説明

治療剤

【課題】 テアニンは、抗ストレス作用(特許第2904655号公報)、脂質利用促進作用(特開2008−31080号公報)、脳機能改善作用(特開平8−73350号公報)、血圧降下作用(特開平5−229938号公報)、喫煙欲求抑制作用(特許第3730522号公報)を有することが知られている。本発明の課題は、これら以外の種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である、テアニンを有効成分とする治療剤の提供にある。
【解決手段】 テアニンを有効成分とする、抗アレルギー剤、高尿酸血症の予防または改善剤、抗骨粗鬆症剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テアニンを有効成分とする各種疾病に有用な治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テアニンは、抗ストレス作用(特許文献1)、脂質利用促進作用(特許文献2)、脳機能改善作用(特許文献3)、血圧降下作用(特許文献4)、喫煙欲求抑制作用(特許文献5)を有することが知られている。
しかしながら、テアニンが、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効であるとの見地はない。
【特許文献1】特許第2904655号公報
【特許文献2】特開2008−31080号公報
【特許文献3】特開平8−73350号公報
【特許文献4】特開平5−229938号公報
【特許文献5】特許第3730522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、テアニンを有効成分とすることを特徴とする抗アレルギー剤である。
請求項2に記載の発明は、テアニンを有効成分とすることを特徴とする高尿酸血症の予防または改善剤である。
請求項3に記載の発明は、テアニンを有効成分とすることを特徴とする抗骨粗鬆症剤である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】
本発明で用いられるテアニンは、特許文献5に記載されているように、グルタミン酸の誘導体(γ−グルタミルエチルアミド)であり、天然には茶葉に多く含まれるアミノ酸成分である。
テアニンの製造法としては、茶葉から抽出する方法、有機合成反応によりテアニンを得る方法(Chem.Pharm.Bull., 19(7) 1301-1307(1971) )、グルタミンとエチルアミンの混合物にグルタミナーゼを作用させてテアニンを得る方法(特公平7−55154号公報)、エチルアミンを含有する培地で茶の培養細胞群を培養し、培養細胞群中のテアニン蓄積量を増加させつつ培養細胞群の増殖促進を図る方法(特開平5−123166号公報)等があり、いずれの方法でも良い。また、テアニンは精製品、粗精製品、抽出エキス等、いずれの形態のものでもよく、市販品でも良い。なお、ここでいう茶葉とは、緑茶、ウーロン茶、紅茶等が挙げられる。
【0008】
また、テアニンはL−テアニン、D−テアニン、DL−テアニンいずれも使用可能であるが、中でもL−体は食品添加物にも認められており、経済的にも利用しやすいため、本発明においては、L−体が好ましい。
【0009】
テアニンの摂取量は、疾病、性別、年齢、体格等を考慮し、適宜決定すればよいが、例えば0.01〜10mg/kg体重、より好ましくは0.1〜10mg/kg体重、さらに好ましくは0.8〜10mg/kg体重である。
【0010】
本発明の治療剤は、公知の方法により適宜製剤化することができる。即ち、本発明に有用な固形製剤または液状製剤は、テアニンと添加剤とを混合し、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。添加剤としては、例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤または香料などが挙げられる。
【0011】
上記賦形剤としては、例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール或いはキシリトールなどの糖アルコール、ブドウ糖、白糖、乳糖或いは果糖などの糖類、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリン、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0012】
上記pH調整剤としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、リン酸水素ナトリウムまたはリン酸二カリウムなどが挙げられる。
上記清涼化剤としては、例えばl−メントールまたはハッカ水などが挙げられる。
上記懸濁化剤としては、例えば、カオリン、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、メチルセルロースまたはトラガントなどが挙げられる。
上記希釈剤としては、例えば精製水、エタノール、植物油または乳化剤等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサンまたはシリコン消泡剤などが挙げられる。
【0013】
上記粘稠剤としては、例えばキサンタンガム、トラガント、メチルセルロースまたはデキストリンなどが挙げられる。
上記溶解補助剤としては、例えばエタノール、ショ糖脂肪酸エステルまたはマクロゴールなどが挙げられる。
上記崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチまたは部分アルファー化デンプンなどが挙げられる。
【0014】
上記結合剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸プロピレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0015】
上記滑沢剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セタノール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ミツロウまたはサラシミツロウなどが挙げられる。
上記抗酸化剤としては、例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、アスコルビン酸またはクエン酸などが挙げられる。
【0016】
上記コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートまたはセラックなどが挙げられる。
上記着色剤としては、例えばウコン抽出液、リボフラビン、酸化チタンまたはカロチン液などが挙げられる。
【0017】
上記矯味矯臭剤としては、例えばクエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、果糖、D−ソルビトール、ブドウ糖、サッカリンナトリウム、単シロップ、白糖、ハチミツ、アマチャ、カンゾウ、クエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、オレンジ油、トウヒチンキ、ウイキョウ油、ハッカまたはメントールなどが挙げられる。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類またはショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチンまたはセタノールなどが挙げられる。
上記香料としては、例えば、動物性香料或いは植物性香料等の天然香料、または単離香料或いは純合成香料等の合成香料などが挙げられる。
【0018】
本発明のテアニンは、飲食品材料に配合してもよい。このような材料としては、例えば、パン、チューインガム、クッキー、チョコレート、シリアル等の固形食品、ジャム、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー等のジャム状、クリーム状またはゲル状食品、ジュース、コーヒー、ココア、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の飲料等が挙げられる。また、調味料、食品添加物等に配合することもできる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明で使用されるテアニンは、抗アレルギー剤、高尿酸血症の予防または改善剤、抗骨粗鬆症剤としてきわめて有用である。以下、上記各種薬効について実施例でもって説明する。
【0020】
実施例1(抗アレルギー剤としての有用性)
特許文献5の製造例2に記載の方法にしたがってテアニン粉末を調製した。すなわち、茶(Camellia sinensis)葉10kgを熱水で抽出後、得られた抽出液をカチオン交換樹脂にかけ、1N NaOHにより溶出した。溶出画分を活性炭に通し、15%エタノールによる溶出画分をRO膜(日東電工(株)製 NTR 729 HF)を用いて濃縮した。次いで、濃縮物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、更に再結晶を行い、L−テアニン24.8gを得た。以下、これを粉末1という。
【0021】
RAST法による食物アレルゲン陽性の慢性じんま疹の患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共に前記粉末1を1mg、1カ月投与した。結果を以下の表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2
RAST法によるアトピー性皮膚炎患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共に実施例1の粉末1を1mg、1カ月投与した。結果を以下の表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例3(高尿酸血症の改善効果)
実験方法
供試動物はWistar系ラット雌(8週令、体重約180g)を1群6匹で用いた。
試験飼料に0.75%の濃度でアデニンを加えてラットに給与し、腎臓からの尿中への尿酸排泄阻害を起こさせて高尿酸血症のモデル動物とした。
対照群は、上記の0.75%アデニン飼料のみ、薬剤投与群は、0.75%アデニンと実施例1の粉末1含有飼料とした。飼料は自由摂取としたが、薬剤投与群の試験飼料中の上記粉末1の濃度を、摂取量が1mg/kg体重となるように調整した。試験開始日及び24日目に血中の尿酸値を測定した。
その結果、対照群の試験開始日の血中尿酸濃度は、0.57mg/mlであり、24日目が2.33mg/mlであったのに対し、薬剤投与群の24日目の血中尿酸濃度は0.85mg/mlであった。
この結果から明らかなように、対照群では血中尿酸濃度が大幅に増加するのに対し、薬剤投与群ではいずれもその濃度は増加しなかった。したがって、テアニンを有効成分として含有する薬剤は、高尿酸血症の予防または改善剤として有用であることが示された。
【0026】
実施例4(抗骨粗鬆症効果)
骨粗鬆症改善効果試験
SD系ラット(22週齢)メスの卵巣を外科的に取り除き、骨粗鬆症のモデルラットを作成した。卵巣摘出ラットを7匹ずつ6群に分け、35日間の試験期間中、1日置きに(計17回)、前記粉末1の摂取量が1mg/kgとなるように、生理食塩水溶解した液体を2ml経口投与した。飼料はオリエンタル酵母株式会社のマウス・ラット・ハムスター用固形飼料CRF−1を用い、給餌および給水方法は自由摂取とした。試験期間中、各群間で、餌の摂取量に差は認められなかった。試験開始後35日目にラットの体重を測定した後、大腿骨を取り出した。大腿骨は、接着組織および筋肉を取り除いて分析に使用した。大腿骨の体積を測定した後、エタノールで3回洗浄し、次にアセトンで3回洗浄したのち、一晩乾燥し、その後、重量を測定して大腿骨の乾燥重量を求めた。体積および乾燥重量から、骨密度(乾燥重量g/体積mm3 )を測定した。なお対照実験として、前記粉末1を含まない生理食塩水をラットに投与したこと以外は、上記実験を繰り返した例(比較例)も併せて、その結果を表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例4と比較例とを対比したところ、実施例4はp<0.05の危険率で有意差が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テアニンを有効成分とすることを特徴とする抗アレルギー剤。
【請求項2】
テアニンを有効成分とすることを特徴とする高尿酸血症の予防または改善剤。
【請求項3】
テアニンを有効成分とすることを特徴とする抗骨粗鬆症剤。

【公開番号】特開2009−143921(P2009−143921A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−318726(P2008−318726)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】