説明

法面張りブロック及びその製造方法

【課題】築堤法面に適用して有用なポーラスコンクリート製法面張りブロック及びその製造方法を提供する。
【解決手段】平板状の基体と、均しコンクリート内に埋設されると共にその下面を前記地盤に接触される脚体とを有し、前記植栽機能を具現するための植栽ポットとして前記脚体には前記基体を介して表面に開口される深い有底孔部を設け、その底部には前記地盤に対して水分流通可能であるが、土砂を流出することがない土砂流出防止部材を備えたポーラスコンクリート製法面張りブロック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植栽機能を備えたポーラスコンクリート製の法面張りブロック及びその製造方法に関し、特に18N/mmの高強度、18〜25%の連続空隙率、0.8〜3.0cm/secの透水係数を有し、高度の植栽機能と、高度の護岸機能を備えた法面張りブロック(平張りブロックとも呼ぶ)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
勾配の緩い護岸では、碁盤状に法面張りブロックと称される平板状のブロックを並べ、法面保護するようにした築堤工法が知られている。また、この築堤工法では、環境保護及び美観の向上を目的として植栽ポットを備えたものの例がある。護岸に生息する微生物の影響を考慮して、近年、法面張りブロックをポーラスコンクリート製としたものがある。
【0003】
従来のポーラスコンクリート製の法面張りブロックに関する特許としては、特開平09−003937号、特許第2914914号、特開2005−68867号、特開2005−68868号、特開2000−328574号などの例がある。
【0004】
特開平09−003937号は普通コンクリートに複数個の多孔質素材と、ブロック貫通穴を適宜配置して植栽を促す平板状のブロックである。
【0005】
これは、多孔質素材を用い、ブロック本体に貫通穴を有するので、ポーラス状ではあるが、骨材間に隙間を与えて製造したポーラスコンクリートとは異なり、微生物を積極的に育成できることにはならない。
【0006】
特許第2914914号は、植栽用ポーラスコンクリート製の基体と、普通コンクリート製の偽石群とを複合してなる植生コンクリートブロックであって、偽石群間のポーラスコンクリート部分を植栽帯とするものである。ポーラスコンクリート部分には築堤地盤に到達させる植栽用の切穴を設けた構造である。
【0007】
しかし、最近の災害事例から、この種ブロック面には地盤に到達する貫通孔を有するので、洪水時にこの貫通孔から背面土砂が大量に吸出されて堤防の決壊を誘発する欠点が判明した。即ち、洪水の時、水嵩が増し高速の流れが法面表面を通過すると貫通孔を通して地盤土壌が吸い出され、結局ブロック構造が破壊されてしまうのである。その結果、この種の法面張りブロックでは、ブロック背面と築堤地盤との間に生ずる空間を排除して、施工段階で護岸法面と法張りブロックとの間に均しコンクリートと称される裏当てコンクリートで補強される工法が標準的に用いられねばならない。しかし、これを実現すると、地盤と表面との間が不連続となり、植栽環境を著しく阻害するという問題が生ずる。
【0008】
特許第2914914号では、前述したブロック背面と築堤地盤とに生ずる空間を排除するため、地盤と背面に均しコンクリートを充填することとして、コンクリートブロックの底面と地盤との高さに調整可能なボルトをセットすることを特徴としている。しかし、この場合は、貫通孔が下部コンクリートによって遮断されてしまい、乾燥時の植栽機能も生態系の連続性もここで遮断されてしまい、生態系への配慮不足で環境護岸としては不適当である。
【0009】
特開2005−68867及び特開2005−68868号公報は、周辺に凸リブ及び凹リブによる枠を設け、その基体を構成するポーラスコンクリートに密度3.5以上の骨材を一部使用して、ポーラスコンクリート製品の単位質量の改善を図った植生用張りブロックの製造技術が示されており、強度特性は少なくとも10N/mmが設計目標値であるとしている。しかし、少なくとも10N/mmの強度を出せる製造方法の記述はなく、また10N/mm程度では強度不足である。数多くの実例から見て、この値は18N/mm(日本工業規格)以上必要である。ただし、通常のポーラスコンクリートの製造技術では、18N/mm以上の強度を安定して出せる技術が確立されていない。さらに、周辺に枠を設けたこの種の構造では、洪水時にあっては、例え水の流れが緩やかでも表層土壌の流失は防止できない。またさらに、この工法では、下層に設けられる均しコンクリートへの配慮もなされていない。
【0010】
特開2001−59231号では、空隙率を20〜35%とし、空隙内部に保水性のスラリーを含浸させて緑化基盤とするものである。しかし、この空隙率は独立空隙を含む全空隙を指すのか、あるいは連続空隙率を指すのか不明である。河川護岸用であるこの種のブロックに耐久性上必要な強度特性値、植栽機能を示す連続空隙率や透水係数などの肝心な品質特性が不明である。この出願は空隙内に予め保水性スラリーを含浸させることを特徴としているが、洪水時に表面を流れる土砂交じりの河川水によって自然に土砂がポーラスコンクリートブロック空隙内部に持ち込まれ、これが蓄積されて適当な保水環境が自然に形成される事実から、さらに、洪水敷より高い部分でも法張りブロック表面に土砂を散布しておけば、その後の経時変化が土砂を空隙内部に蓄積するので、この出願の有用性には疑問がある。
【0011】
特開2000−328574号は、ポーラスコンクリートの名称を以って緑化コンクリートの性能を代弁しており、ポーラスコンクリート基盤の物理的性質は不明確な植生基盤の表面に、土壌溜まりとすべき凹凸が波状にかつ連続的に配置構成されており、凹部分を植栽ポットとするものである。しかし、この種の形態では洪水時の流水や降雨などによって窪みにある土砂は殆ど流失してしまう欠点がある。また、ブロックの下層に施される補強コンクリート対策や配慮が為されていない。
【0012】
以上のことから理解されるように、ポーラスコンクリート、特にポーラスコンクリート製の法面張りブロックにあっては、ポーラスコンクリートの品質として、強度、連続空隙率、透水率が重要なファクターであり、かつ植栽ポットを備える場合には、乾燥期の配慮と土砂の流出等についての考慮が必要である。さらに、洪水時に地盤土壌が吸い出されないように配慮しなければならない。
【特許文献1】特開平09−003937号公報、第1頁、図1
【特許文献2】特許第2914914号、第1頁、図1
【特許文献3】特開2005−68867号公報、第1頁、図1
【特許文献4】特開2005−68868号公報、第1頁、図1
【特許文献5】特開2000−328574号公報、第1頁、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ポーラスコンクリート製であり、深くて保水性の良好な植栽ポットを有し、通常の大雨程度では植栽土壌を流出させることがなく、洪水の時にあっても地盤土壌を流出させてしまう恐れがなく、均しコンクリートを使いながらも地盤との間とで水分流通ができて、高度の植栽機能と高度の擁壁機能を併せ持った法面張りブロックを提供することを目的とする。
【0014】
また、上記の如きポーラスコンクリート製の法面張りブロックを安定して製造することができる法面張りブロックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、護岸地盤上に均しコンクリートを布設し、その上に碁盤目状に多数の法面張りブロックを敷設して築堤される植栽機能付の法面張りブロックであって、平板状の基体と、前記均しコンクリート内に埋設されると共にその下面を前記地盤に接触される脚体とを有し、前記植栽機能を具現するための植栽ポットとして前記脚体には前記基体を介して表面に開口される有底孔部を設け、その底部には前記地盤に対して水分流通可能であるが、土砂を流出することがない土砂流出防止部材を有し、前記基体及び脚体を圧縮強度18N/mm以上、連続空隙率18〜25%、透水係数0.8〜3.0cm/secのポーラスコンクリートで一体成型して成ることを特徴とする。透水係数に関しては、0.8〜3.0cm/secが管理可能で有用な値であるが、より好ましくは0.8〜2.5cm/secとすることができる。
【0016】
透水係数に関して0.8〜3.0cm/secとするのは、植物対応型のポーラスコンクリートとして望まれる空隙構造は、連続空隙率や空隙径が大きい値ほど好ましい環境となる。しかし、連続空隙率や空隙径及び透水係数を大きく設定すれば、強度の保証が困難となる他、護岸本体の築土が洪水時に吸い出されるサイフォン現象を引起し、災害誘発の原因となる可能性があり適当でないからである。防災上の透水係数は小さいほうが望ましいことは当然ですが、それでも植物や土壌微生物、小形動物など、自然と共生できる環境護岸材料には可能な限りの範囲で空隙率や透水係数を許容した上で、所要の圧縮強度も満足できる。これまでの被災事例から、透水係数が0.8〜3.0cm/secであれば、適度な緑化機能や生態系の確保が守られ、且つ地盤土砂の吸出しや流失が見られず、堤防の被災事例も見られなかった。よって、透水係数0.8〜3.0cm/secは、適度なフィルター効果を備えた環境護岸ブロックとするための必要条件である。
【0017】
圧縮強度18N/mm以上は基体を厚み15〜20cm程度の平板状に形成することから、築堤法面として是非必要な強度である。本発明では、植栽機能を具現するための植栽ポットとして、前記脚体には前記基体を介して表面に開口される有底孔部を設けるので、基体の深さに脚体の深さを加えて深い植栽ポットとなり、植栽用土壌を十分に保有せしめて、かつ大雨などにより植栽用土壌を流出させてしまう恐れが少ない。また、基体及び植栽ポットの回りは、連続空隙率18〜25%のポーラスコンクリートであるので、保水機能が高く、ポーラスコンクリート内での微生物の繁殖を伴って、植栽機能が格別向上する。空隙内部へ土砂を散布すれば、これがポーラスコンクリートブロックの空間内部に持ち込まれ、スラリーを含浸させたのと同様効果を得ることができる。土砂の散布をしなくとも、散水時に表面を流れる土砂混じりの河川水によって同様効果を自然に得ることもできる。従って、土砂の散布を洪水敷より高い部分にのみ行うこともできる。
【0018】
さらに、植栽ポットは有底孔部であって、その底部には前記地盤に対して水分流通可能であるが、土砂を流出することがない土砂流出防止部材を有するので、台風シーズン等の洪水によって多量の流水が築堤法面を流れ、仮に植栽用の土壌を全て流し去っても地盤の土壌までを吸い出してしまう恐れは絶対ない。因みに、洪水はベルヌーイの定理により植栽ポットを介して地盤土壌を吸い出し(サイフォン現象)、築堤法面を崩落させてしまう事例が発生していたのである。植栽ポットは土砂流出防止部材を介して土壌と接触されるので、土壌水分の吸出が可能であり、植栽機能を高くして乾燥時期にあっても植栽ポットの湿潤を保つことができる。
【0019】
土砂流出防止部材としては、網、織物等目の細かな網状物を用いることができるが、前記基体及び前記脚体と一体成型されるポーラスコンクリートとすることでも実現できる。土砂流出防止部材をポーラスコンクリートとすれば、土砂流出防止機能を有せしめて、容易、安価、かつ高強度に全体を一体成型することができる。
【0020】
前記孔部の開口面積は、前記基体表面積に対し5〜25%に形成し、前記脚体は、前記基体の表面積0.25m当り1ヶ所設けるのが望ましい。1ヶ所の開口面積は300cm以内、望ましくは200cm以内とし、そのブロック面積に応じ単独若しくは数箇所に分散して設ける。
【0021】
これらの条件は、景観を含めて、良好な植栽機能を持たせるのに必要な条件である。即ち、植栽ポットの開口面積が5%より下では小さすぎ、25%より上では広すぎる。また、全体面から見れば、0.25m当り1ヶ所とするのが最適である。開口部の面積と配列パターンの組合せによって適当な規模にコントロールされた緑化護岸を創出できる。
【0022】
さらに、基体及び脚体は一体化され、それらの部分を通じて深い植栽ポットが形成されるので、開口面積に適合する植物を植栽すれば、その植物根はポーラスコンクリートの空隙内部まで徒長してポット内部の土壌とポーラスコンクリート平張りブロック本体とは確実にグリップ固定化され、その結果流速6m〜8m/sec程度の洪水であっても植栽帯の流失は起こらない。開口部の分散設置と、これに適応した植物種類の選定によって護岸法面を総体的に緑化で覆うことができる。
【0023】
圧縮強度18N/mm以上、連続空隙率18〜25%、透水係数0.8〜3.0cm/secで規定されるポーラスコンクリートを安定して製造するには、通常の生コンクリートの型枠投入による通常成型方法では実現できない。
【0024】
本発明の法面張りブロックの製造方法は、請求項1に記載の法面張りブロックを製造する方法であって、製品が必要とする品質特性を得ることができる配合及び成型方式を予め定めておき、前記配合に係る所要の材料を夫々正確に秤量して生ポーラスコンクリートを混練し、その後、前記製品を成型するための型枠体積に応じて所要の重量(理論質量)の生ポーラスコンクリートを正確に秤量し、その秤量した生ポーラスコンクリートを前記型枠内に全量投入し、前記型枠に丁度収まるまで振動と加圧を併用しながら成型し、前記品質特性を備えたポーラスコンクリートブロックを製造することを特徴とする。前記生ポーラスコンクリートの前記型枠投入前の秤量の誤差は1%以下、より好ましくは0.5%以下とする。質量1%の計量誤差は、全空隙率1%の誤差となり、その結果、透水係数では1.2%の誤差を招く。また、実験によれば、最終的な強度には8〜10Nの誤差が生じる。
【0025】
ポーラスコンクリートは、骨材をバインダ材で硬めて作るものであり、品質の安定した骨材を計画的に選択し、物理的条件を同一にして計画的に製造しなければ安定した品質を得ることができない。本発明では、計画的に作成した配合を型枠体積に応じて所要の重量(理論質量)を正確に秤量し、型枠内に投入すべき理論質量の生ポーラスコンクリートを所要面積の型枠内に全量投入し、振動及び加圧を加えて型枠空間内に丁度沈み収めるようにする。従って、1つの型枠内に所要の材料が押し詰められるので、圧縮強度18N/mm、連続空隙率18〜25%、透水係数0.8〜3.0cm/secの高品質ポーラスコンクリートブロックを作ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の法面張りブロックによれば、18N/mm以上の圧縮強度を有するので、強固な築堤法面を構成することができる。
【0027】
本発明の法面張りブロックでは、植栽機能を具現するための植栽ポットとして、前記脚体には前記基体を介して表面に開口される有底孔部を設けるので、基体の深さに脚体の深さを加えただけの深い植栽ポットとなり、植栽用土壌を十分に保有せしめて、大雨などにより植栽用土壌を流出させてしまう恐れが少ない。また、植栽ポットの回りは、連続空隙率18〜25%、透水係数0.8〜3.0cm/secのポーラスコンクリートであるので、保水機能が高く、ポーラスコンクリート内での微生物の繁殖を伴って、植栽機能が向上する。ポーラスコンクリートの透水係数を0.8〜3.0cm/secとしているので、余計な水分の吸収を避け、十分な微生物生息環境を作り、かつ植栽ポット下面の地盤土壌との間で水分流通を図ることができる。スラリー保有させたければ、土砂を散布すれば良く、洪水時の土砂の吸収によって目を細くし、保水機能の向上を図ることもできる。
【0028】
さらに、植栽ポットは有底孔部であって、その底部には前記地盤に対して水分流通可能であるが、土砂を流出することがない土砂流出防止部材を有するので、植栽ポットと地盤との間で水分流通可能であって、乾燥時期には土壌水分を植栽ポットに呼ぶことができる。従って、乾燥時期にあっても植物を枯らすことなく育成できる。また、台風シーズン等の洪水によって多量の流水が築堤法面を流れて、仮に植栽用の土壌を全て流し去っても地盤の土壌までを吸い出してしまうことがない。即ち、築堤法面はサイフォン現象が作用せず、洪水に耐え、耐久性が強い。
【0029】
土砂流出防止部材としては、網、織物等を目の細かな網状物を一層又は多層に用いることができるが、前記基体及び前記脚体と一体成型されるポーラスコンクリートとすれば、土砂流出防止機能を有せしめて、容易、安価、かつ高強度に全体を一体成型することができる。
【0030】
前記孔部の開口面積は、前記基体表面積に対し5〜25%に形成し、例えば前記脚体を前記基体の表面積0.25m当り1ヶ所設ければ、景観を含めて、良好な植栽機能を持たせることができる。
【0031】
本発明の法面張りブロックの製造方法によれば、計画的に製造された配合を型枠体積に応じて理論質量を正確に秤量し、その秤量した生ポーラスコンクリートを所要面積の型枠内に全量投入し、振動及び加圧を加えて型枠空間内に丁度沈み収めるようにするので、上記法面張りブロックを成型するための型枠内に所要の量の材料が押し詰められるので、圧縮強度18N/mm以上、連続空隙率18〜25%、透水係数0.8〜3.0cm/secのポーラスコンクリートを安定して製造することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最適の形態を説明する。図1(a)(b)は、本発明の一実施形態に係るポーラスコンクリート製法面張りブロックの平面図及び側面図、図2及び図3は、上記ポーラスコンクリートの配合に使用した細骨材及び粗骨材のふるい分け曲線を示すグラフ、図4は上記法面張りブロックの製造方法を示す説明図、図5は上記法面張りブロックを布設して成る築堤法面の断面説明図である。
【0033】
図1(a)(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る法面張りブロック1は、平面図(a)で見て寸法A×B(A=B)の正方形、側面から見て長方形の基体2と、その下面でその中心から下方に向けて突出される脚体3とを有し、基体2及び脚体3を通じて植栽用の円形孔部(植栽ポットとも呼ぶ)4が設けられている。A、Bの寸法は、約40cmとする。
【0034】
前記植栽用孔部4の表面の直径をD1cm(例えば13cm)とすると、底部の直径はD2(例えば5cm、D2<D1)で、全体の深さは基体の深さL1と脚体3部分の深さL2との和から、2〜7cm程度の深さdを差し引いた深さとされている。脚体の外形は、上部の寸法をCとすると、底部の寸法はD(C>D)で截頭円錐形の例で示しているが、これは台形状であっても良い。
【0035】
以上の形状の法面張りブロック1は、基体2及び脚体3並びに脚体3の底部3b共に、ポーラスコンクリートPCで一体成型される。
【0036】
構築物の耐久性確保を目標として、前記ポーラスコンクリートPCの圧縮強度は18N/mm以上とし、且つ適度の緑化機能を確保する。また、微生物生息環境の向上と洪水時の築堤法面の土砂の吸出し防止にも対応できるよう連続空隙率を18〜25%、透水係数を0.8〜2.5cm/secを目標品質に設定した。そして、これら品質を得るための配合を規定して、この配合による製品の製造方法を次の通り確立した。
【0037】
表1に示すように、連続空隙率18〜25%、透水係数0.8〜1.5cm/sec、圧縮強度18N/mm以上が得られる基本配合として、最適となるVm/Vs(Vmはモルタルの絶対容積、Vsは細骨材の絶対容積)の関係を得て表2の配合を得た。表中Wは単位水量、Pは単位セメント量、Vpはその容積を示す。ちなみに、従来の普通コンクリートのVm/Vsは150%前後であり、18%以上の連続空隙率を備えるポーラスコンクリートの配合は特異なレベルにある。Vgは粗骨材の絶対容積で、表3の例では577リットルである。普通のコンクリートの場合、W/Pの代わりにW/C(Wは単位推量、Cは単位セメント量を指す)を用いて表す。しかし、ポーラスコンクリートの場合、セメント+微細な粉体を用いるケースもあることから、Cに代えてP(パウダー)を用い、普通コンクリートの配合とポーラスコンクリートの配合を区別して表している。
【表1】

【表2】

【0038】
混和剤としては、減水効果の高いポリカルボンサンエーテル系混和剤を用いた。セメントは早強セメント、細骨材は図2の粒度分布を有するもの、粗骨材は図3の粒度分布を持つJIS5005の砕石を用いた。
【0039】
ここでは、上記表1に定める品質を得るため、型枠空間内に充填すべき材料の質量を理論質量Qkgと呼ぶ。理論質量Qは、ポーラスコンクリートPCの絶対容積から、次の表3の通りに求めることができる。
【表3】

【0040】
表3において、Vmはセメントの絶対容積95.5リットルと水の絶対容積75リットルと砂の絶対容積72.5リットルの和243リットルとして求めた。Vsは細骨材の絶対容積で72.5リットルである。Vgは砂利の絶対容積で577リットルである。Wは単位水量75kg、Pは同じ単位セメント量300kgである。従ってW/Pは25%である。
【0041】
表3の関係から、生ポーラスコンクリートPCを2074kg秤量し、容積1mの型枠内に充填して、正しく型枠一杯になるまで加圧振動を加えながら成型すれば、そこに得られるコンクリートの固化体は、圧縮強度18N/mm、連続空隙率が18%、透水係数0.8〜2.5cm/secのポーラスコンクリート製品1が得られる。
【0042】
ここに1個の容積が18リットルの法面張りブロック1を製造する場合の理論質量Qは、0.018×2074kg=37.3kgである。
【0043】
以上の配合を用いて製品を製造する製造方法を図4にまとめて示した。 ステップ401では、セメントS1、細骨材S2、粗骨材S3、混和剤S4、水S5から成る材料Siを正しく計量し、ステップ402で図示しないミキサで混合し、ステップ403で混合された生ポーラスコンクリートPCをミキサーから排出する。
【0044】
次いで、ステップ404では、生ポーラスコンクリートPCの理論質量Qを誤差1%以内で計量し、ステップ405で図示しない型枠に流し込み、加圧及び振動を与えて成型する。成型後、型枠から取り出して完全硬化させ、製品とする。型枠容器内に正しく成型した場合、このポーラスコンクリートは硬化後において、連続空隙率18%、透水係数1.0cm/sec、圧縮強度18N/mmのポーラスコンクリートとなる。
【0045】
図5は、以上の如くして製造した法面張りブロック1を築堤法面5に適用した実施例を示す説明図である。図5において、土壌を削って作られた地盤6上に本発明の法面張りブロック1を並べ、均しコンクリート7を投設して脚体3の底部3aが地盤6の表面に密着した状態で仕上げる。従って、脚体3の回りは均しコンクリート7が充填され、厚みdのポーラスコンクリート製の底部3bを介して植栽ポット4が配置された形となる。植栽ポット4には、適宜保水性材料を担持させ、その上に植物植栽用の土壌(図示せず)を入れて、植物8を植える。
【0046】
植栽ポット4は、深さL1+L2−d(図1参照)の深さを備えている。法面張りブロック1は、基体2及び脚体3共にポーラスコンクリート製であって、しかもその連続空隙率18〜25%で、透水係数は0.8〜2.5cm/sec程度であり、格別保水性が良好である。目が小さく詰まっているので、洪水時の吸出し力は小さい。さらに、植栽ポット4の底面は、ポーラスコンクリート製の底部3bを介して地盤6の地面(土壌)と接触しているので、地盤6側から水分供給でき、植物8にとっては好適の生育環境を得ることができる。特に、植栽ポット4は地盤6と連通しているので、夏季の乾燥期にも十分耐え、植栽ポット内で植物8を育成することができる。植栽ポット4は基体2の下の脚体3に入り込んでおり、十分深いので、長い根の植物8であっても育つ。
【0047】
雨を仮定すると、小雨ならばポーラスコンクリート製の基体2にしみ込む。大雨ならば透水係数が1.5cm/s以下であるので、余剰水分を表面から流し去ってしまうことができる。また、これら雨水は植栽ポット4の底部3bから地盤6に入ろうとするが、透水係数は0.8〜3.0cm/secと小さくしているので、地盤6に多量に侵入することはない。さらに大雨では、植栽ポット4の表面土壌を流し去ることはあっても、深い部分の土壌まで流し去ることはできない。さらには、底部4bを設けているので、地盤6の土壌を流し去ることは有り得ない。洪水にあっては、植栽ポット中の土壌は吸い出されても、底部3bを介して地盤土壌が吸い出されることはない。以上のことから、法面全体が洪水に浚われることもない。
【0048】
図6は、本発明の他の実施形態に係る法面張りブロックの説明図である。本例の法面張りブロック9は、図1に示したものと同様で、基体10と脚体11を有するが、平面寸法E、F(例えば90cm角)が大で、4個の植栽ポット11(11−1、11−2、11−3、11−4)を備えている。ポーラスコンクリートPCの配合及び製造方法は同様で、高さ寸法H、L1、L2、dについても図1で示したものと略同様である。いわば、図1のものを4個組み合わせて一体成型した形となっている。
【0049】
脚体11(11−1、11−2、11−3、11−4)は、基体10の表面積0.25m当り1箇所を基準として、1m当り4箇所としている。また、植栽ポット12(12−1、12−2、12−3、12−4)の表面面積は全体面積の5〜20%としている。これにより、河川護岸の緑化規模を適切に計画することができ、緑化形態を適切に管理できる。
【0050】
図6の法面張りブロック9は、ブロック9の基体10から下方に空出する脚体11の底面11aがポーラスコンクリートPC製の底部11bを介して常に地盤6に接触しているため、水分環境の連続性が保たれ、乾燥期においても緑化機能を維持することができる。また、植栽ポット12(12−1、12−2、12−3、12−4)は有底構造であるから、適正な連続空隙率と、透水係数によるフィルター効果によって、洪水時における地盤の土壌が吸い出され、流出することがなく、強固な岸壁を構築できる。
【0051】
図7にさらに他の実施形態を示す。本実施形態に係る法面張りブロック13は、基体14及び脚体15を有する。この点は、図1のものと同様である。基体14の上部には、基体表面16に対し上部に突出するデザイン突起17を有する。突起17(17a、17b)は中央の植栽ポット18の回りで、隅部のもの17aと中央部のもの17bに4分されて、恰もひまわりの花をイメージさせるが如く美しくデザインされている。
【0052】
前記脚体15の下方に設けられる植栽ポット18の底部14bは、特殊構成とされ、底面に空洞19が設けられている。即ち、植栽ポット18の底面は、空洞19との間に土砂流出防止部材としての中間層20を介して設置されている。即ち、植栽ポット18は、脚体15の底面15aが図5で示した地盤6と接触するとき、空洞19がポーラスコンクリート製の土砂流出防止部材としての中間層20を介して接続されている。
【0053】
各部の寸法を示すと表4の通りである。
【表4】

【0054】
表4から、空洞19は、底面に直径20mmの穴を有し、高さ40mmの寸法から成る小さな空洞である。そして、厚み20mmの中間層20を介して植栽ポット18が配置されている。
【0055】
図7に示した法面張りブロック13は、植栽ポットを設け、護岸に設けられる点は図6で示したものと同様であるが、デザインされているので美しく護岸を飾ることができる。また、植栽ポットに小花を植えた状態では、恰もお花畑を作ったように美しくできる。
【0056】
本法面張りブロック13では、脚体15下方に逆コップ状の空洞19を設け、これに対し、植栽ポット18を中間層20を介して接続したので、地盤6と脚体15の接触を確実とすることができる。地盤6と植栽ポット18との間の水蒸気の流通を確実とすることができる。
【0057】
脚体15を地盤6に対し確実に密着できるので、設置工事が容易である。即ち、均しコンクリート7によって接触不良を生ずることがない。
【0058】
洪水時の吸出し作用を検討すると、空洞19内がいっぱいなるまで土砂が上昇すると指摘するであろうが、それはせいぜい80ccの話であり、これが中間層20を通過し、植栽ポット18から外部へ流出される恐れは皆無である。即ち、問題にならない。
【0059】
空洞19には、設置のときに地盤6の土が半分位入り込んで、その体積を小さくするがゼロにはならず、中間層20と地盤6との間で空気及び水分流通のバッファ空間となって、地下で生活する微生物の棲家となり、微生物にとって快適な住環境を育成できる効果を期待される。
【0060】
以上の通り、本発明の法面張りブロックは、地下水や湧水など自然の水の流れを遮断しないように水際部分の透水性を確保することで、水の循環を確保することができる。勾配の変化に合わせた擦り付け施工が可能なため、河岸の法勾配を自在に変化させることができる。このことは、河川やその周辺に生息する生物にとって、河川の上下流方向、横断方向の連続性や、周辺とのネットワークを確保する意味で非常に重要である。ブロックに設けられた孔部分へ客土やポット苗を施工することにより、緑化が可能となる。地域住民による「花一杯運動」などの活動等にも連動させることができる。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更可能であり、各種態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る法面張りブロックの説明図で、(a)図は平面図、(b)図は側面図である。
【図2】ポーラスコンクリートの配合に用いられる細骨材の粒度分布を示すグラフである。
【図3】ポーラスコンクリートの配合に用いられる粗骨材の粒度分布を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係るポーラスコンクリートの製造方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の法面張りブロックを適用した具体例を示す築堤法面の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る法面張りブロックの説明図で、(a)図は平面図、(b)図は側面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態に係る法面張りブロックを示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1、9、13 法面張りブロック
2、10、14 基体
3、11(11−1、11−2、11−3、11−4)、15 脚体
3a、11a 底面
3b、11b 底部
4、12(12−1、12−2、12−3、12−4)、18 孔部(植栽ポット)
5 築堤法面
6 地盤
7 均しコンクリート
8 植物
19 空洞
20 中間層
PC ポーラスコンクリート
PP 植栽ポットの深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
護岸地盤上に均しコンクリートを布設し、その上に碁盤目状に多数の法面張りブロックを敷設して築堤される植栽機能付の法面張りブロックであって、平板状の基体と、前記均しコンクリート内に埋設されると共にその下面を前記地盤に接触される脚体とを有し、前記植栽機能を具現するための植栽ポットとして前記脚体には前記基体を介して表面に開口される有底孔部を設け、その底部には前記地盤に対して水分流通可能であるが、土砂を流出することがない土砂流出防止部材を有し、前記基体及び脚体を圧縮強度18N/mm以上、連続空隙率18〜25%、透水係数0.8〜3.0cm/secのポーラスコンクリートで一体成型して成ることを特徴とする法面張りブロック。
【請求項2】
前記土砂流出防止部材は、前記基体及び前記脚体と一体成型されるポーラスコンクリートであることを特徴とする請求項1記載の法面張りブロック。
【請求項3】
前記孔部の開口面積は、前記基体表面積に対し5〜25%に形成されることを特徴とする請求項1記載の法面張りブロック。
【請求項4】
前記脚体の底部に逆コップ状の空調を設け、前記植栽ポットとの間にポーラスコンクリート製の中間層を介在させたことを特徴とする請求項1又は2記載の法面張りブロック。
【請求項5】
請求項1に記載の法面張りブロックを製造する方法であって、前記法面張りブロックが必要とする品質特性を得ることができる配合及び成型方式を予め定めておき、前記配合に係る所要の材料を夫々正確に秤量して生ポーラスコンクリートを混練し、その後、前記製品を成型するための型枠体積に応じて所要の重量の生ポーラスコンクリートを正確に秤量し、その秤量した生ポーラスコンクリートを前記型枠内に全量投入し、前記型枠内に丁度収まるまで振動と加圧を併用しながら成型し、前記品質特性を備えたポーラスコンクリートブロックを製造することを特徴とする法面張りブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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