説明

油圧制御装置

【課題】構造の複雑化や部品点数の増加を抑制しつつストレーナをバルブボディとオイルパンとの間に安定かつ容易に固定する。
【解決手段】複数の油路を有するバルブボディ21と、バルブボディ21に組み込まれるソレノイドバルブ30と、バルブボディ21の下方に配置されて作動油を貯留するオイルパン60と、バルブボディ21とオイルパン60との間に配置されると共にオイルパン60から吸引される作動油を濾過する濾材を有するストレーナ70とを備えた油圧制御装置20において、ストレーナ70は、少なくとも1体の磁石40の磁力によりオイルパン60に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の油路を有するバルブボディと、バルブボディの下方に配置されて作動油を貯留するオイルパンと、バルブボディとオイルパンとの間に配置されると共にオイルパンから吸引される作動油を濾過する濾材を有するストレーナとを備えた油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧制御装置としては、制御バルブが組付けられたバルブボディと、バルブボディに付与される油を収容するオイルパンと、オイルパンの内部に配設されると共にオイルパンから吸い上げられる油を濾過するフィルタを有するストレーナ装置とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この油圧制御装置では、ストレーナ装置がバルブボディにボルトを用いて取外し可能に取付けられている。また、この種の油圧制御装置として、ケーシングの底部に固定されたバルブボディと、バルブボディの下面に開口する油路をシールする油路シール板と、バルブボディの下面側に配置されるオイルストレーナと、バルブボディおよびオイルストレーナの下面側を覆うと共に作動油を貯留するオイルパンとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この油圧制御装置では、オイルストレーナの上面に設けられた複数の取付爪を油圧シール板に係合すると共に底面に設けられた突起部をオイルパンに当接させることで、ボルト等の締結具を用いることなくオイルストレーナを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−94671号公報
【特許文献2】特開2000−249214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載の油圧制御装置のように、ストレーナ装置をバルブボディにボルトを用いて固定するのは、部品点数の増加や組付け工数の増加を招いてしまうため好ましくない。また、(樹脂製のストレーナ装置を用いた場合には、ボルト締結部が破損するおそれもある。更に、)特許文献2に記載の油圧制御装置のように、ストレーナ装置に取付爪等を設けてボルトを用いることなくストレーナ装置をバルブボディ等に固定しても、油圧制御装置の構造が複雑化してしまい、結果的に部品点数の増加や工数の増加を招くおそれがある。
【0005】
本発明の油圧制御装置は、構造の複雑化や部品点数の増加を抑制しつつストレーナをバルブボディとオイルパンとの間に安定かつ容易に固定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の油圧制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の油圧制御装置は、複数の油路を有するバルブボディと、前記バルブボディに組み込まれるソレノイドバルブと、前記バルブボディの下方に配置されて作動油を貯留するオイルパンと、前記バルブボディと前記オイルパンとの間に配置されると共に前記オイルパンから吸引される作動油を濾過する濾材を有するストレーナとを備えた油圧制御装置であって、
前記ストレーナは、少なくとも1体の磁石の磁力により前記オイルパンに固定されることを特徴とする。
【0008】
本発明の油圧制御装置では、オイルパンからの作動油を濾過するためのストレーナが少なくとも1体の磁石の磁力によりオイルパンに固定される。これにより、構造の複雑化やボルト等の締結具を用いた場合のような部品点数の増加を抑制しつつストレーナをバルブボディとオイルパンとの間に安定かつ容易に固定することができる。また、本発明の油圧制御装置では、ストレーナをオイルパンに固定するための磁石によりオイルパン内の作動油に含まれる金属粉といった異物を捕捉することも可能となる。なお、磁石は、オイルパンとストレーナのオイルパン側の部分との双方に吸着するものであってもよく、両者の何れかに固定(接着)されて他方に吸着するものであってもよい。
【0009】
また、前記ストレーナは、前記濾材を収容するハウジングを有するものであってもよく、前記ハウジングの前記オイルパン側の底部は、該ハウジング内に凹部を画成するように前記オイルパンに向けて突出する凸部を含むものであってもよく、前記磁石は、前記凸部と前記オイルパンとの間に配置されるものであってもよい。
【0010】
このように、ストレーナのハウジングの底部に設けられた凸部とオイルパンとの間に磁石を配置すれば、磁石を低背化すると共にオイルパンとストレーナとの間隔をより適正に設定することが可能となる。また、ハウジングの凸部とオイルパンとの間に配置された磁石の磁力が凸部の裏側すなわちハウジング内の凹部側に作用する場合には、ストレーナのハウジング内の作動油に含まれる金属粉といった異物を磁石の磁力により吸引して凹部内に留めておくことが可能となる。
【0011】
更に、前記ハウジングの少なくとも前記凸部は、磁性体により形成されていてもよい。これにより、ハウジングの凸部とオイルパンとの間に配置された磁石の磁力を凸部の裏側すなわちハウジング内の凹部側により強力に作用させて、ストレーナのハウジング内の作動油に含まれる金属粉といった異物を磁石の磁力でより強力に吸引して凹部内により確実に留めておくことが可能となる。
【0012】
更に、前記磁石は、前記オイルパンへの作動油流入部と前記ストレーナの作動油入口とを結ぶ直線上に配置されないものであってもよい。これにより、磁石によってオイルパン内の作動油の流れが妨げられることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る油圧制御装置20を示す説明図である。
【図2】油圧制御装置20の要部を示す断面図である。
【図3】オイルパン60が取り外された状態にある油圧制御装置20を下側から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る油圧制御装置20を示す説明図である。実施例の油圧制御装置20は、例えば、自動車に搭載された図示しないエンジンからの動力を駆動軸(プロペラシャフト)に伝達する自動変速機やデファレンシャルギヤ等と共に動力伝達装置を構成するものであり、自動変速機の変速制御等に用いられる。実施例の油圧制御装置20は、図示しない複数の油路を有するバルブボディ21と、このバルブボディ21に組み込まれて当該バルブボディ21の油路と共に油圧回路を構成する複数のソレノイドバルブ30と、自動変速機の全体を制御するための図示しない制御モジュールと、磁性体である金属等の板材(例えば鋼板)からなると共に作動油(ATF)を貯留するオイルパン60と、オイルポンプ25によりオイルパン60から吸引される作動油を濾過して自動変速機やデファレンシャルギヤ等で生じる金属粉といった異物等を除去するストレーナ70等とを備える。
【0016】
バルブボディ21には、図1に示すように、それぞれソレノイドバルブ30が挿入されると共に対応したソレノイドバルブ30の弁部とバルブボディ21内の油路とを連通させる複数のバルブ挿入部22や、それぞれ対応した油圧スイッチと連通する複数の油圧導入孔(図示省略)、パーキングシリンダが挿入されるシリンダ挿入部(図示省略)等が形成されている。
【0017】
ソレノイドバルブ30には、図示しないエンジンにより駆動されるオイルポンプ25によって発生された油圧(ライン圧)を調圧して自動変速機の図示しない複数のクラッチ(ブレーキ)側に送出するリニアソレノイドバルブと、作動油の供給先の切替を行う図示しないリレーバルブに駆動用の圧力信号を出力するオンオフソレノイドバルブとが含まれる。また、各ソレノイドバルブ30には、制御モジュールと電気的接続に供される図示しないバルブ側コネクタが取り付けられている。制御モジュールは、要求された変速状態が実現されるようにソレノイドバルブ30等(油圧回路)を駆動制御する。
【0018】
ストレーナ70は、ハウジング71と、ハウジング71の内部に収容されて作動油を濾過可能なスクリーン(濾材)72とを含み、バルブボディ21とオイルパン60との間に配置される。ハウジング71は、図1に示すように、それぞれ磁性体である金属等の板材(例えば鋼板)により形成された上側ハウジング73と下側ハウジング75とからなる。上側ハウジング73は、バルブボディ21に形成された作動油吸引口21iに嵌合される作動油出口73oを有する。なお、上側ハウジング73は、非磁性体である樹脂等により形成されてもよい。また、バルブボディ21の作動油吸引口21iは、所定の油路を介してオイルポンプ25の吸入口に接続される。
【0019】
ハウジング71の底部を形成する下側ハウジング75には、オイルパン60側に開口してハウジング71の内部とオイルパン60の内部とを連通させる作動油入口75iが形成されている。更に、下側ハウジング75には、図1および図2に示すように、ハウジング71内に凹部75bを画成するようにオイルパン60に向けて突出する複数(実施例では3個)の凸部75aが形成されている。そして、各凸部75aとオイルパン60との間には、各1個(合計3個)の磁石(永久磁石)40が配置される。これにより、各磁石40は、対応する下側ハウジング75の凸部75aとオイルパン60との双方に吸着するので、ストレーナ70を各磁石40の磁力によりオイルパン60に対して強固に固定することができる。また、このようにハウジング71の底部を形成する下側ハウジング75に凸部75aを設けることにより、磁石40を高背化することなく、ストレーナ70をオイルパン60に固定しつつハウジング71とオイルパン60との間隔をより適正に設定することができるので、オイルパン60内の作動油の流れをスムースなものにすると共にオイルパン60からハウジング71内へと作動油をスムースに吸引することが可能となる。
【0020】
また、実施例において、下側ハウジング75の複数の凸部75aおよび複数の磁石40は、オイルパン60内の作動油の流量が比較的少ない位置に配置される。図3は、オイルパン60を外した状態にある油圧制御装置20を下側から見た説明図である。同図に示すように、実施例の油圧制御装置20において、下側ハウジング75の複数の凸部75aおよび複数の磁石40は、作動油入口75iよりも図中右側に位置する作動油流入部50の中心(孔の中心)とストレーナ70の作動油入口75iの中心とを結んだ直線(図3における一点鎖線参照)上に位置しないように配置される。これにより、ハウジング71の凸部75aおよび磁石40によってオイルパン60内の作動油の流れ、すなわち作動油流入部50から作動油入口75iへと向かう作動油の流れが妨げられることを良好に抑制することができる。
【0021】
上述のように構成された油圧制御装置20を備えた自動変速機が作動する際には、当該自動変速機に接続されたエンジンが運転されることによりオイルポンプ25が駆動され、このオイルポンプ25により、図1中の実線矢印に示すように、オイルパン60から作動油がストレーナ70の作動油入口75i、スクリーン72、作動油出口73o等を介して吸引され、バルブボディ21の油路やソレノイドバルブ30等により形成される油圧回路等に供給される。そして、油圧回路等で使用された作動油は、作動油流入部50からオイルパン60内へと再び還流される。
【0022】
こうしてオイルパン60に還流される作動油には、金属粉等の異物が混入していることがあるが、実施例の油圧制御装置20では、ストレーナ70の下側ハウジング75とオイルパン60との間に配置された複数の磁石40の磁力によりオイルパン60内で作動油中の金属粉といった異物を吸引して捕捉することができる。また、実施例の油圧制御装置20において、各磁石40の磁力は、オイルパン60内のみならず、下側ハウジング75の凸部75aの裏側、すなわち、ハウジング71内に画成された凹部75b側にも作用する。従って、オイルパン60からストレーナ70内に吸引された作動油に金属粉等の異物が含まれていたとしても、オイルパン60側からハウジング71内に作用する磁石40の磁力によりハウジング71内を流れる作動油中の異物も吸引し、凹部75b内に留めておくことができる。
【0023】
以上説明した実施例の油圧制御装置20では、オイルパン60からの作動油を濾過するためのストレーナ70が複数の磁石40の磁力によりオイルパン60に固定される。これにより、構造の複雑化やボルト等の締結具を用いた場合のような部品点数の増加を抑制しつつストレーナ70をバルブボディ21とオイルパン60との間に安定かつ容易に固定することができる。また、実施例の油圧制御装置20では、ストレーナ70をオイルパン60に固定するための磁石40によりオイルパン60内の作動油に含まれる金属粉といった異物を捕捉することも可能となる。なお、オイルパン60とストレーナ70との間に配置される磁石40の数は、オイルパン60に対してストレーナ70を強固に固定するのに充分であれば3個未満であってもよい。また、実施例の油圧制御装置20では、オイルパン60とストレーナ70の下側ハウジング75との双方が金属等の磁性体により形成されており、磁石40は、オイルパン60と下側ハウジング75(ストレーナ70)との双方に吸着するが、これに限られるものではない。すなわち、オイルパン60およびストレーナ70の底部(下側ハウジング75)の何れか一方は樹脂等の非磁性体により形成されてもよく、磁石40をオイルパン60およびストレーナ70の底部の何れか一方に固定(接着)して他方に吸着させてもよい。
【0024】
また、実施例のストレーナ70は、スクリーン72を収容するハウジング71を有し、ハウジング71のオイルパン60側の底部を形成する下側ハウジング75は、ハウジング71内に凹部75bを画成するようにオイルパン60に向けて突出する凸部75aを含み、磁石40は、凸部75aとオイルパン60との間に配置される。このように、ストレーナ70のハウジング71の底部に設けられた凸部75aとオイルパン60との間に磁石40を配置すれば、磁石40を低背化すると共にオイルパン60とストレーナ70との間隔をより適正に設定することが可能となる。また、実施例では、ハウジング71を構成する下側ハウジング75が磁性体である金属により形成されている。従って、下側ハウジング75の凸部75aとオイルパン60との間に配置された磁石40の磁力を凸部75aの裏側すなわちハウジング71内の凹部75b側により強力に作用させて、ストレーナ70のハウジング71内の作動油に含まれる金属粉といった異物を磁石40の磁力でより強力に吸引して凹部75b内により確実に留めておくことが可能となる。なお、上記実施例のように、ハウジング71の底部すなわち下側ハウジング75の全体を磁性体である金属等により形成する代わりに、下側ハウジング75(ハウジング71)の凸部75aのみを磁性体である金属等により形成してもよい。また、ハウジング71の凸部75aが樹脂等の非磁性体で形成されている場合であっても、凸部75aとオイルパン60との間に配置された磁石40の磁力が凸部75aの裏側すなわちハウジング71内の凹部75b側に作用する場合には、ストレーナ70のハウジング71内の作動油に含まれる金属粉といった異物を磁石40の磁力により吸引して凹部75b内に留めておくことが可能となる。
【0025】
更に、上記実施例では、複数の磁石40がオイルパン60内の作動油の流量が比較的少ない位置に配置され、オイルパン60への作動油流入部50とストレーナ70の作動油入口75iとを結ぶ直線上に配置されない。これにより、磁石40によってオイルパン60内の作動油の流れが妨げられることを抑制することができる。
【0026】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、油圧制御装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
20 油圧制御装置、21 バルブボディ、21i 作動油吸引口、22 バルブ挿入部、25 オイルポンプ、30 ソレノイドバルブ、40 磁石、50 作動油流入部、60 オイルパン、70 ストレーナ、71 ハウジング、73 上側ハウジング、73o 作動油出口、75 下側ハウジング、75a 凸部、75b 凹部、75i 作動油入口、72 スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の油路を有するバルブボディと、前記バルブボディに組み込まれるソレノイドバルブと、前記バルブボディの下方に配置されて作動油を貯留するオイルパンと、前記バルブボディと前記オイルパンとの間に配置されると共に前記オイルパンから吸引される作動油を濾過する濾材を有するストレーナとを備えた油圧制御装置であって、
前記ストレーナは、磁石の磁力により前記オイルパンに固定されることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置において、
前記ストレーナは、前記濾材を収容するハウジングを有し、
前記ハウジングの前記オイルパン側の底部は、該ハウジング内に凹部を画成するように前記オイルパンに向けて突出する凸部を含み、
前記磁石は、前記凸部と前記オイルパンとの間に配置されることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御装置において、
前記ハウジングの少なくとも前記凸部は、磁性体により形成されていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の油圧制御装置において、
前記磁石は、前記オイルパンへの作動油流入部と前記ストレーナの作動油入口とを結ぶ直線上に配置されないことを特徴とする油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−208784(P2011−208784A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79394(P2010−79394)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】