説明

油吸収体

【課題】設置場所から容易に取り出すと共に、油の吸収性能を向上させることができる油吸収体の提供。
【解決手段】油吸収体は、親油性及び極細の化学繊維を有する複数の不織布から成り、これらの複数の不織布が積層状態で形成され、毛細管現象を生じさせて油を吸収する吸油体2と、親油性及び吸油体2における不織布の化学繊維よりも高強度の化学繊維を有する不織布から成り、吸油体2の外形が保持された状態で収納する袋体1とを備え、袋体1は、下部に形成される角部1a以外の部分に複数の貫通穴3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油を吸収する油吸収体に係り、特に油の回収に好適な油吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ等の昇降機は、一般的に昇降路内に配置された乗かごと、この乗かごに主ロープを介して吊り下げられた釣合い錘と、昇降路上方に配置され、主ロープが巻き掛けられた巻上機と、昇降路内に立設され、乗かごを案内するガイドレールとを備え、巻上機が駆動することにより、乗かごがガイドレールに案内されて釣合い錘と相対的に昇降路内を昇降するようになっている。
【0003】
ここで、ガイドレールには、乗かごを円滑に昇降させるために潤滑油が塗布されている。この潤滑油は、塗布されてから時間が経過すると、自重によってガイドレールを伝わって下方へ移動し、ガイドレールの下端に溜まって垂れるので、ガイドレールの下端に垂れた潤滑油を一時的に溜める油受けを設けることにより、潤滑油がガイドレールの下端から飛散して昇降機に設置された機器等へ付着すること防止している。そして、油受けに溜まった潤滑油が溢れないように昇降機の保守点検作業を行う作業者は、油受けに溜まった潤滑油の回収作業を定期的に行っている。
【0004】
潤滑油の回収作業は、従来よりスポンジ等の潤滑油処理具によって行われ、例えば作業者が油受けに溜まった潤滑油を当該潤滑油処理具に吸収させ、潤滑油を含んだ潤滑油処理具を他の容器に移して回収処理していたが、潤滑油処理具を移す際に潤滑油処理具から吸収した潤滑油が漏洩することが問題となっていた。そこで、縦長形状の収容部を有する袋体と、この袋体の収容部に少なくともその最大膨張時に収容部の容積を超えない範囲で封入される自己膨潤型給油材とを備えた潤滑油処理具が従来より提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この潤滑油処理具は、例えば袋体をガイドレールの下端に設けられた油受けに収容し、油受けに溜まった潤滑油を袋体に詰められた自己膨潤型給油材に分子的に吸収させることにより、袋体を油受けから他の容器に移す際に内部に吸収した潤滑油が漏洩することを防止している。このとき、自己膨潤型給油材は潤滑油を吸収することによって膨張するので、袋体を縦長形状に形成することによって油受けから取り出し易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−301654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された従来技術の潤滑油処理具は、上述したように袋体が縦長形状になっているので、袋体に収容された自己膨潤型給油材は、潤滑油等の油を吸収すると袋体の形状に沿って縦方向へ膨張し易くなっているが、仮に自己膨潤型給油材が袋体の下部に敷き詰められている場合には縦方向への膨張が妨げられ易くなり、必ずしも縦方向の一方向へ膨張するとは限らない。そのため、自己膨潤型給油材が油を吸収することによって袋体の厚さ方向にも膨張することにより、厚さ方向に膨らんだ袋体が油受けとガイドレールとの間や油受けの内側で挟まり、袋体を油受け等の設置場所から取り出し難くなることが懸念されている。
【0008】
また、自己膨潤型給油材が粉体である場合には、油受けに収容された袋体はガイドレールや油受けの壁面と接触すること等によって袋体が外側から力を受けると、粉体の内部で自己膨潤型給油材の粉体が偏ることがある。このとき、油受けに溜まった油と接触する自己膨潤型給油材の表面積が小さくなるので、袋体内における自己膨潤型給油材の油の吸収速度が低下し、特に袋体が油の流入を阻害することによって油の吸収速度の低下が顕著になる問題がある。さらに、油受けに収容された袋体の設置形態によっては、袋体内における自己膨潤型給油材の自己膨潤が妨げられるので、自己膨潤型給油材の油の吸収量が低下することが問題となっている。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、設置場所から容易に取り出すと共に、油の吸収性能を向上させることができる油吸収体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の油吸収体は、親油性及び極細の化学繊維を有する複数の不織布から成り、これらの複数の不織布が積層状態で形成され、毛細管現象を生じさせて油を吸収する吸油体と、親油性及び前記吸油体における前記不織布の化学繊維よりも高強度の化学繊維を有する不織布から成り、前記吸油体の外形が保持された状態で収納する袋体とを備え、前記袋体は、下部に形成される角部以外の部分に複数の貫通穴を有することを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、吸油体を収納した袋体を油が溜まった油受け等の設置場所に設置し、袋体が油に浸されると、袋体が油を内部に吸収する。このとき、袋体に設けられた複数の貫通穴から袋体内へ油の流入が促進されるので、袋体内の吸油体に接触する油の量が増大し、吸油体が袋体内に流入した油を迅速に吸収することができる。また、吸油体は、親油性及び極細の化学繊維を有する積層された複数の不織布によって形成されているので、自己膨潤しなくても毛細管現象によって油に触れていない部分にも油を吸収することができ、油の吸収量を大幅に増大させることができる。
【0012】
さらに、吸油体に吸収された油は化学繊維に強固に吸着されるので、油を含んだ吸油体を設置場所から取り出す際に油が漏れて昇降路内に設置された機器等に飛散することを確実に抑制することができる。特に、袋体の下部に形成される角部に貫通穴を設けないので、袋体の当該角部が油だまりとして機能し、油垂れや油の流出の抑制を効果的に実現することができる。また、袋体は、化学繊維が積層された吸油体の外形を保持した状態で吸油体を収納することにより、油を吸収しても吸油体の形状が安定するので、設置場所から袋体を取り出す際に袋体が設置場所に設置された部材や機器等に引っ掛かることを抑えることができる。このように、設置場所から容易に取り出すと共に、油の吸収性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の油吸収体は、親油性及び極細の化学繊維を有する複数の不織布から成り、これらの複数の不織布が積層状態で形成され、毛細管現象を生じさせて油を吸収する吸油体と、親油性及び吸油体における不織布の化学繊維よりも高強度の化学繊維を有する不織布から成り、吸油体の外形が保持された状態で収納する袋体とを備え、袋体は、下部に形成される角部以外の部分に複数の貫通穴を有することにより、これらの貫通穴から袋体内へ油を取り入れて吸収体による毛細管現象によって油を吸収するので、袋体内の吸油体に接触する油の量が増大し、吸油体が袋体内に流入した油を迅速かつ大幅に吸収することができる。また、化学繊維が積層された吸油体の外形が袋体によって安定的に保たれるので、設置場所から袋体を取り出す際に袋体が設置場所に設置された部材や機器等から受ける抵抗を減少させることができる。これにより、設置場所から容易に取り出すと共に、油の吸収性能を向上させることができるので、従来よりも油の回収作業における作業能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る油吸収体の一実施形態の構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る油吸収体の一実施形態の構成を示す側面図である。
【図3】本実施形態の第1の使用態様を説明する図であり、袋体内の吸油体が油受けの内側に横置きに配置された状態を示す図である。
【図4】本実施形態の第2の使用態様を説明する図であり、袋体内の吸油体が油受けの内側に縦置きに配置された状態を示す図である。
【図5】本実施形態の第3の使用態様を説明する図であり、袋体内の吸油体が油受けの内側に折り曲げられて配置された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る油吸収体を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0016】
本発明に係る油吸収体の一実施形態は、例えばエレベータの昇降路内におけるガイドレールに塗布された油に適用される。具体的には、エレベータは、図示されないが、昇降路内に配置された乗かごと、この乗かごに主ロープを介して吊り下げられた釣合い錘と、昇降路上方に配置され、主ロープが巻き掛けられた巻上機と、昇降路内に立設され、乗かごを案内するガイドレールとを備え、巻上機が駆動することにより、乗かごがガイドレールに案内されて釣合い錘と相対的に昇降路内を昇降するようになっている。
【0017】
そして、ガイドレールには乗かごを円滑に昇降させるために油が塗布されており、ガイドレールの下端には、自重によってガイドレールに沿って下落した油を一時的に溜める油受けが設けられている。ここで、図3に示すようにガイドレールは、昇降路内に立設された基片7aと、この基片7aの中央線から垂直に突出され、乗かごを案内する突出片7bとから構成されており、横断面がT字型の形状を有している。一方、油受け8は、例えば上部が開放され、内側にガイドレール7の下端を収容するようになっている。従って、油受け8の内側の空間は、ガイドレール7の突出片7bによって2分割するように区画されている。なお、油受け8の内側の空間のうちガイドレール7の下端よりも下方部分は突出片7bによって区画されておらず、繋がっている(繋がっていない機種もある)。
【0018】
本発明に係る油吸収体の一実施形態は、図1、図2に示すように親油性及び極細の化学繊維を有する複数の不織布から成り、これらの複数の不織布が積層状態で形成され、毛細管現象を生じさせて油を吸収する吸油体2と、親油性及び吸油体2における不織布の化学繊維よりも高強度の化学繊維を有する不織布から成り、吸油体2の外形が保持された状態で収納する袋体1とを備えている。この袋体1は、下部に形成される角部1a以外の部分に複数の貫通穴3を有しており、後述するように種々の形態で油受け8内に収容される。
【0019】
すなわち、本実施形態は、袋体1に吸油体2を詰めたものであり、例えば袋体1に吸油体2を詰めた後に上部を熱溶着している。そして、本実施形態は、袋体1の上部のうち例えば熱溶着した部分5の下に取っ手となるタグ6を設けている。ここで、吸油体2の不織布は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−ブチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ4−メチルペンテン−1等の親油性を示す重合体から成り、平均繊維径が例えば2〜10μmの範囲の極細繊維を有している。そして、この不織布の嵩密度は、例えば0.03〜0.1g/cmの範囲に設定されている。また、吸油体2は、上述したように複数の不織布が積層状態で形成されているので、例えば直方体の形状を有している。
【0020】
袋体1の不織布は、上述した吸油体2と同様に、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−ブチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ4−メチルペンテン−1等の親油性を示す重合体から成り、平均繊維径が例えば5〜10μmの範囲の極細繊維を有している。また、袋体1の不織布の平均繊維径は、吸油体2の不織布の平均繊維径より大きく設定されており、袋体1の不織布の強度が吸油体2の不織布の強度より大きくなっている。
【0021】
ここで、袋体1の貫通穴3は、袋体1の表面に万遍なく設けられていることが好ましいが、例えば設けられ過ぎて袋体1の強度が低下したり、あるいは大きさが小さすぎてゴミ等によって塞がれないように設定されている。従って、袋体1の貫通穴3は、例えば大きさが直径3〜8mmの円形に設定されている。また、袋体1の各貫通穴3の間隔は、例えば間隔が狭すぎて袋体1が破損しないように少なくとも貫通穴3の直径の2倍以上の長さに設定されている。さらに、袋体1の不織布の厚さは、例えば0.3〜0.6mmの範囲に設定され、袋体1の不織布の嵩密度は、例えば0.03〜0.1g/cmの範囲に設定されている。
【0022】
次に、本実施形態の各使用態様を図3〜5に基づいて説明する。
【0023】
図3は本実施形態の第1の使用態様を説明する図であり、袋体内の吸油体が油受けの内側に横置きに配置された状態を示す図、図4は本実施形態の第2の使用態様を説明する図であり、袋体内の吸油体が油受けの内側に縦置きに配置された状態を示す図、図5は本実施形態の第3の使用態様を説明する図であり、袋体内の吸油体が油受けの内側に折り曲げられて配置された状態を示す図である。
【0024】
本実施形態の第1の使用態様における油受けの底面の一辺は、例えば図3に示すようにガイドレール7の基片7a及び突出片7bの幅よりも大きく設定されており、本実施形態の第1の使用態様は、2つの袋体1を油受け8の内側に横置きに設置している。従って、本実施形態の第1の使用態様は、2つの吸油体2が油受け8の内側に横置き状態で収容されており、各吸油体2は、ガイドレール7の基片7a、突出片7b、及び油受け8の側面の間に配置されている。
【0025】
また、本実施形態の第2の使用態様における油受け8の底面の一辺は、例えば図4に示すようにガイドレール7の基片7aの幅と同程度の大きさに設定され、他方の辺は、突出片7bの幅と同程度の大きさに設定されている。そして、本実施形態の第2の使用態様における油受け8の高さは、例えば図3に示す第1の使用態様における油受け8の高さよりも大きく設定されており、本実施形態の第2の使用態様は、2つの袋体1を油受け8の内側に縦置きに設置している。従って、本実施形態の第2の使用態様は、2つの吸油体2が油受け8の内側に縦置き状態で収容されており、各吸油体2は、第1の使用態様と同様にガイドレール7の基片7a、突出片7b、及び油受け8の側面の間に配置されている。
【0026】
さらに、本実施形態の第3の使用態様における油受け8の底面の一辺は、例えば図5に示すようにガイドレール7の基片7aの幅よりも大きく設定され、他方の辺は、突出片7bの幅と同程度の大きさに設定されており、本実施形態の第3の使用態様は、2つの袋体1を折り曲げて油受け8の内側に設置している。従って、本実施形態の第3の使用態様は、2つの吸油体2が油受け8の内側に屈曲された状態で収容されており、各吸油体2は、第1の使用態様と同様にガイドレール7の基片7a、突出片7b、及びの側面の間に配置されている。
【0027】
このように構成した本実施形態によれば、吸油体2を収納した袋体1を油が溜まった油受け8に設置し、袋体1が油受け8に溜まった油に浸されると、袋体1が油を内部に吸収する。このとき、袋体1に設けられた複数の貫通穴3から袋体1内へ油の流入が促進されるので、袋体1内の吸油体2に接触する油の量が増大し、吸油体2が袋体1内に流入した油を迅速に吸収することができる。また、吸油体2は、親油性及び極細の化学繊維を有する積層された複数の不織布によって形成されているので、自己膨潤しなくても毛細管現象によって油に触れていない部分にも油を吸収することができ、油の吸収量を大幅に増大させることができる。
【0028】
さらに、吸油体2に吸収された油は化学繊維に強固に吸着されるので、タグ6を持って油を含んだ吸油体2を油受け8から取り出す際に油が漏れて昇降路内に設置された機器等に飛散することを確実に抑制することができる。特に、袋体1の下部に形成される角部1aに貫通穴3を設けないので、袋体1の当該角部1aが油だまりとして機能し、油垂れや油の流出の抑制を効果的に実現することができる。また、袋体1は、化学繊維が積層された吸油体2の外形を保持した状態で吸油体2を収納することにより、油を吸収しても吸油体2の形状が安定するので、油受け8から袋体1を取り出す際に袋体1が油受け8の近傍に設置された部材や機器等に引っ掛かることを抑えることができる。さらに、吸油体8の膨らみ代を設ける必要がなく、膨らみ代が油受け8の外部に垂れ下がることもないので、吸収した油が膨らみ代を伝わって油受け8の外側に漏れることを防止することができる。このように、油受け8が配設された設置場所から容易に取り出すと共に、油の吸収性能を向上させることができるので、油の回収作業における作業能率を高めることができる。
【0029】
また、本実施形態は、袋体1及び吸油体2の不織布の平均繊維径を10μm以下の範囲に設定することにより、毛細管現象が発現し易くなり、吸収速度の低下、油の吸上げ性、及び油の保持性の低下を抑えることができる。一方、袋体1及び吸油体2の不織布の平均繊維径を2μm以上の範囲に設定することにより、繊維層が剥離して加工の際に破れたり、あるいは剥がれて取扱いが難しくなることを抑えることができる。さらに、吸油体2の不織布の嵩密度を0.1g/cm以下の範囲に設定することにより、油の吸収量の低下を抑えることができると共に、嵩密度を0.03g/cm以上の範囲に設定することにより、繊維同士の絡みが弱くなって繊維層が剥離し易くなることを抑えることができる。
【0030】
また、本実施形態は、袋体1の貫通穴3が円形に設定されているので、応力集中による破損を回避することができる。さらに、本実施形態は、袋体1の不織布の厚さを0.3〜0.6mmの範囲に設定することにより、袋体1の強度を維持しつつ袋体1内の吸油体2の柔軟性を確保することができるので、図5に示す第3の使用態様ように袋体1を折り曲げて油受け8の内側に容易に設置することができる。また、袋体1の不織布の厚さが0.6mm以下の範囲に設定されているので、製作コストも抑えることができる。
【0031】
また、本実施形態は、袋体1の不織布の嵩密度を0.03g/cm以上の範囲に設定することにより、繊維同士の絡みが弱くなって繊維層が剥離し易くなることを抑えると共に、袋体1の当該角部1aが油だまりとして機能する効果を高めることができる。そして、袋体1の不織布の嵩密度を0.1g/cm以下の範囲に設定することにより、袋体1における油の吸収速度の低下を抑えると共に、製作コストも抑えることができる。さらに、袋体1の不織布の平均繊維径は、吸油体2の不織布の平均繊維径より大きく設定されているので、吸油体2が油を吸収することによって大きな負荷がかかった場合であっても破れ難くなると共に、吸油体2に吸収された油の流出を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態は、第1の使用態様において2つの袋体1を油受け8の内側に横置きに設置することにより、吸油体2の表面と油受け8に溜まった油との接触面積が大きくなるので、吸油体2における油の吸収速度及び吸収量を向上させることができる。さらに、本実施形態は、油受け8の底面の面積が小さく、第1の使用態様のように吸油体2を油受け8の内側に横置きに配置することできない場合であっても、第2の使用態様のように袋体1を油受け8の内側に縦置きに配置したり、あるいは第3の使用態様のように袋体1を油受け8の内側に折り曲げて設置することにより、大きさの異なる油受け8に吸油体2を容易に収容させることができるので、汎用性に優れている。
【0033】
なお、上述した本実施形態は、吸油体2の不織布の平均繊維径が2〜10μmの範囲に設定された場合について説明したが、吸油体2の不織布の平均繊維径は2〜8μm、特に3〜5μmの範囲に設定されるのが好ましい。また、この場合に限らず、吸油体2の不織布の平均繊維径は2〜10μm以外の範囲に設定されても良い。さらに、吸油体2の不織布の嵩密度は、0.03〜0.1g/cmの範囲に設定された場合について説明したが、吸油体2の不織布の嵩密度は0.04〜0.09g/cmの範囲に設定されるのが好ましい。また、この場合に限らず、吸油体2の不織布の嵩密度は0.04〜0.09g/cm以外の範囲に設定されても良い。
【0034】
また、本実施形態は、袋体1の不織布の平均繊維径が5〜10μmの範囲に設定された場合について説明したが、この場合に限らず、袋体1の不織布の平均繊維径は5〜10μm以外の範囲に設定されても良い。さらに、袋体1の貫通穴3の大きさが直径3〜8mmの円形に設定された場合について説明したが、袋体1の貫通穴3の大きさは直径5〜6mmの円形に設定されるのが好ましい。また、袋体1の貫通穴3は直径3〜8mmの円形以外の形状に設定されても良い。
【0035】
また、本実施形態は、袋体1の各貫通穴3の間隔が貫通穴3の直径の2倍以上の長さに設定された場合について説明したが、袋体1の各貫通穴3の間隔は、貫通穴3の直径の3〜5倍程度の長さに設定されるのが好ましい。この場合、袋体1の各貫通穴3の間隔を貫通穴3の直径の5倍以下に抑えることにより、袋体1における油の流入をより円滑に行うことができる。さらに、袋体1の不織布の厚さが0.3〜0.6mmの範囲に設定された場合について説明したが、この場合に限らず、袋体1の不織布の厚さは0.3〜0.6mm以外の範囲に設定されても良い。また、袋体1の不織布の嵩密度が0.03〜0.1g/cmの範囲に設定された場合について説明したが、袋体1の不織布の嵩密度は0.05〜0.08g/cmの範囲に設定されるのが好ましい。また、この場合に限らず、袋体1の不織布の嵩密度は0.03〜0.1g/cm以外の範囲に設定されても良い。
【0036】
また、本実施形態は、第1〜3の使用態様において2つの袋体1をエレベータにおける昇降路内のガイドレールに設けられた油受け8の内側に設置した場合について説明したが、この場合に限らず、ガイドレール7以外の場所に設けられた油受け等に設置しても良い。従って、様々な形態の油を効率的に吸収・回収することに利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 袋体
1a 角部
2 吸油体
3 貫通穴
6 タグ(取っ手)
7 ガイドレール
7a 基片
7b 突出片
8 油受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性及び極細の化学繊維を有する複数の不織布から成り、これらの複数の不織布が積層状態で形成され、毛細管現象を生じさせて油を吸収する吸油体と、
親油性及び前記吸油体における前記不織布の化学繊維よりも高強度の化学繊維を有する不織布から成り、前記吸油体の外形が保持された状態で収納する袋体とを備え、
前記袋体は、下部に形成される角部以外の部分に複数の貫通穴を有することを特徴とする油吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−224457(P2012−224457A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95234(P2011−95234)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】