説明

波長変換フィルム、これを用いた太陽電池モジュール及びこれらの製造方法

【課題】スペクトルミスマッチによる太陽光損失を低減し、さらに高い可視光透過率を有する構成とすることにより、光利用効率を高め、発電効率を向上させることのできる波長変換フィルム、これを用いた太陽電池モジュール、及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光物質を含む波長変換フィルムにおいて、前記蛍光物質を、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子よりも低い屈折率を有する物質で前記蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質体とし、さらに前記物質を、下記式(1)に表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル法により形成されるシリカ系材料とする。


(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用の波長変換フィルム及びこれを用いた太陽電池モジュール、並びにこれらの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、発電に寄与しない波長域の光を、発電に寄与する波長域の光に波長変換することにより発電効率を高くしうる太陽電池モジュール、それに用いる波長変換フィルム、及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン結晶系の太陽電池モジュールの概略図(断面図)を図6に示す。表面の保護ガラス(カバーガラスともいう)201は、耐衝撃性を重んじて強化ガラスが用いられており、封止材202(通常、エチレンビニルアセテートコポリマーを主成分とする樹脂、充填材ともいう)との密着性をよくするために、片面はエンボス加工による凹凸模様が施されている。
【0003】
また、その凹凸模様は内側(すなわち、図6では保護ガラス201の下面)に形成されており、太陽電池モジュールの表面は平滑である。また保護ガラス201の下側には太陽電池セル100及びタブ線203を保護封止するための封止材202及びバックフィルム204が設けられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
なお、斜めを含むあらゆる角度からの外部光を、反射損失を少なくして効率よく取り入れる手法の一つに、moth−eye(昆虫の目)構造があることは古くから知られている。これは微細な円錐や三角錐、四角錐等の透明形状物を、フィルムの表面に百nmスケールで規則的に配列する構造を形成することで、反射損失を少なくし効率よく外部光を取り入れる技術である(例えば、非特許文献2参照)。
これを改良して太陽電池モジュールに応用したものが特許文献1に示されている。
【0005】
蛍光物質(発光材料ともいう)を用い、太陽光スペクトルのうち、発電に寄与しない紫外域又は赤外域の光を波長変換することにより、発電に寄与しうる波長域の光を発光する層を太陽電池受光面側に設ける手法は、多数提案されている(例えば、特許文献2〜14参照)。
【0006】
また、蛍光物質である希土類錯体を、封止材中に含有させる方法の提案がされている(例えば、特許文献15参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−101513号公報
【特許文献2】特開2000−328053号公報
【特許文献3】特開平09−230396号公報
【特許文献4】特開2003−243682号公報
【特許文献5】特開2003−218379号公報
【特許文献6】特開平11−345993号公報
【特許文献7】特開2006−024716号公報
【特許文献8】特公平08−004147号公報
【特許文献9】特開2001−094128号公報
【特許文献10】特開2001−352091号公報
【特許文献11】特開平10−261811号公報
【特許文献12】特許第2660705号公報
【特許文献13】特開2006−269373号公報
【特許文献14】特開昭63−006881号公報
【特許文献15】特開2006−303033号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】濱川圭弘編「太陽光発電」―最新の技術とシステム―、2000年、株式会社シーエムシー
【非特許文献2】豊田宏;”無反射周期構造”、光学、32巻8号489ページ(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2〜14にある、発電に寄与しない光を発電に寄与しうる波長域の光に波長変換する提案で、波長変換フィルムには蛍光物質が含有されているが、この蛍光物質は一般的に形状が大きく、入射した太陽光が波長変換フィルムを通過する際に、散乱して太陽電池セルに十分届かず、発電に寄与しない割合が増加する。その結果、波長変換フィルムで紫外域の光を可視域の光に変換しても、入射した太陽光に対する発電される電力の割合(発電効率)があまり高くならないという課題がある。
また、特許文献15に記載の方法では、希土類錯体、封止材であるエチレンビニルアセテート(EVA)と共に加水分解しやすく、たちまち劣化してしまうばかりでなく、波長変換された光を太陽電池セルへ導入することは、困難である。
【0010】
本発明は、上記のような問題を改善しようとするもので、太陽電池モジュールにおける光利用効率を向上させ、発電効率を安定的に向上させることを目的とする。たとえば、シリコン結晶系太陽電池では、太陽光のうち、400nmよりも短波長、1200nmよりも長波長の光が有効に利用されず、太陽光エネルギーのうち約56%が、このスペクトルミスマッチにより太陽光発電に寄与しない。本発明は、耐湿性、耐熱性に優れ、分散性が良く、濃度消光を抑制した特定の形状の蛍光物質を用い、波長変換し、効率よく且つ安定的に太陽光を利用することにより、スペクトルミスマッチを克服しようというものである。
【0011】
即ち、本発明の波長変換フィルムは、耐湿性及び耐熱性に優れ、分散性が良く且つ濃度消光が起こらない蛍光物質を含有することを目的とする。また、本発明の波長変換フィルムは、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与しない光を発電に寄与する波長へ変換するのと同時に、その光を散乱なしに、太陽電池セルへ効率よく導入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子よりも低い屈折率を有する特定の物質で前記蛍光物質の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質体を波長変換フィルムに用いることにより、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与しない光を発電に寄与する波長へ変換するのと同時に、耐湿性及び耐熱性に優れ、分散性が良く且つ入射した太陽光を蛍光物質が散乱させることなく、太陽電池セルへ効率よく導入できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
(1)複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられる、蛍光物質を含む波長変換フィルムにおいて、
前記蛍光物質は、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子よりも低い屈折率を有する物質で前記蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質体であって、
前記物質は、下記式(1)に表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル法により形成されるシリカ系材料であることを特徴とする波長変換フィルム。
【0014】
【化1】

(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
(2)前記被覆蛍光物質体が、分散媒樹脂中に、0.01〜10質量パーセントで分散又は混合されることを特徴とする上記(1)に記載の波長変換フィルム。
【0016】
(3)前記波長変換フィルムが、前記太陽電池セルの受光面上に配置され、且つ前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の波長変換フィルム。
【0017】
(4)前記蛍光物質が、ユーロピウム錯体であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の波長変換フィルム。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の波長変換フィルムを有する太陽電池モジュール。
【0018】
(6)蛍光物質粒子を、下記式(1)に表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル反応によりシリカ系材料で被覆し、被覆層を有する被覆蛍光物質体を得る蛍光物質粒子被覆工程と、
前記被覆蛍光物質体を分散媒樹脂に混合又は分散させて樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物を用い、波長変換フィルムを形成するフィルム形成工程と、を有する、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の波長変換フィルムの製造方法。
【0019】
【化2】

(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【0020】
(7)複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの製造方法において、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の波長変換フィルムを積層して、前記光透過性層の一つを構成する工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、太陽電池モジュールに適用したときに、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与しない光を発電に寄与する波長へ変換するのと同時に、太陽光を散乱なしに、効率よく且つ安定的に太陽光を利用できる波長変換フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の波長変換フィルム(微細凹凸形状付き)をモジュールに組み込んだ場合の概略図である。
【図2】本発明の波長変換フィルム(微細凹凸形状なし、基材フィルム付き)をモジュールに組み込んだ場合の概略図である。
【図3】本発明の波長変換フィルム(微細凹凸形状なし、基材フィルム付き)と高屈折材料を合わせ、モジュールに組み込んだ場合の概略図である。
【図4】本発明の波長変換フィルム(微細凹凸形状なし、基材フィルム付き)の概略図である。
【図5】波長変換フィルムに微細凹凸形状を形成させる工程を説明するための概略図である。
【図6】従来型の太陽電池モジュールの構造図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<波長変換フィルム及びその製造方法>
本発明の波長変換フィルムは、複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられ、蛍光物質を含み、前記蛍光物質は、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子よりも低い屈折率を有する物質(以下、「低屈折率被覆材料」ともいう)で前記蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質体であって、前記物質は、下記式(1)に表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル法により形成されるシリカ系材料であることを特徴とする。
【0024】
【化3】

(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【0025】
蛍光物質粒子を特定の低屈折率被覆材料で被覆することにより、蛍光物質粒子の耐湿性及び耐熱性が向上し、分散性が良く且つ濃度消光を抑制するだけでなく、被覆蛍光物質体の屈折率を小さくすることができ、それにより太陽光の散乱損失を小さくすることができる。
上記式(1)で表されるシリコンアルコキシドを被覆層の材料に用いることにより、蛍光物質粒子被覆工程において、被覆蛍光物質体を単離する必要がなく、そのまま溶液の状態で波長変換フィルムの製造に使用することができる。
【0026】
なお、本発明の波長変換フィルムは、前記被覆蛍光物質体が、不揮発分総量(具体的には、分散媒樹脂及び被覆蛍光物質体等を含む樹脂組成物)中に、蛍光物質の質量濃度で、0.01〜10質量パーセントで分散又は混合されることが好ましい。
前記被覆蛍光物質体の含有量が0.01質量パーセント以上であると、発光効率が満足できるものとなり、また、10質量パーセント以下であると、濃度消光により発光効率が低下することもなく、入射光の散乱により発電効果に悪影響を及ぼしにくい。
【0027】
本発明の波長変換フィルムは、被覆蛍光物質体のみから構成することも可能であるが、上述のように被覆蛍光物質体と分散媒樹脂からなる構成が好ましい。分散媒樹脂として用いられる樹脂は、一般的に、蛍光物質粒子よりも屈折率が低い。一方で、光散乱を小さくするためには、分散媒樹脂と蛍光物質粒子の屈折率の差が小さい方がよい。
蛍光物質粒子の屈折率は材料固有の値であり、高い発光効率と低い屈折率を両立させることは困難である。そこで、蛍光物質粒子の周囲を該蛍光物質粒子よりも低い屈折率を有する特定の物質(低屈折率被覆材料)の層で被覆することで、レイリー散乱による太陽光の散乱損失を低減させることが出来る。低屈折率被覆材料は、蛍光物質粒子よりも低い屈折率であり、且つ分散媒樹脂の屈折率との差が小さい方ものがより好ましい。
なお、一般的に蛍光物質粒子の屈折率は1.5よりも高い。従って、低屈折率被覆材料としては、屈折率1.4〜1.5の材料を用いればよい。そうすることにより、被覆蛍光物質体の屈折率も1.4〜1.5となる。このような低屈折率被覆材料として、ゾルゲル法で形成できるシリコンアルコキシドの一部に下記一般式(1)で示されるアルコキシドを用いる。
【0028】
【化4】

(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【0029】
ここで、被覆蛍光物質体のレイリー散乱(光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱)における、被覆蛍光物質体の粒子径と、被覆層の屈折率との関係を下記式に示す。
【0030】
【数1】

【0031】
上記式からわかるように、低屈折率被覆材料の屈折率を低くすることにより、散乱を小さくできる。
また、被覆蛍光物質体の粒子径を小さくすることで散乱による太陽光の損失はより小さくできることも上記式よりわかる。
【0032】
光の散乱は、フィルム中の被覆蛍光物質体、つまり被覆層と分散媒樹脂との屈折率の差、及び被覆蛍光物質体の粒子径の大きさとそれぞれ相関する。具体的には、光の散乱は、被覆層の屈折率と分散媒樹脂との屈折率との差が小さければ、被覆蛍光物質体の粒子径の影響をさほど受けず、光の散乱も小さいものとなる。しかし、被覆層の屈折率と分散媒樹脂との屈折率との差が大きくなると、光の散乱は、被覆蛍光物質体の粒子径の大きさに影響を受けることとなるため、なるべく小さい粒子径であることが好ましい。
本発明の被覆蛍光物質体は、蛍光物質粒子と同様に小さい粒子径であることから、被覆蛍光物質体と分散媒樹脂と屈折率の差は、光損失の点からそれほど問題にならない。
【0033】
また、本発明の波長変換フィルムに用いる低屈折率被覆材料で被覆された被覆蛍光物質体の粒子(一次粒子径)の大きさは、レイリー散乱による散乱損失を十分に小さくするために光の波長の1/3よりも小さいことが望ましい。つまり、紫外域の光はおよそ400nmであるので、被覆蛍光物質体の一次粒子径の大きさとしては100nm以下であることが要求される。
【0034】
本発明は、波長変換フィルムに用いる、低屈折率被覆材料として、上記式(1)で表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル法で、蛍光物質粒子表面に成膜したシリカ系材料であることが望ましい。上記式(1)で表されるシリコンアルコキシドを用いることで、低温且つ簡単なプロセスで被覆蛍光物質体の形成が可能であるので、低コストで波長変換フィルムを製造することが可能になる。具体的には、上記式(1)で表されるシリコンアルコキシドを用いて、ゾルゲル法により蛍光物質粒子に被覆層を形成することで、被覆蛍光物質体を粒子の状態で取り出す必要なく、溶液の状態で波長変換フィルムに用いることができる。
【0035】
上記式(1)で表されるシリカ系材料は、屈折率が蛍光物質粒子よりも低く、これを低屈折率被覆材料として蛍光物質粒子を被覆した場合、得られる被覆蛍光物質体の粒子径は小さいため、被覆層と分散媒樹脂との屈折率との差の影響は小さいものとなり、これを用いて作製した波長変換フィルムは光の散乱損失を低減できる。蛍光物質は一般的に酸素や水分によって劣化してしまい、波長変換効率が時間と共に劣化してしまうという問題がある。そのため、低屈折率被覆材料としてシリカ系材料で蛍光物質粒子の周囲を覆うことで、シリカ系材料が酸素や水分を遮断して、蛍光物質の波長変換効率が劣化するのを防ぐという効果も得られる。
【0036】
蛍光物質粒子を、上記式(1)で表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル法によりシリカ系材料で被覆する方法は、公知の方法で行えばよく、特に制限はないが、蛍光物質粒子を、溶媒中、シリコンアルコキシドと処理して、加熱処理することにより、行うことができる。
【0037】
ゾルゲル法に用いられる、下記式(1)で表されるシリコンアルコキシドとしては、トリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0038】
【化5】

(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【0039】
炭素数1〜20の有機基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。また、アルキル基の水素がフッ素、Si原子を含む基等で置換されていてもよい。
また、加水分解性基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。
【0040】
トリアルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
ジオルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
また、上記一般式(1)において、Rが炭素数1〜20の有機基である化合物で、上記以外の化合物としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン等のビスシリルアルカン、ビスシリルベンゼン等が挙げられる。
【0043】
また、上記一般式(1)において、RがSi原子を含む基である化合物としては、例えば、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサ−n−プロポキシジシラン、ヘキサ−iso−プロポキシジシラン等のヘキサアルコキシジシラン類、1,2−ジメチルテトラメトキシジシラン、1,2−ジメチルテトラエトキシジシラン、1,2−ジメチルテトラプロポキシジシラン等のジアルキルテトラアルコキシジシラン類等が挙げられる。
なお、下記式(1)で表されるシリコンアルコキシド以外に、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシドを併用してもよい。
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0044】
蛍光物質粒子を、上記一般式(1)で表されるシリカアルコキシドを用いてゾルゲル法によりシリカ系材料で被覆する方法は、特に制限はないが、蛍光物質粒子を適当な溶媒に溶解し、別途、上記一般式(1)で表されるシリコンアルコキシド、アルコール溶媒、水、触媒等を用いて、攪拌して、被覆蛍光物質体溶液を作製する方法が挙げられる。
【0045】
ゾルゲル法に用いられる溶媒としては、水と有機溶媒の混合溶液が用いられる。有機溶媒としては、2,5−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール及びエタノール等のアルコール類、クロロホルム、トルエン等が挙げられる。
なお、蛍光物質粒子の周囲に被覆層が形成されたことの確認は、例えば、得られた被覆蛍光物質体を単離すること無しにフィルム化してから、85℃、85%RHの条件で高温高湿耐性を測定し、被覆層形成前の蛍光物質粒子の高温高湿耐性の向上の有無によって判断する。
【0046】
ゾルゲル法に用いられるシリコンアルコキシド成分を溶解可能である溶媒(反応溶媒)としては、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0047】
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;
ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ジ−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒;
エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;
アセトニトリル、N―メチルピロリジノン、N―エチルピロリジノン、N―プロピルピロリジノン、N―ブチルピロリジノン、N―ヘキシルピロリジノン、N―シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドが挙げられ、これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0048】
プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶媒;
エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のエステル系溶媒;等が挙げられ、保管安定性の観点から、アルコール系溶媒が好ましい。これらの中でも塗布ムラやはじきを抑える観点から、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールプロピルエーテル等が好ましい。
これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0049】
また、ゾルゲル反応では、適宜触媒が使用される。これらの中でも、得られるシリカ系材料の機械的強度を向上でき、更に、組成物の安定性を高めることができるという観点からオニウム塩が好ましく、4級アンモニウム塩であることがより好ましい。
【0050】
オニウム塩化合物の一つとして、例えば、窒素含有化合物と、アニオン性基含有化合物及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種と、から形成される塩が挙げられる。上記窒素含有化合物の窒素上に結合する原子は、H原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子、及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、上記アニオン性基としては、例えば、水酸基、硝酸基、硫酸基、カルボニル基、カルボキシル基、カーボネート基、フェノキシ基等が挙げられる。
【0051】
これらオニウム塩化合物としては、例えば、アンモニウムハイドロオキシド、アンモニウムフルオライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、ヨウ化アンモニウム、燐酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、蟻酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アンモニウム塩、フタル酸アンモニウム塩、マロン酸アンモニウム塩、コハク酸アンモニウム塩、酒石酸アンモニウム塩、リンゴ酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、酢酸アンモニウム塩、プロピオン酸アンモニウム塩、ブタン酸アンモニウム塩、ペンタン酸アンモニウム塩、ヘキサン酸アンモニウム塩、ヘプタン酸アンモニウム塩、オクタン酸アンモニウム塩、ノナン酸アンモニウム塩、デカン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、アジピン酸アンモニウム塩、セバシン酸アンモニウム塩、酪酸アンモニウム塩、オレイン酸アンモニウム塩、ステアリン酸アンモニウム塩、リノール酸アンモニウム塩、リノレイン酸アンモニウム塩、サリチル酸アンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、安息香酸アンモニウム塩、p−アミノ安息香酸アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸アンモニウム塩、メタンスルホン酸アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルフォン酸アンモニウム塩、トリフルオロエタンスルフォン酸アンモニウム塩等のアンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0052】
また、上記アンモニウム塩化合物のアンモニウム部位がメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等に置換されたアンモニウム塩化合物等も挙げられる。
【0053】
これらのオニウム塩化合物では、シリカ系材料の硬化促進の観点から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等のアンモニウム塩が好ましい。
これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0054】
なお、蛍光物質としては、ユーロピウム錯体が好ましい。具体的には、中心元素のユーロピウム(Eu)の他、配位子となる分子が必要であるが、本発明では、配位子を制限するものではなく、ユーロピウムと錯体を形成する分子であれば、何でもよい。
このようなユーロピウム錯体からなる蛍光物質の一例としては、N.Kamata, D.Terunuma, R.Ishii, H.Satoh, S.Aihara, Y.Yaoita, S.Tonsyo, J. Organometallic Chem.,685,235,2003.に挙げられているEu(TTA)phen等が利用できる。Eu(TTA)Phenの製造法は、例えば、Masaya Mitsuishi, Shinji Kikuchi, Tokuji Miyashita, Yutaka Amano, J.Mater.Chem.2003, 13, 285−2879に開示されている方法を参照できる。
【0055】
蛍光物質は一般的に酸素や水分によって劣化してしまい、波長変換効率が時間と共に劣化してしまうという問題がある。そのため、低屈折被覆材料としてシリカ系材料で蛍光物質粒子の周囲を覆うことで、シリカ系材料が酸素や水分を遮断して、蛍光物質の波長変換効率が劣化するのを防ぐという効果が得られる。
また、上記一般式(1)で示されるシリコンアルコキシドを用いてゾルゲル法で形成されるシリカ系材料からなる被覆層を有する被覆蛍光物質体は、凝集しやすい蛍光物質粒子の粒子径よりも見かけ上、小さいため、被覆層と分散媒樹脂との屈折率の差を考慮しなくともよい。
さらに、加水分解基とアルキル基とを有する上記一般式(1)で表されるシリコンアルコキシドは、シリコンアルコキシドを溶液のまま、波長変換フィルムへ使用することができることから、波長変換フィルムの製造が簡易である。
【0056】
本発明における被覆蛍光物質体は、シリコンアルコキシドの成分、調整方法によって、固体粒子状、液状、フィルム状等、その態様を所望の形態に制御しうる。
【0057】
なお、蛍光物質にユーロピウム錯体を用いることで、高い発電効率を有する太陽電池モジュールを実現できる。ユーロピウム錯体は、紫外線域の光を高い波長変換効率で赤色の波長域の光に変換し、この変換された光が太陽電池セルで発電に寄与する。
【0058】
本発明の波長変換フィルムは、後述するように、上記被覆蛍光物質体と分散媒樹脂とを混合して樹脂組成物を作製し、フィルム状にすることにより作製される。本発明の波長変換フィルムは、微細な凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐等を有する形状を受光面側に形成してもよい。
微細な凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐等を有さなくとも、よく、この場合は製造工程が簡易となる。
【0059】
波長変換フィルムの分散媒樹脂は、少なくともその入射側の層よりも同程度かあるいは高屈折であることが必要である。
詳細には、前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことが好ましい。
また、シリカ系材料は、通常1.4〜1.5の屈折率である。このため、そこに用いられる分散媒樹脂としては、同程度の屈折率であれば、散乱は起こらないため、そのような屈折率が望まれる。さらに、太陽電池セルへ光をより多く導入するためには、入射側から太陽電池セルへ向かって順に屈折率が高くなっていく必要がある。本発明は、このことを実現するために、たとえば、図3のように、波長変換フィルムと太陽電池セルの間に、波長変換フィルムよりも屈折率の高い高屈折層を設けることも含んでいる。
【0060】
本発明において、太陽電池モジュールは、反射防止膜、保護ガラス、封止材、波長変換フィルム、太陽電池セル、バックフィルム、セル電極、タブ線等、また、必要に応じて該波長変換フィルムの凹又は凸部形成の鋳型となる型フィルムの中の必要部材から構成される。これらの部材の中で、光透過性を有する光透過性層としては、反射防止膜、保護ガラス、封止材、本発明の波長変換フィルム、型フィルム、高屈折層、太陽電池のSiNx:H層及びSi層等が挙げられる。
【0061】
本発明において、上記で挙げられる光透過性層の積層順は、通常、太陽電池モジュールの受光面から順に、必要により形成される反射防止膜、保護ガラス、封止材、必要により形成される型フィルム、本発明の波長変換フィルム、高屈折層、太陽電池セルのSiNx:H層、Si層となる。
即ち、本発明の波長変換フィルムにおいて、あらゆる角度から入り込む外部光が反射損失少なく、効率よく太陽電池セル内に導入するために、波長変換フィルムの屈折率が、該波長変換フィルムより光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜、保護ガラス、封止材、型フィルム等の屈折率より高く、且つ該波長変換フィルムの反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、高屈折率層、太陽電池セルのSiNx:H層(「セル反射防止膜」ともいう)及びSi層等の屈折率よりも低くすることが好ましい。
【0062】
具体的には、波長変換フィルムより光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜の屈折率は、1.25〜1.45、保護ガラス、封止材、型フィルム等の屈折率は、通常1.45〜1.55程度のものが用いられる。該波長変換フィルムの反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、高屈折層、太陽電池セルのSiNx:H層(セル反射防止膜)の屈折率は、通常1.9〜2.1程度及びSi層等の屈折率は、通常3.3〜3.4程度のものが用いられる。以上のことより、本発明の波長変換フィルムの屈折率を1.5〜2.1とし、好ましくは1.5〜2.1とする。
【0063】
なお、光透過性層のその他の層の好ましい屈折率は、以下に示す通りである。例えば、光透過性層の光入射側から3層をa層、b層、c層としたとき、それぞれの層の屈折率na、nb、ncが、下記式を満たすか、近似していることが好ましい。
nb=√na・nc
【0064】
本発明は、次式で表わされる、前記波長変換フィルムの規格化吸光係数aの値が、入射光の波長が400〜1200nmで、0.1以下であることが好ましい。aが上記範囲であると、保護ガラス、封止材と同程度の光透過性が得られ、波長変換フィルムによる光吸収損失は考慮に入れる必要がなくなる。
【0065】
【数2】

(ただし、Tは光透過率、Lはフィルム平均厚み(μm)である。)
【0066】
なお、Tの光透過率とは、波長変換フィルムの凹凸のない状態の材料自体の光透過率のことである。また、Lのフィルム平均厚みとは、波長変換フィルム材料の平均厚みのことである。
【0067】
本発明の波長変換フィルムは、太陽電池セルの受光面上に配置されることが好ましい。そうすることで、太陽電池セル受光表面の、テクスチャー構造、セル電極、タブ線等を含めた凹凸形状に隙間なく追従できる。
【0068】
本発明の波長変換フィルムの片面は太陽電池セル表面(受光面)のテクスチャー構造、セル電極、タブ線等凹凸に隙間なく追従しており、図1に示すように、通常、太陽電池セル100上に貼り合わせる。
図1では、波長変換フィルム300の太陽電池セル100への接着面の反対側の面、すなわち波長変換フィルム300の上面(受光面側)に微細な凹凸形状を描いているが、平滑であってもよい。また、このときに、図2や図3のように波長変換フィルム300の作製時に必要となる基材フィルム301をモジュール内に残してもかまわない。さらに必要に応じて、図3のように波長変換フィルム300と太陽電池セル100の間に高屈折層302を設けてもかまわない。
【0069】
本発明の波長変換フィルムが微細な凹凸形状を有する場合、波長変換フィルムの微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を有する面では、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を形成するために用いた型フィルムを取り除き、封止材を積層させ、空隙を生じさせず隙間なく波長変換フィルムの微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を埋めるようにするか、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を形成するために用いた型フィルムを除去せずに積層させたままとしてもよい。
なお、図1において、接続用タブ線及び電極は省略されているが、本発明の波長変換フィルム300は、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を有する面の他面である太陽電池セル100の受光面では、接続用タブ線及び電極の凹凸形状に対しても隙間なく追従できることが好ましい。
【0070】
通常、太陽電池セル受光面には、テクスチャー構造を施してあり、これの深さが0〜20μmである。一方、波長変換フィルムに、外部光からの反射損失を少なくするために、規則的に隙間なく多数敷き詰めるように形成された微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐の高さは、主として加工上の要請から、1〜100μmである。具体的には、本発明の波長変換フィルムの台座部分の厚みは、太陽電池セル表面のテクスチャー構造の深さ0〜20μmよりも大きくし、波長変換フィルムの微細凹部又は凸部の厚みは、加工上の要請から1〜100μmとすることが好ましい。
【0071】
波長変換フィルムは、一方の面では上述のように太陽電池セルの凹凸に追従し、また他方の面では外部光からの反射損失を少なくするために好ましく設けられる。規則的に隙間なく多数敷き詰めるように形成された微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐が転写されるように、波長変換フィルムを形成する際は、前記被覆蛍光物質体を含有した樹脂組成物を半硬化状態で用いてもよい。樹脂組成物の分散媒樹脂として、微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐を付与しやすい光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、加熱又は加圧により流動する熱可塑性樹脂等が、単独あるいは組み合わせて用いられる。
【0072】
いずれの場合でも、波長変換のために、樹脂組成物中には上記被覆蛍光物質体、好ましくはユーロピウム錯体粒子を被覆した被覆蛍光物質体を含有させる。
【0073】
上述したように、樹脂組成物の分散媒樹脂として、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が好ましく用いられるが、波長変換フィルム用樹脂組成物の分散媒樹脂に光硬化性樹脂を用いる場合、光硬化性樹脂の樹脂構成や光硬化方法は特に制限はない。例えば、光ラジカル開始剤による光硬化方法では、波長変換フィルム用樹脂組成物は、上記被覆蛍光物質体の他、(A)光硬化性樹脂、(B)架橋性モノマ、及び(C)光又は熱により遊離ラジカルを生成する光開始剤、からなる。
ただし、波長変換フィルムの太陽電池セル側の下層に高屈折層を適用する場合は、この高屈折層が光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が好ましく、上記被覆蛍光物質体の分散媒樹脂は、必ずしも光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等である必要はない。
【0074】
ここで(A)光硬化性樹脂(分散媒樹脂)としては、アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのアルキルエステルと、これらと共重合し得るその他のビニルモノマーを構成モノマとして共重合してなる共重合体が用いられる。これらの共重合体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いることもできる。アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステル又はメタクリル酸無置換アルキルエステルや、これらのアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステル及びメタクリル酸置換アルキルエステル等が挙げられる。
【0075】
また、アクリル酸又はメタクリル酸やアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと共重合しうるその他のビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
これらのビニルモノマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、(A)成分の分散媒樹脂の重量平均分子量は、塗膜性及び塗膜強度の点から10,000〜300,000であることが好ましい。
【0076】
(B)架橋性モノマとしては、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等);グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等);多価カルボン酸(例えば、無水フタル酸)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質(例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物;アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル);ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等);等を挙げることができる。
【0077】
特に好ましい(B)架橋性モノマとしては、架橋密度や反応性を制御しやすいという意味において、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレートが挙げられる。なお、上記化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0078】
特に波長変換フィルムあるいは、その下層(反受光面側)となる高屈折層の屈折率を高くする場合には、(A)分散媒樹脂及び/又は(B)架橋性モノマに、臭素、イオウ原子を含んでいることが有利である。臭素含有モノマの例としては、第一工業製薬社製、ニューフロンティアBR−31、ニューフロンティアBR−30、ニューフロンティアBR−42M等が挙げられる。イオウ含有モノマ組成物としては、三菱瓦斯化学社製、IU−L2000、IU−L3000、IU−MS1010が挙げられる。ただし、本発明で使用される臭素、イオウ原子含有モノマ(それを含む重合物)は、ここに挙げたものに限定されるものではない。
【0079】
(C)光開始剤としては、紫外線又は可視光線により遊離ラジカルを生成する光開始剤が好ましく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE(イルガキュア)651)、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のキサントン類、あるいはヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE(イルガキュア)184)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ビトロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1173)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0080】
また、(C)光開始剤として使用しうる光開始剤としては、例えば、2,4,5−トリアリルイミダゾール二量体と2−メルカプトベンゾオキサゾール、ロイコクリスタルバイオレット、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン等との組み合わせも挙げられる。また、それ自体では光開始性はないが、前記物質と組み合わせて用いることにより全体として光開始性能のより良好な増感剤系となるような添加剤、例えば、ベンゾフェノンに対するトリエタノールアミン等の三級アミンを用いることができる。
【0081】
また、(C)熱開始剤としては、熱により遊離ラジカルを発生させる有機過酸化物が好ましく、たとえば、イソブチルパーオキサイド、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクニックパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオノイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサノン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α‘ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等を使用することができる。
【0082】
上記はアクリル系の光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂についての例示であるが、通常用いられるエポキシ系の光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂も、本発明の波長変換フィルムの分散媒樹脂として用いることができる。ただし、エポキシの硬化は、イオン性であるため、上記被覆蛍光物質体あるいは蛍光物質である希土類金属錯体は、影響を受けやすく、劣化等を引き起こしうるため、アクリル系の方がより好ましい。
【0083】
波長変換フィルム用樹脂組成物の分散媒樹脂に、加熱又は加圧により流動する熱可塑性樹脂を用いる場合、例えば、天然ゴム(屈折率(以下、nともいう)=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.513)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)等の(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.456)、ポリオキシプロピレン(n=1.450)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.459)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.456)等のポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.467)、ポリビニルプロピオネート(n=1.467)等のポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリエチルアクリレート(n=1.469)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.464)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.473)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.475)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.487)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.489)、ポリメチルメタクリレート(n=1.489)等のポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散媒樹脂として使用可能である。
【0084】
これらの熱可塑性樹脂は、必要に応じて2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0085】
さら上記樹脂との共重合樹脂として、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)等を使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れている。
【0086】
エポキシアクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。
【0087】
エポキシアクリレート等のように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は、必要に応じて、2種以上併用することができる。これら樹脂の軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好ましく、150℃以下がさらに好ましい。太陽電池ユニットの使用環境温度が通常は80℃以下であることと加工性を考慮すると、上記樹脂の軟化温度は特に好ましくは80〜120℃である。
【0088】
熱可塑性樹脂を分散媒樹脂として用いた場合の、その他の樹脂組成物の構成は、上記被覆蛍光物質体を含有させれば特に制限はないが、通常用いられる成分、例えば、可塑剤、難燃剤、安定剤等を含有させることが可能である。
【0089】
本発明の波長変換フィルムは、(1)蛍光物質粒子を、上記式(1)で表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル反応によりシリカガラスで被覆し、被覆層を有する被覆蛍光物質体を得る蛍光物質粒子被覆工程と、
(2)前記被覆蛍光物質体を分散媒樹脂に混合又は分散させて樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物を用い、波長変換フィルムを形成するフィルム形成工程と、を含む工程により製造できる。
【0090】
半硬化状態の樹脂組成物層を作製するには、上記被覆蛍光物質体を含有する樹脂組成物をPET、PMMA等の基材に塗布し、加熱により溶剤を揮発させてフィルム状とする方法が挙げられる。なお、フィルム状とする場合、基材の反対面にPP等のセパレータフィルムにより保護することも好ましい。フィルム状の半硬化状態の樹脂組成物層を太陽電池セルへ貼り付けるには、太陽電池セルへ真空ラミネートすればよい。または、フィルム状とせずに、上記樹脂組成物をワニス状で用いて、太陽電池セルへ直接塗布し、溶剤乾燥して、半硬化状態の樹脂組成物層とすることも可能である。ワニス状で塗布した時点で太陽電池セル凹凸を完全に埋め込むことができる。
【0091】
半硬化状態の樹脂組成物層を太陽電池セル上に形成した後、次に、波長変換フィルムに、微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を形成する場合は、同形状の微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を有する型フィルムを、半硬化状態の樹脂組成物層の上に載せ、さらに真空ラミネートし、半硬化状態の樹脂組成物層に形状転写し、波長変換フィルムを得る。なお、半硬化状態の樹脂組成物層を太陽電池セル上に貼り付けた後に、型フィルムで微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を形成して、波長変換フィルムを得るのではなく、基材上に形成されたフィルム状の樹脂組成物層を型フィルムの上に貼り付けるか、又は樹脂組成物を型フィルムに直接塗布し、微細凹又は凸形状の多角錐若しくは円錐を形成して波長変換フィルムを得てから、太陽電池セル上に貼り付けても良い。
【0092】
この時点で型フィルムを剥離してから波長変換フィルムを硬化しても、型フィルムをつけたまま波長変換フィルムを硬化してもよい。半硬化状態の波長変換フィルムの硬化方法は、あらかじめ該樹脂組成物に光硬化性を付与しても、熱硬化性を付与してもよい。
【0093】
<太陽電池モジュール及びその製造方法>
本発明は、上記波長変換フィルム又は型フィルム付き波長変換フィルムを用いた太陽モジュールも範囲とする。
本発明の波長変換フィルムは、複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられる。
【0094】
本発明の波長変換フィルムに用いる蛍光物質にユーロピウム錯体を用いることで高い発電効率を有する太陽電池モジュールを実現出来る。ユーロピウム錯体は紫外域の光を高い波長変換効率で赤色の波長域の光に変換し、この変換された光が太陽電池セルで発電に寄与する。
【0095】
本発明の波長変換フィルムとなる、フィルム状の樹脂組成物層を用いて、太陽電池セル上に波長変換フィルムを形成し、太陽電池モジュールを製造する一つの方法について、図5を用いて説明する。
【0096】
図5の(a)に示すように、基材であるPET等の基材フィルム304と、PP等のセパレータフィルム306に挟まれた半硬化状態の、被覆蛍光物質体を含有した半硬化状態の樹脂組成物層305を、太陽電池セルへ貼り付ける場合、まずセパレータフィルム306を剥がす。
【0097】
次に、図5の(b)に示すように、真空ラミネータを用い、太陽電池セル100に半硬化状態のユーロピウム錯体からなる蛍光物質を含有した半硬化状態の樹脂組成物層305を、基材フィルム304をつけたまま貼り付ける。
【0098】
その後、図5の(c)に示すように、前記基材フィルム304を剥がし、半硬化状態の樹脂組成物層305上に型フィルム301を載せ、図5の(d)に示すように、さらに真空ラミネータで、微細凹凸形状の転写を行い、波長変換フィルム300a(硬化前)を得る。
【0099】
硬化前の波長変換フィルム300aを得た後、さらに光又は熱で半硬化状態のユーロピウム錯体からなる蛍光物質を含有した、波長変換フィルム300aを硬化させ、波長変換フィルム300b(硬化後)を得る。硬化後は、このまま型フィルム301を残し、保護ガラス201、封止材202及びバックフィルム204に挟みモジュール化してもよい。
【0100】
また、図5の(e)のように、(d)の状態から型フィルム301を剥がした後、図1に示すように、保護ガラス201、封止材202及びバックフィルム204に挟みモジュール化してもよい。
【0101】
このとき、太陽電池セルのテクスチャー構造が深さ10μmで、型フィルム凹凸の深さが10μmとすれば、ラミネート前の波長変換フィルムは少なくとも20μmの厚みが必要ということになる。先述の言い方をすれば、前者が台座部分で、後者が本発明の特徴である凸又は凹形状の多角錐もしくは円錐部分となる。
【0102】
なお、型フィルム(波長変換フィルムの凸又は凹計上の多角錐若しくは円錐部形成の鋳型となる型フィルム)は、特開2002−225133号公報に記載の方法等により作製することができる。型フィルム形成に用いられる樹脂組成物は、波長変換フィルムで用いられる光硬化性樹脂を含むものが挙げられる。なお、型フィルムの形状は、波長変換フィルムに微細な凸又は凹形状の多角錐若しくは円錐が受光面に隙間なく多数敷き詰めるように形成されるようなものとする。
型フィルムの具体的な作製例は、実施例のところで後述する。
【0103】
本発明の波長変換フィルムは、太陽モジュールとする前の状態のもの、具体的には硬化性樹脂を用いた場合は、半硬化状態のフィルムをいう。なお、半硬化状態の波長変換フィルムと、硬化した後(太陽モジュール化した後)の波長変換フィルムとの屈折率は大きくは変わらない。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
<蛍光物質粒子の合成>
まず、蛍光物質粒子を合成する。4,4,4−トリフルオロ−1−(チエニル)−1,3−ブタンジオン(TTA)200mgを7mlのエタノールに溶解し、ここへ1Mの水酸化ナトリウム1.1mlを加え混合した。7mlのエタノールに溶かした6.2mgの1,10−フェナントロリンを先の混合溶液に加え、1時間攪拌した後、EuCl・6HO 103mgの3.5ml水溶液を加え、沈殿物を得る。これをろ別し、エタノールで洗浄し、乾燥をし、蛍光物質粒子Eu(TTA)Phenを得た。
【0105】
<被覆蛍光物質体の作製>
上記で得られたEu(TTA)Phenを用い、表1に示す材料を表1に示す配合量でゾルゲル用溶液を作製した。
【0106】
表1に示すモル比率で、表中(a)〜(d)の材料を混合し、もう一方で(e)〜(g)の材料を混合しておく。よく混合攪拌したあと、両者を混合し、2時間攪拌を行い、被覆蛍光物質体溶液を得た。
【0107】
【表1】

【0108】
<分散媒樹脂の調整>
表2に示す材料を表2に示す配合量で、還流冷却器を備えたセパラブルフラスコに入れ、70℃にて6時間攪拌してポリマ溶液Aを得た。
【0109】
【表2】

【0110】
さらにこのポリマ溶液Aを用い、表3に示す材料及び表3に示す配合量で、混合することにより、分散媒樹脂としての熱硬化型ポリマ溶液Bを得た。
【表3】

【0111】
<被覆蛍光物質体含有樹脂組成物溶液の調整>
上記で得られた熱硬化型ポリマ溶液Bと被覆蛍光物質体溶液を固形分質量比100対0.8で混合し、被覆蛍光物質体含有の樹脂組成物溶液を得た。
<波長変換フィルムの作製>
38μm厚のPMMAフィルム(住友化学社製、商品名テクノロイ)に上記で得られた被覆蛍光物質体含有樹脂組成物溶液を、ギャップを8mil(ミリインチ)としたアプリケータにより塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機により、10分間かけて乾燥し、半硬化状態の波長変換フィルムを得た。
【0112】
<波長変換フィルム付太陽電池モジュールの作製>
太陽電池セル上に、上記波長変換フィルムを載せ、保護ガラスとしての強化硝子(旭硝子(株)製)、封止材としてのEVA樹脂((株)三井ファブロ製、商品名:ソラエバ)、波長変換フィルムを貼り付けた太陽電池セル(受光面を下に向ける)、前記EVA樹脂、バックフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、A−4300)を重ね、真空ラミネータを用いて、ラミネートした。
【0113】
<太陽電池特性の評価>
擬似太陽光線として、ソーラーシミュレータ(ワコム電創社製、WXS−155S−10、AM1.5G)を用い、電流電圧特性をI−Vカーブトレーサー(英弘精機社製、MP−160)を用いて測定した。測定結果は、表4に示す。
【0114】
(比較例1)
<太陽電池モジュールの作製>
保護ガラスとしての強化硝子(旭硝子(株)製)、封止材としてのEVA樹脂((株)三井ファブロ製、商品名:ソラエバ)、太陽電池セル(受光面を下に向ける)、前記EVA樹脂、バックフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、A−4300)を重ね、真空ラミネータを用いて、ラミネートした。
【0115】
【表4】

【0116】
表4に見られるように、変換効率η(%)にして、比較例1が−0.06%のところ、実施例1では+0.10%であった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の波長変換フィルムは、スペクトルミスマッチによる太陽光損失を低減し、さらに高い可視光透過率を有する構成とすることにより、光利用効率を高め、発電効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0118】
100 太陽電池セル
201 保護ガラス(カバーガラス)
202 封止材(充填材)
203 タブ線
204 バックフィルム
300a、b 波長変換フィルム
301 基材フィルム
302 高屈折層
304 基材フィルム
305 半硬化状態の樹脂組成物層
306 セパレータフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられる、蛍光物質を含む波長変換フィルムにおいて、
前記蛍光物質は、蛍光物質粒子と、該蛍光物質粒子よりも低い屈折率を有する物質で前記蛍光物質粒子の周囲を覆った被覆層と、を有する被覆蛍光物質体であって、
前記物質は、下記式(1)に表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル法により形成されるシリカ系材料であることを特徴とする波長変換フィルム。
【化1】

(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記被覆蛍光物質体が、分散媒樹脂中に、0.01〜10質量パーセントで分散又は混合されることを特徴とする請求項1に記載の波長変換フィルム。
【請求項3】
前記波長変換フィルムが、前記太陽電池セルの受光面上に配置され、且つ前記複数の光透過性層を、光入射側から層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn1、n2、・・・、nmとしたとき、n1≦n2≦・・・・≦nmが成り立つことを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換フィルム。
【請求項4】
前記蛍光物質が、ユーロピウム錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長変換フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長変換フィルムを有する太陽電池モジュール。
【請求項6】
蛍光物質粒子を、下記式(1)に表されるシリコンアルコキシドを用いたゾルゲル反応によりシリカ系材料で被覆し、被覆層を有する被覆蛍光物質体を得る蛍光物質粒子被覆工程と、
前記被覆蛍光物質体を分散媒樹脂に混合又は分散させて樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物を用い、波長変換フィルムを形成するフィルム形成工程と、を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長変換フィルムの製造方法。
【化2】

(上記式中、Rは、H原子又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの製造方法において、請求項1〜4のいずれか一項に記載の波長変換フィルムを積層して、前記光透過性層の一つを構成する工程を有することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−258293(P2010−258293A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108100(P2009−108100)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】