説明

泡消火設備の点検方法及び点検具

【課題】消泡剤により消火用泡を消泡する工程を含む泡消火設備の点検方法であって、高膨張の消火用泡を消泡する場合でも、低膨張の消火用泡を消泡する場合でも、高い消泡効果が得られる方法を提供する。
【解決手段】消火用泡を放出する泡放出手段を備えた泡消火設備の点検方法であって、前記点検方法は、前記泡放出手段から放出された消火用泡を消泡剤により消泡する消泡工程を含み、前記消泡剤は、高分子吸収剤を含むことを特徴とする泡消火設備の点検方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、泡消火設備の点検方法及び点検具に関し、より詳細には、点検時に放出された消火用泡を消泡剤により消泡する工程を含む泡消火設備の点検方法及びそれに用いる点検具に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建物に設けられている泡消火設備は、定期的に放出点検が行われている。この点検では、放出された泡の状態を確認する必要があるため、実際に泡を放出して点検を行うことが義務付けられている。
【0003】
泡消火設備で放出される消火用泡は自然状態ではなかなか消泡せず、泡の回収処理に時間が掛かるため、放出点検を効率的に行えないという問題があった。
【0004】
そこで、点検時等、泡消火設備で実際に消火用泡を放出した際に、その消火用泡を処理するのにオイル系やシリコン系の液体、或いは消泡性を有する粉末剤等を含む消泡剤を利用して消泡処理する技術(例えば、特許文献1参照)が用いられることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−97009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の消泡剤を利用して消火用泡を消泡処理する技術において、消泡剤による消泡のメカニズムは、泡膜を安定化している疎水基と親水基の規則的な分子構造が消泡剤の侵入により部分的に崩れて、泡膜が不安定化し、それにより泡膜が破れ易くなるのを利用していると考えられる。
【0007】
泡消火設備には発泡倍率の低い低膨張(一般に20倍以下の発泡倍率)の消火用泡を放出するものと発泡倍率の高い高膨張(一般に80倍以上1000倍未満の発泡倍率)の消火用泡を放出するものがあるが、低膨張の消火用泡は、泡径が小さく、泡膜を安定化している疎水基と親水基の分子構造が密集していることから、その様な低膨張の消火用泡を前記従来の消泡剤で消泡する場合、消泡剤が泡膜に侵入し難く、泡膜を安定化している疎水基と親水基の分子構造を崩し難いため、泡膜の不安定化がし難く、消泡剤による消泡効果は低くなってしまう。
【0008】
即ち、前記従来の消泡剤を利用して消火用泡を消泡処理する技術においては、低膨張の消火用泡に対しては、消泡効果が低い場合があるという問題がある。
【0009】
又、前記従来の消泡剤を利用して消火用泡を処理する技術においては、消泡処理後の消火用泡の残存物は液体の状態で残っており、その回収が容易ではないとという問題もある。
【0010】
前記の事情に鑑み、この発明は、消泡剤により消火用泡を消泡する工程を含む泡消火設備の点検方法であって、低膨張の消火用泡を消泡する場合でも、高膨張の消火用泡を消泡する場合でも、高い消泡効果が得られる方法を提供することを目的とし、又、消火用泡の消泡処理後の残存物の回収が容易な方法を提供することを目的とし、更に、その方法に用いる点検具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、消火用泡を放出する泡放出手段を備えた泡消火設備の点検方法であって、前記点検方法は、前記泡放出手段から放出された消火用泡を消泡剤により消泡する消泡工程を含み、前記消泡剤は、高分子吸収剤を含むことを特徴とする泡消火設備の点検方法である。尚、前記消泡剤が含む高分子吸収剤としては、高い吸水性を有する吸水性高分子からなるものであれば、種々のもの(例えば、樹脂系のもの等)を用いることができる。
【0012】
又、この発明は、前記点検方法であって、前記消泡工程は、前記消泡剤を前記消火用泡に散布する散布工程と、前記散布工程で散布された前記消泡剤が前記消火用泡の泡水溶液を吸収する吸収工程とを含むことを特徴とする点検方法である。尚、前記散布工程で散布する前記消泡剤は、粉末状、粒状、ゲル状等散布可能な形状のものを用いることができる。
【0013】
又、この発明は、前記点検方法であって、前記消泡工程は、前記散布工程の後に、前記消泡剤を該消火用泡内で分散させる攪拌工程を更に含むことを特徴とする点検方法である。
【0014】
又、この発明は、前記点検方法であって、前記消泡工程は、前記泡放出手段から消火用泡が放出される前に、消火用泡が放出される領域に前記消泡剤を配置する配置工程を含み、更に、前記消泡工程は、前記配置工程で配置された前記消泡剤が前記泡放出手段から放出された消火用泡の泡水溶液を吸収する吸収工程を含むことを特徴とする点検方法である。
【0015】
又、この発明は、前記点検方法であって、前記配置工程で配置される消泡剤は、消火用泡が放出される領域に配置可能に形成された消泡シートに含まれている状態で配置されることを特徴とする点検方法である。尚、前記消泡シートは、前記消泡剤がシート状に加工されて形成されたものとすることができ、又、前記消泡シートは、その少なくとも一面(少なくとも上下何れかの面、例えば少なくとも上面)に前記消泡剤が塗布又は貼付されたものとすることができ、更に、前記消泡シートは、そのシートを透水性の材料により袋状に形成し、それに消泡剤を内包させたものとすることができる。
【0016】
ここで、前記配置工程に代えて、消火用泡が放出される領域に前記消泡剤を散布する散布工程とすることができる。即ち、この発明は、前記点検方法であって、前記消泡工程は、前記泡放出手段から消火用泡が放出される前に、消火用泡が放出される領域に前記消泡剤を散布する散布工程を含み、更に、前記消泡工程は、前記散布工程で散布された前記消泡剤が前記泡放出手段から放出された消火用泡の泡水溶液を吸収する吸収工程を含むことを特徴とする点検方法とすることができる。
【0017】
又、この発明は、消火用泡を放出する泡放出手段を備えた泡消火設備の点検に用いられる点検具であって、前記点検具は、消泡剤を含む消泡シートを備え、前記消泡シートは、前記泡放出手段の消火用泡の放出領域に配置可能に形成されており、前記消泡剤は、高分子吸収剤を含んでいることを特徴とする泡消火設備の点検具である。尚、前記消泡シートは、前記消泡剤がシート状に加工されて形成されたものとすることができ、又、前記消泡シートは、その少なくとも一面(少なくとも上下何れかの面、例えば少なくとも上面)に前記消泡剤が塗布又は貼付されたものとすることができ、更に、前記消泡シートは、そのシートを透水性の材料により袋状に形成し、それに消泡剤を内包させたものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明において、高分子吸収剤を含む消泡剤による消泡のメカニズムは、前記従来の消泡剤によるものとは異なり、高分子吸収剤が消火用泡の泡膜からそれを形成している泡水溶液を吸収して奪い、それにより泡膜を不安定化して破れ易くして消泡するものであり、消泡する消火用泡の疎水基と親水基の分子構造が密集しているか否かを問わず、消泡効果が得られるものであり、即ち、この発明の消泡剤による消泡のメカニズムは、消泡する消火用泡が低膨張のものであっても、高膨張のものであっても、同様の消泡効果が得られるものである。
【0019】
従って、この発明によれば、泡消火設備の点検方法においては、消火用泡を消泡剤により消泡する消泡工程を含み、その消泡剤が高分子吸収剤を含むものとしていることで、消泡する消火用泡が低膨張の場合でも、高膨張の場合でも、高い消泡効果を得ることができ、又、泡消火設備の点検具において、消泡剤を含む消泡シートを備え、その消泡剤が高分子吸収剤を含むものとしていることで、消泡する消火用泡が高膨張の場合でも、低膨張の場合でも、高い消泡効果を得ることができる。
【0020】
又、この発明において、消泡剤による消泡の過程で高分子吸収剤に吸収された消火用泡の泡水溶液は、高分子吸収剤中にゲル化された状態で保持されることとなるので、消泡剤による消泡処理後の消火用泡の残存物は、前記の消泡のメカニズムにより消泡しているだけでなく、液体分が減って、その回収が容易な状態になっており、例えば、その残存物は、掃除機等の吸引装置で吸引しても再発泡しないので容易に回収することができる状態になっており、消泡剤を消泡シートに含まれているものとしている場合は、消泡シートごとまとめて容易に回収することができる状態になっている。
【0021】
従って、この発明によれば、泡消火設備の点検方法においては、消火用泡を消泡剤により消泡する消泡工程を含み、その消泡剤が高分子吸収剤を含むものとしていることで、消火用泡の消泡処理後の残存物の回収を容易にすることができ、又、泡消火設備の点検具において、消泡剤を含む消泡シートを備え、その消泡剤が高分子吸収剤を含むものとしていることで、消火用泡の消泡処理後の残存物の回収を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の泡消火設備の点検方法の工程の流れを示したフロー図であり、(a)がその第1の態様によるものを示し、(b)がその第2の態様によるものを示している。
【図2】同上の点検方法により、消泡剤が消火用泡の泡水溶液を吸収して、消火用泡を消泡する様子を示した説明図である。
【図3】同上の点検方法において、第1の実施の形態により、消泡剤が消火用泡の泡水溶液を吸収して、消火用泡を消泡する様子を示した説明図である。
【図4】同上の点検方法において、第2の実施の形態により、消泡剤が消火用泡の泡水溶液を吸収して、消火用泡を消泡する様子を示した説明図である。
【図5】この発明の泡消火設備の点検方法及び点検具によって点検される泡消火設備の一例を示した設備系統図であって、同点検具が配置されている状態も示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の泡消火設備の点検方法及び点検具の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0024】
先ず、この発明で泡消火設備の点検方法及び点検具で用いられる高分子吸収剤を含む消泡剤について説明する。
【0025】
この発明において、消泡剤が含む高分子吸収剤としては、高い吸水性を有する吸水性高分子からなるものであれば、種々のものを用いることができ(例えば、樹脂系のもの等)、その形状は、粉末状、粒状等の消火用泡に又はその放出領域に散布可能な種々の形状のものを用いることができ、又、シート状等の消火用泡の放出領域に配置可能な種々の形状に加工したものを用いることもできる。尚、消泡剤は全てを高分子吸収剤とすることもできるし、高分子吸収剤に他の物質を混合させたものとすることもできる。
【0026】
又、この発明において、消泡剤は、消火用泡の放出領域に配置可能に形成された消泡シートに含まれるものとすることができる。この消泡シートは、前記の様に消泡剤自体を加工してシート状にしたものとすることができるし、種々の材料からシートを形成して、その少なくとも一面(少なくとも上下何れかの面、例えば少なくとも上面)に消泡剤を塗布又は貼付したものとすることもできるし、更には、透水性の材料により袋状にシートを形成し、それに消泡剤を内包させたものとすることもできる。
【0027】
そして、前記の様にして消泡剤を含む消泡シートを構成することで、この発明の泡消火設備の点検具を構成することができる。
【0028】
次に、この発明の泡消火設備の点検方法及び点検具で用いられる高分子吸収剤を含む消泡剤による消火用泡の消泡のメカニズムについて説明する。
【0029】
図2は、高分子吸収剤を含む消泡剤による消火用泡の消泡の基本的メカニズムを模式的に示したものである。同図に示される様に、消火用泡は、泡の状態が安定に保たれている時は、消火用泡を形成している界面活性剤成分中の疎水基と親水基が規則的な分子構造で保たれており、それにより泡膜が一定の厚さで安定に保たれているが(「安定状態」)、その泡膜に消泡剤である高分子吸収剤が付着すると、高分子吸収剤の吸水作用により、高分子吸収剤に泡膜からそれを形成している泡水溶液が吸収されて、その量が少なくなって泡膜の厚さが薄くなり(「吸収状態」)、更に高分子吸収剤に泡膜から泡水溶液が吸収されて、泡膜はその安定が保てなくなる程厚さが薄くなり、破泡し易い状態となって(「不安定状態」)、ついには破泡して消泡に至ることとなる。
【0030】
即ち、この発明の泡消火設備の点検方法及び点検具で用いられる高分子吸収剤を含む消泡剤は、消泡する消火用泡の疎水基と親水基の分子構造が密集していても、又密集していなくても、即ち、消泡する消火用泡が低膨張のものであっても、高膨張のものであっても、同様の消泡効果が得られる消泡のメカニズムにより消火用泡を消泡することができるものとなっている。
【0031】
この発明の泡消火設備の点検方法及び点検具は、前記の高分子吸収剤を含む消泡剤による消泡のメカニズムを利用して消火用泡を消泡するものであるが、その態様は、泡放出手段から放出された消火用泡に消泡剤を散布して消火用泡を消泡するもの(第1の態様として後に説明する)と、予め消火用泡が放出される領域に消泡剤を散布又は消泡剤を含む消泡シートを配置しておき、その上に泡放出手段から消火用泡を放出して消泡するもの(第2の態様として後に説明する)とがある。
【0032】
図3は、消泡剤を泡放出手段から放出された消火用泡に消泡剤を散布して消火用泡を消泡する態様における泡水溶液が消泡剤に吸収される様子を模式的に示したものである。この態様においては、同図に示される様に、消泡剤は、消火用泡の間に入り込んで、消泡剤が付着する上下左右の消火用泡から泡水溶液が流れ込んで吸収して消泡するものと推測される。従って、この態様の場合、消泡剤の散布後、消火用泡中で消泡剤を攪拌することで、消泡剤を消火用泡中に分散させることができ、より効率的に消火用泡を消泡することができるものと解される。
【0033】
図4は、予め消火用泡が放出される領域に消泡剤を散布又はそれを含む消泡シートを配置しておき、その上に泡放出手段から消火用泡を放出して消泡する態様における泡水溶液が消泡剤に吸収される様子を模式的に示したものである。この態様においては、消泡剤又はそれを含む消泡シートは、消火用泡の下に位置することとなるが、同図に示される様に、下側の消火用泡を介して上側の消火用泡から泡水溶液が吸収されて、消火用泡は上側から下側に順次消泡されるものと推測される。これは、上側の消火用泡と下側の消火用泡が接触しているため、泡水溶液の自重によって上側の消火用泡から下側の消火用泡への泡水溶液の流れが形成されることによるものであると共に、下側の消火用泡のみ消泡剤又はそれを含む消泡シートに接触し、下側の消火用泡から泡水溶液が吸収されることから、消火用泡の上下に濃度勾配が形成されることになり、それによっても上側の消火用泡から下側の消火用泡への泡水溶液の流れが形成されることによるものであると推測される。従って、この態様の場合、下側の消火用泡は上側の消火用泡の泡水溶液が流れ込むことで、安定状態を保つが、上側の消火用泡は、泡水溶液が流れ出すことで、不安定状態となって、消泡し易くなるので、消火用泡中で消泡剤を攪拌しなくても、効率的に消火用泡を消泡することができると解される。
【0034】
次に、この発明の泡消火設備の点検方法の例を第1の態様と第2の態様に分けて説明する。尚、第2の態様の説明は、この発明の泡消火設備の点検具による点検方法の例の説明も含んでいる。
【0035】
図1(a)は、第1の態様の点検方法の工程の流れを示したものである。この第1の態様の点検方法は、高分子吸収剤を含む消泡剤を泡放出手段から放出された消火用泡に散布する工程を含むものである。
【0036】
具体的には、第1の態様の点検方法は、工程を「開始」して、先ず、「泡消火設備起動」の工程(S1−1)で、消火用泡を泡放出手段からその放出領域に放出し、「泡消火設備停止」の工程(S1−2)で、消火用泡の放出を停止して、「消火用泡の状態確認」の工程(S1−3)で、放出領域に放出された消火用泡を採取する等して、消火用泡の状態を確認して所定の点検をする。次いで、「消泡剤散布」の工程(S1−4)で、消火用泡に消泡剤を散布し、「消火用泡攪拌」の工程(S1−5)で、消火用泡を攪拌して消泡剤を消火用泡中に分散させる。そして、「泡水溶液吸収」の工程(S1−6)で、適宜の時間を置き、消泡剤に消火用泡の泡水溶液を吸収させて、消火用泡を消泡処理した後に、「処理済泡回収」の工程(S1−7)で、適宜の方法(例えば、掃除機等により吸引する等)で、消泡処理後の消火用泡の残存物を回収して、工程を「終了」するものとなっている。
【0037】
図1(b)は、第2の態様の点検方法の工程の流れを示したものである。この第2の態様の点検方法は、泡放出手段から消火用泡を放出する前に、その放出領域に消泡剤を散布するか、その消泡剤を含む消泡シート、即ち点検具を配置する工程を含むものである。
【0038】
具体的には、工程を「開始」して、先ず、「消泡剤散布又は消泡シート配置」の工程(S2−1)で、予め消火用泡が放出される領域に消泡剤を散布するか又はその消泡剤を含む消泡シートを配置しておき、その後で、「泡消火設備起動」の工程(S2−2)で、泡放出手段から消火用泡を消泡剤又はその消泡剤を含む消泡シートの上に放出する。その後、「泡消火設備停止」の工程(S2−3)で、消火用泡の放出を停止して、「消火用泡の状態確認」の工程(S2−4)で、放出領域に放出された消火用泡を採取する等して、消火用泡の状態を確認して所定の点検をする。次いで、「泡水溶液吸収」の工程(S2−5)で、適宜の時間を置き、消泡剤に消火用泡の泡水溶液を吸収させて、消火用泡を消泡した後に、「処理済泡回収」の工程(S2−6)で、適宜の方法(例えば、掃除機等により吸引するか、消泡シートごと回収する等)で、消泡処理後の消火用泡の残存物を回収して、工程を「終了」するものとなっている。
【0039】
前記第1の態様及び第2の態様の何れによる場合も、高分子吸収剤を含む消泡剤による前記の消泡のメカニズムを利用して消火用泡を消泡するものである。このため、従来の消泡剤によるものとは異なり、消泡する消火用泡の疎水基と親水基の分子構造が密集していても、又密集していなくても、同様の消泡効果を得ることができ、即ち、消泡する消火用泡が低膨張のものであっても、高膨張のものであっても、同様の消泡効果を得ることができる。
【0040】
又、前記第1の態様及び第2の態様の何れによる場合も、消泡剤による消泡の過程で高分子吸収剤に吸収された消火用泡の泡水溶液は、高分子吸収剤中にゲル化された状態で保持されることとなる。このため、消泡剤による消泡処理後の消火用泡の残存物は、前記の消泡のメカニズムにより消泡しているだけでなく、液体分が減って、容易に回収ができる状態になっており、その残存物を容易に回収することができ、例えば、第1の態様の場合及び第2の態様における消泡剤を散布して消泡処理する態様の場合は、その残存物を掃除機等の吸引装置で吸引しても再発泡せず容易に回収することができる。第2の態様における消泡シートを配置して消泡処理する態様の場合は、その残存物を消泡シートごとまとめて容易に回収することができる。
【0041】
尚、前記の第1の態様において、消火用泡を攪拌して消泡剤を消火用泡中に分散させる「消火用泡攪拌」の工程(S1−5)を含まないものとすることもできるが、当該工程を含むものとしていることで、第1の態様は、消泡剤を消火用泡中に均一に分散させることができ、消火用泡をより効率的に消泡することができるものとなっている。
【0042】
更に、前記の第2の態様における消泡シートを配置して消泡処理する態様の場合は、消火用泡の放出領域に工作機械や車等の消火用泡を被ると故障や腐食等の悪影響が生じる様な機械が置かれていたとしても、それら機械を消泡シートで覆って、消泡剤や消火用泡が被らない様にしながら、即ち、消泡剤や消火用泡によって機械に悪影響が生じるのを防ぎながら、点検をすることができるものとなっている。
【0043】
次に、この発明の泡消火設備の点検方法及び点検具を低膨張の消火用泡を放出する泡消火設備へ適用する場合の一例を説明する。尚、この発明の泡消火設備の点検方法及び点検具は高膨張の消火用泡を放出する泡消火設備にも適用することができる。その場合、発泡機が泡放出手段の一例である。
【0044】
図5において、泡消火設備1は、一次側に泡原液タンク2、貯水槽3、ポンプP、混合器4等を備え、二次側に消火用泡ヘッド5、感知ヘッド6等を備えており、火災時には、泡原液タンク2内の泡原液と貯水槽3内の水を混合器4で混合して泡水溶液とし、それをポンプPで二次側に圧送して、消火用泡ヘッド5から消火用泡として放出可能なものとなっている。尚、7は一斉開放弁で、8はその一斉開放弁7が開放され流水があった時にそれを検知する流水検知装置であり、9は感知ヘッド6側の流路の末端に設けられた手動起動弁である。
【0045】
この泡消火設備1で前記の第1の態様の点検方法により消火用泡の点検をする場合は、手動起動弁9を開放操作して、感知ヘッド6が動作したのと同じ状態を作ることで一斉開放弁7を開放し、消火用泡ヘッド5から消火用泡を放出させ、即ち「泡消火設備起動」の工程(S1−1)を実行し、手動起動弁9を閉止操作して、消火用泡の放出を停止し、即ち「泡消火設備停止」の工程(S1−2)を実行する。そして、放出された消火用泡の状態を確認して所定の点検をし、即ち「消火用泡の状態確認」の工程(S1−3)を実行し、消火用泡に消泡剤を散布し、即ち「消泡剤散布」の工程(S1−4)を実行し、消火用泡を攪拌して消泡剤を消火用泡中に分散させ、即ち「消火用泡攪拌」の工程(S1−5)を実行する。その後、適宜の時間を置いて、消泡剤の高分子吸収剤に消火用泡から泡水溶液を吸収させて、消火用泡の消泡処理をし、即ち「泡水溶液吸収」の工程(S1−6)を実行し、消泡処理後の残存物を適宜の方法で回収し、即ち「処理済泡回収」の工程(S1−7)を実行することにより行う。
【0046】
又、この泡消火設備1で前記第2の態様の点検方法により消火用泡の点検をする場合は、予め消火用泡ヘッド5の放出領域に消泡剤を散布するか消泡シートSを配置しておき、即ち「消泡剤散布又は消泡シート配置」の工程(S2−1)を実行し、手動起動弁9を開放操作して、消火用泡ヘッド5から消泡剤又は消泡シートの上に消火用泡を放出し、即ち「泡消火設備起動」の工程(S2−2)を実行し、手動起動弁9を閉止操作し、消火用泡の放出を停止し、即ち「泡消火設備停止」の工程(S2−3)を実行する。そして、放出された消火用泡の状態を確認して所定の点検をし、即ち「消火用泡の状態確認」の工程(S2−4)を実行し、適宜の時間を置いて、消泡剤の高分子吸収剤に消火用泡から泡水溶液を吸収させて、消火用泡の消泡処理をし、即ち「泡水溶液吸収」の工程(S2−5)を実行し、消泡処理後の残存物を適宜の方法で回収し、即ち「処理済泡回収」の工程(S2−6)を実行することにより行う。
【0047】
尚、泡消火設備1は、一斉開放弁7の二次側に消火用泡ヘッド5と同等の消火用泡放出手段(図示省略)が先端に接続される試験弁10を消火用泡ヘッド5の一次側に備え、又、試験弁10と消火用泡ヘッド5の間に消火用泡ヘッド5への泡水溶液の流れを開閉操作できる切換弁11を備えており、試験弁10に接続される消火用泡放出手段から放出される消火用泡に対して前記第1の態様又は第2の態様による放出点検をすることもできる。
【0048】
例えば、泡消火設備1においては、手動起動弁9による設備起動の前に切換弁11を閉止操作して消火用泡ヘッド5側への泡水溶液の流れを遮断しておき、手動起動弁9の開放操作後、試験弁10を開放操作して、その二次側の消火用泡放出手段から消火用泡を放出させ、その消火用泡に対して前記第1の態様の点検方法による点検を実行することもできる。又、手動起動弁9による設備起動の前に切換弁11を閉止操作して消火用泡ヘッド5側への泡水溶液の流れを遮断しておくと共に、試験弁10の二次側の消火用泡放出手段の消火用泡の放出領域に消泡剤を散布するか図5に示される様に点検具としての消泡シートSを配置しておき、手動起動弁9の開放操作後、試験弁10を開放操作して、その二次側の消火用泡放出手段から消火用泡を放出させ、その消火用泡に対して前記第2の態様の点検方法による点検を実行することもできる。
【0049】
尚、点検具としての消泡シートSは、消泡剤である高分子吸収剤をシートの少なくとも一面に塗布したものである。消泡シートSはシート状に形成されているので、ロール状に巻いたり、小さく折り畳むことができるので容易に持ち運べる。又、消火用泡の放出領域に工作機械等があっても、その上からシートを配置できるものとなっている。
【符号の説明】
【0050】
1 泡消火設備 2 泡原液タンク 3 貯水槽
4 混合器 5 消火用泡ヘッド 6 感知ヘッド
7 一斉開放弁 8 流水検知装置 9 手動起動弁
10 試験弁 11 切換弁 P ポンプ
S 消泡シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火用泡を放出する泡放出手段を備えた泡消火設備の点検方法であって、
前記点検方法は、前記泡放出手段から放出された消火用泡を消泡剤により消泡する消泡工程を含み、
前記消泡剤は、高分子吸収剤を含むことを特徴とする泡消火設備の点検方法。
【請求項2】
前記消泡工程は、前記消泡剤を前記消火用泡に散布する散布工程と、前記散布工程で散布された前記消泡剤が前記消火用泡から泡水溶液を吸収する吸収工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の点検方法。
【請求項3】
前記消泡工程は、前記散布工程の後に、前記消泡剤を該消火用泡内で分散させる攪拌工程を更に含むことを特徴とする請求項2記載の点検方法。
【請求項4】
前記消泡工程は、前記泡放出手段から消火用泡が放出される前に、消火用泡が放出される領域に前記消泡剤を配置する配置工程を含み、更に、前記消泡工程は、前記配置工程で配置された前記消泡剤が前記泡放出手段から放出された消火用泡から泡水溶液を吸収する吸収工程を含むことを特徴とする請求項1記載の点検方法。
【請求項5】
前記配置工程で配置される消泡剤は、消火用泡が放出される領域に配置可能に形成された消泡シートに含まれている状態で配置されることを特徴とする請求項4記載の点検方法。
【請求項6】
消火用泡を放出する泡放出手段を備えた泡消火設備の点検に用いられる点検具であって、
前記点検具は、消泡剤を含む消泡シートを備え、
前記消泡シートは、前記泡放出手段の消火用泡の放出領域に配置可能に形成されており、
前記消泡剤は、高分子吸収剤を含んでいることを特徴とする泡消火設備の点検具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate