説明

泡消火設備の点検装置および点検方法

【課題】実際の運転状態を的確に反映した泡消火設備の一体的な点検を環境汚染することなく行える点検装置及び点検方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る泡消火設備の点検装置は、泡消火薬剤を貯蔵した泡原液タンク15と、給水本管1を流れる流水量に対して前記泡原液タンク15内の泡消火薬剤を所定割合で混合する混合器5とを備えてなる泡消火設備を点検する泡消火設備の点検装置であって、点検時に前記泡原液タンク15をバイパスして設置可能でかつ試験液を貯留する仮設の試験液タンク21と、前記混合器5の二次側に接続する試験用配管および試験用泡放出ヘッド又はノズルと、前記試験用配管または前記試験用泡ヘッドに設けられて前記混合器5の二次側の圧力を調整する圧力調整手段と、前記泡消火設備を運転して前記試験用泡放出ヘッド又はノズルから放出される前記試験液と水との混合水溶液の濃度を測定する濃度測定手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡消火設備の点検装置および点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は一般的な泡消火設備の主な構成機器の説明図である。
泡消火設備は、給水本管1と、給水本管1に消火用水を送水する加圧送水装置3と、給水本管1に設置された混合器5(ベンチュリー型、デマンド型、オリフィス型)と、混合器5の二次側の泡水溶液送液管2の先端部に設けられた図示しない発泡装置とを備えている。なお、発泡装置は供給される泡水溶液に空気を混合し、所定の発泡倍率で消火用泡を生成するものであり、石油タンク等に設けるエアフォームチャンバ、泡ノズル、固定式泡ヘッド等がある。また、給水本管1における混合器5の一次側には混合器元弁9が設置され、混合器元弁9と混合器5との間の給水本管1から分岐して加圧水導入管11が設けられ、加圧水導入管11には泡原液タンク加圧元弁13が設けられると共に加圧水導入管11の先端に本設備用の泡原液タンク15が接続されている。泡原液タンク15には、消火薬剤泡原液が貯蔵されており、その排出口側には泡原液吐出管17が接続され、泡原液吐出元弁18及び泡原液吐出逆止弁19を介して混合器5に接続されている。
【0003】
上記のように構成された泡消火設備は、火災が発生すると、加圧送水装置3が起動して消火用水が給水本管1に送水される。給水本管1に送水された消火用水は、混合器5に送られると共に加圧水導入管11にも送られて泡原液タンク15を加圧して泡原液を泡原液吐出管17に押し出す。混合器5では、給水本管1から送られた消火用水に泡原液吐出管17から送られた泡原液が所定の割合で混合されて泡水溶液送液管2に送出され、図示しない発泡装置から消火用泡となって放出される。
【0004】
泡消火設備は、長期間に亘って設備の性能を最良の状態に維持する必要からその点検が義務付けられている。具体的には、危険物の規制に関する規則第62条の5の5において、第三種の固定式の泡消火設備を設ける屋外タンク貯蔵所に係わる点検は、告示で定めるところにより、当該泡消火設備の泡の適正な放出を確認する一体的な点検を行わなければならないとされている。
【0005】
従来、上記の点検を実施するにあたり、実際の泡消火薬剤を用いて行っていた。しかしながら、点検によって発生する泡消火薬剤と消火用水の混合液からなる泡水溶液(3〜6%程度)は排水基準を超えるので、環境汚染を防ぐため、下水へ流すことができず、産業廃棄物として処理していたが、これによる点検コストの高さが課題となっていた。
そこで、上記課題を解決するものとして、泡消火設備の泡原液タンク15をバイパスして、着色した水溶液を入れた点検用仮設タンクを設け、この着色水溶液を泡消火薬剤の代わりに混合器5によって消火用水に混合して希釈着色水溶液とし、この希釈着色水溶液を混合器5の下流側に設けた抜取管から抜き出し、抜き出された希釈着色水溶液に試験光を透過させてその透過率を測定することによって、混合比を測定しようとする点検装置と点検方法が提案されている(特許文献1参照)。
この点検装置と点検方法によれば、点検時の排水基準をクリアできるので、産業廃棄物の処理を不要とすることができ、点検コストを大幅に削減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−301942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された点検装置においては、混合器直近の下流側に抜き取り管を設け、ここから希釈着色水溶液を採取して測定するようにしている。つまり、特許文献1の点検装置は、少なくとも、実際の配管とエアフォームチャンバ等の発泡装置、あるいはこれらと同等の装置を用いないで点検する装置構成になっており、混合器周辺の圧力分布が実際の動作時とは異なっている可能性があり、実際の運転状態を反映させた、装置の一体的な点検ができるかどうかは疑問である。
【0008】
また、特許文献1においては、混合器による着色水溶液の混合割合を希釈着色水溶液に試験光を照射して試験光の透過率によって測定するとしているが、透過率によって精度よく測定するには試験光が着色水溶液によって十分に減光することが必要となる。
試験光が着色水溶液によって十分に減光するためには、透過率測定装置の光路長を非常に長くするか、あるいは着色水溶液を高い濃度で用いることが考えられ、これらの条件が満たされない場合は測定精度が著しく劣るものとなる。
しかしながら、透過率測定装置の光路長を長くするためには、泡消火設備が設置された現場に、数十mもの試験用光路を有する透過率測定装置を持ち込み、その光路長を満たす大量の希釈水溶液を用意しなければならないが、このようなことは実際には困難である。
他方、高濃度の着色水溶液を用いる場合には、希釈後の着色水溶液が産業用廃棄物にはならないとしても、濃厚な着色水溶液を排出することに、環境汚染を防止しているとの理解を得ることは難しい。
【0009】
以上のように特許文献1の点検装置及び方法では、混合器での混合割合が、実際に泡消火設備を稼動させてエアフォームチャンバ等の発泡装置から泡水溶液を放出した状態を的確に反映されたものかどうかが疑問であり、また混合器で希釈された希釈着色水溶液の混合割合を正確に測定できない点でも問題がある。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、泡消火設備を実際に稼動させた状態を的確に反映した泡消火設備の一体的な点検を環境汚染することなく行える点検装置及び点検方法を提供することを目的としている。
また、混合器で希釈された試験液の混合割合を正確に測定できる泡消火設備の点検装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る泡消火設備の点検装置は、泡消火薬剤を貯蔵した泡原液タンクと、給水本管を流れる流水量に対して前記泡原液タンク内の泡消火薬剤を所定割合で混合する混合器とを備えてなる泡消火設備を点検する泡消火設備の点検装置であって、
点検時に前記泡原液タンクをバイパスして設置可能でかつ試験液を貯留する仮設の試験液タンクと、前記混合器の二次側に接続する試験用配管および試験用放出ヘッド又はノズルと、前記混合器の二次側の圧力を調整する圧力調整手段と、前記泡消火設備を運転して前記試験用放出ヘッド又はノズルから放出される前記試験液と水との混合水溶液の濃度を測定する濃度測定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記試験液タンクは、前記給水本管に接続されて充水される一次側と、前記混合器側に接続されると共に試験液で満たされる二次側と、該二次側と前記一次側とを分離するように配置され、前記一次側に消火用水が充水されることによって前記二次側を加圧する隔膜を備えてなることを特徴とするものである。
本発明(2)によれば、試験液タンクの一次側に試験液が流れ込むことが無いので、泡消火設備の泡原液タンクや混合器の一次側を試験液で汚染することがない。
【0013】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記試験液が電解液であり、前記濃度測定手段が導電率計であることを特徴とするものである。
本発明(3)によれば、食品添加物にも用いられ、土壌や下水に排出しても無害な、酢酸カリウム、クエン酸カリウム等の電解質を用いることができるので、産業廃棄物を放出することなく点検できる。
また、濃度測定手段に導電率計を用いるので、濃度を正確に測定することができる上、低い濃度であっても測定可能なので、試験液に用いて点検で排出する電解質を少量で済ますことができる。
なお、本発明(3)の効果は、後述の本発明(7)においても同様に得ることができる。
【0014】
(4)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記試験液がコロイド溶液であり、前記濃度測定手段がチンダル現象による光散乱の光量を測定する光散乱式濃度測定手段であることを特徴とするものである。
本発明(4)によれば、土壌や下水に排出しても無害な、ゼラチン、石鹸水、墨汁、等のコロイド溶液を用いることができるので、産業廃棄物を放出することなく点検できる。
また、チンダル現象による散乱光の光量を測定する濃度測定手段を用いるので、濃度を正確に測定することができる上、低い濃度であっても測定可能なので、試験液に用いて点検で排出するコロイド物質を少量で済ますことができる。
なお、本発明(4)の効果は、後述の本発明(8)においても同様に得ることができる。
【0015】
(5)本発明に係る泡消火設備の点検方法は、泡消火薬剤を貯蔵した泡原液タンクと、給水本管を流れる流水量に対して前記泡原液タンク内の泡消火薬剤を所定割合で混合する混合器とを備えてなる泡消火設備を点検する方法であって、
前記泡原液タンクをバイパスする経路に仮設の試験液タンクを設置して、前記混合器の二次側の圧力状態が本設備における圧力状態と同じ状態になるようにして前記泡消火設備を運転し、
前記試験用タンクから送出された試験液が前記混合器で希釈され、該混合器の二次側から放出される混合水溶液の濃度を濃度測定手段で測定することを特徴とするものである。
【0016】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記濃度測定手段による混合水溶液の濃度測定終了後、前記泡消火設備の運転を停止した上で、前記仮設の試験液タンクを取り外し、前記試験液タンクを取り外した後の前記バイパス経路を仮設の配管又はホースで連結し、泡原液タンクを閉止したまま再び前記泡消火設備を運転することによって、前記点検方法の実施時において試験液に暴露した部分を加圧水で洗浄することを特徴とするものである。
本発明(6)によれば、点検終了後、仮設の配管又はホースを取り付けて泡消火設備を運転することによって、点検時に試験液に暴露した部分を加圧水で洗浄することができるので、点検後の復旧が容易であり、また、試験液による腐食等で設備を損なうことがない。
【0017】
(7)また、上記(5)又は(6)に記載のものにおいて、前記試験液が電解液であり、前記濃度測定手段が導電率計であることを特徴とするものである。
【0018】
(8)また、上記(5)又は(6)に記載のものにおいて、前記試験液がコロイド溶液であり、前記濃度測定手段がチンダル現象による光散乱の光量を測定する光散乱式濃度測定手段であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る泡消火設備の点検装置によれば、点検時に前記泡原液タンクをバイパスして設置可能でかつ試験液を貯留する仮設の試験液タンクと、前記混合器の二次側に接続する試験用配管および試験用放出ヘッド又はノズルと、前記混合器の二次側の圧力を調整する圧力調整手段と、前記泡消火設備を運転して前記試験用放出ヘッド又はノズルから放出される前記試験液と水との混合水溶液の濃度を測定する濃度測定手段とを備えたので、圧力調整手段によって混合器の二次側の圧力を実際に泡消火設備を稼動させたのと同等の圧力状態に調整することができ、実際の運転状況に近い一次圧及び二次圧で混合器が動作し、混合器の混合比を実際の運転状況に近い状態で測定することができる。
また、本発明に係る泡消火設備の点検方法によれば、混合器の二次側の圧力状態が本設備における圧力状態と同じ状態になるようにして泡消火設備を運転し、前記混合器の二次側から放出される混合水溶液の濃度を濃度測定手段で測定するようにしているので、実際の運転状況に近い一次圧及び二次圧で混合器が動作し、混合器の混合比を実際の運転状況に近い状態で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る泡消火設備の点検装置及び点検方法の説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る泡消火設備の点検装置及び点検方法の説明図である。
【図3】一般的な泡消火設備の主な構成機器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施の形態に係る泡消火設備の点検装置を図1に基づいて説明する。
点検の対象となる泡消火設備は、図3に示したものと同様であり、図3に示した構成機器と同一部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係る泡消火設備の点検装置は、点検時に泡原液タンク15をバイパスして設置可能でかつ試験液を貯留する仮設の試験液タンク21と、混合器5の二次側の圧力を調整する圧力調整手段としての圧力調整弁23と、圧力調整弁23の二次側に接続された試験用ホース25と、試験用ホース25の先端に設けられた試験用放出ノズル27と、試験用ホース25に設けられて泡消火設備を運転して前記試験用放出ノズル27から放出される試験液と水との混合水溶液の濃度を測定する濃度測定手段(図示なし)とを備えている。
以下、各構成をより詳細に説明する。
【0022】
<試験液タンク>
試験液タンク21は、点検時に泡原液タンク15をバイパスして設置可能でかつ試験液を貯留する仮設のタンクである。
試験液タンク21は、給水本管1に送水された消火用水が充水される試験液タンク一次側29と、混合器5側に接続されると共に試験液で満たされる試験液タンク二次側31と、試験液タンク二次側31と試験液タンク一次側29とを分離するように配置され、試験液タンク一次側29に消火用水が充水されることによって試験液タンク二次側31を加圧する隔膜33を備えて構成されている。
このような試験液タンク21の具体的な構成の一例を示すと、金属製のタンク内に可撓性のバック(隔膜33に相当する)を配置して、バック内に試験液を貯留してバックの出口を混合器5側に接続する。試験液タンク一次側29に加圧水を充水することで、バックに貯留されている試験液が混合器5側に押し出される。
試験液タンク一次側29には、加圧水導入側仕切弁35が設けられ、加圧水導入側仕切弁35の一次側には加圧水導入ホース37の出側を接続するための加圧水導入ホース出側接続部39が設けられている。加圧水導入ホース37の他端は、加圧水導入管11から分岐した分岐部に設置された加圧水仕切弁41の二次側に設けられた加圧水導入ホース入側接続部43に接続されている。
【0023】
また、試験液タンク二次側31には、試験液タンク側仕切弁45が設けられ、試験液タンク側仕切弁45の二次側には試験液送出ホース47の一端を接続するための試験液送出ホース入側接続部49が設けられている。試験液送出ホース47の他端は、泡原液吐出管17から分岐した分岐部に設置された試験液出側仕切弁51の一次側に設けられた試験液送出ホース出側接続部53に接続されている。
【0024】
試験液タンク21に貯留される試験液としては、酢酸カリウム、クエン酸カリウム等の電解液を用いることができる。電解液は、土壌や下水に排出しても無害であり、産業廃棄物を放出することなく点検できる。
また、試験液の他の例としては、ゼラチン、石鹸水、墨汁、等のコロイド溶液を用いることができる。コロイド溶液は、土壌や下水に排出しても無害であり、ゼラチン、石鹸水、墨汁、等のコロイド溶液を用いることができるので、産業廃棄物を放出することなく点検できる。
【0025】
<圧力調整弁>
圧力調整弁23は、混合器5の二次側の泡水溶液送液管2の分岐部に設けられている。試験時においては、泡水溶液送液管2に設けられた試験用仕切弁55を閉止し、圧力調整弁23によって混合器5の二次側の圧力を本設備が稼動した泡放出時と同じになるように調整する。試験時において、圧力調整は、混合器5の二次側に設置された圧力計57の表示を見ながら調整する。
なお、圧力調整弁23は、平常時においては、閉止することで仕切弁として機能する。
圧力調整弁23の二次側には、試験用ホース25を接続するための試験用ホース接続部59が設けられている。
【0026】
<試験用ホース>
試験用ホース25は、圧力調整弁23の二次側に設けられた試験用ホース接続部59に接続されて試験用の混合水を取り出すためのものである。
【0027】
<試験用放出ノズル>
試験用放出ノズル27は、試験用ホース25の先端に設けられて、本設備のエアフォームチャンバ等の発泡装置が開放したときと同様の圧力と流量で混合器で希釈された試験液を放出する。
なお、試験用放出ノズル27に代えて、試験用放出ヘッドを設けてもよい。
【0028】
<濃度測定手段>
濃度測定手段は、試験用放出ノズル27から放出された消火用水に試験液が混合された混合液の濃度を測定するものである。試験液が電解液の場合には、濃度測定手段として導電率計を用いる。導電計を用いることで、希釈された試験液の濃度を正確に測定することができる上、低い濃度であっても測定可能なので、試験液に用いて点検で排出する電解質を少量で済ますことができる。
また、試験液がコロイド溶液の場合には、濃度測定手段としてチンダル現象による光散乱の光量を測定する光散乱式濃度測定器を用いる。光散乱式濃度測定器を用いることで、希釈された試験液の濃度を正確に測定することができる上、低い濃度であっても測定可能なので、試験液に用いて点検で排出するコロイド物質を少量で済ますことができる。
【0029】
上記のように構成された本実施の形態の泡消火設備の点検装置を用いた点検方法を説明する。
泡原液タンク15をバイパスして仮設の試験液タンク21を設置する。試験液タンク21の設置は具体的には以下のようにする。
加圧水導入ホース入側接続部43に加圧水導入ホース37の一端を接続し、加圧水導入ホース37の他端を、試験液タンク一次側29に接続された加圧水導入ホース出側接続部39に接続する。また、試験液送出ホース入側接続部49に試験液送出ホース47の一端を接続し、試験液送出ホース47の他端を試験液送出ホース出側接続部53に接続する。
また、試験用ホース接続部59に試験用ホース25を接続する。
【0030】
上記のように、加圧水導入ホース37、試験液送出ホース47及び試験用ホース25の接続が完了すると、泡原液吐出元弁18及び試験用仕切弁55を閉止する。他方、加圧水仕切弁41、加圧水導入側仕切弁35、試験液タンク側仕切弁45、試験液出側仕切弁51を開放する。
泡消火設備の運転を開始すると、加圧送水装置3によって消火用水が給水本管1に送水され、混合器5に送られると共に加圧水導入管11にも送られる。加圧水導入管11に送られた消火用水は、試験液タンク一次側29に充水され、試験液タンク二次側31の試験液を混合器5側に押し出す。混合器5では、給水本管1から送られた消火用水に試験液タンク21から送られた試験液が所定の割合で混合されて試験用放出ノズル27から放出される。
混合器5の二次側の圧力が実際の泡放出時の圧力と同じになるように圧力計57の表示を見ながら圧力調整弁23の開度を調整する。圧力調整弁23の調整が完了した後、試験用放出ノズル27から放出される混合液を採取して、濃度測定手段によって濃度を測定する。
混合水の濃度と混合割合の関係を予め求めておき、測定した濃度から混合器5での混合割合を求め、その割合が適切かどうかを判定する。
【0031】
以上のように本実施の形態の泡消火設備の点検設備によれば、混合器5の二次側の圧力を調整する圧力調整弁23を設けたことにより、混合器5の二次側の圧力を実際に泡消火設備を稼動させたのと同等の圧力に調整することができ、実際の運転状況に近い一次圧及び二次圧で混合器5が動作し、混合器5の混合比を実際の運転状況に近い状態で測定することができる。
【0032】
なお、上記の実施の形態では、混合器5の二次側の圧力を、実際に泡消火設備を稼動させたのと同等の圧力に調整する方法として、圧力調整弁23を用いたが、圧力調整弁23を用いる以外の方法として、実設備におけるエアフォームチャンバ等の発泡装置が設置されている直ぐ手前に分岐管を設け、該分岐管に試験用ホース及び試験用放出ヘッド又はノズルを設けるようにすればよい。このようにすれば、圧力調整をしなくても、実際に泡消火設備を稼動させたのと同等の圧力分布状態にすることができる。
【0033】
<混合割合判定後の動作>
上記混合割合判定が終了後、泡消火設備の運転を停止する。加圧水導入ホース37の一端側を加圧水導入ホース入側接続部43から取外し、図2に示すように、試験液送出ホース入側接続部49から外した試験液送出ホース47の一端側を加圧水導入ホース入側接続部43に接続する。その後、泡原液タンク15を閉止したまま、再び泡消火設備を運転することによって、点検方法の実施時において試験液に暴露した部分を加圧水で洗浄する。
このように、点検時に試験液に暴露した部分を加圧水で洗浄することで、点検後の復旧が容易であり、また、試験液による腐食等で設備を損なうことがない。
【0034】
なお、上記の例では、試験液送出ホース47の一端側を加圧水導入ホース入側接続部43に直接接続したが、試験液送出ホース47の一端側に別の配管又はホースを接続してこれを加圧水導入ホース入側接続部43に接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 給水本管 2 泡水溶液送液管
3 送水ポンプ
5 混合器(ベンチュリー型、デマンド型、オリフィス型)
9 混合器元弁 11 加圧水導入管
13 泡原液タンク加圧元弁 15 泡原液タンク
17 泡原液吐出管 18 泡原液吐出元弁
19 泡原液吐出逆止弁 21 試験液タンク
23 圧力調整弁 25 試験用ホース
27 試験用放出ノズル 29 試験液タンク一次側
31 試験液タンク二次側 33 隔膜
35 加圧水導入側仕切弁 37 加圧水導入ホース
39 加圧水導入ホース出側接続部 41 加圧水仕切弁
43 加圧水導入ホース入側接続部 45 試験液タンク側仕切弁
47 試験液送出ホース 49 試験液送出ホース入側接続部
51 試験液出側仕切弁 53 試験液送出ホース出側接続部
55 試験用仕切弁 57 圧力計
59 試験用ホース接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡消火薬剤を貯蔵した泡原液タンクと、給水本管を流れる流水量に対して前記泡原液タンク内の泡消火薬剤を所定割合で混合する混合器とを備えてなる泡消火設備を点検する泡消火設備の点検装置であって、
点検時に前記泡原液タンクをバイパスして設置可能でかつ試験液を貯留する仮設の試験液タンクと、前記混合器の二次側に接続する試験用配管および試験用泡放出ヘッド又はノズルと、前記混合器の二次側の圧力を調整する圧力調整手段と、前記泡消火設備を運転して前記試験用泡放出ヘッド又はノズルから放出される前記試験液と水との混合水溶液の濃度を測定する濃度測定手段とを備えたことを特徴とする泡消火設備の点検装置。
【請求項2】
前記試験液タンクは、前記給水本管に接続されて充水される一次側と、前記混合器側に接続されると共に試験液で満たされる二次側と、該二次側と前記一次側とを分離するように配置され、前記一次側に消火用水が充水されることによって前記二次側を加圧する隔膜を備えてなることを特徴とする請求項1記載の泡消火設備の点検装置。
【請求項3】
前記試験液が電解液であり、前記濃度測定手段が導電率計であることを特徴とする請求項1又は2に記載の泡消火設備の点検装置。
【請求項4】
前記試験液がコロイド溶液であり、前記濃度測定手段がチンダル現象による光散乱の光量を測定する光散乱式濃度測定手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の泡消火設備の点検装置。
【請求項5】
泡消火薬剤を貯蔵した泡原液タンクと、給水本管を流れる流水量に対して前記泡原液タンク内の泡消火薬剤を所定割合で混合する混合器とを備えてなる泡消火設備を点検する方法であって、
前記泡原液タンクをバイパスする経路に仮設の試験液タンクを設置して、前記混合器の二次側の圧力状態が本設備における圧力状態と同じ状態になるようにして前記泡消火設備を運転し、
前記試験用タンクから送出された試験液が前記混合器で希釈され、該混合器の二次側から放出される混合水溶液の濃度を濃度測定手段で測定することを特徴とする泡消火設備の点検方法。
【請求項6】
前記濃度測定手段による混合水溶液の濃度測定終了後、前記泡消火設備の運転を停止した上で、前記仮設の試験液タンクを取り外し、前記試験液タンクを取り外した後の前記バイパス経路を仮設の配管又はホースで連結し、泡原液タンクを閉止したまま再び前記泡消火設備を運転することによって、前記点検方法の実施時において試験液に暴露した部分を加圧水で洗浄することを特徴とする請求項5記載の泡消火設備の点検方法。
【請求項7】
前記試験液が電解液であり、前記濃度測定手段が導電率計であることを特徴とする請求項5又は6に記載の泡消火設備の点検方法。
【請求項8】
前記試験液がコロイド溶液であり、前記濃度測定手段がチンダル現象による光散乱の光量を測定する光散乱式濃度測定手段であることを特徴とする請求項5又は6に記載の泡消火設備の点検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−206234(P2011−206234A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76517(P2010−76517)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】