説明

油分離装置及び油分離方法

【課題】固形分と油分とを含有する廃棄物から油分を分離させる分離量を向上させることが可能な油分離装置を提供すること。
【解決手段】油分を含有する廃棄物1が投入され、非酸性の溶液で満たされる処理槽10と、処理槽10から流入する溶液と油分との混合液から油分を分離可能な分離槽20と、処理槽10に送られる溶液にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分を含有する廃棄物から油分を分離する油分離装置及び油分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品廃棄物から肥料や飼料を生成するリサイクルが行われている。食品廃棄物が含有する油分が多いと、肥料や飼料に適切な炭素比にならないため、肥料や飼料として利用するためには、食品廃棄物に含まれる油分をリサイクルの過程で除去する必要がある。
【0003】
特許文献1には、食品残渣に水を加え高温の蒸気で洗浄することで油分を遊離させ、スクリュープレスで圧搾して油分を分離させる食品残渣の油分離方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−207295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような油分離方法では、固形分から油分をある程度分離することは可能であるが、湯水を利用しているため、油分の分離量を向上させることに限界があった。そのため、食品廃棄物から油分含油量の少ない肥料や飼料を得ることが難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、廃棄物から油分を分離させる分離量を更に向上させることが可能な油分離装置及び油分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、油分を含有する廃棄物が投入され、非酸性の溶液で満たされる処理槽と、前記処理槽から流入する溶液と油分との混合液から油分を分離可能な分離槽と、前記処理槽を満たす溶液にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、油分を含有する廃棄物が投入された処理槽は、マイクロバブルを含有する溶液で満たされる。処理槽内では、マイクロバブルが廃棄物の油分に吸着して、油分を溶液中に浮揚させる。油分を含有する処理槽内の溶液は、分離槽で油と水とに分離される。よって、廃棄物から油分を除去し、溶液から油分を分離することが可能である。マイクロバブルは、油分に吸着しやすい性質を持っているため、湯水を利用するときと比べて廃棄物からの油分の分離量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る油分離装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る油分離装置100について説明する。
【0011】
油分離装置100は、油分を含有する固形の廃棄物1から油分を除去して分離し、油分が除去された廃棄物1と、分離された油分とを共にリサイクル可能に取り出すものである。油分離装置100では、廃棄物1から油分を取り出すために、非酸性の溶液が使用される。ここでは、溶液が水である場合について説明する。
【0012】
廃棄物1は、食品残渣などの食品廃棄物であり、粉砕されて再び固められ固形になっている。食品廃棄物には油分が含まれており、食品廃棄物を肥料や飼料にリサイクルする際には、この油分を除去するか又は中和するための混ぜ物を加える必要がある。そのため、食品廃棄物の有効なリサイクルが困難だった。
【0013】
油分離装置100は、マイクロバブルを含有する水で満たされ廃棄物1が投入される処理槽10と、処理槽10から流入し油分を含有する水を、油と水とに分離可能な分離槽20とを備える。
【0014】
処理槽10は、上面が開口して形成され、廃棄物1から油分を取り除くためのタンクである。処理槽10の底面には孔12が形成され、処理槽10内には後述するマイクロバブル発生装置40が配設される。処理槽10は、孔12を通じて導入されマイクロバブル発生装置40にて発生されるマイクロバブルを含有する水で満たされる。処理槽10には、上部開口から廃棄物1が投入される。湯水を用いる場合には、水を加熱するための熱源や熱エネルギが必要であるが、マイクロバブルを含有する水は常温で用いられるため、熱源や熱エネルギが不要である。
【0015】
マイクロバブルは、液体中の微細な気泡であり、一般には、発生時の直径が数μm〜数10μm程度の気泡である。なお、直径が1μmより小さい気泡は、ナノバブルと呼ばれる。油分離装置100では、マイクロバブルとして、空気のマイクロバブルを用いている。
【0016】
マイクロバブルを発生させる方法としては、気体と液体とを高圧に加圧して気体を液体に溶解させる方法や、高速回転する液体の渦流に気体を入れ、衝突によって気体をせん断する方法などがある。通常の気泡は水面に上昇して弾けて消滅するが、マイクロバブルは、収縮しながら、通常の気泡と比べてゆっくりと上昇して大気に開放されるか、又は水中に溶解して消滅する。
【0017】
マイクロバブルは、水中でマイナスイオン化されていると考えられている。マイナスイオン化されたマイクロバブルは、マイナスに帯電しているため、マイクロバブルどうしが接触しても結合することはなく、プラスに帯電しているものに付着しやすい。一方、廃棄物1に含まれる油分は、空気や水分に触れて酸化してプラスに帯電している。よって、マイクロバブルは、廃棄物1の油分に吸着しやすい性質を持っている。
【0018】
マイクロバブルは、廃棄物1の油分に吸着し、浮力によって処理槽10の液面に浮揚する。処理槽10の液面には、水と油とが混合して溜まることとなる。マイクロバブルは、油分に吸着する際に廃棄物1の固形分と油分との間に入り込んで油分を固形分から剥ぎ取るとも考えられているため、マイクロバブルの直径はできるだけ小さいことが望ましい。
【0019】
処理槽10は、側壁部の一部を低くして形成された流出堰11を備える。この流出堰11は、分離槽20に臨んで形成される。処理槽10に供給された水は、流出堰11が形成される高さまで水位が上がると処理槽10から溢れ、流出堰11から分離槽20に流出する。処理槽10から分離槽20へは、液面に溜まった油と共に水が流入する。つまり、処理槽10は、廃棄物1の下方からマイクロバブルを含有する水を導入し、廃棄物1の上方から油分を含有する水を分離槽20に流出させる。
【0020】
分離槽20は、上面が開口して形成され、油と水との混合液を油と水とに分離させるためのタンクである。分離槽20は、処理槽10と一体に形成されるが、別体であってもよい。分離槽20内は、仕切板21によって上流槽22と下流槽23とに区画される。分離槽20内は二槽に仕切られるが、二槽に限られるものではなく、三槽以上に仕切られてもよい。
【0021】
仕切板21には、分離槽20の底部近傍に連通部としての下部開口21aが形成され、下部開口21aを通じて上流槽22と下流槽23とが連通される。
【0022】
上流槽22の液面には、比重差によって浮上した油が溜まり油層2を形成する。油層2の下には、比重差によって沈下した水が溜まる。これにより、分離槽20に流入した油と水との混合液は、油と水とに分離する。このとき、マイクロバブルは、液面から大気中に放出されたか、水に溶解して消滅したか、又は水中や油中に残存しているかのいずれかである。
【0023】
油分離装置100は、分離槽20から上流流路31を通じて回収した水を下流流路32を通じて処理槽10に供給する溶液供給装置としての渦流ポンプ30と、マイクロバブルのもととなる気体である空気を渦流ポンプ30に供給する空気供給装置41と、処理槽10に供給される水中にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置40と、渦流ポンプ30によって分離槽20から処理槽10へと供給される水が減少したときに水を補充する溶液補充装置としての補充タンク50とを更に備える。
【0024】
渦流ポンプ30は、分離槽20から上流流路31を通じて水を吸込み、下流流路32を通じて処理槽10に吐出する。渦流ポンプ30では、空気供給装置41から供給される空気と、分離槽20から吸込んだ水とが混合される。上流流路31を流れる水はマイクロバブルの含有量が少なくなっているのに対して、下流流路32を流れる水には空気供給装置41によって空気が供給されるため、空気の含有量が多い。
【0025】
補充タンク50は、上流流路31にバルブ(図示省略)を介して接続される。補充タンク50には、水が溜められており、渦流ポンプ30から供給される水の量が油分離装置100の運転中に気化することなどによって減少したときに、上流流路31に水を補充する。補充タンク50ではなく、水道などの水源に接続して水を補充してもよい。
【0026】
マイクロバブル発生装置40は、孔12を挿通する下流流路32の先端に設けられ、空気供給装置41から供給された空気をもとに、水中にマイクロバブルを発生させる装置である。マイクロバブル発生装置40は、下流流路32を通じて供給された水が含有する空気をせん断し、処理槽10に供給される水中にマイクロバブルを発生させる。
【0027】
以下、油分離装置100を用いた油分離方法について説明する。
【0028】
まず、廃棄物1を処理槽10に投入し、油分を含有する廃棄物1とマイクロバブルを含有する水とを混合する。このとき、マイクロバブルを含有する水が処理槽10内に溜まっているところに廃棄物1を投入してもよく、また、先に廃棄物1を投入してから渦流ポンプ30を作動させ、分離槽20に溜められた水を吸込みマイクロバブル発生装置40にてマイクロバブルを発生させ、処理槽10内に供給してもよい。
【0029】
処理槽10にマイクロバブルを含有する水が供給されると、マイクロバブルが廃棄物1の含有する油分に吸着し、浮力によって油分を液面に浮揚させる。これにより、廃棄物1が含有していた油分が除去される。処理槽10内の液面が、流出堰11の高さより高くなると、液面に浮揚した油と水との混合液が、流出堰11から分離槽20の上流槽22に流入する。
【0030】
上流槽22内では、油と水との混合液が比重差によって油と水とに分離される。上流槽22内には固形分が無く、水と油との液体のみが溜められている。油は水よりも比重が軽いため水の上に浮いて分離して油層2を形成し、油層2の下には水が溜まる。
【0031】
上流槽22内に溜められた水は、仕切板21の下部開口21aを通過して下流槽23に流入する。よって、下流槽23には、油は流入せず、水のみが流入することとなる。
【0032】
下流槽23に溜められた水は、渦流ポンプ30によって吸引され、上流流路31へと流入する。上流流路31を流れてきた水には、渦流ポンプ30にて空気供給装置41から空気が供給される。渦流ポンプ30から下流流路32に吐出された水は、処理槽10の孔12から処理槽10内に導入され、マイクロバブル発生装置40によってマイクロバブルが発生させられ、再び処理槽10に供給される。
【0033】
廃棄物1が処理槽10に投入されてから所定の時間が経過すると、処理槽10では、廃棄物1内に含有されていた油分が取り除かれ、分離槽20では、油と水との混合液が油と水とに分離される。これにより、廃棄物1は、油分が除去された固形分と、油とに分離される。
【0034】
廃棄物1は、取出装置(図示省略)によって処理槽10から取り出される。取り出された廃棄物1は、油分の含有量が低いため、肥料や飼料として使用するのに適している。
【0035】
また、分離槽20の油層2の油は、吸引装置(図示省略)によって分離槽20から外部に取り出され、再生燃料にされるなどリサイクルされる。
【0036】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0037】
油分離装置100では、処理槽10内にてマイクロバブルが廃棄物1に含有される油分に吸着して、浮力によって油分を液面に浮揚させる。この水と油との混合液は、分離槽20にて比重差によって油と水とに分離される。よって、廃棄物1から油分を除去できると共に、水と油との混合液から油分を抽出できる。マイクロバブルは、油分に吸着しやすい性質を持っているため、湯水を利用するときと比べて油分の分離量を向上させることができる。
【0038】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0039】
例えば、廃棄物1として食品廃棄物ではなく、金属加工時に発生した金属切削粉を投入してもよい。金属加工時には、切削油が利用されるため、金属切削粉には切削油が混合している。通常、この金属切削粉と切削油とを分離処理する際には、有機溶剤が用いられるため、環境汚染の問題が生じている。また、有機溶剤と混合した切削油をリサイクルすることは困難である。
【0040】
これに対して、油分離装置100では、水と空気のみで切削油を取り除くため、有機溶剤を用いる必要は無く、環境汚染の問題は生じない。また、金属切削粉から取り除いた切削油は、分離槽20の液面に溜まるため、これを切削油として再利用することも可能である。
【0041】
廃棄物1として金属切削粉を投入する際には、金属切削粉の間をマイクロバブルが通過できるように、金属切削粉を網状の保持具に載せた状態で処理槽10に投入する。これにより、水中のマイクロバブルが金属切削粉の隙間に入り込み、切削油を吸着して浮揚させることが可能である。
【0042】
この他にも、植物の圧搾後の更なる油の抽出、土壌に含まれる油の抽出、工場から排出される排水の油水分離などにも利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、廃棄物など油分を含有する固形分から油分を除去する装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 油分離装置
1 廃棄物
2 油層
10 処理槽
11 流出口
20 分離槽
30 渦流ポンプ
31 上流流路
32 下流流路
40 マイクロバブル発生装置
41 空気供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分を含有する廃棄物が投入され、非酸性の溶液で満たされる処理槽と、
前記処理槽から流入する溶液と油分との混合液から油分を分離可能な分離槽と、
前記処理槽を満たす溶液にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置と、を備えることを特徴とする油分離装置。
【請求項2】
前記分離槽から回収した溶液にマイクロバブルのもととなる気体を混合し、前記マイクロバブル発生装置に供給する溶液供給装置を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の油分離装置。
【請求項3】
前記溶液供給装置によって供給される溶液が減少したときに、溶液を補充可能な溶液補充装置を備えることを特徴とする請求項2に記載の油分離装置。
【請求項4】
前記分離槽は、
前記処理槽から流入する混合液を比重の違いによって溶液と油分とに分離させる上流槽と、
前記上流槽の下部の連通部から溶液が流入可能に形成される下流槽と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の油分離装置。
【請求項5】
前記処理槽は、前記廃棄物の下方からマイクロバブルを含有する溶液を導入し、前記廃棄物の上方から油分を含有する溶液を前記分離槽に流出させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の油分離装置。
【請求項6】
前記廃棄物は、食品廃棄物であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の油分離装置。
【請求項7】
前記廃棄物は、金属切削粉であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の油分離装置。
【請求項8】
前記金属切削粉は、網目状に形成された保持具に載置されて前記処理槽に投入されることを特徴とする請求項7に記載の油分離装置。
【請求項9】
非酸性の溶液にマイクロバブルを発生させ、
油分を含有する廃棄物とマイクロバブルを含有する溶液とを混合し、マイクロバブルの吸着によって前記廃棄物から油分を取り除き、溶液中に油分を浮揚させ、
油分が浮揚する溶液から油分を分離することを特徴とする油分離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−131153(P2011−131153A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292326(P2009−292326)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】