説明

波形等化装置、情報再生装置、波形等化方法、波形等化プログラムおよび記録媒体

【課題】 適応化領域におけるエラーの発生を低減、かつ、残りの波形データ全体を最適に等化可能な波形等化装置を提供する。
【解決手段】 本発明の波形等装置は、入力信号列に対して等化特性に基づいて波形等化して等化後信号列を生成するFIRフィルタ4と、上記FIRフィルタ4の等化特性を上記入力信号列に応じて適応化する正規方程式演算回路9とを備える。正規方程式演算回路9は、上記FIRフィルタ4によって入力信号列の一部の領域から適応化した等化特性に基づいて、該等化特性の作成に使用されなかった上記入力信号列の残り領域の少なくとも一部を含む領域に対して波形等化している状態において、前記等化適応化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生信号系において、再生信号を最適な状態に波形等化する波形等化装置、波形等化方法、波形等化プログラム、及び波形等化プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度記録媒体への情報の記録再生を行う情報記録再生装置において、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)識別方式が用いられている。
【0003】
PRMLにおいては、記録媒体からの再生信号波形をPR(Partial Response)クラスで想定する理想的な周波数特性に近づけるために波形等化を行う必要がある。すなわち入力信号波形列に対してFIR(Finite Impulse Response)フィルタのタップ係数との畳み込みを行うことで等化後波形列を生成し、信号波形を理想波形に近づける必要がある。
【0004】
この波形等化を行う際には、再生信号に含まれる記録媒体ごとの特性のばらつき、ディスクチルト、サーボオフセット等の再生特性の変動に対応して最適な等化を行うために、上記FIRフィルタのような等化後波形列(等化後信号列)を生成する等化手段の等化特性を適応化する必要がある。適応化を行わずに固定のタップ係数を用いて等化を行うとチルト等の再生特性の変動に対するマージンが極端に小さくなってしまう。
【0005】
そこで、適応化の方法の一つとして、等化後の波形と理想波形の差が最も速やかに減少する方向に、タップ係数を少しずつ変化させながら収束計算を行い、タップ係数を求める方法がある。しかしながら、この方法は、情報に記録されたデータを知らなくても等化ができるという利点がある反面、ノイズ等に弱く、収束計算が収束せずに発散してしまうという問題があった。特に、記録媒体において、記録密度が高く、かつ再生信号品質が低い場合には、この問題が顕著となっていた。
【0006】
それに対して、例えば、特許文献1(特開2004−327017号公報)には、一定数以上の波形データから再生信号をサンプリングし、最小二乗法によりタップ係数の算出を行うという方法が開示されている。
【0007】
以下に、特許文献1に開示された方法の概要を説明する。ビットレート(クロック時間単位)のパーシャルレスポンス波形をh(添え字のiは時刻に対応)とし、光ディスクに記録された2値データをaとすると、等化するべき目標波形は「Σak−i×h」で表される。この式において、添え字の「i」についての和はパーシャルレスポンスの拘束長に依存するが、例えば、拘束長5のパーシャルレスポンス波形であれば、「i」の和は1から5までをとればよい。FIRフィルタのタップ係数をwとすると、FIRフィルタからの出力波形は、FIRフィルタへの入力信号をyとすると「Σyk−i×w」で表される。ここで、二乗誤差εをε=Σ(Σyk−i×w−Σak−i×hとし、出力波形と目標波形の差が最小になるwを最小二乗法により求める。すなわち、εについてwに対する変分δεをとり、δε=0となる方程式を解くことで、wを求めることができる。
【0008】
この方法によれば、上記の再生特性の変動が発生した場合であっても、また、ノイズ等の外乱の影響があっても、再生信号を理想波形に安定して等化できる。更に、高密度再生時であっても低いエラーレートで情報を再生することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−327017号公報(2004年11月18日公開)
【非特許文献1】T.Perkins,"A Window Margin Like Procedure for Evaluating PRML Channel Performance"、IEEE Transactions on Magnetics,Vol.31,No2,1995,p1109−1114
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、信号を再生している状態において、一定量のサンプリングを行い、タップ係数を算出する場合、最適なタップ係数が得られるまでは、初期値として初期設定したタップ係数による等化が継続されることになる。データを再生しながら適応化を行う場合、上記のような再生状態の変動により波形等化特性が最適値から大きくずれると、適応化過程で発生するエラーが支配的となり全体のエラーレートが悪くなるという問題が発生する。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、適応化領域におけるエラーの発生を低減し、かつ、残りの波形データ全体を最適に等化可能な波形等化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る波形等化装置は、上記課題を解決するために、入力信号列を等化特性に基づいて波形等化して等化後信号列を生成する等化手段と、上記等化特性を上記入力信号列から適応化する等化適応化手段とを備え、上記等化手段は、上記等化適応化手段によって入力信号列の一部から適応化された等化特性に基づいて、該適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列を波形等化して等化後信号列を生成すると共に、上記等化適応化手段は、上記等化手段で使用された等化特性を、上記適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列から適応化することを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、等化手段は、等化適応化手段によって入力信号列の一部から適応化された等化特性に基づいて上記適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列を波形等化して等化後信号列を生成すると共に、上記等化適応化手段は、上記等化手段で使用された等化特性を上記適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列から適応化するようになっているので、等化手段による等化後信号列の生成に並列して、等化特性を更新することが可能となる。つまり、入力信号列に基づいて等化特性の適応化を行う際に、入力信号列の一部の領域を用いて適応化した等化特性により等化している間に、該一部の領域以外の少なくとも一部の領域を含む領域に対して等化適応化を行うため、上記該一部の領域以外の少なくとも一部の領域に対して初めて等化する場合と比較して、適応化の間に発生するエラーを低減することができる。
【0013】
上記入力信号列は、ビタビ復号可能な入力信号列であり、上記等化後信号列に対するビタビ復号過程における正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を検出するパスメトリック差検出手段をさらに備え、上記等化適応化手段は、上記パスメトリック差検出手段によって検出されたパスメトリック差の所定の目標値に対する誤差の平均二乗である平均二乗誤差を最小化する方程式の解を求めることにより上記入力信号列に対する波形等化の等化特性を適応化してもよい。
【0014】
この場合、等化適応化手段の等化係数を更新することにより適応化を行うことができる。この等化係数の更新のために、各等化係数を変数として作成される上記誤差の二乗値を表す関数を想定すると、この誤差は、等化後信号列に基づいて検出されたパスメトリック差の誤差であり、各等化係数を変数として前記誤差の二乗値を表すことができる。
【0015】
そして、前記誤差が最小となるように各等化係数を更新することで、ビタビ復号過程の進展に伴って順次検出されるパスメトリック差に対応する前記誤差の平均二乗である平均二乗誤差を最小にすることができる。その結果、復号によるエラーレートを良好に低減することができる。
【0016】
また、上記等化適応化手段は、前段階に適応化した等化特性を上記等化手段に適用し、上記等化手段により波形等化している状態において、次段階で上記等化手段で適用される等化特性を適応化してもよい。
【0017】
この場合、ある段階において等化を行う際に、前段階において等化特性を最適化した等化係数を用いて等化している状態において、次段階における等化適応化を行うため、前段階よりも前の段階、あるいは予め初期設定されている等化係数による等化を行っている状態において等化適応化を行う場合と比較して、エラーの発生を低減することができる。
【0018】
また、前段階で等化特性の適応化に使用する上記入力信号列は、次段階で等化特性の適応化に使用する入力信号列よりも短くするのが好ましい。
【0019】
この場合、段階的な適応化の最初の段階においては、予め設定されている等化特性により等化を行うことになる。この所定の等化特性が、等化の対象となる領域に対して最適なものではない場合には、その領域で多くのエラーが発生する。
【0020】
そこで、上記のように初期のある段階においてできるだけ少ない領域を用いて等化適応化を行うことで、該段階において発生するエラーの数をより効果的に低減することができる。また、前段階において適応化する等化特性は次段階における適応化の間に発生するエラーを低減するためのものであるため、次段階においてはより長い入力信号列を用いることにより入力信号列全体を最適に等化することができる。
【0021】
また、上記等化手段は、複数の等化係数に対して上記入力信号列の各入力信号を順次対応付けつつ、上記各等化係数と、当該各等化係数に対応付けられた各入力信号との畳み込み演算を行うことで等化後信号列を生成するものであり、
上記方程式は、上記等化係数を変数、上記入力信号列の重み付け加算の相関関数の平均値を要素に持つ相関関数を係数、上記入力信号列の重み付け加算と目標値との積の平均値を定数とする連立方程式であり、上記等化適応化手段は、各段階毎に、上記係数及び定数を求めるための重み付け加算の蓄積値を最初にリセットしてから、上記連立方程式を解くための平均値を求めてもよい。
【0022】
この場合、上記方程式において、上記入力信号列の重み付け加算の平均値の相関関数と、上記入力信号列の重み付け加算と目標値との積の平均値とから前記係数と定数とが決定されることにより、局所的な入力信号の変動の影響を最小限にとどめて入力信号列全体の等化特性を適応化することができる。
【0023】
さらに、各段階において入力信号列の一部分から方程式に必要な前記相関関数と、重み付け加算と目標値との積の平均値とを求めることによって、入力信号列の平均情報から等化係数が導出されているため、局所的な変動の影響を受けずに入力信号列全体の等化特性を適応化することができる。
【0024】
さらに、上記等化手段は、複数の等化係数に対して前記入力信号列の各入力信号を順次対応付けつつ、上記各等化係数と、当該等化係数に対応付けられた各入力信号との畳み込み演算を行うことで等化後信号列を生成するものであり、
上記方程式は、上記等化係数を変数、上記入力信号列の重み付け加算の平均値の相関関数を係数、入力信号列の重み付け加算と目標値との積の平均値を定数とする連立方程式であり、
上記等化適応化手段は、上記係数及び定数を求めるための重み付け加算の蓄積値を、最初に一度だけリセットし、その後継続的に平均化を行いつつ、各段階毎にその時点で求まっている平均値を用いて連立方程式を解くようにしても良い。
【0025】
この場合、各段階において算出された値をリセットすることなく継続して畳み込み演算を行うため、等化特性を適応化するための情報が段階を経るごとに蓄積されていく。その結果、各段階において算出された値をリセットする場合よりも、該情報を取得するための処理量と処理時間とを少なくすることができる。また、この場合においても入力信号列の一部分から方程式に必要な前記相関関数と、重み付け加算と目標値との積の平均値とを求めることによって、入力信号列の平均情報から等化係数が導出されているため、局所的な変動の影響を受けずに入力信号列全体の等化特性を適応化することができる。
【0026】
本発明の情報再生装置は、上記構成の本発明の波形等化装置に加えて、情報記録媒体から上記入力信号列を再生する再生手段を備えていることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、情報記録媒体に記録された情報を再生する際に、再生する情報毎に等化特性を適応化することができるので、再生情報の品位を向上させることができる。
【0028】
本発明の波形等化方法は、入力信号列に対して等化特性に基づいて波形等化して等化後信号列を生成する第1ステップと、上記等化特性を上記入力信号列に応じて適応化する第2ステップとを含み、上記第2ステップは、上記入力信号列の一部の領域に応じて上記等化特性を適応化するステップと、上記領域に応じて適応化された等化特性に基づいて上記第1ステップにより等化を行っている状態において、上記適応化に使用されなかった上記入力信号列の残り領域の少なくとも一部を含んだ領域に対して適応化を行うステップとを含んでいることを特徴としている。
【0029】
上記の構成によれば、上記第2ステップは、上記第1ステップによって入力信号列の一部の領域を用いて適応化した等化特性により等化している間に、該一部の領域以外の少なくとも一部の領域を含む領域に対して等化適応化を行うため、上記該一部の領域以外の少なくとも一部の領域に対して初めて等化する場合と比較して、適応化の間に発生するエラーを低減することができる。
【0030】
本発明の波形等化プログラムは、上記構成の波形等化装置を動作させる波形等化プログラムであって、コンピュータを前記各手段として機能させるための波形等化プログラムであることを特徴としている。
【0031】
上記の構成により、コンピュータで上記波形等化装置の各手段を実現することによって、上記波形等化装置を実現することができる。したがって、前述したように適正に波形等化を実行できる波形等化装置をコンピュータ上で実現することができる。
【0032】
本発明の波形等化プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータを前記各手段として機能させるためのプログラムを記録している。
【0033】
上記の構成により、上記記録媒体から読み出された波形等化プログラムによって、上記波形等化装置をコンピュータ上で実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る波形等化装置は、以上のように、入力信号列に対して等化特性に基づいて波形等化して等化後信号列を生成する等化手段と、上記等化手段の等化特性を上記入力信号列に応じて適応化する等化適応化手段とを備え、等化手段は、等化適応化手段によって入力信号列の一部から適応化された等化特性に基づいて該記適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列を波形等化して等化後信号列を生成すると共に、上記等化適応化手段は、上記等化手段で使用された等化特性を上記適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列から適応化するようになっているので、等化手段による等化後信号列の生成に並列して、等化特性を更新することが可能となる。つまり、入力信号列に基づいて等化特性の適応化を行う際に、入力信号列の一部の領域を用いて適応化した等化特性により等化している間に、該一部の領域以外の少なくとも一部の領域を含む領域に対して等化適応化を行うため、上記該一部の領域以外の少なくとも一部の領域に対して初めて等化する場合と比較して、適応化の間に発生するエラーを低減することができる。また、これにより入力信号列全体を最適に等化するために必要となる領域を確保することができ、エラーを増加させることなく入力信号全体を最適に等化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施の形態では、本発明の波形等化装置を光ディスク再生装置(情報再生装置)に適用した場合について説明する。
【0036】
図1は、本実施の形態に係る光ディスク再生装置20の構成を表すブロック図である。
【0037】
光ディスク再生装置20は、光ディスク1に書き込まれている情報を再生する装置であり、光学ピックアップ2、A/D変換器3、FIRフィルタ4、ビタビ復号回路5、パスメモリ長遅延素子6、特定パターン検出回路7、時間Tの遅延素子8、正規方程式演算回路9を備えている。
【0038】
前記光ディスク1には、(1,7)RLL(Run Length Limited)符号のようなd=1なるランレングス制限符号、すなわち最短マーク長が2Tであるような変調方式の記録マークが記録されている。
【0039】
前記光学ピックアップ2は、図示しない半導体レーザや各種光学部品、フォトダイオードからなっており、半導体レーザから射出されたレーザ光を光ディスク1上に集光し、反射光をフォトダイオードで電気信号に変換することによってアナログ再生波形を出力する。以下では、アナログ再生波形を単に再生波形と称する。
【0040】
再生波形は(1,7)RLL変調、PR(1,2,1)特性を持ち、理想サンプルレベルを±1に正規化したものを扱う。
【0041】
前記A/D変換器3は、チャネル周波数クロックのタイミングで、光学ピックアップ2の出力した再生波形のA/D変換を行う。そして、A/D変換器3は、再生波形がA/D変換されたディジタル再生信号(以下、単に再生信号)を出力する。
【0042】
前記FIRフィルタ4(等化手段)は、再生信号列に基づいて波形等化を行うことで等化後信号列を生成する。FIRフィルタ4は、時間Tの遅延素子を2個、ゲイン可変の増幅器を3個(ゲインはそれぞれc(0,m)、c(1,m)、c(2,m))、加算器を1個備えたディジタルフィルタである。ここで、ゲインc(0,m)、c(1,m)、c(2,m)はタップ係数(等化係数)であり、この値を変化させることによってFIRフィルタ4は等化特性を変化させる。また、m(m=1、2、・・・)は他段階でタップ係数を導出する場合における何段回目で導出された係数グループであるかを示している。FIRフィルタ4は、タップ係数を用いて再生信号列に対する波形等化を行い、等化後信号y(i−1、n)を出力する。なお、タップ係数の数を3タップとしているのは、説明の簡略化のためであり、タップ数を増やすことにより波形等化能力を上げることは可能である。
【0043】
FIRフィルタ4に再生信号が入力されると、FIRフィルタ4により波形等化処理が施されて等化後信号y(i−1,n)が出力される。等化後信号y(i−1,n)は、再生信号u(i−1,n)に対応する等化後信号である。等化後信号y(i−1,n)は、タップ係数c(k,m)と再生信号列u(i−k,n)との畳み込み演算(以下の(1)式)により表される。
【0044】
【数1】

【0045】
つまり、FIRフィルタ4は、複数のタップ係数c(k,m)(k=0,1,2)に対して、再生信号列u(i−k、n)の各再生信号を各タップ係数に順次対応づけつつ、各タップ係数と、各タップ係数に対応づけられた各入力信号との畳み込み演算を行うことで等化後信号列y(i−1,n)を生成する。
【0046】
前記ビタビ復号回路5(パスメトリック差検出手段)は、波形干渉幅が3TであるPR(1,2,1)特性に基づいて、FIRフィルタ4の出力した等化後信号y(i−1、n)のビタビ復号を行い、光ディスクに記録された記録マークの復号ビット列b(i)を出力する。
【0047】
前記パスメモリ長遅延素子6は、ビタビ復号回路5におけるパスメモリ長の時間Lに対応する遅延素子である。
【0048】
前記特定パターン検出回路7は、ビタビ復号回路5により復号された復号ビット列b(i−4)、b(i−3)、・・・、b(i)が、特定パターンとしての「00111」、「00011」、「11000」、「11100」のいずれかと一致するか否かを判定する。
【0049】
前記正規方程式演算回路9(等化適応化手段)は、特定パターン検出回路7が前記特定パターンを検出する毎に、特定パターンに対応する信号波形の重み付け加算を行い、加算結果を蓄積していく。そして、特定パターンの検出回数が予定の回数に至ったところで、平均化演算を行い、正規方程式を作成し、後述する該正規方程式を解くことにより最適タップ係数を求め、FIRフィルタ4にこの係数を設定する。
【0050】
次に、ビタビ復号回路5による復号方法について、図2及び図3を用いて説明する。
【0051】
PR(1,2,1)特性に従う再生波形であって、ひずみ及びノイズのない理想的な1Tマークの再生波形は、図2(a)〜図2(c)に示すように、チャネルクロック毎のサンプルレベルが1:2:1になる。2Tでは、1:3:3:1、3Tでは、1:3:4:3:1になり、4Tでは、1:3:4:4:3:1となり、1Tマークの再生波形の重ね合わせによって求められる。
【0052】
このように、任意のビット列について理想的な再生波形を想定することができる。理想的なサンプルレベル(理想サンプルレベル)としては、0、1、2、3、4の5つのレベルをとることになる。ここで、便宜上、サンプルレベルの最大振幅が±1になるようにサンプルレベルを正規化すると、理想サンプルレベルは、−1、−0.5、0、+0.5、+1の5つのレベルとなる。
【0053】
図3は、PRML方式によるデータ検出を実現するためのビタビ復号を表すトレリス線図である。図3において、S(00)、S(01)、S(10)、S(11)はそれぞれ状態を表し、例えば状態S(01)は、前ビットが0で現在ビットが1であることを示している。状態と状態とを結ぶ線は「ブランチ」と呼ばれ、このブランチは遷移状態を表すことができる。例えば、S(00)→S(01)のブランチによって「001」なるビット列を表すことができる。各ブランチの横に附した数値は、各遷移状態において期待される理想サンプルレベルを表す。例えば、S(00)→S(00)のブランチは「000」なるビット列を表すので、−1(正規化前のサンプルレベルは0)が理想サンプルレベルである。なお、S(01)→S(10)及び、S(10)→S(01)なるブランチが存在しないのは、d=1のランレングス制限により「010」及び「101」なるビット列がありえないことを反映している。
【0054】
トレリス線図において、ブランチが連続するように各時刻の状態を1つずつ通っていく経路は「パス」と呼ばれる。任意の状態から任意の状態を経て生成される全てのパスを考えることは、全てのありうるビット列を考えることに相当する。よって、全てのパスについて期待される理想波形と、実際に光ディスクから再生した再生波形とを比べて、再生波形に最も近い、すなわちユークリッド距離が最も小さい理想波形を有するパスを探索すれば、最も確からしい最尤パスを正解パスとして決定することができる。これがビタビ復号の原理である。
【0055】
具体的にトレリス線図を用いたビタビ復号の手順を説明する。任意の時間において、状態S(01)及びS(10)には1本のパスが接続されている。2本のパスが合流する状態S(00)及びS(11)について、合流する各パスの理想波形と再生波形とのユークリッド距離が小さい方を生き残りパスとして残すことにすれば、任意の時刻において、4つの各状態に至るパスがそれぞれ1本ずつ、合計4本のパスが残っていることになる。
【0056】
パスの理想波形と再生波形のユークリッド距離の二乗は、「パスメトリック」と呼ばれ、ブランチの理想サンプルレベルと再生波形のサンプルレベルとの差の二乗として求められるブランチメトリックを、パスを構成する全ブランチについて累積することによって計算される。
【0057】
こうして再生波形のサンプル値、つまり再生信号が入力される毎に、同じ状態に合流する2本のパスのパスメトリックの大小を比較して生き残りパスを比較する手順を繰り返していくと、パスメトリックの大きなパスが淘汰されていくため、生き残りパスはパスメトリックが最小となる1本のパスに収束していく。これを正解パスとすることにより、光ディスクに記録されたデータビット列が正しく再生されることになる。
【0058】
なお、再生信号の入力時刻に対して、正解パスを決定して復号ビット列を出力する時刻までの状態遷移数を「パスメモリ長」と呼ぶ。一般にパスメモリ長は、生き残りパスが一本に収束するのに十分な長さを持たせている。
【0059】
ここで、ビタビ復号が正しく行われている条件を考えると、最終的に1本に収束していくパスが正解パスとなるためには、各時刻において生き残りパスを決定する過程で、正解パスのパスメトリックが、誤りパスであるもう一つのパスのパスメトリックよりも小さくなければならない。そこで、生き残りを賭けて対決する2本のパスの差であるパスメトリック差を見れば、そのパスがどの程度エラーを起こしそうであるかを判定することができる。このパスメトリック差がSAM(Sequenced Amplitude Margin)の定義である。このSAMは、例えば「T.Perkins,"A Window Margin Like Procedure for Evaluating PRML Channel Performance"、IEEE Transactions on Magnetics,Vol.31,No2,1995,p1109−1114」(非特許文献1)等の文献によって周知となっている。
【0060】
ビタビ復号においてエラーが発生しないためには、誤りパスのパスメトリックから正解パスのパスメトリックを引いたパスメトリック差が0より大きくなる必要があり、また上記パスメトリック差が大きいほどエラーを起こしにくいことになる。
【0061】
すなわち、
復号過程において誤ったパスが生き残りパス(正解パス)であると決定されてしまう危険性がどの程度含まれているか、つまり復号におけるエラーの発生する度合いを示している。
【0062】
パスメトリック差の特徴として、所定のパスに対しては、理想的なパスメトリック差が定まること、及び実際に検出されるパスメトリック差はこの理想的なパスメトリック差に対してばらつきを有していることが挙げられる。
【0063】
この特徴に着目し、まず理想的なパスメトリック差に当たるパスメトリック差の目標値を設定し、実際に検出されたパスメトリック差と目標値との誤差の平均二乗である平均二乗誤差が最小となるように等化特性を適応化することで、復号によるエラーレートをより良好に低減することができる。
【0064】
さらに、特定パターンとして、パスメトリック差が予め定められた特定値となるようなビット列パターンを想定する。この特定パターンが検出されたときに、等化後信号列における特定パターンに対応する信号列から検出されたパスメトリック差の誤差に基づいて最適等化を行う。これによって、ビタビ復号過程においてエラーを起こしやすいパターンに特化して等化特性を適応化することができる。
【0065】
上述したように、パスメトリック差は、そのパスメトリック差の検出の元となった等化後信号列が、復号過程において誤ったパスを生き残りパスとして決定してしまう危険性をどの程度はらんでいるものであるか、つまり復号におけるエラーの発生する度合いを示している。そこで、誤差信号e(n)を次のように定める。
【0066】
e(n)=s(n)−ds ・・・ (2)
s(n)はパスメトリック差(SAM値)、dsは所定のパスについて定まる理想的なパスメトリック差をそれぞれ表す。
特定パターンに一致するn番目のビットパターンとして、「00111」が検出されたとする。この場合、図4に示すように、ビタビ復号のトレリス線図では、正解パスは「・・・→S(00)→S(01)→S(11)→S(11)」であり、この正解パスと最後の状態S(11)(図中右端のS(11))で合流する誤りパスは、この正解パスと理想波形が最も近い「・・・→S(00)→S(00)→S(01)→S(11)」である場合がほとんどである。
【0067】
この場合、それぞれのパスの理想波形におけるサンプルレベルは、正解パスが(−0.5、+0.5、+1)であり、誤りパスが(−1、−0.5、+0.5)である。したがって、これらに対応する等化後信号y(−3,n)、y(−2,n)、y(−1,n)を用いて、この場合のパスメトリック差s(n)は、次式
s(n)={y(−3,n)−(−1)}+{y(−2,n)−(−0.5)}+{y(−1,n)−(+0.5)}−{y(−3,n)−(−0.5)}−{y(−2,n)−(+0.5)}−{y(−1,n)−(+1)}
=y(−3,n)+2y(−2,n)+y(−1,n) ・・・ (3)
のように実際にパスメトリック差を計算しなくても簡易的に求めることができる。等化後信号が完全に正解パターンに一致するときのs(n)は、
s(n)=−0.5+2(0.5)+1=1.5・・・(4)
となり、これがこの特定パターンに対応するパスメトリック差の理想値である。そして、この値を目標値dsとして設定する。
【0068】
一方、(1)式を用いることにより、s(n)は次式のように表すことができる。
【0069】
【数2】

【0070】
すると、目標値ds(=1.5)に対するパスメトリック差s(n)の誤差e(n)=s(n)−dsの平均二乗(平均二乗誤差)ε=E[e(n)]は、次式のようになる。
【0071】
【数3】

【0072】
よって、(3)式と同じ形に表現できるため、同様の方法で正規方程式(以下の(7)式)を導出することができる。
【0073】
【数4】

【0074】
ただし、p(k)、r(m,k)は以下の通りである。
【0075】
r(m,k)=E[{u(−2−k)+2u(−1−k)+u(−k)}{u(−2−m)+2u(−1−m)+u(−m)}]、m,k=0,1,2 ・・・ (8)

p(k)=E[ds{u(−2−k)+2u(−1−k)+u(−k)}]、k=0,1,2 ・・・ (9)
ここで、p(k)重み付け加算の極性について示す。E[]内の計算を以下のようにPinとすると
特定パターン「00111」、「11100」が検出された場合には、
Pin=ds{u(−2−k)+2u(−1−k)+u(−k)}・・・(10)
となるが、「00011」、「11000」が検出された場合にはE[]内の計算が
Pin=−ds{u(−2−k)+2u(−1−k)+u(−k)}・・・(11)
となることに注意が必要である。
【0076】
具体的には、目標値ds=1.5であり、相関関数行列の作成開始後n番目の、特定パターンに一致するビット列「00111」が検出された場合、対応する再生信号列をu(−4,n)、(−3,n)、(−2,n)、(−1,n)、(0,n)(図5(a)〜(c)参照)とすると、上記の(8)式の行列Rに対して、各要素は次のように計算される。表記は、1行1列目、1行2列目、・・・、3行3列目のように表記している。
【0077】
r(0,0):E[{u(−2)+2u(−1)+u(0)}{u(−2)+2u(−1)+u(0)}]
r(0,1):E[{u(−3)+2u(−2)+u(−1)}{u(−2)+2u(−1)+u(0)}]
r(0,2):E[{u(−4)+2u(−3)+u(−2)}{u(−2)+2u(−1)+u(0)}]
r(1,0):E[{u(−2)+2u(−1)+u(0)}{u(−3)+2u(−2)+u(−1)}]
r(1,1):E[{u(−3)+2u(−2)+u(−1)}{u(−3)+2u(−2)+u(−1)}]
r(1,2):E[{u(−4)+2u(−3)+u(−2)}{u(−3)+2u(−2)+u(−1)}]
r(2,0):E[{u(−2)+2u(−1)+u(0)}{u(−4)+2u(−3)+u(−2)}]
r(2,1):E[{u(−3)+2u(−2)+u(−1)}{u(−4)+2u(−3)+u(−2)}]
r(2,2):E[{u(−4)+2u(−3)+u(−2)}{u(−4)+2u(−3)+u(−2)}]
また、目標値と重み付け加算の積である(9)式の行列pの各要素は、
p(0):E[1.5×{u(−2)+2u(−1)+u(0)}]
p(1):E[1.5×{u(−3)+2u(−2)+u(−1)}]
p(2):E[1.5×{u(−4)+2u(−3)+u(−2)}]
以上のように計算される。
【0078】
特定パターンが検出されるたびに、{}内の計算が行われ各行列要素のそれぞれにおいて加算されていく。そしてある一定量の特定パターンを検出した時点で、各要素において加算した総数で割り、期待値の計算を行う。上記したようにパスメトリック差の理想値が1.5の場合のパスメトリック差を求める計算は、(3)式にて表現されるので({}内の計算は(3)式から導出した)、特定パターンに対応するパスメトリック差がdsに近づくような(E[{s(n)−ds}]を最小とする)タップ係数hがRh=pの正規方程式を解くことによって導出される。正規方程式においては、上記入力信号列の重み付け加算の平均値の相関関数と、上記入力信号列の重み付け加算と目標値との積の平均値とから前記係数と定数とが決定されることにより、局所的な入力信号の変動の影響を最小限にとどめて入力信号列全体の等化特性を適応化することができる。
【0079】
以下、上記構成の光ディスク再生装置20の再生動作の流れを説明する。
【0080】
まず、光学ピックアップ2から光ディスク1上に光ビームが照射され、光ディスク1に記録された情報が読み出される。このとき光ディスク1上に記録された記録マークの再生波形が光学ピックアップ2から出力される。この再生波形は、A/D変換器3にて再生信号列u(i,n)に変換される。FIRフィルタ4に再生信号が入力されると、FIRフィルタ4により波形等化処理が施されて等化後信号y(i−1,n)が出力される。等化後信号y(i−1,n)は、再生信号u(i−1,n)に対応する等化後信号列である。
【0081】
ビタビ復号回路5は、等化後信号y(i−1,n)が入力されると、ビタビ復号を行った結果得られた復号ビット列b(i)を生成する。
【0082】
ここで、パスメモリ長遅延素子6は、ビタビ復号におけるパスメモリ長の時間分の遅延による再生信号u(i,n)及びパスメトリック差s(n)と、復号ビット列b(i)との時間差Lを補正して同期をとるためのものである。
【0083】
特定パターン検出回路7は、復号ビット列b(i−4)、b(i−3)、・・・、b(i)が特定パターンである「00111」、「00011」、「11000」、「11100」のいずれかと一致するか否かを判定し、一致した場合には一致信号を正規方程式演算回路9に伝える。
【0084】
正規方程式演算回路9は、特定パターン検出回路7から一致信号が伝えられると、対応する入力信号の重み付け加算をもとめ、それを順次加えていく。
【0085】
前記重み付け加算では、検出された特定パターンに対応するそれぞれの入力信号のビット列において、以下の(12)式で示すように相関をとり、
{u(−2−k,n)+2u(−1−k,n)+u(−k,n)}{u(−2−m,n)+2u(−1−m,n)+u(−m,n)} m,k=0,1,2 … (12)
m、kの組み合わせのそれぞれで演算し、加算していく。
【0086】
最適なタップ係数を求めるのに十分な数の特定パターンを入力信号列の一定領域から検出した後、特定パターンの検出数nで割ることにより期待値を算出し、以下の(4)式に基づいて(14)式に示す3行3列の相関関数行列Rを作成する。なお、E[ ]は期待値演算子を表す。
r(m,k)=E[{u(−2−k,n)+2u(−1−k,n)+u(−k,n)}{u(−2−m,n)+2u(−1−m,n)+u(−m,n)}] m,k=0,1,2 … (13)
kはタップ係数の番号を表し3タップであればk=0〜2、mはm段階目の更新でのタップ係数であることを示している。
【0087】
【数5】

【0088】
同時に、以下の(15)式に示すように、目標値dsと重み付け加算との積の期待値を求める。
p(k)=E[sign・ds{u(−2−k,n)+2u(−1−k,n)+u(−k,n)}] k=0,1,2 ・・・ (15)
signは、検出した特定パターンによって定まる符号(±1)を表し、
「00111」、「11100」の場合には、sign=1。
「00011」、「11000」の場合には、sign=−1となる。
そして、(15)式に基づいて3行1列の行列p((16)式)を作成する。
【0089】
【数6】

【0090】
さらに、タップ係数をhとし、以下の(17)式に示すような3行1列の行列を作成する。
【0091】
【数7】

【0092】
上述した(14)、(16)、(17)式の各行列で構成された、タップ係数行列hを変数とする以下の(18)式により表される正規方程式を解くことにより、タップ係数を求め、FIRフィルタ4のタップ係数c(k、m)を更新する。
【0093】
Rh=p ・・・ (18)m
ここで導かれたタップ係数は、FIRフィルタ4で等化した等化後信号のパスメトリック差s(n)の目標値dsに対する平均二乗誤差E[{s(n)−ds}]を最小とし、このとき、ビタビ復号で復号される復号ビットのエラーレートは最良となることが理論的に証明されている。
【0094】
以下、段階的等化適応化手段を用いた波形等化装置の動作について詳細に説明する。一例としてクラスタの先頭部分から二段階に分けて最適タップ係数を導出する場合について図6、図7を基に説明する。
【0095】
図6は二段階でタップ係数を導出する処理(波形等化処理)の流れを示すフローチャートである。また、図7は入力信号列のクラスタの先頭から終端までのタップ係数の変化を示した図である。
【0096】
本実施の形態では、上述したFIRフィルタ4と正規方程式演算回路9とを用いて以下のような処理を行っている。
【0097】
一段階目のタップ係数の導出として、上記正規方程式演算回路9は、クラスタの先頭の一部領域からの入力信号列を用い、該一部領域について適応化したタップ係数を導出する。
【0098】
上記FIRフィルタ4は、該タップ係数を設定し上記適応化に用いていない残り領域の少なくとも一部領域に対して波形等化して等化後信号列を生成するようにしている。
【0099】
これにより、二段階目のタップ係数導出のために入力信号を用いて現領域について適応化している間に発生するエラーを低減することができ、予め設定されているタップ係数による等化を行っている場合と比較して、エラーの発生を低減することができる。
【0100】
タップ係数導出のために特定パターンの検出を行っている入力信号列の先頭の一定領域においては、予め設定しておいたタップ係数による等化を行うことになる。予め設定しておいたタップ係数が、先頭の一定領域に対して最適な係数ではない場合には、その領域で多くのエラーが発生する。そのため、一段階目では最低限必要な領域を用いるのが好ましい。そして、二段階目において最適なタップ係数を得るのに十分な領域を用いる。
【0101】
また、タップ係数を得るまでの時間と計算量を少なくするためにも、タップ係数の導出に使用する領域を小さくすることが要求されるが、小さくしすぎると入力信号列の残りの領域を最適に等化できるタップ係数を得ることができない。入力信号列の全てを利用しなくても、エラーレートを抑えた等化が可能であるが、残りの領域を最適に等化できるタップ係数を得るためには、ある程度の入力信号列の領域が必要となる。
【0102】
ここでは、入力信号列を1クラスタ(約960000ビット)単位で等化適応化することとし、特定パターンの検出数を一例として次のように設定する。すなわち、一段階目を特定パターンの検出数を512個、二段階目を同じく8192個とする。特定パターンの検出数は、二段目の検出数が最適タップ係数を導出するために十分な検出数であり、一段目の検出数は、暫定的にタップ係数を設定するために最低限必要となる検出数となっている。
【0103】
図6に示すように、タップ係数を導出する動作が開始されると、予め用意していた初期値(タップ係数A)をタップ係数として設定する(S1)。タップ係数Aは、再生信号の変動に対応しているものではないため、再生信号に大きな変動が発生している場合には、エラーが多く発生する。
【0104】
このタップ係数Aによる等化が行われている状態で、言い換えると、等化が行われているのに並行して、一段階目のタップ係数の導出がスタートし、512個の特定パターンを検出する(S2)。ここでは、特定パターンを検出する毎に、信号波形の重み付け加算を行い、正規方程式演算回路9内のレジスタに加算する。
【0105】
検出が終了した時点でタップ係数の導出を行い(S3)、導出したタップ係数c(k,1)を用いて、FIRフィルタ4のタップ係数を更新する(S4)。ここでは、再生信号に変動が発生している場合には、タップ係数Aはエラーの発生原因となる。タップ係数c(k,1)の役割は、このような状況から抜け出し、後述する二段階目の過程において新たなタップ係数が導出されるまでの間、エラーの発生を抑えることである。入力信号列は、(1,7)RLL変調のランダム信号であるため、前記4種類の512個の特定パターンは約1400ビットの領域に含まれる。
【0106】
一段階目の導出が終了した時点で、レジスタ内の値はリセットされ、次に、二段階目のタップ係数の導出がスタートし、8192個の特定パターンを検出する(S5)。この間に、一段階目で導出したタップ係数c(k,1)による等化が行われる。そして、一段階目と同様に特定パターンを検出する毎に、信号波形の重み付け加算を行い、正規方程式演算回路9内のレジスタに加算する。検出が終了した時点でタップ係数の導出を行い(S6)、導出したタップ係数c(k,2)を用いて、再度FIRフィルタ4のタップ係数を更新する(S7)。
【0107】
8192個の特定パターンの検出には、22000ビットの入力信号列が必要となる。よって、最適タップ係数導出までに用いた領域は、二段階の合計で23400ビットとなる。タップ係数c(k,2)は、波形データの平均情報から作成した入力信号列1クラスタ全体についてエラーの発生を抑制する最適なタップ係数であり、この後クラスタの残りの部分すなわち936600ビット分は、タップ係数c(k,2)による等化が行われ(S8)、エラーレートが良好に低減される。
【0108】
前記のように予め用意されていたタップ係数Aは、再生信号に大きな変動が発生している場合には、その変動に対応したタップ係数ではないため、前記再生信号に対する等化特性は最適状態からずれた状態になっている。しかし、二段階での段階的等化適応化を行うことで、最適等化状態からずれた等化特性に基づき等化される領域を減らすことが可能となる。すなわち、入力信号列に基づいて等化特性の適応化を行う場合に、入力信号列から適応化に必要な情報を得る間に生じる初期等化特性と最適等化状態とのずれを抑制することができる。
【0109】
さらに、一段階目で導出され、暫定的に設定されるタップ係数c(k,1)は、最適なタップ係数が導出されるまでの間のエラーの発生をある程度抑えることができる。よって一段階目のタップ係数の導出は、二段階目で行われる最適タップ係数の導出時に発生するエラーの数を減らすことができる。
【0110】
また、タップ係数c(k,1)はエラーの発生を抑えることによって、二段階目において最適タップ係数の導出のために特定パターン検出回路7が行う特定パターンの検出制度を向上させ、その結果、適応化の能力を向上させることになる。よってこのとき一段階だけで導出する場合と比較して二段階で適応化を行う場合には、二段階目の適応化を行う領域において発生するエラーの数を抑制すると伴に、該領域における等化適応化手段の適応化能力を向上させることができる。適応化能力が向上することにより、より最適なタップ係数が導出できる、あるいは二段階目で使用する特定パターンの検出数を減らすことができるなどの効果がある。
【0111】
二段階目で導出されるタップ係数は最適なタップ係数であり、入力信号列全体の等化特性を適応化することができる。もちろん、一段目においてもエラーは発生するが、この領域が小さいため発生するエラーは全体からみて少ない個数にとどまる。これによりタップ係数の導出から、等化を行い次のタップ係数の導出を行うまでのトータルのエラーの発生を一段階だけで導出する場合と比較して抑制することができる。
【0112】
また、一段階目において等化を行うと同時に、二段階目における等化の等化特性を適応化するため、入力信号列全体を復号するために要する時間を節約することができる。
【0113】
上記説明では、二段階で処理する例を用いたが、これに限ることは無く、三段階以上の多段階での導出を行うことも可能であり、多段階の導出を行う場合には、初期の段階においてできるだけ少ない領域を用いて等化適応化を行えば、多段階の導出の間で発生するエラーをより効果的に低減することが可能となる。
【0114】
本発明を適用すれば、再生条件の変動、すなわちディスクの交換時や、環境温度変化、ディスクチルトやサーボオフセット等の摂動、同一ディスク面内で記録密度が変化する、再生速度が変化するなどの変化、または多層ディスクにおいての層間移動、等による再生波形信号の変化に対して常に最適なタップ係数を設定することができる。
【0115】
一例として、本発明を実際の光ディスク再生装置に適用した事例を図8と図9とを用いて示す。図8は本実験に用いた装置等の主要なパラメータを示す表である。本実験では、異なるレベルのディスクチルト条件において光ディスクを再生し、出力された再生信号列に基づいて波形等化を行った。予め設定しておくタップ係数Aとしては、チルトが0の状態(最適状態)における最適タップ係数を設定している。また、最適タップ係数を導出するための特定パターンの検出数は、前記した例と同じ条件となっている。すなわち、一段階目では、512個の特定パターン一度検出し、タップ係数を導出し更新する。その後二段階目として8192個の特定パターンを検出し、タップ係数を導出し更新する。
【0116】
図9は、本実験の結果を示すグラフである。このグラフは、ディスクチルト(タンジェンシャルチルト)とエラーレートの関係を示したものである。ディスクチルトが大きい点のみをプロットしているのは、チルトが小さい範囲では、エラーレートが0となるためである。
【0117】
比較として一段階だけでタップ係数を導出する方法(比較例)を同一の条件において適用した結果を示す。ただし、特定パターンの検出数は、512と8192を合計した8704個としている。これにより本発明の適用例と比較例を用いて本発明の適用例と同様の領域を用いてタップ係数導出を行った場合とを比較することができる。
【0118】
一段階(比較例)で検出した結果(◆)では、チルトが1.0(deg)においてエラーレートが1.8E−04、0.8(deg)において8.3E−06となっている。これに対して二段階(本発明)で検出した結果(□)では、それぞれエラーレートは2.8E−05、0(0はプロットできないためグラフの底に表示している)となっている。比較例の一段階検出に比べて、本発明である二段階検出を行った場合には、予め用意しておいた係数によるエラーの発生を抑制し、ディスクチルトが大きい状態においてエラーレートが改善されていることが確認できる。
【0119】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図10及び図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施の形態において、前記実施の形態1において説明した構成要素と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0120】
図10は、本実施の他の形態に係る光ディスク再生装置21の構成を表すブロック図である。図10に示すように、本実施の形態に係わる光ディスク再生装置21では、図1と比較して、重み付け加算レジスタ11を正規方程式演算回(重み付け加算レジスタ無し)10とは別に備え、前記重み付け加算レジスタ11を制御するコントローラ12が付加されている。
【0121】
重み付け加算レジスタ11は、特定パターンを検出する毎に、特定パターンに基づく信号波形の重み付け加算を行い、その値を加算していく。
【0122】
コントローラ12は、重み付け加算レジスタ11を制御しており、重み付け加算レジスタ11が格納している値を正規方程式演算回路10に送るように指示するとともに、重み付け加算レジスタ11に格納されている値をリセットする。
【0123】
正規方程式演算回路10は、正規方程式演算回路9とは異なり、信号波形の重み付け加算は行わず、重み付け加算レジスタ11から出力された値を用いて前記正規方程式を解くことにより最適タップ係数を求め、FIRフィルタ4にこの係数を設定する。
【0124】
更新動作の過程は実施の形態1における過程と同様であるが、重み付け加算の蓄積方法が異なる。実施の形態1と同様に二段階で行われる例を用いて図11を基に説明する。
【0125】
図11は、クラスタの先頭から終端までのタップ係数の変化を示した図である。上記タップ係数を導出する動作が開始されると、予め用意しておいたタップ係数AをFIRフィルタ4に設定し、コントローラ12が重み付け加算レジスタ11をリセットする。重み付け加算レジスタ11は、特定パターンを検出する毎に、特定パターンに基づく信号波形の重み付け加算と重み付け加算値の蓄積を行う。そして、ある一定量(例えば512個)の特定パターンを検出したところで、コントローラ12の指示により、重み付け加算レジスタ11は格納している値を正規方程式演算回路10に送る。正規方程式演算回路10は、タップ係数c(k,1)を導出し更新する。
【0126】
次に、重み付け加算レジスタ11は、リセットされずにそのまま特定パターンの検出毎の重み付け加算とその値の加算を512個の検出に続いて継続して行う。そして、さらに一定量(例えば前段階の512個と合計して8192個)の特定パターンを検出したところで、再びコントローラ12の指示により正規方程式演算回路10へ格納している値を送る。正規方程式演算回路10は、タップ係数c(k,2)を導出、更新し等化を行う。
【0127】
ここでは実施の形態1と同様に二段階でタップ係数の導出を行っているが、重み付け加算レジスタの中身を各段階でリセットすることなく連続して加算しているため、より少ない入力信号での最適なタップ係数の導出が可能である。
【0128】
最適タップ係数導出までに用いた領域は、二段階の合計で22000ビット(1400+20600ビット)である。重み付け加算レジスタ11と正規方程式演算回路10を分けることによって、重み付け加算の平均値からタップ係数を導出する演算に時間がかかったとしても、連続してタップ係数を導出することができる。タップ係数の導出演算は複数の乗除算を含むため、回路の仕様によっては、演算に時間がかかる可能性がある。演算が完了するまで再生動作を停止すると時間のロスが生じるため、演算中においても特定パターンの検出を行い、演算が終了した時点でタップ係数を更新する。
【0129】
また、段階ごとに重み付け加算レジスタ11の値をリセットすることなく加算していくことで、各段階での検出数を加算した数の特定パターンを検出した結果による重み付け加算の値を基に、タップ係数を計算することができる。例えば、512個の特定パターンに連続して加算していくので、各段階毎にリセットする場合と比較して、512個の特定パターンが含まれる領域分早く特定パターンの検出を終了することができ、その結果、等化適応化動作も早く完了することができる。
【0130】
このように光ディスク再生装置21では、段階的等化適応化の各段階において算出された値をリセットすることなく継続して畳み込み演算を行うため、等化特性を適応化するための情報が段階を経るごとに蓄積されていく。そのため、各段階において算出された値をリセットする場合(実施の形態1)よりも、適応化に必要な情報を取得するための処理量と処理時間とを少なくすることができる。
【0131】
なお、本発明の波形等化装置は、以下のような構成であってもよい。
【0132】
入力信号列を波形等化しつつ、その等化特性を適応化する波形等化装置において、前記入力信号列に対して前記波形等化を行うことで等化後信号列を生成する等化手段と、前記入力信号列に基づいて前記等化手段の等化特性を適応化する等化適応化手段を備え、前記等化適応化手段は、前記適応化を複数回に分けて段階的に行うことを特徴としている。
【0133】
また、本発明の波形等化方法は、以下のような構成であってもよい。
【0134】
入力信号列を波形等化しつつ、その等化特性を適応化する波形等化方法において、前記入力信号列に対して前記波形等化を行うことで等化後信号列を生成する等化ステップと、前記入力信号列に基づいて前記等化手段の等化特性を適応化する等化適応化ステップを含み、前記等化適応化ステップは、前記適応化を複数回に分けて段階的に行うことを特徴としている。
【0135】
以上説明したように、実施の形態1及び2における波形等化装置は、入力信号列を波形等化しつつ、その等化特性を適応化する波形等化装置であって、入力信号列に対して等化特性に基づいて波形等化して等化後信号列を生成する等化手段と、上記等化手段の等化特性を上記等化後信号列に応じて適応化する等化適応化手段とを備え、上記等化適応化手段は、上記等化手段によって入力信号列の一部の領域から生成された初期等化後信号列に応じて上記等化特性を適応化し、上記等化手段は、上記初期等化後信号列に応じて適応化された等化特性に基づいて、該初期等化後信号列の生成に使用されなかった上記入力信号列の残り領域の少なくとも一部の領域に対して波形等化して等化後信号列を生成する。
【0136】
上記の構成により、初期段階の等化特性から最適等化特性へと変化させるために必要な処理量と処理時間とを低減することができるとともに、波形等化に伴うエラーレートを低減できるという効果を奏する。
【0137】
上記の実施の形態1及び2においては、説明上信号の変調方式として(1、7)RLLを用いているが、本発明は、これに限らず適用可能である。また、再生信号のPR特性をPR(1,2,1)としているが、これに限ることなく様々なPR特性に対して適用可能である。さらに、前記説明では導出過程を二段階としているがこれに限ることは無く、より多くの段階での導出を行うことも可能である。
【0138】
以上のように実施の形態1及び2では、波形等化装置の例として光ディスク再生装置について説明したが、本発明はこれに限らず、一定量の再生信号波形を基に波形特性を適応化する装置や、特にPRML方式の信号再生を行う装置において等しくその効果を発揮することが可能である。すなわち、ハードディスク再生装置や磁気テープ装置などの磁気記録再生装置はもちろん、通信データ受信装置などの通信装置にも本発明を適用することができる。
【0139】
また、前記実施の形態1及び2で説明した波形等化装置の各ブロック図は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにコンピュータを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0140】
すなわち、波形等化装置(図1、図10の光ディスク再生装置)から光ディスク1、光学ピックアップ2、及びA/D変換器3を除いた装置)は、この装置の各機能を実現する波形等化プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、前記プログラムを格納したROM(read only memory)、前記プログラムを展開するRAM(random access memory)、前記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えたコンピュータによって実現することもできる。
【0141】
つまり、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである波形等化プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースコードプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、コンピュータに供給し、そのコンピュータが記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0142】
このように、本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も包含する。さらに、一つの手段の機能が、二つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは、二つ以上の手段の機能が、一つの物理的手段により実現されてもよい。
【0143】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0144】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0145】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0146】
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、再生信号波形を理想的な周波数特性に近づけることができるので、特に高密度記録再生のように再生信号の波形特性に影響を受けやすい装置、例えばDVDやHD DVD、Blu−ray Disc記録再生装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光ディスク再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)〜(c)は、PR(1,2,1)特性に従う再生信号波形とそのサンプルレベル、及び対応する記録マークと復号ビット列の関係を示す模式図である。
【図3】トレリス線図を示す模式図である。
【図4】ビット列「00111」に対応するビタビ復号のトレリス線図を示す模式図である。
【図5】(a)〜(c)は、復号ビット列「00111」と対応する記録マークと再生信号波形、サンプルレベルの関係を示す模式図である。
【図6】図1に示す光ディスク再生装置における波形等化処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図1に示す光ディスク再生装置におけるタップ係数更新動作を示す模式図である。
【図8】本発明の適用実験における装置の主要パラメータ表を示す図である。
【図9】本発明を光ディスク再生装置に適用した事例におけるディスクチルトとエラーレートとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る光ディスク再生装置の構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示す光ディスク再生装置におけるタップ係数更新動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0149】
1 光ディスク(情報記録媒体)
2 光学ピックアップ(再生手段)
3 A/D変換器
4 FIRフィルタ(等化手段)
5 ビタビ復号回路(パスメトリック差検出手段)
6 パスメモリ長遅延素子
7 特定パターン検出回路
8 遅延素子
9 正規方程式演算回路(等化適応化手段)
10 正規方程式演算回路(等化適応化手段)
11 重み付け加算レジスタ
12 コントローラ
20 光ディスク再生装置(情報再生装置)
21 光ディスク再生装置(情報再生装置)
b 復号ビット列
c タップ係数(等化係数)
ds 目標値
s パスメトリック差
u 再生信号
y 等化後信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号列を等化特性に基づいて波形等化して等化後信号列を生成する等化手段と、
上記等化特性を上記入力信号列から適応化する等化適応化手段とを備え、
上記等化手段は、上記等化適応化手段によって入力信号列の一部から適応化された等化特性に基づいて該適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列を波形等化して等化後信号列を生成すると共に、
上記等化適応化手段は、上記等化手段で使用された等化特性を、上記適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列から適応化することを特徴とする波形等化装置。
【請求項2】
上記入力信号列は、ビタビ復号可能な入力信号列であり、
上記等化後信号列に対するビタビ復号過程における正解パスと誤りパスとのパスメトリック差を検出するパスメトリック差検出手段をさらに備え、
上記等化適応化手段は、上記パスメトリック差検出手段によって検出されたパスメトリック差の所定の目標値に対する誤差の平均二乗である平均二乗誤差を最小化する方程式の解を求めることにより上記入力信号列に対する波形等化の等化特性を適応化することを特徴とする請求項1に記載の波形等化装置。
【請求項3】
上記等化適応化手段は、
前段階に適応化した等化特性を上記等化手段に適用し、上記等化手段により波形等化している状態において、次段階で上記等化手段で適用される等化特性を適応化することを特徴とする請求項1に記載の波形等化装置。
【請求項4】
前段階で等化特性の適応化に使用する上記入力信号列は、次段階で等化特性の適応化に使用する入力信号列よりも短いことを特徴とする請求項3に記載の波形等化装置。
【請求項5】
上記等化手段は、複数の等化係数に対して上記入力信号列の各入力信号を順次対応付けつつ、上記各等化係数と、当該各等化係数に対応付けられた各入力信号との畳み込み演算を行うことで等化後信号列を生成するものであり、
上記方程式は、上記等化係数を変数、上記入力信号列の重み付け加算の相関関数の平均値を要素に持つ相関関数を係数、上記入力信号列の重み付け加算と目標値との積の平均値を定数とする連立方程式であり、
上記等化適応化手段は、各段階毎に、上記係数及び定数を求めるための重み付け加算の蓄積値を最初にリセットしてから、上記連立方程式を解くための平均値を求めることを特徴とする請求項2に記載の波形等化装置。
【請求項6】
上記等化手段は、複数の等化係数に対して前記入力信号列の各入力信号を順次対応付けつつ、上記各等化係数と、当該等化係数に対応付けられた各入力信号との畳み込み演算を行うことで等化後信号列を生成するものであり、
上記方程式は、上記等化係数を変数、上記入力信号列の重み付け加算の平均値の相関関数を係数、入力信号列の重み付け加算と目標値との積の平均値を定数とする連立方程式であり、
上記等化適応化手段は、上記係数及び定数を求めるための重み付け加算の蓄積値を、最初に一度だけリセットし、その後継続的に平均化を行いつつ、各段階毎にその時点で求まっている平均値を用いて連立方程式を解くことを特徴とする請求項2に記載の波形等化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の波形等化装置に加えて、
情報記録媒体から上記入力信号列を再生する再生手段を備えていることを特徴とする情報再生装置。
【請求項8】
入力信号列を等化特性に基づいて波形等化して等化後信号列を生成する第1ステップと、
上記等化特性を上記入力信号列から適応化する第2ステップとを含み、
上記第1ステップは、上記第2ステップによって入力信号列の一部から適応化された等化特性に基づいて該適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列を波形等化して等化後信号列を生成するステップと共に、
上記第2ステップは、上記第1ステップで使用された等化特性を、上記適応化で使用されていない残りの入力信号列の一部を少なくとも含んだ入力信号列から適応化するステップとを含むことを特徴とする波形等化方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の波形等化装置を動作させる波形等化プログラムであって、コンピュータを前記各手段として機能させるための波形等化プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の波形等化プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate