説明

泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料

【課題】密閉容器入り飲料の飲用温度帯である4〜60℃の温度範囲で、起泡性に優れ、その泡沫が短時間に消えず保持し、視覚的且つテクスチャーとしても泡沫を楽しむことができる品質が安定な泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料を提供する。
【解決手段】起泡性を有する(リキャップ機能を有する)密閉容器入り飲料において、乳由来のタンパク質を0.6重量%以上、動物性由来の脂肪及び/又は植物性由来の脂肪を0.2重量%以上含有し、トータルHLBが14以上である乳化剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器入り飲料で容器を振ることで泡が立ち、振った後容器を開缶しても5分以上泡沫が保持することができ、視覚的にカプチーノ風の起泡した飲料、すなわち泡沫の保持性が高い飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カプチーノ等のコーヒー、ミルクセーキ、シェイクドリンク、抹茶は泡が形成された飲料で、視覚的かつ口当たりが滑らかとなるテクスチャーを楽しむことができることとして知られている。
【0003】
これらの特徴をもつ密閉容器入り飲料を製造する方法が検討され、報告されている。すなわち、製造工程中の起泡を抑制し、かつ加熱殺菌後密閉容器に充填された飲料において、容器を振ることで安定的な泡を形成することができる、起泡性飲料の製造方法及びその飲料が開示されている(特許文献1〜8)。
しかし、これらの先行技術は、起泡性に主眼がおかれ、泡沫の保持性について満足するものがないのが現状であった。
【0004】
また、これらの先行技術には、泡沫の長時間維持について格別の検討がなされていないだけでなく、温度に対する検討もなされていない。すなわち、アイスでもホットでも、すぐれた起泡性と泡沫の長時間保持性を併有した飲料については、何も記載されていない。
【0005】
更にまた、下記するように、リキャップ機能を有する容器と有機的に組み合わせて、密閉容器入り飲料を数回に分けたりあるいは時間をかけたりして飲む場合においても、その都度、容器を振ることにより、すぐれた起泡性と泡沫の長時間保持性を併有する飲料については、これらの先行技術は何も開示するところがない。
【0006】
一方、密閉容器入り飲料において、リキャップ機能を有した容器が登場しており、一気に飲み終えるのではなく、数分の時間をかけて飲むことも多くなっている。特にリキャップ機能を有した容器に関しては、キャップの直径が38mm以上の大口径のものも登場し、内容液自体を飲み口からそのまま見ることが可能となっている。このリキャップ機能を有した容器と起泡性飲料とを組み合わせ、視覚的かつ口当たりが滑らかとなるテクスチャーを楽しむことができるような飲料を体感することにより、今まで以上に嗜好性をより高められ、また満足できるものと考えられる。
【特許文献1】特開昭59−224673号公報
【特許文献2】特開昭60−87775号公報
【特許文献3】特開平04−30746号公報
【特許文献4】特開平10−295339号公報
【特許文献5】特開平11−56244号公報
【特許文献6】特開2000−14319号公報
【特許文献7】特開2000−60507号公報
【特許文献8】特開2000−157232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、密閉容器入り飲料の飲用温度帯である4〜60℃の温度範囲で、起泡性に優れ、その泡沫が短時間に消えず保持され、視覚的且つテクスチャーとしても泡沫を楽しむことができる品質が安定な泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的達成のために、各方面から検討の結果、原料の選択とこれらの新規配合により、泡沫が保持されることをはじめて見出し、しかもこの泡沫保持性が長時間維持され、そのうえ、この性質がホットの場合でもアイスの場合でも、つまり、広い温度帯において発揮されることもはじめて見出した。更に、起泡性についても従来技術と何ら遜色がないことも確認した。
【0009】
すなわち本発明は、これらの有用新知見に基づき、更に研究の結果遂に完成されたものであって;
請求項1に記載の発明は、泡沫の保持性が高い飲料が、乳由来のタンパク質を0.6重量%以上、動物性由来の脂肪及び/又は植物性由来の脂肪を0.2重量%以上含有し、トータルHLBが14以上である乳化剤を含有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の泡沫の保持性が高い飲料において、前記乳化剤を0.2重量%以上含有し、前記乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が、0.12〜0.49となることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれか1項に記載の泡沫の保持性が高い飲料において、前記乳由来のタンパク質が、脱脂粉乳が主成分であり、その割合が飲料全量中の2.8重量%以上含有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の泡沫の保持性が高い飲料において、容器を振ることで泡沫が5分以上消滅しないことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の泡沫の保持性が高い飲料において、4℃〜60℃の温度範囲の飲料でも前記泡沫が5分以上消滅しないことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の泡沫の保持性が高い飲料において、密閉容器がリキャップ機能を有していることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の泡沫の保持性が高い飲料において、前記リキャップ機能を有した密閉容器のキャップの直径が38mm以上の口径であることを特徴とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、起泡性を有する密閉容器入り飲料の製造において、乳由来のタンパク質を0.6重量%以上、動物性由来の脂肪及び/又は植物性由来の脂肪を0.2重量%以上含有し、トータルHLBが14以上である乳化剤を含有せしめること、を特徴とする泡沫の保持性が高い飲料を製造する方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、密閉容器入り飲料の飲用温度帯である4〜60℃の温度範囲で、起泡性に優れ、その泡沫が短時間に消えず保持し、視覚的且つテクスチャーとしても泡沫を楽しむことができる品質が安定な泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料を提供することができる。また、リキャップできる容器を使用することにより、何度も起泡させ、泡沫を維持しつづけることも可能である。したがって、リキャップ機能を有する容器との新規組み合わせによって、従来にない新規にして卓越した効果も奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料を具体化した一実施形態について、詳述する。
【0014】
本発明にいう泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料は、コーヒー乳飲料、ミルク紅茶、ミルクココア、ミルク抹茶、ミルクセーキ、イチゴミルク、バナナミルクのような各種フルーツ味のミルク等の乳飲料が挙げられる。本発明の飲料は容器を振ることにより飲料液の表面上に泡沫を生じる飲料であり、例えばカプチーノのように上層部に泡を形成し、下層部が液状であるものが該当する。
【0015】
本発明で用いられる乳由来のタンパク質とは、乳成分に存在するタンパク質全体を示すが、乳成分として、脱脂粉乳単独か、脱脂粉乳を主原料として牛乳または全粉乳のいずれかまたは両方を組合わせて用いることができる。その他、適宜、練乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、部分脱脂乳、生クリーム、バター等を配合しても良い。また、これら乳成分において特に脱脂粉乳が好ましく、その割合が飲料全量中の2.8重量%以上含有することが好ましい。前記の乳成分は、飲料全量中の乳由来のタンパク質が0.6重量%以上、好ましくは0.65重量%以上1.3重量%以下となるような量を配合する。乳由来のタンパク質が0.6重量%未満の場合、泡沫が持続しにくい。また、乳由来のタンパク質が多過ぎても泡沫が持続しにくくなる。
【0016】
本発明で用いられる動・植物性由来の脂肪としては、動物性由来の脂肪及び/又は植物性由来の脂肪が使用される。例えば、動物性由来の脂肪として牛乳や全粉乳などの乳由来の脂肪が挙げられ、植物性由来の脂肪としてパーム油、パーム核油、やし油、ナタネ油、大豆油、コーン油、ゴマ油、米油、オリーブ油、綿実油、アマニ油、桐油、及び椿油等が挙げられる。また、水素添加、分別、エステル交換等の加工がこれらに施された加工油脂を用いてもよい。また、これら動・植物性由来の脂肪を0.2重量%以上、好ましくは0.2重量%よりも多く0.8重量%以下となるような量を配合する。動・植物性由来の脂肪が0.2重量%より少ない場合は、期待する風香味に欠け、また0.8重量%より多い場合は、起泡性及び泡沫の保持性が悪くなる。
【0017】
本発明で用いられる乳化剤としては、食品用として通常用いられるものであれば特に限定されず、具体例として、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンが挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ポリグリセリンエステル、モノグリセライド、及びジグリセリンモノ脂肪酸エステルが挙げられる。これらは、単独で含有されてもよいし、2種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0018】
更にこれらの単独または混合乳化剤のHLB値が14以上を有するものを用いる。HLB値とは、乳化剤分子が持つ油になじみやすい性質と水になじみやすい性質のバランスを表したもので、親水基を持たない物質をHLB=0とし、親油基を持たず親水基のみを持つ物質をHLB=20として等分した値を示す。親油性に対し親水性が大きいほどHLB値も大きく、水に溶けやすい性質の乳化剤であり、逆の場合は水に溶けにくい性質となる。2種以上混合された乳化剤のHLB値は、各乳化剤のHLB値の加重平均となる。前記乳化剤は、飲料全量中の0.2〜0.4重量%、好ましくは0.29〜0.34重量%になるよう添加する。乳化剤の添加量が0.2重量%より低い場合は、製品に所望な起泡性が十分に得ることができず、0.4重量%より多い場合は、風味に影響を及ぼすことから好ましくない。また、使用する乳化剤の脂肪酸組成としてパルミチン酸が80%以上含有することが好ましい。
【0019】
乳由来のタンパク質及び乳化剤において、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)の積が、0.12〜0.49、好ましくは0.19〜0.44となる場合、泡沫の保持性が高くなる。この値から外れた場合は、泡沫の保持性が十分ではなく、短時間で泡沫が消滅するおそれがあり、商品として適さない傾向にある。
【0020】
なお、乳由来のタンパク質及び乳化剤においては、これらを混合する工程を有し、混合した後、均質化する。均質化する方法としては、通常の常圧ホモゲナイザーのほか、15MPa以上、好ましくは15〜50MPaの高圧で均質化する高圧ホモゲナイザーや高いせん断力を有しているホモゲナイザーなどを使用することができる。本発明における泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料には、飲料の種類に応じ、コーヒー、紅茶、ココア、抹茶、果汁等の原料液を単独または混合し、乳成分を配合して乳入り飲料とすることのできるものであれば特に限定はされない。原料液としては、それぞれの原料の抽出液、乾燥粉体の溶解液、搾汁液などが挙げられる。
【0021】
更に、飲料の風香味を損なわない範囲内において、副原料としてショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液糖、糖アルコール、人工甘味料等の甘味料や、加熱殺菌による乳タンパク質の沈殿生成を防止できるものであれば特に限定はされないが、例えば重曹が好適に用いられる。pH調整剤、安定剤、酸味料、酸化防止剤、香料などを配合しても良い。
【0022】
前記安定剤としては、乳化の安定化、増粘等の機能により品質の安定化が望めるものであれば特に限定されないが、例えばでんぷん、セルロース、カラギーナン、アラビアガム、グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、プルラン等の植物起源の多糖類及びその誘導体が好適に用いられる。
【0023】
内容液は、密閉容器に充填されるため、殺菌を施すのが好ましく、殺菌方法としては、内容液自体を殺菌する超高温殺菌(UHT殺菌)や高温短時間殺菌(HTST殺菌)と容器に充填した後に殺菌するレトルト殺菌等を用いることができる。
【0024】
また、内容液の品質保持として、脱気した水や不活性ガス雰囲気下での調合、充填を行うことで内容液の酸化劣化の防止をすることができる。
【0025】
本発明における密閉容器としては、缶(アルミニウム、スチール)、ビン(ガラス)、ペットボトル、フルオープンの容器が使用できるが、リキャップ機能を有した容器が望ましく、更には内容液を視認しやすい容器でキャップの直径が38mm以上の大口径のものが好ましい。リキャップ機能を有することで、起泡が少ない場合やより起泡させたい場合、クリーミーな泡を体感したい場合は、適宜満足のいくまで容器を振とうすることが可能になる。泡の調整も適宜可能である。
【0026】
本発明における泡沫の保持性の高い密閉容器入り飲料は、飲用する際に、適時、例えば10秒〜1分間、手にて容器を振ることにより、気泡性に優れた、飲料の表面に緻密性及び形状保持性に優れた泡沫を有する飲料となり、視覚的且つテクスチャーとして楽しむことができる。更に、該飲料は、アイスでもホットでも飲用することができる。
【0027】
本発明に係る泡沫保持飲料を製造するには、飲料全量中の乳由来のタンパク質が0.6重量%以上、動・植物性由来の脂肪が0.2重量%以上となる量の乳成分及び動・植物性脂肪、トータルHLBが14以上である乳化剤、及び所望するのであれば、安定剤を順次(又は同時に)溶解し、得られた溶解液を通常のホモゲナイザーあるいは15MPa以上の条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化する。
【0028】
得られた均質化液を原料液に添加して最後に定量になるようゲージアップして、調合液とする。さらに調合液を前記ホモゲナイザーで均質化しても良い。また、前記溶解液の段階では均質化せず、調合液の段階で均質化することもできる。原料液としては、各原料の抽出液、乾燥粉体の溶解液、これらにショ糖、その他の副原料を添加したものが挙げられる。
【0029】
例えばコーヒーの場合、コーヒー抽出液にショ糖を添加して溶解した後、重曹を加えてpHを調整し、これを原料液として使用することができる。
【0030】
得られた調合液を80〜95℃に昇温した後、リキャップ機能を有する容器に充填し、常法にしたがって殺菌して泡沫の保持性の高い密閉容器入りコーヒー飲料を得る。
【0031】
本発明に係る飲料は、比較例に比して起泡性が高いだけでなく、泡沫の保持性が高く、起泡して5分間室温放置後において、泡沫部分の容積の減少率がわずか1〜5%程度、アイスの場合でも5〜10%程度、ホットの場合でも10〜18%程度であって、泡沫の保持性が高いという著効が奏される。
【0032】
また、10分間という長時間室温放置後においても、泡沫部分の容積の減少率がわずか1〜5%程度にすぎず、アイスの場合でも5〜18%程度、ホットの場合でも5〜18%程度であって泡沫の保持性が高いという著効が奏される。10分間放置後においてもこのように泡沫の高い保持性が得られることは従来未知であってきわめて顕著な効果である。
【0033】
したがって本発明は、起泡性を有する密閉容器入り飲料において、泡沫を長時間維持する方法ないし泡沫部分の容積の減少を抑制ないし防止する方法も提供するものである。
【実施例】
【0034】
次に、各実施例を挙げて前記実施態様を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
焙煎したコーヒー豆を粉砕後、95℃の熱水でコーヒー豆量に対し約9倍量の湯にて40分間抽出を行った。抽出された液は、金属メッシュ(80メッシュ)を通過後、冷却プレートに供され、20℃以下で保持した。得られた液(以下、コーヒー抽出液)の可溶性固形分はBx3.00であり、抽出率は28%であった。このコーヒー抽出液を最終1000mlあたりでの焙煎豆の使用量が54gになるように秤量した。この抽出液に、ショ糖50g添加し完全に溶解した後、調合液のpHが6.5になるよう重曹を1.25g添加した。
【0036】
次いで、飲料全量中に対して、乳成分として乳由来のタンパク質含量が0.98重量%になる量を60℃の水300gで溶解した脱脂粉乳23gおよび全粉乳9.5gに、植物性油脂として0.2重量%となる量のナタネ由来の乳化植物油脂4.3gと、乳化剤として0.34重量%となる量のショ糖脂肪酸エステル(HLB16)3.5gと、安定剤として増粘多糖類0.6gを順次溶解した。この溶解液を前記コーヒー抽出液に添加して最後に1000mlになるようゲージアップしたものを調合液とした。
【0037】
この調合液を15MPaの条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化した後、90℃に昇温後、キャップの直径が38mmのリキャップ機能を有する170ml容量の缶に充填し、レトルト殺菌(123.5℃、26分間、F=45)を行い、目的とする泡沫の保持性の高い密閉容器入りコーヒー飲料を得た。
なお、前記コーヒー飲料は、乳由来のタンパク質含量が0.98重量%、動・植物性由来の脂肪が0.47重量%、乳化剤含量が0.34重量%、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が0.33となっている。
【0038】
(比較例1)
実施例1記載の秤量したコーヒー抽出液に、ショ糖50g添加し完全に溶解した後、調合液のpHが6.5になるよう重曹を1.25g添加した。飲料全量中に対して、乳成分として乳由来のタンパク質含量が1.31重量%になる量を60℃の水300gで溶解した脱脂粉乳40gに、乳化剤として0.03重量%になる量のショ糖脂肪酸エステル(HLB16)0.3gと、起泡剤として卵白ペプタイド0.8gと、安定剤として増粘多糖類0.6gを順次溶解した。この溶解液を前記コーヒー抽出液に添加して最後に1000mlになるようゲージアップしたものを調合液とした。
【0039】
この調合液を15MPaの条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化した後、90℃に昇温後、リキャップ機能を有する170ml容量の缶に充填し、レトルト殺菌(123.5℃、26分間、F=45)を行い、卵白ペプチドを気泡剤として添加された密閉容器入り起泡性コーヒー飲料を得た。
なお、前記コーヒー飲料は、乳由来のタンパク質含量が1.31重量%、動・植物性由来の脂肪が0.04重量%、乳化剤含量が0.03重量%、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が0.04となっている。
【0040】
(比較例2)
実施例1記載の秤量したコーヒー抽出液に、ショ糖50g添加し完全に溶解した後、調合液のpHが6.5になるよう重曹を1.25g添加した。飲料全量中に対して、乳成分として乳由来のタンパク質含量が0.98重量%になる量を60℃の水300gで溶解した脱脂粉乳30gに、乳脂肪として0.23重量%となる量の乳脂肪(クリーム)5.14gと、植物性油脂として0.08重量%となる量のナタネ由来の乳化植物油脂1.71gと、乳化剤として0.34重量%になる量のショ糖脂肪酸エステル(HLB11)3.5gと、安定剤として増粘多糖類0.6gを順次溶解した。この溶解液を前記コーヒー抽出液に添加して最後に1000mlになるようゲージアップしたものを調合液とした。
【0041】
この調合液を15MPaの条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化した後、90℃に昇温後、リキャップ機能を有する170ml容量の缶に充填し、レトルト殺菌(123.5℃、26分間、F=45)を行い、乳化剤のHLB値が低い乳化剤を使用した密閉容器入り起泡性コーヒー飲料を得た。
なお、前記コーヒー飲料は、乳由来のタンパク質含量が0.98重量%、動・植物性由来の脂肪が0.34重量%、乳化剤含量が0.34重量%、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が0.33となっている。
【0042】
(試験例1)
実施例1で作製した泡沫の保持性の高い密閉容器入りコーヒー飲料(実施例1)及び比較例1で作製した密閉容器入り起泡性コーヒー飲料(比較例1)を用いて、以下の方法にて測定した。
【0043】
測定方法:使用するコーヒー飲料(以下、サンプル)は予め4〜10℃にし、試験は室温(20〜28℃)で実施した。サンプルを100ml容量のガラス製メスシリンダーに起泡しないように注意しながら50ml注ぎ、口部に市販のラップを装着し、液が漏れないように手によって6秒間に上下10回(30cm幅)になるよう振とうした後直ちに静置し、静置直後、5分後、10分後の泡沫部分の容積を測定した。
結果を表1及び図1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1のとおり静置直後は、実施例1の泡沫部分の容積は26mlで、比較例1の泡沫部分の容積は14mlとなり、実施例1の方が比較例1に比べ泡沫部分の容積が大きく、起泡性において優れていることが明らかとなった。また、図1のとおり静置5分後においては、実施例1の泡沫部分の減少容積は1mlとなっており、ほとんど減少していなかった。一方、比較例1の泡沫部分の減少容積は4mlとなり泡沫容積の減少が見られた。更に、静置10分後においても、実施例1の泡沫部分の減少容積は2mlとなっており、ほとんど減少していなかったが、比較例1の泡沫部分の減少容積は9mlとなりかなりの泡沫の減少が見られた。すなわち、実施例1は静置10分後においても静置直後と泡沫部分の容積はほとんど変化が無く、泡沫を保持していることが確認され、比較例1と比べ泡沫の保持性に優れていることが明らかとなった。
【0046】
以上のことから、実施例1は比較例1と比べ起泡性及び泡沫の保持性に優れていることが確認された。
【0047】
(試験例2)
実施例1で作製した泡沫の保持性の高い密閉容器入りコーヒー飲料(実施例1)及び比較例2で作製した密閉容器入り起泡性コーヒー飲料(比較例2)を用いて、以下の方法にて測定した。
【0048】
測定方法:使用するコーヒー飲料(以下、サンプル)は予め、4〜10℃(アイス)または55〜60℃(ホット)にし、試験は室温(20〜28℃)で実施した。サンプルを100ml容量のガラス製メスシリンダーに起泡しないように注意しながら50ml注ぎ、口部に市販のラップを装着し、液が漏れないように手によって6秒間に上下10回(30cm幅)になるよう振とうした後直ちに静置し、静置直後、5分後、10分後の泡沫部分の容積を測定した。
【0049】
結果を表2(アイス)、表3(ホット)及び図2(アイス)、図3(ホット)に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
表2のとおりサンプルを予め4〜10℃にした場合、静置直後は、実施例1の泡沫部分の容積は18mlで、比較例2の泡沫部分の容積は18mlとなり、全く差は認められなかった。しかし、図2のとおり静置5分後においては、実施例1の泡沫部分の減少容積は5mlであったが、比較例2の泡沫部分の減少容積は15mlとかなり泡沫容積の減少が見られた。更に、静置10分後においても、実施例1の泡沫部分の減少容積は、比較例2と比べ少なく、実施例1の方が泡沫の保持性に優れていることが明らかとなった。
【0053】
一方、表3のとおりサンプルを予め55〜60℃にした場合、静置直後は、実施例1の泡沫部分の容積は42mlで、比較例2の泡沫部分の容積は40mlとなり、ほとんど差は認められなかった。しかし、図3のとおり静置5分後においては、実施例1の泡沫部分の減少容積は4mlであったが、比較例2の泡沫部分の減少容積は10mlとかなり泡沫容積の減少が見られた。更に、静置10分後においても、実施例1の泡沫部分の減少容積は4mlで静置5分後と変化が無かった。一方、比較例2の泡沫部分の減少容積は16mlとなり更に泡沫部分の容積が減少していることが確認された。すなわち、実施例1は比較例2と比べ、泡沫の保持性に優れていることが明らかとなった。
【0054】
密閉容器入り飲料は、一般的にアイスまたはホットで販売される。アイスの飲用温度は4〜10℃の温度範囲であり、ホットの飲用温度は55〜60℃の温度範囲とされている。当然のことながら、アイスの温度範囲あるいはホットの温度範囲において起泡性及び泡沫の保持性が優れていなければならない。上記の試験において、アイス及びホットの温度範囲において、実施例1は優れた起泡性及び泡沫の保持性を有していることが確認された。
【0055】
(実施例2)
実施例1記載の秤量したコーヒー抽出液に、ショ糖50g添加し完全に溶解した後、調合液のpHが6.5になるよう重曹を1.25g添加した。飲料全量中に対して、乳成分として乳由来のタンパク質含量が1.01重量%になる量を60℃の水300gで溶解した脱脂粉乳23gおよび全粉乳9.5gに、植物性油脂として0.29重量%となる量のナタネ由来の乳化植物油脂6.0gと、乳化剤として0.34重量%となる量のショ糖脂肪酸エステル(HLB16)3.5gと、安定剤として増粘多糖類0.3gを順次溶解した。この溶解液を前記コーヒー抽出液に添加して最後に1000mlになるようゲージアップしたものを調合液とした。
【0056】
この調合液を20MPaの条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化した後、90℃に昇温後、リキャップ機能を有する170ml容量の缶に充填し、レトルト殺菌(123.5℃、26分間、F=45)を行い、目的とする泡沫の保持性の高い密閉容器入りコーヒー飲料を得た。
なお、前記コーヒー飲料は、乳由来のタンパク質含量が1.01重量%、動・植物性由来の脂肪が0.55重量%、乳化剤含量が0.34重量%、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が0.34となっている。
【0057】
(実施例3)
飲料全量中に対して、乳成分として乳由来のタンパク質含量が1.01重量%になる量を60℃の水300gで溶解した脱脂粉乳23gおよび全粉乳9.5gに、植物性油脂として0.29重量%となる量のナタネ由来の乳化植物油脂6.0gと、乳化剤として0.34重量%となる量のショ糖脂肪酸エステル(HLB16)3.5gと、安定剤として増粘多糖類0.6g及び7.1重量%となる量のショ糖74gを順次溶解し、更に0.43重量%の抹茶4.5gを添加した。この溶解液を高速攪拌ミキサーにて分散後、調合液のpHが7.0になるよう重曹を0.4g添加して、最後に1000mlになるようゲージアップしたものを調合液とした。
【0058】
この調合液を、20MPaの条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化し、90℃に昇温後、キャップの直径が46mmのリキャップ機能を有する170ml容量の缶に充填し、レトルト殺菌(123.5℃、26分間、F=45)を行い、目的とする泡沫の保持性の高い密閉容器入り抹茶ミルク飲料を得た。
なお、前記抹茶ミルク飲料は、乳由来のタンパク質含量が1.01重量%、動・植物性由来の脂肪が0.55重量%、乳化剤含量が0.34重量%、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が0.34となっている。
【0059】
(実施例4)
飲料全量中に対して乳成分として乳由来のタンパク質含量が1.01重量%になる量を60℃の水300gで溶解した脱脂粉乳23gおよび全粉乳9.5gに、植物性油脂として0.29重量%となる量のナタネ由来の乳化植物油脂6.0gと、乳化剤として0.34重量%となる量のショ糖脂肪酸エステル(HLB16)3.5gと、安定剤として増粘多糖類0.6g及び5.9重量%となる量のショ糖61.3gを順次溶解した。この溶解液に調合液のpHが7.0になるよう重曹を0.4g添加した後、0.1重量%となるようにバナナフレーバー1.0gを添加し、最後に1000mlになるようゲージアップしたものを調合液とした。
【0060】
この調合液を20MPaの条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化し、90℃に昇温後、リキャップ機能を有する170ml容量の缶に充填し、レトルト殺菌(123.5℃、26分間、F=45)を行い、目的とする泡沫の保持性の高い密閉容器入りフレーバー入り乳飲料(バナナ風味ミルク飲料)を得た。
なお、前記フレーバー入り乳飲料は、乳由来のタンパク質含量が1.01重量%、動・植物性由来の脂肪が0.55重量%、乳化剤含量が0.34重量%、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が0.34となっている。
【0061】
(比較例3)
飲料全量中に対して乳成分として乳由来のタンパク質含量が1.01重量%になる量を60℃の水300gで溶解した脱脂粉乳および全粉乳に、植物性油脂として0.29重量%となる量のナタネ由来の乳化植物油脂と、乳化剤として0.1重量%となる量のショ糖脂肪酸エステル(HLB16)と、安定剤として増粘多糖類0.6g及び5.9重量%となる量のショ糖61.3gを順次溶解した。この溶解液に調合液のpHが7.0になるよう重曹を0.4g添加した後、0.1重量%となるようにバナナフレーバー1.0gを添加し、最後に1000mlになるようゲージアップしたものを調合液とした。
【0062】
この調合液を20MPaの条件で高圧ホモゲナイザーにより均質化し、90℃に昇温後、リキャップ機能を有する170ml容量の缶に充填し、レトルト殺菌(123.5℃、26分間、F=45)を行い、乳化剤含量が0.2重量%より少ない密閉容器入りフレーバー入り乳飲料(バナナ風味ミルク飲料)を得た。
なお、前記フレーバー入り乳飲料は、乳由来のタンパク質含量が1.01重量%、動・植物性由来の脂肪が0.55重量%、乳化剤含量が0.1重量%、乳由来のタンパク質含量(重量%)と乳化剤含量(重量%)との積が0.1となっている。
【0063】
(試験例3)
実施例2で作製した泡沫の保持性の高い密閉容器入りコーヒー飲料(実施例2)及び実施例3で作製した泡沫の保持性の高い密閉容器入り抹茶ミルク飲料(実施例3)を用いて、以下の方法にて測定した。
測定方法は試験例1と同様に行った。
結果を表4及び図4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4のとおり静置直後は、実施例2の泡沫部分の容積は20mlで、実施例3の泡沫部分の容積は18mlとなり、実施例2のコーヒー飲料と同様実施例3の抹茶ミルク飲料も起泡性において優れていることが明らかとなった。また、図4のとおり実施例2及び3とも静置5分後では、泡沫部分の減少容積が6ml程度で静置直後よりも約3割程度減少したが、静置10分後では、著しい減少は無く、泡沫を保持していることが確認され、実施例1の場合と同様、実施例2及び3のいずれも泡沫の保持性に優れていることが明らかとなった。
【0066】
(試験例4)
実施例4で作製した泡沫の保持性の高い密閉容器入りフレーバー入り乳飲料(バナナ風味ミルク飲料)(実施例4)及び比較例3で作製した密閉容器入りフレーバー入り乳飲料(バナナ風味ミルク飲料)(比較例3)を用いて、以下の方法にて測定した。
測定方法は試験例1と同様に行った。
結果を表5及び図5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
表5のとおり静置直後は、実施例4の泡沫部分の容積は15mlで、比較例3の泡沫部分の容積は13mlとなり、実施例4と比較例3の泡沫部分の容積に大差は認められなかった。しかし、図5のとおり静置10分後においては、実施例4の泡沫部分の減少容積は5mlであったが、比較例3の泡沫部分の減少容積は10mlとなり、実施例4と比べ比較例3は著しい容積の減少が認められた。すなわち、実施例4は、泡沫を保持していることが確認され、比較例3と比べ泡沫の保持性に優れていることが明らかとなった。
【0069】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0070】
(1)起泡性を有する密閉容器入り飲料において、乳由来のタンパク質を0.6重量%以上、動物性及び/又は植物性由来の脂肪を0.2重量%よりも多く好ましくは0.25重量%以上含有せしめるとともに、トータルHLBが14以上である乳化剤を含有せしめること、を特徴とする泡沫の保持性が高い飲料の製造方法、あるいは、泡沫の保持方法。
【0071】
(2)起泡性を有する密閉容器入り飲料の製造工程において、乳由来のタンパク質を0.6重量%以上、動物性及び/又は植物性由来の脂肪を0.2重量%よりも多くなる量の乳成分及び脂肪を、トータルHLBが14以上である乳化剤とともに、原料液に添加すること、を特徴とする泡沫の保持性が高い飲料の製造方法、あるいは、泡沫の保持方法。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】試験例1での振とう静置後の泡沫部分の容積の減少量を示す。
【図2】試験例2でのアイス温度範囲のサンプルを用いた振とう静置後の泡沫部分の容積の減少量を示す。
【図3】試験例2でのホット温度範囲のサンプルを用いた振とう静置後の泡沫部分の容積の減少量を示す。
【図4】試験例3での振とう静置後の泡沫部分の容積の減少量を示す。
【図5】試験例4での振とう静置後の泡沫部分の容積の減少量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡性を有する密閉容器入り飲料において、乳由来のタンパク質を0.6重量%以上、動物性及び/又は植物性由来の脂肪を0.2重量%以上含有し、トータルHLBが14以上である乳化剤を含有することを特徴とする泡沫の保持性が高い飲料。
【請求項2】
前記乳化剤が0.2重量%以上含有し、前記乳由来のタンパク質含量(重量%)と前記乳化剤含量(重量%)との積が、0.12〜0.49となることを特徴とする請求項1記載の泡沫の保持性が高い飲料。
【請求項3】
前記乳由来のタンパク質が、脱脂粉乳が主成分であり、その割合が飲料全量中の2.8重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の泡沫の保持性が高い飲料。
【請求項4】
容器を振とう後泡沫が5分以上消滅しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の泡沫の保持性が高い飲料。
【請求項5】
4℃〜60℃の温度範囲の飲料でも前記泡沫が5分以上消滅しないことを特徴とする請求項4記載の泡沫の保持性が高い飲料。
【請求項6】
密閉容器がリキャップ機能を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の泡沫の保持性が高い飲料。
【請求項7】
前記リキャップ機能を有した密閉容器のキャップの直径が38mm以上の口径であることを特徴とする請求項6記載の泡沫の保持性が高い飲料。
【請求項8】
起泡性を有する密閉容器入り飲料において、乳由来のタンパク質を0.6重量%以上、動物性及び/又は植物性由来の脂肪を0.2重量%以上含有し、トータルHLBが14以上である乳化剤を含有せしめることを特徴とする泡沫の保持性が高い飲料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−50259(P2009−50259A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198613(P2008−198613)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(308009277)株式会社ポッカコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】