説明

治療への応用性が高いことで知られている蛋白質を生産するための高転写性活性細胞株

【課題】治療への応用性が高いことで知られている蛋白質を生産するための高転写性活性細胞株において、転写性が高い活性箇所で関心対象の蛋白質をコードする配列の融合を含む、細胞株を発生させることにある。
【解決手段】プロセスは、少なくとも1つの細胞で構成される細胞株を発生させるプロセスにおいて、細胞のゲノムの高転写活性領域に特異リコンビナーゼ認識サイトを融合させるステップと、その細胞のゲノムの、特異リコンビナーゼ認識サイトの下流に転写終了信号をコードする核酸配列を融合させるステップとで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療への応用性が高いことで知られている蛋白質を生産することを目的として、転写性が高い活性箇所で関心対象の蛋白質をコードする配列の融合を含む、細胞株を発生させるためのプロセス、及びそのプロセスを用いて発生された細胞株に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの発展の結果として、現在では、遺伝子組み換え蛋白質の生産が生物医学領域での重要な活動となっており、診断と治療の両方の分野での多数の適用例がある。分子及び細胞工学の分野での経験と知見も蓄積されてきており、現在では、いろいろなホスト細胞発現システムにおいて大量の遺伝子組み換え蛋白質を生産することが可能になってきている。
遺伝子組み換え蛋白質を発生させるためには種々の生物系を用いることができ、バクテリア(1,2)、イースト菌及びその他の黴類(35)、植物(6)、昆虫細胞(7、8)、そして、哺乳動物の細胞(9−12)などがその例である。哺乳動物の細胞が治療目的の複合遺伝子組み換え蛋白質の生産のために最も一般的に用いられている系(例えば、モノクローナル抗体)であるが、それは、合成された遺伝子組み換え蛋白質の集合化、グリコシル化、及び修飾に関する翻訳後の能力が高いからである(10,11)。
残念なことに、哺乳動物の細胞の天然の生産性は、バクテリアやイースト菌で得られる発現レベルと比較すると限定されたものである。これは、発現ベクターのホスト細胞ゲノムへの融合が稀にしか起こらないケース(Gorman & Bullock 2000によれば1/10,000、参考文献13)であり、挿入箇所も融合されたコピーの数も、従って、その結果としての発現レベルも制御できないからである。このタイプの生産システムを改善する試みがいろいろな方式で行われており、それは、発現ベクターとその融合方法、それらの細胞とその培養及び遺伝子増幅の方法などである(14−26)。
これらのすべての努力は、産業規模の生産で用いられる細胞株、つまり、CHO(14、25,27−29)とNSO(22、30、31)細胞株、及び、HEK293(32,33)及びBHK(34−36)細胞に向けられている。しかしながら、生産性が高いクローンの選択が依然として多くの場合に不安定なステップであり、それは、発現ベクターの宿主細胞ゲノムへの融合がランダムに起こるので非常に多数の核酸導入因子のスクリーニングを伴うからである。発現ベクターがゲノムに融合してしまうと、遺伝子組み換え蛋白質が発現されるレベルは『位置効果』、つまり、融合遺伝子座の遺伝的環境に強く依存する(37,38)。従って、そのゲノムの転写的に不活性な箇所への発現ベクターの融合は発現レベルを低くしてしまうか、あるいは発現がまったく起きない結果につながり、一方、転写活性の高い箇所への融合は高レベルの発現をもたらす可能性が高くなるのである。
ほとんどのゲノムは転写的に不活性な状態にあるので、通常は1つの生産性の高いクローンを確認するために非常に多数の核酸導入因子を選別することが必要になる(22)。
【0003】
この『位置効果』を制御するために、いろいろな戦略が検討されている。1つの方式は、遺伝子座制御領域(LCR)配列、あるいはアイソレータを用いて位置効果をなくしてしまうやり方である(39−42)。この場合、そのトランス遺伝子の発現はベクターの融合コピーの数とその遺伝子組み換え蛋白質の発現を調節する外因的配列の有効性のみに依存することになる。
別の方式は、転写活性を高めるためにクロマチンを局所的に修飾することで位置効果をなくす方法に基づいている(UCOE)(43)。
トランス遺伝子が高度に発現される遺伝子座でベクター融合を起こさせることによって融合の乱雑性をなくそうするいろいろな戦略も試みられてきている。これを行うためには、そのトランス遺伝子を特徴づけが十分に行われている遺伝子に向かわせるか(Hollis GF,米国特許第6,750,041)、あるいは転写的に活性であることが分かっている箇所に向かわせる(44,45、Reff MR,米国特許第6,841,383)ことができる。この方式では、融合イベントを制御し、定常的な、そして、可能であれば、高レベルのトランス遺伝子の発現が保証されている遺伝子座に向かわされる。従って、この形質導入プロセスは、もはやランダムなイベントではなく、再現が可能になり、このことは、スクリーニング及び特徴づけステップは簡略化されて1つの形質導入ステップが別の形質導入ステップに移行しても同じようなレベルの生産性が達成できることを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,750,041号
【特許文献2】米国特許第6,841,383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
標的を定めた発現ベクターの融合は、相同性遺伝子組み換えによって実現することができる(Reff MR,米国特許第6,841,383;Hollis GF、米国特許第6,750,041;46,47)。しかしながら、このタイプの遺伝子組み換えはイースト菌やその他の菌類では一般的に行われているが、より高度の真核生物においては比較的稀で、そのことがそうした生物におけるその開発の重大な障害になっている(47) 。その一例として、哺乳動物の細胞においては、相同性遺伝子組み換えの頻度とランダム融合の頻度との割合は1/100から1/5,000の範囲である(48)。相同性遺伝子組み換えを促進させるために考案された補完的な方式はメガヌクレアーゼ(例えばI−SceI)を用いてDNA内に切断箇所をつくり出す手順を含んでいる(49)。
もうひとつの方式は、Cre(51,52)及びFlp(53,54)リコンビナーゼとして知られるリコンビナーゼ(47、50)を利用している。真核細胞内である種の遺伝子を標的とするために、P1バクテリオファージのCre−loxp遺伝子組み換えシステムが採用され、用いられている(Sauer BL,EP0220009)。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(44)のゲノムへのCreリコンビナーゼを用いた向標的融合が例として述べられている(44)。この遺伝子組み換えシステムはそのゲノムの特定の遺伝子座からの再現可能な発現を確実に行わせてくれるので有望である。しかしながら、その方式は、レポータ遺伝子の再現可能な発現を保証してくれるだけで、問題の遺伝子の高レベルの発現を保証してくれるわけではない。
この問題を緩和するために、安定した発現システムを用いることができる細胞株がそのゲノムの転写活性領域でFRT遺伝子組み換え箇所を用いてつくりだされている(例えば、Flp−In(登録商標)及びインビトロゲン細胞株)。転写活性の高い領域内の箇所での発現ベクターの融合はFlp−FRT遺伝子組み換えで媒介され、それによって問題の遺伝子の高レベルの発現が確実に行われる。しかしながら、利用できるFlp−in細胞株(293、CHO、BHK、3T3)が、それらの細胞の内因性翻訳後修飾メカニズムの故に、モノクローナル抗体などのある種の遺伝子組み換え蛋白質の産出に最適化されるとは限らない。加えて、これらの細胞株のゲノムは、その遺伝子組み換え箇所が転写活性の高い領域に融合されている個人を選択できるように工夫された外来性配列を含んでいる。
後の段階で、問題の蛋白質の産出を調整することができる抵抗遺伝子あるいは調整配列(プロモータ、エンハンサ、polyA)を用いる能力を限定することを回避するために、どんな活性配列(プロモータ、エンハンサあるいは抗生抵抗付与遺伝子)をまったく含まない『宿主』細胞を有することが好ましい。最後に、レポータ遺伝子が問題の蛋白質と共発現されるという可能性は、特に医療的な目的ための蛋白質を産出する細胞株の分子工学に関する厳しい規制を受ける医療用蛋白質の産出となると、複雑なチェック手順を必要とする場合がある。
より最近の例として、Kitoなど(45)は、GFPをレポータ遺伝子として用いて、CHO細胞の高度に生産性の高いクローンを選択するためにCre−loxP方式を採用し、増幅後に160mg/lに近い発現レベルを達成した。しかしながら、上に述べたFlp−In細胞株を用いた場合と同様に、この戦略は発現のための宿主として用いられる細胞株内に多くの活性配列が存在していることを前提としている。
医療用遺伝子組み換え蛋白質の生産は、医療目的の蛋白質を産出する細胞株の分子工学に関する厳しい規制を受けるので、これらの細胞内での活性配列の存在は登録手順を複雑にし、この方法でつくられる薬用生成物の開発手順の遅らせることになる。
従って、医療用蛋白質としてしられている産業目的のためのいずれかの蛋白質を、簡単なプロセスで生産するために用いることが出来る新しい、生産性が高く時間的にも安定した細胞株をつくりだすことは、真核細胞、特に哺乳動物の細胞における遺伝子組み換え蛋白質の産出を改善するための重要な一歩となるであろう。
【0006】
本発明の範囲内の種々の主題に従って、FRTサイトでの融合をチェックするための目的で、あるいは、本発明のグローバルな展望においては、そうした蛋白質の産業規模で生産するために、細胞内で発現できる蛋白質について触れる。
以下の説明と請求項に述べられているように、この発現と言う用語は、細胞株が、その細胞内に存在しているかあるいは存在していない蛋白質を産出し、それらの蛋白質をそれらの内在的発現レベルを上回るレベルで過剰に発現することを意味している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つの細胞で構成される細胞株を発生させるプロセスにおいて、
− 前記細胞のゲノムの高転写活性領域に特異リコンビナーゼ認識サイトを融合させるステップと、
− 前記細胞のゲノムの、前記特異リコンビナーゼ認識サイトの下流に転写終了信号をコードする核酸配列を融合させるステップと、
で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、転写性が高い活性箇所で関心対象の蛋白質をコードする配列の融合を含む、細胞株を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はpTV1向標的ベクターを示す図である。(実施例)
【図2】図2はpFlpeリコンビナーゼ発現ベクターを示す図である。(実施例)
【図3】図3はpT125FRT発現ベクターを示す図である。(実施例)
【図4】図4はT125−IG24ベクターを示す図である。(実施例)
【図5】図5はFlpリコンビナーゼによる上記向標的ベクターの欠失あるいは切除の根底にあるメカニズムの概略図である。(実施例)
【図6】図6はFlpリコンビナーゼによる上記発現ベクターの再融合の根底にあるメカニズムの概略図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、治療への応用性が高いことで知られている蛋白質を生産するために、転写性が高い活性箇所で関心対象の蛋白質をコードする配列の融合を含む、細胞株を発生させることにある。
【0011】
図1〜図6は、この発明の実施例を示すものである。
説明、要約、及び請求項の記述における一般的なルールとして、以下の用語は(特に指定がない限り)以下のような意味(定義)を持っている。
本発明においては、『核酸配列』とは、5’末端から3’末端までで読み取られるヌクレオチドの一本鎖あるいは二本鎖オリゴマーあるいはポリマーを意味する。『核酸配列』という用語は天然由来あるいは合成されたDNAあるいはRNA又はDNA/RNAハイブリッドの分子を意味する場合もある。本願で用いられている塩基命名方式では、特に別の指定がない限り、一本鎖ヌクレオチドの左端がその5’末端に対応する。
本発明においては、『DNA分子』とは、天然のものであれ合成されたものであれヌクレオチドの鎖で構成された一本鎖あるいは二本鎖オリゴマーあるいはポリマーを意味し、限定されるものではないが、遺伝子、一組の遺伝子、遺伝子フラグメント、コード配列及び非コード配列の混合物、調節塩基配列、あるいはRNA分子の配列に対して相補的な配列などで構成されている。
本発明においては、『プロモータ』あるいは『プロモータ配列』とは、RNAポリメラーゼの認識と結合に関与する翻訳開始コドンの上流にある天然あるいは合成された核酸配列を意味する。プロモータ配列はこのように下流のコード配列の転写の開始を援助する。こうしたプロモータは当業者には公知のもので、バクテリア性、ウイルス性、真核生物性、イースト菌性あるいは哺乳動物のプロモータを含み、プロモータの選択は発現を実現するために選ばれる宿主細胞のタイプに依存する。
本発明においては、『ベクター』とは、核酸、核酸を運搬することがでいる核酸分子、あるいは例えばプラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス・ゲノム(染色体)、あるいはファージ・ゲノムなどの宿主細胞内で自律的な複製を行うことができ、そして、DNA分子をクローンするのに用いることができるDNA分子に基づく媒介物を意味している。考慮の対象となる細胞性宿主とベクターの構成核酸配列の性質に基づいて、ベクターは独立体として、あるいは宿主のゲノムに融合された状態のいずれかで、さらに宿主細胞の核内部かその細胞質内のいずれかで安定的に複製することができる。
本発明においては、『プラスミド』とは、環状あるいは直線化されている場合もある、細胞内で増幅できる独立のDNA分子を意味する。プラスミドという用語はいわゆる『発現プラスミド』及び『非発現プラスミド』と呼ばれるプラスミドを指す。プラスミドが宿主細胞によって保持されていると、その細胞内で独立体として安定的に増幅されるか、あるいは宿主のゲノムに融合される。
本発明においては、『ペプチド』、『ポリペプチド』あるいは『蛋白質』とは、共有ぺプチド結合によって結合されたアミノ酸の一次配列を意味する。一般的に、ペプチドは蛋白質より短く、通常2−50の範囲で少数のアミノ酸を含んでいる。ポリペプチドという用語はペプチドと蛋白質の両方を含む場合もある。ペプチド、ポリペプチド、あるいは蛋白質は天然由来のものでも、遺伝子的に組みかえられたものでも、あるいは合成されたものであってもよい。
本発明においては、『転写終了信号』は、転写された領域の末端に位置し、RNAポリメラーゼによって上記領域の転写の終了を誘発させる核酸配列を意味する。本発明に関連する転写終了信号の例は、例えば、ポリアデニル化配列、例えば、ポリアデニル化配列『SV40初期ポリアデニル化信号』、そしてウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列などである。
この発明においては、『ポリアデニル化配列』あるいは『ポリA』は、転写の終了と初期転写RNA分子のポリアデニル化を開始させるDNA配列を意味する。ポリAテールを持たない転写物は不安定ですぐ壊れてしまうことが多いので、通常は効果的な転写物ポリアデニル化が望まれる。
哺乳動物のメッセンジャーRNAの効率的な切断とポリアデニル化を行うためには、少なくとも2つの信号要素:つまり、一つは処理される箇所から7−30の塩基対分だけ上流に存在しているAAUAAA配列と、切断箇所の3’末端にあるGU又はUをたくさん含む配列を必要とする。
本発明においては、『弱活性』あるいは『低効率性』ポリアデニル化とは、転写終了及び転写物のポリアデニル化の効率的な実施を可能にしてくれないポリアデニル化配列と解されるべきである。その結果、少量の転写物が得られるだけか、そして/あるいは転写物がかなり不安定で、ほとんどの場合、すぐ崩壊してしまい、翻訳が不可能になってしまう。より特殊なケースでは、『低効率性(あるいは弱活性)のポリアデニル化配列』とは、『SV40初期ポリアデニル化信号』によって誘発されるレベル以下のレベルで転写終了及び転写物のポリアデニル化を行わしめるすべての配列を意味していると解されるべきである。こうした課題を達成することを可能にするすべてのポリアデニル化配列は、本発明の枠組みで用いることが可能である。より具体的には、これらの配列は、例えばSV40初期ポリAあるいはアデノウイルスL1ポリA(71)などのような転写の終了と転写物のポリアデニル化に対する弱活性ポリアデニル化信号を有している完全なままのポリアデニル化配列か、あるいは、突然変異も欠損もない配列と比較すれば転写終了と転写物のポリアデニル化の実施レベルを低下させるように突然変異された、あるいは欠損ポリアデニル化配列であってもよい。ポリアデニル化配列を突然変異させ突然変異されていない配列と比較すればポリアデニル化信号の効率を低下させるようなポリアデニル化配列の突然変異及び/又は欠損の例として以下のようなことを示すことができる。つまり、AATAAA要素とGTをたくさん含んだ領域との間の距離の増加(66)、AATAAAヘキサヌクレオチドの上流に存在している1つあるいはいくつかのヌクレオチドからのSV40ポリAの欠失(67)、AATAA配列の上流の13個目から48個目までのヌクレオチド間に存在しているある種の要素の欠失(68)、AATAAA配列の下流にあるGTをたくさん含んだ配列の欠失あるいはAATAAA配列とGTを多量に含む領域の間に存在する空間の修飾(69)、あるいはAATAAA配列の上流に存在するUSE(上流配列要素)領域の突然変異あるいは欠失(70)などで、これらのリストは限定的なものではなく例示的なものである。
本発明においては、『単離された』とか『精製された』という表現は、人間の介入によってもたらされた天然の状態の何らかの修飾を意味する。従って、天然に存在し、天然の環境から修飾された、あるいは抽出されたすべてのものは『単離された』あるいは『精製された』と言われる。『単離された』物質は天然の環境内で他の分子から分離された、あるいはクローニング、増幅及び/又は化学合成によって発生されたすべてのポリヌクレオチドあるいはすべてのペプチド/ポリペプチド/蛋白質を意味している。加えて、形質導入、遺伝子操作、あるいは他の何らかの方法によって生物に導入されたポリヌクレオチド、ペプチド、あるいは蛋白質も、それらの物質がその生物に以前から存在しているものであっても『単離された』とみなされる。
本発明においては、『発現』とは、例えばプロモータなどの調節塩基配列の制御下にある特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を意味する。
本発明においては、『過剰発現』とは、任意のコード配列に対する細胞1つあたりの発現レベルが本発明による構成物でトランスフェトされていない細胞内での対応する内発性コード配列によってもたらされるレベルよりかなり高い(例えば2倍、理想的期には10倍程度、そして場合によっては100倍以上)の場合を意味している。
本発明においては、『抗体』とは、特定の抗原に免疫的に結合し、そして、タイプによってはポリクローナル及び/又はモノクローナル抗体を含む免疫グロブリン分子を意味する。この用語はキメラ性抗体(例えば、ヒト化されたマウスあるいはウサギ抗体)及び不規則接合抗体(例えば、二重特性抗体)など遺伝子的に修飾された形態も含んでいる。『抗体』と言う用語は抗原結合抗体フラグメントを含め、抗原と結合することができるすべての形態の抗体も含んでいる。
本発明においては、『トランスフェクション』あるいは『トランスフェクト』とは、細胞が外来性DNAを取り込んでその細胞自体のゲノムに融合させるプロセスを意味している。
本発明においては、『細胞株』とは、同じ前駆細胞の系列に属し、すべてが親細胞と同じ遺伝子的特徴を有する細胞のグループを意味する。1つの細胞株はin vitroで数代にわたって安定的に再生する能力を有していることも特徴としている。
本発明においては、『転写活性が高い領域』とは、その内部でクロマチン構造あるいは調節塩基配列がその領域内あるいはその領域に近い場所でかなり増強された転写を示す、生物内のゲノム性あるいは染色体DNAの領域を示す。こうした転写活性が高い領域での転写速度はその生物のゲノムで通常観察される平均的な転写速度より高く、好ましくは2倍、好適には10倍、さらには50倍もしくは100倍以上高い。例として言えば、YB2/0細胞株(ATTC CRL 1662)の場合、転写活性が高い活性領域は少なくとも5そして好ましくは少なくとも10のpcd値(24時間での細胞1個あたりの蛋白質のピコグラム)を可能にすると考えられている。
本発明においては、『転写活性が低い領域』とは、クロマチン構造を示す、あるいはその領域内で、あるいはそれに近い領域で遺伝子の転写頻度を相当程度抑制する、あるいは完全に阻止することができる生物内のゲノム性あるいは染色体DNAの領域を意味する。そうした領域の転写速度は通常、その生物のゲノムで通常観察される平均転写速度より通常は低く、好ましくは半分以下、好適には10分の1以下、さらには50分の1以下、場合によっては100分の1以下である。そうした転写活性が低い領域での転写速度は非常に低くて測定できなかったり、ゼロである場合もある。
本発明においては、『リコンビナーゼ』あるいは『サイト固有リコンビナーゼ』は、2つの核酸分子にそれらが相互に結合するように作用する酵素を意味している。遺伝子組み換えは特徴づけがよく行われている生理プロセスであり、このプロセスは同一あるいはほぼ同様の(相同性)配列を有する2つの核酸分子を切断するステップを含み、その後、2つの分子を再結合して最初の分子のそれぞれの1つの領域を他方の分子の対応する領域に接合させるステップを含んでいる。2つのタイプの遺伝仕組み換えが観察されている。第1のタイプは『古典的』あるいは『相同性』遺伝子組み換えと言われるもので、『万能』リコンビナーゼとして機能することができる相同性ヌクレオチド配列を有するいずれの分子ペアにでも適用できる。これに対して、『サイト固有遺伝子組み換え』と呼ばれる第2のタイプにおいては、相同性分子はリコンビナーゼの基質として作用し、『サイト固有遺伝子組み換え』と呼ばれる特定のヌクレオチド配列を担持することができなければならない。多数のサイト固有遺伝子組み換えが先行技術で述べられており、そのなかには大腸菌P1バクテリオファージによるものも含まれている。特に、用いられる特定の配列とリコンビナーゼは、Tn3トランスポゾン・リゾルバーゼあるいはラムダ・バクテリオファージ・インテグラーゼ・ファミリーなどの別の構造クラスに属している場合もあり得る。Tn3トランスポゾン・ファミリーに属しているリコンビナーゼの中にはTn3トランスポゾン・リソルバーゼあるいはTn21及びTn522トランスポゾン(Starkなど、1992);muバクテリオファージのGinインベルターゼあるいはさらにRP4フラグメントなどのプラスミド・リゾルバーゼなどがある(Abertなど、Mol.Microbiol.12(1994)131)。λバクテリオファージ・インテグラーゼ・ファミリーに属するリコンビナーゼの中には、λバクテリオファージ・インテグラーゼそれ自体(Landyなど、Science 197(1977)1147)、p22(Leongなど、J.Biol.Chem.260(1985)4468)、ヘモフィルス・インフルエンザ菌HP1(Hauserなど、J.Biol.Chem.267(1992)6859),P1ファージ Creインテグラーゼ、pSAM2プラスミド・インテグラーゼ(350341EPA EP 350341),あるいはさらに、2μプラスミド・FLPリコンビナーゼ及び大腸菌XerCとXerDリコンビナーゼがある。
本発明においては、『遺伝子組み換え認識サイト』とは、リコンビナーゼの基質として作用することができる核酸配列を意味している。
この発明においては、『レポータ遺伝子』とは、そのレポータ遺伝子配列をその遺伝子の発現に必要なすべての因子を含んでいる細胞内に導入した場合に、簡単に検出できるか、及び/又は定量される遺伝子生成物、通常は酵素をコード表現する配列を有するポリヌクレオチドを意味する。本発明で用いることができるレポータ遺伝子の例としては、例えば、maxFP−green蛋白質とその派生物、ルシフェラーゼ、グリーン蛍光蛋白質(GFP)及びその派生物、あるいはリーフ・コーラル蛍光蛋白質(RCFP)、そしてlacZ遺伝子によってコードされるベータ・ガラクトシダーゼなどの蛍光蛋白質などである。
本発明においては、『関心対象の蛋白質』とは、産業的、治療的、あるいは予防上の価値があると思われるすべてのペプチド、ポリペプチド、あるいは蛋白質を意味している。本発明による細胞株内で発現できる関心対象の蛋白質は以下のものから選択される。
− 治療的活性を有する蛋白質、例えば、予防的措置形態も含むヒトや動物において何らかの形態の識別された疾患や病理学的に損傷した機能において生理学的効果が有効であると認識されている蛋白質;そうした蛋白質としては、ペプチド、ポリペプチド、ホルモン、酵素及び関連する種などであり、好ましくは、消化器系、膵臓系、胆管系、抗ウイルス系、抗炎症系、呼吸器系、抗微生物系、血液系、神経系、心臓血管系、眼科系、抗原性、脳髄系、抗腫瘍性、免疫刺激性及び免疫調節機能などで活性を示す群から選択される活性を有するポリペプチド;特に好ましい実施の形態では、上記治療活性を有する蛋白質あるいはポリペプチドはインシュリン、ヒト成長ホルモンあるいはウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激性ホルモン、毛包刺激性ホルモン、黄体形成ホルモン、インターフェロン−アルファ、−ベータ、−ガンマ、あるいは例えばインターフェロン13などのインターフェロン、血管上皮成長因子(VEGF)、ホルモン受容体あるいは成長因子のための受容体、インテグリン、A又はD蛋白質、リュウマチ因子、骨派生神経栄養性因子(BDNF)などの神経栄養性因子、ニュートロフィン(NT−3、NT−4、NT−5あるいはNT−6)、NGF−ベータのような神経成長因子、血小板派生成長因子(PDGF)、FGFあるいはbFGFなどのような線維芽細胞成長因子、皮膚成長因子(EGF)、TGF−アルファとTFG−べータ1、TFG−べータ2、TFG−べータ3、TFG−べータ4あるいはTFG−べータ5を含むTFG−べータなどの形質転換成長因子(TGF)、タイプI又はタイプIIインシュリン(IGF−I及びIGF−II)、あるいは(1−3)−IFG−I(脳のIGF−I)の1つに類似した成長因子、ケラチノサイト成長因子、インシュリンに似た成長因子結合蛋白質類、CD−3、CD−4、CD−8あるいはCD−19などのCD蛋白質類、エリスロポエチン、骨誘発因子、免疫毒素、骨形態形成蛋白質(BMP)、M−CSF、GM−CSFあるいはG−CSFなどのコロニー刺激因子(CSF)、加齢加速因子、胃腸系、膵臓系あるいは胆管系リパーゼ、エラスターゼ、アルファ−1抗トリプシンなどの抗プロテアーゼ、プロテアーゼ類、オキシダーゼ、フィターゼ、キチナーゼ、インベルターゼ、セルラーゼ、キシナラーゼ、コラーゲンなどのような構造性蛋白質、ラクトフェリンなどのようなトランスフェリン、ヘモグロビンやヒト・アルブミンなどのような血液蛋白質、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子などの血液共同因子や凝集因子、蛋白質Cなどのような抗凝集因子、心房ナトリウム利尿因子、レニン、カルシトニン、グルカゴン、肺界面活性剤、ウロキナーゼあるいは組織固有プラスミノゲン・アクチベータ(t−PA)などのプラスミノゲン・アクチベータ、トロンビン、トロンボプロテイン、血球成長因子やアルファ−又はベータ腫瘍壊死因子、エンセファリナーゼ、ヒト炎症性蛋白質(MIP−1アルファ)、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン、リラキシン、DNase、サイトカイン、PANTESなどのケモカイン(通常は発現・分泌されるT細胞の活性化で調節される)、例えばIL−1からIL−10などのインターロイキン(ILS)、スーパーオキシド・ディスムターゼ、抗体、抗体のフラグメント、及び抗原などである。ポリペプチドあるいは蛋白質が抗体か抗体のフラグメントである場合、それは、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン重鎖、基本的には完全な免疫グロブリン分子、そしてFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、及びFvフラグメントなどとして知られているパラトープを担持しているすべての部分、免疫グロブリン軽鎖、及びFvフラグメントなどであってもよい。
− 多くの国で法令にしたがって皮膚だけで作用する化粧品としての活性を有する蛋白質及びポリペプチド、つまり、下層には浸透しない、言い換えれば真皮あるいは基底細胞に影響を及ぼさない化合物。そうした蛋白質あるいはポリペプチドは当業者にはよく知られており、その例としてはセラミド類、ケラチド類、加湿剤、抗菌剤、及びそれらに関連する化合物などである。
− 栄養補給食品としての活性を有する蛋白質あるいはポリペプチド、つまり、ヒトや動物の食べるものに通常見かけられるものと同じあるいは類似しており、食材あるいはその一部に部分的に含まれており、健康に有益な効果を有する化合物。本発明のこの部分に含まれる化合物のタイプとしては、フェニルアラニン・アンモニア・リアーゼ(PAL)、アレルゲン、例えば、バーチ(樺)、ポプラ、スーパーオキサイド、ジスムターゼ(SOD)及びそれらに関連した化合物が挙げられる。
本発明においては、『高抗生ドーズ』とは、少なくとも1g/l、好適には少なくとも4g/l、そして好ましくは8g/lの抗生ドーズを意味する。
【0012】
本発明は一つの側面で、少なくとも1つの細胞で構成される細胞形を発生させるプロセスを提供し、そのプロセスは以下のステップを含んでいる。
− その細胞のゲノムの高転写活性領域に特異リコンビナーゼ認識サイトの細胞のゲノムを組み込むステップ、及び
− その細胞のゲノムの上記特異リコンビナーゼ認識サイトの下流領域に転写終了信号をコードする核酸配列を組み込むステップ。好ましくは、転写終了信号をコードする核酸配列はポリアデニル化信号をコードする配列である。さらにより好ましくは、転写終了信号をコードする核酸配列はSV40初期アデニル化信号かアデノウイルスL1ポリアデニル化信号あるいはその他の上に定義したような低活性ポリアデニル化信号などの低活性ポリアデニル化信号の少なくとも一部をコードする配列である。
【0013】
本発明のもうひとつの好適な実施の形態によれば、本発明による上記のプロセスで用いられる細胞株の1つまたは複数の細胞は哺乳動物あるいは鳥類の細胞である。(修飾前の)最初の形態の細胞は以下のものを含む郡から選択されるべきである。つまり、YB2/0(ATCC CRL−1662)及びIR983Fなどとして知られているラット黒色腫細胞株、ナマルワあるいはPERC6などの他のヒト細胞を含むヒト黒色腫、CHO細胞株(CHO−K、CHOLec、CHO−Lec1、CHO Pro−5、CHO dhfr−、CHO Lec13)、あるいはWil−2、Jurkat, Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag 14、P3X63Ag8、653及びEBxから選択されるその他の細胞株。
本発明のプロセスの1つの好ましい形態によれば、上記特異リコンビナーゼ認識サイトが一連のステップを経て組み込まれるが、それらのステップとは少なくとも以下のようなものである。
− 共にリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの核酸配列の融合
− 両方ともリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの配列間でレポータ遺伝子をコードする核酸配列の融合
− 両方ともリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの配列間で関心のある蛋白質をコードする核酸配列の融合
− 両方ともリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの配列間で、選択マーカー、好ましくは抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子をコードする核酸の融合
このケースでは、リコンビナーゼ認識配列はloxP及び/又はFRT配列であってもよい。この関心対象の蛋白質は、例えば、抗体あるいは抗体のフラグメントであってもよい。
【0014】
上に述べた配列のすべての単一のコピーを組み込んでいる生産性の高い細胞だけを選択することも好ましい。さらに好ましいのは、pcd(1日24時間に細胞1個あたりの蛋白質のピコグラム数)が少なくとも5、好ましくは少なくとも10、さらに好ましくは少なくとも20、30、30、50、80あるいは100の細胞だけが選択される。
好ましくは、そして実質的に、上に述べた配列のすべてはその細胞上でのリコンビナーゼの作用を通じて切り出される。この場合、リコンビナーゼ活性はそのリコンビナーゼをコードする核酸配列を担持しているベクターからの細胞内でそのリコンビナーゼの共発現によって誘発することができる。
この発明の別の好ましい実施の形態によれば、上に述べた一連のステップでは、そこから上に述べた核酸配列が全てきりだされた、そして特異完全無欠のリコンビナーゼ認識サイトを担持している細胞を選択するステップを含む場合もある。
さらに好ましくは、これら一連のステップには、タイプIヘルペス・シンプレックス(HSV1−TK)のシミジン・キナーゼをコードすうる核酸配列を組み込むステップを含んでもよい。この場合、細胞は培養液にガンシクロビルを加えることによって選択することができる。実際に、この選択方法を用いることで、その培養液にガンシクロビルが存在していると、HSV1−TK核酸配列が決失された細胞だけが生き延びることになる。
上に述べた一連のステップには、特に好ましい場合、蛋白質またはポリペプチドをコードする核酸配列と選択マーカーをコードする核酸配列のすぐ下流のリコンビナーゼ識別サイトをコードする核酸配列を担持した発現ベクターで、好ましくはポリアデニル化配列を持たず抗生物質に対する抵抗性を付与するもので選択された細胞株をトランスフェトするステップを含んでいても良い。この場合、上記発現ベクターは、トランスフェクションと同時に誘発あるいは導入されるそのリコンビナーゼの作用によって、その特異リコンビナーゼ認識サイトに組み込まれる。目標サイトに融合された上記発現サイトを担持している細胞の選択も関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドの発現をテストすることで好適に行うことができる。好適に、これらの細胞は高抗生濃度の存在下、具体的には少なくとも1g/lあるいは2g/l、そして好ましくは4g/l又は8g/lの抗生物質投与量に対する抵抗性を基準として選択することができる。
特に好ましい形態では、上記関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドは治療用蛋白質あるいはポリペプチドで、一般には消化器官系、膵臓系、胆管系、抗ウイルス性、神経系、心臓血管系、眼科系、抗原性、脳髄系、抗腫瘍性、免疫刺激性、そして免疫調節機能などの活性をもったものから選択される。
【0015】
上に述べたプロセスのいろいろな段階のステップは特に好適な性質を有する1つあるいは複数の細胞株をつくりだす。従って、本発明のもうひとつの目的はその細胞のゲノムの高転写活性領域に安定的に融合される特異リコンビナーゼ認識サイトと、その特異リコンビナーゼ認識サイトのすぐ下流に存在する転写終了信号をコードする核酸配列を有する細胞株である。好ましくは、転写終了信号をコードするこの安定的に融合した核酸配列はポリアデニル化信号をコードする配列である。この転写終了あるいはポリアデニル化信号をコードする核酸配列はSV40初期ポリアデニル化信号あるいはその効率を変えるように修飾されたいずれかの他のポリアデニル化信号などのような低活性ポリアデニル化信号の全体あるいはその一部である。上にも述べたように、その細胞株は好ましくは哺乳動物由来のものである。
上に述べたような細胞株は、従って、好ましくは以下のものを含んでいる。
− 共にリコンビナーゼ認識サイトをコード表現する2つの核酸配列
− 共にリコンビナーゼ認識サイトをコードする上記2つの配列の間に関心対象の蛋白質をコードする少なくとも1つの核酸配列
− 選択マーカー、好ましくは抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子をコードし、ポリアデニル化配列を欠失しており、そしてそれぞれリコンビナーゼ認識サイトをコードする上記2つの配列の間に位置する少なくとも1つの核酸配列。この配列はそれ自体が前に述べた低ポリアデニル化配列のすぐ上流に存在しているリコンビナーゼ認識サイトのすぐ上流に存在している選択マーカーをコードする。
好ましくは、上に述べたように、上に述べたすべての配列の単一コピーがそれらの細胞株の細胞のゲノムに共に融合されている。さらに好ましい形態では、各細胞株は少なくとも5あるいは好適には少なくとも10のpcd値を有している。
この細胞株は、非常にに好ましい形態では、消化器系、膵臓系、胆管系、抗ウイルス系、抗炎症系、呼吸器系、抗微生物系、血液系、神経系、心臓血管系、眼科系、抗原性、脳髄系、抗腫瘍性、免疫刺激性及び免疫調節機能などで活性を示す蛋白質あるいはポリペプチドの群から選択される関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドを過剰に発現する。
【0016】
本発明のさらに別の目的によれば、この細胞株は出願番号CNCM1−3704で登録された資料YGM−1/10G10で確認されているものである(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM),Institute pasteur,25 rue du Docteur Roux,F−75724 paris Cedex 15に、2006年12月18日に登録された細胞株)。
本発明の別の目的によれば、上記の細胞株は出願番号CNCM1−3885で登録された資料YGM−2/3G5で確認されているものである(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM),Institute pasteur,25 rue du Docteur Roux,F−75724 paris Cedex 15に、2007年12月19日に登録された細胞株)。
この発明のさらに別の目的は、SEQ ID No.1で識別されている核酸のフラグメントを含む単離された核酸分子を提供する。この分子は高転写活性領域をしめし、従って、上に述べた他の配列の融合に用いることができる。明らかに、SEQ ID No.1の配列は適当な細胞のゲノム内に交雑によって高転写活性サイトをつくりだすために直接あるいは相補的な方法で用いることもできる。これは、配列リストにSEQ ID No.1で示されている核酸配列を担持しているベクターを用いることで達成できる。
本発明のもうひとつの特に好ましい目的は、少なくとも1つの関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドを産出するプロセスを提供し、このプロセスは上記の関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドを発現させるために上に述べたような細胞株を培養し、次いで、その蛋白質あるいはポリペプチドを収穫する少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴としている。上に述べたような、そして上に示した登録番号で識別されるこれらの細胞株はこのタイプのプロセスを実行するのに非常に好都合である。この場合、この関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドは好ましくは、消化器系、膵臓系、胆管系、抗ウイルス系、抗炎症系、呼吸器系、抗微生物系、血液系、神経系、心臓血管系、眼科系、抗原性、脳髄系、抗腫瘍性、免疫刺激性及び免疫調節機能などで活性を示す蛋白質あるいはポリペプチドの群から選択される。さらに好ましくは、この関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドは抗体かあるいは抗体のフラグメントである。
【0017】
以下に、この実施例についての詳細を説明する。
本発明の第1の目的は、哺乳動物の細胞のゲノムの目標サイトへの関心対象のDNA分子の挿入に基づくプロセスに関するものである。このプロセスはそのゲノムの高転写活性領域に融合された特異リコンビナーゼ認識サイトを有する細胞株を発生させる第1のステップを含んでいる。この第1のステップは以下のステップを含んでいる。
1)、『向標的ベクター』と称される第1の核酸の哺乳動物の細胞への融合。このベクターは、
(i)、リコンビナーゼ認識サイトに対して縦に並んだ2つの配列で、それらの間にレポータ遺伝子、関心対象の蛋白質と類似した蛋白質をコードする遺伝子、増幅を許可するセレクタ遺伝子、そして抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子が存在するが、ポリアデニル化配列は存在しない2つの配列と、
(ii)、第2のリコンビナーゼ認識サイト、つまり上記抗生物質抵抗遺伝子の5’末端の下流に存在するポリアデニル化サイトを含んでいる。
2)、上記向標的ベクターの単一のコピーを担持する『生産性の高い』細胞の選択
3)、リコンビナーゼを用いてのその向標的ベクターの切除
4)、上記向標的ベクターを喪失し、完全な特異融合リコンビナーゼ認識サイトだけを保持した細胞株をつくるための細胞の選択
本発明のプロセスによれば、上のステップ4)で選択された細胞株を構成する細胞はすべてそれらのゲノムの高転写活性領域に融合された特異リコンビナーゼ認識サイトを有している。
このプロセスのステップ1)で用いられる哺乳動物細胞の特徴の1つは、それが本発明のプロセスの実施の過程で融合されるリコンビナーゼ認識サイトのそれに類似した配列はまったく含んでいないということである。その結果、本発明による細胞株の細胞のゲノムに融合されたリコンビナーゼ認識サイトは、その細胞株の細胞のゲノムには他の同一な配列がないので、特異なものである。
この往路背巣のステップ1)で引き受けられた哺乳動物細胞の第1の核酸の融合は、先行技術で知られているいずれの方法を用いてでも行うことができる。1つの例として、リン酸カルシウム(CaPO)沈降法をあげることができ、この方法においては、沈降されたDNAが食細胞活動によって『取り込まれる』。あるいは、リポフェクション法もあげることができる。この方法は宿主細胞の膜に融合できる脂質小胞に融合されるDNAを被覆するステップを含んでいる。もうひとつの可能な方法は、電気穿孔法で、この方法では細胞に電気ショックを与えて関心対象のDNAを融合させる。さらに、前核微量注入法による方法も可能である。
【0018】
本発明によるプロセスの第1のステップで用いられる向標的ベクターは、2つのリコンビナーゼ認識サイトを含む核酸分子で構成されている。これらのサイトは相互にまったく同じであり、本発明のプロセスによってつくりだされる細胞株の特異サイトともまったく同一である。これら2つのサイトはDNAフラグメントを分岐しており、このDNAフラグメントはレポータ遺伝子、関心対象の蛋白質に類似した蛋白質をコードする遺伝子、抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子、そして、遺伝子増幅を可能にするセレクタ遺伝子を含んでいる。この向標的ベクターは又上記2つのリコンビナーゼ認識サイトの間に挿入される遺伝子の発現のために必要なすべての配列も含んでいる。これらの必要な遺伝子としては、プロモータ、エンハンサ、及びポリアデニル化配列などを挙げることができる。
トランスフェクトされる細胞のゲノムへの向標的ベクターの融合はランダムな状態で起きる。従ってこの向標的ベクターは、転写に関して不活性な領域や、比較的不活性な領域、やや活性のある領域、そして活性が高い領域に挿入される場合がある。向標的ベクターが高転写活性領域に挿入された細胞株がレポータ遺伝子の発現あるいは過剰発現を基準として選択される。
このレポータ遺伝子−検出分析が容易な生成物−はそのレポータ遺伝子が融合された周辺領域の転写活性のレベルを評価する手段となる。挿入された遺伝子座での転写活性が低いと、そのレポータ遺伝子の活性が低いということであり、対照的に、その遺伝子座での転写活性が高ければ、そのレポータ遺伝子の活性が高いということになる。
レポータ遺伝子の下流に位置する関心対象の蛋白質に類似した蛋白質をコードする遺伝子はトランス遺伝子を含んでいる細胞の蛋白質を分泌する能力を判定することを可能にしてくれ、このパラメータは細胞内で発現される蛍光蛋白質を用いて判定することはできない。簡単に検出することができるすべての蛋白質はこの目的のために使用することができる。本発明で用いることができる蛋白質としては、免疫グロブリン、成長因子、インターロイキン、刺激性因子、凝集因子、抗トリプシン及びアルブミンのための遺伝子の生成物などを挙げることができる。
抗生物質抵抗性遺伝子は向標的ベクターを担持している形質変換された細胞の選択を可能にしてくれる。選択は、形質転換された細胞を貞節な抗生物質と接触させて向標的ベクターを組み込んだ細胞だけが生き延びるようにさせることによって行われる。抗生物質抵抗性遺伝子の後にはポリアデニル化配列(ポリA)が続いており、これは対応するmRNA分子を安定化させる上で重要な役割を果たす(56−63)。抗生物質抵抗性遺伝子の発現を可能にする当業者に知られているどのポリアデニル化配列でも用いることが可能であるが、低活性ポリA配列を用いるのが好ましい。
好適に、このポリアデニル化配列はポリアデニル化性が低い配列、つまり、比較的に有効性の低いポリアデニル化配列である。その結果、向標的ベクターは転写不活性領域に挿入されていると、その抗生物質抵抗性遺伝子が抗生物質に露出された時にその細胞が生き延びるのに十分なほどの高いレベルでは発現されない。対照的に、その挿入座が高転写活性領域であると、そのポリアデニル化配列の『弱さ』が抵抗性遺伝子の生成物の発現を阻止せず、従って対応する細胞が抗生物質に対して抵抗性を示すことになる。そうした弱いポリアデニル化配列を用いることは、特に、選択手順が厳しい(つまり抗生物質の濃度が高い)場合に、スクリーンすべきクローンの数をかなり減少させ、関心対象の蛋白質に対して『生産性の高い』クローンの識別をやり易くしてくれる。
弱いポリアデニル化配列の例を挙げるとすれば、例えば、『SV40初期ポリアデニル化信号』を挙げることができ、この信号はいくつかの市販の発現ベクターで用いられている(64−66)。
好適に、細胞は抗生物質濃度が高い状況での抵抗性に関しても選択することができる。これら2つの選択ツールの組み合わせ、言い換えれば低活性ポリアデニル化配列の利用と培養液中の抗生物質の濃度を高くすることで、この選択方法を望ましい場所、つまりリコンビナーゼ認識サイトにトランス遺伝子が融合された細胞の選択を、転写活性が低い領域にリコンビナーゼに関する認識サイトが融合された細胞を選択することなしに行う上での特に好適な手段にしてくれる。実際、ポリアデニル化配列が低活性であるという事実は、このサイトのすぐ上流にある抗生物質に対して抵抗性を示す遺伝子が少ししか発現されないという効果をもたらす。従って、培養液に加えられる抗生物資の濃度が高いと(例えば1g/l以上、あるいは2g/l以上、または4g/l以上、さらには8g/l以上)、その抗生物質に対する抵抗性を有する遺伝子の十分に強い発現を可能にする領域にトランス遺伝子が融合された細胞だけが生き残り、効率の低い、あるいは活性が弱いポリアデニル化配列は生き残れない。このようにポリアデニル化配列の弱い活性と細胞培養液内に高濃度の抗生物質の添加ということを同時に行う選択方法はいくつかの利点を有しており、リコンビナーゼ認識サイト以外の場所にトランス遺伝子を融合させたクローンはその培養液内の高濃度の抗生物質の影響で死んでしまうので、クローン選択の作業負荷が低減する。さらに、このようにして選択されたクローンは先行技術に基づくプロセスで選択を行う方法と比較して、より高い生産能力を有している。
好適に、この向標的ベクターは選択された細胞にトランスフェトされる前に制限酵素を用いて直線化された細胞である。その細胞のゲノムDNAに融合される前にその向標的ベクターの複数のコピーが接合されるのを防ぐために、用いられる制限酵素は末端を鈍化しておかなければならない。さらに、トランスフェション手順で用いる必要がある向標的ベクターは非常に少量である。こうした特殊な条件により、その細胞ゲノムに融合されるベクターのコピーの数がかなり少なくなる。実際、切断をうまく行うためには、その向標的ベクターのたった1つのコピーだけがトランスフェクトされた細胞のゲノムに融合されているということが重要である。というのは、切断は実質的には存在している2つのリコンビナーゼ認識サイトの間でだけ起こるからである。同様に、本発明によるプロセスは、単一の高転写活性領域だけを標的にした場合だけうまく行うことができる。
【0019】
この向標的ベクターは第2のリコンビナーゼ認識サイトの下流にポリアデニル化配列も含んでいる。このポリアデニル化配列は関心対象の蛋白質に関する遺伝子を担持した異なったベクターを後で融合させるために利用するためのものである。従って、以下に詳細に述べるように、このポリアデニル化配列はリコンビナーゼ認識サイトに第2のベクターを融合した細胞の選択を可能にしてくれる。好適に、このポリアデニル化配列は有効性が比較的低く、『弱ポリアデニル化配列』とみなすことができる。その1つの例は、『SV40初期ポリアデニル化信号』と呼ばれるSV40初期ポリアデニル化配列である。
好適に、この向標的ベクターは遺伝子増幅メカニズムを実行させる遺伝子を担持している。この遺伝子は、例えば、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)あるいはグルタミン・シンセターゼ(GS)に関する遺伝子、あるいは細胞の生き残りに不可欠な代謝酵素である。向標的ベクターを融合したトランスフェクト細胞が関連する酵素の特異的抑制因子(例えばDHFRに対してはメソトレキセート、GSに対してはメチオニン・スルホキシミン)の濃度を増大させて培養すると、そのベクターが増幅されたものだけが十分なDHFRあるいはGSを発現して生き残る(23、30)。得られる遺伝子増幅の程度は基本的にはそのベクターが融合されたゲノムの領域に依存して変化する。従って、向標的ベクターの融合領域は、関心対象のトランス遺伝子の発現を増幅することが実質的に可能になるように、その『増幅能力』を基準として選ばれる。
【0020】
加えて、本発明の別の特殊な実施の形態では、この向標的ベクターは、2つのリコンビナーゼ認識サイトの間に、タイプ1ヘルペス・シンプレックス・ウイルス(HSV1−TK)のチミジン・キナーゼに対する遺伝子を含んでいる。ステップ4)での細胞選択は培養液にガンシクロビルを加えて行われ、向標的ベクターが切断されなかった細胞はガンシクロビルによって殺され、向標的ベクターが切断されたものだけが生き残る。なお、このステップではHSV1−TK以外の潜在的に毒性を有する『プロドラッグ』を使用することを前提に、いずれかの自殺遺伝子を用いることができる。例えば、プロドラッグ5フルオロサイトシン(5−FC)と共にCodA及びFcy遺伝子を用いたりすることができ、これらの例には限られない。
本発明において用いられるリコンビナーゼ認識サイトは当業者に知られているどのサイトにも対応することができる。例として言えば、loxP及びFRTサイトなどである。本発明の1つの実施の形態で、loxP及びFRTサイトは同時に用いられる。さらに例として言えば、この実施の形態は、FRTを用いて発現ベクターを挿入し、その後、loxPを用いてゲノムに融合させた後、そのベクターのセレクタ遺伝子を取り除くことができる。
関心対象の蛋白質に類似した蛋白質をコードするレポータ遺伝子は治療用あるいは産業用としての価値を有する蛋白質と同一あるいはそれと類似した分泌蛋白質をコードするいずれかの蛋白質に対応するものであってよい。例として言えば、抗体、成長因子、インターロイキン、刺激性因子、キナーゼ、凝集因子、アルファ1アンチトリプシンあるいはアルブミンをコードする遺伝子などを挙げることができ、その他の遺伝子も用いることができる。
関心対象の蛋白質と類似した蛋白質の追加的な発現とレポータ遺伝子によってコードされる蛋白質は、ステップ2)において、レポータ遺伝子の発現レベルによってだけでなく、その細胞の分泌能力によっても細胞の選択を可能にしてくれる。
好適に、関心対象の蛋白質は抗体である。この場合、そのベクターにその抗体の重鎖と軽鎖の両方をコードする遺伝子を含んでいることは特に好適であろう。加えて、関心対象の蛋白質が抗体であれば、ステップ2)で、予見されるグリコシル化の割合と形態に基づいて抗体産出細胞を選択することは有益であろう。
好適に、本発明のプロセスで用いることができる最初の哺乳動物細胞は、YB2/0(ATCC CRL−1662)及びIR983Fとして知られているラット黒色腫細胞株、ナマルワなどのヒト黒色腫及びPERC6、CHO細胞株(CHO−K,CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO Pro−5、CHO dhfr−、CHO Lec13など)、卵巣細胞核などのその他のヒトの細胞、及びWil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、K6H6及びP3X63Ag8.653などの他の細胞株から選択される。
【0021】
特に好適な方法としては、YB2/0細胞株が用いられる。
ステップ2)では、関心対象の蛋白質を5pcd(24時間で細胞1個あたりの蛋白質のピコグラム数)以上の割合で算出する生産性の高い分泌細胞が選択される。好適には、この関心対象の細胞の生産速度は10pcd以上である。特に好適な場合、関心対象の細胞の生産速度は15pcd以上であり、より好適には20pcd以上である。好適にはこの生産速度は5−50pcdの間であり、より限定的には10−30pcdの範囲である。
最初に使われる哺乳動物細胞に融合されたコピーの数は当業者に公知のいずれの方法を用いてでも計算することができる。例として言えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイなどの方法を用いることができる。
向標的ベクター切断ステップ(ステップ3)で、リコンビナーゼは両方のリコンビナーゼ認識サイトで遺伝子組み換えイベントを媒介すると同時に、その細胞ゲノムからの向標的ベクターの切断を誘発し、リコンビナーゼ認識サイトはそのゲノム内にとどまる。本発明によるこのプロセスで実施される切断メカニズムは融合された向標的ベクターの2つのリコンビナーゼ認識サイト間のすべてのヌクレオチド配列の除去をもたらす。そのゲノムの高転写活性領域に残留しているこの認識サイトは融合された向標的ベクター内の最初の認識サイトと同じ方法を示している。加えて、その向標的ベクターの切断後に、ポリアデニル化配列はその残留しているリコンビナーゼ認識サイトの下流の哺乳動物細胞内に残されている。この残留リコンビナーゼ認識サイトの一体性は当業者に知られているどの方法ででも実施でき、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った後増幅されたDNA配列の配列決定を行うなどの方法がある。
例えば、リコンビナーゼをそのリコンビナーゼをコードするベクターの一過性トランスフェクションを通じて細胞内で発現させ、それを用いてその細胞をステップ2後にトランスフェクトするなどの方法が可能であろう。
なお、リコンビナーゼ認識サイトがloxPサイトである場合は、Creリコンビナーゼが用いられる。対照的に、その認識サイトがFRTの場合は、用いられるリコンビナーゼはFlpである。好適に、本発明においては、用いられるリコンビナーゼはFlpeで、哺乳動物の細胞を成長させるのに用いられる培養条件ではより活性を示すFlpから誘導されるリコンビナーゼである(55)。
従って、この切断ステップは、ゲノムあるいはトランスフェクトされた細胞内に残されているFRT組み換え配列を用いて高転写活性領域内に挿入される今後の関心対象の蛋白質の発現に影響を及ぼす可能性のあるすべての活性配列を取り除いてくれる。従って、向標的ベクターの切断後にはその細胞株内には活性を有する形質転換要素は残されていない。
【0022】
本発明によるプロセスの第1のステップで発生されるそれらのゲノムの高転写活性領域内に挿入された特異リコンビナーゼ認識サイトを担持している細胞株(『高生産性細胞株』)は、その関心対象の蛋白質を産出するためにも用いることができる。そうした蛋白質は、そのベクター上に導入された関心対処の蛋白質の転写に必要な配列を担持しているベクターとともに上記特異組み換えサイトに向かわせることでつくりだすことができる。本発明による生産性の高い細胞株の適用について、以下に詳細に説明する。
本発明のもうひとつの目的は、上に述べたようなプロセスで、関心対象のDNA分子を本発明のプロセスの第1のステップで発生された細胞株に挿入するように考案された第2のステップを含んでいる。この第2のステップは以下のステージを含んでいる。
5)、関心対象の蛋白質をコードする遺伝子、遺伝子増幅を可能にする遺伝子、そして抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子を担持している発現ベクターは有しているが、ポリアデニル化配列は有していないステップ4)で発生された細胞株のトランスフェクション。このベクターはリコンビナーゼ認識サイトのすぐ上流に局所化される。
6)、特異リコンビナーゼ認識サイトに、そのリコンビナーゼで媒介される前記発現ベクターを挿入
7)、関心対象の蛋白質の発現を評価することによる標的サイトに融合された発現ベクターを担持している細胞の選択。好適には、この選択はランダム融合を阻止するために抗生物質が高濃度で存在している状況で行われる。
このプロセスの再融合ステップで用いられる発現ベクターは関心対象の蛋白質をコードする遺伝子と、遺伝子増幅を可能にする遺伝子と、ベクター内に存在しているコーディング配列の発現に必要な全ての配列、つまり、プロモータ、エンハンサ、およびポリアデニル化配列とともに含んでいる。この発現ベクターは、抗生物質に対する抵抗性を付与する、そしてそのプロモータは持っているが、ポリアデニル化配列は持っていない遺伝子を含んでおり、このベクターは、リコンビナーゼ認識サイトのすぐ上流に局所化される。
この発現ベクター上に担持されている抗生物質抵抗性遺伝子は、ポリアデニル化配列は有していない。従って、この抗生物質抵抗性遺伝子は向標的ベクターの切断後にその細胞に残っているポリアデニル化配列のすぐ上流に挿入されるように、そのベクターの末端に配置されなければならない。オプションとして、この抗生物質抵抗性遺伝子は向標的ベクター上に担持されているものと同じであり、従って、細胞選択はステップ2)で高生産性細胞を選択するのに用いられたのと同じ濃度の抗生物質を用いて実行することができる。この場合、選択はその細胞を上記抵抗性を付与する遺伝子に対応する抗生物質にその細胞を露出させることで実行される。
リコンビナーゼは、ステップ4)で残された特異組み換えサイトでの細胞ゲノム内での発現ベクターの挿入を媒介する。これを行うために、その発現ベクター内のリコンビナーゼ認識サイトはこのプロセスの最初の部分でその細胞ゲノムに融合されたものと同一である。
上に述べたように、リコンビナーゼ認識サイトがloxPサイトであれば、Creリコンビナーゼが用いられ、認識サイトがFRTであれば、用いられるリコンビナーゼはFlpである。さらに、本発明によるプロセスのステップ6)では、細胞内で働かせるリコンビナーゼを得るために、どんな方法を用いてもよい。例として言えば、リコンビナーゼはそのリコンビナーゼをコードする遺伝子を担持しているベクターでトランスフェクトさせてもよい。
そのリコンビナーゼ認識サイトに発現ベクターを融合させていない細胞は高濃度の抗生物質が使用されるので死滅してしまうであろう。その代わり、抗生物質に抵抗性を示す遺伝子はそのコーディング配列の下流にポリアデニル化配列を有していないので、その遺伝子がステップ3)及び4)後に細胞ゲノム内に残されているポリアデニル化配列の近くに導入されても、効果的に発現されるであろう。
好適に、その発現ベクター内での関心対象のDNAの発現から得られる関心対象の蛋白質は治療あるいは産業用の何らかの価値を持っており、例えば、抗体、凝集因子、サイトカイン成長因子、酵素、あるいはホルモンなどである。加えて、関心対象の蛋白質をコードする遺伝子はその向標的ベクター上に担持されているものと同じであるか、あるいは異なった蛋白質をコードする遺伝子であってもよい。
【0023】
本発明の別の目的は、ゲノムの高転写活性領域内に融合された特異リコンビナーゼ認識サイトを有している細胞株に関するもので、この細胞株はそのリコンビナーゼ認識サイトに1つのトランス遺伝子の単一のコピーを融合させており、その細胞株は長時間安定を保ち、本発明によるプロセスのステップ4)中で得ることができる。
好適に、この細胞株は、YGM−1/10G10細胞株(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM)に2006年12月8日に登録番号CNCM I−3704で登録)である。このYGM−1/10G10細胞株は本発明のプロセスを実施して、そのプロセスのステップ1)でYB2/0細胞(ATCC CRL−1662)から開始することで発生される。このYGM−1/10G10細胞株は、以下の特徴を有している。つまり、活性配列(プロモータ、セレクタ遺伝子、抗生物質抵抗遺伝子)を持っておらず、1つのリコンビナーゼ認識サイトを有し、培養パラメータが安定しており、そして1つの安定した融合サイトを有している。加えて、この細胞株は、好適に関心対象の蛋白質の産出速度が5pcd(24時間で細胞1個あたりの蛋白質のピコグラム数)以上である。好適には、これらの関心対象の細胞の産出速度は10pcd以上である。特に好ましい場合、関心対象の細胞の産出速度は15pcd以上であり、より好ましくは20pcd以上である。好適には産出速度は、5−50pcdの範囲であり、より限定的には10−30pcdの範囲である。
従って、本発明の目的は、新しい発現細胞株YGM−1/10G10で、この細胞株はいかなる活性形質転換配列も有せず、YB2/0細胞株から誘導され、発現ベクターの融合を制御可能で、リコンビナーゼを用いた転写に望ましい領域に向けることができる。
【0024】
本発明の別の目的によれば、この細胞株は、YMG−2/3G5細胞株(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM)に2007年12月19日に登録番号CNCMI−3885で登録)である。YMG−2/3G5細胞株は、本発明のプロセスを適用して、そのプロセスのステップ1)でYB2/0(ATCC CRL−1662)から開始することで発生される。このYMG−2/3G5細胞株は、以下の特徴を有している。つまり、活性配列(プロモータ、セレクタ遺伝子、抗生物質抵抗遺伝子)を持っておらず、1つのリコンビナーゼ認識サイトを有し、培養パラメータが安定しており、そして、1つの安定した融合サイトを有している。加えて、この細胞株は好適に関心対象の蛋白質の産出速度が5pcd(24時間で細胞1個あたりの蛋白質のピコグラム数)以上である。好適には、これらの関心対象の細胞の産出速度は10pcd以上である。特に好ましい場合、関心対象の細胞の産出速度は15pcd以上であり、より好ましくは20pcd以上である。好適には産出速度は5−50pcdの範囲であり、より限定的には10−30pcdの範囲である。
従って、本発明の目的は、新しい発現細胞株YGM−2/3G5で、この細胞株はいかなる活性形質転換配列も有せず、YB2/0細胞株から誘導され、発現ベクターの融合を制御可能で、リコンビナーゼを用いた転写に望ましい領域に向けることができる。
これらの新しいYGM−1/10G10とYGM−2/3G5細胞株は、以下のような性質と利点を示す。
− 同じサイトに融合できる結果として各トランスフェクション手順で再現可能で安定した高レベルの発現が可能であること
− 最初のYB2/0細胞株の性質を阻害するような活性形質転換配列(プロモータ、抵抗性遺伝子、転写エンハンサ)が存在しないので、関心対象の蛋白質に関する遺伝子を有する発現ベクターの融合に続く開発が簡単に行えること
− スクリーニングしなければならないトランスフェクタントの数が減るので、時間と資源が節約できること
− 『増殖可能な』融合サイトを選択することで遺伝子増幅(例えばDHFRメトトレキセート系を使用して)が可能であること。
好適に、本発明のプロセスで発生される細胞株は、少なくとも3ヶ月、つまり80世代は安定している。
− 本発明のもうひとつの目的は、配列識別番号No.4の配列を用いて核酸のフラグメントを含む配列識別番号No.1の配列から分離された核酸分子に関しており、そのフラグメントは配列識別番号No.1配列あるいは配列識別番号No.1と少なくとも80%の相同性を有する核酸のフラグメントを含む発現ベクターあるいは高転写活性領域に組み込まれた場合に関心対象の遺伝子組み換え蛋白質の発現を増幅することができ、さらに、そのフラグメントは発現ベクターに組み込まれた場合に関心対象の遺伝子組み換え蛋白質の発現を増強することができる。
発現ベクターに組み込まれた場合に関心対象の遺伝子組み換え蛋白質の発現を増強することができる核酸フラグメントを含む配列識別番号No.1の配列から単離された上記核酸分子に対応する核酸配列は以下の通りである。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
上に述べた配列で発現ベクターに組み込まれた場合に、関心対象の遺伝子組み換え蛋白質の発現を増強させることができる核酸配列を含んでいる配列識別番号No.1の配列から単離された核酸分子は以下の特徴を有している(位置は配列内のヌクレオチドの番号付けに従って示してあり、その番号付け方式は上に詳述してある)。
− 位置1から位置1024まで:ゲノム配列
− 位置2631から位置2678まで:Frtサイト
− 位置1025から位置4419まで:in situで欠失後に残された向標的ベクターの配列
発現ベクター内に組み込まれると関心対象の遺伝子組み換え蛋白質の発現を増強することができる核酸フラグメントに対応する核酸配列は、以下の通りである(配列識別番号No.4)
【0029】
【表4】

【0030】
本発明の別の目的は、配列識別番号No.1の核酸配列を含むベクターに関するものである。
本発明のさらに別の目的は、そのゲノム内に高転写活性領域に融合された特異リコンビナーゼ認識サイトを有している細胞株であって、その細胞株はそのリコンビナーゼ認識サイトにトランス遺伝子の単一のコピーを融合されており、その細胞株は安定していると同時に、本発明のプロセスを用いて発生させることが可能である。
そうした細胞株は、縦方向2列の2つの配列を有しており、それらの配列はいずれかの側がリコンビナーゼ認識サイトと関心対象の蛋白質をコードする遺伝子及び下流リコンビナーゼ認識サイトのすぐ上流に位置する抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子と対応しており、その抗生物質抵抗性遺伝子のポリアデニル化配列はこの認識サイトのすぐ下流に位置している。
好適に、この細胞株は、遺伝子増幅前の時点で、5−50pcd(24時間での細胞1個あたりの蛋白質のピコグラム数)の範囲の前記トランス遺伝子からの生産性を有している。
さらに好適に、この細胞株は、少なくとも3ヶ月間は安定した状態で上記トランス遺伝子を発現する。
【0031】
本発明の別の目的は、関心対象の蛋白質の産出プロセスに関しており、このプロセスにおいては、関心対象の蛋白質を発現する細胞株がその関心対象の蛋白質が発現され収穫できるような方法で培養される。
本発明の別の目的は、哺乳動物細胞のゲノムに関心対象のDNA分子を挿入することができるベクター(『向標的ベクター』)であって、このベクターはレポータ遺伝子のいずれかの側に位置する2つのリコンビナーゼ認識サイトと、関心対象の蛋白質をコードする遺伝子と、遺伝子増幅を可能にしてくれるセレクタ遺伝子と抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子、そして上記2番目のリコンビナーゼ認識サイトの下流にあるポリアデニル化配列を有している。好適に、この抗生物質抵抗性遺伝子のポリアデニル化配列は弱いポリAであって、スクリーニング後はより高い産出速度をもたらしてくれる。
好適に、このベクターは上記2つのリコンビナーゼ認識サイトの間に、タイプIヘルペス・シンプレックス・ウイルスのチミジン・キナーゼ(HSV1−TK)をコードする遺伝子を有している。
本発明のさらに別の目的はね関心対象のDNA遺伝子を哺乳動物のゲノム内の標的サイトに挿入するためのベクターであり、このベクターは少なくとも以下の構成要素を含んでいる。
− 上に述べたような向標的ベクター
− 関心対象の蛋白質をコードする遺伝子の下流にリコンビナーゼ認識サイトと抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子を含んでいる発現ベクター。このリコンビナーゼ認識サイトは抵抗物質に対する抵抗性を付与する遺伝子のすぐ上流に位置している。
本発明の別の目的は、関心対象のDNA分子を哺乳動物の細胞のゲノム内の向標的サイトに導入するためのプロセスで上に述べたベクター系を使用することに関連しており、以下のステップを含んでいる。
− 前記向標的ベクターによる哺乳動物のトランスフェクション
− 内部に向標的ベクターの単一コピーが融合されている『高転写性』細胞の選択
− リコンビナーゼを用いての前記向標的ベクターの切断
− 前記向標的ベクターが切断された、そして完全な認識サイトを有している細胞の選択
− ステップ4)で選択された細胞の前記発現ベクターによるトランスフェクション
− 前記リコンビナーゼを用いてのその完全な認識サイトでの前記発現ベクターの融合
− 関心対象の蛋白質が発現されているかどうかをテストすることによるその標的サイトに融合された発現ベクターを有している細胞の選択。好適には、この選択はランダム融合を排除するために強い濃度の抗生物質の存在下で行われる。
本発明のその他の態様及び利点を以下の実施例に示すが、これらの実施例は例示のためのものであって、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0032】
実施例1:
特異リコンビナーゼ認識サイトが高転写活性領域に融合されている細胞株を発生させるために用いられるベクターの構成
a:向標的ベクターpTV1(図1参照)
− 転写単位:以下の転写単位を用いて向標的ベクターpTV1が構成された(配列識別番号No.2)(図1)
1−maxFP―Green転写ユニット(蛍光レポータ遺伝子)。これは、ミニマムCMVプロモータ(その活性部分かエンハンサを持たない初期ヒト・サイトメガロウィルス遺伝子)、maxFP(登録商標)−Green蛋白質(Evrogen)、そして後期SV40(Simian Virus 40)ポリアデニル化配列(ポリA)をこの順番でコードする。
2−抗D抗体の重鎖の転写ユニットで、RSVプロモータ(ロウス・サルコーマ・ウイルスの長末端反復部分)、pCi−ネオ・ベクターから誘導された人為的イントロン、抗D免疫グロブリンの重鎖配列、そしてbGH(ウシ成長ホルモン)ポリA配列の順で構成されている。
3−抗D抗体の軽鎖の転写ユニットで、免疫グロブリン軽鎖配列及びbGHポリA配列を別にして、抗体重鎖と同じ構成要素を含んでいる。
4−ネオ転写ユニットで、SV40プロモータ、ネオマイシン抵抗性遺伝子、及び『弱い』ポリA活性を有するSV40初期ポリアデニル化信号
5−DHFR(ジヒドロフォレート・リダクターゼ)転写ユニット。これは、SV40プロモータ、ScaI制限酵素(遺伝子生成物では突然変異は現れない)とそのポリアデニル化サイトを排除するための突然変異によって修飾されたDHFRセレクタ遺伝子。
6−HVS1−TK転写ユニット。これはSV40プロモータ、タイプ1ヘルペス・シンプレックス・ウイルスのチミジン・キナーゼ(HSV1−TK)を含む自殺遺伝子、そして『SV40初期ポリA』配列を含んでいる。
− Frt遺伝子組み換えサイトの合成
Frt遺伝子組み換えサイトは以下のプライマーを用いて、PCRによって合成される。
センス・プライマー(配列識別番号No.5)
5’−ACAGCTGTCGACTGAAGTACCTATTCCGAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGT−3’
【0033】
抗センス・プライマー(配列識別番号No.6)
5’−CGTCCGGATATCTAAGATCTGAAGTTCCTATACTTTCTAGAGAATAGGAA−3’
【0034】
得られるPCR生成物は、Frtサイト(太字部分)とpTV1向標的ベクターpTV1でのクローニングを可能にする制限サイト(下線部分)を含んでいる
【0035】
pTV1(配列識別番号No.7)
GACGTCTCGACTGAAGTACCTATTCCGAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGT
SalI Frtサイト
ATAGGAACTTCAGATCTTAGATATCCGGACG
BgIII EcoRV
【0036】
第1のFrtサイト(Frt1)は、pTV1ベクターのmaxFP(登録商標)−Green転写ユニットの上流にクローンされた。第2のFrtサイト(Frt2)は、HSV1−tk遺伝子とそのポリアデニル化サイト『SV40初期ポリアデニル化』の間のFrt1と同じセンスにクローンされた。
この向標的ベクターpTV1に対応する核酸配列は、以下の通りである。(配列識別番号No.2)
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
【表11】

【0044】
【表12】

【0045】
上に示した配列(配列識別番号No.2)のpVT1向標的ベクターは、以下の特徴を有している(位置は配列内のヌクレオチドの番号で示してあり、そしてその番号付けの方式については、上に詳述してある)。
− 位置1から位置48:FRTリコンビナーゼ・サイト
− 位置63から位置144まで:ミニマムCMVプロモータ
− 位置478から位置1176まで:maxFP(登録商標)−green蛋白質
− 位置1352から位置1402まで:後期SV40ポリアデニル化信号
− 位置1888から位置2283まで:RSV LTR
− 位置2521から位置3951まで:重鎖(H)Ig抗D
− 位置3958から位置4184まで:bGHポリアデニル化信号
− 位置4431から位置4826まで:RSV LTR
− 位置5064から位置5771まで:bGHカッパ軽鎖(K)Ig抗D
− 位置5778から位置6004まで:bGHポリアデニル化信号
− 位置6658から位置6983まで:SV40プロモータ
− 位置7019から位置7813まで:ネオ・ホスホトランスフェラーゼをコードする配列
− 位置7987から位置8117まで:SV40初期ポリアデニル化信号
− 位置8301から位置8496まで:SV40プロモータ
− 位置8595から位置9158まで:DHFRコーディング配列
− 位置9965から位置10019まで:後期SV40ポリアデニル化信号
− 位置10092から位置10394まで:SV40プロモータ
− 位置10442から位置11572まで:HSV−TKコーディング配列
− 位置11584から位置11631まで:FRTリコンビナーゼ・サイト
− 位置11974から位置12104まで:SV40初期ポリアデニル化信号(SV初期ポリアデニル化)
− 位置12996から位置13926まで:アンピシリン抵抗性遺伝子
b:pEFrat−FLPeベクター(配列識別番号No.3、図2)
Flpリコンビナーゼをコードする遺伝子を以下のプライマーを用いてpOG4−FLPe(55)からPCR増幅させた。
【0046】
センス・プライマー(配列識別番号No.8)
5’−ATCTGGCTAGCCGCCACCATGCCACAATTTGATATATTAT−3’
【0047】
下線部分の配列は、NheI制限サイトであり、FLPe遺伝子の開始部分は太字、イタリック体で示してある(ATGから始まる部分)
【0048】
抗センス・プライマー(配列識別番号No.9)
5’−TGTCATCTAGATTATTATATGCGTCTATTTATGT−3’
【0049】
下線部分の配列は、Xbal制限サイトである。このコーディング配列の末端を太字で示し、停止コドンをイタリック体で示してある。
得られるPCR FLPe生成物を、最終的なpEFrat−FLPe発現ベクターを得るために、NheI及びXbaIサイトのラットEF1−アルファ・プロモータとbGHポリアデニル化配列の間にクローンされた。
pEErat−FLPeベクターの核酸配列は以下の通りである。(配列識別番号No.3)
【0050】
【表13】

【0051】
【表14】

【0052】
【表15】

【0053】
配列を上に示した(配列識別番号No.3)pEErat−FLPeベクターは、以下の特徴を有している(位置は配列内のヌクレオチドの位置で示し、番号付け方式については上に述べた)。
− 位置1から位置1243まで:ラットEF−1 アルファ プロモータ
− 位置1256から位置2527まで:Flpeコーディング配列
− 位置2537から位置2763まで:bGHポリアデニル化信号
− 位置3020から位置3543まで:Col E1複製オリジン
− 位置4887から位置4027まで:増幅抵抗性遺伝子
c:pT125−FRT再融合ベクター(図3)
pT125−FRT再融合ベクターは、T125−IG24ベクター(図4)から誘導されたもので、このベクターにおいてはCMVプロモータがRSVプロモータに置換されており、ネオマイシン抵抗性遺伝子のポリアデニル化配列が決失され、pTV1ベクターにおけるFrtサイトと同じ方向に導入されたFrtサイトによって置換されている。
【0054】
実施例2:YB2/0細胞株内の高転写活性領域の領域を標的とする。
a:pTV1ベクターによるYB2/0細胞株のトランスフェクション
ラットの細胞株YB2/0(ATCC#CRL−1662)を5%ウシ胎児血清(FBS)で補強したEMS培養液(Invitrogen、資料番号041−95181M)内で成長させた。500万個の細胞をOptibufferトランスフェクション・キット(Thermo Electron)を用いて電気穿孔処理した(Bioradエレクトロポレータ、モデル1652077)。トランスフェクション1回あたりにつき、Scal制限酵素を用いて直線化したpTV1ベクター細胞を5μg用いた。電気穿孔(エレクトロポレーション)は0.5mlキュベット内で230ボルト及び950マイクロファラッドで行われた。各エレクトロポレーション・キュベットを10枚の96ウェル・プレートに1ウェルあたり5,000細胞の割合で分割した。トランスフェクトションから3日後に、これらの細胞を5%FBSと2mg/ml G418(Invitrogenn、資料番号10131−027)で補強した選択性培養液に移した。
b:G418抵抗性クローンの蛍光スクリーニング
トランスフェクションを行ってから10日後及び15日後に、maxFP(登録商標)−Green蛋白質の蛍光(482nmで励起、502nmで放射)に基づいて、抵抗性クローンを識別した。すべての抵抗性クローンは最初に蛍光プレート・リーダー(VICTOR3、Perkin Elmer)でスクリーニングした。すべての蛍光性クローンを流動サイトメータにかけてそれぞれの細胞の蛍光強度とそれらのクローンの均一性について測定した。得られた結果を無料で利用できるWinMDI2.8(http://facs.Scripps.edu)ソフトウエアを用いて分析した。均一な蛍光ピークと平均蛍光強度(MFI)が500以上のすべてのクローンを選別して、24ウェル・プレートに移し増幅させた。
c:ELISAスクリーニング及びコピー数の判定
これらの細胞を24ウェル・プレート内に保持して、上澄み液を評価し(ELISA)、抗D抗体の算出について推定を行った。10pcd(24時間あたり細胞1個についてのピコグラム数)の産出度を有するすべてのクローンを準定量性PCRにかけてpTV1のコピーの数を算定した。コピー数の算定値は標準化のための比較対象であるCELL LINE配列(YB2/0細胞株から発生されるクローンにおいてコピー数が安定している)を用いてABI PRISM(登録商標)7000マシーンを用いて推定した。単一のコピーを含んでいると確認されたクローンをサザーン・ブロッティングにかけてコピー数を確認した。
d:メトトレキセート(MTX)遺伝子増幅
MTX(Sigma,資料番号M8407)を用いた遺伝子増幅テストを単一のコピーを有する高転写性クローン上で行って、pTV1ベクターが標的とする配座の増幅能力を推定した。25nM以上のMTX濃度をEMS培養液(+5%FBS)に加えた。選択性培養液内で15日間培養した後、抵抗性クローンをELISAにかけて生産性が高まったかどうかをチェックし、さらに定量性PCRにかけて、コピー数が増大したかどうかをチェックした。3G11クローンの生産性(9.7pcd)は一回の増幅サイクル後に22pcdに増大した。同様に、35H4クローンの生産性(11.4pcd)は一回の増幅後にほぼ3倍に増大した。
【0055】
実施例3:Flpリコンビナーゼを用いてのPTV1向標的ベクターの切断、YGM−1/10G10及びYGM−2/3G5細胞株の発生(図5)
* YGM−1/10G10細胞株
pTV1ベクターの単一コピーを有している高転写性クローン8A10及び3G11(増幅前にそれぞれ6.6pcd及び9.7pcd)を選択して、向標的ベクターを欠失させることによりYGM細胞株を発生させた。
最初に、クローン8A10を2mg/mlのG418で補強したEMS培養液(5%FBS)を入れたT75フラスコ内で増幅させた。トランスフェクションを行う前日に、その培養液からG418を取り除いた。
175μlの無血清EMS内に25μlのスーパーフェクトと共に再懸濁させたpEFrat−FlPeベクターの画分5μgを室温で10分間培養してから、1mlのEMS(5% FBS)と混合させた。この混合物を2×10洗浄細胞に加えて、EMS培養液(5%FBS)内で2.5×10 細胞/ml内に希釈した。37℃で4時間培養した後、これらの細胞をEMS(5% FBS)に移した。
24時間培養した後、これらの細胞を1ウェルあたり5,000細胞の濃度で、96ウェル・プレートに入れた。
それらの細胞は、トランスフェクションを行ってから2日後に4μMガンシグロビエール(Introgigen,:sud−gcv)で補強されたEMS培養液(5%FBS)内での選択的培養に移された。
15日間培養を行った後、生き残っているクローンについて、蛍光がないかどうかについては流動サイトメトリで、抗D免疫グロブリンの不在についてはELISAで、そしてpTVIベクターが完全に切断されているかどうかについてはPCRで、以下のプライマーを用いてテストが行われた。
【0056】
5’−PTV1(配列識別番号No.10):5’−CCTATGGAAAAACGCCAGCAAC−3’
【0057】
3’−PTV1(配列識別番号No.11):5’−CCTTAGAAAGCGGTCTGTGAAA−3’
【0058】
切断されたクローンについては、クローン10G10を選んでYGM−1/10G10発現細胞を構成し、3ヶ月間にわたって融合サイトの安定性についてチェックした。
* YGM−2/3G5細胞株
クローン35H4(1)2G2(13.3pcd)、pTV1ベクターの単一コピーを保有しているクロイド35H4(増幅前11.4pcd)の生産性の高い派生物を選んで、向標的ベクターを決失させることでYGM細胞を発生させた。
クローン35H4(1)2G2は最初にT75フラスコ内で、RPMI培養液(5%FBS)の中で1mg/ml G418を用いて増幅させた。トランスフェクションの前に、G418を培養液から取り除いた。500μl無血清RPMI内に再懸濁させた非線形化pEFrat−FLPeベクターの25μl画分を75μlフゲンHD(Roche)と共に室温で培養した。この混合物の120μlを6×10細胞/mlRPMI培養液(5%FBS)を含んでいる6ウェル・プレートの各ウェルに加えた。24時間の培養後、それらの細胞を96ウェル・プレートに1ウェルあたり細胞1000個の濃度で分配した。
それらの細胞を15日培養した後、生き残っているクローンを流動サイトメトリで蛍光の不在についてチェックし、ELISAで抗D免疫グロブリンの不在についてチェックし、そしてPCRで以下のプライマーを用いてpTV1の完全な切断についてチェックした。
【0059】
DEL REV(配列識別番号No.14):5’−TGGTATGGCTGATTATGATCCTC−3’
【0060】
DEL FOR 3(配列識別番号 No.15):5’−CCTTTTGCTCACATGGCTCCAC−3’
【0061】
切断されたクローンのうち、クローン35H4(1)2G2を選んでYGM−2/3G5発現ラインを構成し、3ヶ月の時間をかけて融合サイトの安定性についてチェックした。
【0062】
実施例4:YGM−1/10G10及びYGM−2/3G5細胞株内での発現ベクターの再融合(図6)
* YGM−1/10G10細胞株
スクリーニング・ステップ(抗D抗体)で用いられているのと同じ抗体をコードするベクターを再融合させて、YGM−1(クローン10G10)内のFrtサイトでの再融合後の安定性をチェックした。
単一のFrt遺伝子組み換えサイトと『SV40 初期ポリA』に対応するポリアデニル化配列を有しているTV1向標的ベクターTV1の切断により発生させたクローン10G10をT75フラスコ内でEMS培養液(5%FBS)を用いて増幅させた。
10μgの非線形化pEFrat−FLPeベクターと5μgの非線形化pT125−FRT再融合ベクターを用いて共トランスフェクションを行った。500万個の細胞をOptibufferトランスフェクション・キット(Thermo Electron社製)を用いて0.5mlキュベット(BioRadエレクトラポレータ、モデル1652077)で電気穿孔処理した。処理パラメータは以下の通り:230ボルトと950マイクロファラッド。
これらの細胞を1ウェルあたり細胞5,000個の濃度で96ウェル・プレート10枚に分配した。
2mg/ml G418で補強したEMS培養液(5%FBS)内でのトランスフェクションを行って2日後に、これらの細胞を選択的培養液に移した。
培養の15日後に、生き残っているクローンを24ウェル・プレートで増幅させて、PCRでスクリーニングしてYGM−1細胞株内のFrtサイトでの再融合をチェックした。
このスクリーニングのために、m5NEO−2及びSV40 ポリA−1rev/プライマーを用いた。
【0063】
m5NEO−2 プライマー 配列識別番号No.12:5’−GATGCCTGCTTGCCGAATA−3’
【0064】
Sv40ポリA−1revプライマー 配列識別番号No.13:5’−CCTTAGAAAGCGGTCTGTGAAA−3’
【0065】
YGM−1細胞株のゲノム内でのランダム融合によるクローンは排除した。pT125−FRTベクターがYGM−1細胞株のFrtサイトに融合されているクローンはELISA処理して、抗D−T125抗体の生産性を測定した。
クローン21B10(5.5pcd)を選択して、3ヶ月間での安定した再融合についてのチェックを行った。
【0066】
* YGM−2/3G5細胞株
スクリーニング・ステップで用いたのと同じ抗体をコードするベクター(抗D抗体を再融合させて、YGM−2(クローン35H4(2)3G5)内のFrtサイトに再融合させた後の発現レベルの再現性をチェックした。
単一のFrt遺伝子組み換えサイトとSV40初期ポリアデニル化信号に対応するポリアデニル化配列を保有するTV1向標的ベクターTV1を切断することで発生させたクローン35H4(2)3G5をT75フラスコ内でRPMI培養液(5%FBS)を用いて増幅させた。
4μgの非線形化pEFrat−FLPeベクターと2μgの非線形化pT125−FRT再融合化ベクターを用いて共トランスフェクションを行った。
300μlの無血清EMS内に18μlのFugene HD(Roche)と共に希釈させた2つの非線形化ベクターを室温で15分間培養させた。この混合物75μlを6×10細胞/mlEMS培養液(5%FBS)をそれぞれ含む6ウェル・プレートの各ウェルに加えた。24時間培養を行った後、これらの細胞を1ウェルあたり細胞1,000個の濃度で96ウェル・プレートに入れた。
これらの細胞をさらに1ウェルあたり細胞1,000個の濃度で10枚の96ウェル・プレートに入れた。
3mg/ml G418で補強されたEMS培養液(5%FBS)でトランスフェクションを行ってから2日後に、これらの細胞を選択性培養液に移した。
12日間の培養後、生き残っているクローンをp24ウェル・プレート内で増幅させて、PCRでスクリーニングしてYGM−2細胞株のFrtサイトで再融合しているかどうか調べた。
このスクリーニング手順のために、以下のプライマーを用いた。
− 5’融合のチェック
【0067】
DEL FOR3(配列識別番号No.15):5’−CCTTTTGCTCACATGGCTCGAC−3’
【0068】
3FRT3(配列識別番号No.16):5’−TTGTCTCATGAGCGGATACA−3’
【0069】
− 3’融合のチェック
DEL REV(配列識別番号No.14):5’−TGGTATGGCTGATTATGATCCTC−3’
【0070】
m−5−NEO−2(配列識別番号No.12):5’−GATGCCTGCTTGCCGAATA−3’
【0071】
このスクリーニングを行ったおかげで、G418には抵抗性を示すがYGM―2株へのランダム融合を示すトランスフェクタントは排除された。YGM−2株のFrtサイトにpT125−FRTベクターを融合させたトランスフェクタントのうち、19D1、25E5、30A5、及び20F11クロイドはELISAテストを行って、抗D抗体での生産性についての評価を行った。
これらの4つのクローンに関して得られた生産性(7.1pcd、7.0pcd、7.1pcd、及び7.7pcd)はほぼ同一で35H4クロイドあるいは35H4(1)2G2親クローンで観察されたもの(それぞれ11.4pcdと13.3pcd)と同じ強度であり、このことは、再現可能な方式で強力な産出細胞を得る上でのこの方針の価値を示している。これらのクロイドの遺伝子的安定性を、クローニング後、3ヶ月間にわたった調べた。
【0072】
実施例5:逆PCRアッセイによるYGM−1細胞株(クローン10G10)内の融合サイトの確認
逆PCR増幅後の融合サイトの配列を調べた。要約的に言うと、8A10(向標的ベクターを含む)と10G10(欠失YGM−1細胞株)クローンを種々の制限酵素を用いて消化させ、得られた制限フラグメントをT4リガーゼを用いて相互に再結合させた。その後、抗センス・プライマーを用いて逆PCR処理を行って、向標的ベクターかにの配列を調べた。得られたPCR生成物は、それらの5’末端と3’末端に、向標的ベクター配列を有しており、中間部分には、その向標的ベクターのすぐ上流の融合サイトに対応して長さが(用いられた制限酵素に対応して)変化する未知の配列を有していた。種々のPCR生成物の配列を調べて、高転写活性融合サイト(配列識別番号No.1)を得た。
【0073】
以下に、この発明に係る参考文献(1〜71)を列挙する。
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【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明に係るプロセスは、各種分野で用いることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの細胞で構成される細胞株を発生させるプロセスにおいて、
− 前記細胞のゲノムの高転写活性領域に特異リコンビナーゼ認識サイトを融合させるステップと、
− 前記細胞のゲノムの、前記特異リコンビナーゼ認識サイトの下流に転写終了信号をコードする核酸配列を融合させるステップと、
で構成されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
転写終了信号をコードする前記核酸配列は、ポリアデニル化信号をコードする配列であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
選択マーカーをコードする前記核酸配列は、低活性ポリアデニル化配列を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
転写終了信号をコードする前記核酸配列は、SV40初期ポリアデニル化信号あるいはアデノウイルスL1ポリアデニル化信号の全体あるいは一部をコードする配列であることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
転写終了信号をコードする前記核酸配列は、ポリアデニル化信号の突然変異された、あるいは欠失した配列であり、
前記突然変異及び/又は欠失が前記ポリアデニル化信号の効率を突然変異されていないものと比較して低くさせることが可能であり、
さらに、AATAAA要素とGTを多量に含む領域を隔てる距離を増大させるステップと、
SV40後期ポリAをAATAAAヘクサヌクレオチドの上流に存在する1つあるいはいくつかのヌクレオチドから欠失させるステップと、
前記AATAAA配列の上流のヌクレオチド13から48の間に位置するいくつかの要素を欠失させるステップと、前記AATAAA配列とGTを多量に含む領域との間のスペースを修飾することでAATAAA配列の下流のGTを多量に含む領域を欠失させるステップ、
あるいは前記AATAAA配列の上流に位置するUSE(上流配列要素)領域を突然変異あるいは欠失させるステップと、
で構成されることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記細胞は、哺乳動物の細胞であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記特異リコンビナーゼ認識サイトの融合は、少なくとも以下のステップを含む一連のステップ、つまり
− 共にリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの核酸配列を融合させるステップと、
− レポータ遺伝子をコードする核酸配列を、いずれもリコンビナーゼ認識サイトをコードする前記2つの配列の間に融合させるステップと、
− 関心対象の蛋白質をコードする核酸配列をいずれもリコンビナーゼ認識サイトをコードする前記2つの配列の間に融合させるステップと、
− 選択マーカー、好ましくは抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子を、いずれもリコンビナーゼ認識サイトをコードする前記2つの配列の間に融合させるステップと、
によって達成されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記の選択された細胞だけは、請求項7で特定されている一連の配列の単一のコピーを融合している生産性の高い細胞であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
pcd(1日あたり細胞1個が産出する蛋白質のピコグラム数)値は、5以上、好ましくは10以上である細胞だけが選択されることを特徴とする請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記一連のステップは、前記細胞に対するリコンビナーゼの作用によって請求項5で特定されている一連の配列を切断するステップを含んでいることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
リコンビナーゼの作用は、前記リコンビナーゼをコードする核酸配列を有しているベクターによってその細胞内に前記リコンビナーゼを共発現することによって得られることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項12】
前記一連のステップは、そこから請求項7で特定されている前記一組の核酸配列が切断され、完全無傷のリコンビナーゼ認識サイトを有している細胞を選択するステップを含んでいることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項13】
前記一連のステップは、タイプ1ヘルペス・シンプレックス・ウイルス(HSV1−TK)のチミジン・キナーゼをコードする核酸配列を組み込むステップも含んでいることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項14】
切断前の前記細胞を選択するステップは、培養液にガンシクロビルを加えることによって行われることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記細胞を選択するステップは、抗生物質を、1g/l、好ましくは2g/l、4g/l以上、あるいは8g/l以上の投与量で、その培養液に加えることを特徴とする請求項7−14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記リコンビナーゼ認識サイトは、loxP及び/又はFRT配列であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記関心対象の蛋白質は、抗体あるいは抗体フラグメントであることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項18】
前記細胞は、YB2/0(ATCC CRL−1662)及びIR983Fなどとして知られているラット黒色腫細胞株、ナマルワあるいはPERC6などの他のヒト細胞を含むヒト黒色腫、CHO細胞株(CHO−K、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO Pro−5、CHO dhfr−、CHO Lec13)、あるいはWil−2、Jurkat, Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag14、及びP3X63Ag8.653から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記一連のステップは、関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドをコードする核酸配列と選択マーカーをコードする核酸配列のすぐ下流のリコンビナーゼ認識サイトをコードする核酸配列、好ましくはポリアデニル化配列を持たず抗生物質に対する抵抗性を付与する核酸配列を有する発現ベクターで前記選択された細胞株をトランスフェクションするステップも含んでいることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項20】
前記発現ベクターは、前記リコンビナーゼの作用を通じて前記特異リコンビナーゼ認識サイトに挿入されることを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記標的サイトに融合された発現ベクターを保有する細胞は、関心対象の蛋白質の発現を基準としたアッセイによって、そして、培養液に高濃度の抗生物質を加えることで選択されることを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドは、消化、膵臓系、胆管系、抗ウイルス系、抗炎症系、呼吸器系、抗微生物系、血液系、神経系、心臓血管系、眼科系、抗原性、脳髄系、抗腫瘍性、免疫刺激性及び免疫調節機能などで活性を示す群から選択される治療用蛋白質あるいはポリペプチドであることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項23】
請求項1−22のいずれか1項に記載のプロセスで発生されたことを特徴とする細胞株。
【請求項24】
前記ゲノムの高転写活性領域に安定した状態で融合されている特異リコンビナーゼ認識サイトと、その特異リコンビナーゼ認識サイトのすぐ下流に転写終了信号をコードする核酸配列を有していることを特徴とする細胞株。
【請求項25】
転写終了信号をコードする前記核酸配列は、ポリアデニル化信号、通常は低活性ポリアデニル化信号をコードする配列であることを特徴とする請求項24に記載の細胞株。
【請求項26】
転写終了信号をコードする前記核酸配列は、少なくとも部分的にSV40初期ポリアデニル化信号をコードする配列であることを特徴とする請求項24に記載の細胞株。
【請求項27】
前記細胞は、哺乳動物の細胞であることを特徴とする請求項24に記載の細胞株。
【請求項28】
前記細胞は、さらに
− 共にリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの核酸配列と、
− 前記共にリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの配列の間に関心対象の蛋白質をコードする少なくとも1つの核酸配列と、
そして、
− 共にリコンビナーゼ認識サイトをコードする2つの配列の間に、選択マーカー、好ましくは抗生物質に対する抵抗性を付与する遺伝子をコードし、さらにその核酸配列が前記転写終了信号をコードする核酸のすぐ上流に選択マーカーをコードする少なくとも1つの核酸配列と、
を保有していることを特徴とする請求項24に記載の細胞株。
【請求項29】
請求項28のすべての配列は、共に単一のコピーに融合されていることを特徴とする細胞株。
【請求項30】
前記細胞は、10以上のpcd(1日あたり細胞1個が産出する蛋白質のピコグラム数)値を有していることを特徴とする請求項29に記載の細胞株。
【請求項31】
前記細胞は、ただ1つの完全無傷なリコンビナーゼ認識サイトを有していることを特徴とする細胞株。
【請求項32】
前記リコンビナーゼ認識サイトは、loxp及び/又はFRT配列であることを特徴とする請求項24に記載の細胞株。
【請求項33】
前記関心対象の蛋白質は、抗体か抗体フラグメントであることとを特徴とする請求項28に記載の細胞株。
【請求項34】
請求項24によって修飾された細胞株で、修飾前の最初の細胞は、YB2/0(ATCC CRL−1662)及びIR983Fなどとして知られているラット黒色腫細胞株、ナマルワあるいはPERC6などの他のヒト細胞を含むヒト黒色腫、CHO細胞株(CHO−K、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CO Pro−5、CHO dhfr−、CHO Lec13)、あるいはWil−2、Jurkat,Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag14、及びP3X63Ag8.653からなる群から選択される哺乳動物の細胞であることを特徴とする請求項24に記載の細胞株。
【請求項35】
関心対象の蛋白質をコードする核酸配列の下流にリコンビナーゼ認識サイトをコードする核酸配列と、選択マーカー、好ましくは抗生物質に対する抵抗性を付与し、ポリアデニル化配列は含まない核酸配列を保有することを特徴とする請求項28に記載の細胞株。
【請求項36】
消化、膵臓系、胆管系、抗ウイルス系、抗炎症系、呼吸器系、抗微生物系、血液系、神経系、心臓血管系、眼科系、抗原性、脳髄系、抗腫瘍性、免疫刺激性及び免疫調節機能などで活性を示す群から選択される関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドを過剰発現することを特徴とする請求項24−28のいずれか1項に記載の細胞株。
【請求項37】
参照番号YGM−1/10G10で識別され、登録番号CNCMI−3704で登録されたことを特徴とする細胞株。
【請求項38】
参照番号YGM−2/3G5で識別され、登録番号CNCMI−3885で登録されたことを特徴とする細胞株。
【請求項39】
配列識別番号No.1で識別される核酸フラグメントを含む単離されたことを特徴とする核酸分子。
【請求項40】
配列識別番号No.1で示されている配列内で識別される核酸配列を保有していることを特徴とするベクター。
【請求項41】
少なくとも1つの関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドをつくりだすプロセスで、請求項24−38のいずれか1項による細胞株がその蛋白質が発現されるような状態で培養され、次いで、その他関心対象の蛋白質を収穫する少なくとも1つのステップを含んでいることを特徴とするプロセス。
【請求項42】
請求項37あるいは請求項38による細胞株に基づいて行われ、関心対象の少なくとも1つの蛋白質あるいはポリペプチドを作り出すことを特徴とする請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
前記関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドは、消化、膵臓系、胆管系、抗ウイルス系、抗炎症系、呼吸器系、抗微生物系、血液系、神経系、心臓血管系、眼科系、抗原性、脳髄系、抗腫瘍性、免疫刺激性及び免疫調節機能などで活性を示す群から選択される蛋白質あるいはポリペプチドであることを特徴とする請求項41又は請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記関心対象の蛋白質あるいはポリペプチドは、抗体又は抗体フラグメントであることを特徴とする請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
配列識別番号No.2で構成されることを特徴とするベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−512776(P2010−512776A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542139(P2009−542139)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/002144
【国際公開番号】WO2008/096070
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(309040446)エルエフビー バイオテクノロジーズ ソサイエテ パー アクションズ シンプリフィー ユニパーソンネリー (3)
【Fターム(参考)】