説明

油圧式引き抜き装置

【課題】杭の引き抜き作業を狭いスペースでも行える油圧式引き機装置を提供する。
【解決手段】帯状のウエブ10aとこれの両側片のフランジ部10b,10cとを有する杭10を地盤中から引き抜くための油圧式引き抜き装置で、杭10を囲むように地盤表面に配置される架台フレーム11の四隅にはそれぞれ支柱12a〜12dが取り付けられ、支柱12a〜12dの上には反力フレーム13が載置される。反力フレーム13には杭10を締結する締結ジャッキ28a、28bが設けられ、架台フレーム11には杭10が締結ジャッキ28a,28bにより反力フレーム13に締結された状態のもとで反力フレーム13を上昇させる引き抜きジャッキ36a,36bが取り付けられている。引き抜きジャッキ36a,36bの先端には反力フレーム13の傾斜に対応して傾動するユニバーサルヘッド38が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H形鋼やI形鋼あるいは鋼矢板等からなり地盤中に埋め込まれた杭を引き抜いて撤去する油圧式引き抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤中に埋め込まれたH形鋼や鋼矢板等からなる杭を引き抜くために、クレーン車に搭載するようにした引き抜き装置としては、多滑車式の杭抜き機が設けられたアタッチメントをクレーン車に搭載するようにしたタイプのものがある。この引き抜き装置により杭の引き抜きを行う場合には、埋め込まれた杭の近くにアタッチメントを配置し、杭のウエブにチャックを噛み合わせた状態のもとでクレーンのウインチワイヤロープを多滑車によりチャックを上昇させることにより引き抜き作業を行うようにしている。
【0003】
さらに、クレーン車に搭載するようにした引き抜き装置としては、クレーンのウインチワイヤロープに設けられたフックに装着するようにした高周波振動杭打機がある。この杭打機には偏心モーメントを有しモータにより回転駆動される軸が組み込まれており、モータにより杭に振動を加えながら引き抜き作業を行うようにしている。
【0004】
一方、トラクタ等の土木建築作業車に搭載するようにした杭抜き機としては油圧圧入機があり、このタイプの杭抜き機は作業車に搭載された油圧式のチャックを油圧により上下動するようにしており、杭の引き抜き時には振動を加えることがないので、作業時には騒音の発生がないという利点がある。
【0005】
また、油圧式の杭抜き機として、特許文献1には、鋼矢板を引き抜くために、鋼矢板を掴むチャックが設けられて鋼矢板を跨ぐように配置される圧抜機が記載されており、引き抜き時に鋼矢板に付着している土砂を除去するために、地表面に押さえ板を配置するようにしている。
【特許文献1】特開平10−140569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、引き抜き装置をクレーンや土木作業車に搭載するようにした場合には、撤去すべき杭の周囲に大型のクレーン車や作業車を接近させるために、杭の周囲に広い作業スペースが必要であり、杭の近くに建築物等の障害物が存在すると、杭の撤去作業を行うことができず、撤去作業を行うことができる場所には限度があった。
【0007】
また、杭抜き作業時に杭に振動を加えるようにしたタイプの杭抜き機は、作業場所の周囲に振動や騒音が伝わるので、杭の周囲に住宅や建築物が存在する場合には使用することができなかった。
【0008】
一方、特許文献1に記載されるように、クレーン車や土木作業車に搭載することなく、直接鋼矢板に取り付けるようにした杭抜き機は、騒音を発生させることなく、鋼矢板の周囲に広いスペースが存在しなくとも引き抜き作業を行うことができるという利点がある反面、傾斜して埋め込まれた鋼矢板を引き抜くには、鋼矢板を所定の長さ引き抜いた後に引き抜き機と押さえ板を水平方向にずらす必要があり、連続的に引き抜き作業を行うことができなかった。
【0009】
また、鋼矢板の表面に接近させて押さえ板を配置すると、鋼矢板の表面に突起物がある場合には、引き抜き時に突起物が押さえ板に衝突し、引き抜き作業を長時間中断しなければならないので、押さえ板の先端と鋼矢板の表面との間に十分な間隔を持たせると、引き抜かれた鋼矢板の表面に土砂が付着することになり、作業性が悪いという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、引き抜く杭の周囲に広いスペースが確保されていなくとも、杭の引き抜き作業を行うことができる油圧式引き機装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、埋め込まれた杭が傾斜していても、連続的に杭の引き抜き作業を行うことができる油圧式引き抜き装置を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、杭の引き抜き作業により杭の表面から確実に土砂を除去することができ、杭の表面に突起物が固定されていても、迅速に引き抜き作業を再開することができる油圧式引き抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の油圧式引き抜き装置は、帯状の本体部と当該本体部の側辺に一体に設けられるフランジ部とを有して地盤中に埋設された杭を引き抜く油圧式引き抜き装置であって、前記杭を囲むように地盤表面に配置される架台フレームと、当該架台フレームに固定された複数本の支柱の上に載置され、前記杭の前記本体部を両面から押圧する締結ジャッキが設けられた反力フレームと、前記架台フレームに取り付けられ、前記杭が前記反力フレームに前記締結ジャッキにより締結された状態のもとで前記反力フレームを上昇させる引き抜きジャッキとを有し、前記杭に対する前記地盤表面の傾斜に対応させて傾動するユニバーサルヘッドを前記引き抜きジャッキの先端に設けることを特徴とする。
【0014】
このように、支柱が固定された架台フレームとこれの上に載置される反力フレームとを有し、これらが分割される構造となっており、それぞれが軽量かつコンパクトとなっているので、引き抜くべき杭の周囲に広いスペースが確保されない場合でも確実に杭抜き作業を行うことができる。また、それぞれの支柱と反力フレームとの間にはユニバーサルヘッドが設けられており、反力フレームは架台フレームに対して傾斜移動できるので、地盤が傾斜していても杭の引き抜き作業を円滑に行うことができる。
【0015】
本発明の好ましい形態において、前記杭の前記本体部の両側に対応させて2つの締結ジャッキを前記反力フレームに設け、それぞれの前記締結ジャッキの先端に前記杭の本体部に接触するチャッキング部材を設けることを特徴とする。これにより、杭の両側から締結ジャッキにより締め付けて杭を反力フレームに締結することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態において、前記架台フレームに前記杭の前記本体部の一方面に対して接近離反移動自在に第1の土べらを装着するとともに前記本体部の他方面に対して接近離反移動自在に第2の土べらを装着し、それぞれの前記土べらに前記本体部に向かう方向の押圧力を付勢する付勢手段を前記架台フレームに装着することを特徴とする。これにより、杭を引き抜くと杭の表面に付着した土砂が土べらにより杭から取り除かれることになる。また、地盤が傾斜していても土べらが付勢力に抗して移動するので、杭から土砂を確実に取り除くことができる。
【0017】
本発明の好ましい形態において、前記付勢手段をばね部材により構成することを特徴とする。これにより、簡単な構造により土べらに対して付勢力を加えることができる。
【0018】
本発明の好ましい形態において、前記杭を前記本体部の両側辺に一体にフランジ部が設けられたH形鋼ないしI形鋼とし、それぞれの前記土べらを前記両辺のフランジ部間の間隔に対応させて交換自在に前記架台フレームに装着することを特徴とする。このように、土べらを交換自在とすることにより、種々のサイズの杭に対して土砂の取り除きを杭の引き抜きとともに行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0020】
すなわち、本発明によれば、引き抜くべき杭の周囲に広いスペースが確保されない場合でも確実に杭抜き作業を行うことが可能になるとともに、反力フレームは架台フレームに対して傾斜移動できるので、地盤が傾斜していても杭の引き抜き作業を円滑に行うことが可能になる。
【0021】
また、本発明によれば、杭を引き抜くときに杭の表面に付着した土砂を土べらにより杭から自動的に取り除くことが可能になり、地盤が傾斜していても土べらが付勢力に抗して移動するので、杭から土砂を確実に取り除くことが可能になる。
【0022】
さらに、本発明によれば、H形鋼以外にL形鋼等の種々のタイプおよびサイズの杭を引き抜くことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。なお、添付図面において共通の機能を有する部材には同一の符号が付されている。また、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態を示すものであり、本発明は当該実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は本発明の油圧式引き抜き装置の全体を示す斜視図であり、この引き抜き装置は、地盤中に圧入等の手段により埋設された杭10を引き抜くために、杭10を囲むように地盤表面に配置されるほぼ四辺形の架台フレーム11と、この架台フレームの四隅に固定される4本の支柱12a〜12dとを有し、支柱12a〜12dの上には反力フレーム13が載置されるようになっている。地盤中に埋設された杭10はH形鋼であり、図1に示すように、帯状のウエブ(本体部)10aと、このウエブ10aの両側辺に一体に設けられたフランジ部10b,10cとを有しており、フランジ部10b,10cはそれぞれウエブ10aの両面に対して直角となっている。
【0025】
図2は図1に示された反力フレーム13を取り除いた状態における引き抜き装置を示す斜視図であり、図3は図1および図2に示された架台フレーム11を示す斜視図であり、図4は架台フレーム11の平面図であり、図5は図1の正面図であり、図6は図5の右側面図であり、図7は図1におけるA−A線方向の矢視図である。
【0026】
図3に示すように、架台フレーム11は引き抜き装置を地盤表面に配置したときに杭10のウエブ10aに対して杭10を囲むように平行となる2枚の支持プレート14a,14bを有し、それぞれの支持プレート14a,14bの両端部にはスペーサ15が設けられている。それぞれの支持プレート14a,14bの上にはこれらに平行にスペーサ15を介して枠片16a,16bが固定され、それぞれの支持プレート14a,14bの一端部にはそれぞれに対して直角にスペーサ15を介して枠片16cが固定され、それぞれの支持プレート14a,14bの他端部には枠片16cに平行にスペーサ15を介して枠片16dが固定されている。それぞれの枠片16a〜16dはH形鋼により形成されており、2つの枠片16a,16bの内側には連結プレート17がそれぞれ溶接され、他の2つの枠片16c,16dの両端面には連結プレート18が溶接されており、図5に示すように、連結プレート17,18をボルト19により連結するとともに、それぞれの枠片16a,16bの下面にはスペーサ15を介して支持プレート14a,14bがボルト19により固定されている。このように、架台フレーム11は中央部にスペースを有する四辺形となっている。なお、図3においてはボルト19が省略されている。
【0027】
図2に示すように、枠片16aの両端部には支柱12a,12bが固定され、枠片16bの両端には支柱12c,12dが固定されており、支柱12a〜12dはそれぞれ架台フレーム11の四隅に取り付けられている。それぞれの支柱12a〜12dは相互に上下寸法が相違する下側の支柱片22と上側の支柱片23とを連結することにより形成されている。それぞれの支柱片22,23は上下両端面に連結プレート24が溶接されたH形鋼により形成され、それぞれの支柱12a〜12dは下側の支柱片22の連結プレート24をボルト19により枠片16a,16bに固定することによって架台フレーム11に固定されている。なお、2本の支柱片を上下に連結して支柱を構成するのではなく、1本で構成してもよい。あるいは、3本以上の支柱片を上下に連結して構成してもよい。
【0028】
図1に示すように、支柱12a〜12dの上に載置される反力フレーム13は、枠片16a,16bに平行な2つの枠片25a,25bと、枠片25a,25bの両端部に連結されて相互に平行となった2つの枠片25c,25dとを有している。それぞれの枠片25a〜25dはH形鋼により形成されており、2つの枠片25a,25bは本体部が水平となって一方のフランジ部が相互に対向し合っている。これに対し、他の2つの枠片25c,25dは本体部が垂直となって両側のフランジ部が上下に配置されており、両端面に溶接された連結プレート26の部分で他の2つの枠片25a,25bにボルト19により固定されている。このように、反力フレーム13は架台フレーム11と同様に中央部にスペースを有する四辺形となっている。なお、図1においてはボルト19が省略されている。
【0029】
このように、架台フレーム11と支柱12a〜12dと反力フレーム13はいずれも複数のH形鋼を組み合わせることにより形成されているので、予めそれぞれのH形鋼をトラック等により工事現場に搬送して工事現場において油圧式引き抜き装置を組み立てることができる。また、予め架台フレーム11と反力フレーム13とをそれぞれ組み立てた状態としてトラック等により工事現場にまで搬送するようにし、工事現場において架台フレーム11に支柱12a〜12dを取り付けるようにしてもよい。なお、架台フレーム、支柱および反力フレームは、本実施の形態のようなH形鋼ではなく、例えば鋼管など他の様々な鋼材で形成することができる。
【0030】
反力フレーム13の2つの枠片25a,25bの内側には、図7に示すように、それぞれチャック支持板27a,27bが固定され、それぞれのチャック支持板27a,27bには締結ジャッキ28a,28bが相互に対向するように取り付けられており、それぞれの締結ジャッキ28a,28bは油圧により進退移動する図示しないピストンロッドを有している。チャック支持板27a,27bにはチャックガイド29a,29bが固定され、それぞれのチャックガイド29a,29bには締結ジャッキ28a,28bにより直線方向に往復動される往復動部材31a,31bが移動自在に組み込まれている。
【0031】
図8は図7に示されたチャックガイド29a,29bと往復動部材31a,31bを拡大して示す分解斜視図であり、それぞれの往復動部材31a,31bの先端面には支持プレート32a,32bが固定されるようになっている。それぞれの支持プレート32a,32bには、図7に示すように、杭10のウエブ10aにそれぞれ圧接するチャッキングプレート33a,33bがチャッキング部材として取り付けられるようになっている。これにより、それぞれの締結ジャッキ28a,28bを作動させると、締結ジャッキ28a,28bが往復動部材31a,31bを介してチャッキングプレート33a,33bをウエブ10aの両面から締結し、杭10は反力フレーム13に締結された状態となる。
【0032】
図7に示すように、架台フレーム11を構成する2つの枠片16a,16bの内側にはそれぞれ支持台35a,35bが固定され、それぞれの支持台35a,35bには反力フレーム13を上昇移動させるための引き抜きジャッキ36a,36bが取り付けられている。それぞれの引き抜きジャッキ36a,36bは油圧により進退移動するピストンロッド37を有しており、ピストンロッド37の先端にはユニバーサルヘッド38が配置されている。このユニバーサルヘッド38はピストンロッド37の先端に設けられた球面形状の凹面に接触する球面形状の凸面39を有し、いずれの方向にも傾斜移動可能となっている。
【0033】
支柱12a〜12dの上に載置された反力フレーム13を引き抜きジャッキ36a,36bにより上昇移動させる際に、支柱12a〜12dの外側に接触するガイド部材40が図1および図6に示すように反力フレーム13の下面に取り付けられている。反力フレーム13を下降移動させる際にも反力フレーム13はガイド部材40によってそれぞれの支柱12a〜12dに案内されながら下降移動することになり、反力フレーム13はガイド部材40によって案内されて支柱12a〜12dの上方を上下動することになる。
【0034】
図9は架台フレーム11の支持プレート14a,14bを示す平面図であり、それぞれの支持プレート14a,14bの両端部に固定されたスペーサ15の間には、それぞれ土べら41a,41bが杭10のウエブ10aに向けて接近離反移動自在に装着されている。一方の土べら41aはウエブ10aの一方面に向けて移動する第1の土べらとなっており、他方の土べら41bはウエブ10aの他方面に向けて移動する第2の土べらとなっており、それぞれの土べら41a,41bの幅寸法はスペーサ15相互間の距離よりも小さく設定されており、土べら41a,41bは幅方向にも移動自在となっている。
【0035】
土べら41aに対してウエブ10aに向かう方向のばね力を付勢するために、図3に示すように、枠片16aに固定された2本のガイドロッド42には土べら41aに当接するガイドプレート43が移動自在に取り付けられており、ナット44がねじ結合する雄ねじ46がそれぞれのガイドロッド42に形成されるとともに、ナット44とガイドプレート43との間には圧縮コイルばねからなるばね部材45が装着されている。同様に、土べら41bに対してウエブ10aに向かう方向のばね力を付勢するために、枠片16bに固定された2本のガイドロッド42には土べら41bに当接するガイドプレート43が移動自在に取り付けられており、ナット44がねじ結合する雄ねじ46がそれぞれのガイドロッド42に形成されるとともに、ナット44とガイドプレート43との間には圧縮コイルばねからなるばね部材45が装着されている。それぞれの土べら41a,41bは引き抜かれる杭10のサイズに応じて種々のサイズのものを交換することができるように着脱自在に架台フレーム11に装着されている。
【0036】
次に、上述した油圧式引き抜き装置を用いた杭の引き抜き作業手順について説明する。まず、引き抜き作業が行われる杭10の周囲を囲むようにして図2に示すように、架台フレーム11を地盤の上面に配置する。架台フレーム11を地盤の上面に配置する際には、それぞれの土べら41a,41bをばね力に抗して後退移動させて、土べら41a,41bの先端と杭10のウエブ10aとが干渉しないようにする。引き抜き作業が行われる杭10は、その上端部の地盤から突出長さが所定の長さとなるように、予め準備作業が行われる。図2に示す場合には、予め支柱12a〜12dと引き抜きジャッキ36a,36bが取り付けられた状態の架台フレーム11を地盤の上に配置するようにしているが、架台フレーム11を配置した後に、支柱12a〜12dと引き抜きジャッキ36a,36bと架台フレーム11に取り付けるようにしてもよい。
【0037】
次いで、支柱12a〜12dの上には反力フレーム13がクレーン等を用いて載置され、反力フレーム13が載置された状態を示すと、図1の通りである。この状態のもとでそれぞれの締結ジャッキ28a,28bを駆動し、チャッキングプレート33a,33bを前進移動させてこれらのチャッキングプレート33a,33bを介して杭10のウエブ10aをその両面から締結ジャッキ28a,28bにより押圧した後に、引き抜きジャッキ36a,36bを駆動して反力フレーム13を上昇移動させる。これにより、杭10は引き抜きジャッキ36a,36bのピストンロッド37の上昇ストローク分だけ引き抜かれることになる。この引き抜き移動時には、杭10のウエブ10aの両面に向けて土べら41a,41bが押し付けられているので、杭10の引き抜き時に杭10に付着した土砂は土べら41a,41bにより杭10の表面から取り除かれる。
【0038】
このように所定のストロークだけ上昇移動させた後に、締結ジャッキ28a,28bを後退移動させてチャッキングプレート33a,33bを後退移動させるとともに、引き抜きジャッキ36a,36bを後退移動させて反力フレーム13を下降移動させる。この状態のもとで、上述したように、締結ジャッキ28a,28bにより杭10のウエブ10aの両面を押圧した後に引き抜きジャッキ36a,36bにより反力フレーム13を上昇移動させてさらに杭10を所定のストロークだけ引き抜き操作を行うとともに土べら41a,41bにより杭10に付着した土砂を取り除く。このようにして、反力フレーム13の上昇移動により引き抜き操作を所定回数行うことにより、杭10は地盤から引き抜かれることになる。
【0039】
図10は杭10のウエブ10aの表面が地盤表面に対して傾斜するように、地盤表面が破線に示す水平面よりも杭10に対して傾斜している状態を示し、図11は杭10のフランジ部10b,10cの表面が地盤表面に対して傾斜するように、地盤表面が破線に示す水平面よりも杭10に対して傾斜している状態を示す。
【0040】
図10および図11に示すように、地盤表面が杭10に対して傾斜した状態となっていると、締結ジャッキ28a,28bが杭10を押圧することにより反力フレーム13は杭10に対して直角となるので、反力フレーム13は架台フレーム11とは平行にならないが、引き抜きジャッキ36a,36bの先端に設けられたユニバーサルヘッド38が反力フレーム13の架台フレーム11に対する傾斜に応じて傾斜移動するので、2つの引き抜きジャッキ36a,36bは確実に反力フレーム13を上昇させて杭10を引き抜き操作することができる。ユニバーサルヘッド38の上面は反力フレーム13の下面に接触しており、反力フレーム13はユニバーサルヘッド38に対して摺動することができるので、傾斜した杭10を引き抜く際に、反力フレーム13が架台フレーム11に対して水平方向に移動しても引き抜き操作を確実に行うことができる。なお、杭10が図9および図10に示す両方の方向に傾斜していても同様に引き抜き作業を確実に行うことができる。
【0041】
さらに、図10および図11に示すように、地盤表面が杭10に対して傾斜した状態となっていると、引き抜き作業の進行に伴って杭10と架台フレーム11との相対位置が変化するが、そのときには、土べら41a,41bは架台フレーム11に対して進退移動方向および幅方向に移動自在となっているので、杭10と架台フレーム11との相対位置に応じて追従移動するとともに、土べら41a,41bにはばね力が加えられているので、杭10の両面に付着した土砂を確実に取り除くことができる。杭10に突起物が取り付けられており、その突起物が土べら41a,41bと干渉した場合には、土べら41a,41bをばね力に抗して後退移動させることにより容易に干渉を解除することができる。
【0042】
図示する場合には、杭10はH形鋼により形成されているが、H形鋼に限られずI形鋼、L形鋼および鋼矢板のように、帯状の本体部とこれの少なくとも一方の側辺に一体に設けられるフランジ部を有する杭の引き抜き作業に本発明を適用することができる。また、図示する場合には反力フレーム13には2つの締結ジャッキ28a,28bが設けられているが、1つの締結ジャッキにより杭10を両側から反力フレーム13に締結するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、地盤中に埋め込まれたH形鋼などからなる杭を引き抜いて撤去するために適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の油圧式引き抜き装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図1に示された反力フレームを取り除いた状態における引き抜き装置を示す斜視図である。
【図3】図1および図2に示された架台フレームを示す斜視図である。
【図4】架台フレームの平面図である。
【図5】図1の正面図である。
【図6】図5の右側面図である。
【図7】図1におけるA−A線方向の矢視図である。
【図8】図7に示されたチャックガイドと往復動部材を拡大して示す分解斜視図である。
【図9】架台フレームの支持プレートを示す平面図である。
【図10】破線に示す水平面よりも杭に対して傾斜した地盤表面に配置された油圧式引き抜き装置を示す正面図である。
【図11】波線に示す水平面よりも杭に対して傾斜した地盤表面に配置された油圧式引き抜き装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 杭
10a ウエブ(本体部)
10b,10c フランジ部
11 架台フレーム
12a〜12d 支柱
13 反力フレーム
14a,14b 支持プレート
15 スペーサ
16a〜16d 枠片
22,23 支柱片
25a〜25d 枠片
28a,28b 締結ジャッキ
33a,33b チャッキングプレート(チャッキング部材)
36a,36b 引き抜きジャッキ
38 ユニバーサルヘッド
41a,41b 土べら
42 ガイドロッド
43 ガイドプレート
44 ナット
45 ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の本体部と当該本体部の側辺に一体に設けられるフランジ部とを有して地盤中に埋設された杭を引き抜く油圧式引き抜き装置であって、
前記杭を囲むように地盤表面に配置される架台フレームと、
当該架台フレームに固定された複数本の支柱の上に載置され、前記杭の前記本体部を両面から押圧する締結ジャッキが設けられた反力フレームと、
前記架台フレームに取り付けられ、前記杭が前記反力フレームに前記締結ジャッキにより締結された状態のもとで前記反力フレームを上昇させる引き抜きジャッキとを有し、
前記杭に対する前記地盤表面の傾斜に対応させて傾動するユニバーサルヘッドを前記引き抜きジャッキの先端に設けることを特徴とする油圧式引き抜き装置。
【請求項2】
前記杭の前記本体部の両側に対応させて2つの締結ジャッキを前記反力フレームに設け、それぞれの前記締結ジャッキの先端に前記杭の本体部に接触するチャッキング部材を設けることを特徴とする請求項1記載の油圧式引き抜き装置。
【請求項3】
前記架台フレームに前記杭の前記本体部の一方面に対して接近離反移動自在に第1の土べらを装着するとともに前記本体部の他方面に対して接近離反移動自在に第2の土べらを装着し、それぞれの前記土べらに前記本体部に向かう方向の押圧力を付勢する付勢手段を前記架台フレームに装着することを特徴とする請求項1または2記載の油圧式引き抜き装置。
【請求項4】
前記付勢手段をばね部材により構成することを特徴とする請求項3記載の油圧式引き抜き装置。
【請求項5】
前記杭を前記本体部の両側辺に一体にフランジ部が設けられたH形鋼ないしI形鋼とし、それぞれの前記土べらを前記両辺のフランジ部間の間隔に対応させて交換自在に前記架台フレームに装着することを特徴とする請求項3または4記載の油圧式引き抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−31976(P2007−31976A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213249(P2005−213249)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【特許番号】特許第3727650号(P3727650)
【特許公報発行日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(393022506)丸紅建材リース株式会社 (6)
【Fターム(参考)】