説明

油吸着材

【課題】油の吸着機能に優れ取り扱いの容易な油吸着材を提供する。
【解決手段】油吸着シートを折り重ねて積層状とし、少なくとも1つのポケット部を構成させ、形状保持体2を、折り重ねて積層状にした油吸着シートの表面と裏面に設けた後、これらの折り重ねられた油吸着シートと形状保持体を、例えば縫製等により一体化させることにより、ポケット部が油が入りこむ容積部となり、油の濃淡にかかわらず収納し、間隙の摩擦で油を附着保有する油吸着材が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油吸着材に係り、さらに詳細には船舶の座礁や衝突、石油タンク、製油所などにおける事故、その他海上、河川、湖沼などに流出した油を附着・吸着除去したり、各種廃水の流入やその他の原因で水上や水中に浮遊する油を附着・吸着除去するのに用いる油吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油の拡散を防止するために油の流出域をオイルフェンスなどで囲繞してから、その囲繞域内に溜まった油を油吸着材を用いて吸着して除去することが広く行われている。
【0003】
その具体的な方法としては油吸着材を有する合成繊維および/または天然繊維よりなる油吸着シートを1枚ずつそのまま油による汚染現場に投入して油吸着シートに油を吸着させた後、その油吸着シートをそのまま1枚ずつ人手により水域より引き上げて回収する方法、あるいは油吸着シートを万国旗状にロープなどに多数取り付けたものを油の汚染現場に投入して油を吸着させ、吸着後ロープを機械や人手で引き上げて回収する方法、さらには油吸着シートを複数枚重ね合わせ、重ね合わせた該複数枚の油吸着シート間にポケット部を形成させてそれらを上下に接合した油吸着材であって、かかる油吸着材を一つの単位として、それを1本または2本以上の線状体にその長さ方向に沿って複数単位取り付けてなる連結形式の油吸着材が知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−192152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら油吸着シート単体で使用する場合安価であるが油吸着能が十分でなく、そのために水域に多量の油が流出した場合には油を十分に吸着して回収することができなかった。しかも油を吸着した油吸着シートはその重量がかなり重くなっているために、一枚一枚回収する際、含油分が重力で漏落する等、その機能性に問題があり、且つ作業に手間がかかる等の欠点があった。
また万国旗状の油吸着材は、油吸着シートがロープに巻き付いたりして油の浮いている場所に円滑にしかも均一に分布しないと言う欠点がある。
さらに特許文献1の油吸着材は、油吸着シート間のポケット部を形成するために、線状体を取り付けるときにポケット部を形成させた状態で取り付けなければならないので製作が極めて困難であり、また油を吸着した後回収する際に油が漏出する欠点があった。
そこで本発明者は、極めて簡単に製作でき、かつ油吸着能力が高く、かつ油吸着後の回収に際しても油吸着材から油の漏出のない油吸着材について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、油吸着シートを折り重ねてポケット部を形成し、この折り重ねた油吸着シートに形状を保持するための形状保持体を設けた油吸着材を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油吸着材は、一枚の油吸着シートにより構成されていることから油の吸着速度が速く、かつポケット部があるので油吸着シートの重ね積層した間に高濃度の油も附着・保油することができる。また、油を吸着した後油吸着材を引き上げる時に油の漏出がポケットがあるので極めて少ない。更に油流出区域から油の流れ出しを防止することができると共に油吸着材の油吸着量も従来より向上する利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
本発明は、図1に示すように一枚の油吸着シートを折り重ねて積層状とする。この時に積層状とした油吸着シートの前後にそれぞれ少なくとも1つのポケット部が構成されることが好ましい。図2は図1のA方向からみた側面図である。図1のように折り重ねた状態の油吸着シート1に図3に示す例えば布製のテープのような形状保持体2を、折り重ねて積層状にした油吸着シート1の表面と裏面に、油吸着シートの折れ線部3に対して略90°になるように設けた後これらの形状保持体2を例えば縫製等により折り重ねられた油吸着シートと一体化させることにより油吸着材が構成される。この場合表面および裏面に設けられた形状保持体2を縫製する場合図4に示すように、形状保持体2にロープ等を通す連通部4を少なくとも1箇所設けることが好ましい。
このようにして製作された油吸着材を使用する場合例えばこの連通部4にロープを通して多数の油吸着材を数珠状にして使用することができる。
【0009】
また形状保持体2を設ける他の態様としては、折り重ねられた油吸着シートの両縁部近傍を油吸着材の折れ線部3と平行に設けることもできる。
【0010】
さらに形状保持体2がホッチキス、接着剤等のようなものであればランダムに任意の箇所を固定して油吸着シートを折り重ねた状態に保持することもできる。また図5に示すようなクランプ5で挟み、クランプ5の先端部をリングで止めて保持固定することもできる。この時に適宜クランプ5に、ロープ等を挿通するためのリング等を必要な数だけ入れてクランプ5を固定することもできる。そしてこのリングにロープ等を通せば油吸着材を数珠状に連ねることができる。また図6に示すように予めクランプ5に挿通部4を一体的に設けてもよい。
【0011】
また本発明の油吸着材は、図7に示すように、形状保持体2を複数個所に設けることによってポケット部6を複数に分画できるので油を吸着した油吸着材を回収するために引き上げた場合、油の漏出をさらに防止することができる。また形状保持体2は図8に示すように折り重ねた油吸着シートにジグザク状に設けることもできる。このポケット部は、油が入れこむ容積部で、油の濃淡にかかわらず収納し、間隙の摩擦で油を附着保有する特徴がある。
このようにポケット部6を複数に分画する場合その分画部は完全に密封にした状態に区分する必要はなく、例えばホッチキス、接着剤、縫製、溶着等によって部分的に固定し、ある程度区画部に隙間があってもよい。
【0012】
本発明の油吸着材は、さらに他の使用方法として図9に示すようにネット7で油吸着材を例えば一列に並べて被包するようにして用いることもできる。この場合油吸着材を互に連接して設けてもよいが油吸着材との間に間隔を設けるようにすることもできる。その場ネット中で油吸着材がずれない様に例えばホッチキス、接着剤、縫製、溶着のような適宜の固定手段を用いて固定することが好ましい。
【0013】
また油吸着材の連結方法としては特許文献1に記載されたような長尺物の形状保持体2を用いて油吸着材を連結状とすることもできる。
【0014】
本発明の油吸着材に用いられる油吸着シートはその厚さも特に制限されるものではなく、油吸着材の使用目的や使用態様に応じて調整することができる。一般に一枚の油吸着シートの厚さを2〜50mm程度にすると、油吸着材の製造の容易性や取り扱い性などに利点がある。また油吸着シートの形状は、方形、円形、楕円形などの形状にしておくことができるが、方形の油吸着シートを用いるのが油吸着材の製造の容易性や油吸着能などの点から好ましい。方形の油吸着シートを用いる場合は、正方形であっても長方形であってもよく、一般に、一辺の長さを約30cm〜130cm程度の範囲にしておくのが、油吸着材の製造時の作業性、得られる油吸着材の取り扱い性などの点から好ましい。
【0015】
本発明の油吸着シートの代表例としては、ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維やその他の油吸着性の合成繊維、綿、パルプなどの天然繊維、それらの混合繊維などを用いて形成されている不織布状、編織状の布綿シート、紙状物などからなるシート、あるいはそれらのシートを親油性界面活性剤やその他の親油性向上剤で処理して得られた油吸着シートなどを挙げることができる。本発明においては、特にポリプロピレン繊維で作られた油吸着シート(例えばチッソポリプロハイセパーレ)を用いると、形状保持体で固定した場合、素材の持つ反発力によって油吸着材にポケット部6の間隙部を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】油吸着シートを折り重ねた状態を示す斜視図
【図2】図1のA方向から見た側面図
【図3】油吸着材を示す斜視図
【図4】形状保持体を設けた状態を示す斜視図
【図5】クランプの側面図
【図6】他の態様を示すクランプの側面図
【図7】形状保持体を複数本設けて分画された複数のポケット部を有する油吸着材の斜視図。
【図8】形状保持体をジグザク状に設けて複数のポケット部を有する油吸着材の斜視図。
【図9】油吸着材を連接した状態でネットで被包された油吸着材
【符号の説明】
【0017】
1・・・・油吸着シート
2・・・・形状保持体
3・・・・折れ線部
4・・・・連通部
5・・・・クランプ
6・・・・ポケット部
7・・・・ネット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油吸着材シートを折り重ねてポケット部を形成し、この折り重ねた油吸着シートに形状を保持させる形状保持体を設けたことを特徴とする油吸着材。
【請求項2】
ポケット部を複数に区画してなる請求項1記載の油吸着材。
【請求項3】
請求項1または2記載の油吸着材の複数個をネットで被包することを特徴とする油吸着材。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−75833(P2010−75833A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246622(P2008−246622)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000229162)日本ソリッド株式会社 (39)
【Fターム(参考)】