説明

油脂を含む多層揚げ菓子及びその製造方法、並びに、油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤

【課題】良好なクリスピー感及び外観を有する油脂を含む多層揚げ菓子及びその製造方法、並びに、油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤を提供する。
【解決手段】穀粉及び油脂を用いて作られた生地を準備する工程と、生地の表面に、酢酸エステル化でん粉、糖類、及び、増粘多糖類を含む被覆剤を塗布する工程と、被覆剤を塗布した生地を揚げる工程とを備えたことを特徴とする油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を含む多層揚げ菓子及びその製造方法、並びに、油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤に関する。より詳細には、本発明は、食感及び外観を改良した油脂を含む多層揚げ菓子及びその製造方法、並びに、それに用いる被覆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げパイに代表される多層揚げ菓子は、多層構造を作るために、生地に油脂を含ませることで作製されている。例えば、揚げパイ用の生地としては、折りパイや練りパイがある。折りパイは、一般に、生地と生地との間に油脂を挟み込んで折り重ねた後、揚げることによって、生地間に挟み込まれていた油脂を溶解し、気化させて層状とすることで作製されている。練りパイは、一般に、生地に低温で固形化された油脂のブロック又はチップを混合させ、油脂の粒を生地中に意図的に残すことにより、揚げた際に油脂が溶解し、気化することで複数の層を形成して膨らみ、形成した層間に隙間をつくることで作製されている。
【0003】
このような多層揚げ菓子においては、一般に、湿ったような食感よりもクリスピーな食感(クリスピー感)が好まれる傾向がある。このため、多層揚げ菓子の製造において、従来、クリスピー感を向上させる技術やそのような食感を良好な製造効率で付与する技術の研究・開発が盛んに行われている。
【0004】
このような技術として、例えば、特許文献1には、酵母又はベーキングパウダーを用いることなく、かつ、油脂を含む多層焼菓子又は揚げ菓子の製造に際し、(A)小麦粉40〜95重量部に対して、デンプン又は加工デンプンを次亜塩素酸ナトリウム処理、酸浸漬或いは酸焙焼により可溶化処理して調製し、10重量%の糊液の粘度が、30℃で測定したとき、3000mPa・s以下であり、冷水では糊化しない可溶性デンプン、及び/又は、沈降積が、8〜60mLである架橋デンプンを60〜5重量部の割合で配合するか、又は(B)小麦粉で作った生地に、デンプン又は加工デンプンを次亜塩素酸ナトリウム処理、酸浸漬或いは酸焙焼により可溶化処理して調製し、10重量%の糊液の粘度が、30℃で測定したとき、3000mPa・s以下であり、冷水では糊化しない可溶性デンプン及び/又は沈降積が、8〜60mLである架橋デンプンの粉、或いは該可溶性デンプン及び/又は架橋デンプンの懸濁液、を塗布することにより、多層焼菓子又は揚げ菓子にクリスピー感を付与することを特徴とする油脂を含む多層焼菓子又は揚げ菓子の製造法が開示されている。そして、これによれば、クリスピー感を付与した油脂を含む多層焼菓子又は揚げ菓子を製造するための、簡便で、パイ類全体に適用できる、有効な方法、及び、該方法によって製造されたクリスピー感を付与した油脂を含む多層焼菓子又は揚げ菓子を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4615483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術で製造された多層揚げ菓子は、特にクリスピーな食感の向上に関してさらなる改良の余地がある。また、多層揚げ菓子が店頭で販売される際には、表面のツヤ感が強いほどその菓子が美味しそうに見えるため、多層揚げ菓子にとっては良好なツヤ感を有していることも重要な点であるが、このツヤ感についても従来技術についてはさらなる改良の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、良好なクリスピー感及び外観を有する油脂を含む多層揚げ菓子及びその製造方法、並びに、油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討したところ、穀粉及び油脂を用いて作られた生地の表面に、特定の成分配合で構成された被覆剤を塗布した後に、その生地を揚げることで、クリスピー感及び外観が顕著に向上することを見出した。
【0009】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、穀粉及び油脂を用いて作られた生地を準備する工程と、前記生地の表面に、酢酸エステル化でん粉、糖類、及び、増粘多糖類を含む被覆剤を塗布する工程と、前記被覆剤を塗布した生地を揚げる工程とを備えたことを特徴とする油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法である。
【0010】
本発明に係る油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法は、一実施形態において、前記被覆剤には、酢酸エステル化でん粉100重量部に対して、糖類5〜100重量部、及び、増粘多糖類0.1〜3重量部が含まれている。
【0011】
本発明に係る油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法は、別の一実施形態において、前記生地を準備する工程と、前記生地を揚げる工程との間に、さらに生地を冷凍する工程を備え、前記被覆剤を塗布する工程は、前記生地を冷凍する工程の前段、及び/又は、後段に行う。
【0012】
本発明に係る油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法は、さらに別の一実施形態において、前記酢酸エステル化でん粉の原料が、タピオカ、馬鈴薯、小麦、ワキシーコーン、コーン、ハイアミロースコーン、米、ソラマメ、緑豆、小豆、及び、甘藷からなる群から選択された1種以上である。
【0013】
本発明に係る油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法は、さらに別の一実施形態において、前記油脂を含む多層揚げ菓子が、折りパイ類又は練りパイ類である。
【0014】
本発明は別の一側面において、本発明の製造方法によって製造された油脂を含む多層揚げ菓子である。
【0015】
本発明は更に別の一側面において、酢酸エステル化でん粉、糖類、及び、増粘多糖類を含むことを特徴とする油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤である。
【0016】
本発明に係る油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤は、一実施形態において、前記被覆剤には、酢酸エステル化でん粉100重量部に対して、糖類5〜100重量部、及び、増粘多糖類0.1〜3重量部が含まれている。
【0017】
本発明に係る油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤は、別の一実施形態において、前記酢酸エステル化でん粉の原料が、タピオカ、馬鈴薯、小麦、ワキシーコーン、コーン、ハイアミロースコーン、米、ソラマメ、緑豆、小豆、及び、甘藷からなる群から選択された1種以上である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくとも以下の効果が得られる。
(1)良好なクリスピー感を有する多層揚げ菓子が得られ、さらにそのクリスピー感が長時間維持される。
(2)被覆剤を生地に塗布することで、生地を冷凍しても劣化を抑制することができ、さらに冷凍した生地を事前解凍することなく揚げても良好なクリスピー感を有する多層揚げ菓子が得られる。
(3)生地を揚げる際の色付きが早く、揚げ時間を短縮することができ、製造効率が良好となる。
(4)ツヤ感が強く、且つ、そのツヤ感を生地の表面に均一に有する多層揚げ菓子が得られる。
(5)従来の製造工程の大きな変更が必要でなく、既存の製造装置を利用することができるため、簡便で作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】被覆剤を塗った直後の実施例4(右側)及び被覆剤を塗布していないフライ前の比較例1(左側)の各外観写真である。
【図2】フライ直後の実施例4(右側)及び比較例1(左側)の各外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法は、穀粉及び油脂を用いて作られた生地を準備する工程と、生地の表面に、酢酸エステル化でん粉、糖類、及び、増粘多糖類を含む被覆剤を塗布する工程と、被覆剤を塗布した生地を揚げる工程とを備えている。
本発明の多層揚げ菓子は、折りパイ類又は練りパイ類等の揚げパイ等に代表される多層構造に形成された揚げ菓子を意味する。
本発明で用いる穀粉は、小麦、米、大麦、そば、大豆、とうもろこし、又は、ライ麦等、一般的に食用に供されるものを原料とする粉体全般を意味する。本発明の穀粉としては、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、そば粉、大豆粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、又は、これら2種以上の混合粉等を用いることができる。
本発明で用いる油脂は、生地と生地との間に挟み込んで生地を折り重ねた後に揚げてもよい。この場合、油脂が生地間で溶解し、気化して生地を層状に重ねる働きをする。また、本発明で用いる油脂をブロック又はチップ状に成形した後、生地に低温で混合し、続いて、このブロック又はチップ状の油脂を混合した生地を揚げてもよい。この場合も同様に、ブロック又はチップ状の油脂が生地内で溶解し、気化して生地を層状に形成する働きをする。本発明の油脂としては、例えば、バター、ショートニング、パイ用チップマーガリン、加工油脂等を用いることができる。
本発明で用いる酢酸エステル化でん粉は、タピオカ、馬鈴薯、小麦、ワキシーコーン、コーン、ハイアミロースコーン、米、ソラマメ、緑豆、小豆、及び、甘藷からなる群から選択された1種以上をでん粉の原料とする。本発明の酢酸エステル化でん粉としては、例えば、酢酸エステル化タピオカでん粉、酢酸エステル化馬鈴薯でん粉、酢酸エステル化小麦でん粉、酢酸エステル化ワキシーコーンでん粉等を用いることができる。
本発明で用いる糖類は、通常食品用として用いられる糖類全般を意味する。本発明の糖類としては、例えば、上白糖、特グラニュー糖、グルコース、果糖、異性化糖、乳糖、糖アルコール、トレハロース、オリゴ糖、麦芽糖等を用いることができる。
本発明で用いる増粘多糖類は、通常食品用として用いられる増粘多糖類全般を意味する。本発明の増粘多糖類としては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸、カルボキシルメチルセルロース、ローカストビーンガム、アラビアガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、発酵セルロース等を用いることができる。
本発明の製造方法において被覆剤を塗布しているが、この「塗布」は、通常の製菓・製パン作業において実施されている方法、例えば、刷毛塗り、どぶ付け、スプレー塗布、粉まぶし等が含まれる。
【0021】
本発明の油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法は、上述のように、生地を準備する工程、被覆剤を生地の表面に塗布する工程、被覆剤を塗布した生地を揚げる工程を含んでいるが、そのより詳細な一実施形態を以下に説明する。
当該製造方法は、一実施形態として、例えば以下のような工程で構成されていてもよい。
(1)原材料計量
生地を構成する各材料(小麦粉等の穀粉、マーガリン等の油脂、砂糖、水等)を計量する。
(2)ミキシング(混合)
上記材料を容器内で混ぜ合わせる。
(3)リタード(冷蔵)
低温で静置して熟成させる。
(4)生地の折込み
生地を適宜折りたたみ、層構造を作製する。
(5)リタード(冷蔵)
上記(3)〜(5)の工程を必要に応じて適宜繰り返す。
(6)生地の展延
折りたたんだ生地を引き伸ばす。
(7)生地の成形(カット、フィリング絞り)
引き伸ばした生地を適当な形状及び大きさにカットし、必要であれば内部に充填物(ジャム等)を注入する。
(7)の工程後は、冷凍保存する場合と、冷凍保存しない場合とに分かれる。
【0022】
(冷凍保存する場合)
冷凍保存する場合は、(7)の工程に続いて、以下の工程を行う。
(8)生地表面への被覆剤の塗布(任意)
(9)冷凍
通常の冷凍庫による冷凍であってもよく、急速凍結させてもよい。
(10)生地表面への被覆剤の塗布(任意)
(11)保存
(12)被覆剤を塗布した生地のフライ
生地にもよるが、例えば180℃程度で行う。
なお、(8)の工程と(10)の工程とは、いずれか一方だけ行ってもよく、両方行ってもよい。
【0023】
(冷凍保存しない場合)
冷凍保存しない場合は、(7)の工程に続いて、以下の工程を行う。
(8’)生地表面への被覆剤の塗布
(9’)被覆剤を塗布した生地のフライ
【0024】
従来の多層揚げ菓子は、生地に含まれる油脂が多いため、フライ後の時間の経過とともに湿った食感となり、良好なクリスピー感が得られなかった。これに対し、本発明の油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法は、上述のように、生地の表面に酢酸エステル化でん粉、糖類、及び、増粘多糖類を含む被覆剤を塗布してから生地を揚げている。このため、被覆剤で覆われた生地の表面に良好なクリスピー感を有する多層揚げ菓子が得られ、さらにそのクリスピー感が長時間維持される。
また、従来の多層揚げ菓子の製造方法では、生地を冷凍すると、生地にひびが入る等の劣化が発生するおそれがある。さらに、冷凍した生地を解凍することなくフライすると、揚げムラが発生したり、生地がフライ用の油の中で破裂するおそれがある。これに対し、本発明の製造方法では、被覆剤を生地に塗布することで、生地を冷凍しても劣化を抑制することができ、さらに冷凍した生地を事前解凍することなく揚げても揚げムラや破裂が生じず、良好なクリスピー感を有する多層揚げ菓子が得られる。
また、従来の多層揚げ菓子の製造方法では、生地を揚げる際の色付きに時間がかかり、製造効率に悪影響を与えている。これに対し、本発明の製造方法では、生地を揚げる際の色付きが早く、揚げ時間を短縮することができ、製造効率が良好となる。
また、従来の多層揚げ菓子の製造方法では、揚げた後の生地の表面がくすんでツヤが強く出ておらず、さらに揚げムラが多くの範囲で発生することもある。これに対し、本発明の製造方法によれば、ツヤ感が強く、且つ、そのツヤ感を生地の表面に均一に有する多層揚げ菓子が得られる。
さらに、本発明の製造方法では、上述のような従来に対して顕著な効果を有しながらも、従来の製造工程の大きな変更が必要でなく、既存の製造装置を利用することができるため、簡便で作業性が良好となる。
【0025】
本発明で用いる多層揚げ菓子用の被覆剤には、酢酸エステル化でん粉100重量部に対して、糖類5〜100重量部、及び、増粘多糖類0.1〜3重量部が含まれているのが好ましい。酢酸エステル化でん粉100重量部に対して、糖類が5重量部未満であると、生地を揚げる際の色付きが不良となるおそれがあり、糖類が100重量部超であると、生地を揚げる際に焦げが生じるおそれがあるためである。また、酢酸エステル化でん粉100重量部に対して、増粘多糖類が0.1重量部未満であると、生地への付着力が弱く、揚げる際に生地から剥がれやすくなるという問題が生じるおそれがあり、増粘多糖類が3重量部超であると、生地への付着が多すぎて揚げる際の火の通りが悪く、食感不良が生じるおそれがあるためである。
【0026】
本発明で用いる多層揚げ菓子用の被覆剤は、水を含んでいてもよい。このとき用いる水は、一般的に食用として使われているものであり、被覆剤100重量部に対して50〜300重量部使用することが好ましいが、水の添加量は、酢酸エステル化でん粉の加工方法、上記以外の材料を配合する場合の配合バランス、及び、製造装置等に応じて任意に調整することができる。また、本発明の被覆剤が水を含んでいる形態のものは、沈殿が生じ難く、粘度も適度で生地の表面への塗布性が良好である。
【0027】
本発明で用いる多層揚げ菓子用の被覆剤は、さらに小麦粉、加工でんぷん、膨張剤、卵、乳製品、乳化剤、香料、着色料等を加えて構成してもよい。この場合はプレミックス粉としても用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をより良く理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0029】
(実施例1〜12、比較例1〜5:生地の冷凍工程あり)
表1に記載された量の穀粉、油脂及び水をそれぞれ計量し、水以外の材料をミキサーボールに入れて縦型ミキサー(関東混合機工業株式会社製、ドウフック使用)で低速(80rpm)にて7分間混合した。その後、水を加えて更に低速(80rpm)にて2分間混合して一まとめの生地とし、冷凍用の板に載せてビニールで覆い、冷蔵庫(リタード:−5℃)にて1時間冷却した。
続いて、生地を均一に延ばした後、3つ折りする作業を2回繰り返し、冷蔵庫(リタード:−5℃)にて30分間冷却した。生地を最終の厚みが1.2mmになるまで均一に延ばし、13.0cm×7.0cm(生地重量20g)の長方形にカットした。この生地の上にフィリング40gを絞って水を霧吹きし、同じようにカットした生地を重ねて4辺をしっかりと閉じた後、表1に記載された配合の被覆剤を刷毛で塗り、冷凍保存した。翌日、解凍せずに180℃の油にて黄金色に色付くまで揚げた。
なお、比較例1については、生地に被覆剤を塗布しない以外は上記と同様に作製した。
図1に、被覆剤を塗った直後の実施例4(右側)及び被覆剤を塗布していないフライ前の比較例1(左側)の各外観写真を示す。
【0030】
(実施例13:生地の冷凍工程なし)
表1に記載された量の穀粉、油脂及び水をそれぞれ計量し、水以外の材料をミキサーボールに入れて縦型ミキサー(関東混合機工業株式会社製、ドウフック使用)で低速(80rpm)にて7分間混合した。その後、水を加えて更に低速(80rpm)にて2分間混合して一まとめの生地とした。
続いて、生地を均一に延ばした後、3つ折りする作業を2回繰り返し、続いて生地を最終の厚みが1.2mmになるまで均一に延ばし、13.0cm×7.0cm(生地重量20g)の長方形にカットした。この生地の上にフィリング40gを絞って水を霧吹きし、同じようにカットした生地を重ねて4辺をしっかりと閉じた後、表1に記載された配合の被覆剤を刷毛で塗り、180℃の油にて黄金色に色付くまで揚げた。
【0031】
【表1】

【0032】
(評価)
1.被覆剤の作業性
表1に記載された配合の被覆剤の構成材料を市販のステンレスボールに計量して混合し、水を入れた後に粉の固まりが無い状態(約1分間)まで市販ホイッパーにて混合した後、10分間静置した。その際の縣濁液状態及び塗布のし易さを下記の4段階で評価した。
◎:沈殿がなく粘度も良好で塗布し易い、○:ほぼ沈殿がなく塗布し易い、
△:やや沈殿があり塗布し難い、×:沈殿があり粘度も不良で塗布し難い
【0033】
2.冷凍後製品外観
被覆剤を塗布した生地を2週間冷凍した後の表皮状況を下記の4段階で評価した。
◎:乾燥していない、○:ほぼ乾燥なし、
△:やや乾燥している、×:乾燥してひび割れている
【0034】
3.フライ時間
表面にきれいな黄金色の揚げ色がつくまでフライした時間をストップウォッチで計測した。
【0035】
4.製品外観
フライ後の表皮状態を下記の4段階で評価した。
◎:強いツヤ感があり、適度に小さな火脹れ状の泡があり良好、○:ツヤ感があり、やや小さな火脹れ状の泡がある、
△:ツヤ感があまり無く、火脹れはあるが均一でない、×:ツヤ感がほとんど無く、大きな火脹れがある又は扁平で均一でない
【0036】
5.製品食感(フライ直後)
フライ直後(5分以内)の製品の食感を10人のパネラーにて試食評価し、下記の4段階で評価した。
◎:クリスピー感があって非常に良い、○:ややクリスピー感があって良い、
△:クリスピー感がなくやや湿った食感、×:クリスピー感がなく湿った食感
【0037】
6.製品食感(フライ〜1時間経過後)
フライした後、1時間常温(20℃)に放置した製品の食感を10人のパネラーにて試食評価し、下記の4段階で評価した。
◎:クリスピー感があって非常に良い、○:ややクリスピー感があって良い、
△:クリスピー感がなくやや湿った食感、×:クリスピー感がなく湿った食感
上記1〜6の評価結果を表2に示す。
また、図2に、フライ直後の実施例4(右側)及び比較例1(左側)の各外観写真を示す。
【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉及び油脂を用いて作られた生地を準備する工程と、
前記生地の表面に、酢酸エステル化でん粉、糖類、及び、増粘多糖類を含む被覆剤を塗布する工程と、
前記被覆剤を塗布した生地を揚げる工程と、
を備えたことを特徴とする油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法。
【請求項2】
前記被覆剤には、酢酸エステル化でん粉100重量部に対して、糖類5〜100重量部、及び、増粘多糖類0.1〜3重量部が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法。
【請求項3】
前記生地を準備する工程と、前記生地を揚げる工程との間に、さらに生地を冷凍する工程を備え、
前記被覆剤を塗布する工程は、前記生地を冷凍する工程の前段、及び/又は、後段に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法。
【請求項4】
前記酢酸エステル化でん粉の原料が、タピオカ、馬鈴薯、小麦、ワキシーコーン、コーン、ハイアミロースコーン、米、ソラマメ、緑豆、小豆、及び、甘藷からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法。
【請求項5】
前記油脂を含む多層揚げ菓子が、折りパイ類又は練りパイ類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の油脂を含む多層揚げ菓子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって製造された油脂を含む多層揚げ菓子。
【請求項7】
酢酸エステル化でん粉、糖類、及び、増粘多糖類を含むことを特徴とする油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤。
【請求項8】
前記被覆剤には、酢酸エステル化でん粉100重量部に対して、糖類5〜100重量部、及び、増粘多糖類0.1〜3重量部が含まれていることを特徴とする請求項7に記載の油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤。
【請求項9】
前記酢酸エステル化でん粉の原料が、タピオカ、馬鈴薯、小麦、ワキシーコーン、コーン、ハイアミロースコーン、米、ソラマメ、緑豆、小豆、及び、甘藷からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の油脂を含む多層揚げ菓子用の被覆剤。

【図1】
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【図2】
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