説明

治療上の免疫化後の細胞性刺激のためのB型肝炎ウイルス抗原製剤

本発明は、特に、細胞刺激のための新規なB型肝炎ウイルス(HBV)抗原製剤の使用による、治療上の免疫化の分野に関する。製剤は、懸濁されているHBV表面抗原(HBsAg)及びヌクレオカプシド(HBcAg)沈殿物で形成される。製剤は、上記の抗原を、500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズの粒子として懸濁されている沈殿物として、上記のサイズの粒子間の比率がそれぞれ50%と50%から80%と20%の間である混合物中に含有する。粒子サイズの範囲の選択により、様々な細胞型の刺激のレベルを最大限にすることが可能になる。さらに、異種又は自己の細胞(樹状細胞、B細胞及びマクロファージ)の最大限のin vivo又はin vitro刺激に基づく、慢性B型肝炎患者の上記の製剤を用いる細胞刺激、及びその後の受動免疫の方法が記載される。この製剤を用いて刺激された細胞は、慢性HBV感染の患者に移入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、特にB型肝炎ウイルス(HBV)の表面(HBsAg)及びヌクレオカプシド(HBcAg)抗原の製剤を用いて刺激された細胞の移入による治療上の免疫化に関する。細胞性刺激は、懸濁されている沈殿されたこれらの抗原(これらの比率は、受動免疫療法の使用の前に、最大の細胞性刺激を達成することに基づいて選択されている)の混合物を含有する製剤を用いて誘導される。
【背景技術】
【0002】
世界保健機構(WHO)は、世界の人口の3分の1より多くが、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染しているとみなしている。5から10%の間の成人及び感染した新生児の90%までが、持続的に感染を発症し、世界的なレベルで3億5000万人がウイルスを保有していると考えられている。長期間にわたるHBVの継続的な複製は、保有者のおよそ25%で肝硬変又は肝がんに発展する進行性の肝臓疾病をもたらす。毎年、百万件を超える死亡が、様々な進化形態のこのウイルスによる感染と関連付けられると考えられる(Zuckerman JN.J MED VIROL 2006;78:169〜177)。
【0003】
アルファインターフェロン(IFN−α)又はポリエチレングリコール(PEG)若しくはラミブジン、アデホビル−ジピボキシル、エンテカビル及びテルビブジナ(Telbivudina)のようなヌクレオシド又はヌクレオチドとコンジュゲートしたその変形を用いる治療は、慢性B型肝炎(CHB)における最先端の治療を構成する。全般的に、これらの薬物は、ウイルスの継続的な排除の点で有効性に乏しく、これらの使用は、重要な二次的効果と関連している(Osborn MK他1名、J ANTIMICROB CHEMOTHER.2006;57:1030〜34)。
【0004】
B型肝炎の予防に対して高いパーセンテージの有効性を有するワクチンの開発は、世界レベルでの予防的医薬の重要な功績である。現在のところ、150を超える国が免疫化プログラムにおいて小児、若年者及びリスクグループに抗B型肝炎ワクチンを提供している。最初のワクチン作製は、無症状保有者の血漿から得られた精製不活化HBsAgに基づいていた。これらの調製物は、免疫原性であったが、それにもかかわらず、これらは、より高い安全性を有する酵母で生成された組換えワクチンに迅速に取って代わられた(Zuckerman JN.J MED VIROL 2006;78:169〜177)。現在のところ、効力のあるアジュバントの導入から開始して、より免疫原性で効果的な製剤の開発に研究の焦点が当てられているが、これらの製剤は、慢性感染の治療では成功していない。
【0005】
前世紀の90年代の10年間以降、HBVによる慢性感染の治療としてのワクチン接種の使用を評価するための研究が行われている。この治療ストラテジーは、このウイルスの管理における免疫応答の基本的な役割を証明する結果から、著しい関心を集めている。この主題に従事する研究チームは、ワクチン製剤の投与から開始して、HBVに対する免疫寛容状態を破壊することを期待している(Hui CKら、INT J MED SCI.2005;2:24〜29)。
【0006】
治療目的での従来の予防的ワクチンを用いる免疫療法の分野における最近の結果は、新しい抗原、アジュバント、新しい投与経路及び合理的な併用療法を含む、より効力が高いワクチン候補の使用を探索する必要性を示唆している(Pol Sら、Expert Rev Vaccines 2006;5:707〜16)。最適ワクチン候補の設計は、抗原性成分に関連する側面及び製剤のアジュバント成分に関連する側面を頭に入れておくべきである。
【0007】
遺伝子工学及びバイオテクノロジーセンター(CIGB)は、酵母ピチア・パストリス(Pichia pastoris)を宿主細胞として用いて組換えHBsAgを生成している。この抗原は、90年代の初めから承認され用いられているキューバ抗B型肝炎ウイルスの一部である(Muzio Vら、欧州特許第480525号)。
【0008】
HBsAgは、健常な人において抗体及びヘルパーT細胞の強く特異的な免疫応答を誘導する能力を有する。さらに、HBsAgエピトープは、クラスI主要組織適合系(HLA)の分子により提示され得る(このタンパク質が外因性タンパク質のように抗原提示細胞によりプロセシングされる場合であっても)ことが証明されている。この特性により、アジュバント添加されていないHBsAgは、代替のプロセシング経路により作製されたエピトープにより細胞傷害性応答を誘導することが可能になり、このことは、HBsAg特異的細胞傷害性細胞のレパートリーの拡張を可能にする(Bertoletti A、J Hepatol 2003;39:115〜124)。しかし、この抗原を治療上の免疫化のために用いることは、第II相試験において再現可能な利益をもたらさない。現在のところ、HBVへの慢性感染に対する治療用ワクチンは、存在しない。
【0009】
慢性患者における免疫応答に有利に働くために用いられるストラテジーの1つは、HBcAgをワクチン抗原として用いることである。HBcAgのアミノ酸配列の顕著な特徴は、終末カルボキシ末端に、アルギニンリッチな領域が存在することである。この領域は、天然粒子内でプレゲノムリボ核酸(RNA)をつなぐ機能を有する。組換え粒子の場合、この領域は、重要な免疫学的特性を与える30〜3000ヌクレオチドの範囲のサイズを有する細菌RNAと関連する(Riedl P.J Immunol 2002;168:4951〜59)。
【0010】
HBCの治療における「免疫療法」の概念は、欠陥のある免疫応答の再活性化を意味し、ウイルス複製を制御し、感染を排除又は制御することを目的とする。この概念は、骨髄移植の研究において直接的に確認されている。HBVに対する免疫を有するドナーの細胞を、このウイルスに慢性的に感染した受容者へ骨髄移植すると、この手順は、受容患者の慢性感染を治癒させることができた(Lau GK、Gastroenterology 2002;122:614〜24;SHOUVAL D、ILAN Y.J HEPATOL 1995;23:98〜101)。しかし、HBVに免疫のないドナーを、市販のワクチンを用いて免疫化すると、骨髄リンパ球の受容患者において治療的な応答を生じず、ドナーの天然感染への依存性によるこの治療ストラテジーの産業上の利用可能性に対して重要な制限をもたらしている。
【0011】
HBVへの慢性感染の間に、T及びBエフェクター細胞の応答は、エフェクター細胞及びプロフェッショナルな抗原提示細胞において乏しいか、存在しないか又は機能的に欠損している。しかし、自己限定性又は急性の感染を発症している患者は、表面のタンパク質、ヌクレオカプシド及びポリメラーゼに対するポリクローナルで多重特異性の強い細胞傷害性及びヘルパー応答を示す(Webster GJ、J Virol 2004;78:5707〜19)。一方、慢性感染の間に、異なるウイルス抗原で刺激された末梢血のリンパ球によるTh1関連サイトカイン分泌のレベルは、急性感染の間に起こるものとは反対に、非常に少ない(Jung MC.Virology 1999;261:165〜72;PENNA A、HEPATOLOGY 1997;25:1022〜27)。これらの発見は、特異的免疫応答の効力を高くすることが、治療上の代替となることを示唆する。
【0012】
別の興味深い発見は、HBCから自発的に回復した患者又はIFN−αでの治療に応答した患者は、急性感染を発症する患者におけるものと同様の強度の細胞傷害性応答を発生させることができるということである(Rehermann B、J Clin Invest 1996;97:1655〜65)。さらに、ラミブジンで治療された患者におけるCD4+及びCD8+の細胞応答のレベルの増加が証明され、このことは、ウイルスの継続的な抑制から開始する免疫応答を誘導することが可能であることを示唆した(Boni C、Hepatology 2001;33:963〜71;BONI C、J HEPATOL 2003;39:595〜605)。
【0013】
免疫療法のストラテジーのうち、治療上のワクチン接種は、HBVに慢性的に感染した患者の治療において1990年代の10年間に探索された代替方法である。主な免疫療法のストラテジーは、表面及びウイルスヌクレオカプシド抗原を用いることに焦点を当てていた。
【0014】
B型肝炎への慢性的な感染の管理におけるHBcAgに対する細胞性免疫の重要性は、養子移入により証明された。免疫ドナーの骨髄細胞の養子移入を受けたCHB患者において行われた研究は、これらの患者の血清からHBsAgを排除することが可能であることを証明した。この治療を用いてHBsAgを排除できた患者の研究により、HBVへの慢性的な感染の排除が、HBcAgに特異的なCD4+Tリンパ球の移入と関連することを証明できた(Chee−Kin H、Int J Med Sci 2005;2:24〜29)。
【0015】
抗原提示細胞を用いる免疫療法
樹状細胞は、免疫系のプロフェッショナルな抗原提示細胞であり、特異的免疫のメディエーターであるT及びBリンパ球の活性化を指図及び制御する。1996年から2004年まで、腫瘍抗原を載せた又は腫瘍抗原でパルスした樹状細胞を用いる60を超える臨床研究が行われた(Steinman RM. Nature 2007;449:419〜426)。これらの研究のほとんどは、黒色腫の患者で行われている。多くの患者において、臨床応答は、特異的細胞傷害性T応答の誘導と適合する(Figdor CG.Nat Med 2004;10:475〜480)。明らかに、樹状細胞を用いて治療されたがん患者の臨床的な進展は、満足できるものではない。
【0016】
現在のところ、樹状細胞(免疫療法において用いられる全ての提示細胞のうちで最も進んでいる)を用いる免疫療法の分野における専門家は、抗原でパルスされた樹状細胞が、がんに罹患していない患者において、患者の免疫系における損傷がより低いために、より効果的である可能性が高いと予測している(Onji M、Akbar SMF.Dendritic cells in clinics.2008;第2版、Springer)。しかし、これは、依然として実現しそうもない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記の問題点を解決し、同種又は異種の細胞の刺激のために最適な製剤を提供する。本発明の目的である製剤は、懸濁されているHBsAg及びHBcAg抗原の粒子で形成されている。さらに、特定の適当な比率のこの製剤を用いる細胞性刺激の方法が、樹状細胞、B細胞及びマクロファージを含む異種又は自己の細胞のin vivo又はin vitroにおける最大限の刺激に基づくCHB患者のさらなる受動免疫とともに開示される。本発明の製剤は、500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズの、懸濁されている粒子の混合物としてのHBsAg及びHBcAg抗原を、それぞれ50%と50%から80%と20%のこれらのサイズの粒子の比率で、含有する。
【0018】
細胞性刺激が、未感染の人(ドナー)を、HBsAg及びHBcAg抗原を含有する製剤を用いてin vivoで免疫化すること、特異的に活性化された免疫細胞を抽出すること及びそれを、HBVに慢性的に感染している患者にさらに受動移入することにより行われることを特徴とする受動免疫の方法も、本発明の目的である。本発明の代替の実施形態において、細胞性刺激は、未感染の人(ドナー)をin vivoで免疫化すること、特異的に活性化された免疫細胞を抽出すること、それを、HBsAg及びHBcAg抗原の製剤でin vitroにて再刺激すること、及びそれを、HBVに慢性的に感染している患者にさらに受動移入することにより表される。本発明の別の実施形態において、細胞性刺激は、HBsAg又はHBcAgに免疫のない人の免疫細胞を抽出すること、それを、HBsAg及びHBcAg抗原の製剤を用いてin vitro刺激すること、及びそれを、患者にさらに受動移入することにより生じる。本発明の別の実施形態において、細胞性刺激は、患者の免疫細胞を抽出すること、それを、HBsAg及びHBcAg抗原の製剤でin vitro刺激すること、及び同じ患者にさらに受動移入することにより行われる。
【0019】
本発明において、抗原刺激のためのHBsAg及びHBcAg沈殿物が、それらの物理化学的性質のために、刺激性要素としてのそれらの使用に最適なこれらの抗原の製剤とともに得られる。HBcAgは、デオキシリボ核酸(DNA)及びRNAとして、少量だが有意な量のToll様受容体(TLR)リガンドを含有する核タンパク質として生成された。
【0020】
本発明において、これらの抗原は、HBsAg及びHBcAgの物理的会合を可能にする方法を用いて沈殿される。この方法は、細胞の刺激のレベルが、トランスジェニックマウス及びヒトの両方において最大限になるようにして、HBsAg及びウイルス量のそれぞれのレベルの低下を誘導する。このようにして、HBVへの慢性的な感染の治療におけるこの型の受動免疫の機能性及び重要性が証明された。本発明において、受動免疫は、末梢血単核細胞、B細胞、樹状細胞及びマクロファージを用いて証明され、このことは、患者におけるHBsAg及びウイルス量のレベルを制御するその能力を証明している。
【0021】
本発明は、HBsAg及びHBcAg抗原を含有する製剤を用いてドナーを能動免疫し、さらに、移入の前に、移入される細胞をin vitroで活性化することにより、細胞が受容生物に接種された場合にこれらの抗原に対する応答を最大限にすることから開始して、ドナーにおいて抗HBsAg及び抗HBcAg免疫応答を有効にすることにより、最先端の技術に存在する問題点に対する解決策を提供する。
【0022】
本発明の実施の結果として得られる結果は、APCの同化、活性化及び成熟化の最適な能力を有する抗原を得ること、並びに効果的な免疫応答を得るために採用される方法の重要性を証明する。
【0023】
HBC患者の同時又はそうでない細胞性刺激及び能動免疫のための、懸濁されているB型肝炎ウイルス(HBV)の表面抗原(HBsAg)の粒子及びヌクレオカプシド(HBcAg)の粒子により構成される製剤の使用も、本発明の目的である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】物理的な側面、クロマトグラフィープロファイル及びHBcAgと会合している核酸の存在の研究。A.等価型電子顕微鏡観察、バーのサイズは200nmである。B.高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)による粒子のサイズ及び均質性の研究:HBsAg(上のパネル)及びHBcAg(下のパネル)のプロファイルを示す。運転は、カラムTSK−G6000において、PBS中で0.25mL/minの流量にて行い、100μgの各タンパク質を用いた。検出は、280nmで行った。両方の粒子は、73分の滞留時間を有した。下のクロマトグラムにおける2番目のピークは、HBcAgを希釈している溶液中の非タンパク質成分(エチレンジアミン四酢酸)に相当する。C.アガロース電気泳動における、HBcAgと会合している核酸の存在の検出。レーン1.DNA分子量パターン、2.HBcAg、3.RNAアーゼ(2mg/mL)で37℃にて6時間処理したHBcAg。処理されたHBcAgの濃度は、0.447mg/mLであった。
【図2】フローサイトメトリーによる、溶解されている複合体HBsAg−HBcAgのサイズの増大の研究。A.1×PBS、pH7.0中のHBsAg及びHBcAg抗原の製剤。B.pH4.0にて50mm酢酸溶液に対して1時間透析した後の製剤。C.pH4.0にて50mm酢酸溶液に対して2時間透析した後の製剤。D.pH4.0にて50mm酢酸溶液に対して3時間透析した後の製剤。E.pH4.0にて50mm酢酸溶液に対して5時間透析した後の製剤。F.pH4.0にて50mm酢酸溶液に対して8時間透析した後の製剤。G.pH4.0にて50mm酢酸溶液に対して24時間透析した後の製剤。H.フローサイトメータ校正パールサイズ2.5マイクロメートル。
【図3】HBsAg及びHBcAg抗原の製剤で免疫化されたドナーから開始する、トランスジェニックマウスにおける受動免疫の研究。A.異なる評価時間での、処置されたか又はされていない動物の血清における抗原血の動態(μg/mlでのHBsAgの濃度)。B.マウスの血清における抗HBsAg IgG抗体応答。C.ELISAにより測定した、血清における抗HBcAg IgG抗体応答。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
(例1)懸濁されているHBVの表面及びヌクレオカプシド抗原の酸沈殿物の作製。
HBcAg(CIGB、Cuba)は、大腸菌(Escherichia coli)から精製した183アミノ酸の組換えタンパク質として発現した。組換えHBsAg、サブタイプadw2は、ピチア・パストリスにおいて生成した(CIGB、Cuba)。HBcAgタンパク質の発酵及び精製プロセスは、以前に記載されたようにして行った(Aguilar JC.Immunol Cell Biology 2004;82:539〜546)。この抗原の精製プロセスにより、図1Aからわかるように、高度に精製されたヌクレオカプシド抗原(>95%)が得られる。この抗原は、HBsAgと類似の分子サイズを有し、このことは、これもまたウイルス様粒子を形成し(図1B)、その化学構造と会合している微量の核酸(これらは、図1Cからわかるように、TLR刺激物質として機能する)をさらに含有することを意味する。微量で会合しているこれらのTLRリガンドは、主にRNA及び残量がDNA(ともに細菌起源)として特徴づけることができる。
【0026】
精製HBcAgタンパク質と会合している核物質の存在は、HBsAg及びウシ血清アルブミンのような他のタンパク質(これらは、HBcAgと等濃度である場合に260nmでの吸光度が半分である(データは示さず))に対して、260nmでの吸光度の増加により検出できる。しかし、核物質が粒子と会合しているかを研究するために、臭化エチジウムの存在下でアガロースゲル電気泳動を行った。この実験は、タンパク質が検出されたのと同じ領域において核物質の存在を証明した。
【0027】
RNAアーゼ酵素での処理により、粒子と会合している核物質のほとんどを排除することが可能であり、このことは、RNAが、この核タンパク質の核成分のより高いパーセンテージを構成することを証明した(図1C、レーン2及び3)。総合すると、これらの結果は、ウイルス様粒子の物理的側面及び組換えHBcAgタンパク質の核タンパク質の性質、及びそれと会合してDNAも存在する場合であっても、核酸の主な部分がRNAであることを示す。
【0028】
HBsAg及びHBcAg沈殿懸濁物の作製のために、これらの両方の抗原の混合物を、50mM酢酸の溶液pH4.0に対して、0.1から2mg/mLの間のタンパク質濃度にて透析した。沈殿懸濁物は、10分から24時間の間の期間に透析時間を限定して、粒子サイズに従って選択した。代替の方法は、HBsAg−HBcAg混合物の緩衝溶液の交換であった。このことは、抗原のサイズより小さいサイズ(<20nm)の孔を有するファイバーカートリッジを用いるダイアフィルトレーションにより行うことができた。この場合、酸沈殿プロセスは、pHの値を4.0に調整する間に生じる。両方の沈殿法において、pH変化にさらすことにより、沈殿物のサイズが規定される。沈殿物は、そのサイズに従って選択され、その特徴に応じて、細胞型が、これらの調製物を用いる免疫化の後に刺激される。
【0029】
後に、沈殿物は、要求される製剤に応じてアジュバント添加されるか又はされない。ある変形は、水酸化アルミニウムへの吸着を構成するが、デポー効果アジュバント(塩及び油状アジュバント)又は免疫賦活物質(リポ多糖、サポニン及びその誘導体)の群の他のアジュバントへの吸着が行われている。
【0030】
(例2)HBsAg及びHBcAg抗原懸濁物の分子サイズの特徴決定、並びに同化及び抗原刺激のための最適サイズの選択のためのプロセス。
プロフェッショナルな抗原提示細胞の刺激のために最適なサイズの沈殿物を選択することを目的として、4つの沈殿の変形を選択した。沈殿の変形は、予め決定されたインキュベーション時間での透析変形とダイアフィルトレーション及び4.0へのpH調整との両方について、例1に記載される方法により生成した。
【0031】
サイズの選択は、上限として2.5マイクロメートルのサイズパターンパールを校正のために用いるフローサイトメトリーにより行った。50nmから2.5マイクロメートルとの間の範囲を実験において採用し、このことは、全般的に、同化と細胞性刺激とが、沈殿物のサイズ及び細胞型に依存して異なることを証明した。マクロファージは、500nmより大きいサイズの沈殿物をより容易に同化する細胞であるとみられる。このようにして、沈殿物混合物を選択して、抗原性混合物の刺激の性能を増加した。その結果、これらの混合物を用いて、非沈殿抗原を用いて得られるものと比べて、より高いレベルの刺激及び免疫原性が得られた。
【0032】
図2は、異なる沈殿物をフローサイトメータに用いて得られた図及びヒストグラムを示す。「前方散乱」レベルのシフトが明らかにされ、このことは、得られた粒子のサイズの増大を表した。このサイズ増大は、抗原の混合物(HBsAg及びHBcAg)のインキュベーション時間と正比例して生じる。「側方散乱」レベルの増加も観察され、これは、図2Hに示されるように、2.5マイクロメートルのビーズパターンを考慮するならば観察されるように、2.5マイクロメートルを達成した22nmのサイズの抗原により形成された、懸濁されている粒子の固有の皺を反映する。
【0033】
フローサイトメトリーによりヒストグラムにおける四分円及び範囲の系を確立できることを考慮して、沈殿した粒子の選択を、確立された範囲での四分円におけるその座標の関数において又はヒストグラムの図における範囲の確立により行った。図2において、透析における抗原混合物のインキュベーションの結果を示し、これは、異なるサイズの沈殿物の選択を可能にする。同様の結果が、酢酸緩衝溶液のpHをpH7.0からpH4.0まで低下する(しかし、異なる範囲の時間で)ことによる直接沈殿により得られた。最終選択は、フローサイトメトリー及び免疫原性の基準により行った。
【0034】
(例3)HBsAgを発現するトランスジェニックBalb/cマウスへの、HBsAg及びHBcAg抗原を含む製剤で以前に免疫化されたBalb/cマウスからの細胞の養子移入を用いる受動免疫の研究。
ワクチン候補の開発に基づく免疫療法は、慢性B型肝炎療法におけるストラテジーの1つを構成する。候補の効果は、この疾病を特徴づけるウイルス抗原に対する寛容状態を克服することができる効力のある体液性及び細胞性免疫の発生に依存する。
【0035】
本発明において、ドナーにおける抗HBsAg及び抗HBcAg免疫応答が、HBsAg及びHBcAgを含有する製剤を用いる能動免疫により強化される。さらに、移入される細胞は、移入の前にin vitroで活性化されるので、これらの抗原に対する応答は、受容生物に細胞が接種されるときに最適である。この人工的な様式により、ヒトに存在しない型の応答が発生し、このことにより、類似のハプロタイプを有する人を含むドナーの許容範囲を、ドナーがHBVに感染したことがあるか否かに関係なく、増加させることが可能になった。
【0036】
本実施例において、細胞の養子移入により、鼻/非経口経路により投与されたHBsAg及びHBcAg抗原を含有するワクチン候補を用いるワクチン接種により生じた免疫応答の効果が、HBV持続感染のモデルとしてHBsAgを発現するトランスジェニックマウスの状況において、評価される。この研究の目的の1つは、移入された免疫応答の、トランスジェニックマウスの血清におけるHBsAg(抗原血)の濃度に対する影響を評価することであった。また、記載される製剤を用いる鼻/非経口経路による能動免疫により誘導される応答の影響を、HBsAgでin vivo及びin vitroにて刺激された細胞の養子移入により発生する効果と比較した。さらに、移入された抗HBsAg抗体応答を、この抗原についてのトランスジェニックマウスの状況において研究した。血液化学及び組織学的パラメータに対する免疫性の養子移入の効果を、鼻/非経口経路により投与されるワクチン候補の安全性の尺度として評価した。本研究において、Balb/cマウス(H−2dハプロタイプ、CENPALAB、Cubaから入手)及びHBsAg(+)トランスジェニックマウス(Balb/c遺伝子基礎を有する、CIGBから入手)を用いた。
【0037】
Balb/cマウスにおける抗HBsAg免疫の作製。
免疫化計画は、8から12週齢の間の雌Balb/cマウスにおいて行った。マウスを、鼻内(IN)及び非経口経路で同時にHBsAg及びHBcAg抗原を含有するワクチン候補で免疫化し、この最後の場合において筋内(IM)、皮下(SC)及び皮内(ID)経路を評価した。用量(100μLの容量中)を、0日目及び14日目に投与し、ブースター用量を、移入前の100日目に投与した。血液抽出は、後眼窩神経叢により−2、10及び25日目に行った。表1は、免疫化計画設計を反映する。
【表1】

【0038】
これらの処置により発生する体液性免疫応答の評価を、ELISAにより行った。各用量の後の抗HBsAg IgG及びIgGサブクラスを測定した。細胞性免疫応答は、ELISPOT技術により、1回目の投与の10日後に評価した。採用したELISPOTは、CD8+脾細胞による抗HBsAg特異的ガンマIFN分泌を測定するように設計された。これらの評価の結果は、免疫化群5が、最高の細胞性応答と、研究した残りの群と同様の体液性応答とを生じたことを示す。このことに基づいて、この群の2匹の動物を、養子移入のための脾細胞ドナーとして選択した。選択された免疫化用量は、1:1(HBsAg:HBcAg)の比率であり、懸濁されている沈殿した抗原の量は、10%から50%の間の範囲であった。他の比率も評価した。
【0039】
免疫脾細胞の獲得
ブースター用量を投与した15日後に、群5の2匹のマウス及び群7(プラセボ)の3匹のマウスを犠牲にし、脾臓を抽出した。群5の脾臓及び群7の脾臓を、それぞれまとめた。脾臓を、通常の脾細胞抽出のために処理した。脾細胞を、100μLのホスフェート緩衝食塩水溶液(1×PBS)中の30×10細胞の分割量に分けて、受容マウスにそれらを移入した。これらの分割量のうち2つは、移入の前に再刺激を受けた(このために、これらを、それぞれHBsAg及びHBcAg抗原を含む500μLの製剤と、500μLのRPMI補充培地とでインキュベートした)。インキュベーションは、15mlチューブ内で1h、37℃及び5%のCOにて行った。試料を、それぞれ15分間かき混ぜた。インキュベーションの後に、これらの2つの細胞分割量を洗浄し、移入のために100μLの1×PBSに別々に懸濁した。
【0040】
免疫性の養子移入
HBsAgを発現するトランスジェニックマウスを、受容者として用いた。採用したトランスジェニックマウスは、両方の性別で、16から20週齢の間であった。これらを、表2に示す異なる処置群に割り当てた。脾細胞移入の前に、部分血液抽出を行って、血清中のHBsAg基底レベルを確認した。2日後に、100μLの容量の1×PBS中の30×10脾細胞を、腹腔内(IP)投与した。免疫性の養子移入の効果を評価するために、血液抽出を、5週間にわたって毎週、後眼窩神経叢により行った。移入後8週目に、動物を計測して秤量し、その後、動物を出血させて犠牲にした。主要臓器を秤量し、組織学的分析のためにホルムアルデヒド中で保存した。この実験点で抽出した血液の一部は、肝トランスアミナーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ及びクレアチニンのような血液化学的パラメータの決定に用いた。
【表2】

【0041】
HBsAgトランスジェニックマウスの血清におけるHBsAgの定量。
血清におけるHBsAgのレベルを決定するために用いたELISAプロトコールは、本発明者らの実験室で開発した。ELISAプレートを20分間、50℃にて、Hep4と命名した抗HBsAgモノクローナル抗体(CIGB、Cuba)で被覆した。その後、PBS 1×−0.05% Tween20を用いる一連の洗浄を行い、プレートを、1時間、50℃にて、2%脱脂乳含有1×PBS中で1/200に希釈した血清試料とインキュベートした。このステップにおいて、既知の濃度のHBsAg(CIGB、Cuba)標準曲線を各プレートに導入した。標準物質は、141ng/mlの濃度から開始して系列希釈した。
【0042】
陰性対照として、非トランスジェニックBalb/cマウスの免疫前血清の混合物を用いた。インキュベーション時間が一旦経過すると、洗浄を行い、プレートを、30分間、50℃にて、ペルオキシダーゼとコンジュゲートした、緩衝液(11mlの蒸留水中に0.44gの脱脂乳、220μL Tween20)で希釈した抗HBsAgモノクローナル抗体Hep1とインキュベートした。一連の洗浄の後に、プレートを10分間、室温にて、基質(シトレート−ホスフェート緩衝液;1mg/mLオルト−フェニレンジアミン;0.1% H)とインキュベートした。最後に、反応を、50μL/ウェルの3M HSOを加えて停止した。得られた光学密度(O.D)を、492nmにて、プレートリーダー(Sensident Scan、Merck)を用いて読み取った。
【0043】
以前のHBsAg免疫性を有する細胞を受容した全てのマウスは、移入後1週間の評価から血清におけるHBsAgの著しい減少を示し、ゼロ時と2週目及び3週目との間で有意な差が見出された(p<0.05)。4週目(35日目)以降、血清におけるHBsAg濃度が増加し始めたことが観察され、このことは、移入されたマウスにおける抗原血の制御が消滅し始めたことを示した。この時点から8週目(63日目)まで、ゼロ時に対する抗原血における統計学的な差は観察されなかった(図3A)。
【0044】
図3Aに示すように、HBsAg特異的免疫性を有する脾細胞を受容したマウスの場合、血清におけるHBsAg濃度の著しい減少が検出された(これは、7日目と28日目との間でより顕著であった)。しかし、プラセボ脾細胞を受容したか又は食塩溶液で免疫化されたマウスについて、血清におけるHBsAg濃度の変動が検出されたが、値は、ゼロ時と有意に異なることはなく、5μg/ml未満の値は検出されなかった。
【0045】
これらの結果は、細胞性免疫の養子移入により、トランスジェニック動物の血清における循環HBsAgのレベルを、効率的に減退させることが可能であることを示す。移入された免疫応答の結果としての抗原血に対して確立された制御は効果的であり、独特の細胞移入の後の3週間付近まで続いた。
【0046】
その後行った別の実験は、HBsAgのみを含有する製剤で刺激したドナー動物が、抗原量を超えるいずれの制御も生じず、これらのマウスにおいて、HBsAg及びHBcAg組み合わせ製剤を用いて明らかにされるものと比較してより低い応答を発生したことを考慮して、この効果が、HBsAg上のHBcAgの刺激と関連することを明らかにした。
【0047】
血清における抗HBsAg IgG応答。
HBsAg特異的IgG抗体応答は、マウス79を除いて、この抗原に対する以前の免疫性を有する脾細胞を受容した全てのマウスにおいて検出された(図3B)。このことは、この特定の動物について得られた抗原血の結果(HBsAg濃度のわずかな減少だけが存在した)と一致する。陽性の抗HBsAg応答を有する動物において、検出された力価は高く(>10)、3週目以降に減退し始めた。このことは、4週目(35日目)付近でこれらの動物について観察された抗原血の増進と関連付けることができた。プラセボ細胞又は食塩水溶液の移入を受けた群は、HBs特異的抗体力価を示さなかった。
【0048】
血液化学的パラメータの評価
8週目の研究の最後に、血液化学的パラメータを評価した。血液化学的研究は、HBsAg免疫脾細胞を、肝臓、腎臓及び他の臓器において HBsAgを構成的に発現するトランスジェニックマウスに養子移入することによる潜在的な臓器損傷を測定することを目的として設計された。ともに肝機能のマーカーであるALT及びアルカリホスファターゼ、並びに腎機能のマーカーとしてのクレアチニンの決定を行った。全てのマウス(処置及びプラセボ)においてALT及びクレアチニンについて得られた値は、これらの動物についての正常な値の範囲内であった。
【0049】
処置あり(抗HBsAg免疫性を有する脾細胞を受容した)と処置なし(プラセボ脾細胞又は1×PBS溶液を受容した)との間の統計学的比較は、いずれの評価パラメータについても、有意な差を示さなかった。性別あたりで行った比較は、アルカリホスファターゼの場合においてのみ差を示し、雄についてより高い値が得られた。
【0050】
組織学的分析
移入後8週目(63日目)にて、研究の全ての動物を犠牲にし、全ての関係する臓器を抽出して秤量した。処置の開始時の年齢並びに最後の体重及びサイズを含む動物のデータは、処置の結果として有意な差が存在しないことを明らかにした。抽出された臓器を、組織学的分析のためにホルムアルデヒドに入れた。測定したパラメータのうちのいくつかの統計学的比較を行った。結果は、処置あり及び処置なし動物の間で、いずれの臓器の重量についても、動物に関して差が存在しないことを示す。性別間でのいくらかの差が見出され、雄の場合にいくらかの臓器についてより高い値が得られた。
【0051】
In vitroでの再刺激は、免疫脾細胞の養子移入を受けたマウスにおける血清抗HBcAg免疫応答を増進する。
Balb/cトランスジェニックマウスに移入された免疫脾細胞が、効力のある抗HBs及び抗HBc免疫応答を有するマウスに由来することを考慮して、本発明者らは、抗HBc応答が、受容マウスの血清において検出可能であるかを評価することを決定した。
【0052】
図3Cに示すように、組み合わせ製剤での以前のin vitro再刺激を移入され受容したマウス(マウス69及び71)だけが、HBcAgに対して高いIgG抗体応答を維持した。
【0053】
以前の抗HBcAg免疫性を有するが、in vitro再刺激されなかった脾細胞を受容した動物(マウス29、35及び79)は、プラセボ脾細胞を移入されたマウス又は1×PBSで免疫化されたマウスで観察されたものと同様に、血清におけるHBcAg特異的IgG応答を示さなかった。この結果は、この型の免疫化を行う場合に、抗HBcAg免疫応答の効力を高めることが可能であることを明らかにする。
【0054】
本研究において、異なるサイズ(沈殿物の50%は、500nm未満のサイズを有し、残りの50%は、500nmを超えるサイズを有した)を有する沈殿物混合物の特定の変形を選択したが、懸濁されている用いた沈殿HBsAg及びHBcAgの比率は、示差的な有効性を有し、異なるサイズの沈殿物の混合物の評価の結果により、異なる抗原提示細胞の集団に免疫原を向けることが可能になり、このことは、最終製剤の同化、細胞性活性化の能力及び免疫原性に影響を有する。
【0055】
抗原提示細胞活性化において得られた結果は、懸濁されている抗原の製剤が用いられた場合に、処理なしの同じ製剤と比較して、驚くべきことに優れていた。
【0056】
上記で得られた結果全てをまとめて、免疫性の養子移入が効果的であると結論付けることができる。なぜなら、これは、HBsAg及びHBcAg組み合わせ製剤を用いる能動免疫を用いて達成されなかった、血清における循環HBsAgのレベルを減退させたからである。また、以前に記載された免疫性の養子移入は、安全であった。なぜなら、組織学的損傷は、研究した臓器において認識されなかったからである。これらの結果は、免疫療法の安全性を証明した。なぜなら、移入された免疫性は、評価されたモデルにおける血清HBsAg濃度を2週間を超えて、そしていくらかの場合においては検出不可能になるまで抑制できたからである。さらに、ヒトにおいてきわめて重要な抗HBcAg免疫応答の存在に好ましい、移入の前にHBsAg及びHBcAgをin vitroで再刺激することの利益が証明された。
【0057】
(例4)HBsAg及びHBcAg抗原の製剤でin vitroでパルスされた、非免疫化マウスの異種細胞の移入
HBsAg及びHBcAg抗原の混合物でin vitroにおいて刺激又はパルスされた異種細胞が、これらの抗原に対して強い免疫応答を誘導することを証明することを目的として、HBsAgについてトランスジェニック及び非トランスジェニックのBalb/cマウスにおける実験を行った。非トランスジェニックBalb/cマウスは、ドナーとして採用した。
【0058】
8匹のBalb/cマウスを犠牲にし、それらの脾臓を抽出した。脾臓細胞を、例3で説明した方法に従って精製した。全脾臓細胞又はこれらの脾臓細胞から得られる特定の細胞集団(B細胞、樹状細胞及びマクロファージ)を、抗原の異なる製剤及び比率で、並びに異なる上清濃度にて、in vitroにて刺激した。刺激の後に、細胞を3回洗浄し、HBsAgトランスジェニック及び非トランスジェニックマウスに移入した。
【0059】
トランスジェニック及び非トランスジェニックの全ての移入Balb/cマウスは、検出可能な免疫応答を発生した。この応答は、HBsAgトランスジェニック群に属するこれらの受容マウスにおいてHBsAgレベルの著しい低下を誘導でき、これは、1〜20週間、そしていくつかの場合においては一定して検出できた。同じ製剤を用いる能動免疫は、この結果に到達しなかった(データは示さず)。
【0060】
(例5)HBsAg及びHBcAg抗原の製剤でin vitroでパルスされた、非免疫化マウスの同種細胞の移入。
刺激された同種又はHBsAg及びHBcAg抗原の混合物でin vitroにてパルスされた細胞が、これらの抗原に対して強い免疫応答を誘導することを証明することを目的として、HBsAgトランスジェニック及び非トランスジェニックのBalb/cマウスにおける実験を行った。非トランスジェニックBalb/cマウスは、脾細胞ドナーとして採用した。
【0061】
8匹のBalb/cマウスを犠牲にし、脾臓を抽出した。脾臓細胞を、例3で説明した方法に従って精製した。全脾臓細胞又は特定の脾臓細胞集団(B細胞、樹状細胞及びマクロファージ)を、抗原の異なる製剤及び比率で、並びに異なる上清濃度にて、in vitroにて刺激した。刺激の後に、細胞を3回洗浄し、HBsAgトランスジェニック及び非トランスジェニックマウスに移入した。
【0062】
トランスジェニック及び非トランスジェニックの全ての移入Balb/cマウスは、検出可能な免疫応答を発生した。この応答は、HBsAgトランスジェニック群に属するこれらの受容マウスにおいてHBsAgレベルの著しい低下を誘導できた。血清におけるHBsAgレベルの低下は、1〜20週間、そしていくつかの場合においては一定して検出できた。同じ製剤を用いる能動免疫は、この結果に到達しなかった(データは示さず)。
【0063】
(例6)異なる抗原並びに異なる粒子サイズ及び比率の抗原性混合物を用いる、樹状細胞の抗原刺激の研究
トランスジェニックマウスにおいて行った実験は、細胞に対する抗原の刺激効果が、HBsAg上のHBcAgにより生じる刺激、及びHBcAgとHBsAgとの間の相互作用の性質(これは、粒子サイズ及び混合物中の異なる粒子サイズの比率に関連する)に関連付けられることを明らかにした。
【0064】
ドナーとして用いた動物が、HBsAgだけを含有する製剤で刺激されたならば、抗原量についての制御は生じない。これらの動物は、HBsAg及びHBcAg組み合わせ製剤で刺激された動物に対して、より低い応答を生じた。異なるサイズの沈殿物の混合物は、異なる抗原提示細胞の型において最も効力のある刺激を生じた。この結果は、トランスジェニックマウスにおける循環HBsAgの制御の能力の測定から得られた。
【0065】
まとめると、より高い刺激効力の変形は、500nm未満のサイズの50〜80%の範囲及び500nmを超えるサイズの20〜50%の範囲の比率からなる。この範囲は、B細胞、マクロファージ及び樹状細胞を含有する抗原提示細胞混合物を刺激し、これらの細胞混合物を、HBsAgトランスジェニックマウスモデルに移入することにより研究され、HBsAgを制御する能力における差が明らかになった(表3)。認識できるように、変形E及びFは、刺激の最適範囲を示す。
【表3】

【0066】
マクロファージ、樹状細胞及びB細胞における各処理の刺激能力を、細胞表面の活性化マーカーの発現を研究することにより特徴決定した。刺激能力は、処置混合物E及びFについてより高かった。この結果は、混合物中に含まれる各細胞集団のより高い抗原同化能力と一致し得る。
【0067】
溶解されているHBsAg及びHBcAg混合物を含む製剤B(平均粒子サイズが50nm未満の非沈殿製剤)が、トランスジェニックマウスに移入された後に、血清HBsAg濃度を著しく減少させる免疫応答を生じることができることを強調することは価値がある。
【0068】
しかし、HBsAg濃度の最も重要な低下は、C及びDの沈殿物混合物により生じ、いくつかの場合において、継続的な検出できないレベルを示した。混合物Gは、より低い刺激レベルを示し、HBsAg濃度は混合物E及びFより減少し、このことは、これらの製剤及び確立された比率の、養子免疫移入法による効力のある免疫応答の発生における特異性を明らかにする。
【0069】
(例7)慢性B型肝炎患者における受動免疫療法研究。
慢性HBV感染の患者を、研究のために各10名の患者の4群に分けた。第1群は、ハプロタイプ一致ドナーの末梢血単核細胞で処置した。第2群は、以前の自己提供から精製した細胞(同種細胞)を受けた。両方の場合において、細胞は、HBsAg及びHBcAg製剤で刺激した。他の2群は、同じ処置を受けたが、再接種された細胞は、抗原で刺激されなかった。
【0070】
刺激された細胞を注入された患者が、刺激されていない細胞を受容した患者において認識できなかった免疫応答を発生したことが明らかにできた。これと一致して、著しいHBsAgレベル及びウイルス量の低下が、群3及び4に対して、及び処置前に得られた値と比較しても、群1及び2で明らかになった。
【0071】
(例8)パルスされたマクロファージ、B細胞及び樹状細胞を用いる、慢性B型肝炎患者における受動免疫研究
慢性HBV感染の患者を、研究のために各20名の患者の6群に分けた。第1群は、ハプロタイプ一致ドナーの末梢血単球から単離した樹状細胞で処置した。第2群は、以前の自己提供から精製した細胞(同種細胞)を投与した。
【0072】
両方の群を、HBsAg及びHBcAg製剤で刺激された細胞又は刺激されていない細胞のいずれかを受容する各10名の患者の2群にさらに分けた。他の2群は、B細胞を採用する同じ処置を受けた。残りの2群は、マクロファージを富化した接着細胞で処置した。
【0073】
刺激された細胞を注入された患者は、刺激されていない細胞を受容した患者において認識できなかった免疫応答を生じた。これと一致して、著しいHBsAgレベル及びウイルス量の低下が、パルスされた細胞を受容した群において明らかになり、このことは、異なる細胞型についてHBsAg及びHBcAg抗原での抗原刺激の有用性を明らかにした。
【0074】
この型の研究は、トランスジェニックマウスモデルにおいて、様々な比率の懸濁されている沈殿抗原比率を選択するか又はしないことにより最適化された。最適な刺激の変形を得ることにより、得られる免疫応答の増進が可能になった。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図2G】

【図2H】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型肝炎ウイルス(HBV)の表面(HBsAg)及びヌクレオカプシド(HBcAg)抗原の製剤であって、前記抗原の懸濁されている沈殿物を含むことを特徴とする上記製剤。
【請求項2】
懸濁されている沈殿物が、500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズの粒子の混合物を構成する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズの粒子が、それぞれ50%と50%から80%と20%の比率である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
懸濁されている沈殿物が、これらの抗原の混合物を酸沈殿に供した結果として得られる、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
酸沈殿が、酸性溶液に対する透析又はダイアフィルトレーションにより達成される、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
B型肝炎ウイルス(HBV)の表面(HBsAg)及びヌクレオカプシド(HBcAg)抗原の懸濁されている沈殿物により形成される、これらの抗原の製剤を得る方法であって、a)HBsAg及びHBcAg抗原の混合物を調製することと、b)この混合物を酸沈殿に供することと、c)異種又は自己の抗原提示細胞の最大限のin vivo又はin vitro刺激を生成するように、沈殿物をそれらのサイズに従って選択することとを特徴とする上記方法。
【請求項7】
酸沈殿に供される混合物中のHBsAg及びHBcAg抗原の濃度が、0.1から2mg/mLの間のタンパク質である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸沈殿が、酸性溶液に対する透析又はダイアフィルトレーションにより達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
透析又はダイアフィルトレーションのための酸性溶液が、酢酸、好ましくはpH4.0の50mM酢酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酸沈殿が、10分から24時間の間の期間続く、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
沈殿物の粒子のサイズが、500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズを有する粒子がそれぞれ50%と50%から80%と20%の比率になるように選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
刺激因子が、B型肝炎ウイルス(HBV)のHBsAg及びHBcAg抗原の懸濁されている沈殿物により構成される製剤であることを特徴とする、受動免疫療法のための細胞刺激の方法。
【請求項13】
懸濁されている沈殿物が、500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズの粒子の混合物を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
刺激する細胞集団が、非感染個体、HBVに免疫のない個体及び慢性B型肝炎(CHB)患者により構成される群から選択される個体に由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
刺激する細胞集団が、末梢血単核細胞、樹状細胞、B細胞及びマクロファージにより構成される群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
細胞の刺激が、個体から単離された細胞のin vitro刺激、前記個体のin vivo免疫化により生じる、又は両方の刺激ストラテジーが組み合わされる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
a)細胞を、B型肝炎ウイルス(HBV)のHBsAg及びHBcAg抗原の懸濁されている沈殿物により構成される製剤で刺激することと、b)刺激された細胞を、CHB患者に移入することとを特徴とする、CHB患者の受動免疫の方法。
【請求項18】
懸濁されている沈殿物が、500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズの粒子の混合物を構成する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
刺激する細胞集団が、非感染個体、HBVに免疫のない個体及び慢性B型肝炎(CHB)患者により構成される群から選択される個体に由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
刺激する細胞集団が、末梢血単核細胞、樹状細胞、B細胞及びマクロファージにより構成される群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
細胞の刺激が、個体から単離された細胞のin vitro刺激、前記個体のin vivo免疫化により生じる、又は両方の刺激ストラテジーが組み合わされる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
CHB患者の同時又はそうでない細胞性刺激及び能動免疫のための、B型肝炎ウイルス(HBV)の表面(HBsAg)及びヌクレオカプシド(HBcAg)抗原の懸濁されている沈殿物により構成される製剤の使用。
【請求項23】
懸濁されている沈殿物が、500nm未満のサイズ及び500nmを超えるサイズの粒子の混合物を構成する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
刺激する細胞集団が、末梢血単核細胞、樹状細胞、B細胞及びマクロファージにより構成される群から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
細胞の刺激が、個体から単離された細胞のin vitro刺激、前記個体のin vivo免疫化により生じる、又は両方の刺激ストラテジーが組み合わされる、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
刺激する細胞集団が、非感染個体、HBVに免疫のない個体及び慢性B型肝炎(CHB)患者により構成される群から選択される個体に由来する、請求項22に記載の使用。

【図3】
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【公表番号】特表2013−505971(P2013−505971A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531233(P2012−531233)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/CU2010/000003
【国際公開番号】WO2011/038701
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】