説明

油捕集用フィルタ

【課題】油捕集性及び形態保持性に優れており、長期間の使用が可能な油捕集用フィルタを提供すること。
【解決手段】本発明の油捕集用フィルタ1は、支持体2の両面に繊維集合体3A,3Bを有しており、該繊維集合体を構成する繊維は、(1)該繊維間で絡合していると共に、該支持体2を骨格とした一体的な絡合状態を形成しているか、又は(2)該繊維間がバインダー又は熱融着により結合していると共に、該バインダー又は熱融着により該支持体2を骨格とした一体的な結合状態を形成しており、通気性を有している。前記繊維の繊維径は7〜30μmである。フィルタ1は、通気性を有しており、通気度20〜150m/(KPa・s)であり、且つ0.5N/25mm荷重時の伸度0〜2%、坪量40〜150g/m2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードなどに取り付けられて使用される油捕集用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
レンジフードの吸入口には、調理時に発生する油煙や埃等(以下、油煙等という。)によって排煙用のファン等が直接汚れないように、これらを捕獲するグリスフィルタと称される金属製のフィルタが取り付けられている。しかし、このグリスフィルタは、掃除が面倒であるため、その手間を軽減するために、その外側にさらに不織布等の素材からなる使い捨ての油捕集用フィルタが取り付けられて使用されている。
【0003】
この種の油捕集用フィルタは、調理時の火炎などの高熱に耐えうることが求められており、例えば、特許文献1及び2には、難燃性又は耐炎性の素材から形成された油捕集用フィルタ又はフィルタ材が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−316009号公報
【特許文献2】特開2003−236320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に市販されている不織布等からなる油捕集用フィルタは、グリスフィルタ(金属性のフィルタ)への装着時、伸びが生じる為、たるみが出来、隙間なく取り付けるのが困難な場合がある。また、油捕集用フィルタは、長期間の使用によって、捕集した油によりフィルタ自身の重量が増加して、伸びが生じる場合がある。このように、伸びて、たるみが発生した事により、油捕集用フィルタとグリスフィルタとの間に隙間が形成され、この隙間から油煙等が進入し、グリスフィルタやレンジフード内部、例えばファン等が汚れることがしばしば生じていた。また、伸びやたるみが生じた油捕集用フィルタの形態は、外観上好ましくない。又、比較的太い径を有する繊維から形成されているため、繊維間が疎であり、その油煙等に対する捕集性は十分ではなく、調理時に発生する油煙等が油捕集用フィルタを通過し、グリスフィルタやレンジフード内部、例えばファン等を汚している。
【0006】
従って、本発明の目的は、油捕集性及び形態保持性に優れており、長期間の使用が可能な油捕集用フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持体の片面又は両面に繊維集合体を有しており、該繊維集合体を構成する繊維は、該繊維間で絡合していると共に、該支持体を骨格とした一体的な絡合状態を形成しており、該繊維の繊維径が7〜30μmであり、通気性を有しており、通気度20〜150m/(KPa・s)であり、且つ0.5N/25mm荷重時の伸度0〜2%、坪量40〜150g/m2である油捕集用フィルタを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、支持体の片面又は両面に繊維集合体を有しており、該繊維集合体を構成する繊維は、該繊維間がバインダー又は熱融着により結合していると共に、該バインダー又は熱融着により該支持体を骨格とした一体的な結合状態を形成しており、該繊維の繊維径が7〜30μmであり、通気性を有しており、通気度20〜150m/(KPa・s)であり、且つ0.5N/25mm荷重時の伸度0〜2%、坪量40〜150g/m2である油捕集用フィルタを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油捕集用フィルタによれば、油捕集性及び形態保持性に優れており、長期間の使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の油捕集用フィルタをその好ましい実施形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。
【0011】
第1実施形態の油捕集用フィルタ1(以下、単にフィルタともいう)は、図1及び図2に示すように、支持体2の両面に繊維集合体3A,3Bを有しており、該繊維集合体3A,3Bを構成する繊維は、該繊維間で絡合していると共に、該支持体2を骨格とした一体的な絡合状態を形成しており、通気性を有している。フィルタ1は、図1に示すように、第1の面1a及び第2の面1bを有している。
【0012】
第1実施形態のフィルタ1では、支持体2が、フィルタ1の厚み方向の内部に存在しており、支持体2の上下面が、繊維集合体3A,3Bでそれぞれ覆われている。つまり、フィルタ1は、支持体2と繊維集合体3A,3Bとからなる繊維状シートである。
【0013】
第1実施形態のフィルタ1について、更に以下に説明する。
フィルタ1は、レンジフード(台所用の換気扇で、コンロ上を覆うフードとファンとが一体化したもの)の吸入口に取り付けられて、調理時に発生する油煙等を捕集するものである。具体的には、油煙等に含まれる粒子状物質(油滴を含む)を、フィルタ1で捕集する。フィルタ1は、グリスフィルタと称される金属製のフィルタの外側に取り付けられて使用されることが好ましい。グリスフィルタの外側に取り付けられたフィルタ1は、油煙等を捕集して、グリスフィルタやレンジフード内部、例えばファン等が汚れることを防止する。
【0014】
フィルタ1をグリスフィルタへ取り付ける方法としては、例えば、フィルタ1の4隅を磁石で固定する方法、フィルタ1の両端部を、図3に示すようにグリスフィルタの両端部の内側へ巻き込んだ状態で、フィルタ1とグリスフィルタとを一体的にレンジフードの溝へ嵌め込んで固定する方法、又はグリスフィルタへ装着可能な枠にフィルタ1を取り付けた後、該枠と共にフィルタ1をグリスフィルタへ固定する方法等が挙げられる。
【0015】
次に、第1実施形態のフィルタ1の支持体2について、更に以下に説明する。
支持体2は、有孔フィルム等の網状素材(網目を有する素材)からなるネットである。第1実施形態では、図2に示すように、支持体2が格子状である。しかし支持体2としては、これに限られず、ネットではないもの、例えば不織布であっても良い。つまり、一定の孔を有し、繊維集合体を形成する繊維ウエブが絡合状態で一体化する担体であれば支持体の種類に特に限定はない。例えば、ガーゼ状の織布のように織り目空間の比較的大きな目の粗い織布、あるいは片面または両面に繊維集合体3A,3Bを重ね合わせてそれらを絡合状態で一体化し得る繊維空隙を有する不織布等も、本発明のフィルタ1の支持体2として用いられる。
【0016】
支持体2の厚みは、繊維集合体3A,3Bを構成する繊維径の5〜1000倍、好ましくは10〜300倍、更に好ましくは15〜50倍である。この値が5倍未満であると、フィルタ1の長期間の使用によって、捕集した油によりフィルタ1自身の重量が増加した場合、繊維集合体3A,3Bがネット2から外れて伸びたり、支持体2が歪んだりして、フィルタ1にたるみが生じやすくなる。1000倍超であると、支持体2の剛性が高くなってフィルタ1をレンジフードに取り付ける際の操作性が低下する。
【0017】
支持体2は、フィルタの強度、伸度の制御を両立することが必要である。更に支持体2はそのメッシュ、線径、線間距離、孔径、孔ピッチ、孔パターン等は繊維集合体3A,3Bとの部分的な絡合性等を考慮して決定される。具体的には、支持体2の線径は20〜1000μmが好ましく、更に好ましくは100〜300μmである。支持体2の線径が部分的に異なっていても良く、その場合は太い部分の線径が前記の値に相当する。この線径が支持体2の厚みに相当する。支持体2の線間距離は5〜20mmが好ましく、更に好ましくは8〜15mmである。
【0018】
支持体2は、フィルタ1の厚み方向の所定部位に部分的に存在している。第1実施形態においては、先に述べた通りフィルタ1の内部に存在している。しかし、支持体2の存在部位はこれに限られず、例えばフィルタ1の表面であってもよい。
【0019】
支持体2の坪量は、0.1〜100g/m2、特に1〜30g/m2であることが好ましい。
【0020】
次に、第1実施形態のフィルタ1の繊維集合体3A,3Bについて、更に以下に説明する。
第1実施形態のフィルタ1では、油煙等の捕集は、専ら繊維集合体3A,3Bの働きによる。第1実施形態では、繊維集合体3A,3Bは、水流交絡による絡合により形成されている。詳しくは後述するが、フィルタ1は、水流交絡による絡合によって繊維集合体3A,3Bを形成すると共に、該繊維集合体3A,3Bの構成繊維とネット2とを絡合させて、両者を一体化させている。つまり、繊維集合体3A,3Bを構成する繊維は、該繊維間が水流によって絡合されていると共に、支持体2に対しても水流によって絡合されている。
【0021】
繊維集合体3A,3Bを構成する繊維の繊維径は、7〜30μmであり、好ましくは7〜18μmである。繊維径が7μm未満であると、フィルタ1の通気度が低くなり、レンジフードファンの吸気能力が低下する。一方、繊維径が30μm超であると、繊維同士の間隔が拡がって、油煙等の捕集率が低下する。繊維集合体3A,3Bを構成する繊維の繊維径が前述した範囲にあると、フィルタ1が柔軟となるため、レンジフードへ取り付ける際の操作性に優れる。
【0022】
繊維集合体3A,3Bの坪量は、それぞれ、20〜150g/m2であることが、フィルタ1の油煙等の捕集率及び形態保持性を確保する上で好ましい。また、繊維集合体3A,3Bを構成する繊維径が、前述した範囲にある場合には、繊維集合体3A,3Bの坪量は、それぞれ、特に20〜58.5g/m2であることが、フィルタ1をレンジフードへ装着する際の操作性が良好となり好ましい。
【0023】
繊維集合体3A,3Bそれぞれの構成繊維の平均繊維間距離は、好ましくは30〜200μm、更に好ましくは50〜150μmである。繊維集合体3A,3Bの構成繊維の平均繊維間距離が斯かる範囲にあることにより、高い捕集性能を持ちながら通気性能の保持という効果が奏される。繊維集合体3A,3Bの構成繊維の平均繊維間距離が短すぎると、通気性が低下するおそれがあり、長すぎると、捕集性能が低下するおそれがある。平均繊維間距離の調整は、例えば平均繊維間距離を大きくする場合には、シート厚みをあげる、繊維を太くする方法等が有効である。
【0024】
前記平均繊維間距離は、次式により算出される。平均繊維間距離は、繊維集合体(不織布)の構造の第1近似として、その構成繊維(繊維i)がすべて等距離平行に配列しているモデルを考えた場合に、その繊維間距離として定義される。平均繊維間距離については、本出願人の先の出願に係る特許第2851642号公報が参考になる。
【0025】
【数1】

【0026】
第1実施形態のフィルタ1の0.5N/25mm荷重時の伸度は、0〜2%であり、好ましくは0〜1.8%である。該伸度は、MD,CDともに、斯かる範囲にあることが好ましい。MDとは、フィルタ製造時における繊維集合体(繊維ウエブ)の流れ方向(Machine Direction、略してMD)であり、該繊維集合体の繊維配向方向である。CDとは、該MDと直交する方向であり、フィルタ製造時における該繊維集合体(繊維ウエブ)の幅方向(Cross machine Direction、略してCD)である。フィルタ1の上記伸度が3%超であると、レンジフードに装着する時に該フィルタ1に伸びが生じる為、たるみが出来、隙間なく取り付けることが困難になる場合があり、さらに長期間の使用によって、捕集した油によりフィルタ自身の重量が増加して伸びが生じる場合もある。フィルタの伸度の調整は、例えば繊維の坪量の調整、又は支持体の線径、線間距離、孔径、孔ピッチ、孔パターン、又はバインダー添加量の調整により行なうことができる。フィルタの伸度は、次の方法により測定される。
【0027】
<フィルタの伸度の測定方法>
測定対象のフィルタから、MDに100mm、該MDと直交する方向であるCDに25mmの寸法の長方形形状を切り出し、この切り出された長方形形状を測定サンプルとする。この測定サンプルを、そのMDが引っ張り方向となるように、引張試験機のチャックに取り付ける。チャック間距離は50mmとする。測定サンプルを300mm/分で引っ張り、荷重値が0.5Nの時における該測定サンプルの伸長時の長さを用い、下記式からMDの0.5N/25mm荷重時の伸度を求める。
伸度(%)=[(伸長時の長さ−50)/50]×100
また、上記フィルタから、CDに100mm、MDに25mmの寸法の長方形形状を切り出してこれを測定サンプルとし、この測定サンプルを、そのCD方向が引張方向となるように引張試験機のチャックに取り付け、上記と同様の手順により、CDの0.5N/25mm荷重時の伸度を求める。
【0028】
フィルタ1の通気度は、20〜150m/(KPa・s)であり、好ましくは30〜130m/(KPa・s)である。フィルタ1の通気度が20m/(KPa・s)未満であると、吸気抵抗が大きく、レンジフードファンで十分な排気を行うことができない。一方、フィルタ1の通気度が150m/(KPa・s)超であると、繊維集合体3Aと3Bとの間、又は繊維集合体3A,3Bそれぞれの構成繊維間の隙間が開き過ぎているため、油煙等の捕集率が低くなる。フィルタ1の通気度は、下記の測定方法により測定される。フィルタ1の通気度の調整は、繊維集合体3A,3Bを構成する繊維の繊維径を調整することにより行なうことができる。
【0029】
<フィルタの通気度の測定方法>
測定対象のフィルタから、100×100mmの寸法の正方形形状を切り出し、この切り出された正方形形状を測定サンプルとする。次に、この測定サンプルを、図4に示す如き構成の通気性試験機の所定位置に取り付ける。通気性試験機としては、例えば、カトーテック(株)のKES−F8−AP1を用いることができる。この測定サンプルの通気性試験機への取り付けにより、シリンダーと連通しているチャンバーの通気穴が該測定サンプルで被覆される。次に、シリンダー内を往復動可能に設けられたピストンを、所定の位置から矢標Aで示す方向に向けて押し込むことにより、該シリンダー内の空気を通気穴を介して試験機の外部へ排出する。このとき、通気穴を被覆している測定サンプルが抵抗となるため、チャンバー内の圧力は大気圧より高くなる。このチャンバー内の圧力(P1)と大気圧(P2)との差圧(ΔP=|P1-P2|)を測定し、次式(1)により、空気排出時の通気抵抗R(KPa・s/m)を算出する。式(1)中、Vは、単位面積あたりの通気量(m3/(m2・sec))を意味し、通気性試験機として上記KES−F8−AP1を用いた場合は、V=4×10-2(m/sec)で一定である。 式(1):R=ΔP/V
【0030】
次に、上記のようにして矢標Aで示す方向に押し込まれたピストンを、矢標Bで示す方向に向けて引くことにより、通気穴を介して外部よりシリンダー内に空気を導入する。このとき、通気穴を被覆している測定サンプルが抵抗となるため、チャンバー内の圧力(P1)は大気圧(P2)より低くなる。このときの差圧(ΔP=|P1-P2|)を測定し、上記式(1)により、空気導入時の通気抵抗R(KPa・s/m)を算出する。
【0031】
そして、以上のようにして算出された空気排出時及び空気導入時それぞれの通気抵抗Rから、これらの平均値Raを求め、次式(2)により、フィルタの通気度C〔m/(KPa・s)〕を求める。 式(2):C=1/Ra
上記手順を5回行い(1回毎に測定サンプルを新しいものと取り替える)、得られた通気度Cの平均値を、測定対象のフィルタの通気度とする。
【0032】
フィルタ1の坪量は、40〜150g/m2であり、好ましくは40〜122g/m2である。フィルタ1の坪量が斯かる範囲にあることにより、フィルタ1の剛性が高まり、且つ優れた油煙等の捕集率を確保することができる。
【0033】
フィルタ1の厚みは、0.5〜5.0mm、特に1〜3.0mmであることが、レンジフードへの装着性を向上させる上で好ましい。
フィルタ1は、例えば図3に示すようにグリスフィルタに巻きつけられ、レンジフードファンの溝にはめ込むことによりセットされるところ、フィルタ1の坪量、厚みが大きすぎると、グリスフィルタに巻き付け難くなり、また、グリスフィルタに装着後、レンジフードの溝にはめ込むことが困難になる。
【0034】
フィルタ1は、例えば、長尺状のシート又は矩形状のシートとして提供されることが好ましい。長尺状のシートの場合には、巻回した状態で保管され、使用時には所定の長さに切断して用いることが好ましい。このシートの寸法は、一般のレンジフードの吸引口に取り付けられる寸法に適宜設計されることが好ましい。
また、フィルタ1は、その両面が同様な性能を有していることが、どちらの面をレンジフードの外側に向けても、該レンジフードに取り付けて使用できる上で好ましい。
【0035】
前述したフィルタ1を構成する繊維集合体3A,3B及び支持体2には、従来からこの種類のフィルタに用いられている繊維材料と同様のものを用いることができる。レンジフードに取り付けられて用いられる観点から、繊維集合体3A,3B及び支持体2は防炎性であることが好ましく、ガラス繊維、炭素繊維などの不燃性繊維、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクラール、難燃ポリエステル、難燃アクリル、難燃レーヨンなどの難燃性繊維から構成されるか、不燃物繊維及び/又は難燃性繊維が混綿されていることが好ましい。尚、ここで言う難燃性繊維とはLOI値が26以上の繊維を示す。また、繊維集合体3A,3B及び支持体2は不燃性や難燃性繊維から構成されない、または構成されていても防炎性が不十分である場合は、後加工工程でハロゲン系またはリン系、ポリホウ酸の難燃剤を固着させたり、難燃剤を含んだ樹脂をバインダーとして繊維表面に皮膜形成させたりすることで防炎性が賦与されることが好ましい。この場合には、繊維集合体3A,3Bと支持体2とから、フィルタ1を形成したのち、前述したような防炎性を賦与することが好ましい。
【0036】
繊維集合体3A,3B及び支持体2が、不燃性や難燃性繊維から構成されない場合には、これらの繊維材料等としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系材料、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系材料、ポリアクリルニトリル系材料、レーヨン、各種ゴム等を用いることができる。また、ポリ塩化ビニル等のビニル系材料、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン系等を用いることができる。更に、これらの材料の変成物、アロイ又は混合物等を用いることもできる。
【0037】
次に、第1実施形態のフィルタ1の製造方法の一例について詳述する。図5は、第1実施形態のフィルタ1の製造装置の説明図である。第1実施形態のフィルタ1の製造では、先ず支持体2の両面に、繊維ウエブを積層させ、この状態で水流等により支持体2の片面側にある繊維ウエブの繊維と他面側にある繊維ウエブの繊維、及び繊維ウエブの繊維とネット2を絡合一体化させるのと同時に、各繊維ウエブを絡合により不織布状の繊維集合体として支持体2に固定する。
【0038】
図5に示すように、繊維ウエブ3’を作るカード機5、5の夫々から連続的に繊維ウエブ3’がその送り出しロール7を介して繰り出される。一方、カード機5、5の間には支持体2の供給ロール6が配設され、供給ロール6の送り出しロール8から支持体2が繰り出される。そして、ロール7、7によって繊維ウエブ3’、3’が支持体2の両側に重ね合わされ、ウォーターニードリング装置4へ搬入される。ウォーターニードリング装置4において、ジェット水流によって繊維ウエブ3’の繊維を支持体2と絡合させ及び支持体2の両面にある繊維ウエブ3’、3’どうしを絡合させる。繊推ウエブ3’、3’どうしの絡合により形成された繊維集合体及び該繊維集合体が絡合された支持体2は、ニップロール9を通って加熱装置11に搬入される。そして、加熱装置11において熱処理が施される。熱処理後のフィルタ1はニップロール10を介して、ワインダー12に巻き取られる。
尚、繊維集合体3A,3B及び支持体2が、不燃性や難燃性繊維から構成されない場合には、熱処理後のフィルタ1に難燃剤を塗工することが好ましい。
【0039】
前述した第1実施形態のフィルタ1によれば、繊維集合体3A及び3Bを構成する繊維が、該繊維間で絡合していると共に、支持体2を骨格とした一体的な結合状態を形成しているため、形態保持性が高く、その捕集率が長期間に亘り維持される。
また、第1実施形態のフィルタ1は、繊維集合体3A,3Bの構成繊維の繊維径が7〜30μmと小さいため、油煙等の捕集率が高く、さらに、通気性を有しており、通気度が20〜150m/(KPa・s)であるため、レンジフードの風量を損なわずに油煙等を効率良く捕集する能力に優れている。
また、第1実施形態のフィルタ1は、前述した測定方法により測定される伸度が、MD,CDともに0〜2%であるため、レンジフードへの装着性及び装着後の形態保持性に優れている。
また、第1実施形態のフィルタ1は、その坪量が40〜150g/m2であるため、繊維集合体3A,3Bの構成繊維の繊維径が7〜30μmと小さい範囲でも、レンジフードの風量を損なわない。
【0040】
また、第1実施形態のフィルタ1は、その厚みが0.5〜5.0mmであることにより、レンジフードへの装着性が特に優れたものとなる。
【0041】
以下、本発明の油捕集用フィルタの第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上述した第1実施形態と異なる構成部分を主として説明し、第1実施形態と同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0042】
第2実施形態の油捕集用フィルタは、繊維間及び繊維と支持体との間の結合(絡合)形態の点で、上述した第1実施形態のフィルタと異なっているが、フィルタの全体構成としては概ね図1に示す通りであり、また支持体の構成は図2に示す通りである。
即ち、第2実施形態のフィルタ1は、図1及び図2に示すように、支持体2の両面に繊維集合体3A,3Bを有しており、該繊維集合体3A,3Bを構成する繊維は、該繊維間がバインダー又は熱融着により結合していると共に、該バインダー又は熱融着により該支持体2を骨格とした一体的な結合状態を形成しており、通気性を有している。つまり、第2実施形態の繊維集合体3A,3Bを構成する繊維は、該繊維間がバインダーにより結合されているか、又は該繊維の熱融着により結合されていると共に、支持体2に対してもバインダー又は該繊維及び/若しくは支持体の熱融着により結合されており、繊維集合体3A,3Bの構成繊維と支持体2とが一体化されている。
【0043】
第2実施形態のフィルタ1は、繊維集合体3A,3B及び支持体2をバインダーにより結合するケミカルボンド法、又は繊維集合体3A,3B同士及び支持体2を熱融着により結合するヒートボンド法などにより製造することができる。ケミカルボンド法、ヒートボンド法としては、この種のフィルタの製造に利用される公知の方法を用いることができる。このような構成の第2実施形態のフィルタによっても、上述した第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0044】
上記ケミカルボンド法では、例えば、繊維をカード機により解繊した後、解繊したウエブに上記バインダー(樹脂)を、スプレー法、コーティング法、デッピング法等により添加し、その後の乾燥工程により固化して不織布を作製する。バインダーの添加量は一般的に繊維重量に対して1割〜2割程度である。バインダーとしては、メラニン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の高分子有機材料の他、水ガラスもしくは水ガラスを含有した材料等が用いられる。更にこれらのバインダーには、その性質を損なわない範囲で抗酸化剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、分散剤等の添加剤を任意で配合してもよい。
【0045】
上記ヒートボンド法では、例えば、熱可塑性樹脂からなる繊維を用い、カード機により解繊した後、解繊したウエブを乾燥工程により熱融解させて結合し不織布を作製する。ヒートボンド法で使用する繊維としては、1種類の熱可塑性樹脂からなる繊維の他、複数種の熱可塑性樹脂からなる複合繊維があり、該複合繊維としては、芯鞘構造、該芯鞘構造の偏芯構造、背腹型、または混合紡糸された繊維が挙げられる。複合繊維を用いた場合、繊維間の接着は、該複合繊維を構成する融点の低い樹脂によってなされる。
【0046】
本発明の油捕集用フィルタは、前述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、前述した第1及び第2実施形態では、支持体2の両面に繊維集合体3A,3Bを有していたが、図6に示すように、繊維集合体3Aを支持体2の片面のみに有していても良い。
【実施例】
【0047】
以下、本発明のフィルタについて、実施例を用いて更に説明する。ただし、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0048】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径12μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量25g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して実施例1のフィルタを得た。実施例1のフィルタの坪量は55g/m2、厚みは1.3mmであった。
【0049】
[実施例2]
繊維径18μmのポリエチレンテレフタレート繊維を用いて繊維ウエブを作製した他は、実施例1と同様にして実施例2のフィルタを得た。実施例2のフィルタの坪量は55g/m2、厚みは1.5mmであった。
【0050】
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径12μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量25g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、その後、バインダーとしてメラミン樹脂を繊維重量に対して20質量%塗工、乾燥して実施例3のフィルタを得た。実施例3のフィルタの坪量は65g/m2、厚みは1.3mmであった。
【0051】
[実施例4]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径18μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量58.5g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して実施例4のフィルタを得た。実施例4のフィルタの坪量は122g/m2、厚みは2.7mmであった。
【0052】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径12μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量53g/m2の繊維ウエブを得た。該繊維ウエブを、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で不織布化した後、熱風乾燥して、比較例1のフィルタを得た。比較例1のフィルタの坪量は53g/m2、厚みは1.3mmであった。
【0053】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径30μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量33g/m2の繊維ウエブを得た。その後、バインダーとしてメラミン樹脂を繊維重量に対して20質量%塗工、乾燥して比較例2のフィルタを得た。比較例2のフィルタの坪量は39g/m2、厚みは1.7mmであった。
【0054】
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径30μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量100g/m2の繊維ウエブを得た。その後、バインダーとしてメラミン樹脂を繊維重量に対して20質量%塗工、乾燥して比較例3のフィルタを得た。比較例3のフィルタの坪量は121g/m2、厚みは9.5mmであった。
【0055】
[比較例4]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径12μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量43.5g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して比較例4のフィルタを得た。比較例4のフィルタの坪量は92g/m2、厚みは2.3mmであった。
【0056】
[比較例5]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径12μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量100g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して比較例5のフィルタを得た。比較例5のフィルタの坪量は205g/m2、厚みは4mmであった。
【0057】
[比較例6]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径18μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量115g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して比較例6のフィルタを得た。比較例6のフィルタの坪量は235g/m2、厚みは4mmであった。
【0058】
[比較例7]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径5μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量14.5g/m2の繊維ウエブを得た。この繊維ウエブはフィルタの地合が悪く、外観上粗密が観察されるような不均一な状態であった。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して比較例7のフィルタを得た。比較例7のフィルタの坪量は34g/m2、厚みは0.9mmであり、フィルタの地合が悪く、外観上粗密がある。
【0059】
[比較例8]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径39μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量60g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して比較例8のフィルタを得た。比較例8のフィルタの坪量は125g/m2、厚みは3.7mmであった。
【0060】
[比較例9]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径39μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量117g/m2の繊維ウエブを得た。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して比較例9のフィルタを得た。比較例9のフィルタの坪量は239g/m2、厚みは7.2mmであった。
【0061】
[比較例10]
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径12μm、繊維長50mm)を原料とし、常法のカード法を用い坪量10g/m2の繊維ウエブを得た。この繊維ウエブは地合が悪く、外観上粗密が観察されるような不均一な状態であった。支持体としてポリプロピレン製の格子状ネット(繊維間距離8〜10mm、線径200〜300μm、坪量5g/m2)を用い、その上下に該繊維ウエブを重合した後、水圧1〜5MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化した後、熱風乾燥して比較例10のフィルタを得た。比較例10のフィルタの坪量は25g/m2、厚みは0.8mmであり、フィルタの地合が悪く、外観上粗密がある。
【0062】
[通気度の評価]
実施例及び比較例のフィルタの通気度を、前述した<フィルタの通気度の測定方法>により測定した。その結果を下記表1に示す。
【0063】
[伸度の評価]
実施例及び比較例のフィルタのMD及びCDの0.5N/25mm荷重時の伸度を、それぞれ前述した<フィルタの伸度の測定方法>により測定した。その結果を下記表1に示す。
【0064】
[磁石による装着性の評価]
実施例及び比較例のフィルタのレンジフードへの装着性を、以下の方法で調べた。
レンジフードは、深型レンジフード((株)日立製作所製、型番HB-606M‐BL)を用いた。各フィルタを一定の大きさに切り、グリスフィルタにあてがって4隅を磁石で固定する方法により固定・装着した。レンジフードへの装着性を、下記の3段階で評価した。その結果を下記表1に示す。
○:フィルタが伸びず、装着性に優れる。
△:フィルタが伸びやすく、装着に手間がかかる。
×:フィルタが伸びてしまい、装着が困難。
【0065】
[巻きつけによる装着性の評価]
実施例及び比較例のフィルタのレンジフードへの装着性を、以下の方法で調べた。
レンジフードは、深型レンジフード((株)日立製作所製、型番HB-606M‐BL)を用いた。各フィルタを一定の大きさに切り、図3に示すようにフィルタの両端部をグリスフィルタの両端部に内側に巻きつける方法により固定・装着した。レンジフードへの装着性を、下記の3段階で評価した。その結果を下記表1に示す。
○:グリスフィルタへの巻きつけ及びレンジフードへの装着性に優れる。
△:グリスフィルタへの巻きつけ及びレンジフードへの装着に手間がかかる。
×:グリスフィルタへの巻きつけ及びレンジフードへの装着が困難。
【0066】
[レンジフードファンの風量の評価]
前記装着性を評価した後に、実施例及び比較例のフィルタを装着したレンジフードファンの風量の評価を、以下の方法で調べた。
前記深型レンジフードファン((株)日立製作所製、型番HB-606M‐BL)の風量を強設定に設定して、風量計(テストー製、型番testo405−V1)を用いて測定した。風量は、レンジフードファンの吸引口の中央部の位置で測定して、その平均値を求めた。その結果を下記表1に示す。ここで求めたレンジフードファンの風量の数値(平均値)は、大きいほど高評価となる。尚、比較例5、6は、フィルタの構造が密になることにより、レンジフードの通気が損なわれ、レンジフード内、及びダクトなどの風量が一定しない為に測定が安定せず、風量を測定できなかった。比較例7は、フィルタの構造の地合が悪く、外観上粗密が観察されるような不均一な状態であるため、レンジフード内及びダクトを通過する風量が一定せずに測定結果がばらつくことがあった。
【0067】
[油捕集率の評価]
前記レンジフードの風量の評価をした後に、実施例及び比較例のフィルタの油捕集率(%)を、以下の方法で調べた。その結果を下記表1に示す。油捕集率の数値は、大きいほど高評価となる。
油捕集率の測定方法は、財団法人ベターリビングが公表している優良住宅部品性能試験方法書における換気ユニット(台所ファン)フィルタの油捕集効率試験(BLT VU−08)を参考にして、試験順序を以下のように行った。図7にこの試験状態を示す。
1.コンロの上にのせたフライパンに油12.5gを入れて1分間熱する。2.前記フライパンに水滴を200g/25分で滴下する。3.蒸発した油分を換気扇で排気する。
4.排気する際にフィルタで油分を捕集する。
5.1回の試験時間は、30分とし、3回行って平均値を取る。
6.フィルタの油捕集率は、次式により算出し、3回行った平均値を用いる。
油捕集率(%)=[(試験後フィルタ重量−試験前フィルタ重量)/(レンジフードに到達した油量)]×100
尚、前記レンジフードの風量は強設定に設定する。また、レンジフードに到達した油量は、フライパンに入れた油量から試験後フライパンに残った油量、及びレンジ周りに飛び散った油量をそれぞれ差し引いて計算した。
【0068】
[レンジフード防汚性の評価]
実施例及び比較例のフィルタのレンジフード防汚性を、以下の方法で調べた。
前記油捕集試験後のレンジフードにおいて、フィルタを取り除いた後のグリスフィルタの汚れ具合を目視評価して、下記の3段階で評価した。その結果を下記表1に示す。
○:グリスフィルタに油が付着していない。
△:グリスフィルタに油が若干付着している。
×:グリスフィルタに油が多量に付着している。
【0069】
[長期間使用後の外観の評価]
実施例及び比較例のフィルタの長期間使用後の外観を、以下の方法で調べた。
前記深型レンジフード((株)日立製作所製、型番HB-606M‐BL)のグリスフィルタ上にフィルタを、その4隅を磁石で固定した後、レンジフードの風量を強にして、24時間運転した後、1週間放置して、目視にてフィルタの外観を観察し、下記の3段階で評価した。その結果を下記表1に示す。
○:フィルタの装着状態が試験前と変わらない。
△:グリスフィルタとフィルタとの隙間がやや開いている。
×:グリスフィルタとフィルタとの隙間が大きく開いている。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、比較例1〜3のフィルタは、支持体を有しておらず、繊維集合体のみから形成されているため、特にフィルタの装着性とレンジフード防汚性の点で実施例1〜4のフィルタに劣る結果となった。
また、比較例7のフィルタは、支持体を有しているものの、繊維集合体を構成する繊維の繊維径が7μm未満であるため、特にレンジフード風量の低下による、レンジフード防汚性低下の点で実施例1〜4のフィルタに劣る結果となった。一方、比較例8及び9のフィルタは、支持体を有しているものの、繊維集合体を構成する繊維の繊維径が30μmを超えるため、特にフィルタの装着性とレンジフード防汚性の点で実施例1〜4のフィルタに劣る結果となった。
また、実施例1〜4のフィルタは、通気度が比較例2及び3のフィルタに比べて低いものの、何れも通気度20m/(KPa・s)以上であり、レンジフード風量は比較例2及び3とほぼ同等の値を示している。比較例4〜7に示すように、フィルタの通気度が20m/(KPa・s)未満では、レンジフード風量が低下すると共に不安定になり、好ましくない結果を招く。一方、比較例2に示すように、フィルタの通気度が150m/(KPa・s)を超えると、油捕集率の低下が顕著とり、レンジフード防汚性低下等の不都合が生じる。
【0072】
また、比較例1及び2のフィルタは、0.5N/25mm荷重時の伸度がMD,CDともに2%を超えているため、特にフィルタ装着性、長期使用後の外観の点で実施例1〜4のフィルタに劣る結果となった。
また、比較例7及び10のフィルタは、支持体を有しているものの、その坪量が40g/m2未満であるため、特にフィルタの地合が悪いために生ずる、レンジフード防汚性の低下の点で実施例1〜4のフィルタに劣る結果となった。一方、比較例5,6,9のフィルタは、支持体を有しているものの、その坪量が150g/m2を超えるため、特にフィルタ装着性とレンジフード防汚性低下の点で実施例1〜4のフィルタに劣る結果となった。
また、比較例9のフィルタは、支持体を有しているものの、その厚みが5.0mmを超えているため、特にフィルタ装着性の点で実施例1〜4のフィルタに劣る結果となった。
【0073】
実施例1〜4のフィルタの装着性は、比較例1〜3及び5及び6及び8〜10のフィルタと比べて優れている。フィルタの装着性は、フィルタの伸度及びフィルタの厚みの影響を特に受ける。即ち、フィルタの伸度が低いほど、伸びずに取り扱い易い。巻きつけによる装着では、フィルタの厚みが大きいと、グリスフィルタに巻きつけにくく、レンジフード本体の取り付けが困難となる。以上のことから、伸度が低く、厚みの薄いフィルタは、装着性が良好であることがわかる。
また、実施例1〜4のフィルタの長期間使用後の外観は、比較例1及び2のフィルタと比べて優れており、このことは、伸度が低いことと対応している。即ち、フィルタの伸度が低いほど、長期間使用後の外観が良好であることがわかる。
【0074】
また、今回はフィルタの難燃性に関しては触れていないが、実施例1〜2,4のフィルタ(繊維間結合形態が絡合によるもの)では難燃性が付与された難燃性繊維を用いることで、また、実施例3のフィルタ(繊維間結合形態がバインダーによるもの)では樹脂(バインダー)中に難燃剤を加えて塗工することで、それぞれ難燃性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明の油捕集用フィルタの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す油捕集用フィルタを形成する支持体の平面図である。
【図3】図3は、油捕集用フィルタをグリスフィルタへ巻きつけて装着する方法の説明図である。
【図4】図4は、フィルタの通気度の測定方法に用いる通気性試験機の概略構成を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の油捕集用フィルタの製造装置の一例を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の油捕集用フィルタの別の実施形態を示す断面図である。
【図7】図7は、フィルタの油捕集用効率試験の試験状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 油捕集用フィルタ
1a 第1の面
1b 第2の面
2 支持体
3A,3B 繊維集合体
4 ウォーターニードリング装置
5 カード機
6 供給ロール
7 送り出しロール
8 送り出しロール
9,10 ニップロール
11 加熱装置
12 ワインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面又は両面に繊維集合体を有しており、該繊維集合体を構成する繊維は、該繊維間で絡合していると共に、該支持体を骨格とした一体的な絡合状態を形成しており、該繊維の繊維径が7〜30μmであり、
通気性を有しており、通気度20〜150m/(KPa・s)であり、且つ0.5N/25mm荷重時の伸度0〜2%、坪量40〜150g/m2である油捕集用フィルタ。
【請求項2】
支持体の片面又は両面に繊維集合体を有しており、該繊維集合体を構成する繊維は、該繊維間がバインダー又は熱融着により結合していると共に、該バインダー又は熱融着により該支持体を骨格とした一体的な結合状態を形成しており、該繊維の繊維径が7〜30μmであり、
通気性を有しており、通気度20〜150m/(KPa・s)であり、且つ0.5N/25mm荷重時の伸度0〜2%、坪量40〜150g/m2である油捕集用フィルタ。
【請求項3】
厚みが0.5〜5.0mmである請求項1又は2記載の油捕集用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−272734(P2008−272734A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318055(P2007−318055)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】