説明

法面緑化基盤形成用の保持部材、およびそれによる法面緑化基盤形成用の保持構造、ならびにその保持構造を使った法面緑化方法

【課題】 法面に集中的な荷重負担を掛けることなく、しかも植生基盤の剥離、脱落を確実に阻止できる法面緑化基盤形成用の保持部材、およびそれによる法面緑化基盤形成用の保持構造、ならびにその保持構造を使った法面緑化方法を提供する。
【解決手段】 既成法面7表面に厚層金網1を展開、固定して保持柵3を等高線状に配置させ、その基端および掛着腕35を厚層金網1に連結し、既成法面7との開き角度がその箇所の水平面から90゜以内に収まる姿勢に規制された上、吹付け播種工による植生基盤6を形成、定着可能とした法面緑化基盤形成用の保持部材、およびそれによる法面緑化基盤形成用の保持構造、ならびにその保持構造を使った法面緑化方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、法面の補強や緑化に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであって、法面に植物群落を繁茂させる植生工の分野は勿論のこと、その建設に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野、その他現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般に、切土や盛土工事を行い露出状となった法面は、設計に従い整形した後に、鉄鋼製の枠を打設し、またはモルタルやコンクリート等を吹き付ける等して表面防護工を施し、法面の安定化が図られるものとなっているが、このような人工物だけに頼った防護構造は、長年に渡る使用によって背面地山の基盤表層部の日々、季節毎の乾湿および凍結と融解との繰り返し等を受けて次第に浮き上がり、発生した隙間に雨水が浸入して裏面の空洞化が進展してしまうことがあり、頻繁に適切な点検とメンテナンスとを施さなければ、いずれ亀裂が発生し、崩壊してしまうという危険性を孕んでおり、また、鉄鋼製の枠やモルタル吹付あるいはコンクリート製の井桁擁壁等による法面防護壁は、建設前にその場に自生していた樹木や草花を排除し、切土や盛土工事により地形を大きく変形させることとなるため、周辺環境や生態および景観を悪化させてしまうという弊害を伴うものとなっていた。
【0003】
このような鉄鋼製枠やモルタル、コンクリート製の防護擁壁等からなる各種法面の建設による自然環境や周辺景観の悪化ならびに老朽化による崩壊等といった弊害を解消するため、法面の表層を緑化することによって護壁の長期に渡る安定と自然環境および景観の維持とを確保しようとする植生工が施工されるようになってきており、特に法面に植え穴を堀って草木苗を植え込む場合よりも地中深くまで良好に根づき、より高い安定性を法面に与えることが確認されている播種による植生工が盛んに行われるようになってきているが、モルタルやコンクリートの吹付けによって形成された比較的硬質な法面は、種子散布工によって造成された植生基盤が十分に硬化する前や、その硬化後においてさえも、自重によって流失あるいは脱落してしまったり、さらに法面との境界面間に雨水等が浸入すること等によって十分な定着が得られなくなり、法面から剥がれ落ちて崩壊してしまうという事故も多発することになった。
【0004】
(従来の技術)
このような植生基盤の崩壊を阻止しようとして、例えば特開2001−254360号公報に開示された、硬質法面において、所定の間隔で法面から突出する矩形の有孔板からなる植生基材受材を横方向に設置し、植生基材を吹き付け、吹付け法面にセダム類植物を配置する「硬質法面の緑化工法」久保発明や、特開2001−95369号公報の、コンクリート若しくはモルタル吹付け法面または地盤が硬い法面において、脚付き法枠を法面に仮置した後にアンカーを打設することによって脚付き法枠を法面に固定し、その脚付き法枠の周囲に植生材料を充填して行う「硬い法面における法面緑化工法」長岡・石塚発明、さらに、特開2003−105768号公報の、太縄状の土砂流亡防止材を等高線状に適宜間隔で配置した綱状体を斜面に張設するか、あるいは、太縄状の土砂流亡防止材を等高線状に適宜間隔で配置した綱状体を傾斜面等に張設した後に、施工地周辺植生の土壌種子を含む表層土を客土する「斜面の緑化方法」桑田・松永発明や、特開平6−26057号公報の、法面に複数の穴を適宜間隔を置いて地山に達する深さに形成して、この穴に給水体を装填し、しかる後法面に網状体を張設して、網状体の上から植生材料を法面全体に吹付け、また、法面の穴に給水体を装填した後で網状体を張設する以前に、法面に仕切り部材の複数個を設け、さらには、法面の穴に給水体を装填した後で仕切り部材を設ける以前に、法面に帯状の繊維合成マットを複数枚固定する「植物成育困難法面の緑化方法」松本発明等が既に開発済みである。
【0005】
前記「硬質法面の緑化工法」久保発明は、硬質な法面の上下方向に所定の間隔を隔てた植生基材受材を法面の水平方向に渡って突設し、植生基材の脱落を阻止しようとしたものであるが、各植生基材受材は、立設された位置の直下となる法面に集中的にその定着強度を必要とすることから、植生基材を吹付けた後に、それらによる荷重が法面の植生基材受材立設箇所に集中して掛かり、植生基材受材が倒壊してしまうことが懸念されるものであり、また、各植生基材受材の上下となる範囲の植生基盤は、自重によって上側となる程薄く、植生基材受材上側面で最大の厚みとなるため、植生基材受材の直上付近にだけ植物が強く定着するだけで、それ以外の箇所では十分な定着が得られずに、植生基盤の薄い部分での剥離や、それを原因とする崩落等が懸念されることとなった。
【0006】
また、「硬い法面における法面緑化工法」長岡・石塚発明は、硬い法面の表層に脚付き法枠を装着し、適宜アンカーを打設して固定した上、その脚付き法枠周囲に植生材料を充填し、植生基盤を形成するようにしたものであるが、脚付き法枠に充填された植生材料が十分に定着するまでの間に、自重によって植生材料が、流下してしまい、形成される植生基盤は、上側の範囲で薄く、下側の範囲で厚くなり、法面の全面に渡って均質な植生の定着が得られず、結果として植生基盤の崩落が懸念された。
【0007】
さらに「斜面の緑化方法」桑田・松永発明もまた、前記久保発明と同様に、土砂流亡防止材を法面に固定するのにアンカーピンを用いており、やはり土砂流亡防止材を配設した法面の等高線状となる部分に荷重が集中してしまうこととなり、「植物生育困難法面の緑化方法」松本発明も同様に、法面に対して等高線状となる箇所に仕切り部材を複数本のアンカーボルトで固定するものであり、何れも法面の耐久強度を悪化させることが懸念されるという点で変わりはなかった。
【特許文献1】(1)特開2001−254360号公報 (2)特開2001−95369号公報 (3)特開2003−105768号公報 (4)特開平6−26057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(問題意識)
以上のように、法面の耐久強度を高めると同時に、周辺環境に良く馴染み、良好な景観を確保することを目的として、法面の略全面に渡って播種工を施工して植生基盤を形成する手段が広く実施されているが、表面が比較的滑らかなモルタルやコンクリート製防護擁壁を形成した法面や急勾配の法面等では、法面に吹付けられた植生基盤が、吹き付け直後もしくはある程度の期間を経過した時点で、自重を支えきれずに剥離、脱落してしまったり、崩壊してしまうことがあり、このような脱落現象を阻止するものとして、法面に等高線状を成す仕切り部材類を打設して植生基盤を階層毎に分担、支持可能とする技術が相次いで開発されてきたが、これらの仕切り部材類は、打設箇所のみで支持力を担うものなので、法面の等高線状となる部分に集中的な荷重を加えてしまい、反って法面に大きな負担を掛けてしまうという欠点をもつことになるため、それら欠点を解消するよう法面の略全面で植生基盤を支持できると共に、植生基盤の剥離、脱落を確実に防止できる法面の緑化工法の開発が待望視されている。
【0009】
(発明の目的)
そこで、この発明は、法面に集中的な荷重負担を掛けることなく、しかも植生基盤の剥離、脱落を確実に阻止できる法面の緑化工法を提供することはできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の法面用の緑化基盤保持装置、ならびに、新規な法面緑化方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の基本をなす法面緑化基盤形成用の保持部材は、次のような構成を要旨としている。
即ち、アンカーピンによって要所要所を既成法面に添設状に固定される厚層金網と、既成法面に添設状とされた該厚層金網上の所定箇所に組み合わせ可能な下端縁形状に形成され、植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなり、その上端縁の横長方向適宜間隔置きに、所定長さの掛着鈎付き繋着腕の基端を折り畳み自在に組み込んでなる保持柵と、それら厚層金網上の所定箇所に保持柵下端縁を組み合わせた状態で双方に縫い合わせ状に絡まり付く螺旋状連結部材との組み合わせからなるものとした法面緑化基盤形成用の保持部材である。
【0011】
この構成の法面緑化基盤形成用の保持部材には、アンカーピンによって要所要所を既成法面に添設状に固定される厚み30ミリないし100ミリ前後とした厚層金網と、既成法面に添設状とされた該厚層金網上の所定箇所に組み合わせ可能となるように下端縁に10ミリないし30ミリ前後突出させた突刺し脚部に形成され、50ないし300前後の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなり、その上端縁の横長方向150ないし300ミリ前後の間隔置きに、所定長さの掛着鈎付き繋着腕の基端を折り畳み自在に組み込んでなる保持柵と、それら厚層金網上の所定箇所に保持柵下端縁を組み合わせた状態で双方に縫い合わせ状に絡まり付く螺旋状連結部材との組み合わせからなるものとした構成からなる法面緑化基盤形成用の保持部材が含まれる。
【0012】
(関連する発明1)
上記したこの発明の基本をなす法面緑化基盤形成用の保持部材に関連し、この発明には、それを使った次のような構成の法面緑化基盤形成用の保持構造が含まれている。
即ち、既成法面の必要範囲に渡って厚層金網を展開し、その要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、所望する植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵が、その下端縁を螺旋状連結部材によって厚層金網に組み合わされた上、同上端縁の横長方向適宜間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるようにしてなるものとした構成を要旨とする、前記したこの発明の保持部材による法面緑化基盤形成用の保持構造がそれである。
【0013】
これをより具体的な構成のものとして示すならば、コンクリート製やモルタル製等で形成された既成法面の必要範囲に渡って厚層金網を展開し、その要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、所望する植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵が、その下端縁の突刺し脚部を厚層金網に突っ込んだ状態で螺旋状連結部材によって組み合わされた上、同上端縁の横長方向適宜間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるようにしてなるものとした法面緑化基盤形成用の保持構造となる。
【0014】
そして、その代表的な構成のものとして、コンクリート製やモルタル製等で形成された既成法面の必要範囲に渡り、厚み30ミリないし100ミリ前後とした厚層金網を展開し、その10平行メートル当り10ないし20箇所前後となる要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下1メートル前後となる間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、50ないし300前後の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵が、その下端縁の突刺し脚部を厚層金網に突っ込んだ状態で螺旋状連結部材によって組み合わされた上、同上端縁の横長方向150ないし300ミリ前後の間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるようにしてなるものとした構成の法面緑化基盤形成用の保持構造がある。
【0015】
(関連する発明2)
また、上記までの発明に関連し、更にこの発明には、それを用いた法面緑化方法が包含されていて、その構成は、既成法面の必要範囲に渡り、厚層金網を展開とし、要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、吹付け播種工によって形成される植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵の下端縁と厚層金網の対応箇所とを各保持柵の横巾に渡って螺旋状連結部材で絡み付けて組み合わせると共に、同上端縁の横長方向適宜間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるように組み立てた上、各保持柵を含む厚層金網装着範囲に渡り、吹付け播種工を施すことによって植生基盤を形成、定着するようにした、前記の法面緑化基盤形成用の保持構造を使った法面緑化方法である。
【0016】
これを具体的なものとして示すと、コンクリート製やモルタル製等で形成された既成法面の必要範囲に渡り、厚み30ミリないし100ミリ前後とした厚層金網を展開し、10平行メートル当り10ないし20箇所前後の要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下1メートル前後の所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、50ないし300ミリ前後の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵の下端縁と厚層金網の対応箇所とを各保持柵の横巾に渡って螺旋状連結部材で絡み付けて組み合わせると共に、同上端縁の横長方向150ないし300ミリ前後の間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるように組み立てる一方、上下保持柵間となる既成法面約1平方メートル当り毎の範囲に約5箇所程度となるよう、背面地山から給水可能とするよう既成法面の厚さ寸法を貫通する給水孔を穿設した上、全ての保持柵を含む厚層金網装着範囲に渡り、吹付け播種工を施すことによって厚み100ないし200mm前後となる植生基盤を形成、定着するようにした法面緑化方法となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおりの構成によるこの発明の法面緑化基盤形成用の保持部材およびそれによる法面緑化基盤形成用の保持構造によれば、先ず、厚層金網と保持柵とを所定どおりの組み合せに組み立てる作業が簡易なものとなり、特に法面傾斜角度の違いに対しても何等構成部材に変更を要することがないか、必要があれば繋着腕だけを交換するだけで全て対応可能になるという利点がある上、信頼し得る精度となる保持構造を採用するから、播種工によって吹き付けられた植生基盤が、法面表層に装着された厚層金網と、その表側面に等高線状に配された保持柵とによって脱落しないよう、上下各階層毎に確りと保持され、しかも各植生基盤の荷重が、各保持柵を介して厚層金網の略全体に分散、吸収されることとなり、従前までのものがそうであったように保持柵の根元付近となる法面の一部にのみ荷重が集中してしまい、時間経過と共に亀裂や剥離という事態に繋がってしまうという弊害を確実に防止し、より耐久性が保証され、安定した緑化法面を実現化し得るものにすることが可能になるという非常に秀れた特徴が得られる。
【0018】
また、この発明の法面緑化方法によれば、厚層金網上への保持柵の所定どおりの組み合せが特殊な伎倆やそれほどの熟練度を要せずとも簡便、迅速に完成し得て、期待どおりの信頼性を有する保持構造を所望法面上に実現することができ、この後に続く吹付け播種工の際に、厚層金網への開拡度が所定の範囲に規制されて組み合わされる保持柵により、保持柵下端縁の隅部分にも十分に植生基材を充填することが可能となり、全体として施工工程は短縮化された上に植生基盤に等高線状の厚さムラを発生させず、全面に渡り略均質に繁茂させることができ、植生基盤の薄弱部分に起因する衰退や脱落等をより確実に防止するようにした法面緑化方法が効率的且つ確実に実現できるという大きな効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記したとおりの構成からなるこの発明につき、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
厚層金網は、表面を比較的平滑に仕上げられた法面の表層に、播種工による吹き付け直後から緑化基材を確実に定着、保持して法面を覆う植生基盤の剥離や脱落を防止可能とする機能を果たし、緑化基材が硬化するまでの間に流失しない程度の保持力を確保できる網目寸法(例えば、50×50ないし150×150ミリなど)および形状のものとしなければならず、任意箇所に保持柵の基端側ならびに繋着腕を夫々連結したときにも、十分な強度をもって保持柵を支持可能な程度の強度を確保すべきであり、鋼線やワイヤー等からなる肉厚網状(例えば、後述する実施例のように30ミリないし100ミリ前後厚)とし、法面の所定単位面積毎に装着可能な矩形肉厚平板状のものとして隣接する端縁部分同士を、適宜連結金具類によって繋ぎ合わせ、法面の必要とされる範囲に渡って連結、張設可能なものとするのが望ましく、植生基盤が定着した後に自然に消失する鉄や鋼製の索条からなる厚層状網とすることができる外、緑化基盤定着後にも、植生基盤の定着を確保可能とする防錆加工の施された鉄鋼製か、ステンレス鋼製、合成樹脂製等の比較的耐久性に秀れた索条からなる厚層状網とすることが可能である。
【0020】
アンカーピンは、法面の必要とされる範囲に渡って展開された厚層金網を、法面に対して緑化基盤の定着に十分に耐えることのできる程度の強度で仮固定する機能を果たし、法面に対して十分且つ均質な定着強度が得られる程度に分散配置(例えば、後述する実施例のように10平行メートル当り10ないし20箇所前後)させたものとしなければならず、法面に対し比較的深く打ち込まれる主アンカーピンと、その主アンカーピンの周辺に配置されて、法面に比較的浅く打ち込まれる補助アンカーピンとを組み合わせたものとすることが可能である外、法面に展開された厚層金網の略全面に、同一寸法のアンカーピンを満遍無く打ち込むものとすることが可能である。
【0021】
保持柵は、法面に展開された厚層金網よりも表層側に突出し、播種工によって吹き付けられた緑化基材を下側から保持し、植生基盤が脱落、流失するのを、阻止する機能を果たすものであり、法面の表層に展開、張着された厚層金網の表面側であって、斜面に沿った上下方向に所定間隔を隔てた階層状となる各高さ位置毎に、等高線状をなす帯型に突設されたものとし、夫々がその上方に形成された緑化基盤を十分な強度で保持可能なものとしなければならず、組み合わせた厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されてその角度が確保されるようにしなければならず、例えば、適宜横幅寸法毎の適所に、夫々繋着腕を設け、適宜対応する厚層金網の適所に簡便に連結可能な構造とするのが望ましく、基端側の所定幅寸法毎に、厚層金網の肉厚方向に挿込み可能な突刺し脚部を、夫々下向きに突設したものとすることができる。
【0022】
繋着腕は、保持柵の適宜横幅寸法毎となる上端側を、対応する厚層金網箇所に十分な強度をもって連結可能とする機能を果たし、植生基盤からの荷重を受ける保持柵を安定的に掛着できる程度に十分な強度を有するものとし、しかも保持柵が変形しない程度の十分な密度で配置されたものとしなければならず、手作業によって簡便に繋着可能な掛着鈎を各先端に一体形成したものとすべきであって、保持柵に対して容易に折り畳める間接機構を介して連結したものとするのが望ましいが、基端に連結機構を有して、保持柵と別体のものとし、保持柵を厚層金網表側に対して立設する際に、保持柵の上端側と、厚層金網表側の対応箇所との夫々を連結するよう施工現場で装着するものとすることが可能であり、その全長は、保持柵の立設姿勢を、法面に対して90゜以下の開き角度に設定容易な適正寸法に設定されたものとすべきである。
【0023】
螺旋状連結部材は、保持柵の設置幅に渡る下端側の殆どを厚層金網の対応箇所に確実に、しかも取扱いし易く簡便に連結可能とする機能を果たすものであり、螺旋形状をなす鋼線やステンレスワイヤー製等の当該部品を、保持柵の一方端側から対応する厚層金網に絡み付けるよう装着し、保持柵の略全幅に渡る基端側とそれに対応する厚層金網とを、十分な強度で連結するものとしなければならず、保持柵の全幅に渡り、複数本を連ねるように装着したものとすることが可能である外、複数条の螺旋をなすよう重ね合わせて装着し、連結強度を高めたものとすることができる。
【0024】
給水穴は、既成法面の表面が、コンクリート製やモルタル製の擁壁によって防護されている場合に、法面表層に形成された植生基盤が、該擁壁裏面側となる地山からの給水を円滑に受けられるものとする機能を果たすものであり、擁壁を貫通して裏面側の地山に達するものとしなければならず、擁壁裏面側地山の含水量や、周辺気候ならびに植生基盤に用いられる植物種子の種類等に応じて、適正な量の給水が四季を通じて得られるよう、各種条件に応じた直径、深さおよび配置密度で穿孔したものとするのが望ましい。
【0025】
植生基盤は、法面の表層に展開、装着された厚層金網と、該厚層金網の外表側に等高線状をなすよう配置、立設された保持柵との双方に対して充填され、所定肉厚の層をなした客土状に張着され、混合された種子が後に植物を繁茂し、法面を緑化させるという機能を果たし、緑化の目的に合致した種子を含むものとしなければならず、周辺環境に違和感無く溶け込む植物種子を含有したものとするのが望ましいものであって、自然環境への影響を考慮し、周辺地域で採取された種子を混合したものとすることができる外、適宜肥料成分を混合したものとすることができ、より具体的には、種子散布工、客土吹付け工、厚層基材吹付け工等の一般的施工条件に従って形成されたものとすることができる。
【0026】
既成法面は、法面用の緑化基盤保持装置を施工可能な法面であり、切土、盛土工事や護岸工事等によって形成された傾斜状壁面であって人工的に締め固められた地肌そのままの壁面は勿論のこと、鉄骨製の保持枠や鉄筋コンクリート製の防護壁あるいはコンクリートやモルタルを所定厚さに吹付け施工した新設の擁壁、あるいは相当年月を経てしまった擁壁を対象とする外、井桁コンクリート製のものをも包含するものとする。
【0027】
この発明の法面緑化方法は、厚層金網への各保持柵の取り付けを施工現場で行うものとしているが、厚層金網の製造時か、あるいは在庫、出荷前かの何れかの段階で、保持柵を折り畳み可能に連結して置き、施工現場では、法面表層に展開、張着された厚層金網に対して、各保持柵を立ち上げて各繋着腕を対応する厚層金網に掛止することにより、所定角度姿勢に立設状とする工程を辿るものとすることが可能であり、また、厚層金網を既成法面に展開、張着した後に、複数の給水穴を穿孔するものとしているが、厚層金網を張着する前段階に、既成法面に対して給水穴を穿孔して置くという工程とすることも可能であり、その施工順序に制約を受けるものではない。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例】
【0028】
図1の断面化した緑化基盤保持装置の側面図、図2の厚層金網の平面図、図3の緑化基盤保持装置要部の正面図、図4の保持柵要部の正面図、および図5の保持柵の側面図に示される事例は、既成法面7の緑化を必要とする範囲に渡り、厚層金網1を展開、装着状とし、要所要所をアンカーピン2,2,……で固定した上、上下所定間隔を隔てた高さ位置毎となる厚層金網1の略設置幅に渡り、所定高さに設定された保持柵3,3,……を等高線状に配置させ、各保持柵3,3,……の基端側には、該基端側と厚層金網1の対応箇所とを絡み付けて連結状とする螺旋状連結部材4,4,……を夫々設けると共に、各保持柵3,3,……の略所定幅毎の適宜高さ位置には、対峙する厚層金網1に繋着可能な掛着鈎36を先端に持つ複数本の繋着腕35,35,……の基端を連結し、各掛着鈎36,36,……を対峙する厚層金網1適所に掛着状となし、前記開き角度90゜以下の姿勢を維持可能なものに組み立てた上、各保持柵3,3,……を含む厚層金網1装着範囲に渡って吹付け播種工による植生基盤6を形成、定着可能としたものとしてなるこの発明に包含される法面用の緑化基盤保持装置における代表的な実施例を示すものである。
【0029】
当該厚層金網1は、直径約4mmの索条からなり、図2中に示す網目形状とされ、1個の網目が夫々、縦約75mm横約75mm厚さ約50mmに設定されたものを用い、図3中に示すように、所定幅ならびに所定長さ寸法の単位矩形平板状に形成された複数枚の単位金網11,11,……を、既成法面7の形状に合わせて展開、敷設して継ぎ足す際、同図3中に太い実線で示した直径約3mmの螺旋状鋼線からなる連結用コイル12によって端部同士を絡み合わせるようにして連結し、全体を1枚の肉厚シート状に形成するものとなっている。
【0030】
保持柵3は、図4および図5中に示すように、全高H約140mm、全幅W約1150mmに設定され、高さ約120mmの短尺縦筋32,32,……と、高さ約140mmの長尺縦筋33,33,……とを、約35mmの幅間隔B置き毎に交互に下端を揃えて配列し、上下間隔b約15mm置き毎に、全幅W約1150mm長の横筋34,34,……を交叉状に配置、結合して格子状帯型の金網体31を一体形成し、各短尺縦筋32,32,……および各長尺縦筋33,33,……の下端を、最下位の横筋34の下側に約15mm前後突出状とする突刺し脚部37,37,……を形成したものとし、各長尺縦筋33,33,……の上端が、小径ループ状に折り曲げられ、このループ状部分を最上位の横筋34が貫通するように装着、一体化されたものとなっており、さらに、各長尺縦筋33,33,……の各上端から約30mm下側となる中途箇所であって上から3番目の配置となる横筋34と交叉する箇所には、直径約3mm、全長約150mmであり、先端に略C字型形状に折曲された掛着鈎36を一体形成した掛着腕35,35,……の各基端を、小環状に折曲させることにより、折畳み自在に連結したものとなっている。
【0031】
以上のように形成された厚層金網1ならびに保持柵3等の構造材料を、緑化基盤の施工対象となる既成法面7の施工現場に搬入し、所定の手順に従い設置することとなるが、その施工工程は、基本的にこの発明の法面緑化方法に従って行うこととなるので、これより当該法面緑化方法の各工程について順次示して行くことにする。
モルタル吹付け工による既成法面7の必要範囲に渡り、複数枚の単位金網11,11,……を展開させ、図3中に示すように、互いに隣接状の配置となる端縁部分同士に、連結用コイル11,11,……を螺旋状に絡み合わせて全体が一枚の厚層金網1をなすよう一体化して行き、その作業と同時平行して、当該厚層金網1の縦v約2.5m、横h約4mの矩形面積内毎に、直径約16mm、長さ約400mmの3本の主アンカーピン21,21,21を、略均衡する配置となり、厚層金網1と既成法面7とに貫通させるように打ち込み、さらに、同矩形状面積内毎に、直径約9mm、長さ約200mmの15本の補助アンカーピン22,22,……を、互いに略均衡する配置とするよう、厚層金網1を貫通させ、既成法面7に打ち込み固定する。つまり、アンカーピン2(21,22)は、厚層金網1の10平方メートル毎に18本打ち込まれ、厚層金網1の全体を既成法面7に確りと定着させたものとする。
この打込み作業に際し、各アンカーピン2(21,22)は、夫々の打設箇所にハンドハンマードリルを用いてモルタル擁壁の肉厚を貫通するよう下穴を穿孔した後に、石打ハンマーで打ち込み、地山に固定するのが望ましい。
【0032】
既成法面7に固定された厚層金網1の上側端から約1m間隔毎の高さ位置夫々には、図1中に示すように、保持柵3,3,……の繋着腕35,35,……が連結された側面を上側に向けた姿勢で下端の各突刺し脚部37,37,……を、厚層金網1の対応する網目部分に突き立て、保持柵3,3,……と既成法面7との開き角度αが、90゜以下、望ましくは45゜以上90゜以下の姿勢に固定状とするよう、各繋着腕35,35,……を対応する厚層金網1側に延伸状とし、各掛着鈎36,36,……を対応する網目部分に掛着させ、必要に応じて折曲げ加工を施す等して連結させたものとし、各保持柵3の下端縁と、これに接合状となっている厚層金網1の対応箇所とに沿って、螺旋状連結部材4を絡み付けるように装着して一体化させ、保持柵3,3,……を等高線状の配置となるよう立設させたものとする。
【0033】
各保持柵3,3,……の各上下中間位置の横幅約20cm間隔毎となる1平方メートル当り5箇所程度となる既成法面7に、直径約40mmのビットを装着した削岩機を用いて厚層金網1の網目を通して背面地山に達する給水孔5,5,……を穿孔した後に、植生基盤6を吹付け施工することとなる。
【0034】
吹付け播種工は、既成法面7近くの適所に配置させた図示しない吹付け機械内に、予め計量した種子、接合剤、肥料等を供給し攪拌、混合した上、コンプレッサーで作業員が操作するノズルまで圧送し、厚層金網1および各保持柵3,3,……を含む既成法面7の最上位箇所から次第に下側に移動しながら略全面に渡り、略均質に吹付け施工するものである。
【0035】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明の法面緑化基盤形成用の保持部材およびそれによる法面緑化基盤形成用の保持構造、ならびにそれを用いた法面緑化方法は、複数枚の単位金網11,11,……を連結用コイル12,12,……で繋ぎ、既成法面7の必要箇所の略全面を覆う1枚の厚層金網1を形成したものとし、該厚層金網1の略全面に渡って均衡する複数箇所に主アンカーピン21,21,……や補助アンカーピン22,22,……を打ち込み、既成法面7に対して固定状とした上、厚層金網1の上下約1m間隔置き毎となる箇所の夫々に、保持柵3,3,……を取り付けたものとしたことにより、植生基盤6を吹付け施工した後に、保持柵3,3,……に加わる荷重が、厚層金網1の略全面に分散、吸収されるので、既成法面7の一部に集中的な荷重が加わるのを阻止するものとなる。
【0036】
また、各保持柵3,3,……は、設置の最に上側配置となる側面に配された複数本の繋着腕35,35,……が、夫々基端部分で折畳み自在に連結されたものとなっているので、保持柵3を工場生産した後の在庫管理および輸送の最に、平板型の柵体として取り扱うことが可能であり、既成法面7の厚層金網1に取りつける最には、下端に突設された突刺し脚部37,37,……を厚層金網1の網目に突き刺して立設姿勢を維持させると共に、輸送の際に折畳み状となっていた各繋着腕35,35,……を延伸状に展開させ、対応する厚層金網1の網目に、各先端の掛着鈎36,36,……を係合させるという比較的簡便な作業によって、保持柵3とこれに対峙する既成法面7との開き角度αを45゜以上90゜以下の範囲内に設定し、その姿勢を維持されことが可能となる。
【0037】
このように設置された厚層金網1ならびに保持柵3,3、……の双方を含む既成法面7の表層範囲に、吹付けによる播種工を施すことにより、形成された植生基盤6の略全面に渡って強固な固着力を確保するものとなり、各階層毎の保持柵3,3,……の下支えによって硬化前の植生基盤6が滑り落ちるのを阻止することが可能であって、各保持柵3,3,……の立設姿勢を、既成法面7に対して45゜以上、90゜以下の範囲内に設定したことにより、既成法面7に対して略直角となる方向から植生基材を吹付け施工した際に、保持柵3,3,……の下側にも十分に植生基材が届き、厚さにムラの無い連続した植生基盤6を形成することが可能となり、薄弱部分の発生に起因する植生の衰退や崩壊を阻止するのものとなる。
【0038】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例の法面緑化基盤形成用の保持部材およびそれによる法面緑化基盤形成用の保持構造、ならびにそれを用いた法面緑化方法は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、既成法面7に固定した厚層金網1の上下約1m間隔毎に等高線状に配置された保持柵3,3,……を、その基端部分を突刺し脚部37,37,……および螺旋状連結部材4,4,……によって、上端側を複数本の繋着腕35,35,……によって夫々、対応する厚層金網1に連結したものとすることにより、植生基盤6を形成した際に、既成法面7の保持柵3,3,……が設けられた部分のみに荷重が集中してしまうことを防止し、厚層金網1の広い範囲で荷重を分散、吸収することができるので、既成法面7の耐久強度を高めることができるものとなり、しかも保持柵3に折畳み自在に連結された繋着腕35,35,……は、工場生産後の在庫管理や出荷、輸送の際に平板状の荷姿とすることができ、工場出荷から現場への設置までに至る間の作業効率を格段に向上し、厚層金網1への固定の際には、保持柵3の対峙する既成法面7に対して約45゜以上、90゜以下の開き角度αとなるよう立設姿勢を維持するものとなって、植生基盤6の不用意な剥離や脱落等を確実に防止することができる。
【0039】
さらに、保持柵3の既成法面7との開き角度αを、約45゜以上、90゜以下とすることによって吹付け播種工を行った際に、保持柵3の下面側にも十分に植生基材を吹き付け充填することが可能となり、従前までであれば、植生基盤6の保持柵3の下面側付近部分の付着力が薄弱であったり、全く吹き付けできなかったりして、後々この部分から衰退、剥離して植生基盤6の全体が、脱落してしまうという事態に陥ってしまうものであったが、このような植生基盤6の形成ムラに起因する脱落を、確実に防止して植生基盤6の長寿命化を図ることができるという利点を得られることになる。
【0040】
(結 び)
叙述の如く、この発明の法面緑化基盤形成用の保持部材およびそれによる法面緑化基盤形成用の保持構造、ならびにそれを用いた法面緑化方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの法面の緑化方法に比較して植生基盤の定着力を強化することができると共に、植生基盤の均質化と肉厚化とを実現可能とし、より耐久性に秀れた緑化基盤を形成することを可能とし、施工後のメンテナンスも殆ど不要とすることができるので、遥かに経済的なものとすることができ、緑化基盤の安定的な定着に苦慮する関連自治体や法面施工業者等は勿論のこと、施工後の景観や自然環境の変貌に不安を抱く周辺住民等においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面は、この発明の法面用の緑化基盤保持装置、およびそれを用いた法面緑化方法の技術的思想を具現化した代表的な実施例を示すものである。
【図1】法面用の緑化基盤保持装置を断面化して示す側面図である。
【図2】厚層金網の要部形状を示す正面図である。
【図3】厚層金網要部の固定構造を概略的に示す正面図である。
【図4】保持柵の要部形状を示す正面図である。
【図5】保持柵の形状を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 厚層金網
11 同 単位金網
12 同 連結用コイル
2 アンカーピン
21 同 主アンカーピン
22 同 補助アンカーピン
3 保持柵
31 同 金網体
32 同 短尺縦筋
33 同 長尺縦筋
34 同 横筋
35 同 繋着腕
36 同 掛着鈎
37 同 突刺し脚部
4 螺旋状連結部材
5 給水穴
6 植生基盤
7 既成法面
α 開き角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーピンによって要所要所を既成法面に添設状に固定される厚層金網と、既成法面に添設状とされた該厚層金網上の所定箇所に組み合わせ可能な下端縁形状に形成され、植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなり、その上端縁の横長方向適宜間隔置きに、所定長さの掛着鈎付き繋着腕の基端を折り畳み自在に組み込んでなる保持柵と、それら厚層金網上の所定箇所に保持柵下端縁を組み合わせた状態で双方に縫い合わせ状に絡まり付く螺旋状連結部材との組み合わせからなるものとしたことを特徴とする法面緑化基盤形成用の保持部材。
【請求項2】
アンカーピンによって要所要所を既成法面に添設状に固定される厚み30ミリないし100ミリ前後とした厚層金網と、既成法面に添設状とされた該厚層金網上の所定箇所に組み合わせ可能となるように下端縁に10ミリないし30ミリ前後突出させた突刺し脚部に形成され、50ないし300前後の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなり、その上端縁の横長方向150ないし300ミリ前後の間隔置きに、所定長さの掛着鈎付き繋着腕の基端を折り畳み自在に組み込んでなる保持柵と、それら厚層金網上の所定箇所に保持柵下端縁を組み合わせた状態で双方に縫い合わせ状に絡まり付く螺旋状連結部材との組み合わせからなるものとしたことを特徴とする法面緑化基盤形成用の保持部材。
【請求項3】
既成法面の必要範囲に渡って厚層金網を展開し、その要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、所望する植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵が、その下端縁を螺旋状連結部材によって厚層金網に組み合わされた上、同上端縁の横長方向適宜間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるようにしてなるものとしたことを特徴とする、請求項1または2何れか記載の保持部材による法面緑化基盤形成用の保持構造。
【請求項4】
コンクリート製やモルタル製等で形成された既成法面の必要範囲に渡って厚層金網を展開し、その要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、所望する植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵が、その下端縁の突刺し脚部を厚層金網に突っ込んだ状態で螺旋状連結部材によって組み合わされた上、同上端縁の横長方向適宜間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるようにしてなるものとしたことを特徴とする、請求項1または2何れか記載の保持部材による法面緑化基盤形成用の保持構造。
【請求項5】
コンクリート製やモルタル製等で形成された既成法面の必要範囲に渡り、厚み30ミリないし100ミリ前後とした厚層金網を展開し、その10平行メートル当り10ないし20箇所前後となる要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下1メートル前後となる間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、50ないし300前後の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵が、その下端縁の突刺し脚部を厚層金網に突っ込んだ状態で螺旋状連結部材によって組み合わされた上、同上端縁の横長方向150ないし300ミリ前後の間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるようにしてなるものとしたことを特徴とする、請求項1または2何れか記載の保持部材による法面緑化基盤形成用の保持構造。
【請求項6】
既成法面の必要範囲に渡り、厚層金網を展開とし、要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、吹付け播種工によって形成される植生基盤厚の半分から一倍半程度の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵の下端縁と厚層金網の対応箇所とを各保持柵の横巾に渡って螺旋状連結部材で絡み付けて組み合わせると共に、同上端縁の横長方向適宜間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるように組み立てた上、各保持柵を含む厚層金網装着範囲に渡り、吹付け播種工を施すことによって植生基盤を形成、定着するようにした、請求項3ないし5何れか一項記載の法面緑化基盤形成用の保持構造を使った法面緑化方法。
【請求項7】
コンクリート製やモルタル製等で形成された既成法面の必要範囲に渡り、厚み30ミリないし100ミリ前後とした厚層金網を展開し、10平行メートル当り10ないし20箇所前後の要所要所をアンカーピンで固定した上、該厚層金網上における等高線状に上下1メートル前後の所定間隔を隔てた高さ位置毎となる箇所の夫々には、50ないし300ミリ前後の縦寸法で、適宜横長寸法とした金網状または格子状の部材からなる保持柵の下端縁と厚層金網の対応箇所とを各保持柵の横巾に渡って螺旋状連結部材で絡み付けて組み合わせると共に、同上端縁の横長方向150ないし300ミリ前後の間隔置きに取り付けられた繋着腕の先端の掛着鈎を、それよりも上方となる箇所の厚層金網部分に掛止するようにして、それら保持柵と厚層金網との開き角度が、同保持柵基端を通る鉛直線を超えることのない角度に規制されるように組み立てる一方、上下保持柵間となる既成法面約1平方メートル当り毎の範囲に約5箇所程度となるよう、背面地山から給水可能とするよう既成法面の厚さ寸法を貫通する給水孔を穿設した上、全ての保持柵を含む厚層金網装着範囲に渡り、吹付け播種工を施すことによって厚み100ないし200mm前後となる植生基盤を形成、定着するようにした、請求項3ないし5何れか一項記載の法面緑化基盤形成用の保持構造を使った法面緑化方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−63758(P2006−63758A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250882(P2004−250882)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(501045917)五十嵐特殊建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】