説明

油圧駆動装置、油圧供給装置、油圧供給装置を有する航空機、および油圧設定方法

航空機(F)の油圧駆動装置(10,20)は、ギア筐体(13a)に設けられるギア機構(13)と、ギア筐体(13a)に固定されたポンプ筐体(11a,12a)に設けられる第1油圧ポンプ(11,21)および第2油圧ポンプ(12,22)を有する。油圧供給装置(H)は、航空機アクチュエータを動作させる第1油圧系統(A)を第1エンジン(1)に連結する第1油圧駆動装置(10)と、第2油圧系統(B)を第2エンジン(2)に連結する第2油圧駆動装置(20)とを有する。油圧駆動装置(10,20)は、エンジン出力シャフトに連結するギア駆動シャフト(1a,2a)と、ギア出力シャフトに連結された2つの油圧ポンプ(11−12、および21−22)を油圧系統(A,B)の圧力管と吸込管に接続する接続装置(41,42)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動装置、油圧供給装置、油圧供給装置を有する航空機、および油圧供給装置を構成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
特許文献1には、パイロンによって航空機の翼からつり下げられたバイパスガスタービンエンジンが述べられている。負荷伝達シャフトが、航空機の補助機械を駆動するために用いられる。このために、更なるシャフトが負荷伝達シャフトに連結され、この更なるシャフトは、補助機械が固定されているエンジンパイロンの内部に配置されたギア機構を駆動する。
【0003】
特許文献2によって、たとえばコアエンジンと、2つのファンロータとを有する航空機エンジンが知られている。このエンジンには、高圧圧縮機の吸気筐体に配置される動力シャフトが設けられている。動力シャフトは、コアエンジンの高圧圧縮機シャフトに接続され、エンジンと航空機の補助装置にシャフト出力を伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開DE69,208,257号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開DE4,131,713号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、独立請求項の特徴によって満足される。更なる実施形態については、前記独立請求項に関連する従属請求項において述べる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって航空機の油圧駆動装置を提供する。油圧駆動装置は、油圧駆動装置に連動するエンジンのエンジン出力シャフトに回転連結するギア駆動シャフトと、ギア被駆動シャフトとを有するギア機構を備える。更に油圧駆動装置が有する第1油圧ポンプと第2油圧ポンプは、油圧系統の圧力管への接続部と、吸込管への接続部とを有し、更に、連結装置を介してギア被駆動シャフトにそれぞれ接続される油圧ポンプ駆動シャフトを有する。
【0007】
ギア機構は、ギア筐体に設けられ、第1油圧ポンプと第2油圧ポンプは、ギア筐体に固定されたポンプ筐体にそれぞれ設けられる。またはギア機構、第1油圧ポンプ、および第2油圧ポンプは、ギア筐体に固定されたポンプ筐体に一緒に設けられる。
【0008】
第1油圧ポンプをギア駆動シャフトに連結する第1連結装置と、第2油圧ポンプをギア被駆動シャフトに連結する第2連結装置との一方は、切離可能クラッチであってよい。他の選択肢として、第1油圧ポンプをギア駆動シャフトに連結する第1連結装置と、第2油圧ポンプをギア被駆動シャフト(14)に連結する第2連結装置との両方が、切離可能クラッチであってよい。
【0009】
本構成では、第1油圧ポンプと第2油圧ポンプは、それぞれ切離連結可能クラッチを有
し得る。これに対する他の選択肢としては、油圧ポンプが有するポンプ駆動シャフトのうちの少なくとも1つは、ギア筐体(13a)に配置されたクラッチ装置を介して、ギア駆動シャフトに連結可能またはそこから切離可能であるように構成し得る。
【0010】
この代表的な実施形態では、特にギア機構は、
ギア被駆動シャフトに一体回転連結する第1ギアホイールと、第1ギアホイールに回転連結する中間ホイールと、および中間ホイールに回転連結する第2ギアホイールと、
第1油圧ポンプのポンプ駆動シャフトを、第1ギアホイールに連結または切離可能である第1クラッチ装置と、
第2油圧ポンプのポンプ駆動シャフトを、第2ギアホイールに連結または切離可能である第2クラッチ装置とを有するように構成し得る。
【0011】
油圧ポンプは、可変トランスミッションギア機構を有し得る。同様に、ギア機構を油圧ポンプの外部に設けた他の実施形態では、ギア機構は、可変であってよい。特にギア機構は、摺動要素ギアであってよい。
【0012】
更に、油圧ポンプは、監視駆動装置によってオンまたはオフできるように構成し得る。
本発明によって、航空機のアクチュエータを動作させる第1油圧系統と第2油圧系統と、監視駆動装置とを有する油圧供給装置を備える航空機の油圧供給装置が提供される。油圧供給装置は、第1油圧系統を第1エンジンに連結する第1油圧駆動装置と、第2油圧系統を第2エンジンに連結する第2油圧駆動装置とを有する。それぞれ油圧駆動装置は、油圧駆動装置を、連動するエンジンのエンジン出力シャフトに連結するギア駆動シャフトと、ギア出力シャフトに連結された2つの油圧ポンプとを有する。油圧ポンプは、油圧系統の圧力管と吸込管にそれぞれ接続する接続装置を有する。本構成は、更にギア機構はクラッチ装置を有し、このクラッチ装置によって、2つの油圧ポンプのギア被駆動シャフト(1a,1b)との連結または切離を、作動装置によって行なえるように構成し得る。ギア機構は、2つのクラッチ装置を含んでもよい。これらクラッチ装置は、両方の油圧ポンプの、連動するギア駆動シャフトとの連結または切離を作動装置によって行うことができる。
【0013】
更に、監視駆動装置は、2つのエンジンのうちの1つの障害による受信信号に応答して、2つのクラッチ装置を、故障していないエンジンに連動する油圧駆動装置に送信するように構成し得る。
【0014】
これに対する他の選択肢として、監視駆動装置は、油圧駆動装置のクラッチ装置の状態を監視する。監視駆動装置は、故障していないエンジンに連動する油圧駆動装置に、以下の動作を実行するように構成し得る。
【0015】
両方のクラッチ装置が連結状態である、と監視駆動装置が判断する場合、クラッチ装置を作動させる作動信号は、送信しない。
片方の前記クラッチ装置は切離状態である、と監視駆動装置が判断する場合、切離状態の前記クラッチ装置を連結状態にさせる作動信号を、油圧駆動装置に送信する。
【0016】
両方の前記クラッチ装置が切離状態である、と監視駆動装置が判断する場合、両方の前記クラッチ装置を連結状態にさせる作動信号を、油圧駆動装置に送信する。
これらの実施形態では、更に、以下のように構成し得る。
【0017】
圧力スイッチを、油圧ポンプ下流の圧力管に配置する。この圧力スイッチは、監視駆動装置に機能的に連結される。圧力スイッチは、油圧系統の管の油圧が所定設定圧力値を下回ると、監視駆動装置に信号送信する。
【0018】
油圧ポンプ下流の油圧ポンプの圧力管の圧力値が、設定圧力値を下回った結果としての圧力スイッチからの信号に応答して、監視駆動装置は、それぞれの油圧ポンプを解放する制御信号を、その信号を送った圧力スイッチを備える吸込管の油圧ポンプに連動するクラッチ装置に、送信する。
【0019】
更に、油圧供給装置に関連して、以下のように構成し得る。
それぞれ油圧系統は、監視駆動装置に機能的接続された充填レベルセンサを有する流体貯留槽を有する。充填レベルセンサは、充填レベルが充填レベル最小値を下回ると、監視駆動装置に信号を送信する。
【0020】
充填レベルが最小値を下回ることによる充填レベルセンサからの信号に応答して、監視駆動装置は、信号送信した充填レベルセンサを備える流体貯留槽が属する油圧系統に接続される油圧ポンプのクラッチ装置に、制御信号を送信する。
【0021】
監視駆動装置は、一般的に、それぞれ油圧ポンプに機能的接続できる。監視駆動装置は、それぞれ油圧ポンプに駆動信号を送信することによって、油圧ポンプをオフにする。
本発明による油圧供給装置の実施形態では、2つの油圧系統は、航空機の着陸装置の伸縮機構のアクチュエータに補給する接続装置を有するように構成し得る。
【0022】
ギア機構は、トランスファケースであってよく、また油圧ポンプは、回転速度制御式であってよい。
更に、以下のように構成し得る。ギア機構は、可変トランスミッションギア機構である。監視駆動装置は、油圧ポンプの所望回転速度または所望回転速度範囲を予め設定する。監視駆動装置は、ギア機構に機能的接続されるギアコントローラに、所望回転速度または所望回転速度範囲を送信する。ギアコントローラは、ギア機構を制御することによって、油圧ポンプが予め設定した所望回転速度または予め設定した所望回転速度範囲に従って作動するように構成される。
【0023】
本発明による油圧供給装置は、一般的に、本発明の実施形態による油圧駆動装置を2つ以上有し得る。
本発明の更なる態様は、航空機を提供する。航空機は、油圧供給装置と、それぞれエンジンパイロンに固定された2つのエンジンと、航空機のアクチュエータを動作させる幾つかの油圧系統と、油圧系統を設定する監視駆動装置とを有する。油圧供給装置は、駆動シャフトを介してエンジンに連結する油圧駆動装置を有する。油圧駆動装置は、それぞれのエンジンのエンジンパイロン上且つエンジンバースト領域の後方に、配置される。
【0024】
特にエンジンバースト領域は、真っ直ぐな円錐の錐体表面の正面に存在する領域に位置する。円錐の先端は、エンジンの最後尾に設けられるタービンホイールの中心に位置する。円錐の半開角αは、10度であるように構成される。
【0025】
航空機は、特に本発明の実施形態による油圧供給装置を有することができる。
本構成では、以下のように構成し得る。
監視駆動装置は、飛行制御機能部に機能的接続され、またそれぞれ油圧ポンプに機能的接続される。
【0026】
監視駆動装置は、航空機の巡航動作状態を示す飛行制御機能部からの信号に応答して、油圧系統の油圧ポンプに命令信号を送信することによって、油圧ポンプをオフにする。油圧ポンプは、2つの互いに異なるエンジンによって駆動され、油圧系統は、互いに異なる油圧系統を駆動する。
【0027】
本発明の更なる態様は、航空機の油圧系統を再構成または設定する油圧設定方法を提供する。本方法では、航空機の監視駆動装置は、巡航動作状態を示す飛行制御機能からの信号に応答して、2つの互いに異なる油圧系統を駆動する2つの油圧ポンプをオフにするために、油圧ポンプに命令信号を送信する。油圧ポンプは、2つの互いに異なるエンジンのうちの1つに機械的連結される。本構成において、幾つかの油圧ポンプのうちの1つは、2つの互いに異なるエンジンのうちの1つにそれぞれ連結される。
【0028】
本構成において、油圧供給系統の、巡航動作状態による信号によってオフになっている2つの油圧ポンプは、エネルギ要件と安全性要件の増大を伴う飛行フェーズが開始するかまたはそれに達すると、すぐに再びオンになるように構成し得る。
【0029】
本発明の更なる態様によって、航空機の油圧系統を再構成または設定する方法を提供する。本方法では、航空機の監視駆動装置は、航空機の幾つかのエンジンのうちの1つに対する損傷を示す航空機システム機能からの信号に応答して、故障したエンジンには連動しない油圧駆動装置に、2つのクラッチ装置を連結させる作動信号を送信する。
【0030】
本発明の更なる態様によって、航空機の油圧系統を再構成または設定する方法を提供する。本方法では、航空機の監視駆動装置は、油圧駆動装置のクラッチ装置のクラッチ状態を監視する。監視駆動装置は、故障していないエンジンに連動する油圧駆動装置に、以下の動作を実行する。
【0031】
両方の前記クラッチ装置が連結状態である、と監視駆動装置が判断する場合、クラッチ装置を作動させる作動信号は、送信しない。
片方の前記クラッチ装置は切離状態である、と監視駆動装置が判断する場合、切離状態のクラッチ装置を連結状態にさせる作動信号を、油圧駆動装置に送信する。
【0032】
両方の前記クラッチ装置が切離状態である、と監視駆動装置が判断する場合、両方のクラッチ装置を連結状態にさせる作動信号を送信する。
本発明の目的は、油圧駆動装置と、油圧供給装置と、油圧供給装置を有する航空機と、油圧供給装置を構成する方法とを提供することであり、これによって、航空機の有益な安全装置の構想を実現できる。
【0033】
以下、本発明の代表的な実施形態について、添付した以下の図を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】油圧供給装置に連結される消費部に補給する第1油圧系統と第2油圧系統を有する、油圧供給装置の一実施形態の機能図。
【図2】エンジン出力シャフトを油圧駆動装置に接続する、本発明の実施形態に基づくエンジンの側面図。
【図3】ギア機構と、油圧系統を動作させるエンジンポンプと、クラッチ装置とを示す、本発明による油圧駆動装置の一実施形態の断面図。
【図4】図3と同様の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明による解決策は、2つの翼(翼3または翼4)のうちの1つに固定された第1エンジン1と第2エンジン2と、調整機構によって伸縮可能な前脚と主脚5といった着陸装置とを備えた航空機Fに対応する。航空機Fには、第1油圧系統Aと第2油圧系統Bを有する油圧供給装置Hが含まれる。更に、第1エンジン1は、第1油圧駆動装置10に連動し、第2エンジン2は第2油圧駆動装置20に連動する。
【0036】
本発明によれば、図2によって油圧供給装置の一実施形態の機能図にも示したように、第1油圧駆動装置10は第1エンジン1に連動し、第2油圧駆動装置20は第2エンジン2に連動する。本構成では、第1油圧駆動装置10は、第1駆動シャフト1aを介して第1エンジン1によって駆動され、第2油圧駆動装置20は、第2駆動シャフト2aを介して第2エンジン2によって駆動される。駆動シャフト1a,2aは、それぞれ連動するエンジン1,2のエンジンシャフトまたはタービンシャフト、および特に負荷伝達シャフトに連結され、こうしてエンジン1または2によって駆動される。駆動シャフト1a,2aは、ギア機構を介してそれぞれのエンジンシャフトに連結し得る。
【0037】
特に本発明による油圧駆動装置10,20の実施形態は、油圧供給装置のために構成し得る。油圧供給装置の代表的な実施形態について、図1を参照して説明する。油圧供給装置用に構成される第1油圧駆動装置10は、第1油圧ポンプ11と第2油圧ポンプ12を有し、これらは第1駆動シャフト1aを介して駆動され得る。第1油圧駆動装置10の油圧ポンプ11,12のうちの少なくとも1つは、クラッチ装置を介して、第1油圧駆動装置10のギア機構13に連結される。同様に、第2油圧駆動装置20は、第1油圧ポンプ21と第2油圧ポンプ22を有し、これらは第2駆動シャフト2aを介して駆動され得る。また第2油圧駆動装置20の油圧ポンプ21,22のうちの少なくとも1つは、クラッチ装置を介して、第2油圧駆動装置20のギア機構23に連結される。それぞれの第1油圧ポンプ11,21と第2油圧ポンプ12,22は、油圧系統の圧力管への接続部と、吸込管への接続部と、油圧ポンプ駆動シャフトとを有する。従って、それぞれの第1油圧ポンプ11,21は、圧力管への接続部と、吸込管への接続部とを介して、第1油圧系統Aに接続できる。またそれぞれの第2油圧ポンプ12,22は、同様に、そのような圧力管への接続部と、吸込管への接続部とを介して、第2油圧系統Bに接続できる。
【0038】
本発明による油圧供給装置Hは、航空機のアクチュエータを動作させる第1油圧系統Aと第2油圧系統Bと、それらの動作状態を監視、設定、および/または変更するために油圧供給装置Hの油圧駆動装置を駆動する監視駆動装置(図示略)とを有する。油圧系統A,Bを動作させるために、第1エンジン1によって駆動される第1油圧駆動装置10と、第2エンジン2によって駆動される第2油圧駆動装置20とが設けられている。第1エンジン1と第2エンジン2は、航空機の長手軸に関して互いに反対側に、好適には対称に、航空機に固定される。それぞれ油圧駆動装置10,20には、それぞれ連動するエンジン1または2のエンジン出力シャフトに連結するギア駆動シャフト1aまたは2aと、ギア出力シャフトに連結された2つの油圧ポンプ11−12、または21−22であって、それぞれ、油圧ポンプを油圧系統AまたはBの圧力管と吸込管に接続する接続装置41または42を有する油圧ポンプとが含まれる。ギア駆動シャフト1aまたは2aは、エンジン出力シャフトと同じであってよく、または一般的に、エンジンシャフトであってよい。図1に示すように、それぞれの油圧ポンプの圧力管と吸込管の接続装置を備えたそれぞれの第1油圧ポンプ11,21は、第1油圧系統Aまたは油圧管系に接続され、また同様に、それぞれの油圧ポンプの圧力管と吸込管の接続装置を備えた第2油圧ポンプ12,22は、第2油圧系統Bまたは油圧管系に接続される。従って、それぞれ油圧駆動装置10,20は、第1油圧系統Aを動作させる油圧ポンプ11,21と、第2油圧系統Bを動作させる第2油圧ポンプ12,22とを有する。
【0039】
それぞれ油圧系統A,Bによって、多数の消費部が補給され駆動されるが、消費部は、特にアクチュエータA1、A2、A3、A4、またはB1、B2、B3、B4、または1つもしくは幾つかの着陸装置調整機構A5またはB5であってよい。着陸装置調整機構A5またはB5は、特に航空機の前脚を伸縮させる機構および/または主脚を伸縮させる機構であってよい。
【0040】
本発明の一態様によって、2つの油圧ポンプ11−12または21−22、クラッチ装置、および可変トランスミッションギア機構を備えたそれぞれ油圧駆動装置10,20は、航空機Fのエンジンパイロン上におよびエンジンバースト領域EBの外部に構成される。この文脈では、用語「エンジンバースト領域」EBは、動作中のエンジン損傷(エンジンバースト故障)の結果としてエンジンが分解した場合でも、技術的に妥当な確率で、エンジン構成要素の外部になる領域を意味する。特にエンジンバースト領域EBは、エンジンの最後尾に設けられるタービンホイールの中心に位置する円錐先端を有する真っ直ぐな円錐表面の、正面に位置する領域と見なされ、近くに油圧駆動装置10,20が配置され、半開角は10度である。
【0041】
一般的に、本構成では、それぞれ油圧駆動装置10,20は、構成ユニットとして実現するように構成し得る。本構成では、油圧駆動装置10,20は、筐体に一体化するように構成し得る。
【0042】
本発明による油圧供給装置Hによって、航空機の油圧供給は、設備経費をほとんどかけずに、従って、最小の誤り率で実現でき、また同時に、この油圧供給は、通常の安全性要件を満たすことができる。そのような油圧供給装置Hの場面では、特に本発明による油圧駆動装置を用い得る。
【0043】
本発明による油圧駆動装置の代表的な実施形態を図2に示すが、この図は、第1油圧駆動装置10の一実施形態例を示す。本発明による油圧供給装置Hでは、第2油圧駆動装置20は、本構成では、第1油圧駆動装置10とは異なるエンジン上に配置するが、第1油圧駆動装置10と同じように構成し得る。第1油圧駆動装置10は、ギア機構13を有し、ギア機構13は、トランスファケースとして、また特に可変トランスミッションギア機構、または固定の即ち一定の伝達比のギア機構として構成し得る。ギア機構13の入力シャフトとして駆動シャフト1aが設けられ、ギア機構13の出力シャフトとして、被駆動シャフト31a,32aが設けられている。駆動シャフトは、エンジンシャフトまたは負荷伝達シャフトに連結される接続シャフトと同じであってよい。
【0044】
一般的に、本発明による油圧駆動装置では、第1油圧ポンプ11は、クラッチ装置15を介して、また第2油圧ポンプ12は、クラッチ装置16を介して、可変トランスミッションギア機構13の被駆動シャフト14に連結される。本構成では、クラッチ装置15,16は、それぞれ油圧ポンプの一部を形成し得る。図2の代表的な実施形態では、クラッチ装置15,16は、油圧ポンプ11−12の外部、およびギア筐体13a内のギア機構13上に配置する。本構成では、第1クラッチ装置15は、第1ギア端シャフト31aを、第1油圧ポンプ11のポンプ駆動シャフト17に連結する。第1ギア端シャフト31aは、ギア機構13の被駆動シャフト14に一体回転接続される。更に、第2クラッチ装置16は、第2ギア端シャフト32aを、第2油圧ポンプ12のポンプ駆動シャフト18に連結する。第2ギア端シャフト32aは、中間ホイール33を介して、ギア機構13の被駆動シャフト14に回転連結される。中間ホイール33を用いると、油圧駆動装置10,20において同じ設計の油圧ポンプ11−12を用いることが可能になる。他の選択肢としては、第2クラッチ装置16のギア端シャフト32aは、更に、ギア機構13の被駆動シャフト14に直接回転連結し得る。更なる他の選択肢によれば、第2油圧ポンプ12は、更に、第1油圧ポンプ11が配置された部分に対向するギア機構13の部分に配置し得る。
【0045】
他の代表的な実施形態では、3つ以上の油圧ポンプが油圧駆動装置10,20に配置され、これらの油圧ポンプは、ギア機構13の被駆動シャフトに回転連結される。
本発明によって提供した油圧ポンプは、特に100リットル/分と200リットル/分の間の出力範囲を有し得る。特別な用途の場合には、更に、50リットル/分と200リ
ットル/分の間の出力範囲を提供することも可能である。
【0046】
クラッチ装置15,16は、一般的に、電気的に動作可能クラッチとして構成される。クラッチ装置15,16は、監視駆動装置に機能的接続されるが、監視駆動装置は、クラッチ装置15,16を調整する命令を生成することができ、またクラッチ装置15,16のそれぞれの調整状態を変更するために、クラッチ装置15,16にこれらの命令を送信することができる。クラッチ装置15,16を解放すると、連動油圧ポンプ11または12は、もはや連動ギア機構13が連結されるエンジンによっては駆動されない。クラッチ装置を電気的に駆動することで、特に飛行中にもクラッチ装置15,16を連結状態および/または解放状態することが可能になる。特にクラッチ装置15,16には、更に、センサ装置またはセンサが含まれ、これらは、監視駆動装置に機能的接続され、監視駆動装置による要求時または独立に、クラッチ装置がその連結状態にあるかまたは解放状態にあるかに関して、状態フィードバックを前記監視駆動装置に提供する。逆に言えば、油圧ポンプ11−12は、クラッチ装置の連結状態において、ギア機構13とクラッチ装置を介してエンジンによって駆動される。クラッチ装置15,16またはクラッチ装置は、外部から切換えるタイプであり、すなわち監視駆動装置または何らかの他の信号発生器によって切換可能であり、また磁気クラッチ装置または粘性クラッチ装置として構成し得る。本発明による油圧駆動装置10,20と、対応する航空機システム機能との一体化によって、以下の利点が生じる。
【0047】
エンジンは、エンジンポンプを解放した状態で始動できるため、要求される始動モータ電力が少なく済む。
減出力での飛行フェーズ中は、油圧系統の2つのポンプのうちの1つを解放することができ、必要に応じて、自動装置またはパイロットによって駆動連結され得る。減出力によって、燃料消費が減少し、油圧ポンプの損耗が減る。
【0048】
クラッチ装置15,16は、特にトルク制限装置を有する。その結果、クラッチ装置は、トルクが過度である場合、滑るという点で、またこのようにして、ポンプとエンジンを損傷から保護するという点で、過負荷保護装置として機能し得る。更に、特定事例での監視駆動装置と、油圧系統構成要素の対応する機能との場合、特にたとえば油圧系統の流体槽の流体が失われた結果として、油圧ポンプ動作中にもかかわらず油圧系統の油圧が所定最小値を下回ったことが検出されると、この油圧系統に接続された油圧ポンプは、油圧ポンプのあらゆる損傷をできるだけ防止するために、オフに切換えることができる。
【0049】
切換可能クラッチとしてのクラッチ装置15,16は、特に粘性クラッチとして構成される。
油圧ポンプにクラッチ装置15,16を設けることによって、エンジン上でありながら、エンジンの安全な領域に、油圧ポンプを配置することが可能であり、またこのようにして、油圧ポンプがエンジンによって駆動されるように構成できる。特に本構成では、エンジンによって駆動される油圧ポンプは、エンジンバースト領域EBの外部に構成し得る。これによって、油圧系統は、通常の安全性要件を満たすために必要な構成要素を低減し、簡素化を促進し得る。
【0050】
他の代表的な実施形態では、クラッチ装置15,16は、2つの油圧ポンプのうちの1つだけに連動する。すなわちこの場合、2つの油圧ポンプのうちの1つを、エンジンシャフトから切離し得る。
【0051】
油圧系統10,20のギア機構13には、油圧ポンプの回転速度を、エンジン回転速度の全範囲、または少なくとも予め設定可能な回転速度範囲において、一定に保つことを目的とした回転速度コントローラを有し得る。このようにして、ポンプ回転速度は、エンジ
ン回転速度とは独立して、一定に維持し得る。ポンプ回転速度を制御するために、調節ユニットまたは制御ユニットを設け得るが、これは、ギア機構の伝達比を調整するために、ギア機構に機能的接続される。また回転速度センサを設け得るが、これは油圧ポンプのポンプ駆動装置と一体化される。この回転速度センサは、ギア制御ユニットに機能的接続される。制御ユニットでは、所望回転速度または所望回転速度範囲が予め設定されるか、または制御ユニットに指令される。また制御ユニットは、油圧ポンプが、許容偏差で所望回転速度に従うまたは所望回転速度範囲に従うように、動作に応じておよび時間に応じて、ギア機構を駆動しまた調整する。
【0052】
ギア機構13は、調整可能トランスミッションギア機構としての実施形態では、摺動要素ギア機構として構成し得る。
更に、ギア機構13は、ギア筐体13aにおいて一体化される。クラッチ装置15,16は、油圧ポンプ筐体の外部に配置されると、ギア筐体13aの中にまたはギア筐体13a上に固定し得る。回転速度コントローラは、ギア機構を調整する作動装置を備えた電子コントローラとして構成し得る。作動装置を備えた電子コントローラは、ギア筐体13aにおいて一体化でき、あるいは、ギア筐体13aに固定された、たとえば前記ギア筐体13aにフランジ接続されたコントローラ筐体(図示略)において、一体化できる。トランスファケースは、これによって、ギア被駆動シャフト14が、入力シャフトとして2つのクラッチ装置15,16に連結される。更に、ギア筐体13aにおいて一体化でき、あるいはギア筐体13aに固定された、たとえば前記ギア筐体13aにフランジ接続された、トランスファケース筐体(図示略)において一体化できる。
【0053】
ギアコントローラは、更に、監視駆動装置の機能的な構成要素であってよく、これによって、監視駆動装置は、ギア機構13を調整するために、ギア機構にアクチュエータ命令を送信するだけでよい。
【0054】
更なる代表的な実施形態では、ギア駆動シャフト1aは、トランスファケースに連結され、トランスファケースは、ギア駆動シャフト1aの回転を、クラッチ装置15または16の2つの入力シャフト31a、32aに伝達する。本実施形態では、油圧ポンプ11−12には、前のパラグラフで述べたような回転速度コントローラを有し得る。
【0055】
本発明による油圧供給装置Hには、特に航空機のアクチュエータを動作させる第1油圧系統Aと第2油圧系統Bと、監視駆動装置と、2つの油圧駆動装置とが含まれる。油圧駆動装置のうち、第1油圧駆動装置10は、第1エンジン1のエンジンシャフトに連結するために設けられ、第2油圧駆動装置20は、第2エンジン2のエンジンシャフトに連結するために設けられる。本構成では、特に第1エンジン1と第2エンジン2は、航空機の長手軸に関して互いに反対側に配置するように構成される。本構成では、それぞれ油圧駆動装置10,20には、それぞれの油圧駆動装置10,20をそれぞれの連動エンジン1,2のエンジン出力シャフトに連結するギア駆動シャフト1a,2aと、ギア出力シャフトに連結され、油圧系統A,Bの圧力管と吸込管に油圧ポンプを接続する接続装置41または42を備えた2つの油圧ポンプ11−12または21−22とが含まれる。特に油圧駆動装置10,20は、本発明に基づきそれらのために提供された実施形態のうちの1つによって構成し得る。
【0056】
本発明の更なる態様によれば、航空機Fには、油圧供給装置Hと、それぞれエンジンパイロンに固定された2つのエンジン1,2であって、航空機のアクチュエータを動作させる幾つかの油圧系統A,Bを備え、また油圧系統を調整する監視駆動装置を備えたエンジン1,2とが設けられる。本構成では、2つ以上の油圧系統A,Bを設け得る。本構成では、油圧供給装置Hには、駆動シャフトを介してエンジン1,2に連結される油圧駆動装置であって、エンジンパイロン上およびタービンの回転円(エンジンバースト領域EB)
の外部および/またはそれぞれのエンジン1,2のエンジンバースト領域EBの後方に配置された油圧駆動装置が含まれる。エンジンパイロンへの固定は、油圧駆動装置10,20が搬送部へ、特にエンジンパイロン内に固定されることを意味する。特に油圧駆動装置の可変トランスミッションギア機構またはトランスファケースは、パイロンに固定し得る。用語「エンジンバースト領域」EBとは、エンジン損傷の影響が技術的に妥当な確率で明らかになり得る領域を意味する。本構成では、エンジンバースト領域EBは、特に真っ直ぐな円錐の錐体表面の正面に存在する領域を意味するが、この円錐の先端は、エンジンの最後尾に設けられるタービンホイールの中心に位置し、またその半開角αは、少なくとも10度である。更に、油圧供給装置Hは、本明細書に述べた実施形態のうちの1つによって構成し得る。油圧供給装置Hの油圧駆動装置は、本明細書に述べた実施形態の何れか一つによって構成し得る。
【0057】
本発明による航空機は、少なくとも1つのエンジンを有し、これは、特にガスタービンエンジンであってよい。更に、ギア機構には、エンジンの機械的なシャフト出力を、電気、油圧、および/または空気エネルギに変換する補助装置を配置し得る。
【0058】
本発明によれば、油圧駆動装置は、補助装置によってまたはそれ無しで、エンジンのエンジンバースト領域と点火領域の外部で、航空機の機体に固定し得る。ここで用語「機体」は、特に支持構造、胴体、および尾翼、またはエンジンブラケットを意味する。
【0059】
本発明の更なる代表的な実施形態によれば、他の選択肢としてまたはそれに追加して、少なくとも1つのエンジン1,2であって、特にガスタービンエンジンであってよいエンジンを有し、また機体を有する航空機が提供される(図3)。機体上、特にエンジンパイロン50上には、エンジン1,2の機械的なシャフト出力を、電気、油圧および/または空気エネルギに変換する少なくとも1つの補助装置51,52が取付けられる。補助装置51,52の補給は、エンジン1の駆動シャフトまたは動力ギアシャフトに連結される駆動装置接続部55を介する機械的なシャフト出力で行う。エンジン1は、エンジンブラケットまたはエンジンパイロン50を介して、航空機Fの機体56の翼54の正面と真下に取付ける。補助装置は、ギア機構13に接続し得るが、ギア機構13は、本発明の代表的な実施形態によって構成でき、また駆動装置接続部55によって駆動し得る。好適には、エンジンのエンジンシャフトまたは動力ギアシャフトに回転連結し得るギア駆動シャフトの形態で駆動し得る。ギア機構13は、特にエンジン(ファン付き)の低圧圧縮機に連結し得る。たとえば発電機51と油圧ポンプ52または前述したものの幾つかは、本発明による油圧供給装置Hに用い得る補助装置として提供し得る。本構成では、駆動装置接続部55の第1端部62は、エンジン1に連動するエンジンギア機構64に接続でき、第2端部66は、補助装置51,52を担持するギア機構13に接続できる。駆動シャフト1aは、エンジン1の長手軸Lに対して、斜めに延在し得る。
【0060】
駆動装置接続部55は、更に、2つの第1シャフト55aと第2シャフト55bを有することができ、これらは、エンジンブラケット50上またはエンジンブラケット50内において機体56に取付けられたアングルドライブ68を介して、接続または連結される。図示した実施形態では、駆動装置接続部55の第1シャフト55aは、エンジン1の長手軸Lに対して、略垂直に延在し、第2シャフト55bは、略平行に延在する。一般的に、代表的な実施形態では、第1シャフト55aと第2シャフト55bは、互いに角度を成して延在する。第1シャフト55aの第1端部71は、エンジンシャフトまたはエンジンギア機構64に連結でき、第2端部72は、アングルドライブ68に接続できる。第2シャフト55bの第1端部73は、アングルドライブ68に連結される。第2端部74は、ギア機構13に連結される。この代表的な実施形態では、駆動装置接続部55は、一般的に更に、少なくとも2つの第1シャフト55aと第2シャフト55bを有することができ、これらは、ギアまたはアングルドライブを介して相互接続する。更に、第1シャフト55
aと第2シャフト55bは、互いに任意の角度を成して構成し得る。更に、駆動装置接続部55、またはアングルドライブ68、ギア機構13、および/または補助ギア機構は、その上流または下流でクラッチ装置に連動し得るが、これによって、上記構成要素の解放および/または係合が可能となる。更に、幾つかの油圧ポンプまたは発電機は、全体構成のフェールセーフ性能を大幅に改善できるように、補助装置として同時に運用できる。
【0061】
上述した代表的な実施形態のうちの1つまたは幾つかに基づく、本発明による航空機または本発明による油圧供給装置Hでは、監視駆動装置は、飛行制御機能部に機能的接続され、また油圧駆動装置の少なくとも2つの油圧ポンプのそれぞれに機能的接続される。2つの互いに異なるエンジン上では、少なくとも1つのそのような油圧駆動装置が構成され、それぞれのエンジンによって駆動される。本発明の代表的な実施形態によれば、監視駆動装置は、航空機が巡航飛行中の場合、監視駆動装置に信号を送信する方法で、飛行制御機能と通信を行う。これは、飛行制御機能に手動で予め設定してもよく、または飛行制御が自動的に巡航動作状態を判断するように構成してもよい。巡航動作状態を判断するために、センサ値、たとえば測定飛行高度を用い得る。この場合、航空機の巡航動作状態を示す信号は、測定飛行高度が所定飛行高度を下回るとすぐに、飛行制御機能によって生成し得る。監視駆動装置の、航空機の巡航動作状態を示す信号の受信に基づき、前記監視駆動装置は、油圧ポンプをオフにする命令信号を生成する。そして、監視駆動装置は、2つの互いに異なるエンジン1,2上に配置された本発明の一実施形態による2つの油圧系統10,20の油圧ポンプに、このスイッチオフ信号を送信する。それぞれ油圧系統10,20上では、それぞれのエンジン1,2によって駆動される2つ以上の油圧ポンプ11−12が一体化されている。他の選択肢として、更に、1つの油圧系統10,20において、油圧ポンプが1つだけオフになるように構成し得る。1つまたは幾つかのエンジン1,2上の油圧系統の油圧ポンプ11−12をオフにすることによって、巡航中の燃料消費が減少する。逆に、この代表的な実施形態ではこれらの油圧ポンプは、前記監視駆動装置が、巡航飛行を止める信号を受信した場合、監視駆動装置によって再び作動またはオン、すなわち動作され得るように構成する。上記例では、このことは離陸、着陸または低空飛行と巡航との間の航空機の最小巡航高度を表す飛行高度を下回ることに連動し得る。このために、油圧ポンプ11−12は、監視駆動装置によってオンとオフできるように構成する。
【0062】
従って、本発明によって、航空機の油圧系統を再構成または設定する方法を提供する。本方法では、航空機の監視駆動装置は、飛行制御機能からの信号に応答して、すなわち低エネルギ要件と安全性要件の飛行動作状態を示すまたは巡航動作状態に達したことを示す信号に応答して、油圧供給系統Hの2つの互いに異なる油圧系統A,Bを駆動する2つの油圧ポンプ11−12、および21−22に、前記油圧ポンプ11−12、および21−22をオフにするために、命令信号が送信される。本構成では、特に油圧ポンプが、2つの互いに異なるエンジン1,2のうちの1つに機械的連結されるように、また本構成では、幾つかの油圧ポンプのうちの1つとして、2つの互いに異なるエンジン1,2のうちの1つに連結されるように構成し得る。他の選択肢としては、最低巡航条件に達した場合、または航空機がもはや巡航していない場合、エンジンによって駆動される2つの油圧駆動装置の油圧ポンプは、3つ以上の油圧駆動装置が1つのエンジンによって駆動されていれば、オフまたはオンされるように構成し得る。本構成では、これらの油圧駆動装置が、航空機の2つ以上の油圧系統を動作させるように構成し得る。従って、本方法では、一般的に、油圧供給系統Hの2つの油圧ポンプ11−12、および21−22は、巡航動作状態に基づく信号によってオフになっているが、高エネルギ要件または安全性要件の飛行フェーズが始まるかまたはそれに達するとすぐに、再びオンになるように構成する。
【0063】
監視駆動装置は、油圧駆動装置10の油圧ポンプ11−12のスイッチオフを交互に行なうことによって、2つのポンプの損耗がほぼ等しくなるように機能的に構成可能である。油圧駆動装置の2つ以上の油圧ポンプを交互にスイッチオンとオフすることは、巡航動
作中、または巡航飛行から巡航飛行までの所定タイムスライスに基づき構成してよい。
【0064】
油圧ポンプ下流の圧力管に圧力スイッチを設けることで、動作中、それぞれの油圧ポンプが損傷を受けていないことを検証できる。監視駆動装置には、更に、監視機能を有することができ、これによって、前記油圧ポンプの動作中、この油圧ポンプに接続された圧力管の圧力スイッチが監視機能に圧力値を送信し、この圧力値において、監視機能が、所定限界値を超える圧力降下が圧力管に存在すると判断した場合、「不具合」状態が油圧ポンプに割当てられる。監視駆動装置は、この場合、不具合と評価された油圧ポンプが、もはや監視駆動装置によっては作動されないように構成し得る。同時に、監視駆動装置は、それぞれの他のエンジンによって駆動される油圧駆動装置であって、「不具合」と評価された油圧ポンプも駆動する同じ油圧管系A,Bを駆動する該油圧駆動装置に連動する油圧ポンプを、もはや停止しない、すなわちオフにしないように構成し得る。他の選択肢または追加として、油圧ポンプへの「不具合」状態割当では、監視駆動装置の機能は、「不具合」と見なされる油圧ポンプに連動するクラッチ装置に対して、このクラッチ装置を解放状態にすることによって、対象の油圧ポンプがもはやそれぞれのエンジンによっては駆動されないようにするために、制御信号を送信するように構成し得る。
【0065】
更に、監視駆動装置には、たとえば対応するエンジン信号を受信することによって、エンジンバースト故障を認識するエンジンバースト再構成機能を有し得る。他の選択肢または追加としては、監視駆動装置は更に、所定時間期間において、油圧駆動装置の2つの互いに異なる油圧ポンプの圧力スイッチが、圧力管において所定最小圧力値を下回る圧力降下を示す場合、エンジンバースト故障が起こったと仮定し得る。監視駆動装置またはエンジンバースト再構成機能は、依然として損傷を受けていないそれぞれの他のエンジンによって駆動し得る油圧ポンプが作動されるように構成し得る。本構成では、監視駆動装置は、監視駆動装置がそこから非作動信号を受信した油圧ポンプだけに、それらをオンするために作動信号を送信するように構成し得る。または監視駆動装置は、それぞれの他のエンジンの全ての油圧ポンプに、エンジンをオンするために作動信号を送信するように構成し得る。
【0066】
これは、特に巡航飛行において、油圧ポンプのスイッチオフまたは切換えを処理する機能と一緒に提供し得る。これによって、エンジンバースト時、油圧系統A,Bの故障が防止される。
【0067】
本発明の更なる代表的な実施形態によれば、2つの油圧系統A,Bのそれぞれは、航空機の着陸装置の伸縮機構のアクチュエータに補給するように構成し得る。特にエンジン駆動される油圧ポンプによって作動される油圧系統A,Bが、航空機の着陸装置の伸縮機構の全アクチュエータを作動するように構成し得る。用語「着陸装置」は、たとえば主翼と航空機胴体の間の接続位置の真下に配置された主脚と前脚に関連し得る。
【0068】
本発明の代表的な実施形態によれば、油圧系統は、エンジン駆動される油圧ポンプによって排他的に作動される。特に本発明は、油圧ポンプを備えた油圧駆動装置が、エンジンバースト領域EBの外部に、本構成においては特にエンジンパイロン上に固定されるように構成する。これによって、エンジンバースト時、着陸装置(1つまたは複数)に係っている油圧系統(1つまたは複数)を、半分の出力で機能を維持することが可能になる。
【0069】
それぞれ油圧系統A,Bは、監視駆動装置に機能的接続された充填レベルセンサを備えた流体貯留槽を有する。本発明によれば、更に、充填レベルセンサは、充填レベルが最小値を下回ると、監視駆動装置に信号を送信するように構成し得る。本構成では、更に、監視駆動装置は、充填レベルが最小値を下回ったことによる充填レベルセンサからの信号に応答して、その信号を送信した充填レベルセンサを備えた流体貯留槽が、一部を形成する
油圧系統に接続された油圧ポンプのクラッチ装置に制御信号を送信するように構成し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(F)の油圧駆動装置(10,20)であって、
前記油圧駆動装置(10,20)は、ギア駆動シャフト(1a,2a)とギア被駆動シャフト(14)を有するギア機構(13)と、第1油圧ポンプ(11,21)と第2油圧ポンプ(12,22)とを備え、
前記ギア駆動シャフト(1a,2a)は、前記油圧駆動装置(10,20)に連動するエンジン(1,2)のエンジン出力シャフトに回転連結し、
それぞれ前記第1油圧ポンプ(11,21)と前記第2油圧ポンプ(12,22)は、油圧系統の圧力管への接続部と、吸込管への接続部とを有し、
それぞれ前記第1油圧ポンプ(11,21)と前記第2油圧ポンプ(12,22)は、それぞれ連結装置を介して前記ギア被駆動シャフト(14)に接続される油圧ポンプ駆動シャフト(17,18)を有し、
前記ギア機構(13)はギア筐体(13a)に設けられ、且つ前記第1油圧ポンプ(11,21)と前記第2油圧ポンプ(12,22)は、前記ギア筐体(13a)に固定されたポンプ筐体(11a,12a)に設けられるか、または
前記ギア機構(13)、記第1油圧ポンプ(11,21)、および前記第2油圧ポンプ(12,22)は、ギア筐体(13a)に固定されたポンプ筐体に一緒に設けられる
ことを特徴とする、油圧駆動装置。
【請求項2】
前記第1油圧ポンプ(11,21)を前記ギア駆動シャフト(1a,2a)に連結する第1連結装置と、
前記第2油圧ポンプ(12,22)を前記ギア被駆動シャフト(14)に連結する第2連結装置と
のうちの一方は、切離可能クラッチである、
請求項1記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項3】
前記第1油圧ポンプ(11,21)を前記ギア駆動シャフト(1a,2a)に連結する第1連結装置と;
前記第2油圧ポンプ(12,22)を前記ギア被駆動シャフト(14)に連結する第2連結装置とは、
両方とも切離可能クラッチである、
請求項1記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項4】
前記第1油圧ポンプ(11,21)と前記第2油圧ポンプ(12,22)は、それぞれ切離可能クラッチを有する、
請求項3記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項5】
それぞれ前記油圧ポンプ(11−12)は、ポンプ駆動シャフト(17,18)を有し、
前記ポンプ駆動シャフト(17,18)のうちの少なくとも1つは、前記ギア筐体(13a)に配置されたクラッチ装置(15,16)を介して、前記ギア駆動シャフト(1a,1b)に連結または切離可能である、
請求項3記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項6】
前記ギア機構(13)は、
前記ギア被駆動シャフト(14)に一体回転連結する第1ギアホイール(31)と;
前記第1ギアホイール(31)に回転連結する中間ホイール(33)と;
前記中間ホイール(33)に回転連結する第2ギアホイール(32)と;
前記第1ギアホイール(31)を、前記第1油圧ポンプ(11)のポンプ駆動シャフト
(17)に連結または切離可能である第1クラッチ装置(15)と;
前記第2ギアホイール(32)を、前記第2油圧ポンプ(12)のポンプ駆動シャフト(18)に連結または切離可能である第2クラッチ装置(16)と
を有する、
請求項5記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項7】
それぞれ前記油圧ポンプ(11−12)は、可変トランスミッションギア機構を有する、
請求項1〜6何れか一項記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項8】
それぞれ前記ギア機構(13)は、可変トランスミッションギア機構である、
請求項1〜6何れか一項記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項9】
それぞれ前記ギア機構(13)は、摺動要素ギアである、
請求項5記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項10】
それぞれ前記油圧ポンプ(11−12)は、監視駆動装置によってオンまたはオフされる、
請求項1〜9何れか一項記載の油圧駆動装置(10,20)。
【請求項11】
航空機のアクチュエータを動作させる第1油圧系統(A)と第2油圧系統(B)と;
監視駆動装置と;
前記第1油圧系統(A)を第1エンジン(1)に連結する第1油圧駆動装置(10)と;
前記第2油圧系統(B)を第2エンジン(2)に連結する第2油圧駆動装置(20)とを有する、航空機の油圧供給装置(H)であって、
前記第1油圧駆動装置(10)と前記第2油圧駆動装置(20)はそれぞれ、
それぞれ前記油圧駆動装置(10,20)を、連動するエンジン(1,2)のエンジン出力シャフトに連結するギア駆動シャフト(1a,2a)と;
前記ギア出力シャフトに連結された2つの油圧ポンプ(11−12、および21−22)と;
それぞれ前記油圧ポンプを、前記油圧系統(A,B)の圧力管と吸込管に接続する接続装置(41,42)と
を有することを特徴とする、油圧供給装置。
【請求項12】
前記油圧供給装置(H)は、それぞれクラッチ装置を有する前記ギア機構(13,23)を備え、
前記クラッチ装置の作動装置は、2つの前記油圧ポンプのうちの少なくとも1つを、前記ギア被駆動シャフト(1a,1b)に連結または切離しする、
請求項11記載の油圧供給装置(H)。
【請求項13】
それぞれギア機構(13,23)は、2つの前記クラッチ装置を有し、
これら前記クラッチ装置の前記作動装置は、2つの前記油圧ポンプを、それぞれ前記ギア被駆動シャフト(1a,1b)に連結または切離しする、
請求項12記載の油圧供給装置(H)。
【請求項14】
前記監視駆動装置は、2つの前記エンジン(1,2)のうちの1つが故障したことによる受信信号に応答して、2つの前記クラッチ装置の作動信号を、故障していない前記エンジン(1,2)に連動する前記油圧駆動装置(10,20)に送信する、
請求項13記載の油圧供給装置(H)。
【請求項15】
前記監視駆動装置は、前記クラッチ装置の状態を監視し、
前記監視駆動装置は、
両方の前記クラッチ装置がそれぞれ連結状態であると前記監視駆動装置が判断した場合、前記クラッチ装置を作動させる作動信号は送信せず、
片方の前記クラッチ装置が切離状態であると前記監視駆動装置が判断した場合、この切離状態の前記クラッチ装置を連結状態にする作動信号を、故障していない前記エンジン(1,2)に連動する前記油圧駆動装置(10,20)に送信し、
両方の前記クラッチ装置が切離状態であると前記監視駆動装置が判断した場合、両方の前記クラッチ装置を連結状態にする作動信号を、故障していない前記エンジン(1,2)に連動する前記油圧駆動装置(10,20)に送信する、
請求項13記載の油圧供給装置(H)。
【請求項16】
前記油圧駆動装置は更に、前記油圧ポンプの下流の圧力管に配置される圧力スイッチを有し、
前記圧力スイッチは、前記監視駆動装置に機能的に連結され、
前記圧力スイッチは、前記油圧系統の管の油圧が所定設定圧力値を下回ると、前記監視駆動装置に信号を送信し、
前記油圧ポンプ下流の油圧ポンプの圧力管の圧力値が設定圧力値を下回ったことによる前記圧力スイッチからの信号に応答して、前記監視駆動装置は、それぞれ前記油圧ポンプを解放する制御信号を、前記圧力スイッチを有する吸込管の油圧ポンプに連動する前記クラッチ装置に送信する、
請求項13〜15何れか一項記載の油圧供給装置(H)。
【請求項17】
前記油圧系統(A,B)は、前記監視駆動装置に機能的接続された充填レベルセンサを有する流体貯留槽を有し、
前記充填レベルセンサは、充填レベルが充填レベル最小値を下回ると、前記監視駆動装置に信号送信し、
前記監視駆動装置は、前記充填レベルが前記充填レベル最小値を下回ることによる前記充填レベルセンサからの信号に応答して、制御信号を、前記充填レベルセンサを備える流体貯留槽が属する油圧系統に接続される油圧ポンプの前記クラッチ装置に送信する、
請求項11〜16何れか一項記載の油圧供給装置(H)。
【請求項18】
前記監視駆動装置は、それぞれ前記油圧ポンプに機能的接続され、
前記監視駆動装置は、前記油圧ポンプをオフにするために、前記油圧ポンプに駆動信号を送信する、
請求項11〜17何れか一項記載の油圧供給装置(H)。
【請求項19】
前記航空機の着陸装置は、伸縮機構のアクチュエータを有し、
2つの前記油圧系統(A,B)は、前記アクチュエータに補給する接続装置を有する、
請求項11〜18何れか一項記載の油圧供給装置(H)。
【請求項20】
前記ギア機構(13)は、トランスファケースを有し、
前記油圧ポンプは、回転速度制御式である、
請求項11〜19何れか一項記載の油圧供給装置(H)。
【請求項21】
前記ギア機構(13)は、可変トランスミッションギア機構であり、
前記油圧ポンプには、予め所望回転速度または所望回転速度範囲が設定され、
前記監視駆動装置は、前記ギア機構(13)に機能的接続されるギアコントローラに、前記所望回転速度または前記所望回転速度範囲を送信し、
前記ギアコントローラは、前記所望回転速度または前記所望回転速度範囲に従うように、前記ギア機構(13)を制御する、
請求項18〜20何れか一項記載の油圧供給装置(H)。
【請求項22】
油圧供給装置(H)と;
それぞれエンジンパイロンに固定された2つのエンジン(1,2)と
アクチュエータと
を有する航空機(F)であって、
それぞれ前記エンジンは、
前記アクチュエータを動作させる複数の油圧系統と;
前記油圧系統を設定する監視駆動装置と
を有し、
前記油圧供給装置は、駆動シャフトを介して前記エンジン(1,2)に連結する油圧駆動装置(10,20)を有し、
前記油圧駆動装置(10,20)は、それぞれ前記エンジンパイロン上に、またはエンジンバースト領域(EB)の後方に配置される
ことを特徴とする、航空機。
【請求項23】
前記エンジンバースト領域(EB)は、真っ直ぐな円錐の錐体表面の正面に存在する領域に位置し、
前記円錐の先端は、前記エンジンの最後尾に設けられるタービンホイールの中心に位置し、
前記円錐の半開角(α)は、10度である、
請求項22記載の航空機(F)。
【請求項24】
油圧供給装置(H)は、請求項10〜19何れか一項に基づき構成される、
請求項22記載の航空機(F)。
【請求項25】
前記監視駆動装置は、飛行制御機能部と油圧ポンプにそれぞれ機能的接続され、
前記監視駆動装置は、前記航空機の巡航動作状態を示す飛行制御機能からの信号に応答して、前記油圧ポンプに命令信号を送信することによって前記油圧ポンプをオフにし、
前記油圧ポンプは、2つの互いに異なるエンジンによって駆動され、
稼働中の前記油圧系統は、自身とは異なる油圧系統を駆動する、
請求項22〜23何れか一項記載の航空機(F)。
【請求項26】
航空機の油圧系統を再構成または設定する油圧設定方法であって、
前記航空機の監視駆動装置は、巡航動作状態を示す飛行制御機能からの信号に応答して前記油圧ポンプをオフにするために、2つの互いに異なる油圧系統(A,B)を駆動する2つの前記油圧ポンプ(11−12、および21−22)に命令信号を送信し、
それぞれ前記油圧ポンプは、2つのエンジン(1,2)のうちの1つに機械的連結される、
ことを特徴とする、油圧設定方法。
【請求項27】
前記巡航動作状態による前記信号によってオフになっている2つの前記油圧ポンプ(11−12、および21−22)は、高エネルギ要件と安全性要件の飛行フェーズが開始するか、または前記飛行フェーズに達すると、すぐに再びオンにされる、
請求項26記載の油圧設定方法。
【請求項28】
航空機の油圧系統を再構成または設定する油圧設定方法であって、
前記航空機の監視駆動装置は、前記航空機の複数のエンジンのうちの1つの故障を示す
航空機システム機能からの信号に応答して、故障した前記エンジン(1,2)には連動しない油圧駆動装置(10,20)に、2つのクラッチ装置を連結状態にすべく作動させる信号を送信する
ことを特徴とする、油圧設定方法。
【請求項29】
航空機の油圧系統を再構成または設定する油圧設定方法であって、
前記航空機の監視駆動装置は、油圧駆動装置(10,20)のクラッチ装置のクラッチ状態を監視し、
前記監視駆動装置は、
両方の前記クラッチ装置は連結状態であると前記監視駆動装置が判断する場合、前記クラッチ装置を作動させる作動信号は送信せず、
片方の前記クラッチ装置は切離状態であると前記監視駆動装置が判断する場合、切離状態の前記クラッチ装置を連結状態にさせる作動信号を、故障していない前記エンジン(1,2)に連動する前記油圧駆動装置(10,20)に送信し、
両方の前記クラッチ装置は切離状態であると前記監視駆動装置が判断する場合、両方の前記クラッチ装置を連結状態にさせる作動信号を、故障していない前記エンジン(1,2)に連動する前記油圧駆動装置(10,20)に送信する
ことを特徴とする、油圧設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−538888(P2010−538888A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524413(P2010−524413)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007778
【国際公開番号】WO2009/036970
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)