説明

油圧オートカプラ破損防止機構

【課題】 棒鋼を切断するコールドシャーを作動する油圧作動油が流れなくなることのない油圧オートカプラの防止機構を提供することである。
【解決手段】 外筒シリンダー3の前端口4を窄めて外筒シリンダー3の筒内周5に設けたポペット弁6の弁座7と、弁座7とポペット弁6の当接部8の後方のポペット弁6の外周斜面9に設けたポペット弁6の弁内通路10と弁外通路11の連通口12と、外筒シリンダー3の筒周5に設けた弁座7と当接するポペット弁6を、後端で弾発するスプリング13と、その後端を受ける環状スペーサー14と、外筒シリンダー3の内周面に後方から嵌合する環状筒体15aを有するフランジ15からなり、ポペット弁6とスプリング13と環状スペーサー14を環状筒体15aのフランジ15により外筒シリンダー3の後端から締め付けて支持する油圧オートカプラ2の作動油流動停止防止機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧作動油を流して通す油圧装置の油圧回路の圧力源側と駆動機器側とを接続する装置である油圧カプラ、特に自在に抜き差しして接続する油圧オートカプラの破損防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
脱着操作が頻繁に必要な油圧装置において、油圧回路の圧力源側と駆動機器側との接続を簡便に行うための装置として、従来から油圧カプラが使用されている。特に、油圧回路を接続する際に、手動によるカプラ接続作業を必要とせず、自在に抜き差しできるものを油圧オートカプラと呼んでいる。
【0003】
この従来から使用されている油圧オートカプラは、雄、雌の2種類からなっており、凸型で差し込み側の雄カプラと、凹型で受け側の雌カプラで1組のカプラとなっている。この従来のオートカプラの構造は、図5に示すように、凸型の外筒シリンダー3である雄シリンダー3aおよび凹型の外筒シリンダー3である雌シリンダー3bのそれぞれの中で、油圧作動油を閉止するポペット弁6と、ポペット弁6を外筒シリンダー3に押し付けるスプリング13と、環状スペーサー14と、これらの抜け止めであるリング状のスナップリング25とで構成されている。このリング状のスナップリング25は外筒シリンダー3の雄シリンダー3aおよびメスシリンダー3bの内壁内に円周状に彫り込んで設けた環状溝穴に嵌合されており、リング状のスナップリング25の内径部は環状スペーサー14の内壁面近くに突出して、スプリング13で押された環状スペーサー14の後端を受け止めている。このような構造からなる油圧オートカプラはその雄カプラである雄シリンダー3aと雌カプラであるメスシリンダー3bの接続により、それぞれのポペット弁6の先端をスプリング13で押し合い、そのスプリング13の中立位置で釣り合うことで、それぞれのポペット弁6を開いて油圧作動油を流す構造となっている。これらの雄シリンダーと3aと雌シリンダー3bの非接合時には、スプリング13の押し付けにより、ポペット弁6が外筒シリンダー3の先端部の内壁側の端部と当接して閉止し、油圧作動油が流れなく構成されている。なお、図5における雄シリンダー3aとメスシリンダー3bの接合時における油圧作動油の流れを、接合された外筒シリンダー3内の矢印で示している。この場合は油圧作動油は雌シリンダー3bから雄シリンダー3aの方に流れるものとしているが、この逆に油圧作動油を流れるようにしてもよい。
【0004】
従来の油圧カプラとしては、脱着車両の油圧カプラ自動接続装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このものは、コンテナ搭載台に対しコンテナを着脱自在に搭載し、車体側の油圧回路とコンテナ側の油圧回路とを、油圧カプラを介して接続可能としたもので、振動吸収装置をカプラに設けることにより、車両の走行時の振動による油圧カプラの破損を防止するものとなっている。しかし、この油圧カプラ自動接続装置は、ポペット弁が閉止して油圧作動油を流れなくなった状態を改善するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−274249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスナップリングを有する油圧オートカプラでは、油圧オートカプラを接続する際、スプリングによる押し付け力はカプラ内のスナップリングに掛かっている。また、油圧作動油が流れる際の圧力や流速による油圧オートカプラに掛かる衝撃荷重も、ポペット弁、スプリングおよび環状スペーサーの後方の抜け止めであるスナップリングに掛かる。このようにスナップリングには荷重が掛かるため、スナップリングの破損や脱落が起こって、雄オートカプラと雌オートカプラの各スプリングに対する押し付け力のバランスが崩れ、ポペット弁が閉止状態となる。その結果、油圧カプラに油圧作動油が流れなくなる。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、棒鋼を切断するコールドシャーを作動する油圧作動油が流れなくなることのない構造の油圧オートカプラの機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者は鋭意研究して、油圧作動油が流れなくなることを防止するために、既存の従来の作動油停止防止機構である油圧オートカプラにおいて、その外筒シリンダー、ポペット弁、スプリングおよび環状スペーサーはそのまま残し、スナップリングの嵌まっていた環状溝穴は残し、スナップリングのみを廃止し、その代わりに外筒シリンダーの筒内に嵌まり込む環状筒体を有するフランジを外筒シリンダーの後端に配設し、環状スペーサー、スプリングおよびポペット弁を確実に保持して固定し得るものとした構造の油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構を創出した。また製作当初からスナップリングを嵌合する環状溝孔の無い、したがってスナップリングも無い構造からなり、このスナップリングに代わる機構として上記の油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構を適用するものとした。
【0009】
すなわち、上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、この油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構は、外筒シリンダーの前端口を窄めて外筒シリンダーの筒内周に配設したポペット弁の弁座と、ポペット弁の弁座とポペット弁との当接部の後方に位置するポペット弁の外周斜面に設けたポペット弁の弁内通路と弁外通路との連通口と、外筒シリンダーの筒内周に配設した弁座と当接するポペット弁をポペット弁の後端に位置して弾発するスプリングと、該スプリングの後端を受ける環状スペーサーと、外筒シリンダーの内周面に後方から嵌合する環状筒体を有するフランジからなっている。そして、これらのポペット弁とスプリングと環状スペーサーを、環状筒体を有するフランジにより外筒シリンダーの後端から、締め付けて支持して、油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構としている。
【0010】
請求項2の発明では、外筒シリンダーの内周面に後方から嵌合する環状筒体は、この環状筒体の後端のフランジの中央に、油圧作動油の通過孔を有していることを特徴とする請求項1の手段の油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構である。
【0011】
請求項3の発明では、中央に油圧作動油の通過孔を有する環状筒体の後端のフランジは、フランジの前面と外筒シリンダーの後端との接触面に環状溝穴を有し、この環状溝孔に、作動油漏洩防止用のOリングを嵌合して有することを特徴とする請求項2の手段の油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の手段とすることで、棒鋼を切断するコールドシャーの作動油の供給機構において、本発明による油圧オートカプラを適用した場合、年に約40万回の圧力負荷の繰返しと約360回の脱着動作の下で、これまで故障することなく作動するという、優れた作用効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のカップリング前の雌雄の油圧オートカプラの側面図で、ポペット弁を除く部分は断面で示している。
【図2】図1に示す雌雄の油圧オートカプラの接合後の側面図である。
【図3】本発明の基本的な雄の油圧オートカプラを示す断面図である。
【図4】本発明の外筒シリンダーと環状筒体を有するフランジを専用治具で取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】従来の既存のスナップリングを有する油圧オートカプラの雌雄の外筒シリンダーの接合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照して以下に説明する。本発明の手段の油圧オートカプラ2の作動油流動停止防止機構1は、図1に示すように、外筒シリンダー3の前端口4を窄め、外筒シリンダー3の筒内周5に配設したポペット弁6の弁座7と、ポペット弁6の弁座7とポペット弁6の当接部8の後方に位置するポペット弁6の外周斜面9に設けたポペット弁6の作動油の弁内通路10と、弁内通路10からでた作動油の弁外通路11の連通口12と、外筒シリンダー3の筒内周5に配設した弁座7と当接するポペット弁6をポペット弁6の後端に位置して弾発するスプリング13と、このスプリング13の後端を受ける環状スペーサー14と、外筒シリンダー3の筒内周5に後方から嵌合する環状筒体15aを有するフランジ15からなっている。これらのポペット弁6とスプリング13と環状スペーサー14は環状筒体15aを有するフランジ15により外筒シリンダー3の後端から締め付けられて支持されている。
【0015】
さらに、このフランジ15からその垂直方向に突出する環状筒体15aの長さは、外筒シリンダー3の後方に取り付けたフランジ15から外筒シリンダー3に従来配設されていたスナップリング25を除去した後の環状溝穴23の箇所までの長さとする。環状筒体15aを有するフランジ15と外筒シリンダー3を一体に組み立てた時、この油圧オートカプラ2における外筒シリンダー3内のスプリング13の圧縮長さは、スナップリング25を有する従来の油圧オートカプラ2のスプリング13の圧縮長さと変わらないものとする。
【0016】
ところで、このフランジ15からその垂直方向に突出する環状筒体15の長さは、上記の長さに代えて、環状筒体15の長さを短くし、その短くした分だけ、環状スペーサー14の長さを伸ばして調節することも可能である。
【0017】
外筒シリンダー3の後端面と環状筒体15aを有するフランジ15の当接面に、油圧作動油の漏洩を防止するために、Oリング18を外筒シリンダー3の後端面に設けた環状溝穴17に嵌合している。
【0018】
また、フランジ15の内径の大きさは、油圧作動油の流れを阻害しないように環状スペーサー14の内径と略同じ大きさの径からなるものとし、フランジ15の中心軸を環状スペーサー14の中心軸と同一の中心として配置することが望ましい。この場合、フランジ15の環状筒体15aの外周面は外筒シリンダー3の内周面に嵌まり込む大きさの径を有するものとし、この環状筒体15aの内周内の孔16を油圧作動油が通過する経路としている。
【0019】
さらに、図1の左に示す油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの先端部の外周面には環状溝穴17を設け、この環状溝穴17にOリング18を嵌合している。この図1の左側の外筒シリンダー3のOリング18を2条にすることにより、図1の右側の外筒シリンダー3から左前方へ伸びているカップ状部3fの内壁に嵌合して、図2に示すように、油圧オートカプラ2として雄シリンダー3aを雌シリンダー3bに接続した際の密封性を高めている。すなわち、図1の右側に示す油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雌シリンダー3bの先端は、左側に示す雄シリンダー3aの先端に外から嵌まり得る内径を有するカップ状部3fとなって雄シリンダー3aの先端の方へ伸びている。
【0020】
さらに、この環状筒体15aの後端部のフランジ15を外筒シリンダー3へ取付けて固定する方法によると、スプリング13やポペット弁6を確実に保持固定することができ、さらにスプリング13の押付け力や油圧作動油の通過による衝撃力に耐えることもできる。この場合、油圧作動油の漏洩防止が可能であるならば、どの様な方法によってもかまわない。例えば、外筒シリンダー3へ環状筒体15aを有するフランジ15を固定する方法は、図1の左側に示す外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの場合、雄シリンダー3aの後方部の周囲に一体的に突出する後方のフランジ3cを設け、この外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの後方のフランジ3cを油圧オートカプラ2の環状取付板24の前面に当接し、専用治具20で後方のフランジ3cの前部を保持して環状取付板24の方へ挟持し、ボルト19で固定している。そこで、環状筒体15aを有するフランジ15の前面を直接に環状取付板24の背面にボルト19により固定する方法と、上記した専用治具20を環状取付板24の前面に押し付けて雄シリンダー3aの後端部のフランジ3cを挟持して保持する方法とを採用することにより、環状筒体15aを有するフランジ15の前面を外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの後面に当接して密閉できる。この密閉を確実にするために、外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの後端面に環状溝孔17を設けてOリング18を嵌合している。この環状溝17とOリング18は、外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの後端面に設ける代わりに、環状筒体15aを有するフランジ15の前面に設けることもできる。
【0021】
さらに図1の右側に示すように、外筒シリンダー3の雌シリンダー3bの固定では、雌シリンダー3bの前方部(すなわちこの図の左側)の周囲に一体的に突出する前方のフランジ3dを設け、この外筒シリンダー3の雌シリンダー3bの前方のフランジ3dを油圧オートカプラ2の環状取付板24の前面(すなわちこの図の左側)に当接し、専用治具20で前方のフランジ3dの前部を保持して環状取付板24の方へ挟持し、ボルト19により専用治具20と環状取付板24を固定する。一方、外筒シリンダー3の雌シリンダー3bの後端(すなわちこの図の右側)に周囲に一体的に突出する後端部のフランジ3eを形成する。この後端部のフランジ3eの背面に環状筒体15aを有するフランジ15の前面を当接し、後端部のフランジ3eとフランジ15をボルト19で固定して保持する。
【0022】
以上の図1に示す油圧オートカプラ2では、外筒シリンダー3の雄シリンダー3aおよび雌シリンダー3bは共に環状取付板24に取り付けられて設けられている。したがって、左右の油圧オートカプラ2を合体させるときは、これらの油圧オートカプラを左右の環状取付板24毎に取り扱って、外筒シリンダー3の雄シリンダー3aを、図2に示すように、雌シリンダー3bのカップ上部3bに挿着して接続する。この挿着により左右のポペット弁6の先端は互いに当接して均等に押し合い、この結果、左右のポペット弁6はそれぞれ背部のスプリング13を後方へ押して縮め、それぞれのポペット弁6の外周斜面9と外筒シリンダー先端内の弁座7の当接部8を、図1から図2に示すように、開けて間隙を設け、この間隙に油圧作動油を通す流通路としている。例えば、図2の右の油圧オートカプラ2から左の油圧オートカプラ2に油圧作動油を通す場合は、右の油圧オートカプラ2の環状筒体15aを有するフランジ15の後端の油送管取付ねじ15bに図示しない油送管を接続し、一方、左の油圧オートカプラ2の環状筒体15aを有するフランジ15の後端の油送管取付ねじ15bに同じく図示しない油送管を接続し、右の油送管からフランジ15の環状筒体15aに油圧作動油を流す。油圧作動油は右の油圧オートカプラ2の環状スペーサー14内および縮んだスプリング13内を流れて右のポペット弁6の弁内通路10を通って、このポペット弁6の外周斜面9に開口する連通口12から右のポペット弁6の弁外通路11を通って、雌シリンダー3bの外筒シリンダー先端のカップ状部3fの弁座7の周囲の間隙を経て、左の油圧オートカプラ2の雄シリンダー3aの先端から雄シリンダー3aの外筒シリンダー先端の弁座7の周囲の間隙を経て左のポペット弁6の弁外通路11を通ってこのポペット弁6の外周斜面9に開口する連通口12から、左のポペット弁6の弁内通路10に流入し、左のポペット弁6の後端から縮んだスプリング13内および環状スペーサー14内を流れてさらに左側の環状筒体15aを有するフランジ15の後端の環状筒体15aに取り付けた図示しない油送管に油圧作動油を送給する。
【0023】
図1の右側に示す、油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの形状から環状取付板24を省いて、図3に示すように、雄シリンダー3aの後端にシリンダー3aから垂直方向に拡径した後方フランジ3cを設け、この後方フランジ3cの後面に環状溝孔17を設けてOリング18を嵌合し、この後面に環状筒体15aを有するフランジ15の前面を当接してボルト19で両者を接合して油圧オートカプラ3の雄部とすることもできる。この場合は、油圧オートカプラ3の雌部として、図1の右の油圧オートカプラ2の雌部から環状に突出している前方フランジ3dを省き、この前方フランジ3dを挟持している押さえ具である専用治具20および環状取付板24を省略して外筒シリンダー3の雌シリンダー3bとする。なお、この外筒シリンダー3の雌シリンダー3bは図示を省略している。
【0024】
さらに他の実施例である油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雄シリンダー3aの形状を図4に示す。この油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雄シリンダー3aは、その後端にフランジ15を挟んで背部から前方に押し付ける押さえ部20aをカップ状の専用治具20として配設し、この押さえ部20aと外筒シリンダー3の後端面との間に環状筒体15aを有するフランジ15を挟持し、押さえ部20aとしての専用治具20のカップ状の環状部の内周面に設けたねじ21を外筒シリンダー3の後端部の外周面に設けたねじ22にねじ螺合して、環状筒体15aを有するフランジ15を外筒シリンダー3の後端部へ固定している。この場合も、上記したように、図1の右の油圧オートカプラ2の雌部から環状に突出している前方フランジ3dを省き、この前方フランジ3dを挟持している押さえ具である専用治具20および環状取付板24を省略して外筒シリンダー3の雌シリンダー3bとしている。この場合も外筒シリンダー3の雌シリンダー3bは図示を省略している。
【0025】
この雄シリンダー3aをメスシリンダー3bに挿着して接続した場合に、図2に示すように、左右のポペット弁6、6が左右の弁座7、7に当接することなく均一な間隙を設けて油圧作動油を通すため、図示しないが、左右の環状取付板24、24の下部に、互いに中央方向に向いた油圧装置、例えば油圧シリンダーを設けて、これらの油圧シリンダーの均一な押圧力で左右の環状取付板24、24の間隙を一定に保持できるものとしている。また図2のように左右の環状取付板24、24を有しない、図3や図4に示すものでは、雄シリンダー3aの先端部を図示しない雌シリンダー3bのカップ状部3fに挿着して、図2と同様にして、左右のポペット弁6、6が左右の弁座7、7に当接することなく均一な間隙を設けて油圧作動油を通すために、図示しない、これらの左右の雄シリンダー3aと雌シリンダー3bの間の間隙を一定に保つために、左右の雄シリンダー3aと雌シリンダー3bの間を例えば図示しない一定長の鎖などの手段を設けて係止するものとする。
【0026】
ところで、従来の手段の油圧オートカプラ2では、図5に示すように、外筒シリンダー3の内径内において、外筒シリンダー3の後端から適宜位置にスナップリング25を嵌め込むための環状溝穴23を外筒シリンダー3の内径面に設け、この環状溝穴23にスナップリング25を嵌め込んで、このスナップリング25の前部に環状スペーサー14を配設し、この環状スペーサー14の前部にスプリング13の後端を当接し、スプリング13によりポペット弁6の後端を前方に押して、ポペット弁6が後方へ押されて移動しない様にしていた。この従来の油圧オートカプラ2では、図5に示すように、外筒シリンダー3の雄シリンダー3aおよびメスシリンダー3bの後端には作動油の油送管を接続するねじ穴を有する油送管係合リング26がボルトなどで係合されている。ところで、図示していないが、作動油の油送管を接続するねじ穴を有する油送管係合リング26を別体で有することなく、当初から外筒シリンダー3の雄シリンダー3aおよびメスシリンダー3bの後端に作動油の油送管を接続するねじ穴を一体に設けているものもある。
【0027】
これに対して、本発明の手段の油圧オートカプラ2では、上記した実施の形態の手段の3手段の中いずれかの1手段に示すように、従来の装置には無かった環状筒体15aを有するフランジ15を新しく設け、従来のスナップリング25を無くして、スナップリング25のあった位置まで環状筒体15aの先端を配設し、この環状筒体15aの先端に環状スペーサー14を配設し、さらに、この環状スペーサー14の先端をスプリング13の後端に当接している。そして、この環状スペーサー14の先端でスプリング13を前方に押圧してポペット弁6の後端を前方に押すことにより、ポペット弁6が後方へ移動しないようにしている。
【0028】
上記したように、従来の油圧オートカプラ2では、ポペット弁6が後方へ移動してスプリング13を押圧することによって、環状スペーサー14が押圧されたスプリング13により後方へ移動させられないように、スナップリング25で阻止していた。しかし、本発明の手段では、環状筒体15aを有するフランジ15を設けることで、従来のスナップリング25を使用しないものとしている。したがって、ポペット弁6からスプリング13を介して環状スペーサー14に掛かる押圧力がスナップリング25に掛かって、スナップリング25が外れて脱落する事態を生じることがない。したがって、油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雄シリンダー3aと雌シリンダー3bの押圧力のバランスが崩れて、ポペット弁6が閉止状態となって、油圧作動油が流れなくなる事態の発生が無くなる。この結果、ポペット弁6が正常に機能することで安定して油圧作動油を流通させることができる。
【0029】
上記した図1、図2および図3では、Oリング18を挿着する環状溝穴17は外筒シリンダー3の後端部に設けて、この環状溝穴17にOリングを18を嵌合して外筒シリンダー3の後端部と環状筒体15aを有するフランジ15の間を圧密している。しかし、すでに図1において記載したように、Oリング18を挿着する環状溝穴17を外筒シリンダー3の後端部に設ける代わりに、環状筒体15aを有するフランジ15の前面に、図示していないが、Oリング18を挿着する環状溝穴17を設けても良い。
【0030】
以上の実施の形態の手段では、従来のスナップリング25を有する油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雄シリンダー3aとメスシリンダー3bから、このスナップリング25を除去して、その外筒シリンダー3の雄シリンダー3aとメスシリンダー3bを有効に活用する構造からなる油圧オートカプラ2を用いて本発明の環状筒体15aを有するフランジ15をスナップリング25の機構に置き換えて適用するものであった。しかし、このように従来のスナップリング25の機構に置き換えるものとは異なり、当初から、本発明の環状筒体15aを有するフランジ15を適用するための、スナップリング25用の環状溝穴23を有しない構造の油圧オートカプラ2の外筒シリンダー3の雄シリンダー3aとメスシリンダー3bを製作し、これを環状筒体15aを有するフランジ15と組み合わせて、油圧オートカプラ2からなる作動油流動停止防止機構とすることが出来ることはいうまでもない。
【0031】
棒鋼を切断するコールドシャーにおいて、このコールドシャーを油圧で作動するために作動油を流す油圧オートカプラ2の使用状況では、年間に約40万回の作動回数の圧力負荷を繰返し、かつ、360回の油圧オートカプラ2の着脱動作を行っている。このような状況の下で、従来型の油圧オートカプラ2では年に平均で5回の故障をひき起こしていた。しかし、本発明による油圧オートカプラ2に改善した後は、このような作動回数の圧力負荷の繰返しと油圧オートカプラ2の着脱動作の下における故障は未だに発生していない。
【符号の説明】
【0032】
1 作動油流動停止防止機構
2 油圧オートカプラ
3 外筒シリンダー
3a 雄シリンダー
3b 雌シリンダー
3c 後方フランジ
3d 前方フランジ
3e 後端部のフランジ
3f カップ状部
4 前端口
5 筒内周
6 ポペット弁
7 弁座
8 当接部
9 外周斜面
10 弁内通路
11 弁外通路
12 連通口
13 スプリング
14 環状スペーサー
15 フランジ
15a 環状筒体
15b 油送管取付ねじ
16 孔
17 環状溝穴
18 Oリング
19 ボルト
20 専用治具
20a 押さえ部
21 ねじ
22 ねじ
23 環状溝穴
24 環状取付板
25 スナップリング
26 油送管係合リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒シリンダーの前端口を窄めて外筒シリンダーの内周に配設したポペット弁の弁座と、ポペット弁の弁座とポペット弁との当接部の後方に位置するポペット弁の外周斜面に設けたポペット弁の弁内通路と弁外通路との連通口と、外筒シリンダーの筒内周に配設した弁座と当接するポペット弁をポペット弁の後端に位置して弾発するスプリングと、該スプリングの後端を受ける環状スペーサーと、外筒シリンダーの内周面に後方から嵌合する環状筒体を有するフランジと、これらのポペット弁とスプリングと環状スペーサーを環状筒体を有するフランジにより外筒シリンダーの後端から締め付けて支持していることを特徴とする油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構。
【請求項2】
外筒シリンダーの内周面に後方から嵌合する環状筒体は、該環状筒体の後端のフランジの中央に油圧作動油の通過孔を有することを特徴とする請求項1に記載の油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構。
【請求項3】
中央に油圧作動油の通過孔を有する環状筒体の後端のフランジは、フランジの前面と外筒シリンダーの後端との接触面に環状溝穴を有し、該環状溝孔に作動油漏洩防止用のOリングを嵌合して有することを特徴とする請求項2に記載の油圧オートカプラの作動油流動停止防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−241840(P2012−241840A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114285(P2011−114285)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】