説明

治療および診断に使用する新規な特性をもたらしおよび/または該特性を現す組成物

【課題】本発明は細胞内およびこのような細胞を含む生物学的システムにおいて、生物学的な働きやプロセスの変化をもたらしたり発現したりするために有用な構築物の配列を提供することを課題とする。
【解決手段】 実際には、これら構築物は化学修飾物および/ またはリガンド付加物を生物学的機能とを結びつけるものである。該化学修飾物および/ またはリガンド付加物はそれらの生物学的機能によって実質的に妨害されることなく該構築物に対して更なる特性を与える。このような更なる特性は、ヌクレアーゼ耐性、特異的細胞または細胞内の特異的部位に配置する特異細胞リセプターをターゲットとし、そして該構築物と対象とする細胞との間の相互作用を、所望なればこのような相互作用を減少するのみならず増大させることを含む。また本発明によれば方法とキットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞または細胞を含んでいる生物学的システムの中の生物学的機能をもたらしそして該生物学的機能に影響し、そしてそれを現すことが出来る核酸構築物、抱合体、およびベクターを含む組成物に関するものである。
本願中に引用または特定されるすべての特許、特許刊行物、科学文献は、本発明が属する技術分野の状態をより完全に述べるために、ここにこれらの全部を引用することによって組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
ウイルスによって仲介される遺伝子デリバリーに代わるもう一つの方法としては、核酸を直接デリバリーすることである。このアプローチは転移の低効率、低安定性および細胞特異性の欠如を含むいくつかの制限を有する。これら制限のうちのいくつかのものに打克つために、他のアプローチがなされた。これらのアプローチはポリリジンとヒストンのようなポリカチオン(Wu and Wu, US Patent No. 5,166,320、その内容は文献としてここに組み入れられる)との非特異的イオンコンプレックスを含む。
これらはヒストンのようなポリカチオンまたはベース蛋白質を介して核酸構築物と非特異的に結合する。しかしながら得られるコンプレックスは、依然としてコンプレックスの均一性の欠如、核酸構築物の特異的領域に結合するポリカチオンに関する特異性の欠如、核酸のコンプレックスの潜在的妨害、およびコンプレックスのタイミングの悪い解離またはこれら核酸ポリカチオンまたは核ポリペプチドコンプレックスの安定性の欠如を誘起するコンプレックスのタイミングの良い解離の欠如を含むいくつかの制限を受ける。
【0003】
細胞への核酸転移は種々の方法によって起すことができる。このような方法は遊離核酸、核酸構築物、またはウイルスのゲノムまたはバクテリオファージベクターの一部としての核酸を利用することができる。
Wu et al..(米国特許第5,166,320 号)は、ポリカチオンポリリジンとの非特異的な会合におけるポリヌクレオチドを利用した。
これらのコンプレックスはコンプレックスの濃度の欠如、核酸構築物の特異的領域に結合するポリカチオンに関する特異性の欠如、核酸とのコンプレックスの潜在的妨害、およびコンプレックスのタイミングの悪い解離の可能性またはこれらの核酸またはヒストンまたは核ポリペプチドコンプレックスの欠如を誘起するコンプレックスのタイミングの良い解離の欠如を含む制限を受ける。この方法はウイルスベクターのデリバリーを与えない。更に細胞転換効率はいまだ低い。
生体外における造血細胞へのレトロウイルスを仲介とした遺伝子転換の方法は、フィブロネクチンまたはフィブロネクチン断片の存在下において試みられた。
フィブロネクチンはレトロウイルスとは結合するが、他の如何なるウイルス、核酸、または核酸構築物には結合しない。WilliamsとPatel, WO95/26200 (その内容は文献としてここに取り入れられる)はフィブロネクチンの存在下において、レトロウイルスによって造血細胞を転換した。この方法におけるフィブロネクチンの使用は、いくらかのレトロウイルスベクターの使用に限られており、他のウイルスベクターまたは他の核酸は使用されない。
【0004】
二つの主要な理由のために多重コンプレックスを形成することが望ましい。このようなコンプレックスの形成は、コンプレックス中のモノマーユニットの集合した活性が得られるか、あるいは共同結合効果か高局所濃度を生成する隣接効果を介して、個々の成分やモノマーユニットに比較するとより強められた結合特性を有する。ポリリガンドは通常モノマーユニットの結合と比較した場合、相補的配列に対するポリヌクレオチド配列の結合に見られるように、モノマー形状においてよりも重合した形状においてより高い結合親和性を有する。
多重コンプレックスはモノマー化合物の架橋によって直接あるいはマトリックスを介してあるいは非共有結合の形成を介して形成されている。例えば酵素のような所定の化合物の直接的またはマトリックスを介する架橋によって形成される多重コンプレックスの例は、米国特許第4,687,732 号(その内容は文献としてここに取り入れられている)中に記載されており、それらによって可視化モノマーの多重単位から構成される可視化ポリマーはモノマーの化学基と結合するカップリング試薬によってお互いに共有的に結合せしめられる。例えばリガンド受容体システムのような非共有結合の形成を介して形成される多重コンプレックスの例は、免疫学的試薬として通常使用されるPAP (パーオキダーゼ−抗パーオキシダーゼ)コンプレックスやAPAAP(アルカリホスファターゼ−抗アルカリホスファターゼ)コンプレックス、およびビオチン化部分の検出に使用されるストレプトアビジン−ビオチン化酵素コンプレックスである。
架橋または非共有結合によって形成されるコンプレックスの場合は、モノマー単位の機能と活性に影響するコンプレックスの中のモノマー単位の機能と活性に影響するコンプレックスの中のモノマー単位の空間配置や回りの化学的状態に関する制限が存在し、コンプレックスのサイズが大きくなるにつれ溶解度が影響を受ける。
【0005】
真核的プロセスによる原核遺伝子を制御する発現努力は、Schwartz et al. (1993 Gene 127:233, ここに文献として取り入れられる)によって試みられ、彼らは原核遺伝子の中へ真核遺伝子からのイントロン配列を導入した。しかしながら、 mRNAプロセシングが可能な細胞の中へ導入された時、該遺伝子は挿入されているイントロンにくっついているフランキングエクソン配列の存在のために更なるアミノ酸が含まれる変更された蛋白質を発現した。このイントロンの単離の方法は、イントロンにフランキングしているエクソン領域における内在制限酵素部位をあらかじめ存在させることを必要とし、そしてイントロン挿入はイントロンを受け取る遺伝子中に適当な制限酵素部位が存在することを必要とするので、このアプローチにおいてはこの制限は本来的に存在するものである。それ故にRNAからのイントロンの削除の後においても、フランキングしているエクソン配列は成熟RNA分子のコード配列の一部として残存する。更に、受入れ遺伝子上のイントロン挿入のための位置の数は適当な制限酵素部位の利用可能性によってきびしく制限される。
このアプローチによる遺伝子生産物の変更は、該遺伝子生産物の機能に対する予知できない効果を有し、そして特異的な例に対するこの方法の適用性を強く制限する。Schwartz et al. の実施例において、更なるアミノ酸は能力のある細胞中で合成された蛋白質の活性にはっきりした効果を有しなかったが、それは更なるアミノ酸が取り入れられる位置に依存するので、必ずしも予知できるような特性ではない。例えば、 Dunn et al. (1988 Gene 68:259, ここに文献として取り入れられる)によるT7RNAポリメラーゼのアミノ基末端の中へ導入された小さいペプチドをコードしている短い配列は、酵素活性に明確な効果を有しなかった。しかしながら、カルボキシ末端に近い位置への同じ配列の導入は、酵素活性の殆んど完全な喪失を引き起こした。このようにして、 Schwartz et al. の方法によるコード配列の中へエクソンを導入することの結果として、余分のアミノ酸の取入れは、劇的な突然変異誘発性の効果をもたらすことができた。
【0006】
原核生物的要素から誘導されるシステムは哺乳動物細胞中において機能性生産物を生産することができる。E. Coli バクテリオファージ由来の酵素であるT7RNAポリメラーゼは、哺乳動物システム中において一時的にあるいは安定的に発現された(Fuerst et al., 1986 Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 83:8122, その内容は文献としてここに取り入れられる)。哺乳動物環境中で合成される場合、T7プロモーターのコントロール下において遺伝子に作用して機能性遺伝子生産物を与えるために翻訳されることができる転写物を生産することができる。大量のRNAがT7プロモーターから転写されることができる(細胞あたり 30,000RNA分子までの, Lieber et al. 1993, 文献として取り入れられる)。
【0007】
真核生物的システムでは、一つの構築物上のポリメラーゼと別な構築物上のT7プロモーターとの二重システムの使用によってのみ成功が達成されている。この方法では、別々のプラスミドの連続のトランスフェクション(Lieber et al. 1989 Nucleic Acids Res 17.8485 文献として取り入られる)、または共トランスフェクション(Lieber et al. 1993 Methods Enzym, 217,47. 文献として取り入れられる)、またはT7プロモーターを含むプラスミドによるトランスフェクションの後のT7RNAポリメラーゼをコードしている組み換えワクシニアウイルスによる感染(Fuerst et al. 1986 Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 83, 8122)が行われなければならない。T7RNAポリメラーゼはT7プロモーター配列を含まないものとしてのみクローン化することができるので(Davenloo et al., 1984 Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 81:2035, 文献として取り入れられる) 、単一構築物中の両方の要素をクローン化する試みは、T7RNAポリメラーゼで開始される下流のプロモーターからの転写の合成はプラスミドの周りで継続して、細胞死をもたらす自動触媒的カスケードを導くT7RNAポリメラーゼのより多量の合成を引き起こすという事実のために失敗するように思われる。同じ性質を有するプロモーターの削除の似通った技法は、バクテリオファージT3(Morris et al. 1986Gene 41:193)およびSP6 (Kotani et al. 1987 Nucl. Acids Res. 15 2653,両方の刊行物共ここに文献として取り入れられる)RNAポリメラーゼのクローニングについて記述されている。しかしながら、これらの要素の適合性は、構築物に対する二つの修飾、即ちT7リゾチームの存在と抑制可能なT7lac プロモーターの使用によるT7RNAポリメラーゼの阻害を付加することによって達成せられた。これらの制限の両方共が構築物を得るために必要である。
【0008】
細胞中の遺伝子物質の導入は二つの方法によって行なわれる。一つの方法は細胞プロセスに直接作用し、しかしそれ自体は複製されずあるいはいかなる核酸も生成することができない核酸の外からの適用である。細胞プロセスに環境するために達成されなければならないこれら分子の細胞内濃度は、外からの供給に依存している。核酸デリバリーの別な方法は、それ自体は細胞プロセスに作用されないけれども、細胞プロセスに作用する細胞中の一本鎖核酸を生成する一次核酸構築物の細胞中への導入である。この場合は導入された一次核酸構築物は細胞核酸中に組み込まれることができるか、または染色体外状態で存在することができ、そしてそれは組み込まれるかまたは染色体外状態かのいずれかにおいて、それ自体のコピーを増やすことができる。該核酸構築物は、一次核酸構築物中のプロモーター配列から遺伝子発現および遺伝子複製の細胞プロセスに影響する一本鎖核酸を生成することができる。このような核酸はアンチセンス核酸、センス核酸、および蛋白質に翻訳されることができる転写物を含む。このような核酸の細胞内濃度はプロモーター依存合成に制限される。
一次核酸構築物から生成される一本鎖核酸の効率は、それらの細胞中の濃度、安定性、そして生成の持続時間に依存する。細胞内濃度を達成するための現在の方法は合成を支配するプロモーターへの依存によって制限される。
【0009】
アンチセンス療法の効率は、a)アンチセンスRNAの転写の速度、b)該RNAの細胞内位置、c)該RNA分子の安定性という三つの主な因子に殆んどの部分依存する。以前の研究はこれら因子の各々については行われていたが、単一のアプローチで三つ全部については行われていなかった。本発明は、安定なアンチセンスRNA配列の高核内濃度を達成するために、U1および他のhnRNA中の核酸配列に代わりに用いられるAS配列を利用するものである。
U1, U2および他のsnRNAは、蛋白質分子と複合される核に配置するRNAである(DahlbergとLund 1988 Structure and Function of Major and Minor Small Nuclear Ribonucleoprotein Particles, M. Birnstiel, Ed., Springer Verlag, Heidelberg, p38:, ZieveとSautereau 1990 Biochemistry and Molecular Biology 25:1, これらすべてはここに文献として取り入れられる)。
U1, U2および他のsnRNAオペロンの種々なプロモーターは非常に強くそして大量のRNAを生成する。U1および他のsnRNAは、細胞質にsnRNPとして逆輸入される前に、特異的蛋白質が複合される細胞質へ輸出するための信号を有する( 図41) 。snRNAは非常に安定な分子である。それらは特異的蛋白質と複合された場合、snRNPまたはスプライスソームを形成する非常に高次の幹またはループ構造を形成する (図43) 。RNA転写物に作用し変更することによって遺伝子発現に影響するアンチセンスおよび他の核酸分子は、核へ閉じ込めることによってある有利性を誘起することができる。高濃度は核の小容量中に維持されることができ、ターゲットRNAとの相互作用は発現のためにそれらが用いられる前に起こり得、そしてメッセンジャー結合リボゾームとは競合しないであろう。
アンチセンス配列を伝達する手段としてのアンチセンス配列のU2RNAへの付加(Izant とSardelli 1988 Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor, p141, ここに文献として取り入れられる)は、正常なU2転写物の性質を変えた。U2転写域の5'末端の制限酵素部位へアンチセンス配列を挿入することによって形成されるハイブリッドU2分子は挿入サイズの増加と共にアンチセンス効率の減少を示した。250 塩基よりも長いものを挿入すると、アンチセンス効率は実質的に減少した。更にハイブリッドは、長さの増大に伴なう核中のハイブリッドの割合が減少し、野生型の相当物と同程度の能率的には核の中に蓄積されない。
【0010】
YuとWeiner(1988 Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harmor, p141, その内容は文献として取り入れられる)は mRNAのスプライス位置を取り囲むターゲット配列に対する9塩基アンチセンス配列を置換した。該アンチセンス置換はU1RNAの5'末端で行われた。成熟細胞質RNAのターゲットにされる種類の水準は該アンチセンス置換では影響されなかった。
構築物は単一転写単位中に一個以上のターゲット要素が含まれることによってアンチセンス効率を増加するためにデザインされた。この方法において調整された多重構築物は、核酸中の多重ターゲット位置中に作用するものを支配する多くのターゲットを生成することが出来る(Chen et al., 1992 Antisense Strategies, Annals of the New York Academy of Sciences660;271: Zow et al. Gene 1994; 33, 両方共ここに文献として取り入れられる)。阻害に対する他のアプローチがLisziewicz et al.(1993 Proc Natl Acad Sci USA 90, 8000, 文献として取り入れられる)によって示されるように、多重転写物の中へ取り入れられることが出来、彼らはHIV TAR の多重コピーを、同一転写物上のHIV gag に対するアンチセンス配列と結合した。
【0011】
同一転写物上の1個以上のタ−ゲット要素を含むことによる多重ターゲッティングの使用は、多重ターゲット配列の同時的突然変異と云うありそうにもない出来事によるHIV のようなウイルスの高突然変異率を消すための方法を提供する。しかしながら、これらデザインを完成する一般的手段は単一転写物上の生産物を含むことである。このアプローチは次の制限を受ける。
a) 有効物として有用なRNA分子の総数は、単一プロモーターの強度によって制限される。
b)細胞の安定な形質転換の間、組み込みによりアンチセンス配列の発現の原因となる核酸鋳型配列を破壊させることが出来る。
c)多重転写物の使用は、転写物上に存在する一つの生産物が一個の細胞位置中に存在するターゲットに作用し、同一多重転写上に存在する他の生産物が別な細胞位置中に存在するターゲットに作用する場合には好ましくない。これは細胞質中のHIV タット蛋白質に結合するように作用する多重TAR 配列が、核中で最も効果的なHIV gag RNAに対するアンチセンス配列と共に同一の転写物上に存在させるLisziewicz et al.(1993) によって報告されたアプローチである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,166,320 号明細書
【特許文献2】国際公開第95/26200号
【特許文献3】米国特許第4,687,732 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
効率の良い抗ウイルスプロセスを見出すために多くの努力が払われて来たが、現在では、ウイルスの除去よりもむしろウイルス成長の抑制においてのみ成功されている。追求されてきた努力の中には、免疫化または抗体あるいはウイルスまたは細胞上のウイルス受容体部位と相互作用することによりウイルスによる細胞の認識に干渉する蛋白質での処理によるウイルスが細胞に侵入することを防ぐことによってウイルスの複製サイクルの開始を防止するための試みがある。これらの中には高水準の可溶性CD4 による不成功であった処理も含まれる(Husson etal., 1992, 文献として取り入れられる)。加うるに、機能的蛋白質中へのウイルスポリペプチドの進行を防止するためのプロテアーゼインヒビターと、ウイルスにコードされている逆転写酵素の活性とウイルス繁殖に必要な他の機能とを阻害することによるウイルス複製を妨害することが出来る種々のヌクレオシドアナログを使用する細胞中へのウイルス侵入後のHIV 感染と戦うための努力がなされている。ウイルス感染とウイルス複製サイクルの進行のステップは、病気のプロセスの薬理学的なあるいは免疫学的な干渉の可能性について調査された。しかしながら、独立なそして効果的な治療薬のように、免疫学的なそして小分子のインヒビターはAIDSの進行を阻止する事に失敗し、効率と小分子治療薬耐性を有するウイルスの発生という点から大きな問題を残している。免疫学的なそして小分子治療剤の組合せの適用さえ成功をもたらしていない。
【0014】
機能の置き換えまたは新しい機能の導入のいずれか一方のために細胞の中へ遺伝情報を導入することは、ウイルス感染の治療のための効果的な手段を提供してきた。遺伝子治療のアプローチは、ウイルス複製プロセスにおいて細胞内部に作用するメカニズムによって、ウイルスに対する耐性を細胞に与えるために用いられててきた(Yu et al., Gene Therapy J, 13-16 [1994]文献として取り入れられる)。これら研究の結果、試験管内では遺伝治療の効率はウイルス濃度に鋭敏であることが判明した。試験管内実験では、ウイルスの細胞に対する低比率では耐性の実質的な水準を示し、高比率では見せかけだけの効率に終止符が打たれ次いでウイルス生産が一気に激しく起こることによって特徴づけられる防御線突破現象を示した(Sczakiel et al., 1992. J. Viol. 66;5576: Scakiel とPawlita 1990. J. Viol. 65;468.これらは文献として取り入れられる)。このように試験管内ではある遺伝子的に処置された細胞のウイルス:細胞比が低くなれば、高ウイルス:細胞比よりも生存時間が長くなることが示される。
機能の区分別けは真核細胞中の制御されたプロセスにとって重大な意味を持つ。例えば、核DNAの大部分が遺伝子情報の転写が起る核の中に存在する染色体の中へ組織されている。核の中で合成されるRNAの大部分が、細胞質へ輸送され、そこで翻訳される。配置した機能のための他の細胞下区分はゴルジ装置、小胞体、核小体、ミトコンドリア、葉緑体、および細胞膜を含む。このようにして、種々のメカニズムが特異的細胞区分中に巨大分子を保持するためかあるいは巨大分子を一つの細胞区分から他へ輸送するために存在する。例えば、核から成熟した mRNAが細胞質中へ出ていくことにおいて、5'キャップの存在、イントロンの除去、およびポリA配列の付加はすべて再配置を支配する信号の一因となると信じられている(文献)。
スプライスソームアセンブリー中に含まれる小さな核RNA(snRNA)のようないくらかのRNAは、配列輸送によって再配置される(DahlbergとLund, 1988, Structure and Function of Major and Minor Small Ribonuclear Particles, M. Birnstiel, ed., Springer Verlag, Heidelberg, pg, 38, 文献として取り入れられる)。核中の転写の後、5'キャップおよび処理された3'末端の存在は、U1RNAを細胞質の中へ輸送するための二つに分かれた信号をつくりだす。この点に、いくらかのヌクレオチドの削除と5'キャップの過剰メチル化による該RNAの更なるプロセシングが存在する。細胞中に存在するスプライスソーム蛋白質の該UIRNAのSm領域への結合は過剰メチル化と組み合わさり、RNAを核の中へもどす再配置の信号をつくり出すと信じられている。殆どの mRNAとの対比において、殆どの蛋白質は細胞質中のそれらの合成位置から輸送される必要がない。しかしながら、転写、複製または他の核メンテナンスにおいて役立ついくらかの蛋白質は、適正に役目を果たすために核の中に存在せしめることを必要とする。この場合には、蛋白質中に存在するポリペプチド信号配列が細胞質から核の中への蛋白質の輸送を支配する。更に他の蛋白質は細胞質または核において役に立っていないが、リーダーと脂質親和性配列の存在を要求する細胞の膜中に存在することを要求される。
【0015】
遺伝子治療へのアプローチとしてのターゲット分子を支配することは、アンチセンスRNAのような活性剤を特別な細胞の場所においてターゲットと近接して置くことの明白な目的のための配置に関する試みによって研究されて来た。例えば、いくらかの研究者は新しく転写されたターゲットRNAが働くのを妨害するために核の中げ保持されるアンチセンスRNAを発現するための核酸構築物をデザインした (IzantとSardelli, 1988, Current Communication in Molecular Biology, D.Melton, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, CottenとBirnstiel, 1989, EMBO Journal 8, 3861,文献として取り入れられる) 。反対の効果はまたそこに存在せしめられるであろうRNAの翻訳を妨害するために細胞質の中への輸送を増強するための信号を含むための転写物をデザインことによって達成された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、細胞あるいはこのような細胞を含む生物学的システムの中で生物学的機能を保有する組成物で、化学的修飾によって保有されている生物学的機能に加えて更に有用な生物学的機能を付加するであろう組成物を提供することによって、従来の技術の上記制限に打克つものである。
【0017】
本発明は(a) 核酸成分に対する少なくとも一つの第1のドメインと目的とする細胞への少なくとも一つの第2のドメインとからなる非天然物質と、所望なれば(b) 核酸成分と、所望なれば(c) 対象とする細胞、あるいは(b) と(c) の両方からなる組成物を提供するものである。この組成物において、核酸成分に対する一個または二個以上の第1のドメインは、細胞に対する一個または二個以上の第2のドメインとは異なる。対象とする細胞の中へ核酸成分を導入するために、一つのキットが提供される。このキットは包装された入れ物または一つの要素と三つの自由に選択出来る要素の組合せからなる。第一の要素は核酸成分に対する少なくとも一つの第1のドメインと、対象とする細胞に対する第2のドメインとからなる非天然物質である。自由に選択出来る要素は核酸成分、対象とする細胞、および緩衝液と指示書とからなる。
本発明によって提供される他の組成物は対象とする細胞に対する少なくとも一個の第2のドメインからなり、このような一個または二個以上の第2のドメインは、非二本鎖型の核酸成分に結び付く。キットはまた対象とする細胞の中へ核酸成分を導入するために提供される。該キットは包装されている入れ物または対象とする細胞に対する第2のドメインからなる物質と非二本鎖型である核酸成分に結び付く第1のドメインとの組合せからなる。所望なれば緩衝液と指示書が備えられる。
核酸成分に対する第1のドメイン、対象とする細胞に結び付く第2のドメインからなる物質からなる組成物がまた提供される。キットは対象とする細胞の中へ核酸成分を導入するために提供される。包装されている入れ物または組合せにおいて、該キットは核酸成分に対する第1のドメイン、対象とする細胞に結び付く第2のドメインからなる物質からなる。また緩衝液および指示書は所望ならば包含される。
更に、一つまたはそれ以上の相互作用によって結び付けられる一個またはそれ以上のモノマー単位からなる多重コンプレックス組成物が提供される。かくして、該モノマー単位は重合相互作用を介して相互にまたは重合相互作用を介して結合マトリックスに、または両方の種類の相互作用の組合せで結び付くであろう。
また荷電ポリマーに結び付けられている一個以上の成分からなる多重組成物が提供される。この組成物において、該荷電ポリマーはポリカチオンポリマー、ポリイオンポリマー、ポリヌクレオチド、修飾ポリヌクレオチド、およびポリヌクレオチド類似体、または上記要素の如何なる組合せからも選択される。
【0018】
本発明は細胞中に導入された時に非固有ポリメラーゼをコードしかつ発現する核酸構築物を提供する。該非固有ポリメラーゼは、構築物からの核酸配列の一個以上のコピーを生成することが出来る。また細胞の中へ導入された時、非固有プロセシング要素からなる核酸生産物を生産する核酸構築物が提供される。適合性のある細胞中に含まれる場合、該プロセシング要素は実質的にプロセシングの間に取り除かれる。
本発明はまた細胞中の核酸生産物を選択的に発現するプロセスを提供し、該生産物は機能を果たすためにプロセシングを必要とする。該プロセシングは第1に細胞の中に導入された時、適合性のある細胞中に含まれた場合にプロセシングの間に実質的に除去される非固有プロセシング要素からなる核酸生成物を生成する核酸構築物を提供すること、第2に該構築物を細胞中に導入することからなる。
【0019】
他の組成物は細胞中への導入において、核酸生産物を生産することが出来る二次核酸成分または三次核酸成分、あるいはその両方共を生成する一次核酸成分からなる。該二次核酸成分、該三次核酸成分または核酸生成物のいずれも一次核酸成分を生成する能力を有しない。
ここにおいてはまた、真核細胞中に核酸生産物を配置するためのプロセスが提供される。この配置プロセスは、第1に細胞内に存在する時、非天然核酸生産物を生成する核酸成分からなる重要な組成物を提供することからなる。該非天然核酸生産物は、配置される物質部分と対象とする核酸配列とからなる。プロセスの第2のステップでは、該組成物は真核細胞または真核細胞を含む生物学的システムの中へ導入される。
【0020】
更に本発明によって、細胞の中へ導入された時に一個以上の特異的核酸配列を生成することができる核酸成分が提供される。このようにして生成された特異的配列の各々は互いに実質的に非相同であって、細胞内において対象とする一本鎖核酸の特異的部分と相補的であるかまたは細胞中の対象とする特異的蛋白質に結合する能力があるかいずれかである。
本発明は更に対象とするウイルスに対する細胞耐性を増強する方法を提供する。該方法は第1に、該ウイルスに表現型的な耐性を有する形質転換された細胞、およびウイルスまたは細胞上のウイルス特異的位置に結合することができる試薬を提供することからなる。第2に該プロセスは対象とするウイルスに対する細胞耐性を増強するために細胞を含んでいる生物学的システムへ、上記試薬を投与することからなる。
更に細胞の中へ導入された時、非天然生産物を生産する核酸構築物が提供される。該核酸生産物は二つの成分、第1に細胞成分に結合することができる結合成分、第2にそれが非天然生産物に結合される時に該細胞成分を転置することができる配置成分からなる。
本発明によって、細胞中の細胞成分の転置の方法が計画される。ここに、該プロセスは、第1に細胞の中へ導入された時、非天然生産物を生産する核酸構築物、細胞成分と結合可能な結合成分と、非天然生成物に結合された場合に該細胞成分の転のできる配置成分との二個の成分からなる生産物それ自体を提供することからなる。該プロセスの第2のステップでは、核酸構築物は対象とする一個の細胞または該細胞を含む生物学的システム、または対象とする複数個の細胞の中へ導入される。
【0021】
定義
技術および/あるいは本発明で使用される述語の幾つかの定義は以下のようである。
一次核酸構築物: 細胞の中で生産中心をつくりだす核酸で構成される組成物。
生産中心: 細胞の中で他の生産中心をつくり出すかあるいは一本鎖核酸を生産することができる一次核酸構築物から誘導される核酸である。
産出: 一次核酸構築物から生産中心の生成あるいは形成、あるいはほかの産生中心から生産中心を生成あるいは形成すること。
生産: 生産中心から一本鎖核分子を生成すること。
内在細胞システム:一本鎖核酸生産物の機能と同じように生産および産出に使われる細胞内に存在する細胞性プロセスおよび成分。このようなプロセス及び成分は細胞に本来備わっているもの、あるいは人工的な方法あるいは、たとえば、ウイルスによる感染により細胞に導入されることができる。
【0022】
1.普遍的な遺伝子のデリバリー
他の有用な熟語および定義として以下を含む:
核酸成分:
生産物を生産できる細胞中にある化合物あるいは組成物。組成物は一本鎖RNAあるいはDNA、RNA/DNAハイブリッド分子およびキメラ核酸であるポリヌクレオチド、修飾された核酸および核酸類似体;核酸構築物および化学的に修飾された核酸構築物(例1ー13);アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルスのような動物ウイルスおよび植物ウイルスおよびバクテリオファージを含むウイルス;Tiプラスミドを含むプラスミド;あるいはパッケージング信号でウイルス粒子の中にカプセル化されたプラスミド誘導体を含む細胞にデリバリーされることが望まれる核酸配列からなる。核酸成分は細胞内で産生されるかあるいは試験管内で組み合わされるかあるいは化学的に産生されるかあるいは組換えDNA技術で産生される。細胞内で核酸成分からつくられる生産物はmRNA、アンチセンスRNAあるいはDNA、リボザイムを含むポリヌクレオチドであり得るしあるいは蛋白質あるいは蛋白質生産物でありうる。
【0023】
ドメイン:
細胞あるいは核酸成分のいずれかに非共有結合で結合する部分をもつもの。
バインダー:
バインダーは少なくとも一つのドメインを含む担体あるいはマトリックスである。
本発明は普遍的で効率的な核酸転移のための組成物と方法を提供することにより従前の技術の限界を克服している。ウイルスベクターの中、核酸構築物のなかであるいはポリヌクレオチドとして、核酸は広範囲の細胞種に導入可能である。さらに、この発明でのウイルスベクターの使用は特異的なあるいは独特のウイルスに限ることなく広範囲のウイルスベクターが使用可能である。この発明は二つの点で普遍的である:1)いかなる核酸成分も生体内、試験管内で摘要可能であるそして:2)いかなる標的細胞使用されうる。
この発明の実施で、
1)核酸成分と標的細胞を非常に接近させ;そして
2)核酸成分と標的細胞の間に特異性を与える。
3)細胞増殖、核酸の細胞による取り込み、核酸の細胞内配置および細胞DNAへの核酸の組み込みを高めるすることを通して核酸の転移を促進する受容能因子を提供することにより細胞への核酸の転移を増強する、ことが可能である。
本発明は細胞にDNAをデリバリーするための材料と方法を提供する。特異性および/あるいは近接性は中間体である少なくとも一つのドメインからなるバインダーを通して与えられる。もしバインダーが標的細胞に対する少なくとも一つのドメインを持つならば、バインダーは核酸成分にくっつけられる。もしバインダーが核酸成分に対する少なくとも一つのドメインを持つならば、そのときは、バインダーは標的細胞にくっつけられる。もしバインダーが核酸成分と標的細胞の両者に対する少なくとも一つのドメインを持つならば、細胞に対するドメインは核酸成分に対するドメインと異なっている。
本発明の重要な具体例の一つは順番に核酸成分に対する少なくとも一つの第1のドメインと対象とする細胞に対する少なくとも一つの第2のドメインからなる非天然物からなる組成物である。核酸成分に対する一つのあるいは二つ以上の第1のドメインは該細胞に対する一つあるいは二つ以上の第2のドメインとは異なっている。任意の要素がこの組成物あるいは、核酸成分、対象とする細胞あるいはこの様な核酸およびこの様な細胞の両者を含む非天然物に加えられる。
勿論、このものはバインダーからなっている。さらに、非天然物のなかのバインダーとドメインは同じであってもいいし異なっていてもいい。
バインダーは少なくとも一つのドメインからなる支持体あるいはマトリックスである。バインダーはポリマーのような天然あるいは合成の支持体、マトリックスあるいは担体(あるいはこれらの組み合わせ)でありうる。バインダーは核酸成分あるいは対象とする細胞あるいは両者に対する少なくとも一つのドメインからなっている。この様にして、バインダーは単一の機能あるいは二つの機能を持つものでありうる。単一機能バインダーの場合には核酸成分かあるいは対象とする細胞のいずれにかに対する一つのドメインのみが存在する。二機能バインダーの場合には、一つは核酸成分に対する他は対象とする細胞に対する少なくとも二つのドメインが存在する。バインダー中に二つのドメインが存在する、即ち二機能バインダー、場合、核酸成分に対する第1のドメインは対象とする細胞に対する第2のドメインとは異なっている。ある場合にはドメインおよびバインダーが、エピトープに結合する部分(Fab 領域)と付加に対する支持体として機能するFc部分を持っている抗体のように、同じ物であることができる。
【0024】
ドメインは細胞あるいは核酸成分のいずれかに結合する部分を含む物である。ドメインはオリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、多糖類、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含む天然あるいは合成のポリマーでありうる。これらはモノクロン抗体、ポリクロン抗体、ポリアミンのようなポリカチオン、細胞表面蛋白質に対するリガンド、細胞外マトリックスおよびリガンドとその結合する相手を含む。これらは生体内で産生されるかあるいは試験管内で組み合わされるかあるいは化学的に生産されるかあるいは組換えDNA技術で生産されることができる。
ドメインは核酸−核酸相互作用、抗原−抗体相互作用、受容体−リガンド相互作用、疎水性相互作用、多イオン相互作用および、核酸特異性、核酸配列およびこの様な配列あるいは二次構造あるいはその組み合わせに特異的に結合できる蛋白質に基づく他の相互作用を含む多様な相互作用を通して特異的あるいは非特異的結合で細胞あるいはNA物への結合を提供する。リガンド結合対の間および相補的核酸配列の間の相互作用は本発明の適用に好ましいものである。これらは相補的な配列によって認識される核酸配列、抗体による抗原、同列の糖により認識されるレクチン、受容体により認識されるホルモン、酵素により認識される阻害剤、補酵素ー酵素結合部位により認識される補酵素、基質により認識される結合リガンドおよびこれらの組み合わせを含む。
抗体は有用なドメインとなる。モノクロンおよびポリクロン抗体およびこれらの断片が使用されうる。抗体は血清から、ハイブリドーマからおよび組換えDNA法で得ることができる。二つのことなったエピトープに結合できる二つの特異性を持った抗体もまた有用である。これらはハイブリッドハイブリドーマ(Staerz and Bevan 1986 Proc Natl Acad Sci USA 83; 1453 )、異なった特異性の抗体あるいは抗体断片を化学的に抱合してつくられるヘテロ抗体(Fanger et al.1992 Critical Rev Immunol. 12; 101)、遺伝子工学でつくられた二つの特異性を持った一本鎖の抗体(Gruber et al. 1994 Journ Immunol 152; 5368)および遺伝子工学でつくられたヂアボディー(Holliger et al. 1993 Proc Natl AcadSci USA 90; 6444)でありうる。ここにあげた全ての出版物はここに文献として組み入れられる。
【0025】
非特異的な細胞結合性を持つ有用なドメインとしてポリリジン、プロタミン、ヒストンあるいはこれらの部分あるいは断片を含むポリカチオンのようなポリイオン的性質を持った分子が含まれる。
特異的な細胞結合性を持った有用なドメインとして次のものが含まれる:
1)天然の細胞の成分、エピトープあるいはリガンドに対して結合親和性を持つもの。このような細胞結合ドメインとしてホルモン、単糖およびオリゴ糖、細胞の受容体部位を認識するウイルス、フィブロネクチンとその断片のような試験管内マトリックスス蛋白質、細胞蛋白質およびその断片に対する抗体のような細胞受容体に特異的なリガンドが含まれる。
2)非天然的に導入されたリガンドに対して結合親和性を持つものであり、そこでは、a)リガンドが細胞表面蛋白質のチロシンあるいはアミノ基との反応によってのように化学的な方法で細胞に付加される、あるいは、b)リガンドが非特異的に細胞に間接的に付加されるもの。
非特異的に核酸成分に結合する有用なドメインとして非共有結合的に結合し、リガンド/受容体系を介さないものが含まれる。例としては核酸に結合するポリリジンおよびヒストンのようなポリカチオンである。
特異的に核酸成分に結合する有用なドメインとして次のものが含まれる:
1)核酸成分の天然の成分、エピトープあるいはリガンドに結合親和性を持つもの。以下が含まれる。
a)二本鎖および一本鎖DNA、二本鎖および一本鎖RNAあるいはRNA/DNAハイブリッドに対する抗体を含む核酸に対する抗体;17塩基対の配列結合するラムダバクテリオファージのCro 蛋白質のような核酸に結合性を持つ蛋白質(Anderson et al. 1981 Nature 290; 754, 文献として組み入れ)。
b)核酸成分のリガンドに対するエピトープあるいは受容体に対する抗体。これらはウイルス蛋白質、細胞受容体およびリンパ球のCD4蛋白質のようなウイルス結合蛋白質を含む。
2)人工的な特異的な結合システム(ドメイン)が該リガンドが対応する受容体を持っているような核酸成分に対するリガンドを化学的に導入することにより形成できる。このような特異的なリガンドあるいはエピトープが例えばベクターウイルス蛋白質のチロシンあるいはアミノ基の化学的な修飾により人工的に導入されうる。
二つのドメインを持つバインダーは天然に存在するしあるいは合成的あるいは人工的に調製することができる。例えば、細胞結合能を持つ一つのドメインを持っているバインダーが核酸成分結合性を持つドメインと結合して二機能バインダーを形成することができる。この結合は、1)共有結合的付加、2)特異的な非共有結合的付加、および3)非特異的、非共有結合的付加あるいは4)組換えDNA法による融合ペプチドによりおこりうる。
【0026】
この発明の上に述べた組成物において核酸成分は核酸、核酸構築物、ウイルス、ウイルス断片、ウイルスベクター、ヴィロイド、ファージ、プラスミド、プラスミドベクター、細菌、細菌断片およびこれらの組み合わせを含む多数の異なった形をとりうる。対象とする細胞は原核あるいは真核であり得る。この開示の他で述べるように、ドメインは非共有結合的にあるいはバインダーを通してあるいはこれらの組み合わせで付加されうる。非共有的な結合が用いられるところでは、イオン的な相互作用および/あるいは疎水的な相互作用が望ましい。加うるに、非共有的結合はリガンドを結合する受容体によって仲介されるような特異的なコンプレックスのような特異的なコンプレックスからなることができる。リガンドを結合する受容体はそれ自身多くの形をとりうる。適当なしかしこれに限定する必要はないこれらを構成するものは相補的な配列により認識されるポリヌクレオチド配列;対応するモノクロンあるいはポリクロン抗体により認識される抗原、抗原により認識される抗体;対応する糖により認識されるレクチン;受容体により認識されるホルモン;ホルモンにより認識される受容体;酵素により認識される阻害剤;阻害剤により認識される酵素;補酵素ー酵素結合部位により認識される補酵素;補酵素により認識される補酵素ー酵素結合部位;マトリックスにより認識される結合リガンド;あるいはこれらの組み合わせである。
【0027】
本発明の他の面は、上に述べたように、核酸成分に対する第1のドメインおよび対象とする細胞に対する第2のドメインが天然物であり、バインダーが天然の結合部位以外の方法で核酸成分に付加している組成物に関係している。ここでは、他の具体例において、バインダーが修飾されたフィブロネクチンあるいは修飾されたポリリジンあるいはこの両者からなることができる。
上記の組成物に含まれるか会合している対象とする細胞は生物のような生物系に含まれうる。
上記したように、核酸成分を導入する方法もまた提供される。本質的には該方法は上記組成物の全てを供給し、これらを適当な生物系に投与することからなる。投与は生体内あるいは細胞外で行いうる。
本発明はまた、対象とする細胞へ核酸成分を導入するキットを用意している。これらのキットはひとまとめにした容器あるいは組み合わせで核酸成分に対する少なくとも一つの第1のドメインおよび対象とする細胞に対する少なくとも一つの第2のドメインからなる非天然の物からなっている。所望なれば、核酸成分、対象とする細胞および緩衝液および指示書がキットに含まれる。
もう一つの重要な具体例一つのあるいは二つ以上のドメインが二本鎖形でない核酸成分に付加されている、対象とする細胞に対する少なくとも一つの第2のドメインからなる物からなる組成物である。他の場合のように、このものはバインダーからなることができ、ドメイン中のバインダーは同じでもいいし、異なっていてもいい。ほかの中でバインダーはポリマー、マトリックス、支持体あるいはこれらの組み合わせからなりうる。対象とする細胞は原核細胞あるいは真核細胞でありうる。上記したように、核酸成分は核酸、核酸構築物、核酸抱合物、ウイルス、ウイルス断片、ウイルスベクター、ヴィロイド、ファージ、プラスミド、プラスミドベクター、細菌および細菌断片あるいはこれらの組み合わせを含むがこれに限定されない多数の形をとりうる。ドメインは共有結合、非共有結合あるいは両者からなりうる。非共有結合として望ましいのはイオン相互作用および疎水性相互作用(あるいは両者)、およびリガンド結合性の受容体により仲介される特異的なコンプレックスのような特異的なコンプレックスである。このようなリガンド結合性受容体は上に述べられている。組成物の一部である対象とする細胞は生物の中に含まれることができる。この最後に述べた組成物は細胞に核酸成分を導入するための方法において同様に有用に適用されうる。このプロセスもまた上に述べられている。
【0028】
対象とする細胞へ核酸成分を導入するためのキットはこの組成物からつくることができる。このようなキットはひとまとめにした容器あるいは組み合わせで、ドメインが非二本鎖形である核酸成分に付加せれている、対象とする細胞に対するドメインからなる物からなっている。緩衝液および指示書は所望によりより含まれる。
この発明はまた、ドメインが対象とする細胞に付加されている、核酸成分に対する第1のドメインからなる物からなる組成物を提供する。この今述べた組成物のさらなる具体例として、対象とする細胞を含めて細胞に核酸成分を導入するための生物、方法、キットと同様に、物、バインダー、ドメイン、核酸成分、対象とする細胞、ドメインの共有結合および非共有結合、イオン的および疎水的相互作用、特異的複合体(リガンド結合性受容体により仲介されるものを含む)、リガンド結合性受容体はすべて上に種々に述べたとおりである。
【0029】
単一機能的バインダーに対する核酸成分の付加
1)細胞に対する第2のドメインをもつ単一機能バインダーへの核酸成分の共有結合的付加。
共有結合的付加はドメインあるいはバインダーに備わっている反応性グループの間の直接のカップリングあるいは二機能架橋剤の使用により起こすことができる。また、このような共有結合的付加を容易にするために反応性グループがドメインおよびバインダーに導入されることができる。たとえば、蛋白質に対する付加は反応性のアミノグループあるいはチロシン残基を通して起こすことができる。付加は蛋白質ー蛋白質の抱合によって行うことができる。共有結合的付加はまた多糖類に対しておよび核酸に対して行うこともできる。核酸、修飾された核酸あるいは核酸類似体に対する共有結合的付加は構成ヌクレオチドの糖、塩基あるいはリン酸塩部分の修飾を通して行うことができる(Engelhardt et al., US Patent No. 5,260,433, 文献として組み入れられる)。また、核酸類似体が核酸の中に、たとえばアルキルアミングループのように、反応性グループを与えるように導入されることができ、そして以下に述べるように、二機能カプラーとしてN−マレイミドトリーアミノカプロン酸−N−ヒドロキシサクシニイミドエステルを使い、蛋白質をこれらに共有結合的に付加することができる。糖とリン酸塩部分の修飾はリガンドおよび他の残基の末端付加の望ましい部位である。塩基の修飾はリガンドおよび他の残基の内部あるいは末端への付加に利用されうる。修飾は、ピリミジンの5位の特異的修飾のようにハイブリダイゼーションを壊さないような修飾を含むことができる(Ward et al., U.S.Patent No. 4,711,955 および関連する分割特許)。プリンの8および7位の修飾(Engelhardt et al. U.S.Patent No. 5,241,060および関連する分割特許)および(Stavrianopoulos, U.S.Patent No. 4,707,440 および関連する分割特許)は望ましいものである。一つの具体例では、構築物あるいは構築物成分の化学的修飾は塩基、糖およびリン酸塩あるいは三つのいかなるあるいは全ての組み合わせから独立に選ばれた部位にたいして影響されうる。単一機能バインダーに対する核酸物の直接の共有結合的付加は、二本鎖DNA分子(核酸物)の細胞表面化合物に結合する抗体(単一機能バインダー)への付加により示される。たとえば、リンパ球のCD4化合物に結合する抗体は、一級アミンを反応性グループとして供給するためにアルキルアミンを含むヌクレオチドの取り込みにより修飾された二本鎖DNA(核酸物)に共有結合的に付加されうる。共有結合的付加は以下に述べるようにNーマレイミドトリーアミノカプロイン酸ーN−サクシニイミドを二機能カプラーとして使って行うことができる。
フィブロネクチンはまた細胞に核酸をデリバリーするために核酸成分の共有結合的付加に利用されうる。例えば、フィブロネクチン、フィブロネクチン断片あるいはフィブロネクチン含有物はポリヌクレオチドあるいはウイルスベクターのいずれにも付加されうる。たとえば、フィブロネクチンは核酸成分のアルキルアミノグループに共有結合的に付加されうる。アデノウイルスのようなウイルスベクターの核酸成分もまた蛋白質ー蛋白質抱合により共有結合的にフィブロネクチンに結合されうる。共有結合的付加は以下に述べるようにN−マレイミド トリーアミノカプロン酸−N−ヒドロキシサクシニイミドエステルを使い行われうる。
2)細胞に対する第2のドメインを持つ単一機能バインダーへの核酸物の特異的非共有結合的付加。
核酸成分に対する非共有的付加は相補的な核酸の結合を通して起こりうる。細胞表面蛋白質に対する抗体からなるバインダーは、以下に述べるようにN−マレイミドトリーアミノカプロン酸−N−ヒドロキシサクシニイミドエステルを二機能カプラーとして使用し、DNA中に取り込ませたアルキルアミングループにより一本鎖DNAに共有結合的にくっつけることができる。一本鎖DNAは核酸成分の尾部の配列に対する相補性を通して付加される。たとえば、CD4細胞リセプターに対する抗体は、CD4+細胞に核酸をデリバリーするために、構築物の一本鎖の尾部に相補的な一本鎖DNA分子に共有結合的に付加されることができる。
フィブロネクチンは核酸成分の非共有結合的付加に用いるように修飾されることができる。フィブロネクチンはアデノウイルスのようなウイルスベクターに特異的に結合する抗体に共有結合的に付加されることができる。フィブロネクチンと抗アデノウイルス抗体はN−マレイミドトリーアミノカプロン酸−N−ヒドロキシサクシニイミドエステルを下に述べるように二機能カプラーとして使うことにより共有結合的に付加される。
3)細胞に対する第2のドメインを持つ単一機能バインダーへの核酸物の非特異的非共有結合的付加。
これは、ポリヌクレオチド(核酸成分)に結合するポリリジンのようなドメインの非共有結合的付加により達成されうる。ポリリジンは、本特許の参考例1に述べられているように、トリラクチルリジルリジン(細胞に対するドメイン)の共有結合的結合により修飾されたDNAオリゴマーからなる単一機能バインダーに付加することができる。できあがったものは肝細胞に特異的に核酸をデリバリーする。
【0030】
核酸成分に対する第1のドメインをもった単一機能バインダーへの細胞の付加
1)核酸成分に対する第1のドメインを持つ単一機能バインダーへの細胞の共有結合的付加。
核酸成分に対するドメインを持つバインダーは細胞に共有結合的に付加されうる。たとえば、アデノウイルスに対するモノクロン抗体は、細胞表面にアデノウイルス結合部位を提供するように細胞に共有結合的に付加されうる。抗体の共有結合的付加は二機能カプラーとしてN−マレイミドトリーアミノカプロン酸−N−ヒドロキシサクシニイミドエステルを使用して行うことができる。
二機能カプラーの合成および蛋白質の共有結合的付加へのその使用を記載する。トリアミノカプロン酸を三倍過剰の3−マレイミドプロピオン酸−N−ヒドロキシサクシニイミドエステルとpH7.8で室温3時間反応させる。pHを酢酸で4.0に調整し、溶液を凍結乾燥する。未反応の3−マレイミドプロピオン酸の反応性エステルを除くために、固形物をエタノールでほぐし、残ったエタノールは真空にして除く。固形の残滓をジメチルホルムアミドにとかし、不溶の塩をフィルターし、1.1等量のジシクロヘキシルカルボサクシニイミドと室温で一夜反応させる。ヒドロキシ尿素をフィルターで除き、ジメチルホルムアミドは摂氏35度で高真空で除去する。未反応のジシクロカルボジイミドとN−ヒドロキシサクシニイミドを除くために、半個体の残滓をイソプロパノールでほぐす。固形の残滓を無水エーテルで洗い、エーテルの残りは真空で除き、N−マレイミドトリ−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシサクシニイミドエステルを残す(化合物I)。
細胞表面のチオールグループを可逆的にブロックするために細胞を Ellman 試薬で処理する。細胞表面のアミノグループをpH7.8の等張リン酸緩衝液中で化合物Iと反応させる。細胞を室温、5分、1000xgで遠心分離し、上清を捨てることにより過剰の化合物Iを除く。細胞をリン酸緩衝等張塩溶液に再懸濁し、チオールグループが加えられている抗体と1時間室温で反応させる。チオールグループはホモシステインチオラクトンとpH9.0で反応させることで抗体に加えられる。
反応の終わりに、細胞表面のブロックしてあったチオールグループを復元するために、細胞を0.5mMシステインとリン酸緩衝塩溶液中で反応し、リン酸緩衝塩溶液中で遠心により細胞を洗う。
2)核酸成分に対する第1のドメインを持つ単一機能バインダーへの細胞の特異的非共有結合的付加。
これはビオチンのN−ヒドロキシサクシニイミドエステル(Enzotin,Enzo Biochem,Inc)を使い、細胞表面蛋白質へビオチンを共有結合的に付加することにより達成することができる。アビジンに共有結合で付加されている(Fc部分で)アデノウイルスに対する抗体からなるバインダーは、細胞表面へのアデノウイルスの結合をあたえるように細胞表面のビオチン分子に結合する。
3)核酸成分に対する第1のドメインをもつ単一機能バインダーへの細胞の非特異的非共有結合的付加。
ポリリジンはアデノウイルスに対する抗体のFc部分に共有結合的に付加されうる。ポリリジン/抗アデノウイルス抗体はアデノウイルスベクターに対する付加部位をを与えるように細胞に結合する。
【0031】
二機能バインダーの仲介を通した核酸成分の細胞への付加。
このような二機能バインダーは直接的にあるいはバインダーまたはマトリックスを通してのいずれかで、二つのドメインの付加によりつくられうる。付加は共有結合的、非共有結合的あるいは特異的非共有結合的であり得る。核酸成分の細胞への特異的付加は二機能バインダーの使用での使用で達成されうる。このようなバインダーは核酸成分に対するドメインと細胞に対するドメインの会合により作成されうる。たとえば、アデノウイルスに対する抗体はFc部分でポリリジンに共有結合的に付加されうる。 CD4のような細胞表面蛋白質に対する抗体はまた二機能バインダーをつくるようにポリリジンに共有結合的に付加されうる。
二機能バインダーはまた二つの異なった抗体に付加されている相補的核酸鎖のハイブリダイゼーションを通して非共有結合的に調製されることができる。アデノウイルスに対する抗体の Fab断片はポリチミジル酸(poly T)のようなホモポリマーの添加により修飾されうる。 CD4のような細胞表面標識に対する抗体の Fab断片もまたこのような、この場合にはポリアデニル酸(poly A)、ホモポリマーの添加により修飾されうる。二つの修飾された Fab断片は、CD4+細胞へのアデノウイルスのデリバリーを提供するように、A:T塩基対をつくることにより繋がれることができる(ホモポリマーポリヌクレオチドへの Fab断片の付加のための実施例6参照)。
ドメインとバインダーに対するに加えて、他の実体も核酸転移を増強するために用意されている。核酸成分、バインダーあるいはドメインへの直接的あるいは間接的付加がありうる。付加は上述の方法によりバインダーおよびドメインへの核酸成分の共有結合的および非共有結合的付加に対して行われうる。これらは以下を含んでいる。
1)細胞増殖を増強する実体:これらは、細胞増殖と細胞の形質転換効率を増強する、フィブロネクチンのような試験管内マトリックス蛋白質を含む。
2)細胞の取り込みを容易にする物:これらはアデノウイルスのような不活性化ウイルス(Cristiano et al. 1993 Proc Natl Acad Sci USA 90; 2122: Curielet at. 1991 Proc Natl Acad Sci USA 88; 8850,これら全てはここに文献として組み入れられる)、インフルエンザウイルスの凝集蛋白質およびそれらのペプチド断片である凝集素HA−2N末端融合ペプチド(Wagner et al. 1992 ProcNat Acad Sci USA 89; 7934,文献として組み入れられる)を含む。
3)細胞核酸への核酸の取り込みを容易にする物:これはインテグラーゼ部位特異的なレコンビナーゼを含む(Argos et al. 1986 EMBO Journal 5; 433,また文献として取り入れられる)。
4)核酸の細胞内配置に機能する物:これは、ヒストンのような核内蛋白質および細胞質蛋白質と会合し核に配置するsnRNAU1およびU2のような核酸種を含む(Zieve and Sautereauj 1990 Biochemistry and Molecular Biology 25; 1, 文献として組み入れられる)。
【0032】
核酸構築物、バインダーあるいはドメインに付加されない因子もまた核酸転移に対する細胞の受容能を増加することにより核酸転移を容易にする。これらは細胞増殖を促進するように働き、生体内あるいは生体外での遺伝子転換の間、前あるいは後で標的細胞に加えられる因子を含む。これらは以下を含んでいる:
1)細胞増殖を刺激するIL3、IL6、EpoおよびSCFのような増殖因子(Palsson et al., 1993 Biotechnology 11; 368: Koller et al. 1993 Biotechnology 11; 358: Keller et al. 1993 Blood 82; 378, 両者ともに文献として組み入れられる)および
2)たとえば、細胞増殖を促進する細胞結合マトリックスを形成するフィブロネクチンのようなマトリックス蛋白質、これらの断片あるいはこれらの部分を含んだ化合物のようなもの。
本発明は、生体内あるいは生体外での一つあるいはそれ以上のこのような作用を提供する。このような生体内あるいは生体外の作用は以下を含んでいる:
1)核酸成分と標的細胞を非常に接近させること。
2)核酸成分と標的細胞の間の相互作用に対して特異性を与えること。
3)核酸成分を標的細胞に導入することを容易にすること。
4)増殖因子、支持マトリックスおよび他の因子を提供することにより形質転換される細胞の能力すなわち細胞の受容能を増強すること。
5)核酸成分および核酸成分誘導体の細胞内での配置、組み込み、安定性を準備すること。
6)細胞内で、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、センスRNA、リポザイム、おとり、mRNAおよび蛋白質を含む一つあるいはそれ以上の生産物を生産することができる核酸成分あるいはその誘導体を提供すること。
【0033】
2.多重コンプレックス
本発明は個々の化合物がその単一活性を保持し、一方でまたお互いに集まった後の溶解性を保持している多重コンプレックスを形成する新しい方法と組成物を提供する。このような多重コンプレックスは、多重の相互作用を通してお互いに非共有結合的に結合しているかあるいは、多重の相互作用によりマトリックスに非共有結合的に結合しているかのいずれかの一つ以上のモノマー単位からなっている。
本発明は多重相互作用を通してお互いに付加したあるいは多重相互作用を通して結合マトリックスに付加したあるいは両相互作用の組み合わせで付加した一つ以上のモノマー単位からなる多重コンプレックス組成物を提供する。モノマー単位のポリマーあるいはオリゴマーは直鎖でも分岐でもありえ、またそれはホモポリマーあるいはヘテロポリマーからなりうる。モノマー単位は、たとえばウイルス、ファージ、細菌、細胞あるいは細胞性物質、組織、器官あるいは生物、あるいはこれらの組み合わせのような生物系の中の成分を認識することができるもののような分析特異的単位からなりうる。
分析特異的単位は、蛋白質、多糖類、脂肪酸あるいは脂肪酸エステルおよびポリヌクレオチド(直鎖あるいは環状あるいは一本鎖)あるいはこれらの組み合わせからの誘導あるいは選択を含む多くの形をとることができる。分析特異的単位として、このような蛋白質は抗体(ポリクロンおよびモノクロン)、ホルモン、増殖因子、リンホカインあるいはサイトカインおよび細胞性マトリックス蛋白質あるいはこれらの組み合わせからなることができる。
モノマー単位は二つの要素からなる物である。該第一要素は化合物である。該第二要素は、第二のモノマー単位のポリマーあるいはオリゴマーにあるいは結合マトリックスをつくり上げるポリマーあるいはオリゴマーのいずれかに、非共有結合的に結合するかコンプレックスをつくるかあるいはハイブリダイズすることができるポリマー(あるいはオリゴマー)である。他のものの中で、モノマー単位は天然に存在する化合物、修飾された天然の化合物、合成化合物および組み換え的に生産された化合物あるいはこれらの化合物の組み合わせから選択されうる。
該化合物は生体内あるいは生体外の生物系の構成要素を認識し、結合することのできる分析特異的単位でありうる。生物系は細胞、細胞成分、ウイルス、ウイルス成分、循環物質、試験管内結合マトリックスあるいはこれらの組み合わせからなることができる。化合物は天然に存在するもの修飾された天然化合物、合成化合物あるいは組み換え産物でありうる。それは完全な蛋白質鎖あるいはF(ab)断片、ヒトあるいは他種由来のポリクロン又はモノクロン抗体でありうる;それはリンホカイン、サイトカイン、ホルモン(例えばインシュリン)あるいは増殖因子(たとえばエリスロポエチン)あるいは細胞性マトリックス蛋白質(たとえばフィブロネクチン)でありうる;それはリガンド、ベクター、細菌あるいはウイルスでありうる;それは単糖、オリゴ糖、多糖類、ポリヌクレオチド、蛋白質あるいは脂質でありうる。
ポリマーは共有結合的あるいは非共有結合的のいずれかで化合物に付加されることができる。該化合物は、化合物およびポリマー上の反応性グループの抱合を通してポリマーに共有結合的に付加されうる。化合物あるいはポリマーあるいは両者のいずれも抱合が容易になるように化学的に修飾されうる。化合物あるいはポリマーのいずれもビオチンのようなリガンドが一方に導入され、アビジンのようなリガンドに対する受容体が他方に導入されるような修飾を受けうる。
与えられた化合物に付加されているポリヌクレオチド部分はそれ自身に結合するあるいはお互いにハイブリダイズすることがないあるいは自分自身で相補的でないことが望ましい。多重構築物の中では、均質な成分あるいは不均質な混合物または化合物上にあるポリマー部分が結合マトリックス中の同じ結合ポリマーあるいはポリヌクレオチドに結合するかハイブリダイズすることができるかぎりは、該成分は均質でも不均質でもいい。
モノマー単位を形成するために化合物に付加されるポリマーはそれらがお互いに非共有結合的に結合することができるという条件で結合マトリックスからなる同じグループのポリマーから選択されうる。
結合マトリックスは、モノマー単位のポリマーの直鎖部分に非共有結合的に結合できる一つ以上の直鎖部分を持つ直鎖あるいは分岐状の多重化合物からなる物である。直鎖部分はホモポリマー、ヘテロポリマーあるいは共ポリマー、合成ポリマー、天然ポリマー、ポリヌクレオチド、修飾されたポリヌクレオチドあるいはポリヌクレオチド類似体あるいはポリイオン化合物からなりうる。このようにして、DNA結合マトリックスはポリペプチド、ポリヌレオチド、および多糖類あるいはいかなる組合せからなるかあるいは選択されることができる。
結合マトリックスはそれ自身は化合物あるいは物に付加されてもいいしされなくてもいい。結合マトリックスが化合物あるいはリガンドに付加する例では、結合マトリックスは直接的(共有結合的)あるいは間接的(非共有結合的)のいずれかで化合物に付加するための反応性グループを持つことが望ましい。結合マトリックスの中に含まれるか化合物に付加されている望ましいポリマーは核酸のリン酸塩のバックボーンのような、電荷をもったグループを持つ単一バックボーンを持つものである。これらのポリマーの水素結合あるいはイオン状態は、米国特許No. 4,843,122 or EP 0 285 057 B1に記載されているキレートグループあるいは米国特許No. 4,711,955 に記載されたアミノグループの導入のような、このようなポリマーの側鎖あるいはバックボーンの適当なグループの化学的修飾によりさらに変化されうる。これらの上記の米国および外国特許の全ての内容は文献としてこの開示の中に組み入れられる。
化合物に付加されたポリマーおよび結合マトリックスのポリマーはイオン的相互作用、水素結合、相補性あるいは双極子−双極子相互作用を含む極性相互作用のいずれかを通してお互いに非共有結合的に結合しうる。
結合がイオン的相互作用を通しての場合、モノマー単位がポリカチオン部分を含んでいると、対応する結合マトリックスはポリアニオン部分を持たなければならない。モノマー単位がポリアニオン部分を持つならば、対応する結合マトリックスはポリカチオン部分を持たなければならない。
陽性に荷電したポリマーの例としてプロタミンあるいはポリリジン、可溶性DEAE(ジエチルアミノエチル)セルロースあるいはDEAEデキストラン(分岐した多糖類)がありうる。
陰性に荷電したポリマーの例はテイコイン酸(ホスホジエステル架橋でお互いにつながったグリセリンまたはリビトール分子の多重鎖)、ポリグルタミン酸、カルボキシメチルセルロース、デキストラン硫酸(三つの陰性に荷電した硫酸グループをもつ分岐した多糖類)である。
結合が水素結合あるいは相補性を通しているとき、もしモノマー単位が付加されたポリヌクレオチドを持つとすると、対応する結合マトリックスは相補的な核酸配列を持たなければならない。
結合マトリックスポリマーは可溶性であるために正味のイオン電荷あるいは十分の極性を持ち、また反対の極性、電荷あるいは相補性の他のポリマーに非共有結合的に結合する能力を持つのが望ましい。このようなポリマーは一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチド、RNAあるいはDNA、修飾されたものされないもの;ポリ核酸類似体あるいはこのような性質を示す全ての他のポリマーでありうる。
二本鎖核酸はまたポリアニオン的な結合マトリックスとしてふるまうことができる。この場合には、単位ポリマーはポリリジンあるいはポリアミンのようなポリカチオン物に付加される。
このようなコンプレックスを構築する他の方法は蛋白質−核酸相互作用を通すものである。核酸に高い親和性レベルを示すポリペプチドは核酸ポリマーに結合することにより、おたがいにコンプレックスとなることができるモノマー単位を形成するように望みの化合物に付加されることができる。モノマー単位がHIVTAR蛋白質のように配列特異的に結合する蛋白質から誘導される場合には核酸ポリマーの配列は結合配列の多重体で成り立つことができる。しかしながら、モノマー単位がヒストンのような配列に無関係なDNA結合蛋白質である場合には核酸ポリマーの配列の選択には全く制約がない。
与えられた結合マトリックスの上の化合物の最大の数を得るように、与えられた結合マトリックスの中のモノマー単位の数を調節し、かつ多重コンプレックス構築物が最大に機能することを保証するために溶解度を維持し、また立体的な障害をさけることにより与えられた多重コンプレックス化合物を適正化することができる。
結合マトリックスへのモノマー単位の結合が二つの反対に荷電したポリマーのイオン的相互作用を通しての場合には、モノマー単位の結合マトリックスに対する割合は多重コンプレックス化合物の正味の荷電あるいは荷電の分布が溶解度を維持するのに十分であるように調節されなければならない。
このような多重コンプレックスは、ほかのポリマーに結合できそして/あるいは他の化合物のポリマーに結合できる個々の化合物にポリマーを導入することによりつくられる。ポリヌクレオチドの場合、結合は相補的な配列を通すものでありうる。ポリマーは、安定な結合をつくるのに十分に長いホモポリマーあるいはヘテロポリマーでありうる。ポリヌクレオチドによりつくられる安定な結合においてはポリマーは約5から数千ヌクレオチドの長さでありうる。
これらの多重コンプレックス単位の一つの側面は標的物に対して高い親和性を持つコンプレックスの形成である。本発明の多重抗体コンプレックスは標的抗原に対して単一の抗体よりもはるかに高い結合力をもつだろう。このようなコンプレックスは化学療法的にまた試験管内での診断のために有用であろう。生体内ではこのようなコンプレックスは抗ウイルス、抗細菌および抗腫瘍剤を含めより効果的な免疫試薬として使いうるであろう。このような多重コンプレックスの生体内での使用の場合、望ましいポリマーはポリヌクレオチドあるいは修飾されたポリヌクレオチドであるが、それは核酸は免疫的により寛容であるからである。試験管内での診断に対してはこのような多重コンプレックスはより感度のいい分析システムを開発するのに有用であろう。すべての診断システムの感度は信号の感度および分析物と分析特異的単位との間の親和性の二つの要素に依存している。もし親和力が十分に高くないならば、標的物とのシステムにおける飽和の結合をいかに上げるかについて実際上のあるいは理論上の限界があるであろう。
さらに、このようなコンプレックスは生体内あるいは試験管内で(開示に記載されているように)効率的な遺伝子転換に使われうる。
【0034】
試験管内と同様に生体内での一定のレベルの結合を得るためには結合対象の一定の濃度が要求される。細胞に結合することで細胞に生物学的効果の引き金を引くことができる生物学的結合要素の多重コンプレックスは対応するモノマー単位よりも標的細胞に対するはるかに高い結合親和性を持つであろう。結果として、同じ生理学的効果を達成するのに、モノマー単位に較べて、このような多重コンプレックスの必要量ははるかに低い。このような生物学的コンプレックスの例はホルモン、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子、リガンドである。インシュリンの多重コンプレックスは糖尿病の扱いで、この方法で有用であろう。
より強い生物学的な作動体をつくるのに使われるのに加えて、本発明の多重コンプレックスあるいはポリマー単位はウイルス、細菌、カビのような病原因子あるいは毒素化合物に結合する化合物の多重コンプレックスあるいはポリマー単位をつくるのに使われうる。これらの結合化合物は完全な蛋白質またはF(ab)断片、ヒトまたは他種由来のポリクロンまたはモノクロン抗体;あるいは病原因子あるいは毒性化合物の受容体蛋白質でありうる。このようなポリマーあるいはコンプレックスの標的への結合はモノマーの結合より強く、またこれらのポリマーあるいはコンプレックスは病原因子あるいは毒性化合物のより低い濃度を認識し、結合する。したがってこれらの組成物は、感染および毒性に対してより効果的な化学療法的使用に対して応用されることができる。これらの生産物は患者の生体内へ投薬されるか、強く感染したあるいは毒性の血液の中和のために生体外で使用されうる。
これらのコンプレックスの調製において、化合物の結合がその生物学的機能あるいは効果を妨げないように、化合物を修飾することができる。反応性グループあるいはオリゴマーあるいはポリマーの共有結合的あるいはコンプレックスを通しての望ましい付加は非破壊的化学によるものである。結合は活性部位、結合部位あるいは機能的グループの中にはない化合物中の反応性グループを通してのものであり、また結合は分子の破壊を最少量にして最大の自由を許すようなものである。
所望ならば、適当な共同作業的結合を与え、また強い立体障害をやわらげるように、それとの空間配置を適化するためにモノマー単位がマトリックスに結合する領域の性質を限定することにより、モノマー単位の空間配置を前もって決めることができる。モノマー単位のこの型の配置の例は、実施例8からの図11に示されており、ここではモノマー単位が、M13結合マトリックスの異なった部分に相補的な特異配列に結合されている。
これらの多重コンプレックス化合物はさらに、その生物学的機能を高めるか、その溶解性を増すか、さらなる共同に働く包括的な結合を与えるかあるいは試験管内および生体内で所望する細胞に結合できる能力を与えるかいずれかのリガンド、受容体、化学修飾のような多くの他の物を含みうる。このようにして、本発明のもうひとつの側面は、上記したように、結合マトリックスに付加される物から、さらになる組成物である。このような物はリガンドあるいは結合マトリックスの結合を増加する化合物からなることができる。このような物の例は細胞マトリックス蛋白質(フィブロネクチン)、レクチン、多糖類およびポリリジンあるいはヒストンのようなポリカチオンポリマーである。
上記のすべての組成物は、均一の形または組成物あるいは不均一の形または組成物として系統化されうる。
上記の多重コンプレックス組成物(およびそのいろいろの具体例)は細胞作動体を細胞にデリバリーするためのプロセスに有用に適用されることができる。このようなプロセスでは、組成物のモノマー単位が細胞作動体からなっている多重コンプレックス組成物が提供され、組成物は生体内あるいは生体外のいずれかで投与される。さらに、多重コンプレックス組成物は細胞へ遺伝子あるいは遺伝子断片をデリバリーするプロセスに適用されることができる。ここでは、モノマー単位がデリバリーされるべき遺伝子あるいは遺伝子断片から成っている。多重コンプレックス組成物が提供され、場合に応じて、生体内あるいは生体外のいずれかで組成物が投与される。
他の有用な多重組成物は荷電ポリマーに付加された一つ以上の成分からなっている。荷電ポリマーはポリカチオンポリマー、ポリイオンポリマー、ポリヌクレオチド、修飾されたポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体とこれらの組合せから選択される。このような成分はたとえば抗体(ポリクロンあるいはモノクロン)、F(ab’)2 断片あるいは両者のような蛋白質から成りうる。抗体は、酵素からなる標的に、さらにコンプレックスをつくることができる。
【0035】
3.イントロン不活性
本発明は次の二つを提供する。(1) 細胞の中へ導入された構築物から作られる核酸配列の中にプロセシング要素を導入することにより、条件付きの核酸のプロセシングのための一般的な合成物。該生産された核酸は適合細胞、すなわちプロセシング要素の除去によりRNAをプロセシングできる細胞、の中でプロセシングされる。該RNAは不適合の細胞すなわちプロセシング要素の除去によりRNAをプロセシングできない細胞の中ではプロセシングされない。そして(2) 細胞にとって非固有の少なくとも二つのオペロンあるいは転写単位をもつ一つの核酸構築物が該細胞に導入されたとき、結果として蛋白質遺伝子産物を詰め込んでいるオペロンの一つの蛋白質遺伝子産物を生ずるような2組の生物学的機能。
本発明は適合細胞中でのみ遺伝子発現が許される、非固有なあるいはヘテロなプロセシング要素の使用により、遺伝子の条件付き不活性化の能力のための新しい方法と構築物を提供する。方法は不適合の細胞に存在するときには遺伝子の不活性化が起きるように、所望の遺伝子のコーディング部位の中にヘテロなプロセシング要素を導入することを利用する。イントロンはほとんどの遺伝子に多くの場所で挿入されることができる。ヘテロなプロセシング要素はフランキング配列をもたず、そしてそのために挿入にあたってそれ以外の配列が導入されることはない。望ましい具体例では、遺伝子産物は不適合の細胞中では存在しないか、不活性化されている。しかし適合細胞に導入されると、機能的なRNA分子を生じ、翻訳により遺伝子は変更のない蛋白質を生産する。
重要な具体例の中には、細胞内に導入されたとき非固有のポリメラーゼ、構築物から1コピー以上の核酸配列をつくり出すことのできるポリメラーゼ、を発現する核酸構築物がある。この構築物はさらに非固有ポリメラーゼに対する認識部位からなることができる。このような認識部位は非固有ポリメラーゼに対するプライマーに相補的であることができる。プライマーは転移RNA(tRNA) からなるのが望ましい。
ある具体例では、非固有ポリメラーゼはDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素および上記酵素のいかなる組合せから選ばれたものからなっている。RNAポリメラーゼは、T3, T7およびSP6 あるいはこれらの組合せのバクテリオファージRNAポリメラーゼからなるのが望ましい。更に、上記構築物はRNAポリメラーゼに対するプロモーターからなることができる。
構築物から生産される核酸は、DNA、RNA、DNA- RNAハイブリッド、DNA- RNAキメラあるいはこれらの組合せを含むが、これに限定されない多くの形をとることができる。DNAあるいはRNAはセンスあるいはアンチセンスあるいは両方からなることができる。
【0036】
本発明のもう一つの重要な側面は、細胞に導入されたとき、適合細胞の中ではプロセシング要素がプロセシングの間に、実質上除かれてしまうような非固有のプロセシング要素からなる核酸生産物をつくり出す核酸構築物に関連する。プロセシング要素は、イントロン、ポリアデニル化信号およびキャッピングエレメントあるいは上記の組合せを含むが、これに限定されないRNAプロセシング要素からなることができる。
核酸生産物は一本鎖であることができ、またそれはアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、センスRNA、センスDNA、リボザイムおよび蛋白質結合性核酸配列およびこれらのいかなるものの組合せからなることができる。蛋白質結合性核酸配列は、望ましくは、ウイルスの構築あるいはウイスル複製に必要とされる蛋白質を結合するおとりからなるものである。
本発明では、また細胞の中で核酸生産物、その機能が出るのに更なるプロセシングが必要とされるような生産物、を選択的に発現するためのプロセスが提供される。プロセスは、第一のステップとして、適合細胞の中ではプロセシング要素がプロセシングの間に実質上除かれてしまう非固有のプロセシング要素からなる核酸生産物を生産する核酸構築物を提供することからなる。第二のステップはこの構築物を細胞に導入することからなっている。RNAプロセシング要素のようなプロセシング要素、核酸生産物および生体内、生体外で構築物を導入するステップはすべて前に記載されている。重要なことは、このプロセスでは構築物が細胞を含めた生物学的システムに導入されることができることである。この生物学的システムは生物、器官、組織、培養物( 細胞あるいは組織) およびこれらの組合せからなることができる。
【0037】
本発明は、条件付きの遺伝子不活性のためのヘテロな要素を含めてプロセシング要素の利用の一般的方法を提供する。制限酵素部位よりはむしろ、しばしば存在する配列、(C/A)AGGスプライス後の結合配列が挿入部位として使われている。この部位はイントロンの切り出しの結果としてできるコンセンサス配列から結果している。スプライスされるコンセンサスなスプライス配列は(C/A)AG * GUであり、スプライスを受け取るコンセンサス配列は(U/e) N N(C/U)AG* G であり、*がスプライス部位を表している(Mount 1982 Nucl. Acids Res. 10, 459) 。この配列のしばしばの存在は、プロセシング要素の挿入のための多くの潜在部位を提供する。遺伝子のコーディング領域においてこれらの部位のどれに挿入しても適合細胞におけるプロセシング要素のその後の除去には影響しないはずである。フランキングエクソン配列をもたないプロセシング要素配列のみが導入され、したがってプロセシングにより、元のコーディング配列ができることが許されているので、プロセシングされた mRNAからつくられた蛋白質はアミノ酸配列あるいは酵素活性に変化のないことが示されるはずである。
更に、プロセシング要素の挿入部位は遺伝子発現に影響ないようにみえる。Maeda とOshima (1990 Nucl. Acids Res. 18:4671 文献として組み入れられる) は付加されているドナーエキソンの3'末端に保存された塩基をもつβ- グロビンイントロンを含むDNAの制限酵素断片として単離した固有のイントロンをβ- グロビンの cDNAコピーの種々の部位に導入すると、その故それはβ- グロビンコーディング配列の中でのイントロン配置に関係なく、正常にスプライスされることを示した。これはスプライス提供体とスプライス受容体に対して確認されたコンセンサス配列および受容エクソンの5'末端での特異な配列の特別な要求性はないということと一致する。
ヘテロなプロセシング要素の挿入が、不適合の細胞中に存在するときすべての場合に遺伝子を不法活性するのではないことが可能である。スプライシングはバクテリオファージT4の原核細胞系で観察されているけれども(Chu et al. 1984 Proc. Nat. Acad. Sci USA 81:3049,文献として組み入れられる) 、この場合にはセルフ- スプライシングのイントロン(Chu et al. 1985 J. Biol. Chem. 260:10680)によるもので、したがって適合細胞に適用されるプロセスとは、無関係のものである。したがって、原核細胞環境では、イントロンはセルフ- スプライシングイントロンが使われない限り、 mRNAの中に留まるはずである。加えて、イントロン中の塩基の数が3 の倍数であるならば、読み取り枠は同じのままであり、イントロン配列から導かれた付加されたアミノ酸をもつフュージョン蛋白質が可能なものとして生産される。これらの余分の塩基は、余分のアミノ酸の性質と蛋白質のコーディング配列の中の挿入部位により、標的蛋白質の活性を変えたり変えなかったりする。不活性化の望ましい形はフレームがずれる変異または/ あるいは停止コドンを導入するヘテロプロセシング要素の使用である。
【0038】
本発明はまた、細胞に対して固有ではない遺伝子の、このように導入された遺伝子の蛋白質生産物が導入された非固有遺伝子から生産された他の蛋白質と反応したり、影響したりするような細胞の中への導入を提供する。
非固有遺伝子の導入からできた非固有蛋白質遺伝子生産物は、他の非固有蛋白質に、重合;活性化;輸送を早めること; 拮抗阻害; アロステリック相互作用;リン酸化,脱リン酸化,メチル化,脱メチル化,蛋白質分解,核酸分解活性,糖添加およびその他を含む化学的修飾を含む種々のプロセスにより影響を与える。
非固有遺伝子はRNA、DNAあるいはDNAおよびRNAとして細胞に導入され得る。非固有遺伝子は一つの核酸構築物の上にお互いにつながってあるい異なる構築物上で別々に導入されることができる。非固有遺伝子の細胞内への導入は遺伝子デリバリーのための多くの方法のどれによっても行なうことができる。
【0039】
本発明は次の利益を提供する。
a)本発明は、このような遺伝子が宿主細胞に致死的であるかもしれないとき、あるいは宿主細胞に存在する遺伝子が危険をもたらすときの遺伝子の条件付き不活性のための有用性をもっている。このように、細菌の細胞壁を破壊する酵素をコードする遺伝子のようにクローン化が不可能な遺伝子は、イントロン挿入で不活性化され、このようにして細菌の中で、この形でクローン化されることができる。破傷風、毒素、リジン、シュードモナス毒素、大腸菌エンテロトキシン、コレラ毒素および他の植物、動物、微生物の毒素を含む毒性産物をコードしている遺伝子は不活性化されそして不適当の細胞の中で安定にそして安全に維持されそして適合細胞の中で変更されない遺伝子生産物をつくり出すために活性化されることができる。これは細胞を殺す遺伝子治療への特別の応用をもっている。
【0040】
b)本発明は、適合細胞では発現が実現している、ポリメラーゼ触媒の不適合の細胞での不活性化のための有用性を提供する。これは、種々のポリメラーゼプロモーターの制御のもとで、RNAあるい蛋白質のいずれの多数の遺伝子生産物の発現への応用をもっている。細胞にとって固有あるいは非固有の、この方法で用いうるポリメラーゼは、T3、T7、およびSP6 からのRNAポリメラーゼを含む。
【0041】
c)本発明は通常不適合な遺伝子を同じ核酸構築物上に一緒にクローン化することを提供する。たとえば、一つの構築物がT7プロモーターに誘導される選ばれた転写物T7RNAポリメラーゼの生産との配列を持つようにデザインすることができる。別々の構築物としてではなく、同じ核酸構築物の上にこのような遺伝子をクローン化することを提供する。たとえば、一つの構築物がT7プロモーター誘導の選ばれた転写物の産生とT7RNAポリメラーゼの配列をもつようにデザインすることができる。別々の構築物としてではなく、同じ核酸構築物の上にこのような遺伝子をクローン化することができることは次の利益を与える。
i)二つの遺伝子の共形質転換効率は100%である。
ii) T7RNAポリメラーゼと選ばれたT7誘導転写物の核酸配列の場合には全体の機能単位は、たとえば4.7 キロベース、あるいはそれ以下の挿入のみを受けいれ、機能を保持するアデノ関連ウイルスのようにあるサイズ以下の挿入のみを受け入れることができるベクターにクローン化するのに十分に小さい。(Muzyczka 1992 in Current Topics in Microbiology and Immunology,SpringerVerlag, Heiderberg, 158;97, 文献として組み入れられる) 。
【0042】
d)この発明のもう一つの応用は、導入された遺伝子および/ あるいは遺伝子産物が遺伝子治療応用のための有用な細胞内プロセスを生むような、細胞内での非固有遺伝子あるいは蛋白質生産物の相互作用を提供する。
本発明の一つの応用では、有用な遺伝子産物の転写に導くT7プロモーターをもまた含んでいる構築物中で、イントロンがT7RNAポリメラーゼをコードしている配列に導入されている。前に討議したように、T7プロモーターの制御のもとで遺伝子合成のためにT7ポリメラーゼを使うことは、適合細胞中で、しかし常に、別々の構築物上に二つの機能単位をおくという背景で行われてきた、すなわち、T7RNAポリメラーゼと、T7プロモーターの制御を受ける遺伝子は二つのシステムとして使われている。本発明は( 実施例参照) 、スプライス後の結合配列(C/A)AGGをもつ部位の最後の二つのG の間にイントロンを正確に導入することによる( プロセシング要素を通常もっていない) 遺伝子の条件付き不活性を記載している。この配列をもつ部位へのイントロンの導入は、機能的スプライス提供体と機能的スプライス受容体とをつくりだす。したがってこの修飾をもった構築物は大腸菌細胞の中ではT7RNAポリメラーゼのいかなる発現もないが、正常なコード配列が、適合細胞に導入された後の転写物から回復されることができる。このことにより、ポリメラーゼをコードする配列中にヘテロプロセシング要素を導入することにより、不適合細胞に対する致死性を避け、T7RNAポリメラーゼとたとえば、T7プロモーターに導かれるアンチセンスの両方をもつ一つの構築物を構築することが許される。適合細胞中で、ポリメラーゼの正常な発現が起きるが、致死性はその環境の性質により無効となるはずである。第一に、大腸菌の致死性の原因と信じられている環状プラスミドの転写による自己触媒的カスケードは、染色体DNAに組み込まれることによりできる安定な形質転換動物細胞では起きない。第二に構築物の環状組み込みの存在により、T7プロモーターからT7終結部分配列を過ぎて、ポリメラーゼのコーディング配列へのランオフ転写は、プロセシング、移動、翻訳のための適当な信号の欠如により非常に低い効率で翻訳されるであろうRNAを生産するはずである。
アンチセンスRNAのような、T7に導かれるRNAの生産を可能にしている本発明の同じ利点はT7RNAポリメラーゼに導かれる蛋白質の生産に適用されることができる。
【0043】
4.ヘアピン構築物
遺伝子物質の細胞への導入は二つの方法で行うことができる。一つの方法は、細胞内プロセスに直接に働くが、それ自身は複製しないしまたいかなる核酸も生産しない核酸の外部からの適用である。細胞内プロセスに影響を与えるために達成されるべきこれらの分子の細胞内濃度は外部からの供給に依存する。核酸デリバリーのもう一つの方法は、それ自身は細胞内プロセスに働かないが、細胞内プロセスに働く一本鎖核酸を細胞内につくりだす一次核酸構築物を細胞内に導入することである。この場合には、導入された一次核酸構築物は細胞内核酸に組み込まれるか、あるいは染色体外の状態で存在することができる。そしてそれは組み込まれるか、あるいは染色体外の状態のいずれもそれ自身のコピーを増やすことができる。核酸構築物は、一次核酸構築物のプロモーター配列から、遺伝子の発現および遺伝子の複製の細胞内プロセスに影響する一本鎖核酸を生産することができる。このような核酸はアンチセンス核酸、センス核酸および蛋白質に翻訳されることができる転写物を含む。このような核酸の細胞内濃度はプロモーター依存合成により制約を受ける。
定義
一次核酸構築物: 細胞の中で生産中心をつくりだす核酸で構成される組成物。
生産中心: 細胞の中で他の生産中心をつくりだすかあるいは一本鎖核酸を生産することができる一次核酸構築物から誘導される核酸。ここで使われているように、生産中心という用語は、一次核酸構築物から生産されることのできる二次の核酸成分を包含するように意図されている。また、二次核酸成分から生産されるかもしれないいかなる核酸成分に加えて、二次核酸成分から生産される三次核酸成分も包含している。
産出: 一次核酸構築物からの生産中心の生成あるいは形成、あるいは他の生産中心から生産中心を生成あるいは形成すること。しかしながら生産中心は一次核酸構造物を生産することはできない。
生産: 生産中心から一本鎖核酸分子を生成すること。
内在細胞システム: 一本鎖核酸生成物の機能と同じように、生産および産出に使われることのできる細胞内に存在する細胞性プロセスおよび成分。このようなプロセスおよび成分は細胞に固有なものであるいか、あるいは人工的な方法、あるいはたとえばウイルスによる感染により細胞に導入されることができる。
【0044】
一次核酸構築物から生産される一本鎖核酸の有効性は、細胞内でのそれらの濃度、安定性および生産の存続期間に依存する。細胞内濃度を達成するための現在の方法はプロモーターに導かれる合成に依存することで制限されている。
本発明は、一本鎖核酸が、細胞内でつくられ又該細胞中の一次核酸構築物から導かれる鋳型から細胞内でつくられる新しい組成構築物と方法を提供する。この発明は更に、細胞内に導入されたとき、それぞれが一本鎖核酸産物の生産ができる一つあるいは二つ以上の生産中心を産出する一次核酸構築物を提供する。
本発明の一側面は、増巾を通して一本鎖核酸の高い細胞内レベルを達成する方法を提供することである。このような増巾は一次核酸構築物からの一つ以上の生産中心の産出およびそれぞれの生産中心から一つあるいは二つ以上の一本鎖核酸の産出により起きる。しかしながら生産中心は一次核酸構築物を生産することはできない。
このようにして、本発明の重要な具体例は、細胞に導入されたとき核酸産物あるいは三次核酸成分あるいは両方を生産することができる二次核酸成分を生産することができる一次核酸成分を含む組成物に関係する。二次および三次核酸成分と核酸生産物は、一次核酸成分をつくりだすことはできない。この組成物では細胞は勿論原核細胞あるい真核細胞であり得る。
本組成物では、一次核酸成分は核酸、核酸構築物、核酸抱合物、ウイルス、ウイルス断片、ウイルスベクター、ウイロイド、ファージ、ファ−ジベクター、プラスミド、プラスミドベクター、細菌および細菌断片あるいはこれらのいかなる組合せを含む。
一次核酸構築物は一本鎖あるいは二本鎖核酸( あるいは部分的に二本鎖のものさえも) からなるかあるいは一本鎖および二本鎖核酸両方からなっている。そして核酸はRNA、DNAあるいはRNAとDNAの組合せであり得る。核酸は未修飾であり得るし、あるいは所望の性質を与えるために修飾されることもできる。たとえば核酸分解酵素耐性、内在細胞システムとの相互作用、細胞内配置および本開示に述べられているように核酸構築物に対して他の性質を与えるために、修飾された塩基が組み込まれることができる。さらに、一次核酸化合物はDNA、RNAあるいは両者との組合せで同じように使われることができる核酸類似体を含むことができる。
一次核酸構築物は細胞内で、染色体DNAに組み込まれてあるいは染色体外の物として存在し得る。一次核酸構築物は、染色体の組み込まれた一部として、細胞分裂の間に染色体DNAと一緒に複製されることができ、又それは複製開始点およびその他のようにDNA複製エレメントを含んだ染色体外要素の一部として複製されることができる。
一次核酸構築物は、生産中心の産出および引き続いての一本鎖生産物の生産のための配列情報を含んでいる。このように、この目的のための多数の望ましい要素が一次核酸構築物中にコードされることができる。生産中心および一次核酸構築物は、これらの要素の一つあるいすべてを含むことができる。これらはプロモーターおよびエンハンサー; プライマー結合部位; イントロン信号、ポリA 配列、キャッピングを決める配列および停止配列のようなプロセシング要素: 細胞内配置信号を決める配列; 細胞内蛋白質に親和性をもつ配列のような制御要素を含む。一次核酸構築物はまた生産中心を産出するのに働く蛋白質の合成のための配列を含む。たとえば生産中心を産出するのに働く核酸ポリメラーゼのための配列が一次核酸構築物中に存在することできる( 本特許の実施例10参照) 。
一次核酸構築物は、内在細胞システムに存在する核酸合成触媒の働きを通して生産中心を産出することができる。生産中心はRNA、DNAあるいはRNAおよびDNAの組合せであり得る。これらは一本鎖、二本鎖であり、あるいは一本鎖および二本鎖領域を含むことができる。生産中心は他の生産中心を産出することができそして/ または生物学的活性をもつ一本鎖核酸を直接あるいは内在細胞システムを通して生産することができる。
生産中心は、アンチセンスRNA配列、アンチセンスDNA配列、リボザイム配列および蛋白質に翻訳されることのできる mRNAのような、多くの一本鎖核酸を生産することができる。生物学的活性を促進する所望の性質がまた組み込まれることができる。このようにしてRNAプロセシング信号、細胞内配置を決める配列、細胞内蛋白質を結合する配列および他の機能が一本鎖核酸産物の中に組み込まれることができる。
生産中心として、二次核酸成分および三次核酸成分( たとえば四次核酸成分のような他のこれに続く成分も同様に) はDNA、RNA、DNA- RNAハイブリッドおよびDNA−RNAキメラあるいは上記の組合せからなり得る。
上記組成物がさらに信号プロセシング配列を含むとき、このような配列はプロモーター、開始点、停止点、イントロンおよび細胞内配置要素あるいはこれらの組合せから運ばれることができる。このような信号プロセシング配列は、一次核酸成分、二次核酸成分、核酸生産物および三次核酸あるいはこれらの組合せから選ばれたものを含む組成物のいかなる要素の中にも含まれることができる。核酸生産物は勿論、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、リボザイムおよび蛋白質結合性核酸配列あるいはこれらの組合せからなるものを含め、一本鎖であることができる。蛋白質結合性核酸配列として望ましいのは、ウイスル複製に必要とされる蛋白質を結合するおとり配列である。
これら上記の組成物で、いかなる成分あるいは核酸生産物の生産もベクター、ウイスルベクター、ファージベクター、プラスミドベクターおよびこれらの組合せを含む望ましいベクターにより媒介されることができる。
本組成物は原核あるいは真核である細胞に組み入れられることができる。組成物は、生体内あるいは生体外のいずれかでこれらの細胞に導入されることができる。
【0045】
また、本発明の意図するものは組成物からつくられる二次核酸成分、三次核酸成分、あるいは核酸生産物を含む生産中心である。
一次核酸構築物からの生産中心の産出。
他の生産中心からの生産中心の産出および生産中心からの一本鎖核酸の生産はこれらの構造の中に存在する配列( 上記したように) および内在細胞システムに由来する多くのプロセスにより進むことができる。これらのプロセスに含まれる内在細胞システムはRNAポリメラーゼ、RNAプロセシング酵素、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、リボヌクレアーゼH 、エンドヌクレアーゼ、リボザイムを含むエキソヌクレアーゼ、核酸修復に含まれる酵素、核酸リガーゼ、プライマーとして働く細胞内核酸、および核酸の修復、転写、翻訳、核酸の細胞内配置、核酸の輸送、核酸の細胞内核酸への組み込み、および他のものに含まれる物を含んでいる。
【0046】
産出および生産のための要素は;
1)単一あるいは多重のプロモーター、2)自己プライミングプロセス、3)一つあるいはそれ以上のプライマー結合部位および、4)多重プライミング、を含む。
1)産出および生産のためのプロモーターは生産中心の中あるいは一次核酸構築物の中に一つあるいは二つ以上のコピーで存在することができる。このようなプロモーター配列は、たとえば細胞に導入された二本鎖DNA一次核酸構築物中でのように、既に存在し機能的な形で存在することができる。機能的なプロモーター配列は、細胞への一次核酸構築物の導入に続いてつくることもできる。たとえば、( それらが一本鎖リボ核酸として存在しているために) 機能的でないプロモーター配列を含む一本鎖RNA一次核酸構築物は、細胞の中で該一次核酸構築物から二本鎖DNA生産中心に産出されることにより、機能的なプロモーター配列に変換されることができる。この産出は、リジル tRNAがプライマーとして働くHIV プライマー結合部位のようなプライマー結合部位の一次核酸構築物中での存在および内在細胞システムとして逆転写酵素により達成されることができる。この方法での二本鎖DNAの生成は機能的プロモーターを形成する。
機能的プロモーターの配列はまた一本鎖一次核酸構築物の中に、自己相補的形成からの二本鎖領域の形成により生成されることできる。たとえばプロモーターおよびその制御下にあるコーデイン配列に対するセンスおよびアンチセンス配列の両方が一本鎖DNA核酸生産物あるいは生産中心に存在することができる。同じ分子のこれらの領域の自己ハイブリダイゼーションがこの一本鎖分子の形成された二本鎖領域に機能的プロモーターを生成する。
【化1】

【0047】
2)自己プライミングプロセスにより一本鎖一次核酸構築物は核酸を産出し、あるいは直鎖の一本生産中心は核酸を産出あるいは生産する。このプロセスでは、このような分子の3'末端が分子の他のどこかに配置する相補的領域とハイブリダイズすることができ、相補的核酸の合成のためのプライマーとして働くことができる。たとえば、直鎖一本鎖RNA3'末端は逆転写酵素のようなポリメラーゼのプライマーとして働くことができる。
【化2】

【0048】
3)一つあるいは二つ以上のプライマー部位配列が一次核酸構築物あるいは生産中心に含まれうる。リジル tRNAをプライマーとして利用できるHIV のようなレトロウイスルのプライマー結合部位のための配列が、一本鎖RNA一次核酸構築物あるいは生産中心に一つあるいは二つ以上のコピー数で含まれうる。リジルt RNAは内在細胞システムとして供給される。逆転写酵素の存在で、相補的DNAの産出および生産がこのプライマー部位から進む。
4) 多重プライミングプロセスが生産と産出のために利用されうる。たとえば一つのDNA鎖と一つのRNA鎖からなる二本鎖一次核酸構築物はヌクレアーゼによりRNA鎖中に限られた部分の加水分解的な裂け目をもつように作用される。できる断片は逆転写酵素のような内在的細胞プロセスにより触媒されるDNA合成の生産と産出のプライマーとして働くことができる。
【0049】
5.U1アンチセンスシステム
本発明は、細胞中に存在するとき、配置本体部分と核酸配列の二つの要素から成る非天然の核酸生産物を生産する核酸成分からなる重要な組成物を提供する。望ましくは、配置本体部分は非天然核酸生産物の配置を与えるに充分である。さらに、配置本体部分は細胞内あるいは核内への配置信号配列を含むのが望ましい。
対象となる核酸配列はDNA、RNA、DNA−RNAハイブリッドおよびDNA−RNAキメラあるいはこれらの組合せを含むがこれに限らない種々の形からなりうる。RNAからなるときには、核酸配列は蛋白質とコンプレックスを作りうる核内配置RNAからなるのが望ましい。このような核内配置RNAの中には、いわゆるsn RNAがある。snRNAとして望ましいのはU1あるいはU2あるいは両者である。
非天然核酸生産物は勿論一本鎖であることができ、またそれはアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、センスRNA、センスDNA、リボザイム及び蛋白質結合核酸配列から選ばれたものを含む種々の要素あるいは形からなりうる。ほかで述べるように、このような蛋白質結合配列は、ウイルス会合あるいは複製に含まれるかあるいは必要とされる蛋白質を結合するおとり配列を含むのが望ましい。本組成物の他の側面では、非天然の核酸生産物はアンチセンスRNAあるいはアンチセンスDNAからなりうるそして配置本体部分は核内配置信号配列からなっている。さらに本組成物の他の側面では、非天然の核酸生産物はアンチセンスRNAあるいはアンチセンスDNAからなり、そして配置本体部分は細胞質内配置信号配列を含んでいる。さらにまた他の側面は、非天然の核酸生産物がセンスRNAあるいはセンスDNAからなり、配置本体部分が細胞質内配置信号配列からなる組成物に関係している。
【0050】
他で述べられるように、核酸成分は、たとえば核酸、核酸構築物、核酸抱合物、ウイルス、あるいは断片、ヴィロイド、ファージ、プラミド、ベクター、細菌あるいは断片、およびこれらのいかなる組合せのように、種々の形をとることが出来る。このような核酸は、DNA、RNA、DNA−RNAハイブリッドおよびDNA−RNAキメラおよびこれらの組合せからなりうる。核酸は修飾されることが出来る;細胞は原核細胞あるいは真核細胞でありうる。核酸生産物の生産はウイルスベクター、ファージベクターあるいはプラスミドベクターあるいはこのような組合せのようなベクターにより仲介される。
他で述べられるように、本組合せは原核細胞あるいは真核細胞でありうる細胞に組み入れられるかあるいはデリバリーーされることができる。細胞への導入は、生体外あるいは生体内で可能である。本発明はまた、組成物が導入される細胞を含めた生物学的システム(生物、器官、組織、培養物)を意図している。
【0051】
本発明は真核細胞中で核酸生産物を配置させるプロセスを意図している。このプロセスでは、上記重要な組成物が提供され、真核細胞あるいはこのような細胞を含む生物学的システムに適性に導入される。配置本体部分の特徴、核酸生産物、方法、このプロセスでの生体外および生体内での導入は全て上に記載されている。
本発明は、アンチセンスRNAの担体としてのsnRNAの利用しつつ、核への配置に対するsnRNAの有利な特色を保つための方法と組成物を記載する。本発明は、 snRNAから配列の除去及びアンチセンスあるいはセンス配列のような望ましい配列とのそれらの置換を利用する。
snRNA配列部分の置換の部位を正確に選択すれば安定性と核への再移入の特性は変わらない。ヒトU1オペロンのクローンのBcl I および Bsp E II による消化は( 図41) はU1RNAによって作られるA およびB ループの形成に含まれる49塩基の配列を除去する( 図41) 。この配列の除去はこのようにして外来配列を加えるための場所を作りまた、あるsnRNP蛋白質の結合を除き、それにより結合蛋白質による大きな立体障害もなくアンチセンス阻害が利用できるようになる外来配列を可能にする。A およびB ループを除去しても、再移入信号を維持するのに重要であるC およびD ループの形成は依然として許されている( 図41) 。スプライスソーム蛋白質結合と同じように3'- 末端の二次構造の引き続いての存在はRNAの安定性を維持する効果をまた持っている。
本発明はU2を含めsnRNAの他の種類にも適用されうる。
本発明のための記載されたように作られたU1構築物は遺伝子デリバリーに適用できるいかなる方法によっても、核酸構築物のすべてあるいは一部として細胞にデリバリーされることができる。
【0052】
6.多重カセット構築物
遺伝子治療への応用を持つ本発明は、細胞に導入されたとき別々の機能単位から一つ以上の特異的な物の合成を導く核酸物質あるいはカセットである。それぞれの生産物の合成はカセットの中にあるそれ自身の開始信号から開始される。多重標的が一つの多重カセット構築物の中に独立のカセットを含ませることにより達成できる。多重カセットの利点は:
a) それぞれが他とは独立に形成され、生産物の全数はそれぞれの開始部位により細胞内に生成された生産物の合計になる。
b) 独立に生成された生産物による標的との相互作用は他の独立に生成される生産物に影響を持たない。
c) 一つのカセットからの発現を破壊する組み込み結果は構築物中の他のカセットに影響しない。
d) カセットにあるそれぞれの生産物実体は核内はあるいは細胞質内への配置のための適当な信号の使用により異なった場所に導かれることができる。核の中で働く生産物が細胞質で働く物と同じ構築物中につながれている状況では、多重カセット構築物では、それによりそれぞれが作用の最も効果的な場所に蓄積することが許されるように、二つの物の独立の合成が可能である。
この発明は、細胞に導入したとき一つ以上の特異的核酸配列の生産が可能である核酸成分を提供する。このようにして生産されたそれぞれのこのような特異的配列は、おたがいに実質上非相同的であり、そして細胞の中で対象となる一本鎖核酸の特定の部分と相補的であるかあるいは細胞の中で対象となる特定の蛋白質に結合することができるかいずれかである。
この成分中では、対象となる一本鎖核酸は同じポリヌクレオチド配列の一部あるいは異なったポリブクレオチド配列の一部でありうる。対象となる一本鎖核酸はウイルス配列かなりうる。本核酸成分は核酸、核酸構築物、核酸抱合物、ウイルスまたは断片、ファージ、プラスミド、細菌または断片、ベクター( ウイルス、ファージ、プラスミド) およびこれらの組合せのいかなるものから誘導されるかまたは選択されることが出来る。核酸はDNA、RNAおよび核酸類似体( またはこれらの組合せ) からなりうる。DNAおよびRNAは修飾されることが出来る。
これに加えて、核酸成分は一つ以上のプロモーターあるいは一つ以上のイニシエーターあるいは両方からなりうる。さらに、特異的な核酸配列生産物が異なったプロモーター、異なったイニシエーターあるいは両者の組合せのいずれかから独立に生産されることが出来る。さらにまた、特異的核酸配列生産物はウイルスまたは細胞性DNAに相補的であるかあるいはウイルスまたは細胞性蛋白質と結合することができるかあるいはこの両事象の組合せであることができる。相補性特異的核酸配列生産物はアンチセンスとして働くことができる。ウイルスあるいは細胞性蛋白質は他で述べた配置蛋白質あるいはおとり蛋白質からなることができる。このような配置蛋白質は核内配置蛋白質あるいは細胞質内配置蛋白質からなることが望ましい。特異的核酸配列生産物はアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、リボザイムおよび蛋白質結合性核酸配列あるいはこれらの組合せからなりうる。
核酸成分はさらに、細胞に対象となる核酸あるいは対象となる蛋白質を含む成分をデリバリーする方法を含むことができる。このようなデリバリーの方法はこの開示中で他で述べたように一般的技術として知られている。
【0053】
多重カセット構築物はRNAあるいはDNAとして調製されることができる。核酸は修飾されたあるいはされない核酸としてあるいは蛋白質、脂質あるいは他の分子とコンプレックスを形成した修飾されたあるいはされないRNAまたはDNAとしてあるいはシュードヴイリオン、バクテリオファージあるいは他のウイルスデリバリーシステムの成分としての修飾されたあるいはされないRNAまたはDNAとして細胞にデリバリーされうる。
多重カセット構築物はこの応用で述べたように遺伝子転移に一般的に使われる方法により標的細胞にデリバリーされることができる。
多重カセット構築物中の独立の合成単位、すなわちカセットの存在は生産物、合成開始信号および他の要素の選択を通して細胞に対して生産物の提示の多様性を提供する。多重カセット構築物は種々の生産物をコードするようにデザインできる。このようにして、カセットはRNA、DNAあるいは蛋白質の合成をコードするようにデザインされることができ、またこのようなカセットは一つの多重カセット構築物の中にいろいろの組合せで組み立てられることができる。
要素は、望むならば、細胞の中の生産物の合成、特性と性質および活性を独立にまた異なるように制御するように、それぞれのカセットの中に組み込まれることができる。このような要素はプロモーター、エンハンサー配列、イントロンのようなRNAプロセシング要素、核内あるいは細胞質内配置信号のような細胞内配置要素、および mRNAにポリA の付加を与えるポリA 附加信号を含む。
それぞれのカセットによって生産される有用な生産物実体はアンチセンスRNA、センスRNA、リボザイム、アンチセンスDNA、ウイルス複製に必要な蛋白質と結合するおとりのような蛋白質分子に結合する核酸配列; 酵素; 毒素分子; RNAと蛋白質分子の細胞内配置に働く蛋白質; DNAポリメラーゼ; 逆転写酵素; RNAポリメラーゼおよびこのようなRNAポリメラーゼに対する関連したプロモーターの制御下にある核酸配列;(インターフェロンのような) 細胞にウイルス耐性を与える蛋白質; 抗体および/ あるいはその断片; 細胞分裂を止める蛋白質; ウイルス、ホルモン、増殖因子および細胞表面で作用する他の薬剤に対する細胞リセプターを含む細胞膜に配置している蛋白質を含む。
【0054】
生産物の細胞内合成はプロモーターあるいは開始要素の選択により制御されることができる。このようにして、生産物の時間を決めた合成を与えるように誘導できるプロモーターの制御のもとにその合成が起きるような生産物に対する配列を含むようなカセットがデザインされることができる。これは、たとえば、生産物実体の持続的な生産が宿主の細胞あるいは生物に有害であるか、その短時間の効果は有益である場合の応用に都合がいい。たとえば、細胞分裂を停止させる生産物の誘導は、ウイルスの複製がこのような細胞プロセスに依存しているウイルスへの耐性を細胞に与えることができる。後で細胞プロセスを回復するために、誘導を停止することができる。誘導は、たとえば抗体、ホルモンおよび亜鉛のような重金属のような小分子によって誘導されるプロモーターの使用により仲介されることができる。代わって、生産物あるいは一つ以上のそれの持続的な生産が有益である場合には、誘導的でないプロモーターが利用されうる。
プロモーターはまたその効率にもとづいて選ばれることが出来る。生産物の高レベルが必要とされる場合には、高い効率で転写を開始するプロモーターが利用されうる。代わって、生産物の低レベルが望ましいときには、より効率の低いプロモーターが使われうる。
同じ多重カセット構築物から生産される独立に合成された生産物は同じ標的部位で働きうる。たとえば、有効性を増すために、HIV の核酸の高可変性部位の配列のように配列可変性が示されているウイルスの核酸標的部位に対してつくられる一連のアンチセンスRNA生産物は野生株HIV 集団でみられる優勢に存在する配列を含むようにデザインすることができる。
同じ多重カセット構築物から生産される独立に合成された生産物はまた別々の標的部位で働きうる。たとえば、RNAアンチセンス転写物は特定の遺伝子生産物をコードする mRNAに対して誘導されることができ、そして異なったアンチセンス転写物がもうひとつの遺伝子生産物をコードする mRNAに対して誘導されることができる。
【0055】
7.ウイルス耐性
本発明は、ウイルス−細胞相互作用を妨げ、これにより細胞中での抗ウイルス遺伝子治療を高めることにより遺伝子治療によるウイルスに対する耐性を増すように働く薬剤の使用を含んでいる。ウイルスの部位と細胞表面にある特定の場所との相互作用、すなわちウイルス−細胞相互作用および細胞外ウイルスの免疫学的薬剤に対する感受性は補足的な処理に対する基礎を与える。この方法により、ウイルスの効果的レベルを下げるように働く薬剤はアンチセンスを用いる遺伝子治療処理に有益となる。
遺伝子治療の補足として、上記の薬剤は、筋肉内、静脈内、腹腔内、吸入あるいは他の適当な方法で、遺伝子治療処置の前、同時あるいは後のいずれかで患者に投与されることが出来る。
ウイルスと標的細胞の相互作用を妨げることのできる薬剤の例は以下を含む:
a) ウイルスのエピト−プおよびウイルスを結合する細胞性蛋白質に対する抗体。後者の例は、例えばHIV によって認識されるCD4 受容体のようにウイルスによって認識される細胞性リセプターである。
b) ウイルスとコンプレックスを形成する物の生産を刺激する薬剤。これらは、一般的刺激剤として使われることのできる免疫応答を促進するアジュバントおよび特異的反応を誘導するのに使うことが出来るウイルス抗原を含む。
c) 標的細胞に結合し、ウイルスと拮抗するかさもなくば細胞へのウイルスの侵入を遅らせる薬剤。細胞への結合に含まれている、HIV に対するgp120 蛋白質のようなウイルス蛋白質はこのように利用されうる。ウイルス蛋白質に対する抗体もまたこのように働くことが出来る。
本発明の実施で、プロテアーゼ阻害剤あるいはヌクレオチド類似体のような小分子をさらに投与することで、更なる促進が達成されうる。追加の処理は本発明の応用に前後あるいは同時のいずれでも適用することが出来る。本発明はウイルス感染および他の細胞内病原体の感染の処理に応用をもっている。
【0056】
このようにして、本発明は対象となるウイルスに対する細胞の耐性を増加するプロセスを提供する。プロセスは二つのステップから成る。第一に、表現型としてウイルスに耐性の形質転換細胞および、ウイルスあるいはウイルス−特異的な細胞上の部位に対して結合することのできる試薬が提供される。第二に、対象となるウイルスに対する細胞の耐性を増加するために細胞を含めた生物学的システムへ試薬が投与される。
生物学的システムは生物、器官、組織あるいはこれらの組合せからなることができ、ウイルス耐性の細胞は原核細胞あるいは真核細胞でありうる。このような細胞はさらにアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、センスRNA、センスDNA、リボザイムおよび蛋白質結合性核酸配列、あるいはこれらの組合せから選ばれた配列を含むことが出来る。
ウイルス結合試薬は抗体、ウイルス結合蛋白質、細胞受容体蛋白質及びウイルス結合蛋白質の生産を刺激することの出来る薬剤を含むしかしこれに限られない種々の形をとることができる。抗体は勿論、対象となるウイルスのエピト−プに特異的であるポリクロンあるいはモノクロン抗体を含むことが出来る。ウイルス結合蛋白質はCD4 受容体を含むことが望ましい;細胞受容体はgp24蛋白質を含むのが望ましい。加わうるに、生産を刺激する薬剤は免疫応答を促進するアジュバントおよびウイルス抗原あるいは両者から選択される。
試薬は細胞に対して生体内あるいは生体外で投与されることが出来る。その上、本発明のプロセスはさらに、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体あるいは両者のような追加的ウイルス耐性促進薬剤の投与からなることが出来る。
本プロセスの実行において追加的ウイルス耐性促進薬剤は結合試薬が投与される前、後、あるいはほぼ同時に投与されることができる。
また、上記したプロセスのいずれによっても得られているような増加したウイルス耐性をもつ生物学的システムが本発明により意図されている。
【0057】
8.転置
細胞成分をある細胞内の場所からほかに輸送するように働く生産物、転置薬剤、を生産する構築物の導入により細胞内の位置で細胞内生産物の濃度を変える新しい方法である。転置薬剤は、それにより転置薬剤が細胞成分と結合することができる特異的あるいは親和的ドメインを含んでいる。細胞成分の転置は結合した転置薬剤によって仲介される。結果とする共−配置は細胞成分を機能的な場所とは異なる場所に輸送する。
構築物の遺伝子生産物をアンチセンス活性に都合のよい細胞内の場所に配置させようとした以前の研究(Izant and Sardelli, 1988, Cotten and Birstiel, 1989, 両出版物の内容はここに文献として組み入れられる) と対照的に、本発明は、ウイルス性あるいは細胞性プロセスに含まれる高分子の転置によりウイルス性あるいは細胞性プロセスを破壊するように働く。このようにして、転置薬剤上の親和性ドメインの存在により、標的分子は結合され、それから転置薬剤により決められた細胞内の場所に輸送される。
本発明の応用はRNAの発現のための配列を含む核酸構築物の細胞内への導入を通している。転置薬剤として働くRNAはそれ自身親和性ドメインに対する配列を含むそして細胞性核酸分子あるいは蛋白質をそれらが正常には存在しない細胞内の場所に輸送する。これにかえて、RNAは標的RNA分子と結合することができ、RNA転置薬剤及びそのハイブリダイズした標的RNAを本来でない細胞内の場所に輸送する蛋白質と結合することによってそれが機能できない他の細胞内の場所に一緒に働くことが出来る。また、RNAは翻訳されたとき親和性ドメインをもつ蛋白質転置薬剤を生ずる配列を含むことが出来る。
本発明では、標的と転置薬剤との相互作用は活発なステップをおびる。これが有用である例は細胞質から核への輸送を決める信号を含むRNAである。このようなRNA転置薬剤の細胞質RNAあるいは蛋白質への結合は、標的の核への共- 配置をもたらす。これらの輸送される物はそれらが本来ない細胞内の場所に存在するために機能できないであろう。同様な方法で、特定のRNA配列あるいは他の蛋白質に対する親和性ドメインをもつ蛋白質転置薬剤が、その配列の中に存在する核配置信号をそれがまた持つようにデザインされることが出来る。この方法で、正常には細胞質内に存在する標的が核の中に配置されるであろう。
【発明の効果】
【0058】
本発明は、細胞に導入されたとき、非天然の生産物を生産する核酸構築物を提供する。非天然の核酸生産物は二つの要素から成っている:細胞成分に結合することの出来る結合成分;および生産物に結合したとき細胞成分を転置することが出来る配置成分。この構築物からの生産物は蛋白質あるいは核酸あるいは両者からなりうる。蛋白質は、細胞の内側の細胞成分に対する抗体、例えばポリクロンあるいはモノクロンの抗体からなりうる。このような細胞成分は、次のような核酸、蛋白質、ウイルス、ファージ、他の構築物からの生産物、代謝物およびアロステリック化合物あるいはこれらの組合せを含むがこれに限定されないいかなるものからなりうる。蛋白質から成るときには、細胞成分はウイルス性あるいは非ウイルス性酵素、遺伝子サプレッサー、癌遺伝子のようなリン酸化された蛋白質あるいはこれらの組合せからなりうる。
本構築物から生産される生産物の結合成分は核酸、蛋白質、および結合性のものあるいはこれらの組合せから選ばれる。核酸は、細胞成分に対する相補的な配列および核酸結合蛋白質に対する配列あるいは両者から選ばれた配列からなることが出来る。蛋白質は抗体、受容体および核酸結合蛋白質あるいはその組合せから選ばれる。結合性のものは代謝物を結合することが出来る。
配置成分は核内配置物、細胞質内配置物および細胞膜配置物あるいはこれらの組合せから選択可能である。構築物中の配置成分は核酸配列、幹およびループ構造のような核酸構造、およびペプチドあるいはオリゴペプチドあるいはこれらの組合せから選ばれた構成要素を含むことが出来る。
【0059】
本発明はさらに、細胞成分の細胞内での転置のプロセスを提供する。このプロセスでは、細胞内に導入されたとき、非天然の生産物を生産する核酸構築物が提供され、この生産物は二つの要素を含んでいる。第一に、細胞成分に結合できる結合成分があり、そして第二に、生産物に結合したとき細胞成分を転置することが出来る配置成分がある。核酸構築物は対象となる細胞あるいは対象となる細胞を含む生物学的システムに導入される。
次のものは制限するためではなく例示のために示された候補となる組合せのリストあるいは要約である。再配置薬剤とその標的の可能な組合せが示されている。
【0060】
細胞性高分子の転置のための本発明の応用は、U1配列の一部分が( 前述した)HIVゲノムの一部に独特な配列に置き換えられているU1snRNA分子の核酸配列を持つ核酸構築物の使用である。この場合、snRNP蛋白質と会合したU1RNAは転置薬剤として働き、HIV アンチセンス配列は親和性ドメインに相当する。U1の正常な細胞内プロセシングの一部としてのU1の核への回帰は、標的HIV m RNAにハイブリダイズしていると、HIV RNAを配置する、そしてそれが細胞質内で翻訳されることができないようにする。
本発明のU1 RNAを使用するもう一つの応用はU1配列の一部に対するHIV パッケイジング信号配列の置換である。形質転換細胞に用いられた核酸構築物の一部として置換U1の導入は、U1 RNA配列と親和性信号としてHIV パッケイジング配列をもつ転置薬剤の合成を提供する。この場合の転置薬剤はビリオン形成に対応する必要HIV 蛋白質に結合し、それらを細胞質から核に輸送し、それによってウイルスRNAのパッケイジングを阻害する。
【0061】
本発明のもう一つの応用は、親和性ドメインとしてHIV RNA のスプライス部位に特異的な配列と、転置薬剤として働くHIV Rev 蛋白質分子に結合するための親和性ドメインとしてHIV のRev 応答要素(RRE) に対する配列を含むA RNA分子を生産する核酸構築物の使用である。HIV 感染細胞では、Rev 蛋白質転置薬剤はRNA上のRRE 配列に結合し、つぎにそれはHIV RNA のスプライス部位に結合する。コンプレックスはRev 蛋白質により細胞質に輸送されそこではスプライスされていないHIV mRNAは機能できない。
本発明の他の応用はウイルス複製に必須の蛋白質の転置に対するRNA信号の使用である。HIV Rev 蛋白質は主に核小体に見出される。しかしながら、RRE 配列を持つRNAの存在では、Rev 蛋白質は主に細胞質に見出される。したがって、RRE 配列を持つRNA転置薬剤の細胞内生産のための配列をも核酸構築物の存在はRev 蛋白質を核から積極的に除き、細胞質への再配置を誘導し、それがウイルスRNAを輸送に利用されないようにする。ここでは転写物中のRRE 配列は親和性ドメインとして働く。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】中へ取り入れることによるリガンドと他の部分の核酸プライマーの核酸構築物への配置された結合を表すものである。
【図2】レトロウイルス粒子を結合するための親和性を有する一つの部分、およびCD34抗原を結合するための親和性を有する他の部分とを有する二価の抗体バインダーを説明するものである。
【図3】CD34抗原に対する親和性によるDNAのF(ab’)2 抗体フラグメントの各部分への共有結合を示すものである。
【図4】(A)は、AAVベクターDNA分子をCD34リセプターへ結合することを促進するための二価の抗体のアデノウイルス結合部分へのDNAの共有結合を表すものである。(B)はF(ab’)フラグメントが完全な抗体蛋白質の代わりに用いられている以外は図16(A)と同様な説明である。
【図5】ハイブリッド化を介してアデノウイルスが結合しているウイルス(AAV)ベクターDNA分子に結合することができるDNAの共有結合により修飾されている一つの部分と、ラクチル基の付加により修飾されたオリゴリジンの共有結合によって修飾された他の部分とを有するアデノウイルススパイク蛋白質に対する一価抗体を説明するものである。
【図6】抗体の各部分がハイブリッド化によってAAVベクターDNAへ結合されているラクトシル化DNA分子の共有結合により修飾されたアデノウイルススパイク蛋白質に対する一価抗体を示すものである。
【図7】核酸部分を抗体に結合するために有用な試薬を製造するための合成ステップを記述するものである。
【図8】核酸部分を抗体に結合するために有用な試薬を製造するための合成ステップを記述するものである。
【図9】核酸ホモポリマーのハイブリッド化によるF(ab’)2 抗体フラグメントの多重化のための方法を表すものである。
【図10】核酸ホモポリマーのハイブリッド化によるインスリン分子の多重化のためのプロセスを表すものである。
【図11】核酸ヘテロポリマーの結合マトリクスでのハイブリッド化によるインスリン分子の多重化のためのプロセスを表すものである。
【図12】生体内でのスプライシングのために適当な信号を再構成するSV40イントロン配列の導入と、T7RNAポリメラーゼに対する正常なmRNA転写の生成を示すものである。
【図13】イントロンの導入のプロセスと、それに続くT7発現ベクターを示すものである。
【図14】オリゴマーと、T7RNAポリメラーゼをコードしている配列を含むSV40イントロンの合成のために使用されるそれらの生成物を示すものである。
【図15】核局在信号のためのヌクレオチド配列の導入のプロセスを表すものである。
【図16】正常T7RNAポリメラーゼに対するヌクレオチド配列と、核配置信号に対して挿入される配列を有するT7RNAポリメラーゼとの5'末端の比較である。
【図17】T7RNAポリメラーゼ転写を含むイントロンの合成を支配するクローンを集めるためのクローニング方法によるPCR発信フラグメントの集合のためのプロセスを示すものである。
【図18】HIV アンチセンス配列のための配列とT7で支配される転写単位へのそれらのクローニングのためのプロセスを示すものである。
【図19】T7RNAポリメラーゼを含むイントロンを含むクローンの中へT7によって支配されるアンチセンスの組合せのためのクローニングステップを示すものである。
【図20】該DNA配列と、蛋白質発現ベクターを作るための次のクローニングステップを示すものである。
【図21】図20からのポリリンカー配列と、T7プロモーターと、T7で支配される蛋白質発現ベクターを作るためのT7ターミネーターとの組合せのためのプロセスを示すためのものである。
【図22】単一鎖アンチセンスDNAを生じるための生成センターとしての役目をする一次核酸構築物のデザインを表すものである。
【図23】単一鎖アンチセンスDNAを生じるための生成センターとしての役目をする一次核酸構築物のデザインを表すものである。
【図24】転写を支配することができる二次核酸構築物をを生ずる一次核酸構築物のデザインを表すものである。
【図25】二重ヘアピン生産物センター(二次核酸構築物)を生ずる一次核酸構築物のデザインを表すものである。
【図26】二重ヘアピン生産物センター(二次核酸構築物)を生ずる一次核酸構築物のデザインを表すものである。
【図27】誘導可能な自己破壊が可能である生産センター(二次核酸構築物)を生ずる一次核酸構築物のデザインを表すものである。
【図28】転写可能な二次核酸構築物を生体内で作るためのtRNAプライマーを用いる一次核酸構築物のデザインを表すものである。
【図29】U1転写領域からの正常な配列の削除と正常な配列による置き換えのプロセスを示すものである。
【図30】HIV アンチセンス配列を作るためのオリゴマー配列と、U1オペロンを含むクローン中のU1転写配列に対する置き換えとしてのこれらオリゴマーの挿入を示すものである。
【図31】HIV アンチセンス配列置換によるU1転写のためのコンピューターによって発信された第2構造予測である。
【図32】U1オペロンを含む多重HIV アンチセンスを含むクローンを作るためのクローニングのプロセスを表すものである。
【図33】T7で支配される転写を含む多重独立HIV アンチセンスを含むクローンを構成するためのクローニングステップを表すものである。
【図34】図32および図33において記述される多重オペロン構築物の最終的な構造を示すものである。
【図35】RNAポリメラーゼを含むT7イントロンをコードするベクターの中へ多重T7アンチセンスオペロンを挿入するためのクローニングステップを表すものである。
【図36】抗−CD4+抗体のHIV 抗性U937細胞への結合を測定する流動細胞計測法のデーターを表すものである。
【図37】チャレンジした後のウイルス抗性細胞ライン(2.10.16)中のHIVの不存在を示すギャグ領域PCR増幅を示す電気泳動写真である。
【図38】インディケーターとしてベータ−ガラクトシダーゼ活性を使用することによるHIV アンチセンス鎖の潜在的な阻害を試験するためのモデルシステムを表すものである。
【図39】インサイチュ検定のみならず酵素検定によるベーターガラクトシダーゼ活性におけるHIVアンチセンス鎖の効果を示すデータの図表である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下の多くの実施例は本発明の種々の側面を例示するため述べられているが、上の請求項により特別に述べられている本発明の範囲をいかなる形でも限定するものではない。
〔参考例1〕
リガンドと化学修飾物とが一個のセグメントの一つの領域中に存在する二個のセグメントCHENACの調製。
(i) 構築物の説明
一つの構築物は、修飾されていない鎖セグメントと修飾されたプライマーセグメントから調製される( 図1a) 。修飾されていない一本鎖サークルは生物学的機能に対する所望の配列を含むプラスミドから誘導され、それはまたF1パッケージング信号を含む(この性質のプラスミドは、種々の市販材料から利用できる)。
このプラスミドを含む一個のE. coli 宿主はファージ粒子中に一括された一本鎖DNAを得るために、M13 ヘルパーファージによってインフェクションされる。DNAはそれから種々の通常用いられている方法によって調製されることが出来る。オリゴマープライマーは、アリルアミンホスホラミダイト(Cook et al.の方法、1988によって調製された)で合成され、それから下記するようにトリラクチルリシルリジンで修飾される。修飾されていないセグメントは、修飾されたプライマーセグメントと相補的な配列を含む。ターゲット細胞に対して該構築物を曝露した後、ガラクトース部分はこれらの天然受容体との結合を提供し、そして該複合体を細胞の中へ送り込む。本実施例では、該プライマーは該構築物をCHENAC( 図1b中の黒塗り領域によって示される)の修飾されていない領域中の生物学的機能を特定する配列を発現せしめる二本鎖型(図1b)に変換するために、細胞中でDNAポリメラーゼによって伸長される。この実施例では、該構築物の生物学的機能領域はリガンドと化学修飾物とを担持している領域から分離されている。
(ii)ラクチルイソチオジアナートの調製
p-ニトロフェニルβ-D- ラクトピラノシド(トロレトリサーチケミカル社、カタログ#50385)はRafestin et al. によって記述された方法(FEBS Letters 40,62-66, 1974)によってp-イソチオシアノ- β-Dラクトピラノシドへ変換される。
(iii) トリラクチル誘導体の調製
0.7 g のリシルリジンジハイドロクロライド(シグマケミカル) は、30 ml のH2O に溶解される。ステップ(i) からのp-イソチオシアノ- β-Dラクトピラノシドの4g( 約8mM)が添加され、反応は室温で4時間攪拌しつつ行なわれる。この間、混合物のpHは9.0 に調節され、0.2M NaOH の添加によってその値に維持される。反応の終点で、容量はH2O で500ml に調節され、DEAE-DE52 セルロースカラム(前もってpH9.0 に調節され、それから0.05M トリスバッファー、pH9.0 で平衡にされている)上に負荷された。未反応のリシルリジンがカラムに吸着されずに残存し、そしてカラムを0.01M LiClで洗浄することによって取り除かれる。生成物は0.1M LiCl と共に流出され、カラムからのフラクションは260nm でUV吸収で分析される。ピークは集められそして真空下にH2O が蒸発せられる。乾固分はLiClを除去するために、エタノール/エーテル(3:1) 混合液と共に粉砕され、固形生成物が残る。トリラクチルリシルリジンの収率は約80% である。
(iv) トリラクチルリシルリジンの活性化
ステップ(iii)で調製された0.5 g のトリラクチルリシルリジン(0.25 mM) は30 ml の乾燥ジメチルホルムアミド中に溶解される。1gのN-ハイドロキシサクシニミドが添加され、次いで50 mg のジシクロヘキシルカルボジイミドが添加される。反応は室温で一晩進められる。次の日に、真空によって蒸発せしめられる。残渣は未反応のジシクロヘキシルカルボジイミドと過剰のN-ハイドロキシサクシニミドとを除去するために25 ml のイソプロパノールで30分間、夫々室温で2 回粉砕される。生成物はそれからアブソリュートエーテルでフィルター上で洗浄され、該エーテルは除去され、生成物は更なる精製をすることなく用いられる。
(v) 核酸部分のラクトシル化
図1 に示されるプライマーとしてデザインされるオリゴマー1mg は0.7 M LiCl, 0.1 M 重炭酸塩バッファー(pH 7.8)中に溶解される。ステップ(iii) で調製された20 mg のトリラクチルリシルリジン活性エステル( アリルアミン基の数と比較すると試薬の約10倍過剰) は1ml のジメチルホルムアミドに添加溶解され、該混合液は室温で6 時間攪拌された。該混合液は真空下蒸発され、次いで1 mlのH2O に溶解される。該溶液は遠心分離によって不溶物質を除去され、上澄液はG50カラムクロマトグラフにかけられ、そしてDNAフラクションが結合された。
【0064】
〔実施例1〕
二重特異性抗体を構成する二元機能結合剤
組み換えDNAの方法はリンフォサイトのCD4 プロテイン、マウス白血病ウイルス( 図2) に特異性のある二重特異性抗体の調製に利用した。抗体はハイブリッドハイブリドーマの生産のためにStaerzとBevan(1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83;1453)の手順に従ってマウスモノクローナル抗体から調製した。
抗体の修飾
ヒドラジングループは過ヨウ素酸あるいはガラクトースオキシダーゼを用いた酸化とその後のヒドラジンとの反応後炭水化物の一部に抗体を誘導する。ガラクトースオキシダーゼを抗体の酸化に用いたとき、下記のように遊離ガラクトースグループを分解する必要がある。抗体はペルオキシダーゼの存在下でガラクトースオキシダーゼにより酸化する。反応の最後に混合物はLucifer Yellow CH (Aldrich) と反応しG50 カラムを通す。もしカラムからの溶出液が蛍光を発するのなら、これは抗体が遊離のガラクトース残基を含み、ガタクトースオキシダーゼが抗体活性化に利用できることを示している。
10mgの抗体を0.1M酢酸バッファー(pH5.0) に溶解し、1.0 μmol のNaIO4 とともに4 ℃で30分間酸化させた。余分な過ヨウ素酸塩は、0.05M 酢酸バッファーでのSephadex G50(Pharmacia) クロマトグラフィーにより取り除いた。タンパクの画分は、室温で30分間1.0 μmol の酢酸ヒドラジン(pH5.0) と合わせて反応させた。pHを炭酸ナトリウムで9.0 に上げ、内容物を0 ℃に冷やし、10μmol の水酸化ホウ素ナトリウムを10分間隔で三つの部分に加えた。還元はさらに60分間継続され、その抗体は55% の硫酸アンモニウムで沈澱させた。0 ℃で2 時間後反応溶液を10,000×g で30分間遠心分離した。沈澱は1ml の酢酸バッファー(pH5.5) で溶解し、冷却しながら、0.1M酢酸バッファーで透析した。
1 μmol の3-マレイミドプロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを0.5ml のジメチルスルフォキシドに溶解し、透析物に加えて室温で30分間インキュベートさせた。余分なマレイミドは、Sephadex G50クロマトグラフィーにより取り除き、結合した抗体の画分はチオール含有リガンドとpH6.5 、室温で一時間反応させた。引き続き、結合した抗体を適当な孔サイズの分子ふるいクロマトグラフィーにより、未反応リガンドと分離した。
5'末端にチオール基をつけてオリゴヌクレオチドを合成するか、あるいはpH9.0 でホモシアニンチオラクトンによる反応で核酸の5'末端か3'末端のアリルアミン基にチオール基を付加させた。
【0065】
〔実施例2〕
細胞にとってのドメインとなるCD4 細胞表面蛋白質に対する抗体と、核酸成分にとってのドメインとなる一本鎖DNA分子からなる分岐結合剤(図3)長さが120 塩基で5'末端にアリルアミン基付加による修飾を含んだ一本鎖DNAを、化学的にCook et al. による方法(1988 Nucleic Acid Res 16;4077)で調製した。また、アリルアミン基は実施例1に示すようにチオール化されていた。3'末端側70塩基は、アデノ関連ウイルスDNAの一本鎖領域に相補的であった。その一本鎖DNAは、実施例1に示すようにF(ab')2 フラグメントに結合していて、図3で示されるようにアデノ関連ウイルスにアニールする。
【0066】
〔実施例3〕
二重特異的な抗体( あるいは二重特異的な抗体のF(ab')2 からなる結合剤は核酸成分の一本鎖DNAドメインに結合していた(図4)実施例1に示されたように、ハツカネズミのCD34細胞表面蛋白質に対するモノクローナル抗体とハツカネズミのアデノウイルスに対する抗体から、二重特異的な抗体を調製した。実施例2に示されるような一本鎖DNAは、二重特異的抗体( あるいは二重特異的抗体のF(ab')2 フラグメント) に結合し、アデノ関連ウイルスにアニールした。不活性化されたアデノウイルスは、細胞の錯体摂取を促進するために抗体に結合している(Cristiano et al. 1993 Proc Natl Acad Sci USA 90;2122: Curiel et al. 1991 Proc Natl Acad Sci USA 88;8850) 。
【0067】
〔実施例4〕
アデノ関連ウイルスDNAと肝臓細胞結合ドメイン、不活性化アデノウイルスからなる結合剤(図5)ラクチルオリゴリジン10量体の調製オリゴリジンはカルボキシル末端にシステイン残基を持った状態で合成した。チオール基はエールリッヒ試薬でブロックし、アミノ基は室温で0.1M重炭酸バッファー(pH9.0) 、20% ジメチルフォルムアミド中の3 倍過剰のラクチルイソチオシアネートと反応させた。反応溶液はG50カラムでクロマトグラフし、ラクチル−オリゴリジン画分は合わせて凍結乾燥した。その固体は、保護されたチオール基の凍結が溶けないように1mM ジチオスレイトール2ml で溶解し、過剰なジチオスレイトールや遊離したエーリッヒ試薬を取り除くために再びG50 カラムでクロマトグラフされた。全ての操作は、チオール基の空気酸化を防ぐためアルゴン飽和バッファーで行った。合わせたラクチルオリゴリジン画分は、合わせてすぐにマレイミド誘導抗体( 以下参照) あるいは、実施例2にあるような核酸含有チオール混合液中の蛋白質と反応させた。
【0068】
〔実施例5〕
アデノ関連ウイルスDNAと肝細胞結合のためのドメインに結合したDNAとの抗体結合剤長さ100 塩基で5'末端にチオール基を持った一本鎖DNA分子を化学的に合成し、アリルアミン基は分子の5'末端50塩基の間、10塩基間隔で散在させ、分子の 3'末端50塩基はアデノ関連ウイルスDNAに相同性がある。チオール基のブロック後、ラクチル基を実施例1に示したように付加した。チオール基はその後露出させ、ラクチル基で修飾された一本鎖DNAにアデノウイルスのモノクローナル抗体を加え、実施例2に示したようにアデノウイルス関連ウイルスDNAとアニールさせた。
【0069】
〔実施例6〕
核酸ハイブリダイゼーションによる多重結合抗体の調製
(i) ホモポリマーの調製
5'末端にアミン基を持ったオリゴ(dA)とオリゴ(dT)を化学的に合成した。より長い分子は、図7と図8のNAに描かれたようにターミナルトランスフェラーゼと適当なdNTP前駆体の反応で、プライマーとしてアミン含有オリゴを用いることで調製した。
(ii)ホモポリマーリンカーの調製
1,2 ジアミノ-4- ブロモ-5- ヒドロキシシクロヘキサンは合衆国特許番号4,707,440 により調製し、そこでの(11-5 の) 反応産物はステップ(4-7) で化合物Iを生産するためにN-ブロモスクシンイミドと反応させた。( この合成における様々なステップは図7と8に示した。) 化合物I はアルゴン環境下、pH8.0 、90℃で5 倍過剰のジチオスレイトールと2 時間反応させた。反応溶液はpH1.0 に酸性化し、余分なジチオスレイトールはペルオキシドーフリーのエーテルにより、エーテル層にチオールが検出されなくなるまで取り除かれた。化合物IIを含む水層は次のステップに用いられた。
(iii) ホモポリマーへのリンカーの結合
核酸の5'アミノ基は、0.2M重炭酸ナトリウムバッファー(pH7.8) と0.7M塩化リチウム、30% ジメチルフォルムアミド中で3-マレイミドプロピオン酸 N- ヒドロキシスクシンイミドエステルと25℃で40分間反応させた。反応溶液のpHは、2.0M酢酸で5.5 にして、余分な活性エステルはn-ブタノール抽出で取り除いた。生産物である化合物III は-70 ℃で2 時間、4 倍量のエタノールで沈殿させた。遠心分離し、沈殿は0.7M塩化リチウムで溶解して、即座に過剰な化合物IIと室温でpH6.0 、30分間反応させることで化合物IVを生産する。この化合物は、前のステップにあるようなエタノール沈殿で過剰な化合物IIから分離した。化合物IVは過剰な3-マレイミドプロピオン酸 N- ヒドロキシスクシンイミドエステル( 化合物III で示したような)と反応させ化合物V を生産した。この生産物は4 倍量のエタノールで2 回沈殿させ、使用するまで-70 ℃で沈殿として保存した。
(iv)抗体の調製
Fab'- SH フラグメントは、F(ab')2 抗体を0.5MジチオスレイトールでpH7.5(Taizo Nitta,Hideo yagita, Takachika Azuma, Kiyoshi Sato and Ko Okumura EurJ.Immunol 1989 19:1437-1441) 、アルゴン環境下で還元することにより調製した。pHは6.0 に下げられ、F(ab')2 の酸化を防ぐためにアルゴン環境下で、完全脱気バッファーを用いたG50 クロマトグラフィーによりジチオスレイトールから抗体を分離した。
(v) ホモポリマーの抗体フラグメントへの結合
ステップ(iv)からの蛋白フラクションは、コンパウンドVIを形成するために、常にアルゴン環境下でヌクレアーゼ反応を防ぐための2mM EDTA存在下にて、2:1の比率でステップ(iii) からのコンパウンドV と結合・反応させた。4 ℃一晩インキュベート後、フリーなチオール残基をブロックするためにエチルマレイミドを反応溶液に加え、蛋白質は硫酸アンモニウムで沈殿された(60%飽和) 。沈殿は最小量のtris-HClバッファー(pH7.8) に溶解し、反応生産物から結合物を分離するためにG100カラムでクロマトグラフした。
(vi)抗体マルチマーを得るためのホモポリマーとのアニーリング
0.2M NaCl,0.5M Tris-Hcl(ph7.8),1mM EDTA でアニーリングを行った。図9は全行程の概要を示している。図9に示す最後のステップでは、(a) は、1:1 の割合で共に結合する各タイプの分子の一つだけが必要不可欠であることに対して、A ホモポリマーとT ホモポリマーの両方が十分に短いという例を示している。(b) の図は、A ホモポリマーがT ホモポリマーよりずっと長いように合成された状況を示している、またこの状況では、大多数の抗体が複合体に一緒にリンクすることが出来る。
【0070】
〔実施例7〕
核酸ハイブリダイゼーションによる多重結合インシュリンの調製
アミノ基を持つオリゴT(前述されているようにして調製した) は、0.7M LiCl、0.1M重炭酸ナトリウムバッファー(pH7.8) 、3 倍過剰のスベリン酸ビス(N- ヒドロキシスクシンイミド) エステルを含んだ30% フォルムアミドで室温15分間反応させた。2M酢酸の添加でpHはpH5.0 に下げ、過剰な活性エステルはn-ブタノールで2 回抽出した。核酸は4 倍量エタノールで-70 ℃にて沈殿し、遠心分離後の沈殿は冷たい0.7Mtiu 塩化リチウムー0.1M重炭酸ナトリウム溶液(pH7.8) に溶解し、固体インシュリンを1:1 の割合で加え、結合を4 ℃一晩で起こさせた。生産物はG75 カラムでの分子ふるいクロマトクロマトグラフィーにより反応物から分けられた。多重結合複合体は早期に描かれたように、T につながれたインシュリン分子とポリA 結合剤のハイブリダイゼーションにより形成された。この実施例のステップは図10に示した。
【0071】
〔実施例8〕
特異的な配列を用いた核酸ハイブリダイゼーションによる多重結合インシュリンの調製
1 グループの核酸配列は、知られているバクテリオファージM13 の一本鎖配列から選択した。これらは、核酸5'末端にアミノ基を持つように人工的に合成し、オリゴマーは個々に活性化して実施例7に示すようにインシュリンに結合させた。混合液はそれぞれのオリゴマー/ インシュリン複合体から成り、ファージ分子由来のM13 DNA(+鎖) と混合されている。生産物は分子ふるいクロマトグラフィーにより反応液から分離した。この実施例は図11に示してある。
【0072】
〔実施例9〕
T7プロモーターに制御されるアンチセンス配列と同じようにT7 RNAポリメラーゼを発現する真核ベクターの合成
(A) イントロンとイントロン挿入部位
SV40スモールT イントロンをいくつかのDNAベクターに利用されていて、3つのリーディング鎖のすべてに存在する終始コドンとその小サイズのためにこの特例に選ばれた。スプライシングのドナーとアクセプターの共通配列は、イントロン配列と同じようにエキソン配列によって部分的に作られた。Mac DNASISプログラム(Hitachi,Inc) を用いたコンピューター検索では、早期にに示したようなポスト- スプライシングの分岐点である(C/A)AGG配列を持つT7RNAポリメラーゼのコード配列(Mount,1982 Nucleic Acids Research 10,459)内に19の異なる部位の同一配列を認めた。これらの部位のいくつかはイントロン挿入部位に適合するが、この例では、T7部位がSV40イントロンの側面に位置するいくつかのエキソン配列によく類似しているものとして選ばれた。図12はT7RNAポリメラーゼ遺伝子配列中の、この部位を取り囲む配列と、引き続くSV40ウィルスイントロンのこの部位への挿入を示している。図12はまた、この融合や、通常のT7をコードする配列を再構成するための、引き続くイントロン以外のスプライシングから作られたm RNAを示している。
(B) T7をコードしている配列へのイントロン配列の融合
イントロンの導入と、T7プロモーターから制御される配列と同様に中断されるT7RNAポリメラーゼを持つベクターの生産の方法は、図13に示した。図13のように、この構築物の創作は、T7RNAポリメラーゼ遺伝子の各セグメント( イントロン挿入予定部位の左右) のPCR 増幅や、真核イントロンのPCR 増幅により実行できる。これらの部分は、下に示すようなクローニングステップを用いて結合させ、PCR 産物は次の配列を加えずにフラグメントの正確な結合を行うための"スプライシング- バイ- オーバーラップ- エクステンション"(SOE)を参考にして融合することができることは、以前に示されている(Horton et al1990 Bio Techniques 8: 528; Horton et al., 1989 Gene 77:61)。しかし、PCR 反応は異なるセグメントを作ることを必要とするのに加えて、SOE 法はセグメント結合のための二次PCR におけるプライマーとして、これらのPCR 生産物の使用を伴う。多様なセグメントの融合のために、一連の連続PCR が行われた。エラーの頻度を低くするため温度安定性DNAポリメラーゼを選んでも、最終産物の合成は、いくつかの配列が多様サイクル増幅ステップに従うことを求め、そこでは最終産物に望ましくない変異を起こす機会が増加する。この理由のため、発明者が望むべき生産物を得るために最終生産物のシーケンスを助言した(Horton et al.,1990)。この実施例では方法は、最終融合生産物を形成するためのセグメントのリゲーションによって、それぞれのセグメントを作るための第一段階PCR だけを要する物を用いた。適切な産物を形成するための遺伝子セグメントとイントロンの融合は、" スティッキーエンド" の生産を見込んで、PCR プライマーの5'末端に制限酵素配列を付加することによって行われた(Scharf et al.,1986 Science 233:1076)。この融合の正確に定義された末端ポイントを与えるために、回文ではない配列を認識し、あいまいな定義で一本鎖を残すように認識配列の外側を切る制限酵素(Bsa IとBsm B1) を用いた。この方法は、適切なPCR プライマーのデザインにより使用者に選択されるいくつかの点で配列の結合を許す。
(C) 融合に用いられるそれぞれのセグメントの合成
T7RNAポリメラーゼはT7ゲノムの3171-5822 塩基によりコードされ(Dunn and Studier, 1983 J.Mol.Biol.166:47)、この配列はジーンバンクでアクセスナンバーV01146,J02518,あるいはX00411で利用可能である。この情報に基づいて6 個の異なるオリゴを合成した。これらのオリゴの使用とそれらの配列は、図14に示す。TSP1とTSP2は相補的な12塩基でアニールし、完全な二本鎖DNA分子を形成するように増幅した( 図15) 。コンディションは次のとおり:150pM のTSP1,150PMのTSP2,1×NEB バッファー#2(New England Biolabs,inc.),200mMのDNTP,13 ユニットの配列v2.0(U.S. Biochemicals,Inc.),37 ℃で75分間。TSP3と4 は、T7ゲノムDNAと共に"Left"フラグメントを合成するための鋳型としてPCR 反応(Saiki et al,1985 Science 230,1350) に用いた。試薬のコンディションは次の通りである:100ng のT7鋳型を含む100 μl ボリューム(Sigma Chemical Co.),IμMのTSP3,IμM のTSP4,1mMのMgCl2,1 ×PCR バッファー,250μM のdNTP,2.5ユニットのTaq DNAポリメラーゼ。温度サイクルコンディションは:(1)94 ℃で50秒,(2)50℃で25秒,(3)72℃で3 分の16サイクル。同様のコンディションを、"Right" 末端をTSP-5 とTSP-6 オリゴマーで作るときに用いた。但し、推定生産物の長さ(2Kb以上) のため、Taq エクステンダー(Stratagene,Inc)を加え、通常のPCRバッファーの代わりにTaq エクステンダーバッファーを加えた。イントロン部分形成のためにINT-1 とINT-2 を共にPCR 反応に用いた。コンディションはT7の"Left"フラグメント合成に用いたものと同じであり、SV40クローンは鋳型として用いられ、アンプリコンの小サイズのためサイクルコンディションは伸長タイムの72℃で1 分だけであった。図15は、オリゴTSP1とTSP2の伸長により作られた短い二本鎖DNA部分の合成と、完全な(NLS+)T7RNAポリメラーゼを生成するための右末端のTSP3/TSP4 PCR 産物とのコンビネーションを示している。結果的な核酸とアミノ酸の配列は、この実施例で与えられる構築物として通常の野生型T7RNAポリメラーゼ配列と同様に、図16に示した。
そして、この構築プロセスの間に5'末端で行われた修飾は:
a)ATG 開始コドンの周辺配列がKozak コンセンサス配列(Kozak 1984 Cell 44: 283) のように変えられ、遺伝子生産物の翻訳効率が増加した。この変化は以前にも、T7RNAポリメラーゼをコードする配列に導入されていた。
b)TSP1/TSP2 伸長生産物のTSP3/TSP4 PCR 生産物への融合は、通常のT7RNAポリメラーゼ蛋白配列の10番目と11番目の塩基の間に9 アミノ酸の挿入を持ち込んだ。この配列は以前にKalderone らにより、ヌクレアーゼへの輸送のための信号であることが示されている(1984 Cell 39: 499) 。そして、Lievber ら(1989)により最初の10アミノ酸の置換としてT7RNAポリメラーゼへ導入され、Dunnら(1988)により人工的に作られたEcoR1 部位を挿入された。この実施例で用いた核酸局在信号(NLS) を生じる方法は、通常の蛋白構造変化への不安は最小限で済む。NLS をコードしているアミノ酸コドンは図16で大きなタイプサイズで示してある。
(D) 真核生物の発現ベクターのT7RNAポリメラーゼ遺伝子の最終的な構築物を形成するための断片の組合せ
図17にこのプロセスで使用した様々なステップを示す。使用を容易にするために、3 つの断片(PCR #1, PCR #2, PCR #3)はそれぞれTAクローニングキットを使い、製造者の説明に従ってプラスミドベクター(PCR II)にクローン化した。
PCR #1(T7 RNAポリメラーゼの左末端)はPCR IIにクローン化し、pL-1を得た。この構築物はPCR 生産物を除くためにBsm B1とSpe 1 で消化し、TSP 1/TSP2 伸長産物( 詳細は図15) はEcoR1 とBsa I で消化した。プライマーのデザインのために、Bsm B1とBsa I でできた一本鎖末端はお互いに相補的で、これらの断片のリゲーションにより一方の末端のEcoR1 末端ともう一方の末端のSpe I 末端で一つの断片を形成する。M13 ベクター、mp18をEcoR1 とXba I で消化するとEcoR1/Spe I 断片が挿入でき、pL-2を形成する。
PCR #2(SV40 イントロン) はPCR IIにクローン化し、pINT-1を得た。この構築物はEcoR1 とSpe I で消化し、M13 ベクター(EcoR1とXba I で消化したmp18) にトランスファーし、pINT-2をつくった。
PCR #3(T7 RNAポリメラーゼの右末端)はPCR IIにクローン化し、pR-1を得た。この構築物はEcoR1 とSpe I で消化し、セルフリゲートしてpR-2をつくった。このステップはpR-1に存在する過剰のEcoR1 とSpe I 部位を排除するために加えられた。
図13に示したように、pL-2, pINT-2とpR-2のエレメントは融合し、完全なイントロンを含んでいるT7RNAポリメラーゼをつくった。これはpL-2をBsm toBsaI で、pINT-2をBsm B1で、pR-2をBsa I とSpe I で消化することでなされた。これら3 つのインサートのリゲートは一方の末端がHind IIIと他方の末端がSpe Iと親和性のある一つのフラグメントができる。このフラグメントは同じステップで前にHind IIIとSpe I で消化したpRC/rsv(from Invitrogen Inc.) にクローン化した。図17にみられるように、この最終生産物はpINT-3である。この特定の真核生物のベクターはRSV プロモーターが造血性セルラインで特に活性化することが示されているため選ばれた。pRC/RSV のHind III末端とpL-2のBsm B1で消化してできた末端とのリゲーションは、最終生産物pINT-3のHind III部位を再構成しない。
(E) アンチセンス配列
アンチセンス配列のターゲットをテストするために、HIV ゲノムにおける3つの異なるターゲットが選ばれた:(A)5' の共通先端、(B)Tat/Revのコード配列、(C)Tat/Revのスプライシングアクセプター部位。(A) のアンチセンス配列はJoshi らの論文(1991 J.Virol.65, 5534) から得た;(B) のアンチセンス配列はSzakiel ら(1990 Biochem Biophys Res Comm 169,213) からとられ、(C) のアンチセンス配列は我々でデザインした。オリゴの配列とHIV ゲノムでの位置は図18に示した。それぞれのオリゴは、1 ペアののオリゴのアニーリングが、Bam H1部位と両立できる"sticky ends" を持った二本鎖分子を与えるようにデザインした。オリゴはまた、BamH 1部位挿入後に分子の位置づけが容易に確認できるようにデザインした。結果的なクローンは、アンチHIV 配列A,B,C に対してそれぞれ、pTS-A,pTS-B,pTS-C と呼んだ。
(F) T7ターミネーターのクローニング
T7RNAポリメラーゼによる転写終結配列は、T7ゲノムにおける塩基番号24,159での遺伝子10b 蛋白の末端と塩基番号24,227での遺伝子11産物の開始コドンの間の配列によりコードされていて(Dunn and Studier 1983 J.Mol.Biol.166 ,427) 、ジーンバンクアクセス番号V01146,J02518 もしくはX00411。この情報をもとに、TER-1 とTER-2 を合成し( 配列は図18に示した。) 、138bp の二本鎖を得るためにPCR 反応に用いた。この138bp の二本鎖は24,108から24,228までのT7配列を持ち、片側にXba I 部位と別側にPst I 部位を持っている。増幅の試薬コンディションはTSP3/TSP4 に描かれたようであるが、温度サイクルコンディションは:(1)94 ℃で50秒、(2)50 ℃で25秒、(3)72 ℃で1 分の16サイクル。図18に示すように、ターミネーターはPCR IIベクターでクローン化され、Xba I/Pst I 切断後M13 ベクターにトランスフェクトされた。
(G) T7が作用したアンチセンス転写ユニットの形成
アンチセンス配列を含むクローン(pTS-A, pTS-B, pTS-C) はEcoR1 とPst I で消化し、一方でT7ターミネーターを含むクローン(pTER-2) はXba とPst I で消化した。これらはEcoR1 とPst I で消化しておいたpIBI30(IBI, Inc.) とリゲートし、図18に示したアンチセンス転写ユニットをつくった、これはT7プロモーターから転写し、T7ターミネーターで停止したアンチセンス配列をもつ。得られたクローンはアンチ-HIV配列、A, B, C それぞれpTS-A1, pTS-B1, pTS-C1と名付けた。
(H) アンチセンス転写生産物のpINT-3へのトランスファー
現在の発明の本質において、アンチセンス転写ユニットを作用させるT7がpINT-3にトランスファーし、T7ポリメラーゼ/ プロモーターの一つの構築物をつくることができる。これはSpe I とSph I で消化しプラスミドベクターLIT-38(New England Biolabs, Inc.) からポリリンカーをトランスファーし、Xba I とSph Iで消化しておいたmp18へポリリンカーインサートをリゲートすることでM13 ファージベクターLIT φ2 をつくった。これとその後のステップは図19に示す。T7が作用したアンチセンス配列を含むクローンpTS-A1, pTS-B1, pTS-C1はEcoRV とPst I で消化した。それらはEcoRV とPst I で消化しておいたLIT φ2 ベクターにリゲートした。得られたクローンはT7が作用したアンチセンス配列を含むファージベクターでそれぞれpTS-A2, pTS-B2, pTS-C2と名付けた。これらのクローンはNhe I とBsp1201 で消化し、Spe I とNot I で消化しておいたpINT-3ベクター(図17) にリゲートした。得られたクローンpRT-A, pRT-B, pRT-C はRSV プロモーターにより作用したT7RNAポリメラーゼをコードする配列を含み、機能的なポリメラーゼ酵素をつくるためにスプライシングされるSV40イントロン配列も含み、その上、それぞれの構築物はT7プロモーターで働きT7ターミネーターで停止したHIV アンチセンス配列を含む。
【0073】
〔実施例10〕
T7RNAポリメラーゼも発現させる一つの構築物から派生したT7でコントロールされた転写生産物からできたタンパクの発現
前述の実施例に利用したpINT-3ベクターはT7コントロールしたタンパク合成のための発現ベクターとして利用するために修飾することができる。この目的のために、 pINT-3ベクターはT7ターミネーターとポリリンカーの中間にT7プロモーターが必要である。これらの一部分の配置の最適な部位はXho I とBam H1部位のあるpINT-3のT7RNAポリメラーゼのポリA 信号の後であ。ベクター内に他のXhoI とBam H1部位もあることから、もしこの領域を含む小さなセグメントが分離するならこの特定のセグメントの操作をすることができ、適当な核酸はXho I とBam H1部位の間に導入され、セグメントは後方に置き換えられる。この構築物をつくるために使ったステップは図20と21に示してある。
a) ポリリンカーの導入
Xho /Bam H1 挿入部位を含むセグメントはpINT-3の期限であるpRC/RSV プラスミドから派生した。これはpRC/RSV をXba I とXma I で消化し、適当なフラグメントを前にXba I とXma I で消化したpUC18(New England Biolabs, Inc.)プラスミドにトランスファーし、pEXP-1ベクターを得た。次にXho I とBam H1で消化し、ポリリンカーはオリゴマーPL-1とPL-2( シーケンスは図20に示す) とともにリゲートすることで挿入した。合成されたプラスミドはpEXP-2と名付け、新しいポリリンカーを含んだ制限酵素部位は図20に示してある。
b) T7プロモーターとT7ターミネーターの導入
プロモーターはTPR-1 とTPR-2 オリゴマー( シーケンスは図B-10に示す) とリゲートすることにつづいてNco I とBam H1で消化し、挿入することでpEXP-3をつくった。典型的なT7プロモーターコンセンサス配列(Dunn and Studier, 1983)は使われなかった。というのはそれはいくつからセルライン(Sandig et al., 1993Gene 131;255)で真核生物のプロモーターとして機能し、Lieber et al. (1993)から派生した配列はT7RNAポリメラーゼの存在下で良く機能し、非存在下では働かないままであるため置換される。ベクターpEXP-3は Spe I とPst で消化し、pEXP-4ベクターをつくるために前述の実施例のpTER-1構築物から派生したT7ターミネーターフラグメントとリゲートした。 Xba/Xma セグメントは短いポリリンカーとT7ターミネーターを含むために修飾した。図21に示すようにリゲートした後にpINT-3とpEXP-4をXba I/Xma I で消化することでpINT-3の修飾されていないセグメントを置換し、ベクターpINI-4をつくった。
c)タンパクをコードする配列の新しいT7発現ベクターへの導入
完全なlac Z 配列をコードする遺伝子はpZeoSVLacZ(Invitrogen, Inc.)をAgeI とCla I で消化することで得られた。これは前にBsp E1とCla I で消化しておいたpINT-4にリゲートし、pINT-LacZ をつくった。真核生物の細胞に導入後、RSV プロモーターはT7RNAポリメラーゼの合成をコントロールし、次にT7プロモーターがβ- ガラクトシダーゼの合成に作用する。
【0074】
〔実施例11〕
一本鎖アンチセンスを生産するための生産中心を伝達する一次核酸構築物一次核酸構築物は図22および図23に示され、それによる細胞への導入に引き続いて自己プライミングやマルチプライミングとRNA分解酵素H と逆転写酵素活性を含む一連の出来事は、一本鎖DNAアンチセンス分子の生産を導く。この場合、核酸構築物は生産中心のマルチコピーと、別個の3'末端と共にヘアピン構造を有するRNA転写物(構造34a, 図22) を作り出す。逆転写酵素存在下において3'末端のヘアピンがプライマーとして分子の5'末端まで働き、してDNAとRNAの両方から成るヘアピン構造(構造34b)を生じる自己プライミングが起こる。マルチプライミング工程により、RNA分解酵素H 、ウイルス逆転写酵素の一部としてか生来の細胞システムからかどちらかがDNAに結合したRNAの分解を始める。もし十分なRNA分解酵素H 活性があるか逆転写酵素活性が十分に高ければ分解は完全に行われ、RNAの分解の開始は鋳型としてDNA部分を使って伸長するためのプライマーとして保存されている。前者においてRNA分解酵素H による分解の最終的な結果は二本鎖5'RNA末端と一本鎖DNA分子(構造34c)であり; 後者( 構造34d)において、プライミングは a)34fや34g のような分子シリーズの生産を引き起こし、一本鎖DNA部分の長さはプライミング開始部位に依存する、b)構造34e のような生産中心の伝達を引き起こす。構造34gは、例えば、Z 一本鎖DNA部分として表される塩基配列がアンチセンス塩基配列である場合、生物学的に変更遺伝子として働くであろう。RNA分解酵素H 逆転写酵素の活性を通して、構造34e はさらに処理されて一本鎖DNA分子(構造35h, 35i, 35j, 図23) を生産し、もし、その塩基配列X', Y', Z'がその目的のために設計されていればアンチセンスDNAとして働くであろう。この発明によるアンチセンスDNA分子の生産は、細胞内でアンチセンスDNAを合成するための方法をはじめて示したことを表している。
【0075】
〔実施例12〕
方向性のある転写能力のあるDNA生産中心を作り出すために逆転写されるRNA生産中心を伝達する一次核酸構築物
本実施例において実施例11に記載した自己プライミングやマルチプライミングの同じ工程が一本鎖DNAヘアピン構造の伝達により起こる(図24) 。実施例11において、構造36b, 36c, 36d(図24) は一本鎖RNAの生産のための生産中心として働く。この場合、これは逆転写酵素やRNA分解酵素H が、多くの一本鎖RNA分子の生産を支配する二本鎖DNA生産中心へと変化させるため増幅現象として現れる。
【0076】
〔実施例13〕
一本鎖RNAを生産するための二重ヘアピン生産中心を伝達する一次核酸構築物
本実施例において、二本鎖DNA一次核酸構築物( 構造37a,図25) は一本鎖生産中心が、そこから伝達され、5'末端と3'末端にヘアピン構造を形成するように設計されている。3'末端からの自己プライミングによる伸長の後、RNA分解酵素H や逆転写酵素により触媒されて一本鎖ヘアピン末端を有する二本鎖DNA(構造38b,図26) の伝達を引き起こすさらなるステップが起こる。これはさらに処理され、DNA連結酵素の働きにより共有結合的に閉環した分子(38c) を生じたり、逆転写酵素の働きにより大きな線状分子(38d) を形成する。これら生産中心中におけるプロモーターとコード配列の存在は、一本鎖RNAの生産を供給する。実施例12にみられるように、これはRNA転写物を生産する各々の生産中心がそれ自身、単一の転写物から派生することによる増幅現象である。
【0077】
〔実施例14〕
誘導的細胞破壊の能力を有する生産中心を産生する核酸構築物
本実施例において( 図27) は生来の細胞システムの細胞への導入の結果として一本鎖核酸の生産を提供する。この場合、生産中心( 構造39b)の産生へ導く出来事は逆転写酵素の存在により引き起こされる。ここで、生産中心における一本鎖核酸の生産は致死生産物、ジフテリア毒素を生産するために翻訳されるmRNAであり、逆転写酵素依存性の殺細胞現象を引き起こす。ウイルス感染TAT 活性化(Harrison et al.により観察された) の非存在下でのジフテリア毒素のような毒性遺伝子産物の低レベルでの合成の抑制は毒素をコードする部分のコードしていない鎖中に人工的に挿入したイントロン(39a) を使用することにより行われる。この方法では毒素塩基配列の転写は活性を有する生産物を生産したい。活性を有する毒素の生産はアンチセンス転写物がスプライシングされて逆転写酵素の鋳型として使用されたときにのみ起こる。
RNA分解酵素H と逆転写酵素により仲介される活性の結果は、イントロン塩基配列が除かれて毒素の鋳型として働く二本鎖DNA生産中心(39c) である。さらなる改善として、二本鎖DNA生産中心(構造39b 中ABC と示した領域) をHIV LTR にすることができる。この場合、毒素の生産はウイルス感染により提供される二つの出来事に依存する。
【0078】
〔実施例15〕
一本鎖RNA生産のための二本鎖DNA生産中心を作り出すためのtRNAプライマーの使用
本実施例は二本鎖DNA生産中心を広げるため一本鎖RNA生産中心中にプライマー結合部位の存在を利用した。この方法では、プライマーとしてリジンtRNAを利用するHIV プライマー結合部位のようなレトロウイルスのプライマー結合部位から派生する塩基配列を二本鎖DNA生産中心からDNAの合成を開始するためのRNA生産中心( 図28、構造40b と40c)中の端(XとY とした部分) の近くに挿入することができる。構造40d のような生成した生産中心は、前述したように、アンチセンスRNAとして利用したり、タンパク質を生産するために翻訳したりする一本鎖RNAを生産する機能を有する二本鎖DNA分子である。
【0079】
〔実施例16〕
U1遺伝子の転写物中に導入したアンチセンス部分を有するプラスミドの構築
本実施例で使用したプロセスの全ては図29に示した。U1遺伝子はプラスミドpHSD-4(Manser and Gesteland 1982 Cell 29;257) 中に存在する。3 対の異なるデオキシオリゴヌクレオチドを合成し、その塩基配列を図30に示した。プラスミドのBcl/Bsp 末端と同じ部位を形成するため、突出した一本鎖とこれら3 対をハイブリダイズした。プラスミド中のBcl/Bsp 末端はU1をコードする塩基配列から49塩基除いた後も残っている。各塩基配列を挿入し、pHSD-4のU1をコードする部分まで発現させたとき、U1は HIV ゲノムの一部分に対するアンチセンスRNAとして現れる。
Bcl 1とBsp E1で消化後、49塩基対部分はU1遺伝子の転写部分から除かれる。オリゴヌクレオチド対はプラスミドのBcl/Bsp 末端と同じ突出末端を形成するように設計されている。各オリゴヌクレオチド対の連結反応(HVA-1 + HVA-2, HVB-1 + HVB-2, HVC-1 + HVC-2) により72bp挿入されたpDU1-A, 66bp挿入されたpDU1-B, 65bp挿入されたpDU1-Cを構築した。コントロールとしてHIV に関連しない配列である二つのオリゴマー(HVD-1とHVD-2)もまた61bp挿入されたpDU1を構築するためU1オペロン中に挿入した。
はじめに記載したように、クローン化の方法の設計は、アンチセンス塩基配列の核配置のためのU1転写物により供与される信号の利用を可能とする新たな塩基配列の挿入を可能にするものである。上記の塩基配列の挿入がU1転写物の再輸送に応答するU1部分に意図しない変化が生じているかどうかを検査するため、通常の U1とキメラの新規分子の予想される構造を比較するため、MacDNASIS プログラム(Hitachi, Inc.) を用いてコンピュータ解析を行なった。図31にもみられるように、5'末端の変化( 新しい塩基配列が導入されている) にも関わらず、Sm部分と同様にループIII やIVは乱されていないことを確認することができる。
【0080】
〔実施例17〕
U1 sn RNAの一部として 3つのアンチセンス塩基配列を発現するマルチカセット構築物の構築
本実施例で使用した様々なステップは図32に示した。本実施例で使用した様々な構築物、 pDU1(A), pDU1(B), pDU1(C), pGK-neoは本特許の実施例16に記載した。"B" アンチセンスをU1転写物中にはめ込んだプラスミドpDU1(B) をSma I とHind IIIで消化した。"A" アンチセンスとU1 オペロンを含む部分はpDU1(A) のHincII とHind IIIによる消化により単離し、2 つの分離した"A" と"B" アンチセンス塩基配列のオペロンを有するpDU1(A,B) を構築するためにpDU1(B) 中に連結した。この構築物をSma I とHind IIIで消化し(2重オペロンを単離するため) 、あらかじめHinc II とHind IIIで消化しておいた"C" アンチセンスを含むU1オペロンを有するpDU1(C) 中に連結した。生成した構築物、pDU1(A,B,C) は"A","B","C" の各アンチセンス塩基配列を含む3 つの分離したオペロンを有する。形質導入後にこの構築物の存在を選択することを可能にするため、ネオマイシン耐性遺伝子を含む部分をベクターpGK- neo からHind IIIとSma I による消化により切り出し、pDU1(A,B,C) 中に連結してpNDU1(A,B,C)を構築した。pDU1(A,B,C) とpNDU1(A,B,C)構築物中の3 つのオペロンの順序を図34に示す。
【0081】
〔実施例18〕
3 つのT7RNAプロモーターを有するアンチセンス発現マルチカセット構築物の構築
本実施例で使用した様々なステップは図33に示した。プラスミド LIT28(New England Biolabs, Inc.)由来のポリリンカーをBgl IIとHind IIIで消化したM13 ベクター中に移して、あらかじめBam H1とHind IIIで消化したM13mp18 に連結してファージベクターLIT φ1 を構築した。T7プロモーター、"B" アンチセンス塩基配列、T7ターミネーターを有するpTS-B(実施例9に記載した) をEcoRV とHind IIIで消化し、EcoRV とHind IIIで消化したLIT φ1 に連結して"B" アンチセンスT7オペロンを有するファージベクターTOP302を構築した。
プラスミドLIT38(New England Biolabs Inc.) 由来のポリリンカーをSpe I とSph I で消化したM13 ベクター中に移して、あらかじめXba I とSph I で消化したM13mp18 に連結してファージベクターLIT φ2 を構築した。T7プロモーター、"A" アンチセンス塩基配列、T7ターミネーターを有するpTS-A(実施例9に記載した) をEcoRV とPST I で消化し、EcoRV とPst I で消化したLIT φ2 に連結して"A" アンチセンスT7オペロンを有するファージベクターTOP414を構築した。TOP302をMlu I とBsi WIで消化して、Mlu I とBsr G1で消化したTOP414中に連結してTOP302とTOP414のT7オペロンを結合し、"A" アンチセンスT7オペロンと"B" アンチセンスT7オペロンの両方を有するファージベクターTOP501を構築した。
T7プロモーター、"C" アンチセンス塩基配列、T7ターミネーターを有するpTS-A(実施例9に記載した) をSph I とHind IIIで消化した。TOP501をSph I とHindIIIで消化してpTS-C2中に連結し、単一構築物中に"A" アンチセンスT7オペロン、"B" アンチセンスT7オペロン、"C" アンチセンスT7オペロンを有するTRI 101を構築した。TRI 101 構築物中の3 つのオペロンの順序は図34に示した。この構築物とT7RNAポリメラーゼを発現するベクター( 実施例9に記載したT7RNAポリメラーゼを含むイントロンをこの目的に使用できる) を同時形質導入すると3 つ全てのアンチセンス転写物を生体内で生産できる。
【0082】
〔実施例19〕
3 つのT7RNAプロモーターとT7RNAポリメラーゼ遺伝子を有するアンチセンス発現マルチカセット構築物の構築
前述の実施例はRNAポリメラーゼを含む構築物と2 つ目のT7プロモーターを含む構築物との同時形質導入によりT7からの転写物を発現させる通常の方法を利用しているけれども、この発明の応用として同一構築物上の両方( ポリメラーゼとプロモーター) を有する方法を記載する。本実施例はT7機動アンチセンス転写物のマルチオペロンと同様にT7RNAポリメラーゼを有する単一構築物の例証である。本実施例の様々なステップは図35に示される。プラスミドpTS-C(上記) をEcoRV とPst I で消化し、あらかじめEcoRV とPst I で消化しておいたM13 ベクターLIT φ2(上記) に連結して、"C" アンチセンスT7オペロンを有するファージベクターTOP601を構築した。はじめの方に記載したように、構築物pINT-3はコード領域の中に挿入されているSV40イントロンを有するT7RNAポリメラーゼを含んでいる; 真核生物中ではRSV プロモーターによる発現とその後の細胞の通常のスプライシング機構によるイントロンの切り出しが存在する。T7アンチセンスオペロンを挿入するために、 pINT-3をSpe I とNotIで消化した。3 つのT7アンチセンスオペロンを、あらかじめPst I とNhe I で消化したTOP601、Mlu I で消化したTOP302、Bpu120 1とMlu I とNsi I で消化したTOP414とSpe/Not pINT-3DNAの同時連結により3重挿入物として挿入した。結果として得られたクローンを異なるアンチセンスオペロンの位置のダイヤグラムと共に図35に示した。
【0083】
〔実施例20〕
細胞中の抗HIV U1構築物のテスト:
ウイルス増殖の阻害:
a)安定な形質転換細胞系の作成:
U937細胞(Laurence, et al., 1991, J.Virol, 65:214-219) をリポフェクチン(BRL Inc.)を使用してメーカーが示したプロトコ−ルにしたがい、上記の様々なU1構築物で形質転換した。形質転換後、培養細胞を二つに分けた。片方はプールしたクローン群を得るために使い、他方は個々のクローンを得るために使用した。個々のクローンを得るために 1×104 の細胞当量を96ウェルの組織培養プレートの各ウェルに植えつけ、安定な形質転換体を 600 microgram/ml のG418(GibcoBRL) 存在下で10% のウシ胎児血清( 熱不活性化)(Gibco BRL)を補足したDMEM(Gibco BRL) 培地中の増殖により選択した。G418を含む培地は3 日から4 日毎に交換し、 3週間のインキュベートの後、薬剤耐性細胞を各ウェルから吸引により培養ディッシュに移して更に増殖させた。プールしたクローン群を得るために、 1×106 の細胞をT-25フラスコ(Corning) に植えつけ、G418存在下で増殖させた。
b) 細胞系の特徴
RNAを耐性クローンかもしくは耐性プールクローン群からホットフェノール法(Soeiro and Darnell, 1969, J. Mol. Biol. 44:551-562)により抽出した。このRNAはGenius System (Boehringer Mannheim) が付随したプロトコールを使用するドットブロットにおいて使用された。この解析に使用されたプローブは、Xma I およびBamHI 部位の中にクローン化したpBlueScript (Stratagene)中の三つの挿入物(A,B,C) のクローンから作られたリボプローブである。このクローンはセンスの向きに挿入したRNAを生産する。この解析の結果からU1クローンで形質転換して G418に耐性を示し、テストしたすべての細胞はアンチセンス挿入RNAを発現したことを示している。比較ドットブロット解析を酵母RNA (Boehringer Mannheim) と同様に親U937細胞系からのRNAを用いて行なった。これらのドットはアンチセンス挿入RNAの存在を示さなかった。上記のクローン pBlueScript 12, pBlueScript 34, pBlueScript 56, pBlueScript 78を使って試験管内で合成したアンチセンスRNAは本章で記載したセンスプローブを用いたハイブリダイゼーションにより陽性を示した。このことからこれらのテストした形質転換細胞群はHIV ウイルス塩基配列からのアンチセンスRNAを実際に発現していると結論付けた。
C)HIV チャレンジ実験No.1:
0.5 ×106 の3つの構築物で形質転換したプールしたクローン化細胞を、Laurence et al. の方法(1991, J. Virol, 65:214-219)を用いて37℃で 2時間 2 microgram/ml のポリブレン存在下でウイルス/ 細胞比が0.15となるようなHIV 存在下でインキュベートした。細胞をその後洗浄し、1ml の培養液(RPMI 1640+10%ウシ胎児血清、Flow Labs)に懸濁して二つに分けた(0.5ml/ ウェル) 。3 から4 日毎に3/4 の培養液を除き、新しい培地に交換した。感染 6日後、これらの細胞試料を、メーカー(DuPont)のプロトコ−ルに従ってp24 ELISA 抗原捕捉を用いたHIV ウイルスによる感染の程度を検査した。この実験のコントロールの培養細胞はHIV に対するアンチセンス塩基配列をもたないクローンで形質転換した細胞を使用した。この実験の結果を表 1に示す。
【0084】
【表1】


コントロールのクローンと比較するとプールしたクローンの試料はp24 の生産の阻害を示した。プールしたクローン2.10.16 の場合、コントロールと比較してその阻害の程度は50% に近かった。このプールしたクローン群の細胞をさらに下記のように検査した。感染後18日で培養液中のp24 の濃度は上記のように測定された。この測定の結果を表 2に報告する。
【0085】
【表2】


この表はコントロールのプールしたクローン群や親細胞系のどちらと比較してもプールしたクローン群の細胞中のp24 抗原生産の約95% が阻害されていることを示している。
ウイルス感染24日目、トリパンブルー色素排除による検査をすると、コントロールのプールしたクローン群は17% が増殖可能であり、多数のシンシチウム(HIV感染の特徴である多核巨大細胞)を含んでいた。2.10.16 とラベルしたプールしたクローン群は40から60% が増殖可能であり、シンシチウムはみられなかった。
24日後、コントロールのプールしたクローンの培養細胞とプールしたクローンの培養細胞をフィコール勾配分離(Pharmacia) に供した。この操作によりルーチンの維持操作として3から 4日毎に死細胞から生細胞を分離した。35日目に、プールしたクローン群には生細胞は存在していた一方で、コントロールのプールした培養細胞中の生細胞は消滅した。プールしたクローン群のこれらの生細胞のp24 抗原存在を分析したところ、2.10.16 を名付けた培養細胞系は培養液中にバックグラウンド以上にp24 抗原存在を示さなかった。(0.039ODと比較して0.032+/-0.08OD) 。この実験において、HIV に感染した細胞は 2OD以上のp24 抗原量を示した。このように今回の分離プロトコールによって、ウイルスの阻害程度は99%以上であった。
d)HIV チャレンジ実験No.2:
本実験において、2.10.16 として同定したプールしたクローン群( 始めのチャレンジの31日より)を、コントロールのプールしたクローン群や親細胞系U937と同様に上記のようにHIV BAL 株にウイルス/ 細胞比が0.10となる様に再び感染させた。感染後、上記のように細胞を維持した。感染 9日後と12日後に上記のようにp24 抗原を測定した。その結果を表 3に報告する。
【0086】
【表3】


この表は親細胞系と比較してプールしたクローン群がp24 抗原の生産を約66%阻害していることを示している。
これらの細胞を上記のように 3日から 4日毎にフィコール勾配を用いて死細胞から生細胞を分離して維持したところ、21日目にHIV に感染させた親細胞系と比較して2.10.16 細胞系ではp24 抗原の生産は確かめられなかった。( ここに比較として2.10.16 のプールしたクローン群のODは0.009 と感染していない親細胞系と−じであり、感染した場合、感染した親細胞系は2OD 以上であった。
)e)HIV ウイルスによる 3回のチャレンジ後の2.10.16 細胞系のさらなる特徴:
本実験において、2.10.16R1(2 回目のチャレンジ実験の21日目より) として同定したプールしたクローン群と親細胞系U937を上記のようにHIV BAL 株により再度感染させた。感染後、上記のように細胞を維持した。感染14、27、42日目に、上記のように親細胞系U937と同様にプールしたクローン群 (2.10.16R2とする) のp24 抗原を測定した。その結果を表4 に報告する。
【0087】
【表4】


この表は27日までに親細胞は培養液から消滅したことを示している。これはウイルス感染が細胞を絶滅させるという結論と一致している。プールしたクローン化細胞群2.10.16R2 ではこれらの培養上清中のp24 抗原量は分析法の感度以下であった。このようにオリジナルのプールしたクローン化細胞の3 回目のチャレンジにおいてウイルスの増殖は確かめられなかった。
親細胞系U937は表層抗原CD4+を有することで知られている。本親株と3 回の選択後のプールしたクローン株である2.10.16 R2株を、マウスCD4+抗体(Becton Dickenson)の結合を蛍光ヤギ抗マウス抗体(Tago)を用いた測定によりCD4+抗原の存在をフローサイトメーター中で分析した。図36にみられるように、CD4+抗原は親株にも2.10.16R2 -HIV耐性細胞株にも表層に存在した。これは、この細胞が吸着蛋白質の消失、特にCD4+抗原の消失によりHIV ウイルスの感染に耐性であるとして選択されたのではないことを明らかにしている。
gag 抗原、p24 の生産に基づくウイルスの増殖の証明が遺伝的にアンチセンスを有するプールした細胞株がウイルスの増殖をさせないことを示す一方で、さらに全てのHIV- 1,2 を視覚的に検出する標準Cetus プライマーを用いたgag 遺伝子(p24抗原をコードする部分) をコードする部分を同定するDNAPCR 分析(Applied BioSystems)を用いてウイルスがこの細胞群に存在していないことが明らかとなった。EtBr染色したDNAのUV照射を示す図37にみられるように、 +コントロール( キット中に提供されたDNAを使用して)が予想されるサイズのバンドを示している一方で、2.10.16 R2DNAの増幅産物の数種の希釈物はその様なバンドを示さなかった。
これらのデータはアンチセンス構築物を使って、それらのCD4+表現型を維持した細胞系を創出できることを示している。p24 抗原生産やCetus 社の迅速DNAPCR キットによる測定で示したように、これらの細胞系が HIVウイルスの増殖をさせない。加えて、これらの細胞株は複数個の HIVウイルスの感染でも生存することを示している。
【0088】
〔実施例21〕
細胞中での抗 HIV U1 構築物のテスト:
ベータ- ガラクトシダーゼ活性の合成の阻害:
a)ベータ- ガラクトシダーゼの上流に標的配列Aを有する真核細胞ベクター標的DNAのセグメントA(HIVのtar 塩基配列より) を上記のように単離した。このセグメントをLacZをコードする配列とSV40エンハンサー、プロモーター、ポリA1号配列を有する真核細胞ベクター pSV LacZ(Invitrogen)のKpn1, BamH1 部位にクローン化した。クローニングサイトはこれらの配列中に存在する。塩基配列のクローン化を添付図( 図38) に図解する。
b)安定に形質導入したU937細胞中のベータ- ガラクトシダーゼ活性の発現:U937細胞を上記のようにリポフェクチン法を使用して形質転換した。この実験において陽性クローンはゼオシン耐性として選択した。5つの形質導入細胞群を単離した。これらの細胞は、1.形質導入していないU937細胞; 2. HIV Aクローン単独で形質転換したU937細胞; 3. HIV Aクローンで形質導入した後、U1アンチセンスA クローンで形質導入したU937細胞( クローンの記載は上記参照-2度目の形質導入はG418耐性として選択した); 4. HIV A クローンとU1アンチセンスABC クローン( クローンの記載は再度上記参照) とで同時形質導入したU937細胞; 5. HIV AクローンとU1-null DNA クローン( クローンの記載は再度上記参照) とで同時形質導入したU937細胞である。
U937( 安定に形質導入したものも形質導入していないものも) の対数増殖期の細胞を10 mM Mg++と 1 mM Ca++を含む 1×PBS で洗浄して培地を除いた。洗浄した細胞を 2% ホルムアミドと0.05% グルタルアルデヒドを含むPBS 中で室温で軽く(5分間) 固定した。固定液を除き、該細胞をPBS で 2回洗浄して固定液を除いた。洗浄した固定化細胞を 1 mg/mlのX-gal を含む染色溶液(5 mM フェロシアニドと2 mM塩化マグネシウムを含むPBS)に懸濁し、37℃で 2時間から一晩インキュベートした。該細胞を40×の顕微鏡で調べた。
この実験の結果を図39( データ下部) に図解する。酵素ベータ- ガラクトシダーゼの陽性生産を形質導入した細胞の細胞質中の青色沈着の生産により分析した。細胞系 2と 5の細胞の細胞質中には青色のスポットが検出される一方で細胞系1 、3 、4 には青色は検出されなかった。これらのデータはHIV A クローンのみの細胞系 2やHIV A クローンとnullDNAコントロールの両方の細胞系 5にみられた酵素ベータ- ガラクトシダーゼの生産はアンチセンスU1 AクローンがHIV Aクローンと同時形質導入したとき( 細胞系3)やアンチセンスU1 ABCクローンがHIV A クローンと同時形質導入したとき( 細胞系4)のどちらもみられないことを示している。このように酵素ベータ- ガラクトシダーゼを発現するHIV A クローンを有する細胞系内におけるアンチセンスA 配列の存在はこの酵素の生産を妨げる。
c)抽出液中のベータ- ガラクトシダーゼ活性の発現:
可溶化分析による酵素活性測定( 図39、データ上部) のため、対数増殖期培養細胞から超音波破砕か凍結融解の繰り返しのどちらかにより抽出液を調製した。対数増殖期の細胞(5×106cells/ml)を10 mM Mg++と1 mM Ca ++を含むPBS で洗浄して培地を除いた。洗浄した細胞を250 mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5) に懸濁し、3 回凍結融解を行なうか代わりに最大出力で 5分間超音波破砕した。粗溶解液を遠心分離し、ラクトースアナログONPG(Sigma) の加水分解により上清中で酵素活性を測定した。この基質が酵素により切断されると黄色のONP 化合物を生じる。このようにベータ- ガラクトシダーゼ活性は420 nmにおける吸光度の変化をみることでモニターできる。形質導入していない細胞からの抽出液37℃で一晩インキュベートしても色が生じなかったのに対して、HIV A クローンを安定に形質導入した細胞からの抽出液は37℃、30分以内に黄色を呈した。
5 つの細胞系をこの可溶化分析により分析し、その結果を表5 に報告する。この表からU1抗-A形質導入細胞は測定可能な量のベータ- ガラクトシダーゼ活性を有していないことが判明した。( 系2 、5 と系3 を比較せよ。) また、U1抗-ABCクローンも測定可能な量のベータ- ガラクトシダーゼ活性を示さないことが判明した。( 系2 、5 と系4 を比較せよ。) これらの結果は塩基配列中にA 標的をクローン化したクローンのベータ- ガラクトシダーゼ活性の生産へのU1抗-Aと抗ABC クローンの影響のin situ 分析から得られた結果を確かめるものである。
【0089】
〔実施例22〕
無症候性HIV 陽性患者に対して病因歴; 身体検査, CBCs, 分画計測(differential counts), 血小板計数をふくむ血液化学; グルコース、カルシウム、タンパク質、アルブミン、尿素、リン酸を含む血液化学; 血中尿素窒素と血中クレアチン; 尿検査; 心電図と胸部 X線写真; p24 抗原レベル; CD4 計数; viral load検出のためのPCR を含む処理前評価が行われた。基礎データを得るために細胞摘出に 4週間先立ち、毎週p24 抗原とCD4 計数、PCR を行ない、処理期間中 2週間毎にこれらの検査を続けた。
患者から採血し、Ficoll-Hypaque遠心分離により末梢血単核細胞を赤血球や好中球から分離した。洗浄後、マウス抗ヒトCD8-コートフラスコ(CELLector TM Flasks, Applied Immune Sciences)の使用によりPBMCs をCD8 + 細胞から除去した。フラスコの表面に吸着しなかった細胞をフローサイトメトリーにより分析し、無血清培地中でOKT3抗体により活性化した。
OKT3活性化細胞を60units/mlのIL-2を含む新しい培地に1-2 ×105cells/ml となるように再懸濁した。細胞は約 2×106 まで増殖した。
HIV と正反対のアンチセンスRNAの発現のための塩基配列を含むレトロウイルスベクターをpackaging cell line 中で増殖させた。構築したDNA( 例 F1に記載) をネオマイシン耐性マーカーを有するレトロウイルスベクターLNL6に導入した。細胞を約105 の濃度になるように培養液に懸濁してMOI が約1.0 となるようにレトロウイルスベクター感染細胞の培養上清と混合することにより形質導入した。5mg/mlの硫酸プロタミンを加え、混合液を37℃で 6時間インキュベートした。細胞を 3回洗浄し、培養培地を含むG418に移した。
この形質導入工程は 3日連続して毎日繰り返した。
G418選択培地中で7 日後、G418を除き、細胞を増殖因子( 上記) 存在下で増殖させた。充分量の細胞が得られたら、細胞を集め、生理食塩水で洗浄、懸濁して患者に注入した。細胞表現型はフローサイトメトリー測定により測定した。このアンチセンス処理は可溶化CD4 タンパク質による処理により補足される。(Husson et al., 1992) の方法によるHIV 治療の施与後すぐに施与を開始する。この補足遺伝子治療はAZT の同時投与によりさらに補足される。
上記記載の本発明の詳細な説明により当業者にとって明白な多種変更利用が可能であろう。そのような利用はすべて以下の請求項において述べられるように本発明の範囲および精神に含まれている。

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、細胞あるいはこのような細胞を含む生物学的システムの中で生物学的機能を保有する組成物で、化学的修飾によって保有されている生物学的機能に加えて更に有用な生物学的機能を付加するであろう組成物を提供することができるため、産業上利用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)核酸成分に共有的又は非共有的、またはバインダーを介して、またはこれらの組合せによって結合するセグメントを有する少なくとも一個の第1のドメインと、対象とする原核または真核細胞に非共有的に結合するセグメントを有する少なくとも一個の第2のドメインとからなる非自然部分と、
(b) 核酸成分とからなり、
上記核酸成分に対する一個または二個以上の第1のドメインは上記細胞に対する一個または二個以上の第2のドメインとは異なっており、そして上記第2のドメインは上記核酸と共有的に結合されていることを特徴とする組成物。
【請求項2】
該非自然部分はバインダーからなり、該バインダーは標的細胞に対する第2のドメインを少なくとも一個有するか、または核酸成分に対する第1のドメインを少なくとも一個有するか、または核酸成分と標的細胞の両方に対するドメインを少なくとも一個有し、該バインダーと該ドメインとは同一かまたは異なっており、そして該バインダーはポリマー、マトリックス、支持体、または上記のいかなるものの組合せである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記第1のドメインの上記核酸成分に対する非共有的な結合は、イオン相互作用および疎水的相互作用、またはそれらの組合せから選択されるか、あるいはリガンド結合受容体によって仲介される特異的コンプレックスからなる請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該核酸成分に対する第1のドメインと対象となる該細胞が天然のものであり、該バインダーが該核酸成分に天然の結合部位以外で結合されており、また該バインダーが修飾されたフィブロネクチンあるいはポリリジンあるいは両者からなる請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
対象となる該細胞が生物の中に含まれている、あるいはさらに対象となる細胞からなる請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(a) 請求項1に記載の組成物を提供すること、および(b) ヒトを除く生体内あるいは生体外で該組成物を投与すること、からなる細胞に核酸成分を導入することを特徴とする方法。
【請求項7】
対象となる細胞に核酸成分を導入するためのキットであり、該キットは一まとめにした容器あるいは組合せで、(a) 該核酸成分に対する少なくとも一つの第1のドメインと、対象となる該細胞に対する第2のドメインからなる非天然部分と、(b) 核酸成分からなり、必要に応じて(c) バッファーと指示書が添付されていることを特徴とするキット。
【請求項8】
請求項1記載の核酸成分に対する第1のドメイン、または対象となる原核あるいは真核細胞に対する少なくとも一つの第2のドメインからなっており、上記第1のドメインは対象となる原核あるいは真核細胞に結合されている部分からなり、上記一つあるいは二つ以上の第2のドメインは非二本鎖形である核酸成分に共有的に結合されている部分からなることを特徴とする組成物。
【請求項9】
第1のドメインの対象となる原核あるいは真核細胞に結合されている部分または上記第2のドメインの非二本鎖形である核酸成分に共有的に結合されている部分はバインダーからなり、上記バインダーと上記第1のドメインまたは第2のドメインとは同一あるいは相異なっており、また上記バインダーはポリマーマトリックス、支持体、あるいは上記のいかなるものの組合せである請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
上記第1のドメインまたは第2のドメインが共有結合および非共有結合、あるいはこれらの組合せから選択され、そして該非共有結合はイオン相互作用または疎水性相互作用あるいはこれらの組合せから選択されるかあるいは該非共有結合はリガンド結合性受容体により仲介される特異的なコンプレックスを含むような請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
さらに対象となる該細胞を含むかあるいは対象となる該細胞が生物の中にある請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
細胞へ核酸成分を導入する方法であり、該方法は(a) 請求項8に記載の組成物を提供することおよび(b) 上記組成物を生体内あるいは生体外で投与することからなることを特徴とする細胞へ核酸成分を導入する方法。
【請求項13】
対象となる細胞に核酸成分を導入するためのキットであり、該キットは一まとめにした容器あるいは組合せで、(a) 請求項1に記載の核酸に対する第1のドメインまたは対象となる細胞に対する第2のドメインからなり、上記第1のドメインは対象となる細胞に結合されており、上記第2のドメインは非二本鎖形である核酸成分に共有的に結合されている部分からなり、必要に応じて(b) バッファーと指示書が添付されていることを特徴とするキット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2009−100782(P2009−100782A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34845(P2009−34845)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【分割の表示】特願平8−360043の分割
【原出願日】平成8年12月16日(1996.12.16)
【出願人】(597020845)エンゾー セラピューティクス インコーポレイティド (4)
【氏名又は名称原語表記】ENZO THERAPEUTICS INC.
【Fターム(参考)】