好適な分散装置を用いて加工して均質な予備分散液とすることで製造される。予備分散液は、分散液よりも明らかに低いエネルギー入力で製造できる。そのエネルギー入力は、好ましくは0.01kWh/kg(固体)ないし0.05kWh/kg(固体)の範囲にある。例えば、簡単な撹拌機、溶解機もしくはロータ・ステータ装置を使用できる。予備分散は、主に、場合により、凝集物が凝集力を介して堆積して一緒になることによって生じうる、表面変性された二酸化ケイ素粒子の凝集物を解くという目的に用いられる。これによって、アミノシランと反応しうる付加的な表面が生じる。
【0036】
完成した予備分散液は、引き続き粉砕装置に供給され、そして少なくとも1回粉砕される。粉砕装置は、好ましくは撹拌ボールミル(Ruehrwerkskugelmuehle)もしくはジェットミル、特に好ましくは撹拌ボールミルである。殊に好ましくは、粉砕室が耐摩耗性のセラミックもしくはPUで被覆されている撹拌ボールミルが、イットリウム安定化された酸化ジルコニウムからなる粉砕用ボールと組み合わせて使用される。
【0037】
粉砕は、好ましくは、表面変性された沈降ケイ酸粒子の平均直径d50が、50〜500nm、好ましくは80〜300nm、特に好ましくは100〜200nm、殊に好ましくは110〜160nmである、及び/又は表面変性された沈降ケイ酸粒子の粒度分布曲線のd90値が、100〜800nm、好ましくは100〜500nm、特に好ましくは120〜300nm、殊に好ましくは130〜250nm、特に有利には150〜200nm、殊に有利には150nmから200nm未満までであるまでの期間にわたり実施される。好ましくは、粉砕の間のエネルギー入力は、0.1kWh/kg(固体)〜1kWh/kg(固体)、特に好ましくは0.1kWh/kg(固体)〜0.5kWh/kg(固体)の範囲にある。
【0038】
工程b)後の完成した分散液の固体含有率は、分散液の全質量に対して20〜60質量%の、好ましくは25〜50質量%の、特に好ましくは25〜40質量%のSiO2である。達成しようと努める固体含有率が粉砕後になおも達成されてないべきであれば、固体含有率は、上述の水での希釈によって又は濃縮によって調整することができる。濃縮のための技術は当業者に公知である。
【0039】
少なくとも1種のアミノシランでの表面変性は、本発明による方法の範囲においては、少なくとも1種のアミノシランを、粉砕の、すなわち工程b)の前及び/又は間及び/又は後に添加するように実施してよい。好ましくは、少なくとも1種のアミノシランは、工程b)の間及び/又は後に、及び/又は工程b)の前に完成した予備分散液に、及び/又は予備分散液の製造の前に及び/又は予備分散液の製造の間に添加される。特に、以下の実施形態が含まれる:
変法1においては、少なくとも1種のアミノシランが、粉砕の間及び/又は後に、すなわち工程b)の後に添加される。好ましい変法1a)においては、工程b)で粉砕され、次いで少なくとも1種のアミノシランが添加され、その後に改めて粉砕する。もう一つの好ましい変法1b)において、アミノシランは、工程b)での進行する粉砕の間に、一回で、又はより長い時間にわたり連続的にもしくは断続的に添加される。変法2においては、少なくとも1種のアミノシランは、完成した予備分散液に添加され、次いで粉砕される。この変法2は、2つの部分変法を含む。部分変法2aにおいては、少なくとも1種のアミノシランが完成した予備分散液に添加され、そして規定の時間にわたり、好ましくは10〜60分、特に好ましくは20〜40分にわたりアミノシランと沈降ケイ酸粒子とが反応しうるように再度撹拌される。引き続きその後に粉砕が行われる。変法2bにおいては、少なくとも1種のアミノシランは、完成した予備分散液に添加され、次いで直ちに粉砕される。変法3aにおいては、アミノシランは、既に予備分散液の製造前に添加され、そして規定の時間にわたり、好ましくは10〜60分、特に好ましくは20〜40分にわたり、ケイ酸とシランとを反応させる。変法3bにおいては、アミノシランは、予備分散液の製造の間に添加される。前記の変法の任意の混合形もしくは変化形は、本発明によって一緒に含まれている。
【0040】
変法1a、1b、3a及び3bが、特に好ましいと見なされた。アミノシランをまず沈降ケイ酸に添加して、次いでアミノシランと沈降ケイ酸との反応を少なくとも部分的に終了を待ち、引き続き粉砕する方法が特に好ましいと見なされる。それというのも、得られた分散液を用いて、最良の透明性を示すインクジェット紙用のトップコート塗装が得られるからである。更に、これらのトップコート塗装は、非常に良好な光沢値、インクジェット印刷後の良好な色強度及び良好なインキ吸収特性を示す。沈降ケイ酸予備分散液へのアミノシランの添加直後に粉砕を実施する変法は、同様に非常に良好な結果、例えば最良のインキ吸収特性をもたらす。しかしながら、上述の変法と比較して、僅かに粗悪に過ぎない光沢値及び色強度が保証されるべきである。それにもかかわらず、これらの両方の変法が特に好ましい。
【0041】
アミノシランと沈降ケイ酸との反応に際しての温度は、好ましくは60℃より高く、特に好ましくは60〜100℃である。
【0042】
アミノシランは、ケイ酸と反応しうるためには、遊離のOH基を有するべきである。しかしながら、かかるOH基は、シランの加水分解可能な基からも得ることができる。ここで、シランの加水分解可能な基は、水の存在下で、遊離のOH基を形成しつつ加水分解させることができると知られている。また、酸はこの加水分解を触媒できることも知られている。どの程度まで、もしくはどの範囲で、酸性アミノシランの加水分解が行われるかは、多くの要因に、例えば、pH値、シランの種類、酸をアミノシランに添加してからアミノシラン溶液とシリカとを混合する間の時間に依存し、それは当業者によって所望のように制御することができる。従って、本発明による方法の変法とは無関係に、アミノシランを分散液へと添加する前及び/又はその間及び/又はその後に、酸性化剤を添加することが保証されるべきである。好ましくは、反応媒体、すなわちシラン溶液もしくは分散液のpH値が、7未満、好ましくは2〜6、特に好ましくは3〜5である量で酸性化剤が添加される。
【0043】
加水分解されたアミノシランのもとで、また部分的に縮合反応も生ずるので、アミノシラン溶液中に所定の時間後に縮合物が含まれていることがある。しかし、適宜、多くの範囲まで縮合物形成は回避されるべきなので、酸性アミノシラン溶液の製造とシリカとの混合との間の時間は長すぎるべきではない。好ましくは、前記の時間は、1時間以下であり、特に好ましくは長くても30分であるべきである。
【0044】
本発明の特定の一つの変法においては、該方法は、アミノシランを酸とは別個に添加せずに、アミノシランをまず酸と混合し、次いで酸とシランを一緒に添加することで実施される。好ましくは、この場合に、アミノシラン溶液のpH値は、2〜6の範囲にある。更に、酸性のアミノシラン水溶液であることが好ましい。酸性のアミノシラン溶液の製造のためには、1種以上のアミノシランが酸と混合される。アミノシランも酸も1種の溶剤中に溶解されていてよい。これは両方の成分にとっても好ましいことである。更なる好ましい一実施態様においては、アミノシラン溶液は、非希釈のアミノシランと水性酸とを混合することによって得られる。溶剤の例は、水及び有機溶剤であり、その際、それぞれ水もしくは水性溶剤、すなわち十分な割合の水を有する溶剤混合物が好ましい。使用可能な有機溶剤と、溶剤混合物中の水の可能な容量割合のための例については、上記のシリカ分散液についての例が指摘される。
【0045】
使用されるアミノシランは、好ましくは一般式RaSiX(4-a)[式中、全ての基Xは、同一もしくは異なってよく、かつ加水分解可能な基もしくはヒドロキシ基を意味し、基Rは、同一もしくは異なっており、かつ加水分解できない基を表し、その際、少なくとも1個の基Rは、少なくとも1個のアミノ基を含み、かつaは、1、2もしくは3の値、好ましくは1もしくは2を有する]を有する。
【0046】
前記一般式において、Xは、ヒドロキシ基もしくは加水分解可能な基であり、それらは同一もしくは互いに異なってよく、例えば水素もしくはハロゲン(F、Cl、BrもしくはI)、アルコキシ(好ましくはC1〜C6−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ及びブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6〜C10−アリールオキシ、例えばフェノキシなど)、アシルオキシ(好ましくはC1〜C6−アシルオキシ、例えばアセトキシもしくはプロピオニルオキシなど)、アルキルカルボニル(好ましくはC2〜C7−アルキルカルボニル、例えばアセチルなど)、−N(H)−Si(R3)(シラザン、式中、Rは以下に定義されている)、アミノ、1〜12個の、特に1〜6個の炭素原子を有するモノアルキルアミノもしくはジアルキルアミノである。Xは、また、シロキシ基、例えば−OSiY3であってよく、その際、Yは、同一もしくは異なって、Xについて前記定義した基であってよい。好ましい加水分解可能な基は、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解可能な基は、C1〜C4−アルコキシ基、特にメトキシ及びエトキシである。
【0047】
同一もしくは互いに異なってよい加水分解できない基では、少なくとも1個の基Rは、少なくとも1個のアミノ基を有する。好ましくは、少なくとも1個のアミノ基を有する加水分解できない基が存在する。前記基Rは、場合により、1個以上の通常の置換基、例えばアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシなどの置換基を有してよい。
【0048】
アミノ基を有さない加水分解できない基Rのための例は、アルキル(好ましくはC1〜C16−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルもしくはウンデシル)、シクロアルキル(好ましくはC4〜C12−シクロアルキル、例えばシクロペンチルもしくはシクロヘキシル)、アルケニル(好ましくはC2〜C6−アルケニル、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びブテニルなど)、アルキニル(好ましくはC2〜C6−アルキニル、例えばアセチレニル及びプロパルギルなど)、アリール(好ましくはC6〜C10−アリール、例えばフェニル及びナフチルなど)並びに相応のアルカリール及びアラルキルであって好ましくは7〜24個の炭素原子を含むもの(例えばトリル、ベンジル及びフェネチル)である。好ましくは、アルキル基である。
【0049】
少なくとも1個のアミノ基を有する加水分解できない基Rでは、前記アミノ基は、該基の末端位に、側鎖位に及び/又は主鎖中に含まれていてよい。基Rは、2個以上のアミノ基を有してもよい。基R中のアミノ基は、アルキレン架橋基、アルケニレン架橋基もしくはアリーレン架橋基を介してケイ素原子に結合されており、前記架橋基は、酸素原子によって中断されていてよい。上述の二価の架橋基は、例えば上述の一価のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基もしくはアラルキル基から誘導される。前記架橋基は、一般に、1〜18個の、好ましくは1〜12個の、特に1〜6個の炭素原子を含む。アミノ基が主鎖中に含まれている場合に、2個以上のかかる架橋基が含まれていてよい。
【0050】
アミノ基のN原子は、置換されていても置換されていなくてもよい。基Rの1個以上のアミノ基は、末端位もしくは側鎖位のアミノ基の場合に第一級の、第二級のもしくは第三級のアミノ基−NR12−であるか、又は主鎖もしくは側鎖中のアミノ基の場合に−NR1−であってよく、その際、基R1は、同一もしくは異なり、該基は水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アルカリールもしくはアラルキルから選択してよい。基R1のための、水素以外の具体的な例としては、上述のアミノ基を有さない相応の基Rについての上述の例並びに以下の具体的な例の相応の基が指摘される。R1は、置換基、例えばヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、カルボニル、ハロゲンもしくはアルキルを有してもよく、又は酸素原子によって中断されていてよい。かかる基R1のための例は、アクリルオキシ、アセチルグリシル又はヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシエチルである。アミノシランは、好ましくは、モノマー化合物であり、好ましくは4個以下の、より好ましくは3個以下のケイ素原子を含む。特に好ましくは、アミノシランは、1個だけのケイ素原子を含む。
【0051】
使用可能なアミノシランのための具体的な例は、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリクロロシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3−アミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、(3−アミノプロピル)エチルジエトキシシラン、(3−メチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N−ジメチルアミノ)ジメチルクロロシラン、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N−アセチルグリシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、(N−フェニルアミノメチル)メチル−ジメトキシシラン、(N−フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、3−(1,3−ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル−トリメトキシシラン、3−(シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノメチルエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノメチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、t−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−シラントリオール、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン及びN−フェニルアミノメチルトリメトキシシランである。
【0052】
重要なことは、アミノシランが少なくとも1個の塩基性N原子を有することであり、該原子は酸によってプロトン化されてよい。
【0053】
アミノシラン及び以下に議論される場合により付加的に使用可能な別の表面変性用の加水分解可能なシランは、公知の方法;W.Noll,"Chemie und Technologie der Silicone",Chemie GmbH出版,Weinheim/Bergstrasse(1968年)に従って製造することができ、かつ市販されている。
【0054】
他の加水分解できない基Rは、1個の反応性基を有する基であってよく、その際、前記基は、特に以下に議論される、場合により付加的に使用可能な別の表面変性用の加水分解可能なシランに含まれていてよく、その際、前記反応性基は、例えばアクリル基もしくはアクリルオキシ基、メタクリル基もしくはメタクリルオキシ基、好ましくは保護されたイソシアナト基、ヒドロキシ基、チオ基、グリシジル基もしくはグリシジルオキシ基又は酸無水物基である。これらの反応性基は、アルキレン架橋基、アルケニレン架橋基もしくはアリーレン架橋基を介してケイ素原子に結合されていてよく、前記架橋基は、酸素基もしくは−NH基によって中断されていてよい。前記架橋基は、好ましくは1〜18個の、特に1〜6個の炭素原子を含む。上述の二価の架橋基及び場合により存在する置換基は、例えば上述の一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基もしくはアラルキル基から誘導される。前記基Rは、1個より多くの反応性基を有してもよい。特に、前記アミノシランは、例えばアミノ基を有する基に、かかる反応性基を有してもよい。
【0055】
反応性基を有する加水分解できない基Rのための例は、(メタ)アクリルオキシ−C1〜C6−アルキル、例えば(メタ)アクリルオキシメチル、(メタ)アクリルオキシエチルもしくは(メタ)アクリルオキシプロピル、イソシアナト−C1〜C6−アルキル、例えば3−イソシアナトプロピル、チオ−C1〜C6−アルキル、例えばチオプロピル、グリシジルオキシ−C1〜C6−アルキル、例えばグリシジルオキシプロピルであり、(メタ)アクリルとは、メタクリルもしくはアクリルを意味する。相応のアミノシランもしくは以下に議論される場合により付加的に使用可能な反応性基を有する別の加水分解可能なシランのための例は、(メタ)アクリルオキシプロピルシラン及び(メタ)アクリルオキシメチルシラン、例えば3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシメチルトリエトキシシラン及び3−(メタ)アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、場合によりブロック化された3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン及び3−イソシアナトプロピルジメチルクロロシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシジルオキシプロピルトリエトキシシランである。
【0056】
更に、アミノシラン及び特に以下に議論される場合により付加的に使用できる表面変性用の別の加水分解可能なシランにおける1個以上の加水分解できない基Rは、フッ素で置換されている有機基、特に直鎖状もしくは分枝鎖状の(ペル)フルオロアルキル基を有してよい。好ましくは、かかるフッ素化された基Rは、1〜30個のフッ素原子を含み、それらは、好ましくは脂肪族炭化水素原子に結合されている。好ましくは、フッ素で置換された炭素原子は、フッ素化されていないエチレン基などのアルキレン架橋を介してSiに結合されている。使用可能なフッ素化された基Rのための例は、CF3CH2CH2−、C25CH2CH2−、n−C613CH2CH2−、i−C37OCH2CH2CH2−、n−C817CH2CH2−及びn−C1021−CH2CH2−である。付加的なシランとして使用可能なフルオロシランのための例は、CF3CH2CH2Si(CH3)(OCH32、C25−CH2CH2−Si(OCH33、n−C613−CH2CH2Si(OC253、n−C817−CH2CH2−Si(OC253、n−C1021−CH2CH2−Si(OC253、i−C37O−CH2CH2CH2−SiCl2(CH3)、n−C613−CH2CH2−Si(OCH2CH32及びn−C613−CH2CH2−SiCl2(CH3)である。
【0057】
アミノシランは、既に前記に議論したように、場合により、1種以上の別の加水分解可能な表面変性用のシランとの混合物においても、例えばケイ酸に更なる特性を付与する要望がある場合には使用してよい。他のシランは、好ましくはアミノシラン溶液中に含まれている。一般に、このためには、少なくとも1個の加水分解できない基を有する、あらゆる加水分解可能なシランが適しており、その際、前記の加水分解できない基は、アミノ基を有さない。かかるシランは、当業者に公知であり、市販されている。
【0058】
例えば、前記の式R′bSiY(4-b)[式中、基Yは、同一もしくは異なっており、かつ加水分解可能な基もしくはヒドロキシ基を意味し、基R′は、同一もしくは異なっており、かつ加水分解できない基を表し、その際、R′は、アミノ基を含まず、かつbは、1、2もしくは3の値、好ましくは1もしくは2を有する]のシランであってよい。基R′及びYについての定義及び特定の例は、アミノ基を除いて、前記のアミノシランでのR及びXについてのものと同一であり、そのためそれらが指摘される。1種以上の基R′は、通常の置換基の他に、前記のように、前記の反応性の官能基、例えば特に(メタ)アクリル基、保護されたイソシアネート基、ヒドロキシ基、チオ基及び無水物基を含んでもよい。他の好適な基Rは、直鎖状もしくは分枝鎖状の(ペル)フルオロアルキル基である。反応性基もしくは(ペル)フルオロアルキル基を有する付加的なシランのための例は、既に上述したとおりである。更に、本発明によれば、シランとしては、いわゆるヒドロシル(Hydrosil)系が使用できる。ヒドロシル系とは、ここでは、実質的に、水を基礎とする、塩化物不含の、主に弱酸の水性系であって、水溶性の、実質的に完全に加水分解された(フルオロ)アルキル−/アミノアルキル−/ヒドロキシ−(もしくはアルコキシ−)シロキサンを含む系を意味する。前記系は、例えばEP0716127号A、EP0716128号A、EP0846717号A、EP1101787号A並びにDE102007040802号Aに記載されている。特に好ましくは、それは、VOC不含の、すなわち揮発性の有機化合物(揮発性有機化合物)を含まない水性シロキサン、例えばEvonik Degussa GmbH社のDynasylan(登録商標)HYDROSIL 1151、Dynasylan(登録商標)HYDROSIL 2627、Dynasylan(登録商標)HYDROSIL 2909、Dynasylan(登録商標)HYDROSIL 2929、Dynasylan(登録商標)HYDROSIL 2776などの水性シロキサンである。最後に、特に好ましくは、DE102009001966号に記載されるような第四級のアミノ官能を有するヒドロシルを使用できる。
【0059】
本発明による沈降ケイ酸の分散液は、以下の点で卓越している:
a)少なくとも1個のアミノシランが、沈降ケイ酸粒子の表面の少なくとも幾つかの位置でSi−O−Si結合によって共有結合されていること。その際、アミノシランはSi−O−Si結合を介してケイ酸に共有結合されていることであってよいが、1個のアミノシラン分子が複数のOH基を有することであってもよく、そのため、複数のSi−O−Si結合によってケイ酸へと共有結合されていてよい。
【0060】
b)表面変性された沈降ケイ酸粒子の平均直径d50が、50〜500nm、好ましくは80〜300nm、特に好ましくは100〜200nm、殊に好ましくは110〜160nmであること、及び/又は表面変性された沈降ケイ酸粒子の粒度分布曲線のd90値が、150〜800nm、好ましくは150〜500nm、特に好ましくは150〜300nm、殊に好ましくは150〜250nm、特に有利には150〜200nm、殊に有利には150nmから200nm未満までであること。本発明による分散液は、それによって、高解像度のインクジェット印刷の分野において使用することが可能となる。
【0061】
c)分散液の固体含有率が、20質量%以上、好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは25〜50質量%、殊に好ましくは25〜40質量%であること。それによって、本発明による分散液は、より低い固体含有率を有する分散液、例えばEP1894888号からの分散液などに対して経済的な利点を有する。公知の高充填されたケイ酸分散液であって全体として十分に多価アニオンが除去されている分散液に対して、本発明による分散液は、費用のかかる精製、すなわち多価アニオンの除去を省けるという利点を有する。
【0062】
d)分散液のpH値が5以下であること。低いpH値は、アミノシランのアミノ基のカチオン化のために必要であり、分散液中での粒子の互いの十分な静電的な反発力をもたらす。
【0063】
分散液中に含まれる沈降ケイ酸もしくはアミノシランは、相応して、前記の方法の説明において詳細に記載されている。
【0064】
本発明による分散液は、紙用塗料、好ましくはインクジェット紙用の紙用塗料の製造のために、特に好ましくは光沢インクジェット紙のためのトップコートとして又は鋼製部材、好ましくは鋼管の被覆のための耐腐食性プライマーとして使用することができる。
【0065】
出発材料としての並びに分散液中での沈降ケイ酸の物理化学的データは、以下のようにして測定する:
分散液中での及び予備分散液中での固体含有率の測定
分散液もしくは予備分散液を、IR乾燥機中で質量が一定になるまで乾燥させる。乾燥損失は、主に水湿分からなる。
【0066】
この測定に際して、補正されたアルミニウム皿に2.0gのケイ酸分散液を充填し、IR乾燥装置(Mettler社、LP16型)の蓋を閉める。スタートキーを押した後に、懸濁液の乾燥が105℃で始まり、単位時間あたりの質量低下が2mg/(120秒)を下回ったら自動的に停止する。
【0067】
質量低下(%)は、その装置によって、0〜100%モードを選択したら直接的に示される。固体含有率は、固体含有率(%)=100%−質量低下(%)に従ってもたらされる。
【0068】
粒度分布の測定(d50値及びd90値)
粉末の粒度の測定のためのレーザ回折の使用は、粒子が単色光を異なる強度パターンで全ての方向に散乱するという現象を基礎とする。この散乱は、粒度に依存する。粒子が小さければ小さいほど、回折角は大きくなる。
【0069】
サンプル調製及び測定(モジュールのすすぎなど)は、親水性の沈降ケイ酸の場合にはVE水を用いて行われ、十分に水で湿潤できない沈降ケイ酸の場合には純粋なエタノールを用いて行われる。
【0070】
測定の開始前に、レーザ回折機器LS 230(Coulter社)及び液体モジュール(Small Volume Module Plus,120ml,Coulter社)を暖機運転し、該モジュールをVE水で3回すすぎ、較正し、疎水性の沈降ケイ酸の場合にはエタノールで3回すすぐ。
【0071】
機器ソフトウェアのコントロールバーで、"測定(Messung)"のメニュー項目を介してデータウインドウ"光学モデルを計算する(Opt.Modell berechnen)"を選択し、そして屈折率を.rfdデータで記録する:液体屈折率B.I.の実部(Real)=1.332(エタノールについては1.359);材料屈折率の実部=1.46;虚部(Imaginaer)=0.1;形状因子1。更に、このデータウインドウで、以下の項目を選択する:オフセット測定(Offsetmessung)、調整(Justieren)、バックグラウンド測定(Hintergrundmessung)、測定濃度調節(Messkonz.einstellen)、サンプル情報入力(Probeninfo eingeben)、測定情報入力(Messinfo eingeben)、測定時間(Messzeit)60秒、測定回数(Anzahl Messungen)1、PIDSデータなし(ohne PIDS Daten)、サイズ分布(Groessenverteilung)。ポンプ速度を、前記機器において30%に調節する。
【0072】
1gのケイ酸を40mlのVE水中に入れた均質な懸濁液の添加は、前記機器の液体モジュール中の2ml秤量ピペットを用いて、一定濃度が8〜12%の吸光で達成され、かつ前記機器が"OK"を通知するように行われる。測定は、室温で行われる。生データ曲線から、前記ソフトウェアは、容量分布を基礎としてMie理論と光学モデルパラメータ(.rfdデータ)を顧慮して、粒度分布と、d50値(中央値)と、d90値を計算する。
【0073】
BET表面積の測定
粉末状の略球状の粒子を有する又は顆粒状のケイ酸の窒素比表面積(以下、BET表面積と呼ぶ)は、ISO5794−1/Annex Dに従って機器TRISTAR 3000(Micromeritics社)を用いてDIN−ISO 9277による多点測定により測定される。
【0074】
分散液のpH値の測定
分散液のpH値は、ISO787/9に従って測定する。
【0075】
アミノシラン溶液のpH値の測定
アミノシラン溶液のpH値は、公知法に従って、事前に較正された組み合わせ電極(Einstabmesskette)を用いて測定する。
【0076】
SiO2含有率の測定
SiO2含有率の測定は、ISO3262−19に従って行われる。
【0077】
予備分散液中での及び最終分散液中での無機塩の含有率の測定
シランで変性されていないケイ酸分散液の無機塩の含有率は、上記のように測定された分散液の固体含有率から、上記のように測定された固体のSiO2含有率を差し引いて得られる。
【0078】
既に表面変性されたケイ酸分散液の場合には、分散液の固体含有率は、SiO2含有率の他に、付加的に、吸収されたシランの量について補正するべきである。
【0079】
予備分散液の製造のために使用されるケイ酸もしくは濾過ケークもしくは分散液(例えば液状化された濾過ケークもしくは沈降懸濁液)の多価アニオン(硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン)の含有率の測定
乾燥されたケイ酸サンプル(10質量%未満の湿分含有率)の硫酸イオン含有率は、ISO787−13に従って測定される。
【0080】
炭酸イオン含有率は、50〜100mgの乾燥されたサンプル(10質量%未満の湿分含有率)を10mlの硫酸(25%)と混合し、そして該溶液をガス炎(ブンゼンバーナー)によって軽く沸騰するまで加熱することで測定される。真空ポンプによって、生じたガスは、導電性測定セルに輸送される。較正は、CaCO3で行われる。
【0081】
ケイ酸のリン酸イオン含有率は、本発明の範囲においては、全体のリン含有率を介して測定される。すなわち全体のリンは、ケイ酸中にリン酸イオンとして存在すると想定される。全体のリン含有率は、以下のように測定される:
高分解能型誘導結合プラズマ質量分析法(HR−ICPMS)によるケイ酸中のリンの測定
1〜5gの乾燥されたケイ酸サンプル(10質量%未満の湿分含有率)を、1mgまで正確にPFAビーカー中に秤量する。25〜30gのフッ酸(約50%)を添加する。短時間の傾動の後に、前記のPFAビーカーを加熱ブロック中で110℃に加熱し、こうしてサンプル中に含まれるケイ酸はヘキサフルオロケイ酸並びに過剰のフッ酸としてゆっくりと蒸発される。残留物を、0.5mlの硝酸(約65%)と、数滴の過酸化水素溶液(約30%)で約1時間溶かし、そして超純水で10gに満たす。
【0082】
リンの測定のために、分解溶液0.05mlもしくは0.1mlを取り出し、ポリプロピレン試験管中に移し、内部標準としての0.1mlのインジウム溶液(c=0.1mg/l)と混合し、そして希硝酸(約3%)を用いて10mlに満たす。
【0083】
リン原液(c=10mg/l)から、4つの較正溶液を調製(c=0.1;0.5;1.0;5.0μg/l)し、再び0.1mlのインジウム溶液(c=0.1mg/l)の添加により10mlの最終容量にする。更に、ブランク溶液を、0.1mlのインジウム溶液(c=0.1mg/l)で10mlの最終容量として製造する。
【0084】
こうして製造されたブランク溶液、較正溶液及びサンプル溶液中の元素含有率は、高分解能型誘導結合質量分析法(HR−ICPMS)によって、かつ外部較正によって定量化する。測定は、少なくとも4000の質量分解能(m/Δm)で行われる。
【0085】
以下の実施例は、本発明のより詳細な理解のために用いられるものであって、本発明をなんら狭く限定するものではない。
【実施例】
【0086】
実施例1
予備分散液の製造
剪断装置Ultra−Thurraxと容器とからなる分散装置において、1200gの完全脱塩水を装入し、そして619gのSipernat 200を均質に導入した。この分散液を、剪断エネルギーを用いて70℃にまで加熱した。次いで、この予備分散液中に、172gのDynasilan(登録商標)1189(メタノール中で20%で希釈された)を滴加し、そしてpH値を49gのHClを用いてpH3に一定に保持した。
【0087】
予備分散液の粉砕
粉砕は、Netzsch Condux社製の撹拌ボールミル LS 1型において実施した。そのために、予備分散液を、60℃に加熱された容器に装入し、そしてポンプによって該ミルの粉砕室中にポンプ導入し、そこから前記分散液を再び同じ容器に環流させた。従って、該懸濁液は、循環様式で粉砕された。ミル運転の消費電力によって決定される粉砕エネルギーの導入の後に、粒度分布を測定した。90分の粉砕時間後に、150nmの平均粒径d50及び240nmのd90値が得られた。
【0088】
使用テスト
こうして得られた(粗製)分散液から、紙用塗料を製造した。それは、使用特性の点で非常に良好な結果を示した。
【0089】
実施例2
予備分散液の製造
剪断装置Ultra−Thurraxと容器とからなる分散装置において、1800gの完全脱塩水を装入し、そして360gのCarplex(登録商標)80を均質に導入した。この分散液を、剪断エネルギーを用いて70℃にまで加熱した。引き続き、この分散液中に、100gのDynasilan(登録商標)1189(メタノール中で20%で希釈された)を滴加し、そしてpH値を29gのHClを用いてpH3に一定に保持した。該懸濁液を、次いで70℃で30分間にわたり更に剪断した。
【0090】
予備分散液の粉砕
粉砕は、Netzsch Condux社製の撹拌ボールミル LS 1型において実施した。そのために、分散液を、60℃に加熱された容器に装入し、そしてポンプによって該ミルの粉砕室中にポンプ導入し、そこから前記分散液を再び同じ容器に環流させた。従って、該懸濁液は、循環様式で粉砕された。ミル運転の消費電力によって決定される粉砕エネルギーの導入の後に、1つのサンプルで、平均粒度及び粒度分布は、記載された方法に従って測定されている。90分の粉砕時間後に、140nmの平均粒径d50及び230nmのd90値が得られた。
【0091】
使用テスト
こうして得られた(粗製)分散液から、耐腐食性プライマーを製造した。それは、使用特性の点で非常に良好な結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降ケイ酸を含む分散液の製造方法において、
a)少なくとも1種の沈降ケイ酸の予備分散液を製造する工程と、
b)前記予備分散液を、粉砕装置に供給して、引き続き粉砕する工程と、
を含むことと、前記製造方法の間に、沈降ケイ酸粒子の少なくとも一部の表面及び/又は粉砕の間に新たに生ずる沈降ケイ酸粒子の表面を、少なくとも1種のアミノシランを用いて、該アミノシランが前記沈降ケイ酸粒子に共有結合されるように変性することと、を特徴とする、沈降ケイ酸を含む分散液の製造方法。
【請求項2】
予備分散液が、無機塩を、それぞれ予備分散液の全質量に対して、0.00015〜0.6質量%、特に好ましくは0.0015〜0.3質量%、殊に好ましくは0.0024〜0.09質量%、特に有利には0.0024〜0.03質量%の含有率で有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無機塩が、多価アニオン、好ましくは2価もしくは3価のアニオンを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
予備分散液の製造のために、少なくとも1種の乾燥された沈降ケイ酸及び/又は少なくとも1種の沈降ケイ酸の濾過ケークが使用されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
予備分散液中に存在する沈降ケイ酸粒子の平均粒径d50が、100nmより大きい、好ましくは1〜500μmであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
予備分散液中の沈降ケイ酸の、予備分散液の全質量に対する固体含有率が、5〜40質量%、特に好ましくは20〜40質量%、殊に好ましくは25〜35質量%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のアミノシランを、粉砕の、すなわち工程b)の前及び/又は間及び/又は後に添加すること、好ましくは少なくとも1種のアミノシランを、工程b)の間及び/又は後に、及び/又は完成した予備分散液に工程b)の前に、及び/又は予備分散液の製造の前に及び/又は予備分散液の製造の間に添加することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
予備分散液及び/又は分散液及び/又はアミノシラン溶液のpH値を、アミノシラン溶液の予備分散液もしくは分散液への添加の前に及び/又はその間に及び/又はその後に、7未満の値に、好ましくは2〜6に調整することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
一般式RaSiX(4-a)[式中、基Xは、同一もしくは異なっており、かつ加水分解可能な基もしくはヒドロキシ基を意味し、基Rは、同一もしくは異なっており、かつ加水分解できない基を表し、その際、少なくとも1個の基Rは、少なくとも1個のアミノ基を含み、かつaは、1、2もしくは3の値、好ましくは1もしくは2を有する]を有するアミノシランを使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
沈降ケイ酸の分散液であって、
a)少なくとも1種のアミノシランが、沈降ケイ酸粒子の表面の少なくとも幾つかの位置に、共有結合されており、
b)表面変性された沈降ケイ酸粒子の平均粒径d50が50〜500nm、好ましくは80〜300nm、特に好ましくは100〜200nm、殊に好ましくは110〜160nmであり、かつ/又は表面変性された沈降ケイ酸粒子の粒度分布曲線のd90値が150〜800nm、好ましくは150〜500nm、特に好ましくは150〜300nm、殊に好ましくは150〜250nm、特に有利に150〜200nm、殊に有利に150nmから200nm未満であり、
c)分散液の固体含有率が、20質量%以上であり、
d)分散液のpH値が5以下である
ことを特徴とする、沈降ケイ酸の分散液。
【請求項11】
請求項10に記載の本発明による沈降ケイ酸分散液を、紙用塗料、好ましくはインクジェット紙用の紙用塗料の製造のために、特に好ましくは光沢インクジェット紙のためのトップコートとして又は鋼製部材、好ましくは鋼管の被覆のための耐腐食性プライマーとして用いる使用。

【公開番号】特開2011−148692(P2011−148692A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11901(P2011−11901)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】