説明

油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法

【課題】 油入電気機器の外箱に生じた錆部分等、漏油量が多い漏油部位においても、絶縁油の漏油を作業者の熟練度に依ることなく迅速に止めることが可能な油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法の構成は、油入電気機器(SVR100)の外箱100aに生じた錆部分100bからの絶縁油の漏油を止める油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法であって、接着性を有する粘土状の封止剤120を錆部分および錆部分の周囲に押し付け、押付を所定時間維持して封止剤を硬化させ、ゲル状の漏油防止剤130を封止剤上および封止剤の周囲に塗布し、塗布から所定時間経過させて漏油防止剤を硬化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入電気機器の外箱に生じた錆部分からの絶縁油の漏油を止めるための油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気事業者の配電設備から供給される電力は、配電系統を通じて需要家に送電されている。配電系統には、変圧器や自動電圧調整器(SVRとも称される。)などの配電用変電設備等や、短絡や地絡といった事故時に高圧配電線による送電を停止(停電)するための開閉器や遮断器等、多数の設備が接続されている。以下、上記の設備を総称して電気機器と称する。
【0003】
電気機器はその構造や絶縁方法により分類することができる。かかる電気機器として変圧器を例に挙げ絶縁方法で分類すると、絶縁材として、シリコン油等の絶縁油を用いる油入変圧器、エポキシ樹脂等の合成樹脂モールドを用いるモールド変圧器、SF(六フッ化硫黄)等のガスを用いるガス絶縁変圧器、空気を用いるH種乾式変圧器等に大別される。
【0004】
上述した油入変圧器のように絶縁材として絶縁油が用いられる油入電気機器は、これを防護するための外箱に収容され、外箱内に絶縁油が充填される。したがって、通常は外箱内に充填された絶縁油が外箱外に漏出することはない。しかし、屋外等、長期間雨水等に曝されるような厳しい環境下に設置されると、外箱に錆が生じ、そこから絶縁油が漏出するおそれがある。
【0005】
絶縁油が漏出すると、電気機器の絶縁性能の低下を招き、また漏出した絶縁油が雨水等に混入してしまう。特に、錆が進行し、外箱に錆穴が生じると、錆穴から外箱内部に雨水等が侵入し、電気機器が機能不全に陥るおそれがある。したがって、外箱に錆が発生したら、電気機器を交換するか、錆部分の補修を行い、絶縁油の漏出を防止する必要があった。
【0006】
絶縁油の漏出を防止する方法として、例えば特許文献1には、電気絶縁油を使用した油入機器(油入電気機器)における漏油に対し、漏油と反応してゲル状物質を形成するゲル化剤を漏油部位に塗布する応急処置方法が開示されている。これによれば、油入機器の漏油に対し、簡便且つ安全に応急処置を行うことができ、また、恒久処置の際に障害とならない応急処置を行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−59792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の方法は、漏油量が滲み程度の微量な漏油部位に対処するものである。このため、この方法では、錆が進行し、錆穴が開いてしまった場合等、漏油量が多い漏油部位に対処できなかった。したがって、現状において、油入電気機器の漏油量が多い漏油部位の補修に好適な方法はなく、かかる部位に対応可能な方法の開発が望まれていた。
【0009】
また特許文献1において使用しているゲル状物質は、粘度が高いため、手に纏わりつく等、作業性に優れたものではなかった。このため、かかるゲル状物質を使用した補修は、熟練者であれば容易に処置することも可能であるが、熟練者ではない作業員であると、漏油量を最小限に抑えるために早急に漏油を止める必要があるにも拘わらず、作業が困難で処置に時間を要するという課題を有していた。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、油入電気機器の外箱に生じた錆部分等、漏油量が多い漏油部位においても、絶縁油の漏油を作業者の熟練度に依ることなく迅速に止めることが可能な油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法の代表的な構成は、油入電気機器の外箱に生じた錆部分からの絶縁油の漏油を止める油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法であって、接着性を有する粘土状の封止剤を錆部分および錆部分の周囲に押し付け、押付を所定時間維持して封止剤を硬化させ、ゲル状の漏油防止剤を封止剤上および封止剤の周囲に塗布し、塗布から所定時間経過させて漏油防止剤を硬化させることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、封止剤が粘土状であるため、漏油量が多い錆部分であってもこれを封止し、絶縁油の漏れを止めることができる。すなわち錆部分からの漏油を仮止めすることができる。そして、封止剤上およびその周囲に漏油防止剤を塗布し硬化させることで、錆部分からの絶縁油の漏出を確実に止めることが可能となる。このとき、漏油防止剤がゲル状であるため、液体状の漏油防止剤を用いる場合よりも塗布量を増加させることができ、硬化後の皮膜の厚みを厚くすることができる。したがって、漏油防止剤の漏油止めの効果および耐久性をより高めることが可能となる。
【0013】
上記の封止剤を押し付ける前にさらに、錆部分の周囲を研磨して周囲の塗料を剥離するとよい。これにより、外箱の錆部分周囲の面と封止剤との密着性を向上することができる。したがって、錆部分からの絶縁油の漏出をより好適に防止することが可能となる。
【0014】
上記の封止剤を硬化させた後さらに、封止剤の周囲を研磨して周囲の塗料を剥離するとよい。これにより、外箱の封止剤の周囲の面と漏油防止剤との密着性を向上することができる。したがって、錆部分からの絶縁油の漏出をより好適に防止することが可能となる。
【0015】
上記の漏油防止剤を硬化させた後さらに、防食性を有するコーティング剤を漏油防止剤上および漏油防止剤の周囲に塗布するとよい。
【0016】
かかる構成によれば、外箱の、漏れ止めを行った部分の周囲の防食性を向上することができ、錆付きを防止することが可能となる。仮に、漏れ止めを行った部分周囲の防食性が低いと、そこに錆が生じ、再び絶縁油の漏出を招くおそれがある。したがって、漏油防止剤上およびその周囲にコーティング剤を塗布し防食性を向上することで、当該工法による漏れ止めの効果を長寿命化させることが可能となる。
【0017】
上記の封止剤は、主剤および硬化剤の2剤を混合してなるエポキシ樹脂系接着剤であるとよい。また上記の漏油防止剤は、主剤および硬化剤の2剤を混合してなるエポキシ樹脂系シーリング剤であるとよい。
【0018】
エポキシ樹脂系材料は高い防食性を有するため、当該工法に好適に用いることができる。特に、上記構成のように2剤混合型のエポキシ樹脂系接着剤およびシーリング剤は、1剤のみで構成されるエポキシ樹脂よりも高い性能を有し、且つ常温硬化するため、加熱作業等を行う必要がなく、簡便に用いることが可能である。
【0019】
上記のコーティング剤は、エポキシ樹脂系防食塗装剤であるとよい。様々な種類の防食塗装剤の中でも、エポキシ樹脂系防食塗装剤は、耐熱性、電気絶縁性等の物理的性質が優れているため好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、油入電気機器の外箱に生じた錆部分等、漏油量が多い漏油部位においても、絶縁油の漏油を作業者の熟練度に依ることなく迅速に止めることが可能であり、かつ耐久性も高い油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法を適用する電気機器を示す図である。
【図2】SVRの外箱の作業時の状態を示す図である。
【図3】SVRの外箱の作業時の状態を示す図である。
【図4】本実施形態にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は、本実施形態にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法を適用する電気機器を示す図である。配電系統には、開閉器および遮断器、変圧器等の多数の電気機器が接続されている。図1では、かかる電気機器の例として、自動電圧調整器100(SVR:Step Voltage Regulator、以下、SVR100と称する)を例示している。SVR100は、柱上変圧器の一種であり、電気事業者の配電設備(図示せず)から供給される電気の電圧が、配電系統を通じて需要家に送電される間に低下してしまった場合に、かかる電圧を再度上昇させる。図1に示すように、SVR100は、複数の電柱102間に橋架された設置台104上に設置される。
【0024】
本実施形態にかかるSVR100は油入電気機器であるため、外箱100a内には絶縁油(図示せず)が充填されている。絶縁油としては、電気絶縁油についての規格であるJIS C 2320に規定されている絶縁油AおよびBに属するものを好適に用いることができる。
【0025】
通常は上記の外箱100a外に絶縁油が漏出することはない。しかし、屋外等に設置され長期間雨水等に曝されると、外箱100aに錆100b(以下、錆部分100bと称する)が生じてしまう。すると、錆部分100bから絶縁油が漏出し、SVR100の絶縁性能の低下を招く等の不具合が発生するおそれがある。このため、外箱100aからの絶縁油の漏油が発生した場合、SVR100を交換するか、錆部分100bの補修を行う必要があった。
【0026】
しかし、SVR100の交換は、そもそも本体が高額な機器であるうえ、大掛かりな作業になるため莫大なコストと時間を要する。このため、できる限り錆部分100bの補修にて漏油を止めたいという要望があったが、従来の錆部分100bの補修方法では、漏油量が微量な漏油部位(錆部分100b)には対処できるが、漏油量が多い漏油部位には対処できないという問題があった。
【0027】
そこで、本発明は、熟練していない作業者であっても簡便且つ容易に行うことができ、また従来の方法では対処できなかった漏油量が多い漏油部位であっても迅速に漏油を止めることが可能な油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法を提供することを目的とする。以下、本実施形態にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法(以下、漏れ止め工法と称する。)について詳述する。
【0028】
図2および図3は、SVR100の外箱の作業時の状態を示す図であり、特に図1の外箱100aの錆部分100b周辺を示している。また、図3(b)、(d)、(f)は、それぞれ、図3(a)、(c)、(e)の断面図である。なお、後述する漏油検査剤110は無色であるが、理解を容易にするために、図2中ではハッチングで示している。
【0029】
当該漏れ止め工法では、錆部分100bからの絶縁油の漏れを止めるための補修剤として、封止剤120と、漏油防止剤130と、コーティング剤140を用いる。
【0030】
封止剤120は、接着性を有する粘土状の補修剤である。これにより、かかる封止剤120を錆部分100bおよびその周囲に押し付けて硬化させることで、漏油量が多い錆部分100bであっても封止することができる。したがって、錆部分100bからの漏油を仮止めすることができる。
【0031】
上記の封止剤120としては、押付時に粘土状であって速乾性(速硬性)の接着剤を好適に用いることができる。接着剤としては、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系など様々な種類があるが、なかでも高い防食性を有するエポキシ樹脂系接着剤を用いることが好ましい。特に、本実施形態においては、主剤および硬化剤の2剤を混合してなるエポキシ樹脂系接着剤を用いる。これにより、1剤のみで構成されるエポキシ樹脂を用いる場合よりも高い性能を得ることができ、且つ封止剤120を加熱作業等を行うことなく常温で硬化させることが可能となる。
【0032】
漏油防止剤130は、耐油性を有するゲル状の補修剤である。これにより、かかる漏油防止剤130を封止剤120上およびその周囲に塗布して硬化させることで、錆部分100bからの絶縁油の漏出を確実に止めることが可能となる。また漏油防止剤130がゲル状であることで、液体状の漏油防止剤を用いる場合よりも塗布量を増加させ、硬化後の皮膜の厚みを厚くすることができる。したがって、漏油防止剤130の漏油止めの効果をより高めることが可能となる。
【0033】
上記の漏油防止剤130としては、塗布時にゲル状となるシーリング剤を好適に用いることができる。シーリング剤としては、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系など様々な種類があるが、なかでもエポキシ樹脂系シーリング剤を用いることが好ましく、本実施形態においては、主剤および硬化剤の2剤を混合してなるエポキシ樹脂系シーリング剤を用いる。これにより、上記と同様の利点を得ることができる。
【0034】
コーティング剤140は、防食性を有する液状の補修剤である。これにより、かかるコーティング剤140を漏油防止剤130上およびその周囲に塗布することで、外箱100aの、漏れ止めを行った部分周囲の防食性を向上させ、錆付きを防止することが可能となる。また、特に漏油防止剤130(シーリング剤)を塗布する際に塗布部分周辺の塗料を剥離する必要があるため、露出した地金を防錆するために当該コーティング剤140が必要である。本実施形態においては、上記のコーティング剤140としてエポキシ樹脂系防食塗装剤を用いる。これにより、他の樹脂からなる防食塗装剤を用いた場合よりも高い耐熱性、電気絶縁性等の物理的性質を得ることが可能となる。
【0035】
また本実施形態では、上述した封止剤120、漏油防止剤130およびコーティング剤140に加え、漏油検査剤110を用いて、錆部分100bからの漏油の有無を確認する。これにより、錆部分100bから絶縁油が漏れているか否かを正確に判断することが可能となる。したがって、漏油がない(絶縁油が漏れていない)錆部分100bを補修する等の無駄な作業を省くことができ、作業効率の向上が図れる。
【0036】
上記の漏油検査剤110としては、絶縁油と反応して変色するものや、紫外線照射により蛍光を発する等、錆部分100bから絶縁油が漏れていた場合に作業者が視認可能な変化を示すものを用いることが好ましい。これにより、より正確に且つ迅速に漏油を確認することが可能となる。なお、本実施形態においては、絶縁油と反応して変色する漏油検査剤110を用いる。
【0037】
次に、当該漏れ止め工法の手順について詳述する。図4は、本実施形態にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法の流れを示したフローチャートである。当該漏れ止め工法では、まず漏油部位を確認するために、錆部分100bに漏油検査剤110を塗布する(S202)。詳細には、図2(a)に示す外箱100aの錆部分100bに漏油検査剤110を塗布すると、図2(b)に示す状態となる。
【0038】
そして、漏油防止剤130の変色の有無により錆部分100bからの漏油の有無を確認する(S204)。図2(b)に示す状態から変化しない場合、すなわち漏油検査剤110が変色しない場合、絶縁油の漏油がない(錆部分100bからの漏油が検知されない)ため(S204のNO)、当該工法を終了する(代わりに、不図示のさらに簡易な補修工法を実施する)。図2(b)に示す状態から図2(c)に示すように漏油検査剤110が変色した場合、絶縁油の漏れがある(錆部分100bからの漏油が検知される)ため(S204のYES)、次の手順に進む。
【0039】
漏油が検知されたら(S204のYES)、錆部分100bの周囲を研磨して周囲の塗料を剥離する(S206)。このとき、錆部分100bそのものに対して剥離作業を施してしまうと、錆部分100bに穴が生じたり、錆部分100bに穴があった場合にはそれを拡大させてしまったりするおそれがある。そのため、かかる研磨では、図2(d)に示すように、錆部分100bを避けてその周囲のみの塗装表面を荒らす程度に軽く剥離する作業を行う。これにより、外箱100aの表面の汚れ(土ぼこりや油)を除去し、錆部分100b周囲の面である剥離部分100cと封止剤120との密着性を向上することができる。その後、かかる剥離部分100cをアセトンや洗浄剤を用いて洗浄する(S208)。これにより、密着性の更なる向上が図れる。
【0040】
次に、封止剤120の主剤と硬化剤を混合し(S210)、かかる封止剤120を粘土状にする。なお、封止剤120の可使時間を踏まえると、主剤と硬化剤の混合は本実施形態のように封止剤120を用いる直前に行うことが好ましいが、これに限定するものではない。したがって、封止剤の混合(S210)は、塗料剥離(S206)の前に行ってもよいし、洗浄(S208)の前に行ってもよい。
【0041】
上記の混合した封止剤120を、錆部分100bを覆うように、錆部分100bおよびその周辺に押し付ける(S212)。これにより、図3(a)および(b)に示す状態となる。そして、押付を所定時間維持した後に、封止剤120の硬化を確認する(S214)。なお、ここでの硬化とは必ずしも完全硬化を意味するものではなく、指触乾燥、所謂タックフリーな状態も、表面が硬化したという意味でかかる硬化に含まれる。
【0042】
封止剤120が硬化していない場合(S214のNO)、押付を更に維持した後に、再度硬化を確認する(S214)。封止剤120が硬化していた場合(S214のYES)、封止剤120の周囲を研磨して周囲の塗料を剥離する(S216)。このときの剥離作業は、封止剤120周囲の塗料を完全に除去し、外箱100aの地金が露出するまで行う。これにより、図3(c)および(d)に示すように、封止剤120の周囲は、金属部分100dが露出した状態となる。したがって、外箱100aの封止剤120の周囲の面である金属部分100dと漏油防止剤130との密着性を向上することができる。その後、かかる金属部分100dをアセトンや洗浄剤を用いて洗浄する(S218)。これにより、密着性の更なる向上が図れる。
【0043】
次に、漏油防止剤130の主剤と硬化剤を混合し(S220)、かかる漏油防止剤130をゲル状にする。なお、上述した封止剤120の混合(S210)と同様に、漏油防止剤130の混合も、塗料剥離(S216)の前に行ってもよいし、洗浄(S218)の前に行ってもよい。
【0044】
上記の混合した漏油防止剤130を、封止剤120を覆うように、封止剤120上およびその周囲に塗布する(S222)。これにより、図3(e)および(f)に示す状態となる。そして、塗布後所定時間が経過したら、漏油防止剤130の硬化を確認する(S224)。なお、上述した封止剤120の硬化判断と同様に、漏油防止剤130においても、指触乾燥を基準として硬化を判断してもよい。
【0045】
漏油防止剤130が硬化していない場合(S224のNO)、更に時間が経過した後に再度硬化を確認する(S224)。漏油防止剤130が硬化していた場合(S224のYES)、コーティング剤140を漏油防止剤130上およびその周囲に塗布する(S226)。仮に金属部分100dのうち、漏油防止剤130によって覆われていない部分があったとしても、コーティング剤140によって表面に皮膜を形成し、以後の錆の再発を防止することができる。これにより、図3(g)に示す状態となり、当該漏れ止め工法における作業が終了する。
【0046】
上記説明したように、本実施形態にかかる油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法によれば、封止剤120が粘土状であるため、漏油量が多い錆部分100bであってもこれを封止し、絶縁油の漏れを止める(仮止めする)ことができる。そして、封止剤120上およびその周囲に漏油防止剤130を塗布することで、錆部分100bからの絶縁油の漏出を確実に止めることが可能となる。このとき、漏油防止剤130がゲル状であるため、液体状の漏油防止剤を用いる場合よりも塗布量を増加させ、硬化後の皮膜の厚みを厚くすることができる。したがって、漏油防止剤130の漏油止めの効果をより高めることが可能となる。また、補修に用いた材料が確実に硬化することから、補修の耐久性が高く、電気機器の次回点検または交換まで防錆性能を維持させることができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、油入電気機器の外箱に生じた錆部分からの絶縁油の漏油を止めるための油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100 …SVR
100a …外箱
100b …錆部分
100c …剥離部分
100d …金属部分
102 …電柱
104 …設置台
110 …漏油検査剤
120 …封止剤
130 …漏油防止剤
140 …コーティング剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油入電気機器の外箱に生じた錆部分からの絶縁油の漏油を止める油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法であって、
接着性を有する粘土状の封止剤を前記錆部分および該錆部分の周囲に押し付け、
前記押付を所定時間維持して前記封止剤を硬化させ、
ゲル状の漏油防止剤を前記封止剤上および該封止剤の周囲に塗布し、
前記塗布から所定時間経過させて前記漏油防止剤を硬化させることを特徴とする油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法。
【請求項2】
前記封止剤を押し付ける前にさらに、前記錆部分の周囲を研磨して該周囲の塗料を剥離することを特徴とする請求項1に記載の油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法。
【請求項3】
前記封止剤を硬化させた後さらに、該封止剤の周囲を研磨して該周囲の塗料を剥離することを特徴とする請求項1に記載の油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法。
【請求項4】
前記漏油防止剤を硬化させた後さらに、防食性を有するコーティング剤を該漏油防止剤上および該漏油防止剤の周囲に塗布することを特徴とする請求項1に記載の油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法。
【請求項5】
前記封止剤は、主剤および硬化剤の2剤を混合してなるエポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法。
【請求項6】
前記漏油防止剤は、主剤および硬化剤の2剤を混合してなるエポキシ樹脂系シーリング剤であることを特徴とする請求項1に記載の油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法。
【請求項7】
前記コーティング剤は、エポキシ樹脂系防食塗装剤であることを特徴とする請求項4に記載の油入電気機器の絶縁油漏れ止め工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−40519(P2011−40519A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185542(P2009−185542)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】