説明

油分離槽

【課題】コンパクトかつ簡易な構造で高い油分離効率を有し、しかも高い油分離効率を維持できる油分離槽を提供することである。
【解決手段】被処理水から比重差により油分を分離する油分離槽本体11内に、被処理水の流れを整える多孔部材18と、多孔部材18の下流側に被処理水の通過路14を形成して油を分離する仕切り板12とを設け、多孔部材18は、両端が閉じたベルト状に形成され、ローラ19a〜19dは、多孔部材18の被処理水の流れに正対する面が被処理水の流れ方向に対して傾斜するように多孔部材18を巻架し、ブラシ20は、ローラ19a〜19dにより多孔部材18が回転したときに多孔部材18に付着した油や異物を落とし、ブラシ20で落とされた油は油回収容器22に回収し、ブラシ20で落とされた異物は異物回収容器23に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水から比重差により油分を分離する重力式の油分離槽に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所構内の排水には、機械設備の潤滑油などの油が含まれている。排水を構外に放出する際に、油が含まれたまま放出すると外部の自然環境に悪影響を及ぼす恐れがあるため、油を分離してから放出する必要がある。そのため、排水を放出する前に油分離槽を通過させ、槽内で油を浮上させて分離捕集することで、構外への油の漏出を防いでいる。
【0003】
一般の産業で使用されている油分離槽としては、米国石油協会(以下APIとする、American Petroleum Institute)などの規格がある。API方式の油分離槽は、被処理水から比重差により油分を分離する重力式の油分離槽である。図5に、代表的な重力式の油分離槽の縦断面図を示す。油分離槽本体11内に仕切り板12を設置し、仕切り板12の下端と油分離槽本体11の底面13との間に通過路14を形成し、この通過路14を被処理水が通過するようにしている。
【0004】
被処理水は、流入口15から油分離槽本体11に注入された後、仕切り板12到達するまでに油分が浮上して、仕切り板12の上流側の点線で囲った油浮上域16に油分が捕集されて油が分離される。処理後の水は、排水口17から油濃度が高ければ2次処理(油フィルタによる除去、薬液処理等)に送られ、油濃度が低ければそのまま系外に放出される。
【0005】
重力式の油分離槽は構造が簡単である反面、油の分離効率が低いため、油濃度が高い場合等には油分離槽の延長が数10mに及ぶことがある。そのため、少しでも分離槽の延長を短くする試みが行われてきた。
【0006】
例えば、油分離槽で仕切り板12の下端側を通過した被処理水の油濃度を測定して、油濃度が高い場合には再度油分離槽へと循環させる再循環ラインを設けた油分離槽がある(特許文献1参照)。
【0007】
また、本出願人は、被処理水から比重差により油分を分離する油分離槽の内部に、被処理水の通過路14を形成した仕切り板12に加え、仕切り板12の上流側に被処理水が通過してその流れを整える多孔部材を設け、コンパクトかつ簡易な構造で高い油分離効率とした油分離槽を開発し、特願2010−400号として出願している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−197403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のような改良をしても、油分離槽の延長は従来の40%程度にしかならず、依然として10m以上の延長になり、狭隘な水力発電所の構内には入らない。また、図5の油分離槽を、水力発電所の構内に入るような短い延長にすると、油分離効率が低くなり、2次処理のためのコスト、時間がかかってしまう。
【0010】
さらに、油分離効率が高くても、既存の油分離槽を大幅に改良したり、複雑な別構造の油分離槽に置き換えたりすることは、設備コスト及びメンテナンスコストが増大するため好ましくない。既存の油分離槽ベースに、簡易な改良で済むことが求められている。
【0011】
本出願人の特願2010−400号のものでは、コンパクトな油分離槽であっても、高い効率で被処理水中の油分を分離できるが、油分が多い場合や長期間にわたって使用した場合には、多孔部材の表面に油や異物が付着して目詰まりを起こし、油分の分離機能が損なわれることが判明した。
【0012】
本発明の目的は、コンパクトかつ簡易な構造で高い油分離効率を有し、しかも高い油分離効率を維持できる油分離槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係る油分離槽は、被処理水から比重差により油分を分離する油分離槽本体と、両端が閉じたベルト状に形成され前記油分離槽本体内の被処理水が通過してその流れを整える多孔部材と、前記多孔部材の被処理水の流れに正対する面が被処理水の流れ方向に対して傾斜するように前記多孔部材を巻架して前記多孔部材を回転させるためのローラと、被処理水の水面より上部に位置する前記多孔部材に接触して設けられ前記ローラにより前記多孔部材が回転したときに前記多孔部材に付着した油や異物を落とすためのブラシと、前記ブラシで落とされた油を回収する油回収容器と、前記ブラシで落とされた異物を回収する異物回収容器と、前記多孔部材の下流側に配設され下端に被処理水の通過路を形成した仕切り板とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明に係る油分離槽は、請求項1の発明において、前記多孔部材が油分離槽本体の油浮上域のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域を通過するように前記多孔部材を巻架して前記多孔部材を回転させるための補助ローラと、被処理水の水面より上部に位置する前記多孔部材に接触して設けられ前記補助ローラにより前記多孔部材が回転したときに前記多孔部材に付着した油浮上域の油を落とすための補助ブラシと、前記補助ブラシで落とされた油浮上域の油を回収する補助油回収容器とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明に係る油分離槽は、請求項1または2の発明において、前記多孔部材に異物を掛止するための突起物を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明に係る油分離槽は請求項1乃至3のいずれか1項の発明において、前記多孔部材は、それぞれの孔の大きさが被処理水に含まれる油分の略最小粒径と同一であることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明に係る油分離槽は請求項1乃至4のいずれか1項の発明において、前記多孔部材は、槽底面から被処理水の水面までをカバーするように配設されることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明に係る油分離槽は請求項1乃至5のいずれか1項の発明において、前記多孔部材は、油吸着効果を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、両端が閉じたベルト状に形成された多孔部材を設け、多孔部材の被処理水の流れに正対する面が被処理水の流れ方向に対して傾斜するように多孔部材を巻架して多孔部材をローラで回転させるので、多孔部材に付着した油や異物を多孔部材から離脱させることなく被処理水の水面の上部に運搬できる。そして、多孔部材が回転したときに多孔部材に付着した油や異物をブラシで掻き落とし、ブラシで掻き落とした油を油回収容器に回収するとともに、ブラシで掻き落とした異物を異物回収容器に回収するので、多孔部材の表面に付着した油や異物を取り除くことができ、多孔部材の目詰まりを防止できる。これにより、多孔部材の油分の分離機能を損なうことなく、コンパクトな油分離槽であっても高い効率で被処理水中の油分を分離できる。
【0020】
請求項2の発明によれば、補助ローラにより多孔部材が油分離槽本体の油浮上域のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域を通過するように多孔部材を巻架して多孔部材を回転させ、補助ローラにより多孔部材が回転したときに多孔部材に付着した油浮上域の油を補助ブラシで落とし、補助ブラシで落とされた油浮上域の油を補助油回収容器に回収するので、請求項1の発明の効果に加え、油分離槽本体の油浮上域のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域に分離捕集された油も除去できる。
【0021】
請求項3の発明によれば、多孔部材に異物を掛止するための突起物を設けたので、多孔部材に付着した異物は突起物により掛止され、容易に被処理水の水面の上部に運搬できる。
【0022】
請求項4の発明によれば、多孔部材の孔の大きさは被処理水に含まれる油分の略最小粒径と同一の大きさとしたので、請求項1乃至3のいずれか1項の発明の効果に加え、被処理水の流速や多孔部材への油吸着量及び油分の細泡化の程度を適切な範囲にすることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、多孔部材は、槽底面から被処理水の水面までをカバーするように配設されるので、流入口からのすべての被処理水は多孔部材で整流され、多孔部材の下流側で被処理水の流れは通過路に向かって集中する流れとなり、比重の小さい油分は油浮上域に浮上して効率的に捕集できる。
【0024】
請求項6の発明によれば、多孔部材は油吸着効果を持つので、請求項1乃至5のいずれか1項の発明の効果に加え、油分離槽の分離効率が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る油分離槽の縦断面図。
【図2】本発明の実施の形態における多孔部材の斜視図。
【図3】本発明の実施の形態における多孔部材及びローラの他の一例の構成図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る油分離槽の縦断面図。
【図5】従来例における重力式の油分離槽の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る油分離槽を示す縦断面図である。この油分離槽は、被処理水から比重差により油分を分離する重力式の油分離槽であり、被処理水には、油濃度にかかわらず油分を含む排水全般が広く含まれる。例えば、水力発電所構内からの排水があげられる。
【0027】
油分離槽本体11の内部には、被処理水が通過してその流れを整える多孔部材18と、その多孔部材18の下流側に配設された仕切り板12とが設けられている。そして、仕切り板12の下端と油分離槽本体11の底面13とで、被処理水の通過路14を形成している。
【0028】
次に、油分離槽本体11中の被処理水の流れについて説明する。まず、被処理水は、図1の実線矢印に示すように、流入口15から油分離槽本体11内の上流側に注入されると、多孔部材18に流れ込む。その際に、後述するように、多孔部材18の油分を分離する作用により、点線矢印に示すように、被処理水中の油分の一部が浮上して油浮上域16に捕獲される。
【0029】
そして、多孔部材18に流れ込んだ被処理水は多孔部材18を通過し、これによって整流される。多孔部材18内を通過する際に、比重の小さい油分の一部が浮上して、図1の点線矢印に示すように、油浮上域16に捕集される。また、多孔部材18の内部を通過して整流された被処理水は、仕切り板12の下端と油分離槽本体11の底面13とで形成される通過路14を通過する。この際、比重の小さい油分が浮上して、図1の点線矢印に示すように、多孔部材18や仕切り板12の上流側の油浮上域16に捕集され油分が分離される。通過路14を通過した被処理水はその下流側から排水口17を通って系外に放出される。
【0030】
次に、多孔部材18は、親油性繊維を網状に編んで両端が閉じたベルト状に形成され、図1に示すように、ベルトコンベア状にローラ19a〜19dに巻架される。ローラ19a〜19dは、多孔部材18の上部が被処理水の水面より上部に位置し、多孔部材18の被処理水の流れに正対する面が被処理水の流れ方向に対して傾斜するように、ベルト状の多孔部材18を巻架している。すなわち、ローラ19a、19bは油分離槽本体11の被処理水の水面より上部において多孔部材18を支持し、ローラ19c、19dは油分離槽本体11内で多孔部材18を支持している。また、多孔部材18の表面には異物21を掛止するための突起物24が設けられている。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態における多孔部材18の斜視図である。図2に示すように、多孔部材18は、親油性繊維(例えばポリプロピレン)を網状に編んで帯状の親油性繊維網に形成され、両端が閉じたベルト状に形成されている。そして、4個のローラ19a〜19dにベルトコンベア状に巻架され、ローラ19a〜19dにより多孔部材18は回転するようになっている。
【0032】
また、ローラ19a〜19dは、多孔部材18がローラ19a〜19dに巻架されたときに、多孔部材18の被処理水の流れに正対する面が被処理水の流れ方向に対して傾斜する位置に配置されている。この傾斜は、多孔部材18の表面上に付着した油や異物を多孔部材18から容易に離脱させることのない角度θとしている。例えば、角度θは5°〜20°程度の角度としている。さらに、多孔部材18の表面には異物21を掛止するための突起物24が所定の間隔を保って設けられている。この突起部24は、油分離槽本体11内に流入した異物、例えば、落ち葉やゴミなどを掛止するものであり、図2では丸棒で形成されたものを示しているが、丸棒に限らず、角棒であってもよい。材質は多孔部材18と同じ親油性繊維を用いてもよいし、弾力性のあるスポンジを用いてもよい。このように、多孔部材18は、ベルト状に形成され、一部が油分離槽本体11内に浸漬されるので、油分離槽本体11内において間隔を保って2枚の親油性繊維網を設置したのと同等となる。
【0033】
ここで、多孔部材18は、被処理水の水面より上部に位置する多孔部材18に対して手動により駆動力を与え回転させるようにしてもよいし、被処理水の水面より上部に位置するローラ19a、19bに手動または電動機で駆動力を与え回転させるようにしてもよい。ローラ19a、19bに駆動力を与え回転させるようにした場合、多孔部材18とローラ19a〜19dとの間の摩擦力が小さいときは、多孔部材18が空回りすることがある。
【0034】
そこで、図3(a)に示すように、ローラ19の端部に掛止突起部25を設け、図3(b)に示すように、多孔部材18の端部にローラ19の掛止突起部25に係合する係合穴26を設け、ローラ19が回転したときにその掛止突起部25が多孔部材18の係合穴26と係合するようにしてもよい。この場合は、多孔部材18とローラ19a〜19dとの間の摩擦力が小さいときであっても確実に多孔部材18を回転させることができる。
【0035】
次に、図1に示すように、被処理水の水面より上部に位置する多孔部材18には、多孔部材18に接触してブラシ20が設けられている。このブラシ20は、ローラ19a〜19dの回転により多孔部材18が回転したときに、多孔部材18に付着した油や異物21を掻き落とす。ブラシ20で落とされた油は油回収容器22に回収され、ブラシ20で掻き落とされた異物21は異物回収容器23に回収される。これにより、多孔部材18の目詰まりを防止し、多孔部材の油分の分離機能を損なうことを防止できる。
【0036】
この場合、ローラ19a〜19dは、多孔部材18の被処理水の流れに正対する面が被処理水の流れ方向に対して傾斜するように多孔部材18を巻架して多孔部材18を回転させるので、多孔部材に付着した油や異物を多孔部材18から離脱させることなくブラシ20まで運搬できる。また、多孔部材18の表面には異物21を掛止するための突起物24が設けられているので、多孔部材18に付着した異物21は突起物24により掛止され、ブラシ20まで運搬できる。
【0037】
次に、多孔部材18の作用について説明する。多孔部材18は、それ自体が油フィルタとなって油分を分離する作用、多孔部材18に囲まれた領域で被処理水の流れを整え油分を浮上しやすくする作用、及び多孔部材18の下流側に流れが滞留する領域を生成して油分を捕集する作用を有する。
【0038】
まず、多孔部材18自体が油フィルタとなって油分を分離する作用について説明する。多孔部材18は油分が通過するだけでなく、その孔径が十分に小さいと多孔部材18に油分が吸着し、もしくは堰き止められて多孔部材18の上流側に油分が浮上して油分離できる。また、多孔部材18として油吸着効果を持つ材質で形成することにより、油分離量が増加するため、油分離槽全体の分離効率を向上させることができる。この際に、多孔部材18の目詰まりが発生することがあるので、多孔部材18をローラ19a〜19dにより回転させて目詰まりを防止する。
【0039】
次に、多孔部材18に囲まれた領域で被処理水の流れを整え油分を浮上しやすくする作用について説明する。多孔部材18がない場合には、被処理水の流れは油分離槽本体11の底面13に近い領域を通過して仕切り板12の下端の通過路14を通過する流れが主流となる。この場合、油分の多くは主流に乗ってそのまま通過路14を通過してしまう。一方、多孔部材18を設けると、ベルト状の多孔部材18に囲まれた領域における被処理水の流れは、油分離槽本体11の高さ方向に流速が均一化した水平方向の流れとなる。多孔部材18がない場合に油分を油分離槽本体11の下方に押し流していた流れがなくなるので、この領域では油分が浮上し易くなる。
【0040】
次に、多孔部材18の下流側に流れが滞留する領域を生成して油分を捕集する作用について説明する。多孔部材18の下流側では、流れは通過路14に向かって集中する流れとなる。流れから外れた領域では流速がほとんどゼロとなるので、この領域に油分が到達すれば、油分は流されることなく浮上して油浮上域16に捕集される。
【0041】
よって、多孔部材18を設けてこれらの3つの作用を発揮させることにより、コンパクトな油分離槽であっても、一定の油処理量を維持したままで油分離効率を向上させることができる。これらの作用が発揮できるように、多孔部材18は、油分離槽本体11の底面13から被処理水の水面までをカバーするように配設されることが好ましい。
【0042】
また、多孔部材18の各孔の大きさ(孔径)は、小さい方が好ましい。多孔部材18の孔径が小さい方が、多孔部材18への油の吸着量が増加するとともに被処理水の整流効果が高くなり、油分離効率も高まるためである。ただし、多孔部材18の孔径が小さすぎると、油が多孔部材18に吸着しすぎて目詰まりを起こす可能性もある。さらに、多孔部材18を通過した被処理水中の油分が細泡化して浮上しにくくなり、分離が困難となる場合もある。そのため、多孔部材18の各孔の大きさは、油分の略最小粒径と同一とすることが特に好ましい。このような孔の大きさとすることで、被処理水の流速、多孔部材18への油吸着量及び油分の細泡化の程度を適切な範囲にすることができる。
【0043】
油が多孔部材18に吸着しすぎて目詰まりを起こしたときは、ローラ19a〜19dにより多孔部材18を回転させて、多孔部材18の目詰まりを防止するとともに、異物21も除去する。
【0044】
このように、第1の実施の形態では、親油性繊維製の柔軟な網を多孔部材18として使用し、油や異物が付着した場合にはこの多孔部材18をベルトコンベアのように動かしてブラシ20で清掃することができるので、油や異物を容易に除去できる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係る油分離槽の縦断面図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、多孔部材18が油分離槽本体11の油浮上域16のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域を通過するように多孔部材18を巻架して多孔部材を回転させるための補助ローラ19e、19fと、補助ローラ19e、19fにより多孔部材18が回転したときに多孔部材18に付着した油浮上域16の油を落とすための補助ブラシ27と、補助ブラシ27で落とされた油浮上域16の油を回収する補助油回収容器28とを追加して設けたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0046】
図4に示すように、多孔部材18が油浮上域16のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域を通過するように、補助ローラ19eは油分離槽本体11の処理水の水面より下部に配置され、補助ローラ19fは油分離槽本体11の処理水の水面より上部に配置される。従って、多孔部材18が回転したとき、補助ローラ19eにより多孔部材18は油分離槽本体11の油浮上域16のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域に導かれ、補助ローラ19fにより多孔部材18は油分離槽本体11の被処理水の上部に導かれる。これにより、多孔部材18は油浮上域16の油を捕獲して補助ブラシ27に導く。補助ブラシ27は、多孔部材18が油分離槽本体11の油浮上域16を通過して捕獲した油を掻き落として、補助油回収容器28に回収する。これにより、油分離槽本体11の油浮上域16に分離捕集された油も除去できるので、油浮上域16に分離捕集された油の撤去作業を軽減できる。
【0047】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、多孔部材18を油分離槽本体11の油浮上域16のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域に引き回して、被処理水の水面上の油を積極的に回収するので、油除去機能を向上できる。
【符号の説明】
【0048】
11…油分離槽本体、12…仕切り板、13…底面、14…通過路、15…流入口、16…油浮上域、17…排水口、18…多孔部材、19…ローラ、20…ブラシ、21…異物、22…油回収容器、23…異物回収容器、24…突起部、25…係止突起部、26…係止穴、27…補助ブラシ、28…補助油回収容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水から比重差により油分を分離する油分離槽本体と、
両端が閉じたベルト状に形成され被処理水が通過してその流れを整える多孔部材と、
前記多孔部材の被処理水の流れに正対する面が被処理水の流れ方向に対して傾斜するように前記多孔部材を巻架して前記多孔部材を回転させるためのローラと、
被処理水の水面より上部に位置する前記多孔部材に接触して設けられ前記ローラにより前記多孔部材が回転したときに前記多孔部材に付着した油や異物を落とすためのブラシと、
前記ブラシで落とされた油を回収する油回収容器と、
前記ブラシで落とされた異物を回収する異物回収容器と、
前記多孔部材の下流側に配設され下端に被処理水の通過路を形成した仕切り板とを備えたことを特徴とする油分離槽。
【請求項2】
前記多孔部材が油分離槽本体の油浮上域のうち多孔部材が被処理水の流れと正対する部分より下流側の領域を通過するように前記多孔部材を巻架して前記多孔部材を回転させるための補助ローラと、
被処理水の水面より上部に位置する前記多孔部材に接触して設けられ前記補助ローラにより前記多孔部材が回転したときに前記多孔部材に付着した油浮上域の油を落とすための補助ブラシと、
前記補助ブラシで落とされた油浮上域の油を回収する補助油回収容器とを備えたことを特徴とする請求項1記載の油分離槽。
【請求項3】
前記多孔部材に異物を掛止するための突起物を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の油分離槽。
【請求項4】
前記多孔部材は、それぞれの孔の大きさが被処理水に含まれる油分の略最小粒径と同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の油分離槽。
【請求項5】
前記多孔部材は、槽底面から被処理水の水面までをカバーするように配設されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の油分離槽。
【請求項6】
前記多孔部材は、油吸着効果を持つことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の油分離槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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