説明

油圧式運動制御装置

【課題】圧力バルブに対する負圧の影響を排除して、制御対象物の運動停止状態を保持する機能の低下を抑制することが可能な油圧式運動制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る油圧式運動制御装置は、第5通路55に設けられ、第5通路55を通じて第5の室25へオイルが流入することを阻止する一方向性の第3バルブ63と、第6通路56に設けられ、第6通路56を通じて第5の室25へオイルが流入することを阻止する一方向性の第4バルブ64とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式運動制御装置に関し、より詳細には、油圧を利用して制御対象物の運動停止状態を保持し得る油圧式運動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧を利用した装置では、温度の上昇によりオイルが膨張するため、オイルの体積の増加分を一時的に蓄える構成を備えている。例えば、下記特許文献1には、オイルの体積の増加分を蓄えるための第3ボアーが記載されている。この第3ボアーの内部には、フリーピストンにより区画された貯油室とガス室が形成されている。貯油室には、油路を通じてオイルが流入するが、前記油路には、オイルの流れを規制するバルブが設けられていない。
【0003】
一方、油圧を利用して制御対象物の運動停止状態を保持する装置には、油圧を発生させる室の内圧が所定値を超えなければ開弁しない圧力バルブが設けられており、当該装置は、この圧力バルブが開弁することによって、加圧室からオイルが流出し、該オイルが負圧室へ流入する構成となっている(下記特許文献2参照)。
【0004】
当該装置に、下記特許文献1に記載された構成を採用した場合には、圧力バルブに負圧が影響することにより、油圧を発生させる室の内圧が所定値を超える前に圧力バルブが開弁してしまうという問題が生じる。
【0005】
【特許文献1】特許第3778668号公報
【特許文献2】国際公開第WO2005/073589号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、圧力バルブに対する負圧の影響を排除して、制御対象物の運動停止状態を保持する機能の低下を抑制することが可能な油圧式運動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の油圧式運動制御装置を提供する。
1.ハウジングと該ハウジング内で回転可能な回転軸との間に形成される第1乃至第4の室と、
第1乃至第4の室に充填されるオイルと、
該オイルが膨張したときに、オイルの体積増加分を蓄えることができる第5の室と、
第5の室に設けられ、第5の室のオイルを押圧する押圧手段と、
前記回転軸に突設され、一方向へ回動することにより第1及び第3の室のオイルを押圧し、逆方向へ回動することにより第2及び第4の室のオイルを押圧するベーンと、
第1の室と第5の室とを連通させる第1通路と、
第1の室と第3の室とを連通させる第2通路と、
第2の室と第5の室とを連通させる第3通路と、
第2の室と第4の室とを連通させる第4通路と、
第1通路に設けられ、第1通路を通じて第1の室へオイルが流入することを阻止する一方で、第1の室の内圧が所定値を超えたときに開弁して、第1の室からオイルを流出させる第1圧力バルブと、
第3通路に設けられ、第3通路を通じて第2の室へオイルが流入することを阻止する一方で、第2の室の内圧が所定値を超えたときに開弁して、第2の室からオイルを流出させる第2圧力バルブとを備え、
第1又は第2の室の内圧が所定値を超えるまでは、回転軸の回転を停止させ得る油圧式運動制御装置であって、
第2通路に連通し、第5の室に通じる第5通路と、
第5通路に設けられ、第5通路を通じて第5の室へオイルが流入することを阻止する一方向性の第3バルブと、
第4通路に連通し、第5の室に通じる第6通路と、
第6通路に設けられ、第6通路を通じて第5の室へオイルが流入することを阻止する一方向性の第4バルブと、
をさらに有することを特徴とする油圧式運動制御装置。
2.前記第3バルブが、第2の室のオイルがベーンに押圧されているときに第2圧力バルブが開弁するまでは開弁せず、そのときに第2圧力バルブが開弁したときは開弁して第5の室からオイルを流出させる圧力バルブであり、
前記第4バルブが、第1の室のオイルがベーンに押圧されているときに第1圧力バルブが開弁するまでは開弁せず、そのときに第1圧力バルブが開弁したときは開弁して第5の室からオイルを流出させる圧力バルブであることを特徴とする前記1に記載の油圧式運動制御装置。
【発明の効果】
【0008】
前記1に記載の発明によれば、第1及び第3の室のオイルがベーンに押圧されることにより、第2及び第4の室が負圧となっても、第3通路に、第2の室の内圧が所定値を超えなければ開弁しない第2圧力バルブが設けられており、このとき第2圧力バルブは閉じているため、第2の室の負圧の影響は第1圧力バルブに及ばない。また、第6通路に、一方向性の第4バルブが設けられているため、第4の室の負圧の影響は、一次的に第4バルブに及ぶことになる。そして、第4バルブが第4の室の負圧の影響を受けて開弁したときには、第5の室のオイルがばねによって付勢されたピストンに押圧されて第6通路に流れ込むことになるため、第1圧力バルブには、第4の室の負圧の影響が及ばない。
一方、第2及び第4の室のオイルがベーンに押圧されることにより、第1及び第3の室が負圧となっても、第1通路に、第1の室の内圧が所定値を超えなければ開弁しない第1圧力バルブが設けられており、このとき第1圧力バルブは閉じているため、第1の室の負圧の影響は第2圧力バルブに及ばない。また、第5通路に、一方向性の第3バルブが設けられているため、第3の室の負圧の影響は、一次的に第3バルブに及ぶことになる。そして、第3バルブが第3の室の負圧の影響を受けて開弁したときには、第5の室のオイルがばねによって付勢されたピストンに押圧されて第5通路に流れ込むことになるため、第2圧力バルブには、第3の室の負圧の影響が及ばない。
したがって、前記1に記載の発明によれば、油圧を発生させる室の内圧が所定値を超える前に第1又は第2圧力バルブが開弁してしまうことがない。よって、制御対象物の運動停止状態を保持する機能の低下を抑制することが可能である。
また、前記1に記載の発明によれば、温度の上昇によりオイルが膨張して第1及び第2の室の内圧が所定値を超えたときは、第1及び第2圧力バルブが開弁して、オイルの体積増加分が第5の室に流入し、蓄えられる。一方、その後の温度の低下によりオイルが収縮したときには、第1乃至第4の室が負圧となることにより、第3及び第4圧力バルブが開弁して第5の室からオイルが流出し、該オイルは、第3及び第4の室に流入し、さらに、第2及び第4通路を通じて第1及び第2の室へ流入する。したがって、前記1に記載の発明によれば、温度変化によるオイルの膨張・収縮にも十分対応することが可能である。
前記2に記載の発明によれば、第3バルブが、第2の室のオイルがベーンに押圧されているときに第2圧力バルブが開弁するまでは開弁せず、そのときに第2圧力バルブが開弁したときは開弁して第5の室からオイルを流出させる圧力バルブであるため、第2及び第4の室のオイルがベーンに押圧されることにより、第1及び第3の室が負圧となっても、第3バルブは、第2圧力バルブが開弁するまで閉じたままである。したがって、第2圧力バルブには、第3の室の負圧の影響が全く及ばない。
また、前記2に記載の発明によれば、第4バルブが、第1の室のオイルがベーンに押圧されているときに第1圧力バルブが開弁するまでは開弁せず、そのときに第1圧力バルブが開弁したときは開弁して第5の室からオイルを流出させる圧力バルブであるため、第1及び第3の室のオイルがベーンに押圧されることにより、第2及び第4の室が負圧となっても、第4バルブは、第1圧力バルブが開弁するまで閉じたままである。したがって、第1圧力バルブには、第4の室の負圧の影響が全く及ばない。
よって、前記2に記載の発明によれば、圧力バルブに対する負圧の影響を完全に排除して、制御対象物の運動停止状態を保持する機能の低下を確実に抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0010】
図1乃至図5は、本発明の実施例に係る油圧式運動制御装置の内部構造を示す図であり、図6は、同実施例の油圧回路図である。これらの図に示したように、本実施例に係る油圧式運動制御装置(以下「本装置」という。)は、ハウジング10、第1乃至第5の室21−25、オイル、回転軸30、ベーン40、第1乃至第6通路51−56、第1乃至第4圧力バルブ61−64、ピストン70及びばね80を有して構成される。
【0011】
ハウジング10は、外壁部11、上蓋部12、下蓋部13及び底壁部14を有して構成される。外壁部11は、円筒状に形成されたものである(図1乃至図4参照)。上蓋部12は、外壁部11の一端側を閉塞するものであり、回転軸30が挿通される孔部を有している(図2乃至図4参照)。下蓋部13は、外壁部11の他端側を閉塞するものである(図2乃至図4参照)。底壁部14は、外壁部11の内部において、下蓋部13に隣接して設けられる(図2乃至図4参照)。底壁部14には、回転軸30が嵌り込む凹部が形成されるとともに、第1乃至第6通路51−56、第1及び第2圧力バルブ61,62及び第3及び第4バルブ63,64が設けられている(図1乃至図5参照)。上蓋部12及び下蓋部13は、外壁部11の両端をかしめることによって取り付けられており、それにより、外壁部11、上蓋部12、下蓋部13及び底壁部14が強固に一体化されたハウジング10が構成される。
【0012】
ハウジング10の内部には、第1乃至第4の室21−24が形成される(図1参照)。より詳細には、外壁部11と回転軸30との間に形成される空間が隔壁90によって仕切られ、さらに、隔壁90によって仕切られた空間がベーン40によって仕切られることにより、上蓋部12と底壁部14との間に4つの空間が形成される。これらの4つの空間が第1乃至第4の室21−24である。
【0013】
第1乃至第4の室21−24には、オイルが充填される。第1乃至第4の室21−24に充填されたオイルが第1乃至第4の室21−24に形成される第1乃至第4通路51−54の開口部101−106のみから流出するようにするため、隔壁90には、隔壁90と回転軸30との間隙、隔壁90と外壁部11との間隙、隔壁90と上蓋部12との間隙、及び隔壁90と底壁部14との間隙からオイルが流出することを防止するシール部材120が設けられ、また、ベーン40には、ベーン40と外壁部11との間隙、ベーン40と上蓋部12との間隙、及びベーン40と底壁部14との間隙からオイルが流出することを防止するシール部材130が設けられている(図1及び図2参照)。
【0014】
隔壁90は、ハウジング10に固定され、ベーン40は、回転軸30の回転に伴ってハウジング10の内部で回動するように、回転軸30に突設されている。回転軸30は、一端が底壁部14に形成された凹部に嵌め込まれ、他端側が上蓋部12に形成された孔部に挿通されることにより、ハウジング10に支持されており、ハウジング10の内部で回転可能なものである。回転軸30の他端は、ハウジング10の外に突出しており、この突出端には、制御対象物が連結される。
【0015】
ベーン40は、一方向へ回動することにより第1及び第3の室21,23のオイルを押圧し、逆方向へ回動することにより第2及び第4の室22,24のオイルを押圧することができるように設けられている(図1参照)。
【0016】
第5の室25は、回転軸30の内部に形成される(図1乃至図4参照)。第5の室25の内部には、ピストン70が設けられ、このピストン70によって、第5の室25の内部は2分割される。分割された一方の空間25a(以下「貯油室」という。)は、オイルを一時的に蓄えることができるアキュムレータとして機能する。分割された他方の空間25bには、ピストン70を一方向に付勢するばね80が装填される(図2乃至図4参照)。第5の室25は、貯油室25aに形成される開口部107,108を通じて流入するオイルを蓄えることができる(図1及び図2参照)。
【0017】
第1通路51は、第1の室21と第5の室25とを連通させるように形成されるオイルの通路であり、底壁部14に形成されている(図5及び図6参照)。第1通路51は、第1の室21に開口する開口部101と、第5の室25(貯油室25a)に開口する開口部108とを有して構成される(図1、図3、図5及び図6参照)。
【0018】
第2通路52は、第1の室21と第3の室23とを連通させるように形成されるオイルの通路であり、底壁部14に形成されている(図5及び図6参照)。第2通路52は、第1の室21に開口する開口部102と、第3の室23に開口する開口部105とを有して構成される(図1、図3、図5及び図6参照)。
【0019】
第3通路53は、第2の室22と第5の室25とを連通させるように形成されるオイルの通路であり、底壁部14に形成されている(図5及び図6参照)。第3通路53は、第2の室22に開口する開口部103と、第5の室25(貯油室25a)に開口する開口部107とを有して構成される(図1、図3、図5及び図6参照)。
【0020】
第4通路54は、第2の室22と第4の室24とを連通させるように形成されるオイルの通路であり、底壁部14に形成されている(図5及び図6参照)。第4通路54は、第2の室22に開口する開口部104と、第4の室24に開口する開口部106とを有して構成される(図1、図4乃至図6参照)。
【0021】
第5通路55は、第2通路52に連通し、第5の室25に通じる、オイルの通路であり、底壁部14に形成されている(図4乃至図6参照)。第5通路55は、第5の室25(貯油室25a)に開口する開口部110を有して構成される(図1、図4及び図6参照)。
【0022】
第6通路56は、第4通路54に連通し、第5の室25に通じる、オイルの通路であり、底壁部14に形成されている(図4乃至図6参照)。第6通路56は、第5の室25(貯油室25a)に開口する開口部109を有して構成される(図1、図4及び図6参照)。
【0023】
第1及び第2圧力バルブ61,62は、いずれも弁体にばね圧を加えることによって、弁体が受けるオイルの圧力が一定の大きさにならなければ開弁しない構造を有するものである。また、第1及び第2圧力バルブ61,62は、いずれも一方向性の弁である。
【0024】
第1圧力バルブ61は、図3及び図6に示したように、第1通路51に設けられ、第1通路51を通じて第1の室21へオイルが流入することを阻止する一方で、第1の室21の内圧が所定値を超えたときに開弁して、第1の室21からオイルを流出させるものである。
【0025】
第2圧力バルブ62は、図3及び図6に示したように、第3通路53に設けられ、第3通路53を通じて第2の室22へオイルが流入することを阻止する一方で、第2の室22の内圧が所定値を超えたときに開弁して、第2の室22からオイルを流出させるものである。
【0026】
第3バルブ63は、図4及び図6に示したように、第5通路55に設けられ、第5通路55を通じて第5の室25へオイルが流入することを阻止する一方向性の弁である。第3バルブ63としては、弁体が受けるオイルの圧力の大きさにかかわらず開弁する単純なチェックバルブを採用することもできる。本実施例では、第3バルブとして、弁体にばね圧を加えることによって、弁体が受けるオイルの圧力が一定の大きさにならなければ開弁しない構造を有する圧力バルブが採用されている。この第3バルブは、第2の室22のオイルがベーン40に押圧されているときに第2圧力バルブ62が開弁するまでは開弁せず、そのときに第2圧力バルブ62が開弁したときは開弁して第5の室25のオイルを流出させるものである。
【0027】
第4圧力バルブ64は、図4及び図6に示したように、第6通路56に設けられ、第6通路56を通じて第5の室25へオイルが流入することを阻止する一方向性の弁である。第4バルブ64としては、弁体が受けるオイルの圧力の大きさにかかわらず開弁する単純なチェックバルブを採用することもできる。本実施例では、第4バルブとして、弁体にばね圧を加えることによって、弁体が受けるオイルの圧力が一定の大きさにならなければ開弁しない構造を有する圧力バルブが採用されている。この第4バルブは、第1の室21のオイルがベーン40に押圧されているときに第1圧力バルブ51が開弁するまでは開弁せず、そのときに第1圧力バルブ51が開弁したときは開弁して第5の室25からオイルを流出させるものである。
【0028】
上記のように構成される本装置は、回転軸30に連結された制御対象物が停止状態にあるときには、第1及び第2圧力バルブ61,62が閉じており、第1乃至第4の室21−24のオイルは流出することなく停滞している。
【0029】
制御対象物に外力が加えられることにより、回転軸30に回転力が付与されたときには、回転軸30の回転に伴ってベーン40が回動する。もっとも、第1圧力バルブ61は、第1の室21の内圧が所定値を超えなければ開弁せず、また、第2圧力バルブ62は、第2の室22の内圧が所定値を超えなければ開弁しないため、ベーン40がオイルを押圧する力が弱いときには、第1又は第2の室21,22からオイルが流出しない。したがって、回転軸30は回転することができず、制御対象物の停止状態が保持される。つまり、本装置は、第1又は第2の室21,22の内圧が所定値を超えるまでは、回転軸30の回転を停止させ、制御対象物の停止状態を保持することができる。
【0030】
一方、ベーン40がオイルを押圧する力が、第1又は第2の室21,22の内圧が所定値を超える程強いときには、第1又は第2圧力バルブ61,62が開弁して、第1又は第2の室21,22からオイルが流出する。もっとも、この場合に、第3又は第4の室23,24の内圧が高圧となっても、第3又は第4圧力バルブ63,64により、第5又は第6通路55,56を通じて第5の室25へオイルが流入することは阻止されるため、第3又は第4の室23,24のオイルは第2又は第4通路を通じて第1又は第2の室へ流入する。
【0031】
ここで、第1圧力バルブ61が開弁しようとするときには、第1及び第3の室21,23のオイルがベーン40に押圧されることにより、第2及び第4の室22,24が負圧となる。そして、第1圧力バルブ61が、その負圧の影響を受けると仮定した場合には、第1の室21の内圧が所定値を超えなくても第1圧力バルブ61が開弁することになる。しかし、本装置によれば、第2及び第4の室22,24が負圧となっても、第3通路53に、第2の室22の内圧が所定値を超えなければ開弁しない第2圧力バルブ62が設けられるとともに、第6通路56に、第1の室21のオイルがベーン40に押圧されているときに第1圧力バルブ61が開弁するまでは開弁しない第4圧力バルブ64が設けられており、このとき、第2及び第4圧力バルブ62,64はともに閉弁した状態であるため、第1通路51に設けられた第1圧力バルブ61に負圧が影響しない。したがって、第1の室21の内圧が所定値を超える前に第1圧力バルブ61が開弁することはない。
【0032】
一方、第2圧力バルブ62が開弁しようとするときには、第2及び第4の室22,24のオイルがベーン40に押圧されることにより、第1及び第3の室21,23が負圧となる。そして、第2圧力バルブ62が、その負圧の影響を受けると仮定した場合には、第2の室22の内圧が所定値を超えなくても第2圧力バルブ62が開弁することになる。しかし、本装置によれば、第1及び第3の室21,23が負圧となっても、第1通路51に、第1の室21の内圧が所定値を超えなければ開弁しない第1圧力バルブ61が設けられるとともに、第5通路55に、第2の室22のオイルがベーン40に押圧されているときに第2圧力バルブ62が開弁するまでは開弁しない第3圧力バルブ63が設けられており、このとき、第1及び第3圧力バルブ61,63はともに閉弁した状態であるため、第3通路53に設けられた第2圧力バルブ62に負圧が影響しない。したがって、第2の室22の内圧が所定値を超える前に第2圧力バルブ62が開弁することはない。
【0033】
以上のように、本装置によれば、第1及び第2圧力バルブ61,62に対する負圧の影響を排除できるため、制御対象物の運動停止状態を保持する機能の低下を抑制することができる。
【0034】
第1及び第3の室21,23のオイルがベーン40に押圧されることにより、第1圧力バルブ61が開弁したときには、回転軸30が一方向へ回転可能になる。また、第1の室21からオイルが流出し、該オイルは第1通路51を通じて第5の室25(貯油室25a)に流入する。このとき、第4圧力バルブ64は、第1の室21のオイルがベーン40に押圧されているときに第1圧力バルブ61が開弁したときは開弁して第5の室25からオイルを流出させるものであるため、開口部109から第6通路56に流れ込むオイルの圧力を受けることにより開弁し、それにより、貯油室25aのオイルは流出し、該オイルは、第6通路56を通じて、このとき負圧となる第2及び第4の室22,24に流入する。
【0035】
第2及び第4の室22,24のオイルがベーン40に押圧されることにより、第2圧力バルブ62が開弁したときには、回転軸30が逆方向へ回転可能になる。また、第2の室22からオイルが流出し、該オイルは第3通路53を通じて第5の室25(貯油室25a)に流入する。このとき、第3圧力バルブ63は、第2の室22のオイルがベーン40に押圧されているときに第2圧力バルブ62が開弁したときは開弁して第5の室25からオイルを流出させるものであるため、開口部110から第5通路55に流れ込むオイルの圧力を受けることにより開弁し、それにより、貯油室25aのオイルは流出し、該オイルは、第5通路55を通じて、このとき負圧となる第1及び第3の室21,23に流入する。
【0036】
したがって、本装置によれば、温度変化によるオイルの膨張・収縮にも十分対応することができる。
【0037】
第3及び第4バルブが、上記と異なり、単純なチェックバルブである場合には、以下のように動作する。すなわち、第1及び第3の室21,23のオイルがベーン40に押圧されることにより、第2及び第4の室22,24が負圧になると、第4の室24の負圧の影響を受けることにより、第4バルブ64が開弁する。それにより、第5の室25のオイルがばね80によって付勢されたピストン70に押圧されて第6通路56に流れ込むことになるため、第1圧力バルブ61には、第4の室24の負圧の影響が及ばない。
【0038】
一方、第2及び第4の室22,24のオイルがベーン40に押圧されることにより、第1及び第3の室21,23が負圧になるときには、第3の室23の負圧の影響を受けることにより、第3バルブ63が開弁する。それにより、第5の室25のオイルがばね80によって付勢されたピストン70に押圧されて第5通路55に流れ込むことになるため、第2圧力バルブ62には、第3の室23の負圧の影響が及ばない。
【0039】
したがって、第3及び第4バルブ63,64が単純なチェックバルブである場合でも、油圧を発生させる室の内圧が所定値を超える前に第1又は第2圧力バルブ61,62が開弁してしまうことを防ぐことができ、制御対象物の運動停止状態を保持する機能の低下を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例に係る油圧式運動制御装置の内部構造を示す図であって、図2におけるD−D部断面図である。
【図2】図1におけるA−A部断面図である。
【図3】図1におけるB−B部断面図である。
【図4】図1におけるC−C部断面図である。
【図5】図2におけるE−E部断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る油圧式運動制御装置の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ハウジング
11 外壁部
12 上蓋部
13 下蓋部
14 底壁部
21 第1の室
22 第2の室
23 第3の室
24 第4の室
25 第5の室
25a 貯油室
30 回転軸
40 ベーン
51 第1通路
52 第2通路
53 第3通路
54 第4通路
55 第5通路
56 第6通路
61 第1圧力バルブ
62 第2圧力バルブ
63 第3バルブ
64 第4バルブ
70 ピストン
80 ばね
90 隔壁
101−110 開口部
120,130 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと該ハウジング内で回転可能な回転軸との間に形成される第1乃至第4の室と、
第1乃至第4の室に充填されるオイルと、
該オイルが膨張したときに、オイルの体積増加分を蓄えることができる第5の室と、
第5の室に設けられ、第5の室のオイルを押圧する押圧手段と、
前記回転軸に突設され、一方向へ回動することにより第1及び第3の室のオイルを押圧し、逆方向へ回動することにより第2及び第4の室のオイルを押圧するベーンと、
第1の室と第5の室とを連通させる第1通路と、
第1の室と第3の室とを連通させる第2通路と、
第2の室と第5の室とを連通させる第3通路と、
第2の室と第4の室とを連通させる第4通路と、
第1通路に設けられ、第1通路を通じて第1の室へオイルが流入することを阻止する一方で、第1の室の内圧が所定値を超えたときに開弁して、第1の室からオイルを流出させる第1圧力バルブと、
第3通路に設けられ、第3通路を通じて第2の室へオイルが流入することを阻止する一方で、第2の室の内圧が所定値を超えたときに開弁して、第2の室からオイルを流出させる第2圧力バルブとを備え、
第1又は第2の室の内圧が所定値を超えるまでは、回転軸の回転を停止させ得る油圧式運動制御装置であって、
第2通路に連通し、第5の室に通じる第5通路と、
第5通路に設けられ、第5通路を通じて第5の室へオイルが流入することを阻止する一方向性の第3バルブと、
第4通路に連通し、第5の室に通じる第6通路と、
第6通路に設けられ、第6通路を通じて第5の室へオイルが流入することを阻止する一方向性の第4バルブと、
をさらに有することを特徴とする油圧式運動制御装置。
【請求項2】
前記第3バルブが、第2の室のオイルがベーンに押圧されているときに第2圧力バルブが開弁するまでは開弁せず、そのときに第2圧力バルブが開弁したときは開弁して第5の室からオイルを流出させる圧力バルブであり、
前記第4バルブが、第1の室のオイルがベーンに押圧されているときに第1圧力バルブが開弁するまでは開弁せず、そのときに第1圧力バルブが開弁したときは開弁して第5の室からオイルを流出させる圧力バルブであることを特徴とする請求項1に記載の油圧式運動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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