油圧式無段変速装置
【課題】可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置において、エンジンストップ後は、作動油が供給されずに油圧サーボ機構が作動せず、可動斜板が中立位置に戻っていないためにエンジンを再始動すると車両が急発進するが、これを防止するのにアンロード弁やドレン回路等を設けてメイン油路内の油圧を解除する技術では、該メイン油路等への作動油充填に時間がかかる、という問題があった。
【解決手段】一対のメイン油路9a・9bの間を連通・遮断するバイパス機構87、該バイパス機構87のアクチュエータ81の動作を制御する制御装置101、及び作動油を両メイン油路9a・9bに補給するチャージ回路86を設け、エンジン19の始動時には、油圧モータ3を制動した後にバイパス機構87により両メイン油路9a・9b間を連通し、チャージ回路86を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成とした。
【解決手段】一対のメイン油路9a・9bの間を連通・遮断するバイパス機構87、該バイパス機構87のアクチュエータ81の動作を制御する制御装置101、及び作動油を両メイン油路9a・9bに補給するチャージ回路86を設け、エンジン19の始動時には、油圧モータ3を制動した後にバイパス機構87により両メイン油路9a・9b間を連通し、チャージ回路86を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つに可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置に関し、特に、エンジンストップした後に改めてエンジンを始動させた際に、前記油圧モータが不用意に駆動するのを防止するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一対のメイン油路により接続した可変容積型の油圧ポンプと油圧モータを備えた油圧式無段変速装置においては、該油圧ポンプや油圧モータに設けた可動斜板の斜板角を油圧サーボ機構によって制御するものが知られている。
【0003】
該油圧サーボ機構によって可動斜板を傾動操作する油圧式無段変速装置を搭載した作業車両においては、作業中や走行中にエンジンストップした場合、エンジン動力により補給されている油圧サーボ機構内の作動油の油圧も同時になくなるため、たとえ油圧サーボ機構を操作する変速レバーを中立位置に戻しても、該油圧サーボ機構により可動斜板を回動させて中立位置に戻すことができなくなり、前記両メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧のために、可動斜板は傾倒状態に保持されたままとなる。その後、改めてエンジンを始動させようとすると、可動斜板が傾倒状態にあるために作業車両が急発進し、これを防止するには、副変速装置等に複雑なインターロックを設ける必要があった。特に、この際、油圧モータのモータ軸を制動するだけで急発進を防止しようとすると、油圧式無段変速装置から受ける入力トルクが過大となってエンジン始動さえできなくなったり、始動スイッチやセルモータ等から成る始動装置にかかる負担が大きくなって始動装置の寿命が悪化したり、この負担に対応するためモータ容積を増加させる必要から始動装置の大型化も招いていた。
【0004】
そこで、エンジン始動時に、前記両メイン油路のうちの少なくとも一方をドレン回路に連通することにより、メイン油路内の作動油を油溜まりに流出させ、前述の如くメイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧を解除する技術(以下、「油圧解除技術」とする。)が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。また、油圧式無段変速装置からの入力トルクに関しては、作動油を両メイン油路に補給するチャージ回路にアンロード弁を設け、エンジン始動時には、該アンロード弁を介してチャージ回路内の作動油を油溜まりに流出させて油圧式無段変速装置への入力トルクを減少させたり、これに加えて、両メイン油路の間をバイパス機構によって連通・遮断する技術も公知となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−28294号公報
【特許文献2】実公昭58−24669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記ドレン回路による油圧解除技術においては、メイン油路内の作動油が切替弁を通って油溜まりに流出し、メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧が解除され、油圧ポンプが駆動しても油圧モータのモータ軸は空転し、作業車両の急発進の防止や確実なエンジン始動が可能となるが、エンジンが始動してから、チャージポンプによりチャージ回路を介してメイン油路内に作動油が供給充填されるまでの間は、作業車両が発進できず、作業車両が動き出すまでの時間が長くなり、発進応答性が低下する、という問題があった。
【0007】
また、前記アンロード弁による油圧解除技術においては、メイン油路内の作動油については、バイパス機構を設けることにより、油溜まりに流出させることなく両メイン油路の間を行き来するだけであり、エンジン始動時における両メイン油路内への作動油の新たな供給充填は不要である。しかし、チャージ回路内の作動油については、エンジン始動時にアンロード弁を通って油溜まりに流出されるため、やはり、エンジンが始動してから、チャージポンプによりチャージ回路内に作動油が供給充填されるまでの間は、エンジンストップによって作動油が不足気味となったメイン油路内に、チャージ回路から作動油を十分に補給することができず、流体接続された油圧ポンプと油圧モータ間の動力伝動効率が低下し、発進駆動力が低下する、という問題があった。
【0008】
更に、いずれの油圧解除技術においても、エンジン始動に伴う操作、例えば、始動スイッチ等の入切操作、エンジン始動時の安全装置として機能するクラッチの踏み離し操作等に連動して、作動油の油圧を解除するようにしているが、このエンジン始動操作はエンジンが始動するまで短時間に何度も繰り返すのが一般的であることから、前記切替弁やアンロード弁等における可動部分の疲労が激しく、該切替弁やアンロード弁等のような、エンジン始動に係わる部品の寿命が悪化する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置において、前記油圧ポンプと油圧モータを接続する一対のメイン油路の間を連通・遮断するバイパス機構、該バイパス機構のアクチュエータの動作を制御する制御装置、及び作動油を前記両メイン油路に補給するチャージ回路を設け、前記油圧式無段変速装置を駆動するエンジンの始動時には、前記油圧モータを制動した後に前記バイパス機構により前記両メイン油路間を連通すると共に、前記チャージ回路を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成を備えたものである。
請求項2においては、前記バイパス機構は、前記エンジン始動時から所定時間経過後に前記両メイン油路間を遮断し、該遮断後に前記油圧モータの制動を解除するものである。
請求項3においては、前記バイパス機構は、前記両メイン油路間を連通状態と遮断状態との間で切り換え可能な電磁式切替弁とするものである。
請求項4においては、前記バイパス機構には、前記両メイン油路にそれぞれ連通する一対の電磁式チェック弁と、該両電磁式チェック弁を油溜まりに連通する共通の吸引油路を設け、該吸引油路に対して前記電磁式チェック弁を同時に開弁することにより、前記吸引油路を介して前記両メイン油路間を連通するものである。
請求項5においては、前記両電磁式チェック弁は、単一のピストン動作により、前記吸引油路に対して同時に開弁するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1において、作業中や走行中にエンジンストップした後にエンジンを始動させる場合に、前記メイン油路とチャージ回路内の作動油のいずれも油溜まりに流出させることなく、メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧を解除することができ、発進応答性や発進駆動力の低下を防ぎつつ、作業車両の急発進の防止、インターロックの簡略化・省略による製造コストの低減、入力トルクの減少による確実なエンジン始動、及び負担軽減による始動装置の寿命向上とコンパクト化を図ることができる。更に、油圧モータを制動した後に両メイン油路間を連通するので、エンジン始動時に、メイン油路内の油圧解除に伴って油圧モータの出力軸が坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。
請求項2において、所定時間を適正に調節することにより、可動斜板が中立位置に戻るまでの時間を確実に確保しつつ、前記バイパス機構においてメイン油路間の連通・遮断に係わる切替弁やチェック弁等の可動部分の動作回数を最小限に抑えることができ、該可動部分への負荷を大幅に軽減してエンジン始動に係わる部品の寿命を長くし、部品コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。更に、両メイン油路間を遮断した後に油圧モータの制動を解除するので、エンジン始動時に、油圧モータの制動解除と同時に油圧モータの出力軸が坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。
請求項3において、簡単な構成により両メイン油路間を連通させることができ、バイパス機構に必要なコストの低減を図ることができる。
請求項4により、バイパス機構において、いわゆるフリーホイールを防止する作動油自吸機構を電磁式チェック弁に兼用させることができ、フリーホイール防止用に新たにチェック弁を準備したり該チェック弁装着用の穴を設ける必要がなく、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上や加工コストの低減を図ることができる。
請求項5において、各メイン油路から共通の吸引油路への回路開放のタイミングのずれをなくして、メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧を短時間で解除することができ、作業車両の急発進の防止やエンジン始動を一層確実に行うことができる。加えて、電磁式チェック弁を駆動させるためのアクチュエータを共通化させることができ、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる第一実施例の油圧式無段変速装置の全体構成を示す平面一部断面図である。
【図2】第一実施例の油圧サーボ機構を示す、手動斜板角制御弁の側面断面図である。
【図3】第一実施例のセンタセクションの側面一部断面図である。
【図4】第一実施例のチェックリリーフ弁の側面断面図である。
【図5】第一実施例の油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図6】第一実施例のバイパス機構の油圧制御手順を示すフローチャートである。
【図7】第二実施例のセンタセクションの側面一部断面図である。
【図8】第二実施例の油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図9】第三実施例のセンタセクションの側面一部断面図である。
【図10】第三実施例の油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図11】ピストンの片側に復帰バネを設けた油圧サーボ機構の別形態を示す、手動斜板角制御弁の側面断面図である。
【図12】ピストンの両側に復帰バネを設けた油圧サーボ機構の別形態を示す、手動斜板角制御弁の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、第一実施例の油圧式無段変速装置1の全体構成について、図1乃至図3、図5により説明する。
該油圧式無段変速装置1においては、可変容積型の油圧ポンプ2と固定容積型の油圧モータ3が、ハウジング4に内包されると共に、センタセクション5の同一側面に配設されている。
【0013】
このうちの油圧ポンプ2は、前記センタセクション5に挿嵌されて一端をハウジング4に回動自在に支持された駆動軸2a、該駆動軸2aが挿嵌されて駆動軸2aと一緒に回動するシリンダブロック2b、該シリンダブロック2bに摺動自在に挿嵌されたプランジャ21、及び該プランジャ21の頭部に摺接されたクレイドル式の可動斜板12により構成され、該可動斜板12は、前記ハウジング4に取り付けたクレイドル受け6に固設されたハーフメタル7に、摺接自在に支持されている。これにより、可動斜板12の傾動操作によって、プランジャ21の摺動量を規制し、油圧ポンプ2からの作動油の吐出量と吐出方向を調節可能に構成している。
【0014】
そして、前記プランジャ21は、可動斜板12に対しては、プランジャシュー22を介して摺接されると共に、プランジャ21とプランジャシュー22との摺動部、プランジャシュー22と可動斜板12との摺動部、つまりプランジャ21側の摺動面21a、プランジャシュー22側の摺接面22a・22b、及び可動斜板12側の摺接面12aには、炭化水素や炭素の同素体から成る非晶質の硬質膜による被覆処理、いわゆるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングが施されている。該DLCコーティングは、可動斜板12とハーフメタル7との摺動部、つまり可動斜板12側の摺接面12bとハーフメタル7側の摺接面7aにも施されている。
【0015】
従来の油潤滑では、摩擦係数の温度変化が大きく、補給も常に欠かすことができず、また、テフロン(登録商標)等を塗った固体潤滑では、低強度で磨耗しやすく摩擦係数の経時劣化が大きいが、このように、各摺接部にDLCコーティングを施すことにより、各摺接面の硬度を著しく上昇させて各摺接部の摩擦係数を安定して低下させることができる。これにより、プランジャ21を駆動軸2aの回りに円滑に回転させて、油圧ポンプ2の機械効率を向上させると共に、可動斜板12を滑らかに傾動させて、傾動操作に必要な動力を小さくし、該傾動操作が後述の油圧サーボ機構11を使って確実に行えるようにすることができる。
【0016】
同様に、前記油圧モータ3についても、前記センタセクション5に挿嵌されて一端をハウジング4に回動自在に支持された出力軸3a、該出力軸3aが挿嵌されて出力軸3aと一緒に回動する図示せぬシリンダブロック、プランジャ、及び斜板により構成されている。ただし、該斜板は固定斜板であって、前記ハウジング4に固設されている。また、前記出力軸3aには、油圧シリンダ等のブレーキ作動装置57によって動作する摩擦多板式等のブレーキ機構56が設けられており、油圧モータ3を制動可能な構成としている。
【0017】
更に、前記センタセクション5内には一対のメイン油路9a・9bが形成され、該メイン油路9a・9bにより前記油圧ポンプ2と油圧モータ3とを流体接続して閉回路8が構成されている。そして、該閉回路8には、両メイン油路9a・9bの間を連通・遮断可能な、本発明に係わるバイパス機構87が設けられている。
【0018】
以上のような構成において、エンジン等の駆動源19からの駆動力が、該駆動源19の出力軸20から図示せぬリンク機構を介して前記駆動軸2aに入力されると、前記油圧ポンプ2が駆動されて作動油が吐出される。この吐出された作動油は、センタセクション5内の前記メイン油路9a・9bを介して油圧モータ3に供給され、該油圧モータ3は、この際の作動油の流出入によって駆動され、該油圧モータ3の駆動力が、前記出力軸3aから出力される構成としている。
【0019】
また、このような油圧式無段変速装置1の油圧ポンプ2の一側方には、油圧サーボ機構11が配設され、該油圧サーボ機構11においては、ピストン13の内部にスプール16を配置して成る手動斜板角制御弁14が、油圧式無段変速装置1のハウジング4に一体的に構成されている。更に、該油圧サーボ機構11を手動操作する変速レバー18には、中立位置保持機構15が配設されており、これにより、変速レバー18に操作力がかかっていない状態では、前記可動斜板12を中立位置に保持できるようにしている。
【0020】
一方、油圧ポンプ2の駆動軸2aの前端部には、チャージポンプ10が付設され、該チャージポンプ10等より成るチャージ回路86によって、ハウジング4内等に設けられた油溜まり59からフィルター64、油路65を介して吸い上げ加圧された作動油が、後で詳述する一対のチェックリリーフ弁88・88と、前記手動斜板角制御弁14に対して供給されるようにしている。
【0021】
次に、前記油圧サーボ機構11と中立位置保持機構15について、図1、図2、図5により説明する。
油圧サーボ機構11においては、ハウジング4内で前記油圧ポンプ2の可動斜板12の側部にシリンダ室24が形成され、該シリンダ室24内に前記ピストン13が収納されている。そして、該ピストン13の内側面には、前記可動斜板12の側部より突設したピン軸25が嵌合されると共に、ピストン13の軸心位置には貫通孔47が穿孔され、該貫通孔47内に前記スプール16が摺動自在に嵌装されている。
【0022】
ここで、前記ハウジング4には、側方より管継手ボルト28が装着され、該管継手ボルト28の先部は、ピストン13の外周凹部38に挿入され、この状態でピストン13はシリンダ室24内を摺動可能となっているが、ピストン13が摺動方向を回転軸として回動しようとすると、ピストン13に管継手ボルト28が接触してピストン13の回動が規制されるようにしている。
【0023】
前記ピストン13には、パイロット油圧を供給するパイロットポート29、上部の油室26に接続する穿設油路31、該穿設油路31下端に接続する内周油路35、下部の油室27に接続する穿設油路32、該穿設油路32上端に接続する内周油路34、及びスプール16にスプール操作アーム42の操作ロッド部42aを係合可能とするための開口部43が形成されている。該開口部43は、油圧回路44における手動斜板角制御弁14のドレンポート30としても機能し、この開口部43を通って排出された作動油は、中立位置保持機構15のケーシング45と前記ハウジング4との間の空間に形成された油溜まり46内に流入し、中立位置保持機構15等に潤滑油として供されるようにしている。更に、ピストン13を軸心方向に貫通する前記貫通孔47の両端は、蓋48・48により閉塞され、該蓋48・48は、止め輪49・49によって抜止めされると共に、蓋48・48には、Oリング50・50が装着されてパイロット圧による作動油の漏出を防止している。
【0024】
一方、前記スプール16には、その上部にバネ受け凹部51が形成され、該バネ受け凹部51と前記蓋48との間に、スプール16を蓋48に弾性支持するバネ52が介設されている。更に、スプール16の下部には嵌合凹部39が形成され、該嵌合凹部39に、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aの内端が、ピストン13の前記開口部43を通って嵌合されており、スプール16にスプール操作アーム42を係合できるようにしている。そして、操作ロッド部42aの外端に、前記中立位置保持機構15が配設されると共に、前記変速レバー18が連結連動されている。更に、スプール16の摺動方向途中部には、外周油路33を挟んで上下に排出油路36・37が形成され、このうちの外周油路33は、中立位置において前記パイロットポート29に開口されるようにしている。
【0025】
以上のような構成の油圧サーボ機構11の制御構成について説明する。
前記チャージポンプ10は、途中にラインフィルタ53を配した外部配管等からなる油路54、油路55を介してハウジング4内の油路40に接続され、該油路40は、更に、前記外周凹部38を介してパイロットポート29に接続されており、該パイロットポート29を介して、前記スプール16の外周油路33にパイロット圧がかかった状態となっている。
【0026】
手動斜板角制御弁14が、図2によって示される中立位置78に設定されると、スプール16の外周油路33がピストン13の内周壁面によって閉塞されているため、パイロットポート29、ドレンポート30のいずれも接続が断たれ、ピストン13へのパイロット圧は供給されない。
【0027】
そこで、前記手動斜板角制御弁14を作用位置79又は80に設定すると、次のようなピストン制御が行われる。すなわち、前記変速レバー18を操作し、スプール操作アーム42を介してスプール16を上昇させると、スプール16の外周油路33と、ピストン13の内周油路34とが接続し、パイロットポート29内の作動油が、外周油路33、内周油路34、該内周油路34に接続された前記穿設油路32を経由して、下部の油室27に流入し、この流入した作動油の圧力によってピストン13が上昇する。この場合、スプール16はスプール操作アーム42に係合して位置が保持されているため、ピストン13が上昇することにより、スプール16が中立位置78に復帰することとなり、再び、前記外周油路33と内周油路34との接続が断たれて、ピストン13の移動が止まると共にピストン13の位置が保持される。
【0028】
逆に、スプール16を下降させると、スプール16の外周油路33と、ピストン13の内周油路35とが接続し、パイロットポート29内の作動油が、外周油路33、内周油路35、該内周油路35に接続された前記穿設油路31を経由して、上部の油室26に流入し、この作動油の圧力によってピストン13は下降する。この場合も、スプール16は、スプール操作アーム42に係合して位置が保持されているため、ピストン13が下降することにより、スプール16が中立位置78に復帰することとなり、再び、前記外周油路33と内周油路35との接続が断たれて、ピストン13の移動が止まると共にピストン13の位置が保持されるのである。
【0029】
なお、ピストン13の上下の油室26・27からの戻り油については、ピストン13を上昇させる場合は、スプール16の排出油路37と、ピストン13の内周油路35とが接続し、上部の油室26内の作動油は、穿設油路31、内周油路35、排出油路37を経由し、更にスプール16の中空部41からピストン13の前記開口部43を通って油溜まり46へと排出される。逆に、ピストン13を下降させる場合は、スプール16の排出油路36と、ピストン13の内周油路34とが接続し、下部の油室27内の作動油は、穿設油路32、内周油路34、排出油路36を経由し、同様に、前記スプール16の中空部41から油溜まり46へと排出される。
【0030】
以上のように、前記ピストン13に、シリンダ室24の上部と下部の油室26・27に連通する各種油路を形成し、該油路をスプール16の摺動によって連通又は遮断して前記油室26・27に圧油としての作動油を給排し、ピストン13の両端に圧力差を発生させてピストン13を摺動制御することにより、ピン軸25を介して可動斜板12を回動し、油圧式無段変速装置1を変速するようにしている。
【0031】
また、前記中立位置保持機構15は、前記ケーシング45によって、前記油圧式無段変速装置1に一体的に内装され、該ケーシング45内に形成される空間45aには、デテントロッド66が軸心方向へ摺動自在に設けられ、該デテントロッド66は、その両端を前記空間45a内の図示せぬ上下の凹部に支持されており、該凹部に螺挿したアジャストボルト等によってデテントロッド66の上下位置を調整できるようにしている。
【0032】
該デテントロッド66の長手方向略中央部に設けた図示せぬ固定部に位置を合わせるようにして、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aの外端が前記空間45a内に挿入されると共に、該操作ロッド部42aの外端と前記デテントロッド66の固定部とは、空間45a内の図示せぬ上下のバネにより付勢されたバネ受けによって、上下両側から一緒に挟持される構成となっている。
【0033】
一方、前記変速レバー18は、ケーシング45の回動軸72に固定され、該回動軸72を中心に回動自在に支持されると共に、該回動軸72には、前記操作ロッド部42aを外嵌して固定支持する支持アーム部42bが回動自在に軸支されている。そして、この回動軸72の外周部には、捻りバネ74が回動自在に巻回され、該捻りバネ74には、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aの外端が挟持されている。更に、回動軸72には、該回動軸72と一体的に回動する連動アーム75が固設されており、該連動アーム75から後方に突出した係合部75aも、前記捻りバネ74によって挟持されている。
【0034】
このような構成において、前記変速レバー18を回動操作すると、回動軸72に固設される連動アーム75と、該連動アーム75を挟持する捻りバネ74とが一体的に回動され、更に、該捻りバネ74に挟持される、操作ロッド部42aの外端も、捻りバネ74と一体的に回動される。つまり、変速レバー18を回動操作すると、スプール操作アーム42が連動アーム75と捻りバネ74を介して一体的に回動され、前記スプール16を移動操作することができる。
【0035】
そして、前記変速レバー18が回動操作されていない状態においては、スプール操作アーム42は、その操作ロッド部42aの外端が位置固定されているデテントロッド66の固定部と一緒に、上下のバネにより付勢されたバネ受けによって挟み込まれているので、該固定部の位置で、その回動位置が保持される。これにより、たとえ変速レバー18に操作力がかかっていなくても、操作ロッド部42aの外端が固定部の位置で保持されている状態で、油圧ポンプ2の可動斜板12が中立位置に位置するように調節されている。
【0036】
次に、以上のような斜板制御機構を備えた油圧式無段変速装置1におけるチャージ回路86と、本発明に係わるバイパス機構87について、図3乃至図6により説明する。
図3乃至図5に示すように、チャージ回路86においては、前記チャージポンプ10が前述の如く油路54に接続され、該油路54からはチャージ油路89が分岐し、該チャージ油路89と前記メイン油路9a・9bとの間には、前記チェックリリーフ弁88・88が、それぞれに介設されている。そして、該チェックリリーフ弁88・88により、前記メイン油路9a・9bに対して作動油を給排できるようにしている。
【0037】
該チェックリリーフ弁88は、前記メイン油路9a・9bが形成されるセンタセクション5上部の弁穴5a内に構成されている。該弁穴5aの内側端部には弁部材90が摺動自在に嵌装される一方、弁穴5aの外側端部にはプラグ91が螺装されており、該プラグ91に形成される収納穴91a内には、バネ受け部材92が摺動自在に嵌装されている。該バネ受け部材92により塞がれた収納穴91a内の空間には、チェックバネ93が収納され、該空間はチェックバネ室94として構成されている。
【0038】
更に、前記バネ受け部材92と弁部材90との間には、リリーフバネ95が介装され、これらバネ受け部材92と弁部材90とで囲まれた弁穴5a内の空間はリリーフバネ室96として構成され、該リリーフバネ室96は、前記メイン油路9a・9bに連通されている。なお、前記プラグ91における収納穴91a形成部分の周面とバネ受け部材92との間には、嵌合隙間が形成され、リリーフバネ室96とチェックバネ室94とは相互に連通されている。
【0039】
前記バネ受け部材92の軸心には、リリーフピン97が一体的に摺動可能に固設され、該リリーフピン97は、前記弁部材90に形成された連通孔90aを貫通して、前記リリーフバネ室96とチャージ油路89とを連通するように、該チャージ油路89側まで延設されている。そして、リリーフピン97でチャージ油路89側の先端には頭部97aが形成されているが、リリーフピン97がリリーフバネ95によりプラグ91側に付勢されているため、該頭部97aのシート部97bが、弁部材90の連通孔90a周縁部に当接するようにして該連通孔90aを閉塞している。
【0040】
これら弁部材90、リリーフバネ95、バネ受け部材92、及びリリーフピン97は、一体的に弁穴5a内を摺動自在な弁体98に構成され、該弁体98は、前記チェックバネ93により内側方向へ付勢されており、弁部材90が弁穴5a内側端部のシート部5bに当接された状態にある。
【0041】
このような構成において、メイン油路9a・9b及びリリーフバネ室96内の作動油が不足して油圧が低下すると、チャージ油路89側の作動油の油圧により弁部材90がプラグ91側へ移動され、チャージ油路89からメイン油路9a・9bへ作動油が補給される。すなわち、チェックリリーフ弁88・88は、メイン油路9a・9bの作動油が不足した場合には、チャージ回路86からメイン油路9a・9bに作動油を補給するチェック弁として機能する。
【0042】
逆に、メイン油路9a・9b及びリリーフバネ室96内の作動油の油圧が高圧になると、前記弁部材90がシート部5bに押し付けられて、チャージ油路89とリリーフバネ室96との間が遮断される。更に、メイン油路9a・9b及びリリーフバネ室96内の作動油の油圧が、所定のリリーフ設定圧以上になると、リリーフピン97における頭部97aのシート部97bにかかる圧力が、リリーフバネ95の付勢力よりも大きくなって、該リリーフピン97がチャージ油路89側へ移動し、弁部材90の連通孔90aが開いて、メイン油路9a・9b内の作動油がチャージ油路89側へ逃げる。すなわち、チェックリリーフ弁88・88は、メイン油路9a・9bの圧力が所定のリリーフ設定圧よりも大きくなった場合には、作動油をチャージ回路86に逃がすリリーフ弁としても機能する。なお、該チェックリリーフ弁88・88に至るまでのチャージ回路86中には、リリーフ弁61も接続されており、該リリーフ弁61によって、チャージ回路86内の油圧を調整できるようにしている。
【0043】
そして、このような回路構成から成るチャージ回路86は、たとえ作業中や走行中にエンジン19がストップしても、その間は、油溜まり59等に対しても強制的に開放された状態には設定されておらず(以下、「非開放状態」とする)、チャージ回路86内には十分な作動油が充填された状態にあるため、エンジンストップによって作動油が不足気味となったメイン油路9a・9b内にも、このようなチャージ回路86を経由して作動油を十分に補給することができる。
【0044】
また、以上のようなチャージ回路86に加えて前記バイパス機構87が設けられている。
図3、図5に示すように、該バイパス機構87は、前記メイン油路9a・9b間を連通するバイパス油路99と、該バイパス油路99の径路途中に介設された電磁式切替弁100と、該電磁式切替弁100を作動するソレノイド81とから構成される。このうちのバイパス油路99は、センタセクション5下部に前記メイン油路9a・9bと直交するように形成されている。また、電磁式切替弁100については、2ポート二位置切替式に構成されており、第一切替位置ではバイパス油路99が遮断され、第二切替位置ではバイパス油路99が開通されるようにしている。
【0045】
該電磁式切替弁100は、前記メイン油路9a・9bが形成されるセンタセクション5下部の弁穴5c内に形成されている。該弁穴5c内には、直径方向に連通孔102aが貫通された円柱状の弁部材102が摺動自在に嵌装され、該弁部材102の内側端部と弁穴5cの内壁面との間の空間に付勢バネ103が収納される一方、弁部材102の外側端部には、センタセクション5下面に垂設した前記ソレノイド81から内側に突出されたピストンピン104の先端が連結されている。
【0046】
該ソレノイド81は、エンジン始動からの経過時間を計測するタイマー101aを備えたコントローラ101に接続され、該コントローラ101には、エンジン19の図示せぬフライホイールギアと噛合するスタータギア106を回動するためのセルモータ105、前記油圧モータ3のブレーキ機構56を動作させるためのブレーキ作動装置57、及びこれらセルモータ105・ブレーキ作動装置57と前記ソレノイド81とを入切するための始動スイッチ107が接続されている。
【0047】
このような構成において、運転席等に配置されたエンジンキー等の始動スイッチ107を「入」に設定すると、図示せぬバッテリからセルモータ105に電流が流れ、該セルモータ105により前記スタータギア106を介してフライホイールギアが回動されて、前記エンジン19が始動される。同時に、始動スイッチ107からのスイッチ入信号が前記コントローラ101に送信され、該コントローラ101が、この受信したスイッチ入信号等に基づいて、前記油圧モータ3のブレーキ作動装置57に対して制動信号を送信し、出力軸3aが制動される。その後に、コントローラ101は、前記ソレノイド81に対して開弁信号を送信し、該ソレノイド81が励磁され、前記ピストンピン104が、付勢バネ103の付勢力に抗して、前記弁部材102を、図3に示す位置から更に内側方向(図3では上方向)に押動する。すると、両メイン油路9a・9b間が、弁部材102内に貫通された前記連通孔102aとバイパス油路99を介して連通される。
【0048】
これにより、エンジン始動時には、メイン油路9a・9b間が自動的に連通されて、メイン油路9a・9b内の作動油が油溜まりに流出することなく、作動油の油圧だけを強制的に解除させることができる。しかも、この際、前述の如く、チャージ回路86は非開放状態にあるため、チャージ回路86内の作動油が油溜まりに強制的に流出されることがなく、該チャージ回路86から前記メイン油路9a・9b内に作動油を十分に補給することができる。更に、このようにメイン油路9a・9b間が連通される直前に、油圧モータ3が自動的に制動されるため、メイン油路9a・9b内の油圧解除に伴って油圧モータ3の出力軸3aが坂道で自由回転するのを、確実に防止することができる。
【0049】
また、このようなバイパス機構87による油圧制御構成について説明する。
図6に示すように、油圧制御が開始されると、前記コントローラ101によって、エンジン始動指令が発せられたか否かが判断される。該判断においては、前記始動スイッチ107からのスイッチ入信号以外に、エンジン始動に必要な条件、例えば本実施例では、変速レバー18が中立位置にあること、本発明に係わる油圧式無段変速装置1を搭載した作業車両の運転席に作業者が着座済みであること等について各種センサー類が検知して得た複数の信号が、前記コントローラ101に読み込まれる。そして、これらの信号に基づいて、コントローラ101が、エンジン始動指令が発せられたものと判断すれば(ステップS1、YES)、制動信号をブレーキ作動装置57に送信してブレーキ機構56により油圧モータ3を制動する(ステップS2)。引き続き、ソレノイド81には開弁信号を送信して電磁式切替弁100を開弁し、メイン油路9a・9b間を連通させる(ステップS3)。これにより、メイン油路9a・9b間が連通する前に予め油圧モータ3を制動しておくことができ、メイン油路9a・9b内の作動油の油圧解除と同時に油圧モータ3の出力軸3aが自由回転するのを回避することができる。
【0050】
ここで、前記コントローラ101には、エンジン始動指令が発せられて(ステップS1)から電磁式切替弁100を閉弁する(ステップS5)までの所定の時間(以下、「バイパス時間」とする。)Tbが、予め記憶されており、該バイパス時間Tbの間に、エンジン始動により作動油が供給されて駆動を開始した油圧サーボ機構11によって、傾倒状態にあった可動斜板12を中立位置に復帰させることができる。
【0051】
そして、該バイパス時間Tbと、前記コントローラ101中のタイマー101aにより測定したエンジン始動指令からの経過時間Tとを比較し、該経過時間Tが前記バイパス時間Tbを超えれば(ステップS4、YES)、ソレノイド81に閉弁信号を送信して電磁式切替弁100を閉弁し、メイン油路9a・9b間を遮断する(ステップS5)。つまり、可動斜板12が中立位置に復帰するまでの間は、メイン油路9a・9b間が連通状態に保持されると共に、エンジン始動のための操作を何度繰り返しても電磁式切替弁100が開弁したままで動作しないように設定されており、前記弁部材102等の可動部分は非作動状態にある。
【0052】
このように前記メイン油路9a・9b間を遮断した後は、前記ブレーキ作動装置57に制動解除信号を送信して油圧モータ3の制動を解除する(ステップS6)。これにより、油圧モータ3の制動を解除する前に予めメイン油路9a・9b間を遮断しておくことができ、油圧モータ3の制動を解除すると同時に油圧モータ3の出力軸3aが自由回転するのを回避することができる。
【0053】
すなわち、以上のように、油圧ポンプ2と油圧モータ3のうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、本実施例では油圧ポンプ2を可変容積型に構成して可動斜板12を設け、該可動斜板12の斜板角を制御する油圧サーボ機構11を備えた油圧式無段変速装置1において、前記油圧ポンプ2と油圧モータ3を接続する一対のメイン油路9a・9bの間を連通・遮断するバイパス機構87、該バイパス機構87のアクチュエータであるソレノイド81の動作を制御する制御装置であるコントローラ101、及び作動油を前記両メイン油路9a・9bに補給するチャージ回路86を設け、前記油圧式無段変速装置1を駆動するエンジン19の始動時には、前記油圧モータ3を制動した後に前記バイパス機構87により前記両メイン油路9a・9b間を連通すると共に、前記チャージ回路86を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成を備えたので、作業中や走行中にエンジンストップした後にエンジン19を始動させる場合に、前記メイン油路9a・9bとチャージ回路86内の作動油のいずれも油溜まり59に流出させることなく、メイン油路9a・9b内に閉じこめられた作動油の油圧を解除することができ、発進応答性や発進駆動力の低下を防ぎつつ、作業車両の急発進の防止、インターロックの簡略化・省略による製造コストの低減、入力トルクの減少による確実なエンジン始動、及び負担軽減による始動装置の寿命向上とコンパクト化を図ることができる。更に、油圧モータ3を制動した後に両メイン油路9a・9b間を連通するので、エンジン始動時に、メイン油路9a・9b内の油圧解除に伴って油圧モータ3の出力軸であるモータ軸3aが坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。
【0054】
更に、前記バイパス機構87は、前記両メイン油路9a・9b間を連通状態と遮断状態との間で切り換え可能な電磁式切替弁100とするので、簡単な構成により両メイン油路9a・9b間を連通させることができ、バイパス機構87に必要なコストの低減を図ることができる。
【0055】
加えて、前記バイパス機構87は、前記エンジン始動時から所定のバイパス時間Tb経過後に前記両メイン油路9a・9b間を遮断し、該遮断後に前記油圧モータ3の制動を解除するので、該バイパス時間Tbを適正に調節することにより、可動斜板12が中立位置に戻るまでの時間を確実に確保しつつ、前記バイパス機構87においてメイン油路9a・9b間の連通・遮断に係わる切替弁やチェック弁等、本実施例では電磁式切替弁100の可動部分の動作回数を最小限に抑えることができ、該可動部分への負荷を大幅に軽減してエンジン始動に係わる部品の寿命を長くし、部品コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。更に、両メイン油路9a・9b間を遮断した後に油圧モータ3の制動を解除するので、エンジン始動時に、油圧モータ3の制動解除と同時に油圧モータ3の出力軸であるモータ軸3aが坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。なお、以下には油圧式無段変速装置1の各種別形態について説明するが、同じ部材については油圧式無段変速装置1と同一の符号・部材名を使用するものである。
【0056】
次に、第二実施例の油圧式無段変速装置1Aについて、図7、図8により説明する。
該油圧式無段変速装置1Aは、前記油圧式無段変速装置1のメイン油路9a・9b間に、単一の電磁式切替弁100を備えたバイパス機構87のかわりに、一対の電磁式チェック弁108・108や共通の吸引油路110等を備えたバイパス機構87Aを介設したものであり、これにより、該バイパス機構87Aにおいて、いわゆるフリーホイールを防止するための作動油自吸機構を電磁式チェック弁108・108に兼用させることができる。
【0057】
該バイパス機構87Aは、前記メイン油路9a・9b間を連通するバイパス油路99と、該バイパス油路99の径路途中に介設された一対の電磁式チェック弁108・108と、該両電磁式チェック弁108・108を作動する一対のソレノイド82・82と、前記油溜まり59から該両電磁式チェック弁108・108まで配設された共通の吸引油路110とから構成される。
【0058】
前記両電磁式チェック弁108・108は、それぞれ、前記メイン油路9a・9bが形成されるセンタセクション5A下部に並設した弁穴5d・5e内に形成されている。このうちの弁穴5d内には、軸方向略中央部において直径方向に連通路112aが貫通された筒状の弁ケース112が嵌装固定されると共に、該連通路112a両端は、前記吸引油路110に同軸上で連通されている。
【0059】
そして、該弁ケース112で連通路112aよりも下部空間には、プッシュピン113が摺動可能に嵌装され、該プッシュピン113の基部には、センタセクション5A下面に垂設したソレノイド82から内側に突出されたピストンピン111の先端が連結されている。該ソレノイド82も、前記ソレノイド81と同様に、コントローラ101に接続され、該コントローラ101には、セルモータ105、前記油圧モータ3のブレーキ機構56を動作させるためのブレーキ作動装置57、及びこれらセルモータ105・ブレーキ作動装置57と前記ソレノイド82とを入切するための始動スイッチ107が接続されている。
【0060】
一方、前記弁ケース112で連通路112aよりも上部空間には、球状の弁部材114が前記プッシュピン113に対向するようにして収納されている。該弁部材114の上端からはピン状のガイド部114aが突設され、該ガイド部114aには付勢バネ115が巻回されており、該付勢バネ115は、前記弁穴5dの内壁面に嵌設したバネ受け116と弁部材114の上肩部との間に介装されると共に、該弁部材114は、前記付勢バネ115により、連通路112a途中の開口部に設けられた弁座112bに向かって付勢されている。
【0061】
そして、弁穴5dの側方に共通の吸引油路110を介して並設された前記弁穴5e内にも、同様にして、プッシュピン113、弁部材114等を収納した弁ケース112が嵌装固定されている。また、両電磁式チェック弁108・108とも、弁ケース112・112の上部空間は、バイパス油路99を介して、それぞれメイン油路9a・9bに連通されている。
【0062】
このような構成において、始動スイッチ107を「入」に設定すると、セルモータ105に電流が流れてエンジン19が始動されると同時に、コントローラ101が、始動スイッチ107から受信したスイッチ入信号等に基づいて、前記ブレーキ作動装置57に対して制動信号を送信し出力軸3aが制動された後、前記ソレノイド82・82に開弁信号を送信する。すると、該ソレノイド82・82が励磁され、前記ピストンピン111・111が、付勢バネ115・115の付勢力に抗して、前記弁部材114・114を、図7に示す位置から更に内側方向(図7では上方向)に押動する。
【0063】
その後、弁部材114・114は弁座112bから離間され、電磁式チェック弁108・108における弁ケース112・112内の上部空間を、連通路112a・112aを介して、共通の吸引油路110に開放する。これにより、両メイン油路9a・9b間が、バイパス油路99、弁ケース112の上部空間、連通路112a・112a、共通の吸引路110を介して連通されることとなる。
【0064】
この際、両メイン油路9a・9b内の作動油が不足すると、発生した負圧により、付勢バネ115・115の付勢力に抗して弁部材114・114が上昇し、電磁式チェック弁108・108が開弁される。すると、油溜まり59から作動油が吸引され、該作動油は、開口110aから前記吸引油路110に流入し、更に、連通路112a・112a、弁ケース112の上部空間、及びバイパス油路99・99を経由して、両メイン油路9a・9bに補給される。つまり、本バイパス機構87Aにおいては、電磁式チェック弁108・108が自吸式チェック弁として機能するようにしている。
【0065】
すなわち、前記バイパス機構87Aには、前記両メイン油路9a・9bにそれぞれ連通する一対の電磁式チェック弁108・108と、該両電磁式チェック弁108・108を油溜まり59に連通する共通の吸引油路110を設け、該吸引油路110に対して前記電磁式チェック弁108・108を同時に開弁することにより、前記吸引油路110を介して前記両メイン油路9a・9b間を連通するので、バイパス機構87Aにおいて、いわゆるフリーホイールを防止する作動油自吸機構を電磁式チェック弁108・108に兼用させることができ、フリーホイール防止用に新たにチェック弁を準備したり該チェック弁装着用の穴を設ける必要がなく、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上や加工コストの低減を図ることができる。
【0066】
次に、第三実施例の油圧式無段変速装置1Bについて、図9、図10により説明する。
該油圧式無段変速装置1Bは、前記油圧式無段変速装置1Aのメイン油路9a・9b間に、バイパス機構87Aの代わりに、一対の電磁式チェック弁の開弁を単一のピストンにより操作可能なバイパス機構87Bを介設したものであり、これにより、回路開放のタイミングのずれをなくすと共に、部品の共通化を図ることができる。
【0067】
該バイパス機構87Bは、前記メイン油路9a・9b間を連通するバイパス油路99と、該バイパス油路99の径路途中に介設された一対の電磁式チェック弁117・117と、該電磁式チェック弁117・117を作動する単一のソレノイド83と、前記油溜まり59から該両電磁式チェック弁117・117まで配設された共通の吸引油路118とから構成される。
【0068】
前記両電磁式チェック弁117・117は、それぞれ、前記センタセクション5B側部でメイン油路9a・9bに直交するように設けた弁穴5f・5g内に形成されている。このうちの弁穴5f内には、バネ受け部材119が摺動自在に嵌装される一方、弁穴5fの外側端部にはプラグ120が螺装されており、該プラグ120の内側端と前記バネ受け部材119の外側凹部119aとの間には、付勢バネ121が介装されている。そして、弁穴5f内でバネ受け部材119よりも内側の内部空間125には、外側にロート状に開いた弁部材122が摺動可能に嵌装され、該弁部材122の内側突起122aは、前記吸引油路118に内挿されている。
【0069】
このような弁穴5fに対向するように、共通の吸引油路118を介して並設された前記弁穴5g内にも、同様にして、プラグ120、付勢バネ121、バネ受け部材119、及び弁部材122が配設されている。また、両電磁式チェック弁117・117とも、前記内部空間125は、開口5h・5iからバイパス油路99を介して前記メイン油路9a・9bに連通されている。
【0070】
そして、前記吸引油路118の中央下部より操作穴5jが垂設され、該操作穴5jには、プッシュバー123が外側から摺動自在に嵌装され、該プッシュバー123の軸心上には、連通路123aが形成されており、該連通路123aの内端は、前記吸引油路118に開口される一方、連通路123aの外端は、開口123bを介して油溜まり59に連通されている。
【0071】
このプッシュバー123の基部には、センタセクション5B下面に垂設したソレノイド83から内側に突出されたピストンピン124の先端が連結されている。該ソレノイド83も、前記ソレノイド82と同様に、コントローラ101に接続され、該コントローラ101には、セルモータ105、前記油圧モータ3のブレーキ機構56を動作させるためのブレーキ作動装置57、及びこれらセルモータ105・ブレーキ作動装置57と前記ソレノイド83とを入切するための始動スイッチ107が接続されている。
【0072】
更に、通常の前記弁部材122・122は、前記メイン油路9a・9bから前記内部空間125に流出する作動油の圧力により、弁穴5f・5gの内端の弁座5m・5nに向かって付勢されており、通常は両電磁式チェック弁117・117は閉弁されている。同時に、前記弁部材122・122の内側突起122a・122aが、前記プッシュバー123の内端を先細り状に切り欠いて形成した切欠面123cに対して付勢されている。
【0073】
このような構成において、始動スイッチ107を「入」に設定すると、セルモータ105に電流が流れてエンジン19が始動されると同時に、コントローラ101が、始動スイッチ107から受信したスイッチ入信号等に基づいて、前記ブレーキ作動装置57に対して制動信号を送信し出力軸3aが制動された後、単一の前記ソレノイド83に開弁信号を送信する。すると、該ソレノイド83が励磁され、ピストンピン124による単一のピストン動作により、プッシュバー123が内側に押動され、該プッシュバー123により、メイン油路9a・9bからの油圧による付勢力に抗して、前記弁部材122・122が外方に同時に押動される。
【0074】
すると、該弁部材122・122は、弁座5m・5nから離間し、バネ受け部材119・119を外方に押し出しながら移動される。これにより、前記内部空間125・125を、弁部材122・122の外周面と弁座5m・5nとの間の隙間を介して、共通の吸引油路118に同時に開放する。つまり、電磁式チェック弁117・117を同時に開弁して、両メイン油路9a・9b間が、バイパス油路99、開口5h・5i、内部空間125・125、共通の吸引油路118を介して連通される。
【0075】
すなわち、前記両電磁式チェック弁117・117は、単一のピストン動作により、前記吸引油路118に対して同時に開弁するので、各メイン油路9a・9bから共通の吸引油路118への回路開放のタイミングのずれをなくして、メイン油路9a・9b内に閉じこめられた作動油の油圧を短時間で解除することができ、作業車両の急発進の防止やエンジン始動を一層確実に行うことができる。加えて、電磁式チェック弁117・117を駆動させるためのアクチュエータであるソレノイド83を共通化させることができ、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0076】
なお、この際も、両メイン油路9a・9b内の作動油が不足すると、発生した負圧により、付勢バネ121・121の付勢力に抗して弁部材122・122が外方に移動し、電磁式チェック弁117・117が開弁される。すると、油溜まり59から作動油が吸引され、該作動油は、開口123b、連通路123aから前記吸引油路118に流入し、更に、内部空間125・125、開口5h・5i、及びバイパス油路99を経由して、両メイン油路9a・9bに補給される。つまり、本バイパス機構87Bにおいても、電磁式チェック弁117・117が自吸式チェック弁として機能するようにしている。
【0077】
次に、前記油圧サーボ機構11の別形態について、図2、図11、図12により説明する。
別形態の油圧サーボ機構11A・11Bのいずれも、前記油圧サーボ機構11に、エンジンストップによって前記チャージ回路86からの作動油の供給が途絶えると可動斜板12を中立位置に自動的に復帰させる中立復帰バネ機構を新たに設けたものであり、これにより、前述したバイパス機構87・87A・87Bによる作業車両の急発進の防止等を一層確実なものとすることができる。
【0078】
図2、図11に示すように、前記油圧サーボ機構11Aは、前記サーボ機構11の上部に、中立復帰バネ機構126を新たに設けたものである。
該油圧サーボ機構11Aにおいては、前記ピストン13を上方に延出するようにしてピストン128が形成され、該ピストン128内の下半部には、前記ピストン13と同じ油路構造を設けた上で、前述と同じスプール16が収納される一方、該ピストン128内の上半部には、前記中立復帰バネ機構126が設けられており、これにより、手動斜板角制御弁14Aがハウジング4A内に一体的に配置されている。
【0079】
前記中立復帰バネ機構126では、前記ピストン128の上部にバネ穴128aが形成され、該バネ穴128aの下部底面上には、復帰バネ129を巻装した下バネ受け部材131が収納される一方、前記ハウジング4Aの上部には、外部の調節ナット132により高さ位置調節可能な支持ピン134が、前記ピストン128と同一軸心上に螺挿されている。
【0080】
該支持ピン134の上下途中部で前記ハウジング4Aの内側には、係止ナット133により上限位置調節可能な上バネ受け部材130が摺動自在に外嵌されると共に、前記支持ピン134の下部には、大径部134aにより下限位置が規制された前記下バネ受け部材131が摺動自在に外嵌されている。そして、該下バネ受け部材131の外周鍔部131aと前記上バネ受け部材130の外周鍔部130aとの間に、前記復帰バネ129が張設され、該復帰バネ129の上下端は、ぞれぞれ、外周鍔部130a・131aに連結固定されている。
【0081】
なお、図11に示すような中立位置では、前記復帰バネ129により、上バネ受け部材130が前記係止ナット133の下面に、下バネ受け部材131が大径部134aの係止肩部134bに、それぞれ当接された状態で保持されるように、係止ナット133と係止肩部134bの高さ位置を、係止ナット133や調節ナット132の回転移動により調節するようにしている。
【0082】
このような構成において、ピストン128が中立位置よりも上方に位置する場合にエンジン19がストップすると、復帰バネ129の上端は、上限位置にある上バネ受け部材130の外周鍔部130aによって支持固定され、復帰バネ129は上端位置が固定された状態にあり、この状態で、復帰バネ129は、下バネ受け部材131によって圧縮されるため、付勢力は、下バネ受け部材131の外周鍔部131aを介して、ピストン128を押し下げるように作用し、該ピストン128は下降を開始して中立位置にて停止する。
【0083】
逆に、ピストン128が中立位置よりも下方に位置する場合にエンジン19がストップすると、復帰バネ129の下端は、下限位置にある下バネ受け部材131の外周鍔部131aによって支持固定され、復帰バネ129は下限位置が固定された状態にあり、この状態で、復帰バネ129は、バネ穴128a上部内壁面に係止した止め輪135によって圧縮されるため、付勢力は、上バネ受け部材130の外周鍔部130aから止め輪135を介して、ピストン128を押し上げるように作用し、該ピストン128は上昇を開始して中立位置にて停止する。
【0084】
また、図2、図12に示すように、前記油圧サーボ機構11Bは、前記サーボ機構11の上下部に、上部中立復帰バネ機構127Aと下部中立復帰バネ機構127Bから成る中立復帰バネ機構127を新たに設けたものである。
該油圧サーボ機構11Bにおいては、前記ピストン13に下部中立復帰バネ機構127Bを内設するための係止構造を設けるようにしてピストン136が形成され、該ピストン136内に前記ピストン13と同じ油路構造を設けた上で、前述と同じスプール16が収納されている。そして、このようなピストン136の上下方に、それぞれ、前記上部中立復帰バネ機構127Aと下部中立復帰バネ機構127Bが設けられており、これにより、手動斜板角制御弁14Bがハウジング4B内に一体的に配置されている。
【0085】
このうちの上部中立復帰バネ機構127Aにおいては、前記ピストン136の上面に、上復帰バネ139を巻装した上バネ受け部材137が載置される一方、前記ハウジング4Bの上部には、外側の調節ナット141により高さ位置調節可能な支持ピン142が、前記ピストン136と同一軸心上に螺挿されている。
【0086】
該支持ピン142の下部には、大径部142aにより下限位置が規制された前記上バネ受け部材137が摺動自在に外嵌されている。そして、該上バネ受け部材137の外周鍔部137aと前記ハウジング4Bの天井面との間に、前記上復帰バネ139が張設され、該上復帰バネ139の上下端は、ぞれぞれ、前記ハウジング4Bの天井面4Baと上バネ受け部材137の外周鍔部137aに連結固定されている。
【0087】
更に、前記下部中立復帰バネ機構127Bにおいては、前記ハウジング4Bの底面に、下復帰バネ140を内部に収納した第一下バネ受け部材138が載置される一方、スプール16の下方を閉塞する前記蓋48の下には、前記止め輪49を介して第二下バネ受け部材143が嵌合されている。そして、該第二下バネ受け部材143の外周鍔部143aと、前記第一下バネ受け部材138の内周凹部138aとの間には、前記下復帰バネ140が張設されており、該下復帰バネ140の上下端は、ぞれぞれ、前記外周鍔部143aと内周凹部138aに連結固定されている。
【0088】
なお、図12に示すような中立位置では、前記上下の復帰バネ139・140によってピストン136が保持されるように、上バネ受け部材137が前記大径部142aの係止肩部142bに当接された状態で保持されるように、係止肩部142bの高さ位置を、調節ナット141の回転移動により調節するようにしている。
【0089】
このような構成において、ピストン136が中立位置よりも上方に位置する場合にエンジン19がストップすると、上復帰バネ139は圧縮され、下復帰バネ140は引っ張られた状態にあるため、各バネ139・140の付勢力はピストン136を押し下げるように作用し、該ピストン136は下降を開始して中立位置にて停止する。
【0090】
逆に、ピストン136が中立位置よりも下方に位置する場合にエンジン19がストップすると、上復帰バネ139は引っ張られ、下復帰バネ140は圧縮された状態にあるため、各バネ139・140の付勢力はピストン136を押し上げるように作用し、該ピストン136は上昇を開始して中立位置にて停止する。
【0091】
以上のように、エンジンストップによって前記チャージ回路86からの作動油の供給が途絶えると、油圧サーボ機構11Aでは、ピストン128の上方に配設した復帰バネ129の付勢力により、ピストン128は中立位置に自動的に移動され、油圧サーボ機構11Bでは、ピストン136の上下方に配設した複数の復帰バネ139・140の付勢力により、ピストン136は中立位置に自動的に移動され、これにより、いずれのピストン128・136も、ピン軸25を介して前記可動斜板12を回動し、該可動斜板12を中立位置に復帰させることができる。なお、油圧サーボ機構11Bでは、複数の復帰バネ139・140が必要となるものの、上下からバネの付勢力を作用させることができ、油圧サーボ機構11Aに比べて、一層迅速かつ円滑にピストン136を中立位置に復帰させることができる。
【0092】
すなわち、前記油圧サーボ機構11A・11Bには、エンジンストップによって前記チャージ回路86からの作動油の供給が途絶えると可動斜板12を中立位置に自動的に復帰する中立復帰バネ機構126・127を設け、該中立復帰バネ機構126・127は、前記可動斜板12に連結連動するピストン128・136の上下部の少なくとも一方に配設したので、メイン油路9a・9b内に閉じこめられた作動油の油圧の、前記バイパス機構87・87A・87Bによる自動解除が遅れる等した場合であっても、バネの付勢力によってピストン128・136を中立位置に戻して、可動斜板12も中立位置に自動的に復帰させることができ、前述した作業車両の急発進の防止、インターロックの簡略化・省略による製造コストの低減、入力トルクの減少による確実なエンジン始動、及び負担軽減による始動装置の寿命向上とコンパクト化を、より確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた、全ての油圧式無段変速装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1・1A・1B 油圧式無段変速装置
2 油圧ポンプ
3 油圧モータ
9a・9b メイン油路
11・11A・11B 油圧サーボ機構
12 可動斜板
19 エンジン
59 油溜まり
81・82・83 ソレノイド(アクチュエータ)
86 チャージ回路
87・87A・87B バイパス機構
100 電磁式切替弁
101 コントローラ(制御装置)
108・117 電磁式チェック弁
110・118 吸引油路
Tb バイパス時間(所定時間)
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つに可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置に関し、特に、エンジンストップした後に改めてエンジンを始動させた際に、前記油圧モータが不用意に駆動するのを防止するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一対のメイン油路により接続した可変容積型の油圧ポンプと油圧モータを備えた油圧式無段変速装置においては、該油圧ポンプや油圧モータに設けた可動斜板の斜板角を油圧サーボ機構によって制御するものが知られている。
【0003】
該油圧サーボ機構によって可動斜板を傾動操作する油圧式無段変速装置を搭載した作業車両においては、作業中や走行中にエンジンストップした場合、エンジン動力により補給されている油圧サーボ機構内の作動油の油圧も同時になくなるため、たとえ油圧サーボ機構を操作する変速レバーを中立位置に戻しても、該油圧サーボ機構により可動斜板を回動させて中立位置に戻すことができなくなり、前記両メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧のために、可動斜板は傾倒状態に保持されたままとなる。その後、改めてエンジンを始動させようとすると、可動斜板が傾倒状態にあるために作業車両が急発進し、これを防止するには、副変速装置等に複雑なインターロックを設ける必要があった。特に、この際、油圧モータのモータ軸を制動するだけで急発進を防止しようとすると、油圧式無段変速装置から受ける入力トルクが過大となってエンジン始動さえできなくなったり、始動スイッチやセルモータ等から成る始動装置にかかる負担が大きくなって始動装置の寿命が悪化したり、この負担に対応するためモータ容積を増加させる必要から始動装置の大型化も招いていた。
【0004】
そこで、エンジン始動時に、前記両メイン油路のうちの少なくとも一方をドレン回路に連通することにより、メイン油路内の作動油を油溜まりに流出させ、前述の如くメイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧を解除する技術(以下、「油圧解除技術」とする。)が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。また、油圧式無段変速装置からの入力トルクに関しては、作動油を両メイン油路に補給するチャージ回路にアンロード弁を設け、エンジン始動時には、該アンロード弁を介してチャージ回路内の作動油を油溜まりに流出させて油圧式無段変速装置への入力トルクを減少させたり、これに加えて、両メイン油路の間をバイパス機構によって連通・遮断する技術も公知となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−28294号公報
【特許文献2】実公昭58−24669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記ドレン回路による油圧解除技術においては、メイン油路内の作動油が切替弁を通って油溜まりに流出し、メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧が解除され、油圧ポンプが駆動しても油圧モータのモータ軸は空転し、作業車両の急発進の防止や確実なエンジン始動が可能となるが、エンジンが始動してから、チャージポンプによりチャージ回路を介してメイン油路内に作動油が供給充填されるまでの間は、作業車両が発進できず、作業車両が動き出すまでの時間が長くなり、発進応答性が低下する、という問題があった。
【0007】
また、前記アンロード弁による油圧解除技術においては、メイン油路内の作動油については、バイパス機構を設けることにより、油溜まりに流出させることなく両メイン油路の間を行き来するだけであり、エンジン始動時における両メイン油路内への作動油の新たな供給充填は不要である。しかし、チャージ回路内の作動油については、エンジン始動時にアンロード弁を通って油溜まりに流出されるため、やはり、エンジンが始動してから、チャージポンプによりチャージ回路内に作動油が供給充填されるまでの間は、エンジンストップによって作動油が不足気味となったメイン油路内に、チャージ回路から作動油を十分に補給することができず、流体接続された油圧ポンプと油圧モータ間の動力伝動効率が低下し、発進駆動力が低下する、という問題があった。
【0008】
更に、いずれの油圧解除技術においても、エンジン始動に伴う操作、例えば、始動スイッチ等の入切操作、エンジン始動時の安全装置として機能するクラッチの踏み離し操作等に連動して、作動油の油圧を解除するようにしているが、このエンジン始動操作はエンジンが始動するまで短時間に何度も繰り返すのが一般的であることから、前記切替弁やアンロード弁等における可動部分の疲労が激しく、該切替弁やアンロード弁等のような、エンジン始動に係わる部品の寿命が悪化する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置において、前記油圧ポンプと油圧モータを接続する一対のメイン油路の間を連通・遮断するバイパス機構、該バイパス機構のアクチュエータの動作を制御する制御装置、及び作動油を前記両メイン油路に補給するチャージ回路を設け、前記油圧式無段変速装置を駆動するエンジンの始動時には、前記油圧モータを制動した後に前記バイパス機構により前記両メイン油路間を連通すると共に、前記チャージ回路を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成を備えたものである。
請求項2においては、前記バイパス機構は、前記エンジン始動時から所定時間経過後に前記両メイン油路間を遮断し、該遮断後に前記油圧モータの制動を解除するものである。
請求項3においては、前記バイパス機構は、前記両メイン油路間を連通状態と遮断状態との間で切り換え可能な電磁式切替弁とするものである。
請求項4においては、前記バイパス機構には、前記両メイン油路にそれぞれ連通する一対の電磁式チェック弁と、該両電磁式チェック弁を油溜まりに連通する共通の吸引油路を設け、該吸引油路に対して前記電磁式チェック弁を同時に開弁することにより、前記吸引油路を介して前記両メイン油路間を連通するものである。
請求項5においては、前記両電磁式チェック弁は、単一のピストン動作により、前記吸引油路に対して同時に開弁するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1において、作業中や走行中にエンジンストップした後にエンジンを始動させる場合に、前記メイン油路とチャージ回路内の作動油のいずれも油溜まりに流出させることなく、メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧を解除することができ、発進応答性や発進駆動力の低下を防ぎつつ、作業車両の急発進の防止、インターロックの簡略化・省略による製造コストの低減、入力トルクの減少による確実なエンジン始動、及び負担軽減による始動装置の寿命向上とコンパクト化を図ることができる。更に、油圧モータを制動した後に両メイン油路間を連通するので、エンジン始動時に、メイン油路内の油圧解除に伴って油圧モータの出力軸が坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。
請求項2において、所定時間を適正に調節することにより、可動斜板が中立位置に戻るまでの時間を確実に確保しつつ、前記バイパス機構においてメイン油路間の連通・遮断に係わる切替弁やチェック弁等の可動部分の動作回数を最小限に抑えることができ、該可動部分への負荷を大幅に軽減してエンジン始動に係わる部品の寿命を長くし、部品コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。更に、両メイン油路間を遮断した後に油圧モータの制動を解除するので、エンジン始動時に、油圧モータの制動解除と同時に油圧モータの出力軸が坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。
請求項3において、簡単な構成により両メイン油路間を連通させることができ、バイパス機構に必要なコストの低減を図ることができる。
請求項4により、バイパス機構において、いわゆるフリーホイールを防止する作動油自吸機構を電磁式チェック弁に兼用させることができ、フリーホイール防止用に新たにチェック弁を準備したり該チェック弁装着用の穴を設ける必要がなく、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上や加工コストの低減を図ることができる。
請求項5において、各メイン油路から共通の吸引油路への回路開放のタイミングのずれをなくして、メイン油路内に閉じこめられた作動油の油圧を短時間で解除することができ、作業車両の急発進の防止やエンジン始動を一層確実に行うことができる。加えて、電磁式チェック弁を駆動させるためのアクチュエータを共通化させることができ、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる第一実施例の油圧式無段変速装置の全体構成を示す平面一部断面図である。
【図2】第一実施例の油圧サーボ機構を示す、手動斜板角制御弁の側面断面図である。
【図3】第一実施例のセンタセクションの側面一部断面図である。
【図4】第一実施例のチェックリリーフ弁の側面断面図である。
【図5】第一実施例の油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図6】第一実施例のバイパス機構の油圧制御手順を示すフローチャートである。
【図7】第二実施例のセンタセクションの側面一部断面図である。
【図8】第二実施例の油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図9】第三実施例のセンタセクションの側面一部断面図である。
【図10】第三実施例の油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図11】ピストンの片側に復帰バネを設けた油圧サーボ機構の別形態を示す、手動斜板角制御弁の側面断面図である。
【図12】ピストンの両側に復帰バネを設けた油圧サーボ機構の別形態を示す、手動斜板角制御弁の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、第一実施例の油圧式無段変速装置1の全体構成について、図1乃至図3、図5により説明する。
該油圧式無段変速装置1においては、可変容積型の油圧ポンプ2と固定容積型の油圧モータ3が、ハウジング4に内包されると共に、センタセクション5の同一側面に配設されている。
【0013】
このうちの油圧ポンプ2は、前記センタセクション5に挿嵌されて一端をハウジング4に回動自在に支持された駆動軸2a、該駆動軸2aが挿嵌されて駆動軸2aと一緒に回動するシリンダブロック2b、該シリンダブロック2bに摺動自在に挿嵌されたプランジャ21、及び該プランジャ21の頭部に摺接されたクレイドル式の可動斜板12により構成され、該可動斜板12は、前記ハウジング4に取り付けたクレイドル受け6に固設されたハーフメタル7に、摺接自在に支持されている。これにより、可動斜板12の傾動操作によって、プランジャ21の摺動量を規制し、油圧ポンプ2からの作動油の吐出量と吐出方向を調節可能に構成している。
【0014】
そして、前記プランジャ21は、可動斜板12に対しては、プランジャシュー22を介して摺接されると共に、プランジャ21とプランジャシュー22との摺動部、プランジャシュー22と可動斜板12との摺動部、つまりプランジャ21側の摺動面21a、プランジャシュー22側の摺接面22a・22b、及び可動斜板12側の摺接面12aには、炭化水素や炭素の同素体から成る非晶質の硬質膜による被覆処理、いわゆるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングが施されている。該DLCコーティングは、可動斜板12とハーフメタル7との摺動部、つまり可動斜板12側の摺接面12bとハーフメタル7側の摺接面7aにも施されている。
【0015】
従来の油潤滑では、摩擦係数の温度変化が大きく、補給も常に欠かすことができず、また、テフロン(登録商標)等を塗った固体潤滑では、低強度で磨耗しやすく摩擦係数の経時劣化が大きいが、このように、各摺接部にDLCコーティングを施すことにより、各摺接面の硬度を著しく上昇させて各摺接部の摩擦係数を安定して低下させることができる。これにより、プランジャ21を駆動軸2aの回りに円滑に回転させて、油圧ポンプ2の機械効率を向上させると共に、可動斜板12を滑らかに傾動させて、傾動操作に必要な動力を小さくし、該傾動操作が後述の油圧サーボ機構11を使って確実に行えるようにすることができる。
【0016】
同様に、前記油圧モータ3についても、前記センタセクション5に挿嵌されて一端をハウジング4に回動自在に支持された出力軸3a、該出力軸3aが挿嵌されて出力軸3aと一緒に回動する図示せぬシリンダブロック、プランジャ、及び斜板により構成されている。ただし、該斜板は固定斜板であって、前記ハウジング4に固設されている。また、前記出力軸3aには、油圧シリンダ等のブレーキ作動装置57によって動作する摩擦多板式等のブレーキ機構56が設けられており、油圧モータ3を制動可能な構成としている。
【0017】
更に、前記センタセクション5内には一対のメイン油路9a・9bが形成され、該メイン油路9a・9bにより前記油圧ポンプ2と油圧モータ3とを流体接続して閉回路8が構成されている。そして、該閉回路8には、両メイン油路9a・9bの間を連通・遮断可能な、本発明に係わるバイパス機構87が設けられている。
【0018】
以上のような構成において、エンジン等の駆動源19からの駆動力が、該駆動源19の出力軸20から図示せぬリンク機構を介して前記駆動軸2aに入力されると、前記油圧ポンプ2が駆動されて作動油が吐出される。この吐出された作動油は、センタセクション5内の前記メイン油路9a・9bを介して油圧モータ3に供給され、該油圧モータ3は、この際の作動油の流出入によって駆動され、該油圧モータ3の駆動力が、前記出力軸3aから出力される構成としている。
【0019】
また、このような油圧式無段変速装置1の油圧ポンプ2の一側方には、油圧サーボ機構11が配設され、該油圧サーボ機構11においては、ピストン13の内部にスプール16を配置して成る手動斜板角制御弁14が、油圧式無段変速装置1のハウジング4に一体的に構成されている。更に、該油圧サーボ機構11を手動操作する変速レバー18には、中立位置保持機構15が配設されており、これにより、変速レバー18に操作力がかかっていない状態では、前記可動斜板12を中立位置に保持できるようにしている。
【0020】
一方、油圧ポンプ2の駆動軸2aの前端部には、チャージポンプ10が付設され、該チャージポンプ10等より成るチャージ回路86によって、ハウジング4内等に設けられた油溜まり59からフィルター64、油路65を介して吸い上げ加圧された作動油が、後で詳述する一対のチェックリリーフ弁88・88と、前記手動斜板角制御弁14に対して供給されるようにしている。
【0021】
次に、前記油圧サーボ機構11と中立位置保持機構15について、図1、図2、図5により説明する。
油圧サーボ機構11においては、ハウジング4内で前記油圧ポンプ2の可動斜板12の側部にシリンダ室24が形成され、該シリンダ室24内に前記ピストン13が収納されている。そして、該ピストン13の内側面には、前記可動斜板12の側部より突設したピン軸25が嵌合されると共に、ピストン13の軸心位置には貫通孔47が穿孔され、該貫通孔47内に前記スプール16が摺動自在に嵌装されている。
【0022】
ここで、前記ハウジング4には、側方より管継手ボルト28が装着され、該管継手ボルト28の先部は、ピストン13の外周凹部38に挿入され、この状態でピストン13はシリンダ室24内を摺動可能となっているが、ピストン13が摺動方向を回転軸として回動しようとすると、ピストン13に管継手ボルト28が接触してピストン13の回動が規制されるようにしている。
【0023】
前記ピストン13には、パイロット油圧を供給するパイロットポート29、上部の油室26に接続する穿設油路31、該穿設油路31下端に接続する内周油路35、下部の油室27に接続する穿設油路32、該穿設油路32上端に接続する内周油路34、及びスプール16にスプール操作アーム42の操作ロッド部42aを係合可能とするための開口部43が形成されている。該開口部43は、油圧回路44における手動斜板角制御弁14のドレンポート30としても機能し、この開口部43を通って排出された作動油は、中立位置保持機構15のケーシング45と前記ハウジング4との間の空間に形成された油溜まり46内に流入し、中立位置保持機構15等に潤滑油として供されるようにしている。更に、ピストン13を軸心方向に貫通する前記貫通孔47の両端は、蓋48・48により閉塞され、該蓋48・48は、止め輪49・49によって抜止めされると共に、蓋48・48には、Oリング50・50が装着されてパイロット圧による作動油の漏出を防止している。
【0024】
一方、前記スプール16には、その上部にバネ受け凹部51が形成され、該バネ受け凹部51と前記蓋48との間に、スプール16を蓋48に弾性支持するバネ52が介設されている。更に、スプール16の下部には嵌合凹部39が形成され、該嵌合凹部39に、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aの内端が、ピストン13の前記開口部43を通って嵌合されており、スプール16にスプール操作アーム42を係合できるようにしている。そして、操作ロッド部42aの外端に、前記中立位置保持機構15が配設されると共に、前記変速レバー18が連結連動されている。更に、スプール16の摺動方向途中部には、外周油路33を挟んで上下に排出油路36・37が形成され、このうちの外周油路33は、中立位置において前記パイロットポート29に開口されるようにしている。
【0025】
以上のような構成の油圧サーボ機構11の制御構成について説明する。
前記チャージポンプ10は、途中にラインフィルタ53を配した外部配管等からなる油路54、油路55を介してハウジング4内の油路40に接続され、該油路40は、更に、前記外周凹部38を介してパイロットポート29に接続されており、該パイロットポート29を介して、前記スプール16の外周油路33にパイロット圧がかかった状態となっている。
【0026】
手動斜板角制御弁14が、図2によって示される中立位置78に設定されると、スプール16の外周油路33がピストン13の内周壁面によって閉塞されているため、パイロットポート29、ドレンポート30のいずれも接続が断たれ、ピストン13へのパイロット圧は供給されない。
【0027】
そこで、前記手動斜板角制御弁14を作用位置79又は80に設定すると、次のようなピストン制御が行われる。すなわち、前記変速レバー18を操作し、スプール操作アーム42を介してスプール16を上昇させると、スプール16の外周油路33と、ピストン13の内周油路34とが接続し、パイロットポート29内の作動油が、外周油路33、内周油路34、該内周油路34に接続された前記穿設油路32を経由して、下部の油室27に流入し、この流入した作動油の圧力によってピストン13が上昇する。この場合、スプール16はスプール操作アーム42に係合して位置が保持されているため、ピストン13が上昇することにより、スプール16が中立位置78に復帰することとなり、再び、前記外周油路33と内周油路34との接続が断たれて、ピストン13の移動が止まると共にピストン13の位置が保持される。
【0028】
逆に、スプール16を下降させると、スプール16の外周油路33と、ピストン13の内周油路35とが接続し、パイロットポート29内の作動油が、外周油路33、内周油路35、該内周油路35に接続された前記穿設油路31を経由して、上部の油室26に流入し、この作動油の圧力によってピストン13は下降する。この場合も、スプール16は、スプール操作アーム42に係合して位置が保持されているため、ピストン13が下降することにより、スプール16が中立位置78に復帰することとなり、再び、前記外周油路33と内周油路35との接続が断たれて、ピストン13の移動が止まると共にピストン13の位置が保持されるのである。
【0029】
なお、ピストン13の上下の油室26・27からの戻り油については、ピストン13を上昇させる場合は、スプール16の排出油路37と、ピストン13の内周油路35とが接続し、上部の油室26内の作動油は、穿設油路31、内周油路35、排出油路37を経由し、更にスプール16の中空部41からピストン13の前記開口部43を通って油溜まり46へと排出される。逆に、ピストン13を下降させる場合は、スプール16の排出油路36と、ピストン13の内周油路34とが接続し、下部の油室27内の作動油は、穿設油路32、内周油路34、排出油路36を経由し、同様に、前記スプール16の中空部41から油溜まり46へと排出される。
【0030】
以上のように、前記ピストン13に、シリンダ室24の上部と下部の油室26・27に連通する各種油路を形成し、該油路をスプール16の摺動によって連通又は遮断して前記油室26・27に圧油としての作動油を給排し、ピストン13の両端に圧力差を発生させてピストン13を摺動制御することにより、ピン軸25を介して可動斜板12を回動し、油圧式無段変速装置1を変速するようにしている。
【0031】
また、前記中立位置保持機構15は、前記ケーシング45によって、前記油圧式無段変速装置1に一体的に内装され、該ケーシング45内に形成される空間45aには、デテントロッド66が軸心方向へ摺動自在に設けられ、該デテントロッド66は、その両端を前記空間45a内の図示せぬ上下の凹部に支持されており、該凹部に螺挿したアジャストボルト等によってデテントロッド66の上下位置を調整できるようにしている。
【0032】
該デテントロッド66の長手方向略中央部に設けた図示せぬ固定部に位置を合わせるようにして、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aの外端が前記空間45a内に挿入されると共に、該操作ロッド部42aの外端と前記デテントロッド66の固定部とは、空間45a内の図示せぬ上下のバネにより付勢されたバネ受けによって、上下両側から一緒に挟持される構成となっている。
【0033】
一方、前記変速レバー18は、ケーシング45の回動軸72に固定され、該回動軸72を中心に回動自在に支持されると共に、該回動軸72には、前記操作ロッド部42aを外嵌して固定支持する支持アーム部42bが回動自在に軸支されている。そして、この回動軸72の外周部には、捻りバネ74が回動自在に巻回され、該捻りバネ74には、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aの外端が挟持されている。更に、回動軸72には、該回動軸72と一体的に回動する連動アーム75が固設されており、該連動アーム75から後方に突出した係合部75aも、前記捻りバネ74によって挟持されている。
【0034】
このような構成において、前記変速レバー18を回動操作すると、回動軸72に固設される連動アーム75と、該連動アーム75を挟持する捻りバネ74とが一体的に回動され、更に、該捻りバネ74に挟持される、操作ロッド部42aの外端も、捻りバネ74と一体的に回動される。つまり、変速レバー18を回動操作すると、スプール操作アーム42が連動アーム75と捻りバネ74を介して一体的に回動され、前記スプール16を移動操作することができる。
【0035】
そして、前記変速レバー18が回動操作されていない状態においては、スプール操作アーム42は、その操作ロッド部42aの外端が位置固定されているデテントロッド66の固定部と一緒に、上下のバネにより付勢されたバネ受けによって挟み込まれているので、該固定部の位置で、その回動位置が保持される。これにより、たとえ変速レバー18に操作力がかかっていなくても、操作ロッド部42aの外端が固定部の位置で保持されている状態で、油圧ポンプ2の可動斜板12が中立位置に位置するように調節されている。
【0036】
次に、以上のような斜板制御機構を備えた油圧式無段変速装置1におけるチャージ回路86と、本発明に係わるバイパス機構87について、図3乃至図6により説明する。
図3乃至図5に示すように、チャージ回路86においては、前記チャージポンプ10が前述の如く油路54に接続され、該油路54からはチャージ油路89が分岐し、該チャージ油路89と前記メイン油路9a・9bとの間には、前記チェックリリーフ弁88・88が、それぞれに介設されている。そして、該チェックリリーフ弁88・88により、前記メイン油路9a・9bに対して作動油を給排できるようにしている。
【0037】
該チェックリリーフ弁88は、前記メイン油路9a・9bが形成されるセンタセクション5上部の弁穴5a内に構成されている。該弁穴5aの内側端部には弁部材90が摺動自在に嵌装される一方、弁穴5aの外側端部にはプラグ91が螺装されており、該プラグ91に形成される収納穴91a内には、バネ受け部材92が摺動自在に嵌装されている。該バネ受け部材92により塞がれた収納穴91a内の空間には、チェックバネ93が収納され、該空間はチェックバネ室94として構成されている。
【0038】
更に、前記バネ受け部材92と弁部材90との間には、リリーフバネ95が介装され、これらバネ受け部材92と弁部材90とで囲まれた弁穴5a内の空間はリリーフバネ室96として構成され、該リリーフバネ室96は、前記メイン油路9a・9bに連通されている。なお、前記プラグ91における収納穴91a形成部分の周面とバネ受け部材92との間には、嵌合隙間が形成され、リリーフバネ室96とチェックバネ室94とは相互に連通されている。
【0039】
前記バネ受け部材92の軸心には、リリーフピン97が一体的に摺動可能に固設され、該リリーフピン97は、前記弁部材90に形成された連通孔90aを貫通して、前記リリーフバネ室96とチャージ油路89とを連通するように、該チャージ油路89側まで延設されている。そして、リリーフピン97でチャージ油路89側の先端には頭部97aが形成されているが、リリーフピン97がリリーフバネ95によりプラグ91側に付勢されているため、該頭部97aのシート部97bが、弁部材90の連通孔90a周縁部に当接するようにして該連通孔90aを閉塞している。
【0040】
これら弁部材90、リリーフバネ95、バネ受け部材92、及びリリーフピン97は、一体的に弁穴5a内を摺動自在な弁体98に構成され、該弁体98は、前記チェックバネ93により内側方向へ付勢されており、弁部材90が弁穴5a内側端部のシート部5bに当接された状態にある。
【0041】
このような構成において、メイン油路9a・9b及びリリーフバネ室96内の作動油が不足して油圧が低下すると、チャージ油路89側の作動油の油圧により弁部材90がプラグ91側へ移動され、チャージ油路89からメイン油路9a・9bへ作動油が補給される。すなわち、チェックリリーフ弁88・88は、メイン油路9a・9bの作動油が不足した場合には、チャージ回路86からメイン油路9a・9bに作動油を補給するチェック弁として機能する。
【0042】
逆に、メイン油路9a・9b及びリリーフバネ室96内の作動油の油圧が高圧になると、前記弁部材90がシート部5bに押し付けられて、チャージ油路89とリリーフバネ室96との間が遮断される。更に、メイン油路9a・9b及びリリーフバネ室96内の作動油の油圧が、所定のリリーフ設定圧以上になると、リリーフピン97における頭部97aのシート部97bにかかる圧力が、リリーフバネ95の付勢力よりも大きくなって、該リリーフピン97がチャージ油路89側へ移動し、弁部材90の連通孔90aが開いて、メイン油路9a・9b内の作動油がチャージ油路89側へ逃げる。すなわち、チェックリリーフ弁88・88は、メイン油路9a・9bの圧力が所定のリリーフ設定圧よりも大きくなった場合には、作動油をチャージ回路86に逃がすリリーフ弁としても機能する。なお、該チェックリリーフ弁88・88に至るまでのチャージ回路86中には、リリーフ弁61も接続されており、該リリーフ弁61によって、チャージ回路86内の油圧を調整できるようにしている。
【0043】
そして、このような回路構成から成るチャージ回路86は、たとえ作業中や走行中にエンジン19がストップしても、その間は、油溜まり59等に対しても強制的に開放された状態には設定されておらず(以下、「非開放状態」とする)、チャージ回路86内には十分な作動油が充填された状態にあるため、エンジンストップによって作動油が不足気味となったメイン油路9a・9b内にも、このようなチャージ回路86を経由して作動油を十分に補給することができる。
【0044】
また、以上のようなチャージ回路86に加えて前記バイパス機構87が設けられている。
図3、図5に示すように、該バイパス機構87は、前記メイン油路9a・9b間を連通するバイパス油路99と、該バイパス油路99の径路途中に介設された電磁式切替弁100と、該電磁式切替弁100を作動するソレノイド81とから構成される。このうちのバイパス油路99は、センタセクション5下部に前記メイン油路9a・9bと直交するように形成されている。また、電磁式切替弁100については、2ポート二位置切替式に構成されており、第一切替位置ではバイパス油路99が遮断され、第二切替位置ではバイパス油路99が開通されるようにしている。
【0045】
該電磁式切替弁100は、前記メイン油路9a・9bが形成されるセンタセクション5下部の弁穴5c内に形成されている。該弁穴5c内には、直径方向に連通孔102aが貫通された円柱状の弁部材102が摺動自在に嵌装され、該弁部材102の内側端部と弁穴5cの内壁面との間の空間に付勢バネ103が収納される一方、弁部材102の外側端部には、センタセクション5下面に垂設した前記ソレノイド81から内側に突出されたピストンピン104の先端が連結されている。
【0046】
該ソレノイド81は、エンジン始動からの経過時間を計測するタイマー101aを備えたコントローラ101に接続され、該コントローラ101には、エンジン19の図示せぬフライホイールギアと噛合するスタータギア106を回動するためのセルモータ105、前記油圧モータ3のブレーキ機構56を動作させるためのブレーキ作動装置57、及びこれらセルモータ105・ブレーキ作動装置57と前記ソレノイド81とを入切するための始動スイッチ107が接続されている。
【0047】
このような構成において、運転席等に配置されたエンジンキー等の始動スイッチ107を「入」に設定すると、図示せぬバッテリからセルモータ105に電流が流れ、該セルモータ105により前記スタータギア106を介してフライホイールギアが回動されて、前記エンジン19が始動される。同時に、始動スイッチ107からのスイッチ入信号が前記コントローラ101に送信され、該コントローラ101が、この受信したスイッチ入信号等に基づいて、前記油圧モータ3のブレーキ作動装置57に対して制動信号を送信し、出力軸3aが制動される。その後に、コントローラ101は、前記ソレノイド81に対して開弁信号を送信し、該ソレノイド81が励磁され、前記ピストンピン104が、付勢バネ103の付勢力に抗して、前記弁部材102を、図3に示す位置から更に内側方向(図3では上方向)に押動する。すると、両メイン油路9a・9b間が、弁部材102内に貫通された前記連通孔102aとバイパス油路99を介して連通される。
【0048】
これにより、エンジン始動時には、メイン油路9a・9b間が自動的に連通されて、メイン油路9a・9b内の作動油が油溜まりに流出することなく、作動油の油圧だけを強制的に解除させることができる。しかも、この際、前述の如く、チャージ回路86は非開放状態にあるため、チャージ回路86内の作動油が油溜まりに強制的に流出されることがなく、該チャージ回路86から前記メイン油路9a・9b内に作動油を十分に補給することができる。更に、このようにメイン油路9a・9b間が連通される直前に、油圧モータ3が自動的に制動されるため、メイン油路9a・9b内の油圧解除に伴って油圧モータ3の出力軸3aが坂道で自由回転するのを、確実に防止することができる。
【0049】
また、このようなバイパス機構87による油圧制御構成について説明する。
図6に示すように、油圧制御が開始されると、前記コントローラ101によって、エンジン始動指令が発せられたか否かが判断される。該判断においては、前記始動スイッチ107からのスイッチ入信号以外に、エンジン始動に必要な条件、例えば本実施例では、変速レバー18が中立位置にあること、本発明に係わる油圧式無段変速装置1を搭載した作業車両の運転席に作業者が着座済みであること等について各種センサー類が検知して得た複数の信号が、前記コントローラ101に読み込まれる。そして、これらの信号に基づいて、コントローラ101が、エンジン始動指令が発せられたものと判断すれば(ステップS1、YES)、制動信号をブレーキ作動装置57に送信してブレーキ機構56により油圧モータ3を制動する(ステップS2)。引き続き、ソレノイド81には開弁信号を送信して電磁式切替弁100を開弁し、メイン油路9a・9b間を連通させる(ステップS3)。これにより、メイン油路9a・9b間が連通する前に予め油圧モータ3を制動しておくことができ、メイン油路9a・9b内の作動油の油圧解除と同時に油圧モータ3の出力軸3aが自由回転するのを回避することができる。
【0050】
ここで、前記コントローラ101には、エンジン始動指令が発せられて(ステップS1)から電磁式切替弁100を閉弁する(ステップS5)までの所定の時間(以下、「バイパス時間」とする。)Tbが、予め記憶されており、該バイパス時間Tbの間に、エンジン始動により作動油が供給されて駆動を開始した油圧サーボ機構11によって、傾倒状態にあった可動斜板12を中立位置に復帰させることができる。
【0051】
そして、該バイパス時間Tbと、前記コントローラ101中のタイマー101aにより測定したエンジン始動指令からの経過時間Tとを比較し、該経過時間Tが前記バイパス時間Tbを超えれば(ステップS4、YES)、ソレノイド81に閉弁信号を送信して電磁式切替弁100を閉弁し、メイン油路9a・9b間を遮断する(ステップS5)。つまり、可動斜板12が中立位置に復帰するまでの間は、メイン油路9a・9b間が連通状態に保持されると共に、エンジン始動のための操作を何度繰り返しても電磁式切替弁100が開弁したままで動作しないように設定されており、前記弁部材102等の可動部分は非作動状態にある。
【0052】
このように前記メイン油路9a・9b間を遮断した後は、前記ブレーキ作動装置57に制動解除信号を送信して油圧モータ3の制動を解除する(ステップS6)。これにより、油圧モータ3の制動を解除する前に予めメイン油路9a・9b間を遮断しておくことができ、油圧モータ3の制動を解除すると同時に油圧モータ3の出力軸3aが自由回転するのを回避することができる。
【0053】
すなわち、以上のように、油圧ポンプ2と油圧モータ3のうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、本実施例では油圧ポンプ2を可変容積型に構成して可動斜板12を設け、該可動斜板12の斜板角を制御する油圧サーボ機構11を備えた油圧式無段変速装置1において、前記油圧ポンプ2と油圧モータ3を接続する一対のメイン油路9a・9bの間を連通・遮断するバイパス機構87、該バイパス機構87のアクチュエータであるソレノイド81の動作を制御する制御装置であるコントローラ101、及び作動油を前記両メイン油路9a・9bに補給するチャージ回路86を設け、前記油圧式無段変速装置1を駆動するエンジン19の始動時には、前記油圧モータ3を制動した後に前記バイパス機構87により前記両メイン油路9a・9b間を連通すると共に、前記チャージ回路86を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成を備えたので、作業中や走行中にエンジンストップした後にエンジン19を始動させる場合に、前記メイン油路9a・9bとチャージ回路86内の作動油のいずれも油溜まり59に流出させることなく、メイン油路9a・9b内に閉じこめられた作動油の油圧を解除することができ、発進応答性や発進駆動力の低下を防ぎつつ、作業車両の急発進の防止、インターロックの簡略化・省略による製造コストの低減、入力トルクの減少による確実なエンジン始動、及び負担軽減による始動装置の寿命向上とコンパクト化を図ることができる。更に、油圧モータ3を制動した後に両メイン油路9a・9b間を連通するので、エンジン始動時に、メイン油路9a・9b内の油圧解除に伴って油圧モータ3の出力軸であるモータ軸3aが坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。
【0054】
更に、前記バイパス機構87は、前記両メイン油路9a・9b間を連通状態と遮断状態との間で切り換え可能な電磁式切替弁100とするので、簡単な構成により両メイン油路9a・9b間を連通させることができ、バイパス機構87に必要なコストの低減を図ることができる。
【0055】
加えて、前記バイパス機構87は、前記エンジン始動時から所定のバイパス時間Tb経過後に前記両メイン油路9a・9b間を遮断し、該遮断後に前記油圧モータ3の制動を解除するので、該バイパス時間Tbを適正に調節することにより、可動斜板12が中立位置に戻るまでの時間を確実に確保しつつ、前記バイパス機構87においてメイン油路9a・9b間の連通・遮断に係わる切替弁やチェック弁等、本実施例では電磁式切替弁100の可動部分の動作回数を最小限に抑えることができ、該可動部分への負荷を大幅に軽減してエンジン始動に係わる部品の寿命を長くし、部品コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。更に、両メイン油路9a・9b間を遮断した後に油圧モータ3の制動を解除するので、エンジン始動時に、油圧モータ3の制動解除と同時に油圧モータ3の出力軸であるモータ軸3aが坂道で自由回転して作業車両が勝手に動き出すのを、確実に防止することができる。なお、以下には油圧式無段変速装置1の各種別形態について説明するが、同じ部材については油圧式無段変速装置1と同一の符号・部材名を使用するものである。
【0056】
次に、第二実施例の油圧式無段変速装置1Aについて、図7、図8により説明する。
該油圧式無段変速装置1Aは、前記油圧式無段変速装置1のメイン油路9a・9b間に、単一の電磁式切替弁100を備えたバイパス機構87のかわりに、一対の電磁式チェック弁108・108や共通の吸引油路110等を備えたバイパス機構87Aを介設したものであり、これにより、該バイパス機構87Aにおいて、いわゆるフリーホイールを防止するための作動油自吸機構を電磁式チェック弁108・108に兼用させることができる。
【0057】
該バイパス機構87Aは、前記メイン油路9a・9b間を連通するバイパス油路99と、該バイパス油路99の径路途中に介設された一対の電磁式チェック弁108・108と、該両電磁式チェック弁108・108を作動する一対のソレノイド82・82と、前記油溜まり59から該両電磁式チェック弁108・108まで配設された共通の吸引油路110とから構成される。
【0058】
前記両電磁式チェック弁108・108は、それぞれ、前記メイン油路9a・9bが形成されるセンタセクション5A下部に並設した弁穴5d・5e内に形成されている。このうちの弁穴5d内には、軸方向略中央部において直径方向に連通路112aが貫通された筒状の弁ケース112が嵌装固定されると共に、該連通路112a両端は、前記吸引油路110に同軸上で連通されている。
【0059】
そして、該弁ケース112で連通路112aよりも下部空間には、プッシュピン113が摺動可能に嵌装され、該プッシュピン113の基部には、センタセクション5A下面に垂設したソレノイド82から内側に突出されたピストンピン111の先端が連結されている。該ソレノイド82も、前記ソレノイド81と同様に、コントローラ101に接続され、該コントローラ101には、セルモータ105、前記油圧モータ3のブレーキ機構56を動作させるためのブレーキ作動装置57、及びこれらセルモータ105・ブレーキ作動装置57と前記ソレノイド82とを入切するための始動スイッチ107が接続されている。
【0060】
一方、前記弁ケース112で連通路112aよりも上部空間には、球状の弁部材114が前記プッシュピン113に対向するようにして収納されている。該弁部材114の上端からはピン状のガイド部114aが突設され、該ガイド部114aには付勢バネ115が巻回されており、該付勢バネ115は、前記弁穴5dの内壁面に嵌設したバネ受け116と弁部材114の上肩部との間に介装されると共に、該弁部材114は、前記付勢バネ115により、連通路112a途中の開口部に設けられた弁座112bに向かって付勢されている。
【0061】
そして、弁穴5dの側方に共通の吸引油路110を介して並設された前記弁穴5e内にも、同様にして、プッシュピン113、弁部材114等を収納した弁ケース112が嵌装固定されている。また、両電磁式チェック弁108・108とも、弁ケース112・112の上部空間は、バイパス油路99を介して、それぞれメイン油路9a・9bに連通されている。
【0062】
このような構成において、始動スイッチ107を「入」に設定すると、セルモータ105に電流が流れてエンジン19が始動されると同時に、コントローラ101が、始動スイッチ107から受信したスイッチ入信号等に基づいて、前記ブレーキ作動装置57に対して制動信号を送信し出力軸3aが制動された後、前記ソレノイド82・82に開弁信号を送信する。すると、該ソレノイド82・82が励磁され、前記ピストンピン111・111が、付勢バネ115・115の付勢力に抗して、前記弁部材114・114を、図7に示す位置から更に内側方向(図7では上方向)に押動する。
【0063】
その後、弁部材114・114は弁座112bから離間され、電磁式チェック弁108・108における弁ケース112・112内の上部空間を、連通路112a・112aを介して、共通の吸引油路110に開放する。これにより、両メイン油路9a・9b間が、バイパス油路99、弁ケース112の上部空間、連通路112a・112a、共通の吸引路110を介して連通されることとなる。
【0064】
この際、両メイン油路9a・9b内の作動油が不足すると、発生した負圧により、付勢バネ115・115の付勢力に抗して弁部材114・114が上昇し、電磁式チェック弁108・108が開弁される。すると、油溜まり59から作動油が吸引され、該作動油は、開口110aから前記吸引油路110に流入し、更に、連通路112a・112a、弁ケース112の上部空間、及びバイパス油路99・99を経由して、両メイン油路9a・9bに補給される。つまり、本バイパス機構87Aにおいては、電磁式チェック弁108・108が自吸式チェック弁として機能するようにしている。
【0065】
すなわち、前記バイパス機構87Aには、前記両メイン油路9a・9bにそれぞれ連通する一対の電磁式チェック弁108・108と、該両電磁式チェック弁108・108を油溜まり59に連通する共通の吸引油路110を設け、該吸引油路110に対して前記電磁式チェック弁108・108を同時に開弁することにより、前記吸引油路110を介して前記両メイン油路9a・9b間を連通するので、バイパス機構87Aにおいて、いわゆるフリーホイールを防止する作動油自吸機構を電磁式チェック弁108・108に兼用させることができ、フリーホイール防止用に新たにチェック弁を準備したり該チェック弁装着用の穴を設ける必要がなく、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上や加工コストの低減を図ることができる。
【0066】
次に、第三実施例の油圧式無段変速装置1Bについて、図9、図10により説明する。
該油圧式無段変速装置1Bは、前記油圧式無段変速装置1Aのメイン油路9a・9b間に、バイパス機構87Aの代わりに、一対の電磁式チェック弁の開弁を単一のピストンにより操作可能なバイパス機構87Bを介設したものであり、これにより、回路開放のタイミングのずれをなくすと共に、部品の共通化を図ることができる。
【0067】
該バイパス機構87Bは、前記メイン油路9a・9b間を連通するバイパス油路99と、該バイパス油路99の径路途中に介設された一対の電磁式チェック弁117・117と、該電磁式チェック弁117・117を作動する単一のソレノイド83と、前記油溜まり59から該両電磁式チェック弁117・117まで配設された共通の吸引油路118とから構成される。
【0068】
前記両電磁式チェック弁117・117は、それぞれ、前記センタセクション5B側部でメイン油路9a・9bに直交するように設けた弁穴5f・5g内に形成されている。このうちの弁穴5f内には、バネ受け部材119が摺動自在に嵌装される一方、弁穴5fの外側端部にはプラグ120が螺装されており、該プラグ120の内側端と前記バネ受け部材119の外側凹部119aとの間には、付勢バネ121が介装されている。そして、弁穴5f内でバネ受け部材119よりも内側の内部空間125には、外側にロート状に開いた弁部材122が摺動可能に嵌装され、該弁部材122の内側突起122aは、前記吸引油路118に内挿されている。
【0069】
このような弁穴5fに対向するように、共通の吸引油路118を介して並設された前記弁穴5g内にも、同様にして、プラグ120、付勢バネ121、バネ受け部材119、及び弁部材122が配設されている。また、両電磁式チェック弁117・117とも、前記内部空間125は、開口5h・5iからバイパス油路99を介して前記メイン油路9a・9bに連通されている。
【0070】
そして、前記吸引油路118の中央下部より操作穴5jが垂設され、該操作穴5jには、プッシュバー123が外側から摺動自在に嵌装され、該プッシュバー123の軸心上には、連通路123aが形成されており、該連通路123aの内端は、前記吸引油路118に開口される一方、連通路123aの外端は、開口123bを介して油溜まり59に連通されている。
【0071】
このプッシュバー123の基部には、センタセクション5B下面に垂設したソレノイド83から内側に突出されたピストンピン124の先端が連結されている。該ソレノイド83も、前記ソレノイド82と同様に、コントローラ101に接続され、該コントローラ101には、セルモータ105、前記油圧モータ3のブレーキ機構56を動作させるためのブレーキ作動装置57、及びこれらセルモータ105・ブレーキ作動装置57と前記ソレノイド83とを入切するための始動スイッチ107が接続されている。
【0072】
更に、通常の前記弁部材122・122は、前記メイン油路9a・9bから前記内部空間125に流出する作動油の圧力により、弁穴5f・5gの内端の弁座5m・5nに向かって付勢されており、通常は両電磁式チェック弁117・117は閉弁されている。同時に、前記弁部材122・122の内側突起122a・122aが、前記プッシュバー123の内端を先細り状に切り欠いて形成した切欠面123cに対して付勢されている。
【0073】
このような構成において、始動スイッチ107を「入」に設定すると、セルモータ105に電流が流れてエンジン19が始動されると同時に、コントローラ101が、始動スイッチ107から受信したスイッチ入信号等に基づいて、前記ブレーキ作動装置57に対して制動信号を送信し出力軸3aが制動された後、単一の前記ソレノイド83に開弁信号を送信する。すると、該ソレノイド83が励磁され、ピストンピン124による単一のピストン動作により、プッシュバー123が内側に押動され、該プッシュバー123により、メイン油路9a・9bからの油圧による付勢力に抗して、前記弁部材122・122が外方に同時に押動される。
【0074】
すると、該弁部材122・122は、弁座5m・5nから離間し、バネ受け部材119・119を外方に押し出しながら移動される。これにより、前記内部空間125・125を、弁部材122・122の外周面と弁座5m・5nとの間の隙間を介して、共通の吸引油路118に同時に開放する。つまり、電磁式チェック弁117・117を同時に開弁して、両メイン油路9a・9b間が、バイパス油路99、開口5h・5i、内部空間125・125、共通の吸引油路118を介して連通される。
【0075】
すなわち、前記両電磁式チェック弁117・117は、単一のピストン動作により、前記吸引油路118に対して同時に開弁するので、各メイン油路9a・9bから共通の吸引油路118への回路開放のタイミングのずれをなくして、メイン油路9a・9b内に閉じこめられた作動油の油圧を短時間で解除することができ、作業車両の急発進の防止やエンジン始動を一層確実に行うことができる。加えて、電磁式チェック弁117・117を駆動させるためのアクチュエータであるソレノイド83を共通化させることができ、部品点数削減による部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0076】
なお、この際も、両メイン油路9a・9b内の作動油が不足すると、発生した負圧により、付勢バネ121・121の付勢力に抗して弁部材122・122が外方に移動し、電磁式チェック弁117・117が開弁される。すると、油溜まり59から作動油が吸引され、該作動油は、開口123b、連通路123aから前記吸引油路118に流入し、更に、内部空間125・125、開口5h・5i、及びバイパス油路99を経由して、両メイン油路9a・9bに補給される。つまり、本バイパス機構87Bにおいても、電磁式チェック弁117・117が自吸式チェック弁として機能するようにしている。
【0077】
次に、前記油圧サーボ機構11の別形態について、図2、図11、図12により説明する。
別形態の油圧サーボ機構11A・11Bのいずれも、前記油圧サーボ機構11に、エンジンストップによって前記チャージ回路86からの作動油の供給が途絶えると可動斜板12を中立位置に自動的に復帰させる中立復帰バネ機構を新たに設けたものであり、これにより、前述したバイパス機構87・87A・87Bによる作業車両の急発進の防止等を一層確実なものとすることができる。
【0078】
図2、図11に示すように、前記油圧サーボ機構11Aは、前記サーボ機構11の上部に、中立復帰バネ機構126を新たに設けたものである。
該油圧サーボ機構11Aにおいては、前記ピストン13を上方に延出するようにしてピストン128が形成され、該ピストン128内の下半部には、前記ピストン13と同じ油路構造を設けた上で、前述と同じスプール16が収納される一方、該ピストン128内の上半部には、前記中立復帰バネ機構126が設けられており、これにより、手動斜板角制御弁14Aがハウジング4A内に一体的に配置されている。
【0079】
前記中立復帰バネ機構126では、前記ピストン128の上部にバネ穴128aが形成され、該バネ穴128aの下部底面上には、復帰バネ129を巻装した下バネ受け部材131が収納される一方、前記ハウジング4Aの上部には、外部の調節ナット132により高さ位置調節可能な支持ピン134が、前記ピストン128と同一軸心上に螺挿されている。
【0080】
該支持ピン134の上下途中部で前記ハウジング4Aの内側には、係止ナット133により上限位置調節可能な上バネ受け部材130が摺動自在に外嵌されると共に、前記支持ピン134の下部には、大径部134aにより下限位置が規制された前記下バネ受け部材131が摺動自在に外嵌されている。そして、該下バネ受け部材131の外周鍔部131aと前記上バネ受け部材130の外周鍔部130aとの間に、前記復帰バネ129が張設され、該復帰バネ129の上下端は、ぞれぞれ、外周鍔部130a・131aに連結固定されている。
【0081】
なお、図11に示すような中立位置では、前記復帰バネ129により、上バネ受け部材130が前記係止ナット133の下面に、下バネ受け部材131が大径部134aの係止肩部134bに、それぞれ当接された状態で保持されるように、係止ナット133と係止肩部134bの高さ位置を、係止ナット133や調節ナット132の回転移動により調節するようにしている。
【0082】
このような構成において、ピストン128が中立位置よりも上方に位置する場合にエンジン19がストップすると、復帰バネ129の上端は、上限位置にある上バネ受け部材130の外周鍔部130aによって支持固定され、復帰バネ129は上端位置が固定された状態にあり、この状態で、復帰バネ129は、下バネ受け部材131によって圧縮されるため、付勢力は、下バネ受け部材131の外周鍔部131aを介して、ピストン128を押し下げるように作用し、該ピストン128は下降を開始して中立位置にて停止する。
【0083】
逆に、ピストン128が中立位置よりも下方に位置する場合にエンジン19がストップすると、復帰バネ129の下端は、下限位置にある下バネ受け部材131の外周鍔部131aによって支持固定され、復帰バネ129は下限位置が固定された状態にあり、この状態で、復帰バネ129は、バネ穴128a上部内壁面に係止した止め輪135によって圧縮されるため、付勢力は、上バネ受け部材130の外周鍔部130aから止め輪135を介して、ピストン128を押し上げるように作用し、該ピストン128は上昇を開始して中立位置にて停止する。
【0084】
また、図2、図12に示すように、前記油圧サーボ機構11Bは、前記サーボ機構11の上下部に、上部中立復帰バネ機構127Aと下部中立復帰バネ機構127Bから成る中立復帰バネ機構127を新たに設けたものである。
該油圧サーボ機構11Bにおいては、前記ピストン13に下部中立復帰バネ機構127Bを内設するための係止構造を設けるようにしてピストン136が形成され、該ピストン136内に前記ピストン13と同じ油路構造を設けた上で、前述と同じスプール16が収納されている。そして、このようなピストン136の上下方に、それぞれ、前記上部中立復帰バネ機構127Aと下部中立復帰バネ機構127Bが設けられており、これにより、手動斜板角制御弁14Bがハウジング4B内に一体的に配置されている。
【0085】
このうちの上部中立復帰バネ機構127Aにおいては、前記ピストン136の上面に、上復帰バネ139を巻装した上バネ受け部材137が載置される一方、前記ハウジング4Bの上部には、外側の調節ナット141により高さ位置調節可能な支持ピン142が、前記ピストン136と同一軸心上に螺挿されている。
【0086】
該支持ピン142の下部には、大径部142aにより下限位置が規制された前記上バネ受け部材137が摺動自在に外嵌されている。そして、該上バネ受け部材137の外周鍔部137aと前記ハウジング4Bの天井面との間に、前記上復帰バネ139が張設され、該上復帰バネ139の上下端は、ぞれぞれ、前記ハウジング4Bの天井面4Baと上バネ受け部材137の外周鍔部137aに連結固定されている。
【0087】
更に、前記下部中立復帰バネ機構127Bにおいては、前記ハウジング4Bの底面に、下復帰バネ140を内部に収納した第一下バネ受け部材138が載置される一方、スプール16の下方を閉塞する前記蓋48の下には、前記止め輪49を介して第二下バネ受け部材143が嵌合されている。そして、該第二下バネ受け部材143の外周鍔部143aと、前記第一下バネ受け部材138の内周凹部138aとの間には、前記下復帰バネ140が張設されており、該下復帰バネ140の上下端は、ぞれぞれ、前記外周鍔部143aと内周凹部138aに連結固定されている。
【0088】
なお、図12に示すような中立位置では、前記上下の復帰バネ139・140によってピストン136が保持されるように、上バネ受け部材137が前記大径部142aの係止肩部142bに当接された状態で保持されるように、係止肩部142bの高さ位置を、調節ナット141の回転移動により調節するようにしている。
【0089】
このような構成において、ピストン136が中立位置よりも上方に位置する場合にエンジン19がストップすると、上復帰バネ139は圧縮され、下復帰バネ140は引っ張られた状態にあるため、各バネ139・140の付勢力はピストン136を押し下げるように作用し、該ピストン136は下降を開始して中立位置にて停止する。
【0090】
逆に、ピストン136が中立位置よりも下方に位置する場合にエンジン19がストップすると、上復帰バネ139は引っ張られ、下復帰バネ140は圧縮された状態にあるため、各バネ139・140の付勢力はピストン136を押し上げるように作用し、該ピストン136は上昇を開始して中立位置にて停止する。
【0091】
以上のように、エンジンストップによって前記チャージ回路86からの作動油の供給が途絶えると、油圧サーボ機構11Aでは、ピストン128の上方に配設した復帰バネ129の付勢力により、ピストン128は中立位置に自動的に移動され、油圧サーボ機構11Bでは、ピストン136の上下方に配設した複数の復帰バネ139・140の付勢力により、ピストン136は中立位置に自動的に移動され、これにより、いずれのピストン128・136も、ピン軸25を介して前記可動斜板12を回動し、該可動斜板12を中立位置に復帰させることができる。なお、油圧サーボ機構11Bでは、複数の復帰バネ139・140が必要となるものの、上下からバネの付勢力を作用させることができ、油圧サーボ機構11Aに比べて、一層迅速かつ円滑にピストン136を中立位置に復帰させることができる。
【0092】
すなわち、前記油圧サーボ機構11A・11Bには、エンジンストップによって前記チャージ回路86からの作動油の供給が途絶えると可動斜板12を中立位置に自動的に復帰する中立復帰バネ機構126・127を設け、該中立復帰バネ機構126・127は、前記可動斜板12に連結連動するピストン128・136の上下部の少なくとも一方に配設したので、メイン油路9a・9b内に閉じこめられた作動油の油圧の、前記バイパス機構87・87A・87Bによる自動解除が遅れる等した場合であっても、バネの付勢力によってピストン128・136を中立位置に戻して、可動斜板12も中立位置に自動的に復帰させることができ、前述した作業車両の急発進の防止、インターロックの簡略化・省略による製造コストの低減、入力トルクの減少による確実なエンジン始動、及び負担軽減による始動装置の寿命向上とコンパクト化を、より確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた、全ての油圧式無段変速装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1・1A・1B 油圧式無段変速装置
2 油圧ポンプ
3 油圧モータ
9a・9b メイン油路
11・11A・11B 油圧サーボ機構
12 可動斜板
19 エンジン
59 油溜まり
81・82・83 ソレノイド(アクチュエータ)
86 チャージ回路
87・87A・87B バイパス機構
100 電磁式切替弁
101 コントローラ(制御装置)
108・117 電磁式チェック弁
110・118 吸引油路
Tb バイパス時間(所定時間)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置において、前記油圧ポンプと油圧モータを接続する一対のメイン油路の間を連通・遮断するバイパス機構、該バイパス機構のアクチュエータの動作を制御する制御装置、及び作動油を前記両メイン油路に補給するチャージ回路を設け、前記油圧式無段変速装置を駆動するエンジンの始動時には、前記油圧モータを制動した後に前記バイパス機構により前記両メイン油路間を連通すると共に、前記チャージ回路を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成を備えたことを特徴とする油圧式無段変速装置。
【請求項2】
前記バイパス機構は、前記エンジン始動時から所定時間経過後に前記両メイン油路間を遮断し、該遮断後に前記油圧モータの制動を解除することを特徴とする請求項1に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項3】
前記バイパス機構は、前記両メイン油路間を連通状態と遮断状態との間で切り換え可能な電磁式切替弁とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項4】
前記バイパス機構には、前記両メイン油路にそれぞれ連通する一対の電磁式チェック弁と、該両電磁式チェック弁を油溜まりに連通する共通の吸引油路を設け、該吸引油路に対して前記電磁式チェック弁を同時に開弁することにより、前記吸引油路を介して前記両メイン油路間を連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項5】
前記両電磁式チェック弁は、単一のピストン動作により、前記吸引油路に対して同時に開弁することを特徴とする請求項4に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項1】
油圧ポンプと油圧モータのうちの少なくとも一つを可変容積型に構成して可動斜板を設け、該可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置において、前記油圧ポンプと油圧モータを接続する一対のメイン油路の間を連通・遮断するバイパス機構、該バイパス機構のアクチュエータの動作を制御する制御装置、及び作動油を前記両メイン油路に補給するチャージ回路を設け、前記油圧式無段変速装置を駆動するエンジンの始動時には、前記油圧モータを制動した後に前記バイパス機構により前記両メイン油路間を連通すると共に、前記チャージ回路を外部に対して非開放状態に設定する油圧制御構成を備えたことを特徴とする油圧式無段変速装置。
【請求項2】
前記バイパス機構は、前記エンジン始動時から所定時間経過後に前記両メイン油路間を遮断し、該遮断後に前記油圧モータの制動を解除することを特徴とする請求項1に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項3】
前記バイパス機構は、前記両メイン油路間を連通状態と遮断状態との間で切り換え可能な電磁式切替弁とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項4】
前記バイパス機構には、前記両メイン油路にそれぞれ連通する一対の電磁式チェック弁と、該両電磁式チェック弁を油溜まりに連通する共通の吸引油路を設け、該吸引油路に対して前記電磁式チェック弁を同時に開弁することにより、前記吸引油路を介して前記両メイン油路間を連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油圧式無段変速装置。
【請求項5】
前記両電磁式チェック弁は、単一のピストン動作により、前記吸引油路に対して同時に開弁することを特徴とする請求項4に記載の油圧式無段変速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−2050(P2010−2050A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106489(P2009−106489)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】
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