説明

泡吐出器

【課題】 泡吐出器において、空気室への水の滞留を防止すること。
【解決手段】 泡吐出器10であって、頭部40の往復動に連動して空気室A内を往復動するエアピストン70を設け、エアピストン70により拡張される空気室Aに外部の空気を吸入し、エアピストン70により収縮される空気室Aの空気を泡生成部80に排出し、空気室Aから泡生成部80への空気の排出口73Aを空気室Aの底部より下方レベルに設けたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は泡吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤等の泡吐出器として、特許文献1に記載の如く、容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部を有し、頭部を往復動させることにより、容積可変の液室から内容液を、容積可変の空気室から空気を、それぞれ泡生成部に送り、この内容液と空気を泡生成部で混合発泡させ、生成した泡を頭部に設けた吐出口から吐出するものがある。この泡吐出器では、頭部とキャップの隙間を空気室に通ずる空気吸入経路としている。
【0003】
そして、特許文献1の泡吐出器では、頭部とキャップの空気吸入経路になる隙間を極僅かな微小隙間に維持し、空気室への外水の浸入を防止し、ひいては空気室から泡生成部へ送られる空気量の減少を防止し、結果として内容液と空気を泡生成部で常に一定割合で混合させ、泡生成した内容液を安定的に吐出可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-121898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の泡吐出器では、空気室から泡生成部への空気の排出口が空気室の上部に配置されている。頭部とキャップの隙間の微小化にもかかわらず、空気室に浸入した水は上部の排出口から排出されずに滞留し、この水が腐敗するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、泡吐出器において、空気室への水の滞留を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部を有し、頭部を往復動させることにより、容積可変の液室から内容液を、容積可変の空気室から空気を、それぞれ泡生成部に送り、この内容液と空気を泡生成部で混合発泡させ、生成した泡を頭部に設けた吐出口から吐出する泡吐出器であって、頭部の往復動に連動して空気室内を往復動するエアピストンを設け、エアピストンにより拡張される空気室に外部の空気を吸入し、エアピストンにより収縮される空気室の空気を泡生成部に排出し、空気室から泡生成部への空気の排出口を空気室の底部より下方レベルに設けたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は泡吐出器の初期状態を示す断面図である。
【図2】図2は泡吐出器の頭部を下動開始した状態を示す断面図である。
【図3】図3は泡吐出器の頭部の下動状態を示す断面図である。
【図4】図4は泡吐出器の頭部を上動開始した状態を示す断面図である。
【図5】図5は泡吐出器の頭部の上動状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
泡吐出器10は、図1に示す如く、洗剤等の内容液が収容された容器本体1の口部1Aに、キャップ20の取付部20Aを固定する。キャップ20の取付部20Aの内側部にはシリンダ30の大径部30Aの上端部が突当てられ、大径部30Aの上端部にパッキン31とともに、キャップ20の取付部20Aの内側部と容器本体1の口部1Aとの間に挟圧固定される。シリンダ30は大径部30Aに連なる小径部30Bを有し、小径部30Bにディップチューブ32を嵌合し、このディップチューブ32を容器本体1の内部に挿入している。シリンダ30は、大径部30Aの内部に空気室Aを形成し、小径部30Bの内部に液室Lを形成する。キャップ20の筒部20Bには頭部40のステム41が上下方向に往復動可能に挿入される。泡吐出器10は、頭部40を往復動させることにより、容積可変の液室Lから内容液を、容積可変の空室Aから空気を、それぞれステム41の内部に設けてある後述する泡生成部80で混合発泡させ、生成した泡を頭部40に設けた吐出口42から吐出する。
【0010】
泡吐出器10は、頭部40の吐出口42に通ずるステム41の下端中空部に中空ピストンガイド51を嵌合固定し、ピストンガイド51の下端中空部に中空ピストン52を嵌合固定し、ピストン52をシリンダ30の小径部30Bに摺動可能に挿入し、小径部30Bの下端側ばね受け部33とピストン52との間に圧縮コイルばね53を介装している。泡吐出器10は、ピストンガイド51とピストン52の中空部を液室Lから延在する液吐出路54とし、ピストンガイド51における液吐出路54の上端部には上端側弁座51Aが設けられ、弁座51Aには液吐出路54からの圧力によって開くボール弁55が密接して載置される。
【0011】
泡吐出器10は、シリンダ30の小径部30B〜ピストンガイド51、ピストン52に沿って延在するポペット60を有し、ポペット60の上端部61をピストンガイド51及びピストン52の内周に摩擦嵌合し、ポペット60の下端バルブ62を小径部30Bの下端側弁座34に密接して配置し、容器本体1の内部に対して液室Lを開閉する。ポペット60の外周溝とピストン52の内周との間、更にはピストンガイド51の内周溝との間が前述の液吐出路54とされる。ポペット60の下端側の一部はコイルばね53の中心部に延在する。
【0012】
泡吐出器10は、頭部40の上下の往復動に連動して液室L内を上下動するピストンガイド51及びピストン52を有し、ポペット60の下端バルブ62がピストンガイド51及びピストン52の上動に連動して弁座34から離れ、かつピストン52の上動により拡張される液室Lに容器本体1の内容液を吸入し、ポペット60の下端バルブ62がピストンガイド51及びピストン52の下動に連動して弁座34に接し、かつピストン52の下動により収縮される液室Lの内容液を液吐出路54から弁座51Aと離れて開かれたボール弁55から後述する泡生成部80に吐出する。
【0013】
泡吐出器10は、ピストンガイド51の外周にエアピストン70の中空筒部70Aを遊挿し、エアピストン70の外周ピストン部70Bをシリンダ30の大径部30Aに摺動自在に挿入する。本実施例では、エアピストン70をピストンガイド51の外周に沿って僅かに上下相対移動可能にし、それらの下端間に後述する空気排出口73Aを形成可能にする。
【0014】
泡吐出器10は、頭部40のステム41内に空気吸入路71を延在し、空気吸入路71の外部取り込み口71Aをステム41の外面における頭部40の上端寄りに開口し、空気吸入路71をエアピストン70のピストン部70Bの端面に設けた孔71B、筒部70Aの外周に固定した吸入チェック弁72を介して空気室Aに連通可能にする。
【0015】
泡吐出器10は、ピストンガイド51の外周溝とエアピストン70の筒部70Aの内周との間、更にピストンガイド51の外周とステム41の内周溝との間の上下に続く空気排出路73を設け、ピストンガイド51の下端とエアピストン70の下端とが空気排出口73Aを開閉する開閉弁74を形成する。開閉弁74は、頭部40の下動時に頭部40とともに下動するピストンガイド51の下端をエアピストン70の下端から離隔させてそれらの下端間に空気排出口73Aを開き(図3)、頭部40の上動時に該頭部40とともに上動するピストンガイド51の下端をエアピストン70の下端に衝合させてそれらの下端間の空気排出口73Aを閉じる(図4)。
【0016】
尚、頭部40は、筒状カバー75を吊下げ、カバー75によりステム41及びキャップ20の筒部20Bの上領域を囲み、カバー75の下端部によりキャップ20の筒部20Bまわりに微小間隙を形成する。カバー75は外部取り込み口71Aへの外水の浸入を困難にする。
【0017】
即ち、泡吐出器10は、頭部40の上下の往復動に連動して空気室A内を上下動するエアピストン70を有し、エアピストン70の上動により拡張される空気室Aに外部の空気を吸入し、エアピストン70の下動により収縮される空気室Aの空気を後述する泡生成部80に排出する。
【0018】
泡吐出器10は、頭部40の吐出口42に泡生成部80を備える。泡生成部80は、液吐出路54と空気排出路73の会合領域(ボール弁55の直上部)に設けたジェットリング81により空気と泡を混合発泡し、この泡をジェットリング81の上側に配置したメッシュリング82に貼ったメッシュ82Aを通すことにより細かな泡を生成し、吐出口42から吐出可能にする。
【0019】
しかるに、泡吐出器10にあっては、シリンダ30の大径部30Aが形成する空気室Aへの水の滞留を防止するため、空気室Aからの空気排出口73Aを空気室Aの底部近傍に、より好適には空気室Aの底部Bより下方レベルに設ける。更に、空気室Aの底部Bを空気排出口73Aに向かって下り勾配をなすもの、例えばピストンガイド51を中心軸としてピストンガイド51に向かって下り勾配をなす円錐面をなすものとする。本実施例では、空気室Aの空気を排出開始するエアピストン70の下動開始時に(図2)、ピストンガイド51の下端とエアピストン70の下端とが形成する空気排出口73Aを空気室Aの底部以下のレベルに位置させ、エアピストン70の下動過程でピストンガイド51とエアピストン70の下端がシリンダ30の小径部30Bに遊挿されるときには、空気排出口73Aを空気室Aの底部から小径部30B内の更に下方レベルに位置させるものとする。
【0020】
尚、泡吐出器10は、キャップ20の筒部20Bと頭部40のステム41の間隙を容器本体1の内部への空気導入路91とし、容器本体1の内部への空気導入口91Aをシリンダ30の大径部30Aの上端側に穿設する。泡吐出器10の初期状態(図1)で、空気導入口91Aはエアピストン70のピストン部70Bにより空気導入路91に対し閉じられ、頭部40の上下の往復動時に、空気導入口91Aはエアピストン70のピストン部70Bにより空気導入路91に対し開口され、かつ空気室Aとは常時遮断される。前述のカバー75はキャップ20の筒部20Bまわりに微小間隙を形成するから、空気導入路91への外水の浸入を困難にする。
【0021】
泡吐出器10にあっては、空気の外部取り込み口71Aから空気吸入路71を通って空気室Aへ外部の空気を吸入する空気吸入経路と、空気導入路91から空気導入口91Aを通って容器本体1の内部へ外部の空気を導入する空気導入経路を別系統とする。
【0022】
泡吐出器10は以下の如く動作する。
(動作1)(図2)
(1)図1の初期状態から頭部40を押すと最初に頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、ポペット60が下へ下がる。
【0023】
(2)ポペット60の下端バルブ62がシリンダ30の小径部30Bの弁座34に当たり(IA部分)、液室Lを閉じる。
【0024】
(3)エアピストン70はこの時点では動かないため(頭部40とエアピストン70の上端の隙間が狭くなる)(IB部分)、エアピストン70の下端とピストンガイド51の下端の間に隙間ができ、空気室Aの排出口73Aとなる(IC部分)。
【0025】
(動作2)(図3)
(1)頭部40を更に押すと、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、エアピストン70が下へ下がる。
【0026】
(2)空気室A内の空気は空気排出路73を通り、液室L内の液は液吐出路54を通り、泡生成部80のジェットリング81の部分で混合され泡となる。泡はメッシュリング82に貼られたメッシュ82Aを通り細かな泡となって頭部40の吐出口42から吐出される。
【0027】
(3)このとき、空気室A内に溜まっていた水も、空気の流れに沿って空気排出路73を通り、吐出口42から排出される。
【0028】
(4)頭部40を押している途中で、エアピストン70が塞いでいた空気室Aの側面の空気導入口91Aが開放されるため、空気が容器本体1の内部へ導入される。
【0029】
(動作3)(図4)
(1)頭部40を押すのをやめて頭部40から手を離すと、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、ポペット60がコイルばね53のばね力で上がる。
【0030】
(2)ポペット60の下端がシリンダ30の小径部30Bの弁座34から離れ隙間ができ(IIIA部分)、液室Lを開く。
【0031】
(3)エアピストン70はこの時点では動かないため(頭部40とエアピストン70の上端の隙間が広くなる)(IIIB部分)、エアピストン70の下端とピストンガイド51の下端の隙間が閉じ、空気排出口73Aが閉じられる(IIIC部分)。
【0032】
(動作4)(図5)
(1)頭部40が更に上昇すると、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、エアピストン70が上昇する。
【0033】
(2)空気室A内は負圧となるため、吸入チェック弁72が開き、空気吸入路71を通り空気室A内へ空気が吸入される。また、液室L内も負圧となるため、容器本体1内の内容液がディップチューブ32を通って液室Lへ導入される。
【0034】
(3)図1の初期状態に戻る。
【0035】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)空気室Aから泡生成部80への空気の排出口73Aが空気室Aの底部B近くに設けられた。従って、エアピストン70が空気室Aを収縮して空気室Aの空気を排出口73Aから泡生成部80に排出するとき、空気室Aに浸入してその底部Bに存在していた水も空気の流れに乗って排出口73Aから吐出口42の側へ排出され、空気室Aへの水の滞留を防止できる。
【0036】
(b)空気室Aの底部Bを空気の排出口73Aに向かう下り勾配にしたから、空気室Aに浸入した水をその底部Bの排出口73Aの周辺に集め、上述(a)による水の排出の確実を図ることができる。
【0037】
(c)頭部40の下動時に該頭部40とともに下動するピストンガイド51の下端をエアピストン70の下端から離隔させてそれらの下端間に空気の排出口73Aを開き、頭部40の上動時に該頭部40とともに上動するピストンガイド51の下端をエアピストン70の下端に衝合させてそれらの下端間の空気の排出口73Aを閉じる開閉弁74を設けた。従って、空気室Aへ空気を吸入する頭部40の上動時には排出口73Aを閉じ、空気室Aの空気を排出する頭部40の下動時には排出口73Aを開く開閉弁74を、格別の弁体によらず簡易に構成できる。
【0038】
(d)空気室Aへ外部の空気を吸入する空気吸入経路と、容器本体1の内部へ外部の空気を導入する空気導入経路を別系統にした。従って、空気吸入経路の外部取り込み口71Aを頭部40の最上端側に設け、更にはその外部取り込み口71Aの周囲をカバー75で覆うと、外水の浸入しにくい専用空気吸入経路(空気吸入路71等)を簡易に確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部を有し、頭部を往復動させることにより、容積可変の液室から内容液を、容積可変の空気室から空気を、それぞれ泡生成部に送り、この内容液と空気を泡生成部で混合発泡させ、生成した泡を頭部に設けた吐出口から吐出する泡吐出器であって、頭部の往復動に連動して空気室内を往復動するエアピストンを設け、エアピストンにより拡張される空気室に外部の空気を吸入し、エアピストンにより収縮される空気室の空気を泡生成部に排出し、空気室から泡生成部への空気の排出口を空気室の底部より下方レベルに設けた。これにより、空気室への水の滞留を防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 容器本体
1A 口部
10 泡吐出器
20 キャップ
30 シリンダ
30A 大径部
30B 小径部
40 頭部
42 吐出口
51 ピストンガイド
52 ピストン
53 コイルばね
54 液吐出路
60 ポペット
70 エアピストン
71 空気吸入路
73 空気排出路
73A 空気排出口
74 開閉弁
80 泡生成部
91 空気導入路
A 空気室
B 底部
L 液室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部を有し、頭部を往復動させることにより、容積可変の液室から内容液を、容積可変の空気室から空気を、それぞれ泡生成部に送り、この内容液と空気を泡生成部で混合発泡させ、生成した泡を頭部に設けた吐出口から吐出する泡吐出器であって、
頭部の往復動に連動して空気室内を往復動するエアピストンを設け、エアピストンにより拡張される空気室に外部の空気を吸入し、エアピストンにより収縮される空気室の空気を泡生成部に排出し、
空気室から泡生成部への空気の排出口を空気室の底部より下方レベルに設けた泡吐出器。
【請求項2】
前記空気室の底部が空気の排出口に向かって下り勾配をなす請求項1に記載の泡吐出器。
【請求項3】
前記頭部に固定したピストンガイドの外周にエアピストンを嵌合し、ピストンガイドの外周とエアピストンの内周との間に空気排出路を設け、ピストンガイドの下端とエアピストンの下端とが空気の排出口を開閉する開閉弁を形成するものであり、
開閉弁は、頭部の下動時に該頭部とともに下動するピストンガイドの下端をエアピストンの下端から離隔させてそれらの下端間に空気の排出口を開き、頭部の上動時に該頭部とともに上動するピストンガイドの下端をエアピストンの下端に衝合させてそれらの下端間の空気の排出口を閉じる請求項1又は2に記載の泡吐出器。
【請求項4】
前記空気室へ外部の空気を吸入する空気吸入経路と、容器本体の内部へ外部の空気を導入する空気導入経路を別系統としてなる請求項1〜3のいずれかに記載の泡吐出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−35916(P2012−35916A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216874(P2011−216874)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2006−213928(P2006−213928)の分割
【原出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】