説明

油冷却器、油冷却装置および工作機械

【課題】油冷却器本体のサイズを大幅に小さく、かつ、耐圧を小さく、かつ、安価にすることができる油冷却器を提供する。
【解決手段】油冷却器本体2の上流に接続された保護弁3は、入口の圧力が一定値以下のときに開く一方、入口の圧力が一定値よりも大きいときに閉じて、油冷却器本体2を保護する。このため、アクチュエータ20,40が動作しないとき、他の油圧機器から漏れ出た油だけが油冷却器1に流れ込む。このときの油は少量であるため、保護弁3の入口の圧力は一定値以下となって、保護弁3は開く。一方、アクチュエータ20,40が動作したとき、大量の油が油冷却器1に流れ込もうとするが、このとき、保護弁3の入口の圧力は一定値よりも大きくなって、保護弁3は閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、建機、農機、工作機、射出成型機などの種々の産業機械に用いられる油を冷却する油冷却器、この油冷却器を用いた油冷却装置、および、この油冷却装置を用いた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧回路に用いられる油冷却器は、タンクラインの途中に設けられていて、タンクラインをタンクへ向けて流れる作動油の全てが流入して、その作動油を空冷または水冷で冷却するようにしていた(特開2000−249111号公報:特許文献1参照)。
【0003】
このように、上記従来の油圧冷却器には、油圧シリンダから一時的に排出される大量の返油が通過するため、この大量の返油、特に最大返油量に見合った大きなサイズになっており、かつ、大量の返油に起因するサージ圧に耐えることができるように、耐圧の高いものになっていて、高価なものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−249111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油圧回路においては、油圧シリンダが停止していて、油圧シリンダからの返油がない場合でも、タンクラインの油冷却器を、減圧弁からのドレン油、電磁弁のリーク油などに代表される少量の漏れ油が流れている。
【0006】
この漏れ油の流量は、油圧回路、油圧機器によって様々であるが、最大返油量の1/20〜1/10の場合が多い。また、油圧回路においては、タンクラインを最大返油量が流れるのは、極短い短時間の場合もある。
【0007】
そこで、この発明は、この現象に着目することによって、サイズを大幅に小さく、かつ、耐圧を小さくできて、安価にすることができる油冷却器、この油冷却器を用いた油冷却装置、および、この油冷却装置を用いた工作機械を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の油冷却器は、
油冷却器本体と、
上記油冷却器本体の上流に接続されると共に、入口の圧力が一定値以下のときに開く一方、入口の圧力が一定値よりも大きいときに閉じて、上記油冷却器本体を保護する保護弁と
を備えることを特徴としている。
【0009】
この発明の油冷却器によれば、この油冷却器の上流側の油圧シリンダ、油圧モータ等のアクチュエータが動作しないとき、例えば、圧力保持時等は、他の電磁弁、減圧弁等の油圧機器から漏れ出た油だけが油冷却器に流れ込む。このときの油は少量であるため、上記保護弁の入口の圧力は一定値以下となって、保護弁は開く。そして、漏れ出た油は、保護弁を介して、上記油冷却器本体を通過し、冷却される。
【0010】
一方、上記アクチュエータが動作したとき、大量の油が油冷却器に流れ込もうとするが、このとき、上記保護弁の入口の圧力は一定値よりも大きくなって、保護弁は閉じ、大量の油は、上記油冷却器本体を流れない。
【0011】
したがって、上記油冷却器本体の容量は、少量の油を通過させる容量であればよく、油冷却器本体のサイズを大幅に小さく、かつ、安価にすることができる。さらに、大量の返油によるサージ圧も保護弁によって油冷却器本体には侵入しないため、油冷却器本体を耐圧の低いものとできる。
【0012】
また、一実施形態の油冷却器では、上記油冷却器本体と上記保護弁との間の流路にドレンポートが設けられている。
【0013】
この実施形態の油冷却器によれば、上記油冷却器本体と上記保護弁との間の流路にドレンポートが設けられているので、ポンプ、電磁弁、減圧弁等の油圧機器のドレンラインをドレンポートに接続することで、油圧機器の高温のドレン油を直接に油冷却器本体に導いて冷却することができる。
【0014】
このように、高温の少量の漏れ油を直接に油冷却器本体に導いて、常に高温のドレン油を冷却できる。
【0015】
また、一実施形態の油冷却装置では、
上記油冷却器と、
上記油冷却器の上記保護弁の入口に上流側が接続されると共に、上記保護弁の入口の圧力が一定値よりも大きいときに開く背圧弁と
を備える。
【0016】
この実施形態の油冷却装置によれば、上記油冷却器と、上記油冷却器の上記保護弁の入口に上流側が接続される背圧弁とを備えるので、タンクへの油が少量の場合、背圧弁で背圧をかけて、油冷却器に油を導いて、油を冷却する一方、タンクへ大量の油が排出される場合には、保護弁を閉じると共に背圧弁を開いて、タンクに排出することができる。このように、背圧弁によって、油冷却器に導く油圧、油量を設定できる。
【0017】
また、一実施形態の工作機械では、
チャック部と、
このチャック部を往復動するアクチュエータと、
このアクチュエータを回転自在に支持する軸受部と、
上記アクチュエータに作動油として油を供給すると共に上記軸受部に潤滑油として油を供給する油供給部と、
上記アクチュエータおよび上記軸受部から排出される上記油が流れ込む上記油冷却装置と
を備える。
【0018】
この実施形態の工作機械によれば、上記アクチュエータが動作しないとき、すなわち圧力保持時は、軸受部から漏れ出た油が油冷却装置に流れ込む。このときの油は少量であるため、保護弁が開いて、軸受部からの油が油冷却器本体を流れる。
【0019】
この軸受部から漏れ出た油は、軸受部で受けた回転による摩擦熱と、軸受部での高圧の圧力が開放されたことによる圧力エネルギが熱に変わった圧力開放熱とを有している。
【0020】
したがって、この軸受部から漏れ出た油が油冷却器本体を流れることで、この油の大きな(高温の)摩擦熱および圧力開放熱を、効果的に冷却できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の油冷却器によれば、上記保護弁は、上記油冷却器本体の上流に接続されると共に、入口の圧力が一定値以下のときに開く一方、入口の圧力が一定値よりも大きいときに閉じて、上記油冷却器本体を保護するので、油冷却器本体のサイズを大幅に小さく、かつ、耐圧を小さくできて、安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の油冷却器および油冷却装置の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】保護弁の一例を示す簡略構成図である。
【図3】保護弁の一例を示す簡略構成図である。
【図4】保護弁の一例を示す簡略構成図である。
【図5】本発明の油冷却器および油冷却装置の第2実施形態を示す回路図である。
【図6】本発明の工作機械の一実施形態を示す簡略構成図である。
【図7】図6のP部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の油冷却器および油冷却装置の一実施形態である回路図を示している。図1に示すように、この油圧回路では、タンク11に、可変容量型の油圧ポンプ12の吸込ストレーナ13が配置されている。この可変容量型の油圧ポンプ12は、モータ14により駆動される。油圧ポンプ12のドレンラインは、冷却器15に接続され、この冷却器15は、タンク16に接続されている。冷却器15には、ファン17が設けられ、冷却器15を通過する油は、空冷される。
【0025】
上記油圧ポンプ12の吐出ライン18には、複数のアクチュエータ20,40が接続されている。油圧ポンプ12から第1アクチュエータ20までの吐出ライン18には、順に、減圧弁21およびチェック弁22が設けられ、さらに、電磁油圧切換弁23の供給ポートが接続されている。電磁油圧切換弁23の排出ポートは、戻りライン30に接続されている。
【0026】
上記減圧弁21は、下流側(2次側)の圧力が設定以上になると、下流側への供給を停止することにより、下流側の圧力上昇を防ぐ。上記チェック弁22は、上流側から下流側への流れを行い、下流側から上流側への流れを制限する。
【0027】
上記電磁油圧切換弁23の一方の出力ポートは、第1ライン24を介して、第1アクチュエータ20の一方のポートに接続されている。この第1ライン24には、可変絞り弁25およびチェック弁26が設けられている。
【0028】
上記可変絞り弁25は、下流側の流量を調整する。上記チェック弁26は、第1アクチュエータ20から電磁油圧切換弁23への流れを行い、電磁油圧切換弁23から第1アクチュエータ20への流れを制限する。
【0029】
また、電磁油圧切換弁23の他方の出力ポートは、第2ライン27を介して、第1アクチュエータ20の他方のポートに接続されている。この第2ライン27には、可変絞り弁28およびチェック弁29が設けられている。
【0030】
上記可変絞り弁28は、下流側の流量を調整する。上記チェック弁29は、第1アクチュエータ20から電磁油圧切換弁23への流れを行い、電磁油圧切換弁23から第1アクチュエータ20への流れを制限する。
【0031】
そして、上記電磁油圧切換弁23の第1位置S1への切換により、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、第1アクチュエータ20の一方のポートに供給されると共に、第1アクチュエータ20の他方のポートから吐出された作動油は、戻りライン30に、戻される。また、電磁油圧切換弁23の第2位置S2への切換により、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、第1アクチュエータ20の他方のポートに供給されると共に、第1アクチュエータ20の一方のポートから吐出された作動油は、戻りライン30に、戻される。
【0032】
上記油圧ポンプ12から第2アクチュエータ40までの吐出ライン18には、減圧弁41が設けられ、さらに、電磁切換弁42の供給ポートが接続されている。電磁切換弁42の排出ポートは、戻りライン30に接続されている。
【0033】
上記減圧弁41は、下流側(2次側)の圧力が設定以上になると、下流側への供給を停止することにより、下流側の圧力上昇を防ぐ。
【0034】
上記電磁切換弁42の一方の出力ポートは、第1ライン43を介して、第2アクチュエータ40の一方のポートに接続されている。また、電磁切換弁42の他方の出力ポートは、第2ライン44を介して、第2アクチュエータ40の他方のポートに接続されている。この第2ライン44には、パイロットチェック弁47が設けられ、このパイロットチェック弁47よりも、第2アクチュエータ40側に、可変絞り弁45およびチェック弁46が設けられている。
【0035】
上記パイロットチェック弁47のパイロット室は、第1ライン43に接続されている。パイロットチェック弁47は、パイロット圧を入れることにより逆流を可能にし、第2アクチュエータ40のピストンの落下を防止する。
【0036】
上記可変絞り弁45は、下流側の流量を調整する。上記チェック弁46は、電磁切換弁42から第2アクチュエータ40への流れを行い、第2アクチュエータ40から電磁切換弁42への流れを制限する。
【0037】
そして、上記電磁切換弁42の第1位置S1への切換により、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、第2アクチュエータ40の一方のポートに供給されると共に、第2アクチュエータ40の他方のポートから吐出された作動油は、戻りライン30に、戻される。また、電磁切換弁42の第2位置S2への切換により、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、第2アクチュエータ40の他方のポートに供給されると共に、第2アクチュエータ40の一方のポートから吐出された作動油は、戻りライン30に、戻される。
【0038】
上記戻りライン30には、上記減圧弁21や上記電磁油圧切換弁23等の油圧機器のドレンラインが接続されている。
【0039】
上記戻りライン30の下流には、油冷却装置10が接続されている。油冷却装置10は、油冷却器1と、背圧弁としてのチェック弁5とを有する。チェック弁5は、戻りライン30のメインライン31に設けられ、油冷却器1は、メインライン31のチェック弁5より上流で分岐された分岐ライン32に設けられている。
【0040】
上記メインライン31には、チェック弁5より下流側に、フィルタ6が設けられ、このフィルタ6の下流には、タンク7に接続されている。フィルタ6には、保護用のチェック弁9が取り付けられている。チェック弁9は、上流側から下流側への流れを行い、下流側から上流側への流れを制限する。
【0041】
上記油冷却器1は、油冷却器本体2と、上記油冷却器本体2の上流に接続される保護弁3とを有する。油冷却器本体2の下流には、タンク4が接続されている。油冷却器本体2には、ファン8が設けられ、油冷却器本体2を通過する油は、空冷される。
【0042】
上記保護弁3は、入口の圧力が一定値以下のときに開く一方、入口の圧力が一定値よりも大きいときに閉じて、上記油冷却器本体2を保護する。また、保護弁3の入口に、上記チェック弁5の上流側が接続され、このチェック弁5は、保護弁3の入口の圧力が一定値よりも大きいときに開く。
【0043】
このため、上記アクチュエータ20,40が動作しないとき、例えば圧力保持時等は、上記減圧弁21や上記電磁油圧切換弁23等の油圧機器から漏れ出た油だけが油冷却器1に流れ込む。このときの油は少量であるため、保護弁3の入口の圧力は一定値以下となって、保護弁3は開く。そして、漏れ出た油は、保護弁3を介して、油冷却器本体2を通過し、冷却される。
【0044】
一方、上記アクチュエータ20,40が動作したとき、大量の油が油冷却器1に流れ込もうとするが、このとき、保護弁3の入口の圧力は一定値よりも大きくなって、保護弁3は閉じ、大量の油は、油冷却器本体2を流れない。
【0045】
また、メインライン31に接続されたタンク7への油が少量の場合、チェック弁5で背圧をかけて、油冷却器1に油を導いて、油を冷却する一方、タンク7へ大量の油が排出される場合には、保護弁3を閉じると共にチェック弁5を開いて、タンク7に排出する。
【0046】
上記保護弁3の具体的な構成について説明すると、図2に示すように、保護弁3は、2位置を有する切換部31Aと、切換部31Aの上流側に配置された絞り部32Aとを有する。切換部31Aは、2位置を切り換えるスプールを有し、スプールの一端側に、絞り部32Aの上流側が接続され、スプールの他端側に、バネ33Aが設けられている。
【0047】
そして、上記絞り部32Aの上流側の圧力が、バネ33Aの圧力(一定値)以下であるとき、切換部31Aは、第1位置S1となって、保護弁3の入口と出口とを双方向に連通させる。一方、絞り部32Aの上流側の圧力が、バネ33Aの圧力(一定値)よりも大きいとき、切換部31Aは、第2位置S2となって、保護弁3の入口と出口とを、出口から入口への一方向のみ連通させる。
【0048】
上記構成の油冷却器1によれば、上記油冷却器本体2の上流に接続された保護弁3は、入口の圧力が一定値以下のときに開く一方、入口の圧力が一定値よりも大きいときに閉じて、上記油冷却器本体2を保護するので、アクチュエータ20,40が動作しないとき、他の油圧機器から漏れ出た油だけが油冷却器1に流れ込む。このときの油は少量であるため、上記保護弁3の入口の圧力は一定値以下となって、保護弁3は開く。そして、漏れ出た油は、保護弁3を介して、上記油冷却器本体2を通過し、冷却される。
【0049】
一方、上記アクチュエータ20,40が動作したとき、大量の油が油冷却器1に流れ込もうとするが、このとき、上記保護弁3の入口の圧力は一定値よりも大きくなって、保護弁3は閉じ、大量の油は、上記油冷却器本体2を流れない。
【0050】
したがって、上記油冷却器本体2の容量は、少量の油を通過させる容量であればよく、油冷却器本体2のサイズを大幅に小さく、かつ、安価にすることができる。さらに、大量の返油によるサージ圧も保護弁3によって油冷却器本体2には侵入しないため、油冷却器本体2を耐圧の低いものとできる。
【0051】
上記構成の油冷却装置10によれば、上記油冷却器1と上記チェック弁5(背圧弁)とを有するので、タンク7への油が少量の場合、チェック弁5で背圧をかけて、油冷却器1に油を導いて、油を冷却する一方、タンク7へ大量の油が排出される場合には、保護弁3を閉じると共にチェック弁5を開いて、タンク7に排出することができる。このように、チェック弁5によって、油冷却器1に導く油圧、油量を設定できる。
【0052】
次に、上記保護弁3の他の構成について、以下に2つの例を説明する。
【0053】
一つ目の例では、図3に示すように、保護弁3Bは、2位置を有する切換部31Bと、切換部31Bの上流側に配置された絞り部32Bとを有する。切換部31Bは、2位置を切り換えるスプールを有し、スプールの一端側に、絞り部32Bの上流側が接続され、スプールの他端側に、バネ33Bが設けられている。
【0054】
そして、上記絞り部32Bの上流側の圧力が、バネ33Bの圧力(一定値)以下であるとき、切換部31Bは、第1位置S1となって、保護弁3Bの入口と出口とを双方向に連通させる。一方、絞り部32Bの上流側の圧力が、バネ33Bの圧力(一定値)よりも大きいとき、切換部31Bは、第2位置S2となって、保護弁3Bの入口と出口とを双方向に連通させない。
【0055】
二つ目の例では、図4に示すように、保護弁3Cは、筒部31Cと、この筒部31Cの一端側の内部に配置された弁体32Cと、筒部31Cと弁体32Cとの間に配置されたバネ33Cとを有する。
【0056】
上記筒部31Cの他端側の内部には、弁座35Cが設けられている。上記弁体32Cの先端は、筒部31Cの弁座35Cを開閉する。バネ33Cは、弁体32Cの先端が、筒部31Cの弁座35Cを開状態とする方向に、弁体32Cを付勢している。
【0057】
上記弁体32Cには、弁体32Cの内部と、筒部31Cの弁座35Cよりも上流側の内部とを、連通する連通孔34Cが設けられている。弁体32Cの内部は、保護弁3Cの入口に連通し、筒部31Cの他端側の内部は、保護弁3Cの出口に連通する。
【0058】
そして、上記保護弁3Cの入口から弁体32Cの内部に流入した油は、弁体32Cを、バネ33Cの弾力に抵抗して、押し込む。このとき、入口から流入した油の圧力が、バネ33Cの圧力(一定値)以下であるとき、弁体32Cの先端は、筒部31Cの弁座35Cを開状態とする。このため、弁体32C内部の油は、弁体32Cの連通孔34Cと筒部31Cの弁座35Cとを通過して、出口に達する。
【0059】
一方、入口から流入した油の圧力が、バネ33Cの圧力(一定値)よりも大きいとき、弁体32C内部の油は、弁体32Cを押し込んで、弁体32Cの先端は、筒部31Cの弁座35Cを閉状態とする。このため、弁体32C内部の油は、弁体32Cの連通孔34Cを通過しても、筒部31Cの弁座35Cを通過せず、出口に達しない。
【0060】
(第2の実施形態)
図5は、この発明の油冷却器および油冷却装置の第2の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第2の実施形態では、油冷却器本体2と保護弁3との間の流路に、ドレンポート32aが設けられている。なお、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0061】
図5に示すように、油冷却器本体2と保護弁3との間のドレンポート32aに、油圧ポンプ12のドレンライン33を接続している。そして、油圧ポンプ12の高温のドレン油を油冷却器本体2で冷却する。
【0062】
このように、高温の少量の漏れ油を直接に油冷却器本体2に導いて、常に高温のドレン油を冷却できる。
【0063】
なお、油圧ポンプ12以外に、他のポンプ、電磁弁、減圧弁等の油圧機器のドレンラインをドレンポート32aに接続するようにしてもよく、油圧機器の高温の少量のドレン油を直接に油冷却器本体2に導いて冷却することができる。
【0064】
(第3の実施形態)
図6は、この発明の油冷却器および油冷却装置の第3の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第3の実施形態では、油冷却装置10を工作機械に用いている。なお、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0065】
図6に示すように、工作機械は、チャック部51と、アクチュエータ52と、軸受部53と、油供給部54と、油冷却装置10とを備える。この工作機械は、例えば、NC旋盤である。
【0066】
上記アクチュエータ52は、チャック部51を軸方向に往復動する。上記軸受部53は、ベアリング60等を介して、アクチュエータ52をアクチュエータ52の軸を中心として回転自在に支持する。上記油供給部54は、例えばポンプ等から構成され、アクチュエータ52に作動油として油を供給すると共に軸受部53に潤滑油として油を供給する。上記油冷却装置10は、上記第1または上記第2の実施形態の油冷却装置であり、アクチュエータ52および軸受部53から排出される油が流れ込む。
【0067】
上記油供給部54の吐出ライン55は、電磁切換弁56の供給ポートが接続されている。電磁切換弁56の排出ポートは、戻りライン57に接続されている。
【0068】
上記電磁切換弁56の一方の出力ポートは、軸受部53の一方のポートAに接続されている。また、電磁切換弁56の他方の出力ポートは、軸受部53の他方のポートBに接続されている。
【0069】
そして、上記電磁切換弁56の第1位置S1への切換により、油圧ポンプ12から吐出された油は、軸受部53の一方のポートAに供給されると共に、軸受部53の他方のポートBから吐出された油は、戻りライン57に、戻される。また、電磁切換弁56の第2位置S2への切換により、油圧ポンプ12から吐出された油は、軸受部53の他方のポートBに供給されると共に、軸受部53の一方のポートAから吐出された油は、戻りライン57に、戻される。
【0070】
上記戻りライン57には、上記油冷却装置10が接続され、油冷却装置10の下流に、タンク58が接続されている。
【0071】
上記軸受部53は、筒状に形成され、アクチュエータ52を外嵌する。軸受部53は、外面から内面に径方向に貫通した第1ライン61および第2ライン62を有する。第1ライン61の外面の開口部が、上記一方のポートAに相当し、第2ライン62の内面の開口部が、上記他方のポートBに相当する。
【0072】
上記第1ライン61の内面の開口部は、軸受部53の内面とアクチュエータ52の外面との間に開口すると共に、アクチュエータ52の一方のポートCに連通する。上記第2ライン62の内面の開口部は、軸受部53の内面とアクチュエータ52の外面との間に開口すると共に、アクチュエータ52の他方のポートDに連通する。
【0073】
上記アクチュエータ52は、シリンダ70と、このシリンダ70のシリンダ室70aに配置されるピストン71と、このピストン71と上記チャック部51とを連結するロッド72とを有する。
【0074】
上記シリンダ70のシャフト部70bは、上記軸受部53に外嵌される。シリンダ70のシャフト部70bは、上記ロッド72を外嵌する。ロッド72は、シリンダ70に対して周方向に位置決めされると共に軸方向に移動可能となるように、シリンダ70に取り付けられる。
【0075】
上記シリンダ70は、シャフト部70bの外面から、シリンダ室70aのピストン71にて仕切られた一方側に連通する第1ライン81と、シャフト部70bの外面から、シリンダ室70aのピストン71にて仕切られた他方側に連通する第2ライン82とを有する。
【0076】
上記第1ライン81のシャフト部70bの開口部が、上記一方のポートCに相当し、上記第2ライン82のシャフト部70bの開口部が、上記他方のポートDに相当する。第1ライン81および第2ライン82には、安全対策のためのパイロットチェック弁83が設けられている。
【0077】
そして、上記軸受部53の一方のポートAに油が供給される場合、この油は、作動油として、上記アクチュエータ52の一方のポートCから、上記第1ライン81を介して、上記シリンダ室70aの一方側に流入して、チャック部51を矢印にて示す図中左側(縮小方向)に、移動させる。このとき、シリンダ室70aの他方側から吐出される油は、上記ポートBを介して、油冷却装置10からタンク58に排出される。
【0078】
一方、上記軸受部53の他方のポートBに油が供給される場合、この油は、作動油として、アクチュエータ52の他方のポートDから、第2ライン82を介して、シリンダ室70aの他方側に流入して、チャック部51を図中右側(伸長方向)に、移動させる。このとき、シリンダ室70aの一方側から吐出される油は、上記ポートAを介して、油冷却装置10からタンク58に排出される。
【0079】
さらに、上記ポートAまたは上記ポートBから油が供給される場合、この油は、潤滑油として、上記軸受部53と上記アクチュエータ52のシリンダ70のシャフト部70bとの間に流入して、アクチュエータ52を円滑に回転させる。なお、アクチュエータ52は、図示しない機構により、回転の外力を受ける。
【0080】
ここで、図6と図7に示すように、例えば、上記ポートAから油が供給される場合、この油は、軸受部53とアクチュエータ52のシリンダ70のシャフト部70bとの間の小さな隙間を通過して、矢印に示されるように外部ドレンおよび内部ドレンとして排出される。この外部ドレンとは、直接に図示しないタンクに排出される経路をいう。この内部ドレンとは、ポートBを介して、油冷却装置10からタンク58に排出される経路をいう。
【0081】
なお、上記アクチュエータ52のロッド72の内部を、切削油が通過して、図示しない切削油用タンクへ排出される。
【0082】
上記構成の工作機械によれば、上記油冷却装置10を有するので、上記アクチュエータ52が伸縮動作しないとき、すなわち圧力保持時は、上記軸受部53から内部ドレンとして漏れ出た油が油冷却装置10に流れ込む。このときの油は少量であるため、上記第1の実施形態にて説明したように、油冷却装置10の保護弁3(図1参照)が開いて、軸受部53からの油が油冷却器本体2(図1参照)を流れる。
【0083】
この軸受部53から内部ドレンとして漏れ出た油は、軸受部53で受けた回転による摩擦熱(ベアリングと、油の粘性抵抗によるもの)と、軸受部53(軸受部53とアクチュエータ52との間の小さな隙間)での高圧の圧力が開放されたことによる圧力エネルギが熱に変わった圧力開放熱とを有している。
【0084】
したがって、この軸受部53から漏れ出た油が油冷却器本体2を流れることで、この油の大きな(高温の)摩擦熱および圧力開放熱を、効果的に冷却できる。
【0085】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記第1から上記第3の実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。また、油冷却装置において、メインラインにフィルタを設けなくてもよい。また、油冷却装置の背圧弁として、チェック弁以外に、カウンターバランス弁などを用いてもよい。また、油冷却器の油冷却器本体を、空冷以外に、水冷としてもよい。また、油冷却器および油冷却装置を、例えば、建機、農機、工作機、射出成型機などの種々の産業機械に用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 油冷却器
2 油冷却器本体
3,3B,3C 保護弁
4 タンク
5 チェック弁(背圧弁)
6 フィルタ
7 タンク
10 油冷却装置
20,40 アクチュエータ
32a ドレンポート
33 ドレンライン
51 チャック部
52 アクチュエータ
53 軸受部
54 油供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油冷却器本体(2)と、
上記油冷却器本体(2)の上流に接続されると共に、入口の圧力が一定値以下のときに開く一方、入口の圧力が一定値よりも大きいときに閉じて、上記油冷却器本体(2)を保護する保護弁(3,3B,3C)と
を備えることを特徴とする油冷却器。
【請求項2】
請求項1に記載の油冷却器において、
上記油冷却器本体(2)と上記保護弁(3,3B,3C)との間の流路にドレンポートが設けられていることを特徴とする油冷却器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油冷却器(1)と、
上記油冷却器(1)の上記保護弁(3,3B,3C)の入口に上流側が接続されると共に、上記保護弁(3,3B,3C)の入口の圧力が一定値よりも大きいときに開く背圧弁(5)と
を備えることを特徴とする油冷却装置。
【請求項4】
チャック部(51)と、
このチャック部(51)を往復動するアクチュエータ(52)と、
このアクチュエータ(52)を回転自在に支持する軸受部(53)と、
上記アクチュエータ(52)に作動油として油を供給すると共に上記軸受部(53)に潤滑油として油を供給する油供給部(54)と、
上記アクチュエータ(52)および上記軸受部(53)から排出される上記油が流れ込む請求項3に記載の油冷却装置(10)と
を備えることを特徴とする工作機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate