説明

油中水型クリーム

【課題】生クリームのような良好な風味と口溶けを有し、特に製菓製パン用フィリングクリームに適した油中水型クリーム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】水相中に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有することを特徴とする油中水型クリーム及び該油中水型クリームを製造する方法であって、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有する水相と、油相とを乳化して得ることを特徴とする油中水型クリームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて良好な乳風味及び口溶けを有する油中水型クリーム及びその製造方法に関し、該油中水型クリームは、特に製菓製パン用フィリングクリームに適したものである。
【背景技術】
【0002】
牛乳から遠心分離により作られる生クリームは、乳風味が良好なだけではなく、乳化型が水中油型であること、さらには乳脂自体の口溶けが良好であることから、既存のどのようなクリームよりも口溶けが優れている。このため、油中水型クリーム(乳化型が油中水型であるクリーム)、特に製菓製パン用フィリングクリームについても、乳風味及び口溶けを生クリームに近付けるべく、これまでに様々な試みがなされている。
【0003】
このような油中水型クリームの乳風味や口溶けを改良する方法としては、例えば、脱脂粉乳、ホエイ蛋白質、カゼイン等の乳蛋白質、さらにこれらの金属塩や濃縮物を添加して、乳風味を改良する方法が挙げられる(例えば特許文献1〜3を参照)。しかし、蛋白質は水に対する溶解性が一般的に低く、また、油中水型のクリームは、水中油型のクリームに比べて水相の含有量を多くできないため、水相中にこれらの蛋白質を多く溶解させることが難しく、乳風味を改良可能なほど多量の蛋白質を水相に添加すると、ざらついた食感となったり、乳化性が乏しかったり、蛋白質自体の苦味を感じたりするため、上記方法は、油中水型クリームの乳風味や口溶けの改良する方法としては十分であるとは言えなかった。このため、乳起源の蛋白質を改変し、乳蛋白質と有機酸モノグリセリドとの複合体を添加する方法(例えば特許文献4参照)や、脂肪酸と乳蛋白質との複合体を添加する方法(例えば特許文献5参照)が行なわれたが、これらの方法は安定性に乏しく、さらに有機酸モノグリセリドや遊離脂肪酸の風味が残る等、風味が悪いという問題があった。
このように、乳蛋白質を利用して乳風味を改善しようとすると、少量の添加量では乳風味を改善することはできなかった。
【0004】
ここで、蛋白質以外の乳成分で油中水型乳化油脂組成物の乳風味や口溶けを改善した例としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2重量%以上である乳原料を使用する方法(例えば特許文献6参照)が挙げられる。この方法は、該乳原料に含まれるリン脂質という本来油溶性である乳化成分を水相中に含有させることにより、風味発現性の向上を図ったものであるため、水相中にこのような乳化成分や乳化剤を含まない状態であっても、良好な乳風味や口溶けを有する油中水型クリームを得る方法が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−291536号公報
【特許文献2】特開平04−197132号公報
【特許文献3】特開平11−243856号公報
【特許文献4】特開平08−000170号公報
【特許文献5】特開平09−003479号公報
【特許文献6】特開2004−267166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、水相中に乳化剤や乳化成分を含有させずとも、生クリームのような良好な乳風味と口溶けを有し、特に製菓製パン用フィリングクリームに適した油中水型クリーム、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乳蛋白質と乳清ミネラルを含有する油中水型クリーム、好ましくは該乳清ミネラルとして特定組成の乳清ミネラルを含有する油中水型クリームが、良好な乳風味と口溶けを有し、特に、従来の考え方とは全く逆に、水相が乳化成分を含有しない場合において、極めて良好な口溶けを呈することを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、水相中に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有することを特徴とする油中水型クリームを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、上記油中水型クリームを製造する方法において、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有する水相と、油相とを乳化して得ることを特徴とする油中水型クリームの製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の油中水型クリームについて好ましい実施形態に基づき詳述する。
【0011】
先ず、本発明で使用する乳清ミネラルについて詳述する。
乳清ミネラルとは、乳又はホエー(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。
【0012】
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、より良好な乳風味と口溶けを有する油中水型クリームが得られる点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。尚、該カルシウム含量は低いほど好ましい。
【0013】
牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が5質量%以上である。上記カルシウム含量が2質量%未満の乳清ミネラルは、乳又はホエイから、膜分離及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖及び蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエイを用いる方法、或いは甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法が挙げられるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
【0014】
本発明の油中水型クリームにおける上記乳清ミネラルの含有量は、水相中に、固形分として0.001〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは1〜5質量%である。上記乳清ミネラルの含有量が0.001質量%未満であると、本発明の効果(生クリームのような良好な風味と口溶け)が見られにくく、また、10質量%を超えると、苦味を感じるおそれがあることに加え、長期間保存時や高温での保管時に乳化破壊を起こし、離水したり、油分分離などを起こすおそれがある。
【0015】
次に、本発明で使用する乳蛋白質について詳述する。
本発明の油中水型クリームは、乳蛋白質を含有する。乳蛋白質は、カゼイン蛋白質とホエイ蛋白質に大別され、カゼイン蛋白質又はホエイ蛋白質の何れかを用いてもよいし、これらを併用してもよいが、本発明においては、良好な口溶けを有する点から、上記カゼイン蛋白質とホエイ蛋白質を併用することが好ましい。
【0016】
上記乳蛋白質の含有量は、本発明の油中水型クリームの水相中、0.001〜2.5質量%、好ましくは0.1〜2.5質量%、より好ましくは1〜2.5質量%である。乳蛋白質の含有量が0.001質量%未満であると、乳風味が得られず、また、口溶けも悪くなりやすい。また、乳蛋白質の含有量が2.5質量%を超えると、口溶けが悪くなりやすく、また、油中水型クリームが硬くなりすぎたり、食感がボソついたり、可塑性を呈しないおそれがある。
【0017】
上記カゼイン蛋白質としては、αs1−カゼイン、αs2−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン等の各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含んだ食品素材、アルカリカゼイン(カゼイネート)、酸カゼイン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
上記ホエイ蛋白質としては、ラクトアルブミン、βラクトグロブリン、血清アルブミン、免疫グロブリン、プロテオースペプトン等の各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含んだ食品素材、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(ホエイプロテインコンセントレート)等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
上記乳蛋白質を含有する食品素材としては、上記カゼイン蛋白質と上記ホエイ蛋白質の両方を含有する乳原料、例えば、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、バターミルク、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、脱脂粉乳、全粉乳、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、クリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
上記カゼイン蛋白質と上記ホエイ蛋白質を併用する場合には、両蛋白質の含有量の質量比率は、カゼイン蛋白質:ホエイ蛋白質=40:60〜85:15、特に45:55〜75:25であることにより、よりボソつきのない滑らかな物性となる点において好ましい。カゼイン蛋白質の質量比率が該範囲より大きいと、ボソついた食感になる恐れがあり、また該範囲より小さいと、ボディー感に乏しく、可塑性を呈しない物性となるおそれがある。
【0021】
本発明の油中水型クリームにおいては、水相中に、乳化成分を含有しないものであると、より生クリームのような良好な乳風味と口溶けが得られる。尚、この場合において、油相中に、乳化成分が含まれる場合であっても、この効果を妨げるものではない。
ここで、該乳化成分としては、乳化剤や乳化成分を含有する食品素材を挙げることができる。
【0022】
上記乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等を挙げることができる。
【0023】
ここで、なぜ、水相中に乳蛋白質と乳清ミネラルを特定量含有し、水相中に乳化成分を含有しない油中水型クリームの乳風味と口溶けが向上するのかは定かではないが、おそらくは、乳蛋白質が少なく、且つ乳清ミネラルが一定量以上存在する場合に、解乳化作用が発生しやすくなり、口に入れた場合に瞬時に乳化が破壊されるために鋭い口溶けになり、風味を強く感じるものであり、ここで水相中に乳化成分が存在すると、その解乳化が阻害されることによるものと考えられる。
【0024】
本発明の油中水型クリームは、油相中に、主要構成脂肪酸が不飽和であり、HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを含有することが、より口溶けを向上させることが可能な点で好ましい。これは、該成分を油相中に含ませることにより、おそらくは上記の解乳化を促進しているものと考えられる。尚、そのHLBは11以上であることがより好ましい。また、そのHLBの上限は通常20であるがこれに制限されず、それ以上であってもよい。
【0025】
上記の主要構成脂肪酸が不飽和であり、HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルにおける、主要構成脂肪酸基としては、例としてパルミトレイン酸基、オレイン酸基、エライジン酸基、リノール酸基、リノレン酸基、アラキドン酸基、エルカ酸基等の不飽和脂肪酸基を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではなく、不飽和脂肪酸であれば良い。上述の例の中でも、特に、経日安定性的にはオレイン酸基が好ましい。この主要構成脂肪酸が不飽和脂肪酸でないと本発明の優れた効果は得られない。
尚、主要構成脂肪酸が不飽和脂肪酸であるとは、そのポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸の60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%が不飽和脂肪酸であることをいう。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの場合、グリセリンの重合度や、エステル結合の数もHLBが9以上を与え得れば何ら限定されるものではないが、好ましくはグリセリンの重合度が4〜10、より好ましくは6〜10、且つ、1分子中のエステル結合の数が好ましくは1〜7、より好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜2であるポリグリセリン脂肪酸エステルが良い。
また、ショ糖脂肪酸エステルの場合、エステル結合の数はHLBが9以上を与え得れば何ら限定されるものではないが、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4であるショ糖脂肪酸エステルが良い。
【0027】
本発明において、主要構成脂肪酸が不飽和であり、HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルの含有量は、油中水型クリーム中において、好ましくは0.01〜4質量%(組成物基準)、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。主要構成脂肪酸が不飽和であり、HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルが0.01質量%未満では、口溶けを向上させることができず、また、4質量%を超えると、乳化剤臭が生じたり、油中水型クリーム製造時の乳化の点で問題が生じる可能性があるので好ましくない。
【0028】
本発明の油中水型クリームで使用される食用油脂は、食用に適する油脂であればよく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴー脂、乳脂等の常温で固体の油脂も挙げられ、更に、これらの食用油脂の硬化油、分別油、エステル交換油等の物理的又は化学的処理を施した油脂を使用することもできる。
尚、本発明の油中水型クリームにおける上記食用油脂の含有量は、油中水型乳化の安定化のためには、好ましくは18〜80質量%、より好ましくは28〜70質量%、さらに好ましくは38〜60質量%であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の油中水型クリームにおける水の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%である。
【0030】
また、本発明の油中水型クリームには、上記乳蛋白質、乳清ミネラル、食用油脂、水以外に、通常、油中水型クリームに使用されることが知られているその他の原料を、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができる。
【0031】
上記その他の原料としては、乳化剤、澱粉類、繊維類、増粘多糖類等の安定剤、乳蛋白質以外の蛋白質、卵類、糖類、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、茶、酒類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、調味料、酵素、着香料、着色料、食品保存料、日持ち向上剤、酸化防止剤、pH調整剤等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0032】
上記安定剤としては、リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、有機酸塩類(クエン酸塩、酒石酸塩等)、無機塩類(炭酸塩等)、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、澱粉、化工澱粉、結晶セルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記安定剤の含有量は、本発明の油中水型クリーム中、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
【0033】
上記の「乳蛋白質以外の蛋白質」としては、特に限定されないが、例えば、血清アルブミン、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦蛋白質、大豆蛋白質、エンドウ蛋白、トウモロコシ蛋白、その他の動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質、並びにこれらの加水分解物、これらを含有する食品素材が挙げられる。
これらの「乳蛋白質以外の蛋白質」は、目的に応じて一種ないし二種以上の蛋白質として、或いは一種ないし二種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で添加してもよい。
上記の「乳蛋白質以外の蛋白質」の含有量は、本発明の油中水型クリーム中、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
【0034】
上記糖類としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム等の糖類が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記糖類の含有量は、本発明の油中水型クリーム中、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜30質量%である。
【0035】
次に、本発明の油中水型クリームの製造方法について以下に説明する。
本発明の油中水型クリームの製造方法は、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有する水相と、油相とを乳化するものである。そしてこの場合、水相は乳化成分を含有しないものであることが好ましい。
【0036】
尚、本発明における油中水型とは、連続した油相中に、水、或いは水を主体とする粒子が分散している形態を指す。具体的な乳化形態としては、W/O型のみならず、O/W/O型やO/O型をも含み、中でもバター同様の乳化形態を有する点において、O/O型の乳化形態が特に好ましい。
【0037】
以下に、本発明の油中水型クリームの製造方法を、W/O型、O/W/O型及びO/O型の各乳化形態ごとにさらに詳述する。
【0038】
先ず、W/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームの製造方法を以下に説明する。
水に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%、乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%、及び必要に応じその他の成分を添加、混合して水相を用意する。一方、油脂に、必要に応じその他の成分を添加、混合して油相を用意する。これらの水相と油相は好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが好ましい。
次いで、該水相と該油相とを混合乳化してW/O型乳化物を得る。そして、該W/O型乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、該W/O型乳化物を冷却し、可塑化して、W/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームを得る。冷却、可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
また、W/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームを製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
このようにして得られるW/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームにおいて、油相と水相との割合は、質量比率で、好ましくは40〜90:10〜60、より好ましくは50〜85:15〜50、さらに好ましくは65〜80:20〜35である。
【0039】
次に、O/W/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームの製造方法を以下に説明する。
水に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%、乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%、及び必要に応じその他の成分を添加、混合して水相を用意する。一方、油脂に必要に応じその他の成分を添加、混合した油相1(内油相)、及び油脂に必要に応じその他の成分を添加、混合した油相2(外油相)を用意する。これらの水相と油相は好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが好ましい。
次いで、上記水相と上記油相1とを混合し、乳化してO/W型乳化物を得る。次に、上記油相2中に、このO/W型乳化物を投入して、O/W/O型乳化物を得る。そして、該O/W/O型乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、該O/W/O型乳化物を冷却し、可塑化して、O/W/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームを得る。冷却、可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
また、O/W/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームを製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
このようにして得られるO/W/O型の乳化形態の油中水型クリームにおいて、油相1(内油相)と水相と油相2(外油相)との割合は、質量比率で、好ましくは25〜55:25〜55:10〜30、より好ましくは30〜50:30〜50:10〜30、さらに好ましくは35〜45:35〜45:15〜25である。
【0040】
次に、O/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームの製造方法について説明する。
O/O型の乳化形態とは、O/W/O型の乳化形態の一種であり、外油相中に、1つの内油相をもったO/W乳化物が多数存在する状態を指す。O/O型の乳化形態の油中水型クリームを製造する方法としては、例えば以下の4つの方法が挙げられる。
【0041】
1つめの方法を以下に説明する。
水に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%、乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%、及び必要に応じその他の成分を添加、混合して水相を用意する。一方、油脂に必要に応じその他の成分を添加、混合した油相1(内油相)、及び油脂に必要に応じその他の成分を添加、混合した油相2(外油相)を用意する。これらの水相と油相は好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが好ましい。
そして、上記の油相1(内油相)、水相及び油相2(外油相)を乳化し、O/W/O型乳化物を製造する。次に、該O/W/O型乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次いで、上記O/W/O型乳化物を冷却、可塑化、転相させて、O/O型の本発明の油中水型クリームを得る。冷却、可塑化、転相させる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
また、1つめの方法のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
【0042】
2つめの方法を以下に説明する。
水に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%、乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%、及び必要に応じその他の成分を添加、混合して水相を用意する。一方、油脂に、必要に応じその他の成分を添加、混合して油相を用意する。これらの水相と油相は好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが好ましい。
そして、上記水相と上記油相とを乳化してO/W型乳化物を得る。次に、O/W型乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次いで、上記O/W型乳化物を冷却、可塑化、転相させて、O/O型の本発明の油中水型クリームを得る。冷却、可塑化、転相させる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
また、2つめの方法のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
【0043】
3つめの方法を以下に説明する。
水に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%、乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%、及び必要に応じその他の成分を添加、混合して水相を用意する。一方、油脂に、必要に応じその他の成分を添加、混合して油相を用意する。これらの水相と油相は好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが好ましい。
そして、上記水相と上記油相とを乳化してW/O型乳化物を得る。次に、該W/O型乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次いで、上記W/O型乳化物を転相させてO/W型乳化物とする。転相させる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
次いで、上記O/W型乳化物を冷却、可塑化、転相させて、O/O型の本発明の油中水型クリームを得る。冷却、可塑化、転相させる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
また、3つめの方法のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
【0044】
4つめの方法を以下に説明する。
水に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%、乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%、及び必要に応じその他の成分を添加、混合して水相を用意する。一方、油脂に、必要に応じその他の成分を添加、混合して油相を用意する。これらの水相と油相は好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが好ましい。
そして、上記水相と上記油相とを乳化してW/O型乳化物を得る。次に、該W/O型乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次いで、上記W/O型乳化物を転相させてO/W/O型乳化物とする。転相させる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
次いで、上記O/W/O型乳化物を冷却、可塑化、転相させて、O/O型の本発明の油中水型クリームを得る。冷却、可塑化、転相させる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
また、4つめの方法のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
このようにして得られるO/O型の乳化形態の本発明の油中水型クリームにおいて、油相1(内油相)と水相と油相2(外油相)の割合は、質量比率で、好ましくは15〜45:35〜65:5〜35、より好ましくは20〜40:40〜60:10〜30、さらに好ましくは25〜35:45〜60:10〜25である。
【0045】
尚、上記の方法で得られた油中水型クリームに対し、さらにその他の成分を添加したり、クリーミング等の方法により含気させたりすることももちろん可能である。
【0046】
本発明の油中水型クリームの用途としては、練り込み用、フィリング用(サンド、トッピング、スプレッド、コーティング等を含む)、スプレー用、調理用等が挙げられるが、中でも、フィリング用として好適に使用でき、とくに、製菓製パン用フィリングクリームに好適に使用できる。
また、本発明の油中水型クリームの上記用途における使用量は、各用途により異なるものであり、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例により何等制限されるものではない。
【0048】
<乳清ミネラルの製造>
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は2.2質量%であった。
【0049】
〔製造例2〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルBを得た。得られた乳清ミネラルBの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
【0050】
<油中水型クリームの製造>
下記実施例1〜7及び下記比較例1〜6においては、W/O型の油中水型クリームを作製し、下記実施例8〜11においては、O/W/O型の油中水型クリームを作製した。
【0051】
〔実施例1〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂41.1質量部、コーン油28質量部、レシチン0.2質量部、香料0.1質量部、色素液0.1質量部からなる油相と、脱脂粉乳(乳蛋白質の含有量:36質量%)1質量部、上白糖14.4質量部、水14.5質量部、食塩0.2質量部、乳清ミネラルA0.4質量部からなる水相とを、45〜55℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を80℃にて15秒間殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0052】
〔実施例2〕
実施例1で使用した乳清ミネラルAに代えて、乳清ミネラルBを使用した以外は実施例1と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0053】
〔実施例3〕
乳清ミネラルBの配合量を0.4質量部から0.1質量部に変更し、併せて、水の配合量を14.5質量部から14.8質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0054】
〔実施例4〕
乳清ミネラルBの配合量を0.4質量部から1質量部に変更し、併せて、水の配合量を14.5質量部から13.9質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0055】
〔実施例5〕
脱脂粉乳の配合量を1質量部から2質量部に変更し、併せて、水の配合量を14.5質量部から13.5質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0056】
〔実施例6〕
ポリグリセリン脂肪酸エステル(ヘキサグリセリンモノオレート:SYグリスターMO5S:阪本薬品株式会社製、HLB=12、グリセリンの重合度=6)を油相に0.4質量部配合し、併せて、パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂の配合量を41.1質量部から40.7質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0057】
〔実施例7〕
実施例6で使用したポリグリセリン脂肪酸エステルを油相ではなく水相に添加し、併せて、パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂の配合量を40.7質量部から41.1質量部に、水の配合量を14.5質量部から14.1質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0058】
〔比較例1〕
乳清ミネラルBを無添加とし、併せて、水の配合量を14.5質量部から14.9質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0059】
〔比較例2〕
乳清ミネラルBを無添加とし、併せて、食塩の添加量を0.2質量部から0.6質量部に、水の配合量を14.5質量部から14.9質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0060】
〔比較例3〕
脱脂粉乳を無添加とし、併せて、水の配合量を14.5質量部から15.5質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0061】
〔比較例4〕
脱脂粉乳1質量部に代えて、ホエープロテインコンセントレート(乳蛋白質の含有量:
80質量%)2.2質量部を使用し、併せて、水の配合量を14.5質量部から13.3質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0062】
〔比較例5〕
脱脂粉乳を無添加とし、併せて、乳清ミネラルBの添加量を1質量部、水の配合量を14.5質量部から14.9質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0063】
上記実施例1〜7及び上記比較例1〜5でそれぞれ得られたW/O型の油中水型クリームを卓上ミキサーを用いて比重0.8になるまでクリーミングしたものについて試食し、口溶けについては下記の評価基準に従って7段階に、乳風味については下記の評価基準に従って5段階に風味評価を行ない、その結果を表1に記載した。
【0064】
<口溶け評価基準>
◎+:口中分散性が極めて優れ、極めて良好な口溶けである
◎:口中分散性が優れ、極めて良好な口溶けである
○+:極めて良好な口溶けである
○:良好な口溶けである
△:ややもたつきが感じられ、やや不良な口溶けである
×:口中での溶解性が悪く、不良な口溶けである
××:極めて不良な口溶けである。
【0065】
<乳風味評価基準>
◎:極めて良好な乳風味である
○:良好な乳風味である
△:やや不良な乳風味である
×:不良な乳風味である
××:乳風味がきわめて弱いかまったくしない。
【0066】
【表1】

【0067】
上記の表1からわかるように、水相中に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有する実施例1〜7の油中水型クリームは、口溶け、乳風味とも良好であることがわかる。
中でも、実施例2及び6と実施例7とを比較すると、水相中に乳化成分を含有しない実施例2及び6の油中水型クリームは、水相中に乳化成分を含有する実施例7の油中水型クリームに比べ、口溶け、乳風味ともより優れていることがわかる。
特に、実施例1と実施例2とを比較すると、カルシウム含有量の低い乳清ミネラルを使用した実施例2の油中水型クリームは、カルシウム含有量が2質量%以上である乳清ミネラルを使用した実施例1の油中水型クリームに比べ、乳風味が特に優れていることがわかる。
また、水相中の乳清ミネラル含有量が1〜2質量%である、実施例4の油中水型クリームや、油相中に主要構成脂肪酸が不飽和であり、HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを配合した実施例6の油中水型クリームは、口溶け、乳風味とも良好であることがわかる。
これに対し、乳清ミネラルを含有しない比較例1、2の油中水型クリームや、乳蛋白質含有量が水相中0.001〜2.5質量%の範囲外である比較例3、4、5は良好な乳風味が得られず、特に、乳清ミネラルを含有しない比較例1、2の油中水型クリームや、乳蛋白質含有量が水相中2.5質量%超である比較例4の油中水型クリームは口溶けも不良であった。
【0068】
〔実施例8〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂18質量部、コーン油12質量部、レシチン0.24質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(SYグリスターMO5S:阪本薬品株式会社製、HLB=11)0.4質量部からなる最内相となる油相1と、脱脂粉乳1質量部、液糖(水分25質量%)34.41質量部、水18質量部、食塩0.15質量部、乳清ミネラルA0.4質量部、香料0.35質量部からなる水相とを、50〜60℃でゆるやかに(分離しない程度に)攪拌し、次いで、この混合物をホモジナイザーに通しO/W型乳化物を得た。次に、このO/W型乳化物を、別途調製したパーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂9質量部、コーン油6質量部、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルSE−S−1170:三菱化学フーズ株式会社製、HLB=11)0.03質量部、色素液0.02質量部からなる最外相となる油相2に50〜60℃で混合し、ボテーターにて急冷可塑化することにより、内油相と水相と外油相の質量比率が31:54:15のO/W/O型の油中水型クリームを得た。尚、急冷可塑化工程において、窒素ガスを吹き込み、油中水型クリームの比重を0.7とした。
【0069】
〔実施例9〕
実施例8で使用した乳清ミネラルAに代えて、乳清ミネラルBを使用した以外は、実施例8と同様にして、内油相と水相と外油相の質量比率が31:54:15のO/W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0070】
〔実施例10〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂18質量部、コーン油12質量部、レシチン0.24質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(SYグリスターMO5S:阪本薬品株式会社製、HLB=11)0.4質量部からなる最内相となる油相1と、脱脂粉乳1質量部、スプレードライの粉末コーヒー1質量部、液糖(水分25質量%)33.64質量部、水18質量部、食塩0.07質量部、乳清ミネラルB0.3質量部、香料0.3質量部からなる水相とを、50〜60℃でゆるやかに(分離しない程度に)攪拌し、次いで、この混合物をホモジナイザーに通しO/W型乳化物を得た。次に、このO/W型乳化物を、別途調製したパーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂9質量部、コーン油6質量部、ショ糖脂肪酸エステル((リョートーシュガーエステルSE−S−1170:三菱化学フーズ株式会社製、HLB=11)0.03質量部、色素液0.02質量部からなる最外相となる油相2に50〜60℃で混合し、ボテーターにて急冷可塑化することにより、内油相と水相と外油相の質量比率が31:54:15のO/W/O型の油中水型クリームを得た。尚、急冷可塑化工程において、窒素ガスを吹き込み、油中水型クリームの比重を0.7とした。
【0071】
〔実施例11〕
実施例10で使用したスプレードライの粉末コーヒー1質量部に代えて、カカオパウダー4.5質量部に変更し、併せて、水の配合量を18質量部から15質量部に変更し、さらに、液糖を33.64質量部から33.14質量部に変更した以外は、実施例10と同様にして、内油相と水相と外油相の質量比率が31:54:15のO/W/O型の油中水型クリームを製造した。
【0072】
上記実施例8〜11でそれぞれ得られたO/W/O型の油中水型クリームを試食、口溶け、乳風味について上記実施例1〜7及び上記比較例1〜5と同一の評価基準に従って5段階に風味評価を行ない、その結果を表2に記載した。
【0073】
【表2】

【0074】
上記の表2からわかるように、水相中に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び、乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有し、水相中に、乳化成分を含有せず、また、油相中に主要構成脂肪酸が不飽和であり、HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを含有し、二重乳化型(O/W/O型)である実施例8〜11の油中水型クリームは、乳風味が良好であることはもちろん、口溶けが極めて良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相中に、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有することを特徴とする油中水型クリーム。
【請求項2】
水相中に、乳化成分を含有しないことを特徴とする請求項1記載の油中水型クリーム。
【請求項3】
上記乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が2質量%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の油中水型クリーム。
【請求項4】
油相中に、主要構成脂肪酸が不飽和であり、HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の油中水型クリーム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の油中水型クリームを製造する方法であって、乳蛋白質を0.001〜2.5質量%及び乳清ミネラルを固形分として0.001〜10質量%含有する水相と、油相とを乳化して得ることを特徴とする油中水型クリームの製造方法。

【公開番号】特開2009−195161(P2009−195161A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40289(P2008−40289)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】