説明

波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置

【課題】温度変化に起因する反射膜間のギャップ精度の低下を防止する波長可変干渉フィルターを提供する。
【解決手段】固定基板51と、固定基板51に対向し、固定基板51に対して変位可能な可動基板52と、固定基板51の可動基板52と対向する面に形成された第1反射膜54と、可動基板52に設けられ、第1反射膜54とギャップを介して対向する第2反射膜55と、固定基板51の可動基板52に対向する面に設けられた第1電極57と、可動基板52に設けられ、第1電極57と対向し正の熱膨張係数を有する第2電極58と、第2電極58に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜70と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の波長を有する光から特定の波長の光を取り出すフィルターとして、反射膜を対向配置し、反射膜間のギャップ寸法を変更可能な波長可変干渉フィルターが知られている。
例えば、特許文献1では一対の基板の対向する面に反射膜を対向配置し、さらに電極を対向配置して静電アクチュエーターを構成している。この静電アクチュエーターを駆動させることで、一方の基板を撓ませて反射膜間のギャップ寸法を変更している。そして、ギャップ寸法に対応した波長の光を分光することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−251105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、一方の基板(可動側の基板)の撓みを利用する波長可変干渉フィルター(以下、エタロンと呼ぶことがある)では、基板が撓みやすいように基板の厚みが薄く形成される。このため、基板にそりが生じないように、常温において基板に形成される反射膜や電極などの膜応力が基板全体で相殺されるように設計されている。
しかしながら、エタロンの使用温度が常温から大きく離れている場合や使用温度範囲が広い場合、熱膨張係数の違いにより反射膜や電極などの膜が、基板に応力を与えて基板にそりが発生する。特に電極に利用する材料は金属であるため、基板に与える影響は顕著である。このため、反射膜間のギャップ寸法において所望のギャップ寸法とずれが生じ、エタロンの分光精度が低下する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に形成された第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向し正の熱膨張係数を有する第2電極と、前記第2電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第2基板に形成された正の熱膨張係数を有する第2電極に、負の熱膨張係数を有する付加膜が積層されている。
例えば波長可変干渉フィルターの使用温度が高い場合、第2電極は正の熱膨張係数を有するため、延びる方向に力が生じる。これに対して、付加膜は負の熱膨張係数を有するため、縮まる方向に力が生じる。付加膜は第2電極に積層されているため、両者の力は打消し合うように働き、第2基板へかかる応力を少なくすることができる。
このため、温度変化に起因する第2基板のそりは抑制され、反射膜間のギャップ寸法を精度よく設定でき、測定する雰囲気の温度変化に伴う分光精度の低下を抑制できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1電極に接続された第1引き出し電極と、前記第2電極に接続された正の熱膨張係数を有する第2引き出し電極と、が備えられ、前記第2引き出し電極に負の熱膨張係数を有する前記付加膜が積層されていることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、第2電極に接続された正の熱膨張係数を有する第2引き出し電極に、負の熱膨張係数を有する付加膜が積層されている。
このため、例えば波長可変干渉フィルターの使用温度が高い場合、第2引き出し電極に生ずる力と付加膜に生ずる力が打消しあうように働き、第2基板へかかる応力を少なくすることができる。
そして、温度変化に起因する第2基板のそりは抑制され、反射膜間のギャップ寸法を精度よく設定でき、測定する雰囲気の温度変化に伴う分光精度の低下を抑制できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1反射膜に接続された第3引き出し電極と、前記第2反射膜に接続された正の熱膨張係数を有する第4引き出し電極と、が備えられ、前記第4引き出し電極に負の熱膨張係数を有する前記付加膜が積層されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、第1反射膜に接続された第3引き出し電極と、第2反射膜に接続された第4引き出し電極が備えられ、第1反射膜と第2反射膜を利用して反射膜間の静電容量からギャップ寸法を検出可能である。そして、第4引き出し電極は正の熱膨張係数を有し、この第4引き出し電極に負の熱膨張係数を有する付加膜が積層されている。
このため、例えば波長可変干渉フィルターの使用温度が高い場合、第4引き出し電極に生ずる力と付加膜に生ずる力が打消しあうように働き、第2基板へかかる応力を少なくすることができる。
そして、温度変化に起因する第2基板のそりは抑制され、反射膜間のギャップ寸法を精度よく設定でき、測定する雰囲気の温度変化に伴う分光精度の低下を抑制できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第2基板の前記第1基板に対向する面とは反対の面に、前記第2基板のそりを規制する制御膜が形成されていることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、第2基板の第1基板に対向する面とは反対の面に、第2基板のそりを規制する制御膜が形成されている。
第2基板の第1基板と対向する面において、残留する応力をこの制御膜を設けることで相殺し、第2基板のそりを規制することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第2基板に、前記第2反射膜が設けられ前記第1反射膜と前記第2反射膜とのギャップの寸法を変位させる可動部、前記可動部に連結し前記可動部の厚みよりも厚みが薄く形成された薄肉部、が形成され、前記薄肉部に前記第2電極が配置されていることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、第2基板に、第1反射膜と第2反射膜とのギャップの寸法を変位させる可動部と、可動部に連結し可動部の厚みよりも厚みが薄く形成された薄肉部と、を有している。
このように、第2基板はダイヤフラム構造を有し、薄肉部が撓むことで、可動部が変位できるように構成され、反射膜間のギャップを変更することが容易である。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、前記第2基板に設けられた正の熱膨張係数を有する電極と、前記電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第2基板に形成された正の熱膨張係数を有する電極に、負の熱膨張係数を有する付加膜が積層されている。
例えば波長可変干渉フィルターの使用温度が高い場合、電極は正の熱膨張係数を有するため、延びる方向に力が生じる。これに対して、付加膜は負の熱膨張係数を有するため、縮まる方向に力が生じる。付加膜は電極に積層されているため、両者の力は打消し合うように働き、第2基板へかかる応力を少なくすることができる。
このため、温度変化に起因する第2基板のそりを抑制でき、測定する雰囲気の温度変化に伴う分光精度の低下を抑制できる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる光フィルターモジュールは、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に形成された第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向し正の熱膨張係数を有する第2電極と、前記第2電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、光を分光する雰囲気の温度変化に伴う第2基板のそりは抑制され、反射膜間のギャップ寸法を精度よく設定できるため、分光精度に優れた光フィルターモジュールを提供することができる。
【0020】
[適用例8]本適用例にかかる光分析装置は、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に形成された第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向し正の熱膨張係数を有する第2電極と、前記第2電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、を含むことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、光を分光する雰囲気の温度変化に伴う第2基板のそりは抑制され、反射膜間のギャップ寸法を精度よく設定できるため、分光精度に優れた光分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態にかかるエタロンの平面図。
【図3】第1実施形態にかかるエタロンの断面図。
【図4】第1実施形態にかかるエタロンの断面図。
【図5】第1実施形態にかかるエタロンの固定基板の構成を示す平面図。
【図6】第1実施形態にかかるエタロンの可動基板の構成を示す平面図。
【図7】第1実施形態にかかるエタロンの変形例の構成を示す断面図。
【図8】第1実施形態にかかるエタロンの変形例の構成を示す断面図。
【図9】第2実施形態における光分析装置としてのガス検出装置の構成を示す断面図。
【図10】第2実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図11】第3実施形態における光分析装置としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図12】第4実施形態における光分析装置としての分光カメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更し、概略の構成を示している。
(第1実施形態)
【0024】
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
<測色装置の概略構成>
図1は光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置1は、検査対象Aに光を照射する光源装置2と、測色センサー3(光フィルターモジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。
この測色装置1は、検査対象Aに光源装置2から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0025】
<光源装置の構成>
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置2を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0026】
<測色センサーの構成>
光フィルターモジュールとしての測色センサー3は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部32と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、を備える。
また、測色センサー3は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー3は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部31にて受光される。
受光部31は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は制御装置4に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0027】
(エタロンの構成)
図2は、エタロンの構成を示す平面図である。図3は、図2のA−A断線に沿う断面図であり、図4は図2のB−B断線に沿う断面図である。
【0028】
図2に示すように、エタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3、図4に示すように、固定基板(第1基板)51および可動基板(第2基板)52を備えている。
これらの固定基板51および可動基板52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、エタロン5は、固定基板51および可動基板52が接合部53にて接合されて一体に構成される。この接合部53において、固定基板51および可動基板52にプラズマ重合膜が形成されており、両者のプラズマ重合膜が結合することで固定される。なお、プラズマ重合膜は、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマ重合膜が採用されている。
【0029】
固定基板51と可動基板52との向かい合う面には、光の反射特性と透過特性とを有する第1反射膜54、および第2反射膜55が設けられる。ここで、第1反射膜54は、固定基板51の可動基板52に対向する面に形成され、第2反射膜55は、可動基板52の固定基板51に対向する面に形成されている。また、これらの第1反射膜54および第2反射膜55は、ギャップを介して対向配置されている。
【0030】
また、第1反射膜54および第2反射膜55は、両者間のギャップ寸法を検出する検出電極を兼ねており、第1反射膜54には第3引き出し電極71が接続され、第2反射膜55には第4引き出し電極72が接続されている(図5、図6参照)。この構造から、第1反射膜54と第2反射膜55との間の静電容量を検出することでギャップ寸法を検出できる。そして、可動基板52に形成された第4引き出し電極72の上には負の熱膨張係数を有する付加膜70が積層されている。
【0031】
さらに、固定基板51と可動基板52との間に、静電アクチュエーター56が設けられている。
静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた第1電極57と、可動基板52に設けられた第2電極58とから構成され、ギャップを挟んで対向配置される。そして、静電アクチュエーター56は第1反射膜54と第2反射膜55の間のギャップ寸法の調整を行う。
【0032】
ここで、第1電極57には、第1引き出し電極57aが接続され、第2電極58には、第2引き出し電極58aが接続されている(図5、図6参照)。そして、可動基板52に形成された第2電極58および第2引き出し電極58aの上には負の熱膨張係数を有する付加膜70が積層されている。
【0033】
なお、エタロン5は、第1電極57と第2電極58との距離が第1反射膜54と第2反射膜55との距離より大きく形成されている。例えば、第1電極57と第2電極58の間に電圧を印加しない初期状態において、第1電極57と第2電極58との距離が2μm、第1反射膜54と第2反射膜55との距離(ギャップ寸法)が0.5μmに設定されている。このため、第1電極57と第2電極58との間のギャップ寸法が微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象を抑制することができる構成となっている。
【0034】
次に、エタロン5の構成の理解のために固定基板51および可動基板52の構成について詳細に説明する。
(固定基板の構成)
図5は固定基板51の構成を示す平面図であり、可動基板52と対向する面を示している。以下、図3、図4も参照しながら固定基板51の説明をする。
固定基板51は、厚みが例えば500μmの石英ガラスなどの基材をエッチング加工して形成される。この固定基板51には、エッチングにより固定基板51の中央を中心とする円形の凹部が設けられ、電極形成部61および反射膜形成部62が形成される(図3、図4参照)。
反射膜形成部62は固定基板51の中央部に形成され、その周りに同心円状に電極形成部61が形成されている。電極形成部61は反射膜形成部62より深くエッチングされ、円柱状の反射膜形成部62が突出した形状となっている。
【0035】
また、電極形成部61の周縁から固定基板51の四隅の頂点C1,C2,C3,C4に向かって引き出し溝63a,63b,63c,63dが形成されている。この引き出し溝63a,63b,63c,63dは電極形成部61と同じ面となるようにエッチングして形成されている。
【0036】
第1反射膜54は、反射膜形成部62を覆い、電極形成部61にかけて形成される。この第1反射膜54はAg、Ag合金などの金属膜により約100nmの厚みで形成されている。なお、第1反射膜54はAgC合金や、TiO2などの誘電体膜の上にAgC合金やAg合金などを積層した構成でもよい。
【0037】
第1反射膜54には第3引き出し電極71が接続され、引き出し溝63bを通って固定基板51の頂点C2を含む部分に形成された電極パッド71Pに接続されている。第3引き出し電極71および電極パッド71Pは導電膜であり、例えばITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜が用いられる。また、他の導電膜として、Cr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0038】
そして、固定基板51には第1電極57が形成されている。第1電極57には、第1引き出し電極57aが接続されている。
第1電極57は電極形成部61に第1反射膜54を取り巻くように円環状に形成されている。そして、第1電極57は第1反射膜54から引き出される第3引き出し電極71と交差しないように一部を切り欠いた形状をしている。なお、ここでいう円環状とは、円環の一部が欠けた形状、円環の一部が切れた形状、または円環の一部が突出した形状、もしくはこれらを任意に組み合わせた形状も含む。
また、第1電極57に接続された第1引き出し電極57aは、引き出し溝63aを通って固定基板51の頂点C1を含む部分に形成された電極パッド57Pに接続されている。
【0039】
第1電極57、第1引き出し電極57aおよび電極パッド57Pは導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。なお、第1電極57の厚みは約50nmに形成される。
【0040】
また、固定基板51の頂点C3,C4を含む部分の引き出し溝63c,63dには電極パッド58P1,72P1が形成されている。この電極パッド58P1,72P1は後述する可動基板52に形成された電極との接続を果たし、さらに外部との接続を果たす。
電極パッド58P1,72P1は導電膜であり、例えばITO膜、Cr/Au膜などが用いられる。
【0041】
固定基板51において、電極形成部61、反射膜形成部62、引き出し溝63a,63b,63c,63dを除いた平面の部分が可動基板52と接合する接合部53である。
この接合部53には、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた接合膜(図示せず)が設けられている。接合膜としてはCVD(Chemical Vapor Deposition)などにより成膜されたプラズマ重合膜が採用される。
【0042】
(可動基板の構成)
図6は可動基板の構成を示す平面図であり、固定基板と対向する面を示している。
可動基板52は、正方形状の板状基材の四隅に切り欠き部75を有し、例えば、厚みが200μmの石英ガラス基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
この可動基板52には、基板中央を中心とする円柱状の可動部65と、その周りに可動部65を保持する薄肉部66と、が形成されている。
薄肉部66は、固定基板51と対向する面とは反対の面に円環状の溝が形成され、可動部65の厚みより薄くなるように形成されている(図3、図4参照)。
このように、可動基板52はダイヤフラム構造を持ち、可動部65が可動基板52の厚み方向に移動しやすいように構成されている。なお、本実施形態ではダイヤフラム構造を有する例を示したが、薄肉部を梁形状として実施することも可能である。
そして、可動基板52の固定基板51に対向する面は基材の平面を利用し、エッチング加工された面を有していない。
【0043】
可動部65の固定基板51と対向する面には、第1反射膜54と対向する第2反射膜55が設けられている。
第2反射膜55の材料として第1反射膜54と同様に、AgまたはAg合金が用いられるが、AgC合金やTiO2などの誘電体膜の上にAgC合金やAg合金などを積層した構成でもよい。なお、第2反射膜55は約100nmの厚みに形成されている。
【0044】
第2反射膜55には第4引き出し電極72が接続され、可動基板52の仮想頂点C4に向かって引き出されている。そして、第4引き出し電極72の先端部には電極パッド72P2が形成されている。
第4引き出し電極72および電極パッド72P2は導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、他の導電膜として、Cr/Au膜、Ag膜、Ag合金膜、Al膜などの金属膜を用いても良い。そして、これらの導電膜は正の熱膨張係数を有している。
ここで、正の熱膨張係数を有する導電膜とは、温度の上昇によって長さ、体積が膨張する導電膜のことを言う。
【0045】
さらに、第4引き出し電極72の上には付加膜70が積層されている。この付加膜70は負の熱膨張係数を有する膜で構成されている。
例えば、付加膜70の材料として逆ペロフスカイト型マンガン窒化物Mn3XN(X:Zn,Gaなど)、タングステン酸ハフニウムHfW28、タングステン酸ジルコニウムZrW28、などが用いられる。
ここで、負の熱膨張係数を有する膜とは、温度の上昇によって長さ、体積が収縮する膜のことを言う。
【0046】
そして、可動部65には第2反射膜55を取りまくように、円環状に第2電極58が形成されている。そして、第2電極58は第2反射膜55から引き出される第4引き出し電極72と交差しないように一部を切り欠いた形状をしている。
なお、ここでいう円環状とは、円環の一部が欠けた形状、円環の一部が切れた形状、または円環の一部が突出した形状、もしくはこれらを任意に組み合わせた形状も含む。
第2電極58には第2引き出し電極58aが接続されている。この第2引き出し電極58aは、可動基板52の仮想頂点C3に向かって引き出されている。そして、第2引き出し電極58aの先端部には電極パッド58P2が形成されている。
【0047】
第2電極58および第2引き出し電極58aは導電膜であり、第1電極57と同様に、例えばITO膜が用いられる。また、Cr/Au膜、Ag膜、Ag合金膜、Al膜などの金属膜を用いても良い。そして、これらの導電膜は正の熱膨張係数を有している。
そして、第2電極58および第2引き出し電極58aの上には付加膜70が積層されている。この付加膜70は負の熱膨張係数を有する膜で構成されている。
例えば、付加膜70の材料として逆ペロフスカイト型マンガン窒化物Mn3XN(X:Zn,Gaなど)、タングステン酸ハフニウムHfW28、タングステン酸ジルコニウムZrW28、などが用いられる。
【0048】
なお、第2電極58、第2引き出し電極58a、第4引き出し電極72の上に付加膜70を設けたが、逆に付加膜70の上に各電極を積層した構成であってもよい。
さらに、本実施形態では1層の正の熱膨張係数を有する膜と、1層の負の熱膨張係数を有する膜とを設けたが、これらの膜を交互に積層して構成してもよい。
【0049】
また、可動基板52の仮想頂点C3,C4は、貼り合わせる固定基板51の頂点C3,C4と対応する。
そして、固定基板51の電極パッド58P1と可動基板52の電極パッド58P2との間、および固定基板51の電極パッド72P1と可動基板52の電極パッド72P2との間にAgペーストなどの導電性部材を配置することで、固定基板51と可動基板52との電気的接続が可能である。
【0050】
また、固定基板51における接合部53と対向する部分が、可動基板52の接合部53となる。
この接合部53には、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた接合膜が設けられている。接合膜はCVDなどにより成膜されたプラズマ重合膜が採用される。
【0051】
(固定基板と可動基板との接合)
上記で説明した固定基板51と可動基板52の接合は、接合部53に形成された接合膜にO2プラズマまたはUV処理、N2プラズマ活性処理などを行い、その後、固定基板51と可動基板52とのアライメントを行い、重ね合わせて荷重をかけることにより行われる。
【0052】
(エタロンの動作)
上記のエタロン5では、対向する第1反射膜54と第2反射膜55のギャップ寸法を変えるために、静電アクチュエーター56を駆動させると、静電力により第1電極57と第2電極58とが引き合い、可動基板52の薄肉部66が撓んで、可動部65が固定基板51に近づくように変位する。可動部65には第2反射膜55が設けられ、第1反射膜54と第2反射膜55との間のギャップを調整することができる。
また、例えばエタロン5の使用温度が高くなった場合、可動基板52の第2電極58は正の熱膨張係数を有するため、延びる方向に力が生じる。これに対して、付加膜70は負の熱膨張係数を有するため、縮まる方向に力が生じる。付加膜70は第2電極58に積層されているため、両者の力は打消し合うように働き、可動基板52へかかる応力を少なくすることができる。このため、温度変化に起因する可動基板52のそりは抑制される。
【0053】
<制御装置の構成>
図1に戻り、制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0054】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
【0055】
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5の反射膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光部31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0056】
(第1実施形態の作用効果)
以上、本実施形態によれば以下の効果を有する。
本実施形態にかかるエタロン(波長可変干渉フィルター)5は、可動基板52に形成された正の熱膨張係数を有する第2電極58、第2引き出し電極58a、第4引き出し電極72に、負の熱膨張係数を有する付加膜70が積層されている。
このため、例えばエタロン5の使用温度が高くなった場合、第2電極58、第2引き出し電極58a、第4引き出し電極72は正の熱膨張係数を有するため、延びる方向に力が生じる。これに対して、付加膜70は負の熱膨張係数を有するため、縮まる方向に力が生じる。付加膜70は各電極に積層されているため、両者の力は打消し合うように働き、可動基板52へかかる応力を少なくすることができる。
よって、本実施形態にかかるエタロン5は、温度変化に起因する可動基板52のそりが抑制され、反射膜間のギャップ寸法を精度よく設定でき、測定する雰囲気の温度変化に伴う分光精度の低下を抑制できる。
【0057】
また、エタロン5は可動基板52に、第1反射膜54と第2反射膜55とのギャップの寸法を変位させる可動部65と、可動部65に連結し可動部65の厚みよりも厚みが薄く形成された薄肉部66と、を有している。
このように、可動基板52はダイヤフラム構造を有し、薄肉部66が撓むことで、可動部65が変位できるように構成され、反射膜間のギャップを変更することが容易にできる。
【0058】
本実施形態にかかる光フィルターモジュールとしての測色センサー3および光分析装置としての測色装置1は、光を分光する雰囲気の温度変化に伴う可動基板52のそりが抑制されており、反射膜間のギャップ寸法を精度よく設定できるため、光の分光精度に優れた測色センサー3および測色装置1を提供することができる。
【0059】
(第1実施形態にかかるエタロンの変形例)
次に、第1実施形態で説明したエタロンの変形例について説明する。図7は第1実施形態におけるエタロンの変形例を示す断面図である。
本変形例では可動基板のそりを制御する制御膜が設けられている点が、第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と同じ構成については同符号を付し説明を省略する。
【0060】
エタロン6は、固定基板51と可動基板52とが接合されて構成されている。
可動基板52の固定基板51と対向する面とは反対の面に制御膜80が形成されている。制御膜80は可動基板52の可動部65に設けられ、可動基板52のそりが少なくなるように規制している。制御膜80としてはSiO2膜などの絶縁膜や金属膜など、可動基板52に応力を与える膜であれば、どのような膜であってもよい。
また、制御膜80の形状や膜厚は可動基板52のそりを抑制できれば、どのような形状や膜厚であってもよい。
このように、可動基板52の固定基板51と対向する面において残留する応力を、この制御膜80を設けることで相殺し、初期状態における可動基板52のそりを規制することができる。
【0061】
図8はエタロンの他の変形例を示す断面図である。
本変形例では、可動基板に設けられる第2電極が薄肉部に設けられている点が、第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と同じ構成については同符号を付し説明を省略する。
図8(a)に示すように、エタロン7は、可動基板52の薄肉部66に第2電極58が設けられている。そして、付加膜70が第2電極58に積層されている。
この薄肉部66は他の部分に比べて厚みが薄い部分であり、第2電極58が配置されることで温度変化による影響を受けやすいが、付加膜70が積層されることで両者の力が相殺されるため薄肉部66にかかる力は小さくなる。このため、可動基板52にそりを生ずることなく、薄肉部66に第2電極58を配置することが可能である。
そして、薄肉部66に第2電極58を配置することで可動部65を小さく形成できるため、エタロン7の小型化を図ることができる。
【0062】
また、図8(b)に示すように、前述のエタロン7の構造に加えて、可動基板52の固定基板51と対向する面とは反対の面に制御膜80を設けてもよい。
このエタロン8では、制御膜80は可動基板52の可動部65および薄肉部66に設けられ、可動基板52のそりが少なくなるように規制している。
制御膜80としてはSiO2膜などの絶縁膜、金属膜など可動基板52に応力を与える膜であれば、どのような膜であってもよい。
また、制御膜80の形状や膜厚は可動基板52のそりを抑制できれば、どのような形状や膜厚であってもよい。
このように、可動基板52の固定基板51と対向する面において残留する応力を、この制御膜80を設けることで相殺し、初期状態における可動基板52のそりを規制することができる。
なお、図7、図8では図示しなかったが、第2電極58だけでなく、第1実施形態で説明した第2引き出し電極58a、第4引き出し電極72にも付加膜70が形成されている。
【0063】
以上、第1実施形態では、光分析装置として測色装置1を例示したが、その他、様々な分野に波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、エタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響微量ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
(第2実施形態)
【0064】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0065】
図9は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図10は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図9に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光フィルターモジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0066】
また、図10に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0067】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0068】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0069】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0070】
なお、図9,10において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光フィルターモジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明の波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0071】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
(第3実施形態)
【0072】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0073】
図11は、エタロン5を利用した光分析装置の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光フィルターモジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさの制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0074】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0075】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0076】
また、図11において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0077】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光フィルターモジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光フィルターモジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
(第4実施形態)
【0078】
また、他の光分析装置として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図12は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、図12に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0079】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0080】
さらには、光フィルターモジュールおよび光分析装置を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0081】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光フィルターモジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用として好適に用いることができる。
【0082】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…測色装置、2…光源装置、3…測色センサー、4…制御装置、5,6,7,8…エタロン、21…光源、22…レンズ、31…受光部、32…電圧制御部、41…光源制御部、42…測色センサー制御部、43…測色処理部、51…第1基板としての固定基板、52…第2基板としての可動基板、53…接合部、54…第1反射膜、55…第2反射膜、56…静電アクチュエーター、57…第1電極、57a…第1引き出し電極、57P…電極パッド、58…第2電極、58a…第2引き出し電極、58P1,58P2…電極パッド、61…電極形成部、62…反射膜形成部、63a,63b,63c,63d…引き出し溝、65…可動部、66…薄肉部、70…付加膜、71…第3引き出し電極、71P…電極パッド、72…第4引き出し電極、72P1,72P2…電極パッド、75…切り欠き部、80…制御膜、100…ガス検出装置、200…食物分析装置、300…分光カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に形成された第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向し正の熱膨張係数を有する第2電極と、
前記第2電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、
を備えたことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1電極に接続された第1引き出し電極と、
前記第2電極に接続された正の熱膨張係数を有する第2引き出し電極と、
が備えられ、
前記第2引き出し電極に負の熱膨張係数を有する前記付加膜が積層されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1反射膜に接続された第3引き出し電極と、
前記第2反射膜に接続された正の熱膨張係数を有する第4引き出し電極と、
が備えられ、
前記第4引き出し電極に負の熱膨張係数を有する前記付加膜が積層されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面とは反対の面に、前記第2基板のそりを規制する制御膜が形成されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2基板に、前記第2反射膜が設けられ前記第1反射膜と前記第2反射膜とのギャップの寸法を変位させる可動部、前記可動部に連結し前記可動部の厚みよりも厚みが薄く形成された薄肉部、が形成され、
前記薄肉部に前記第2電極が配置されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項6】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、
前記第2基板に設けられた正の熱膨張係数を有する電極と、
前記電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、
を備えたことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項7】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に形成された第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向し正の熱膨張係数を有する第2電極と、
前記第2電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
を含むことを特徴とする光フィルターモジュール。
【請求項8】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に形成された第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向し正の熱膨張係数を有する第2電極と、
前記第2電極に積層され、負の熱膨張係数を有する付加膜と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、
を含むことを特徴とする光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−29641(P2013−29641A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165135(P2011−165135)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】